シャル/リオン(sakura様より)

シャル/リオン(sakura様より)


 メディスパ等でお世話になっているsakura様から頂いたテイルズのシャル/リオン絵です。
sakura様の書かれるリオンはワガママで甘えん坊な姿がとても可愛くていつも萌えさせてもらっております。
 とても素敵なシャルリを描いていただき、本当にありがとうございました。

theme : お絵描き・ラクガキ
genre : 趣味・実用

オイタも過ぎると・・・(好きしょより:水/祭)



 (注:好きしょを題材にした二次創作です。BL・鬼畜要素ありです。許容出来る方のみご覧ください)


 (誰だ・・・?)
廊下を歩きながら水都は誰かの視線を感じていた。
(羽柴か・・・?)
最初はそう思ったが、どうも感じが違う。
羽柴空は頭より身体が先に動くタイプだ。
 だが、自分を観察しているものはどこか違う。
むしろ慎重に自分を観察しているように思える。
歩きながら水都はさりげなく視線を廊下の窓の方へ向ける。
廊下の窓には水都や廊下を行く生徒達の姿が映る。
それを利用して自分を観察してる者の正体を突きとめてやろうというわけだ。
 やがて視線の主が窓を通して姿を現す。
見えたのは長い金色の髪。
祭だ。
窓を通して見る祭は、うまく物陰に姿を隠してこちらの様子を伺っている。
手にはデジカメらしいものを持っている。
 (なるほど・・・)
祭が持っているものを見て、水都は薄笑いを浮かべる。
祭は写真好きだ。
そして、ただ写真が好きなだけでなく、それで人の秘密を撮ることもしている。
空がしばしば祭の頼みを聞く羽目になるのも、一つにはそのせいだった。
(おおかた私の弱みを握ろうとでもいうつもりだろうが・・・。そうはいかんぞ)
再び、薄く笑みを浮かべると水都は気づかない振りをしてそのまま歩き続けた。


 (よし・・・気づいてないみたいだな・・・)
うまく水都の後をつけながら、祭はしめたというような表情を浮かべる。
今まで空をはじめとして色んな人間の面白そうなところ(撮られた方にしてみれば弱みだろうが)を写真に収めてきた。
だが、水都は手ごわく、今までそういうチャンスが来なかった。
だが、それだけに祭としてはかえって闘志をかき立てられたのだろう、水都の弱みを握ってやろうとしているのだった。
後をつけていると、やがて水都は数学教諭室へ入ってゆく。
 数学教諭室へ入ってゆくのを見届けると、祭は慎重にドアへ近づいてゆく。
恐る恐る顔をドアに近づけると、音を立てないように慎重にドアを開ける。
そして僅かな隙間から中を覗いてみた。
 (あれ・・?)
室内を覗くなり、祭はおかしなことに気づく。
水都の姿が見えないのだ。
(そんな・・・確かに見たのに)
意を決して、祭はさらにドアを開ける。
そして首を突っ込めるだけの隙間をつくると、慎重に頭を入れた。
直後、後頭部に鈍い衝撃が走る。
ウッと呻いて祭はそのまま倒れそうになるが、水都は片手で襟を後ろから掴んで支える。
部屋に入ると同時に水都はドアの脇に身をひそめ、姿が見えなくて不審に思った祭が入ってくるのを待ち構えて後頭部を殴りつけたというわけだ。
 「ふふ・・・目覚めてからは・・お楽しみだぞ・・」
水都はニヤリと笑みを浮かべると、気絶した祭をそのまま教諭室へ運び入れた。


 ゆっくりと目を覚ました祭におぼろげながら飛び込んできたのは床板のタイルだった。
(あれ・・・?)
怪訝に思う祭は思わず身体を揺り動かす。
すると腹の下に何かの感触があることに気づいた。
 「ククク・・・気がついたようなだな」
突然、頭上から嫌な感じの含み笑いが聞こえてきた。
水都の声だ。
「み・・水都・・先生・・?」
思わず祭が尋ねるように呼びかける。
 「何だその顔は?私の後をつけていたんだろう?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら水都は言った。
「そ・・それより・・何で・・・こんな・・格好・・なんですか?」
祭はギリギリまで首を左右に振りかえりながら尋ねる。
ソファに腰かけた水都の膝の上にうつ伏せに乗せられていたからだ。
 「ククク・・・気づかんのか?羽柴とは違って馬鹿ではないと思っていたが・・。やはり羽柴同様しょせんは子供か、お祭君は」
「なっ!!ば、馬鹿にしないで下さいっ!僕はもう子供じゃありません!!」
幼いころの呼び名で、嘲弄するかのように言われたためだろう、思わず祭はカッとして叫ぶように言う。
「なら何をされるかおおかたわかっているんじゃないのか?ククク・・・」
「そ・・それは・・・」
祭はプイと顔をそむけると、そのまま押し黙ってしまう。
 本当は何をされるかわかっていた。
以前、空が水都にお仕置きと称してお尻を叩かれているところをたまたま目撃してしまったからだ。
そして、祭自身、以前小遣い稼ぎのつもりで七海の隠し撮り写真を売っていたのがバレてしまい、七海にきつくお仕置きされたこともあった。
それでもそんな恥ずかしい目にあわされるなどということを思いたくも信じたくもないのが強いのだろう、何も言えなかった。
 「フフフ・・・本城・・・どうやらわかってはいるようだな」
祭の態度でそう気づくと、ニヤニヤしながら水都は話しかける。
祭は何も言わないが、ブルブルと全身が小刻みに震えている。
屈辱感を感じていることに気づくと、水都は満足そうな表情を浮かべる。
「ククク・・・いつまでもこのままというのも辛いだろう。始めてやろう」
そういうと水都は制服のズボンを降ろしにかかった。
「あっっ・・!!何を・・!!」
思わず祭は手を動かそうとする。
だが、その前にぴしゃりと水都に手を叩かれてしまった。
「ふふん、お仕置きは裸の尻にするものだと決まっているだろう?」
「そ・・そんな・・。お・・お願いです・・。そ・・それだけは・・・」
震える声で祭は懇願する。
「聞けんな。これもお仕置きのうちだ。諦めるんだな、本城」
「そ・・そんな・・・」
絶望的な表情を浮かべて呟く合間に、水都は祭のズボンを膝まで降ろしてしまう。
あっという間に年頃の少年らしい引き締まった適度に弾力がある、そして女性顔負けに綺麗なお尻が姿を現した。
 「ほほぅ・・・これはこれは・・・」
水都はまるで美術品でも眺めるようにしげしげと祭のお尻を見つめる。
(き・・気持ち・・悪い・・・)
祭はまるで痴漢に覗かれているかのような感覚を覚え、身震いする。
しばらく祭のお尻を眺めていたかと思うと、水都はおもむろに左手をお尻に乗せたかと思うと、ゆっくりと撫で回し始めた。
 「ひ・・!!」
痴漢のような気色悪い感触に祭は背をのけ反らせる。
「や・・やぁだぁっ!!」
思わず祭は両手を後ろへ伸ばすと、お尻を庇おうとする。
そこへ水都は容赦なく尻たぶを掴むと、思い切り捻じ上げるようにしてつねった。
 「や・・・!!み・・水都・・先生・・い・・痛い・・!!」
「何をしている?お仕置きだと言っただろう?本城、お前は素直に罰も受けられないのか?」
「ち・・違います・・でも・・・」
「いいわけはいい・・。よくわかった・・。それならこちらにも考えがある・・」
水都はそういうと、祭の両腕を後ろ手に背中へ縫いつけるようにして右手で押さえつけてしまう。
「ふふん・・これでかばえまい。さて・・・・お仕置きの時間だ。たっぷりと・・・自分の浅はかさを・・・後悔することだな・・・」
ピタピタと軽く尻をはたきながら宣告したかと思うと、水都はゆっくりと左手を振り上げる。
そして祭のお尻目がけて、思いっきり振り下ろした。


 パアッシィ〜〜ンッッッ!!
「くぅ・・!!」
肌を打つ甲高い音と共に、祭は苦痛の声を漏らし、身体を強張らせた。
ピシャアンッ!パアチィンッ!パアアンッ!パアシィンッ!
祭は声を漏らすまいと必死に口を噤む。
 「おやおや?泣いてたまるかとでも思っているのか?ふふん、子供っぽいプライドだな」
「そ・・そんなんじゃ・・・・」
祭はそう言いかけるが口を噤む。
水都の言うとおりだったし、何か言えばそれを認めることになるからだ。
「やはりそうか。ふふん、本城、無理をする必要はないぞ。泣きたければ素直に泣くがいい。それが子供というものだ」
お尻を叩きながら、水都は嬲るかのように祭にそう言いやる。
子供扱いされ、祭は恥ずかしさと悔しさと情けなさで涙が滲みそうになる。
だが、泣いたら本当に子供のようだと思い、必死で泣くまいとする。
しかし、屈辱感と情けなさは拭いようもなく、両肩を熱病患者のようにブルブルと震わせた。
 (ククク・・・こたえているようだな。だが、そんな意地がいつまで持つかな?)
意地の悪い笑みを浮かべると、水都はお尻を叩く手により勢いを込める。
パアシィ〜ンッ!ピシャア〜ンッ!パッア〜ンッ!パッチィ〜ンッ!
「ぁ・・・ぅ・・・ぁ・・・っ・・・」
耐え切れなくなってきたのだろう、祭の口から微かだがうめき声が漏れ始めた。
ピシャア〜ンッ!パアシィ〜ンッ!パッチィ〜ンッ!パッアァ〜ンッ!
「それにしても・・・羽柴ならともかく・・・・」
パアシィ〜ンッ!ピシャア〜ンッ!パッチィ〜ンッ!ピシャア〜ンッ!
「う・・・く・・あ・・・うぅ・・・」
「お前が私に手を出そうとは・・・意外だったぞ・・ククク・・・」
ピッシャ〜ンッ!パアッシィ〜ンッ!パッアァ〜ンッ!ピッシャ〜ンッ!
「くぅ・・うぅ・・あっ・・くぁぁ・・・」
祭のうめき声が大きくなり、表情も苦しげなものに変わってゆく。
お尻も平手が叩きつけられるたびに赤く色づいていった。
 「それも・・よりによって・・・私の弱みを握ろうとは・・・いい度胸だな?」
バシッ!バアンッ!バチンッ!ビダァンッ!
「あっ!痛あっ!くっ!痛いっ!」
水都は不意に感情を爆発させたのか、容赦のない平手打ちを叩きつける。
 バアシィンッ!バチンッ!ビダァンッ!バッアァンッ!
「ひっ・・!痛・・!ひぃんっ!ひっ!」
祭はジワリと涙を浮かべ、苦痛に身をよじる。
バシンッ!バチンッ!バアンッ!ビダァンッ!
「痛ぁっ!で・・出来・・心・・だったんです・・痛っ!」
「出来心だと?そういえば許してもらえるとでも思っているのか?舐められたものだな」
水都は容赦のない平手打ちを叩きつけながら言う。
 「ひぃんっ!!そ・・そんな・・つもりは・・痛っ!ご・・ごめん・・なさい・・・」
「ククク・・・甘いな、本城。謝った程度で許してもらえるなどとは思わないことだな・・」
水都のその言葉に祭は身を強張らせる。
本気で水都が怒っていることを悟ったのだ。
 「クク・・・そうだ。いいことを思いついた・・・」
突然、水都はお尻を叩く手を止めたかと思うと、一旦、祭を膝から降ろす。
降ろされた祭は、赤く染まったお尻をむき出しにしたまま、ソファに寄りかかるようにして床に座り込んだ。
 (な・・何をするつもり・・何だろう・・?)
お尻の痛みに両肩を上下させ、荒い息を吐きながら、祭は水都の様子をジッと見守る。
水都は何やら室内を動き回っていたかと思うと、手に何かを提げて戻ってきた。
水都が持っていたのは、デジカメ・携帯用の小型プリンター。
さらに、水都はプリンターをソファ前のテーブルに置いたかと思うと、祭から取り上げたデジカメを別の机に置く。
ちょうど、叩いてる最中の祭のお尻がしっかりと撮れる場所だった。
さらに、別のデジカメを祭の顔が撮影できる場所へ置いた。
 (ま・・・まさか・・・)
祭は水都の意図におぼろげながら気づき、身体を震わせる。
「どうやら感づいたようだな?フフフ・・・・」
「せ・・先生・・・そ・・それだけは・・・」
はっきりわかるほどに身を震わせる祭に対し、水都は眼鏡をかけ直すようなポーズと共にニヤリと笑みを浮かべて言う。
「駄目だ、これもお仕置きのうちだ。己の愚かさをたっぷりと反省するがいい。ククク・・」
水都はそういうと再び祭を膝に載せてソファに腰かける。
そして両腕を後ろ手に右手で拘束すると、再び左手を振り上げた。
 バアッシィ〜ンッッ!!
バンバンバンパァンパンパンバンバンバンパンパンパンパァンパァンッッッ!!
「ひいいっ!きゃひぃっ!ひぃひぃんっ!ひゃああんっっ!!」
まるで集中豪雨のような凄まじい勢いで平手打ちが祭のお尻へと降り注ぐ。
容赦なく襲いかかる打撃の嵐に祭は苦痛で身をよじり、背をのけぞらせた。
「痛っ!痛あっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
祭は必死に謝り許しを乞う。
だが、水都は祭の悲痛な声を無視して平手の雨を降らし続けた。


 「うっえ・・ひっひぃん・・・うぇええん・・・・」
しゃくり上げ、ボロボロと涙をこぼしながら祭は泣いていた。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染め上がっており、焼けた石炭のように熱を放っている。
ズボンは足首までずり落ちており、足全体にジワリと汗がにじんでいる。
顔は涙でグショグショに濡れ、頬は赤く上気し、口元からはよだれまで垂れていた。
 「フフフ・・・見るがいい・・よく撮れているぞ」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、水都は周りにばら撒くようにして持っていたものを落とした。
ヒラヒラと宙を舞うように落ちたのは写真。
あるものは真っ赤に染め上がったお尻が、またあるものはそのお尻にまさに平手が叩きつけられた瞬間が、さらに別のものには泣き叫ぶ祭の表情が映されている。
 「う・・うぅ・・・そんな・・・うわぁん・・・」
写真に映し出された恥ずかしい姿に祭はさらに泣いてしまう。
「ククク・・・どうだ?いい出来だろう?猿のように赤くなった写真好きのお祭君?」
水都は赤く腫れ上がったお尻をヒタヒタと軽くはたきながら、嘲笑するように話しかける。
「ひっく・・ごめ・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・ごめんなさぁぁいい・・・」
祭は小さな子どものようにボロボロと涙をこぼしながら必死に許しを乞う。
 「『ごめんなさい』だと?人の弱みを握ろうなどとしておいて、その程度で許してもらえるとでも思っているのか?どうやらまだ叩かれ足りないようだな?」
含み笑いを浮かべると、これ見よがしにさらにヒタヒタと水都は祭のお尻を軽くはたいた。
(ま・・まだ・・許して・・くれない・・・)
祭は目の前が真っ暗闇になったような、絶望的な表情を浮かべる。
無意識に震える肩にその恐怖を感じ取ったのだろう、水都はニヤリとサディスティックな笑みを浮かべる。
そして、聞えよがしに口を開いた。
 「やはり反省が足りないようだな・・・。しかし・・・尻叩きというのも芸がないなぁ、そうは思わないか、お祭君?」
水都の問いかけるような口調に祭はギクリと身を強張らせる。
(な・・何を・・する・・つもり・・?)
恐怖に表情を歪めながら、祭は耳を研ぎ澄ませ、水都の言うことを一つも聞き洩らすまいとする。
「フフフ・・・。この・・・真っ赤に染まった尻に特大のお灸を据えてやるのもいいかもしれんな・・」
(う・・嘘でしょ!?そ・・そんな・・こと・・されたら・・)
信じられない思いに祭は思わず振り向こうとする。
 「それとも・・イチジク浣腸でもしてやる方がいいか?いや・・いっそ・・両方ともしてやるというのもいいかもしれんな・・・」
水都が宣告する新たなお仕置きに祭は戦慄する。
恐怖がもはや極限にまで達していたのだろう、祭の足の間から生温かい湯気が生じ、何やら匂いのする液体が滴り落ちる。
 「ふ・・ふえーん・・・・」
まるで幼児返りでもしたかのように、祭は泣きじゃくり始めた。
「浣腸もお灸もいやぁぁ・・・ごめんなさぁい・・・も・・もぅ・・二度と・・しま・・しませぇぇん・・・」
「本当だな?」
「や・・約束・・しますぅぅ・・ごめ・・ごめん・・なさぁい・・・」
祭がそれだけ言うと、ようやく水都は満足したような笑みを浮かべる。
「ククク・・・いいだろう・・。今回はこの辺で勘弁してやろう・・。だが・・・」
水都はそういったかと思うと、最後に思いっきり平手を叩きつけた。
 バアッチィ〜〜〜ンンッッッ!!!
「うわぁぁぁんんんっっっ!!痛ぁぁぁいいいい!!!」
祭は身をよじって悲鳴を上げる。
「もしまた・・私の弱みを握ろうなどという真似をしたら・・・今回の倍は叩いた上に浣腸とお灸もしてやろう。その上で恥ずかしい写真や画像をネットに流してやろう。わかったな?」
「ひぃ・・!!ぜ、絶対に・・しませんん!!」
祭は恐怖のあまり再び身を震わせながら誓う。
それを見ると水都はようやく祭を解放してやった。


 それからしばらく経ったある日・・。
水都が廊下を歩いていると祭の姿が見えた。
よく見てみると、どうやらまた懲りずにカメラを手にしている。
水都は微かに口元を歪めると、何食わぬ表情で祭の横を通り過ぎる。
そして、すれ違いざまに耳許に囁いた。
 「お仕置きしてやろうか?猿みたいに真っ赤な尻のお祭君?」
祭はギクリと身を強張らせて振り返る。
表情は恐怖に慄き、両手でお尻を庇うような仕草を見せたかと思うと、慌てふためいてその場から逃げだした。
水都は満足げな笑みを浮かべると、何事もなかったかのようにその場を立ち去った。


 ―完―

theme : 二次創作(BL)
genre : 小説・文学

神父物語15 ピーマン



 「うぅ〜〜〜っ」
唸り声と共に今井信幸はジッと皿を見つめている。
皿はほとんど平らげられていたが、脇にちょこんと付け合わせのピーマンが残っていた。
「信幸・・全部食べろとは言ってないんだ。ほんのちょっとだけでいいんだぞ」
ピーマンとにらめっこしている今井に、佐々木只行は優しい声で言う。
 「嫌です!キライなんですってば〜〜〜!!」
今井は頬を膨らますと、ゴネ始めた。
「いい年して好き嫌いなんかみっともないぞ、信幸。それに人に呼ばれたり、出張とかで出かけるときに困るだろう?」
「嫌です〜!食べないったら食べない〜〜〜〜!!!」
今井は癇癪を起こすや、ますますゴネる。
 「信幸・・・」
静かな声で佐々木が呼びかけると、一瞬今井はドキッとしてしまう。
「そんな顔しなくてもいいぞ。別にとって食おうなんて思ってないぞ」
今井は今にも椅子から飛び出してしまいそうな状態で、佐々木は思わず苦笑する。
「だって・・佐々木さん怒ってるもん・・・」
「そんなに・・・食べたくないのか?」
佐々木は口調を優しいものに変えて尋ねる。
「佐々木さんだって知ってるでしょ?僕がピーマン嫌いなの」
今井は上目づかいで、甘えるような表情を浮かべて問いかけてきた。
「それは知ってるが・・。でもな・・・この前、差し入れしてくれたやつ、ピーマンが入ってて残しただろう?」
「う・・それは・・・」
今井は思わず言葉に詰まってしまう。
数日前、ある女性信者が佐々木と今井に弁当を差し入れてくれたのだ。
だが、メニューの中にピーマンがあり、今井は食べなかったのである。
残すと失礼なので、佐々木が食べたが、これからもこういうことがあるだろうし、いつまでも好き嫌いがあるのもよくないだろうということで、これを機に佐々木は今井の好き嫌いを治そうと考えたのである。
 「いいか。人がせっかく差し入れしてくれたものを残すなんてよくないことだ。これからもそういうことはあるんだ。そのときに残すわけにはいかないだろう?すぐにっていうわけじゃない。二人で、少しずつ治して行こう。な?」
ピーマンとジッと睨み合っている今井に、優しい声で佐々木はそう呼びかけた。


 (うぅ・・・どうしよう・・)
今井は向かいにジッと座っている佐々木を見やり、残っているピーマンを見つめる。
佐々木は目の前に陣取ったまま、今井が口をつけるのを待っている。
(どうしても・・食べなきゃ・・・ダメなの・・?)
訴えかけるような目でチラリと佐々木を見つめるが、佐々木はしっかり陣取ってしまっている。
(一度でも・・・どこか行ってくれれば・・誤魔化せるのに・・・・)
しかめっ面を浮かべながら考え込んでいると、ふとある考えが浮かんだ。
 「ねぇ・・佐々木さぁん・・」
今井は思い切り甘えるような仕草と表情を見せて話しかけてきた。
「何だ、信幸?」
「紅茶・・淹れてきて・・くれませんかぁ?ちゃんと・・食べます・・からぁ・・・」
上目づかいに、子供が年の離れた兄や姉にオネダリするような感じで今井はジッと見つめる。
「わかった、少し待ってろ」
佐々木はそういうと席を立ち、キッチンの方へ向った。
 (よし・・今だ!!)
今井は佐々木の姿が消えたのを確認すると、皿を持って立ち上がり、あっという間に窓の方へ行く。
そして、窓を開けたかと思うと、残っていたピーマンを外へ放り出すように捨ててしまった。
(これで・・・よしと・・)
今井はキッチンにいる佐々木に音が聞こえないように慎重に窓を閉めると、テーブルに戻ろうとする。
だが、振りむいた瞬間、ギクリと身を強張らせた。
 「さ・・佐々木・・さぁん・・・」
紅茶をお盆に載せて持ってきた佐々木に、今井はぎこちない笑みを浮かべて呼びかける。
「信幸・・・。何を・・してたんだ?」
「な・・何も・・してませんってばぁ・・・」
そう言いつつ、今井はジリジリと蟹のように横へ動く。
「正直に言った方がいいぞ?俺にはピーマンを投げ捨ててるように見えたんだが?」
それを聞くなり、とっさに今井は皿を佐々木目がけて投げつけていた。
 「あっ!こら!待て!」
佐々木は皿を片手でキャッチし、お盆ともどもテーブルに置くや、今井を取り押さえにかかる。
「いやぁぁ〜〜〜〜っっ!!離してぇぇ〜〜〜っっ!!」
今井は叫びながら必死に抵抗する。
「離してじゃないだろ、全く・・・」
ジタバタと暴れる今井を押さえつけながら、佐々木は椅子に腰かけると、いつものように今井を膝に乗せにかかる。
 「いやあっ!やめてぇっ!お仕置きは嫌だぁっ!」
「嫌だじゃないだろう!好き嫌いはともかく・・・嘘をついて騙したり、食べ物を粗末にして。そんなことしていいと思ってるのか?」
「うわぁ〜んっ!だって嫌いなんですもんっ!食べたくないんですってばぁ〜〜!!」
今井がそう叫ぶのを尻目に、佐々木は慣れた手つきで神父服の裾を捲り上げてズボンを降ろす。
あっという間に今井の、雪のように白くて丸みを帯びた、柔らかいながらも適度に弾力がある、形のよいお尻が姿を現した。
 「ひぃん・・嫌・・いや・・・イヤぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
お尻に外気が触れるのを感じ取るや、悲鳴を上げながら両脚をバタつかせる。
「こら!落ちたらどうするんだ!まだ叩いてもないだろう?」
佐々木は片手でしっかりと押さえ、今井が膝からずり落ちないようにする。
「だ・・だって・・これから・・痛いこと・・するじゃない・・ですかぁ・・」
ジワリと目尻に涙を浮かべ、今にも泣きそうな表情で今井は言う。
「仕方ないだろ、お前が悪いんだから。さぁ、覚悟はいいな?」
「いや・・絶対・・イヤ〜〜〜〜!!!」
今井は必死に首を左右に振るが、佐々木は構わずにゆっくりと右手を振り上げたかと、今井のお尻目がけて振り下ろした。


 パッシィ〜ンッ!
「きゃあんっ!」
肌を打つ音と共に、今井はビクッと背をのけ反らせて悲鳴を上げる。
パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パチィンッ!
「ひんっ!ひゃあんっ!ひぃひんっ!はぁひぃんっ!」
佐々木が平手を振り下ろすたびに今井の悲鳴が上がり、白い肌にほんのりピンクの手形がついてゆく。
ピシャアンッ!パアチィンッ!パアシィンッ!パアアンッ!
「全く・・・何をしてるんだ・・」
平手を振り下ろしながら、やや呆れた口調で佐々木はお説教を始める。
ピシャアンッ!パアシィンッ!パアアンッ!ピシャアンッ!
「ひぃんっ!きゃあんっ!やあんっ!ああんっ!」
今井は悲鳴を上げ、背をのけ反らすかと思えば両足をバタつかせ、或いは両手で佐々木の神父服の裾をギュッと握りしめる。
パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!ピッシャアンッ!
「好き嫌いはまだしも・・・・」
しばらく叩いているうちに、ピンクだったお尻はやがて薄めの赤へと変化してゆく。
ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!
「うぁんっ!ひぃんっ!痛っ!ひゃあんっ!痛っ!」
パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パアシィンッ!
「嘘ついて人を騙して・・・」
ピシャアンッ!パアシィンッ!パアチィンッ!パアアンッ!
「やんっ!ひぃんっ!ひゃあんっ!ああんっ!」
ジタバタと今井が手足を動かしながら悲鳴を上げるのを尻目に佐々木はさらにお説教を続ける。
「しかも人に向けて皿なんか投げおってからに!何てことしたんだ!」
バッシィンッ!ビッダァンッ!バアッジィンッ!ビッダァンッ!
不意に平手の勢いが強くなり、今までよりずっと強烈な音が響いた。
 「ぎっ!!痛っ!佐々木さんっ!痛いっ!」
バシンッ!バアンッ!ビダァンッ!バアアンッ!
「痛いのは当たり前だろ!お仕置きなんだから!」
佐々木は強烈な平手打ちを落としながら今井を叱りつける。
「うわぁ〜んっ!佐々木さんの鬼っ!悪魔っ!尻叩き魔〜〜〜!」
お尻を叩かれながら、今井はそんなことを叫ぶ。
「こら!反省してないのか!?」
「うわぁ〜んっ!僕、悪くないですもん〜〜〜っっ!!」
今井がそんなことをのたまったため、佐々木は一旦手を止める。
 「信幸・・・・本当に・・・そう・・思ってるのか?」
佐々木が尋ねると、今井は振り返り、キッと佐々木を睨みつけながら口を開く。
「決まってる・・じゃないですか・・。好き嫌いの・・一つや二つ・・・誰だってあるじゃないですか!それを・・無理やり・・食べさせようとしたり・・・。しかも・・・捨てたくらいでお尻叩くなんて・・・。佐々木さんなんか鬼ですよ!!悪魔っ!鬼畜っ!尻叩き魔っ!!」
全然反省していない、今井の態度に思わず佐々木はため息が出そうになる。
 「そうか・・・。お前の・・本音は・・よく・・わかった・・・」
佐々木はそう言ったかと思うと、おもむろに今井を担ぎあげながら立ち上がる。
「ちょ・・何・・するんですか〜〜〜!!」
今井は思わず抗議するが、肩に今井を担いだまま、佐々木はリビングを後にした。


 今井を担いだまま、自分の部屋に入るや、佐々木はようやく今井を降ろしてやる。
ベッドの縁に腰を下ろしたかと思うと、佐々木は信幸をジッと見やる。
(ヤッバ・・・本気で・・怒っちゃってる!!)
佐々木の表情を見るなり、今井はそう気づいた。
 「信幸・・・」
「は・・はぃっっ!!」
今にも飛び上がらんばかりに、上ずった声で今井信幸は佐々木に返事をする。
「そこのテーブルの中にあるものを取ってこい」
「え・・?」
信幸は怪訝な表情を浮かべる。
只行の考えていることがわからなかったからだ。
 「何をしてるんだ?早く言う通りにしないか!」
佐々木の剣幕に慌てて今井はテーブルにすっ飛んでゆく。
そして引き出しを開けて中にあるものを取り出そうとする。
だが、中に入っているものを見るなり、手を止めてしまった。
 食い入るように今井はそれをジッと見つめる。
引き出しに入っていたのは鞭。
棒状のまっすぐなタイプのものだ。
 「さ・・佐々木さぁん・・・・」
恐る恐る振り返りながら、まさかという疑いと恐怖が入り混じった声で今井は呼びかける。
「どうしたんだ?早く出してこっちに持って来るんだ」
佐々木は有無を言わせない強い口調でそう命令する。
だが、信幸は中々取ろうとしない。
手を伸ばしかけては引っ込め、また出そうとしてはブルブルと腕を震わせる。
 「信幸・・・・」
不意に佐々木が呼びかけた。
今までよりもトーンが低くなり、まるで冬の風のように冷たい。
このままだと佐々木の怒りが爆発する。
恐怖やためらいを捨てると今井は急いで鞭を引っ掴み、慌てて戻ってくる。
 「よし・・。そうしたら・・・『これで悪い子な僕のお尻を叩いて下さい』って言うんだ、いいな?」
「そ・・そんな・・の・・」
今井は拒否しかけるが、佐々木にジロリと睨まれて黙ってしまう。
もはや言う通りにするしかなくなった今井はブルブルと全身を震わせながら手にした鞭を佐々木に差し出すと、震える声で口を開いた。
 「こ・・これで・・わ・・わわ・・悪い・・子・・な・・ぼ・・僕の・・お・・お尻をを・・ひ・・ひぃ〜〜〜ん・・・」
恐怖に耐えきれなくなり、今井は泣き声を出す。
「泣くんじゃない。さぁ、ちゃんと最後まで言うんだ!」
「た・・叩いて・・く・・下さいぃ・・・」
「よし・・・。じゃあ今度はベッドに両肘をついて・・こっちにお尻を向けるんだ」
今井は言われた通り、ベッドに両肘をつき、お尻を上げて佐々木の方へ向ける。
再び神父服が捲り上げられ、ズボンが降ろされると既にお仕置きされて真っ赤に染まっている今井のお尻が姿を現した。
 佐々木は鞭を手にすると、今井のお尻の前に立つ。
「うぅ・・・・」
今井はガクガクとまるで氷を身体に当てられているかのように震えている。
パドルや定規は経験したことがあるが、鞭は初めてだった。
それだけに怖くてたまらない。
いつの間にか生温かい液体が両脚を伝って床へ滴り落ちていた。
 ヒュウンッ・・・バシィィ〜〜〜〜ンンッッ!!
「ぎゃあああんんっっ!!」
空を切る音と共に鞭が叩きつけられる。
既に蓄積された痛みと相まっての強烈な苦痛に信幸は背をのけぞらせ、苦痛の声を上げた。
バアッシィィ〜〜〜ンン!!ビッダァ〜〜〜ンンン!!バアッアァ〜〜〜〜ンッッ!!
「ぎゃひぃぃ〜〜んっ!ひゃあんっ!!やぁぁぁぁんんんっっ!!」
絶叫ともいえる悲鳴を上げたかと思うと、今井は体勢を崩し、お尻を床につけるようにしてへたり込んでしまった。
 「こら!何をしてるんだ!まだ終わってないぞ!立つんだ!」
「や・・・いやぁぁ〜〜〜っっ!!い・・痛いよぉぉ!怖いよぉぉ!も、もぅ、叩かないでぇぇぇ!!」
鞭の痛みと恐怖に今井は泣き叫ぶ。
「反省したのか?」
頃合いだとみたのだろう、佐々木はへたり込んでいる今井に尋ねる。
「してる・・してるってばぁぁ〜〜〜!!ごめんなさい〜〜〜!!!」
今井は許してもらいたくて必死に謝った。
 「じゃあ何が悪かったんだ?反省してるなら言えるだろう?」
本当に反省しているのか、確かめるように佐々木は問いかける。
「ひっく・・ひぃん・・食べ物・・・外に・・捨てた・・・ことぉ・・」
「そうだ。それから?」
「ひぃん・・う・・嘘・・ついた・・ぁ・・・」
「そうだ、よく言えたな」
佐々木は声を優しいものに変えるとようやく鞭を降ろした。


 「うわぁぁ〜〜〜んんっ!!お尻痛いぃぃ〜〜〜〜!!」
「よしよし・・・痛かっただろ。もう大丈夫だからな」
佐々木は優しく抱きしめながら今井をあやすように声をかける。
しばらくして落ち着くと、佐々木はベッドの縁に腰を下ろし、今井を膝に載せる。
 「信幸、俺はお前が好き嫌いしたから怒ってたんじゃない、わかるな?」
「な・・何となく・・・」
「好き嫌いがあるのはまぁ仕方無い。だからといって食べ物を粗末にしたり、嘘ついたりするのはよくないことだ。だから厳しくしたんだ」
「でも・・痛かったですよぉ・・」
「仕方ないだろう、お前が中々わかってくれないからな」
「うう・・それじゃ子供みたいじゃないですかぁ・・」
今井は思わず不満そうに頬を膨らませる。
「ピーマンが嫌いだの、食べるの嫌だから嘘ついて窓から投げ捨てるなんて立派に子供だと思うが?」
「もぅ!佐々木さんの意地悪!」
すっかり今井はヘソを曲げてしまい、プイと顔をそむける。
佐々木は苦笑すると、再び今井をあやしにかかった。
今井はしばらくむぅ〜と不機嫌そうに唸っていたが、やがて機嫌を直すと、佐々木と唇を重ね合わせた。


 ―完―

theme : 自作BL小説
genre : 小説・文学

ザ・クリーナー(後始末屋)3 買い物



(注:女悪魔シリーズの番外編です。そちらを読んでいないとわからない描写などがあります)


 「そんな顔してあまりあちこち見まわすな。他人が驚くぞ」
不機嫌極まりない表情で、馬上からあたりを見回しながら大通りを行くため、気の弱い通行人がキアラに睨みつけられているのかとびっくりしてしまうのをネロがたしなめる。
「うっせえなぁ・・てめぇにゃあ関係ねえだろうが!」
師の方を振り向くと、今にも噛みつかんばかりの勢いでキアラが食ってかかった。
今日の彼女は朝から機嫌が悪かった。
寝ていたところをいきなり叩き起こされ、着替えさせられたかと思うと、買い物に行くからついて来いと言われたのだ。
起き抜けで機嫌が悪かったのと、元々ネロのことを偉そうないけすかない奴と思っているため、当然のことながらキアラは反抗してネロに打ちかかった。
だが、あっけなく取り押さえられ、渋々買い出しに付き合わされたというわけである。
それで、コウモリの翼が生えた悪魔族の馬が引く馬車にまたがって空を飛んで大きな街へ買い出しに出てきたというわけである。
二人は通りに面した大きな厩舎へたどり着くと、馬車を業者に預ける。
厩舎は人間界でいえば有料の駐車場のようなもので、金を払うと一定の時間馬や荷物を預かってくれるのだ。
「で・・・何しろってんだ?」
キアラが尋ねると、ネロは巻物のように巻いた紙を見せる。
紙には買うべきもののリストが載っていた。
「これを買ってこいってのか?」
「そうだ」
「冗談じゃねえ!何で俺がそんな使い走りみてぇなことしなきゃなんねえんだよ!」
弟子という立場にも関わらず、キアラは噛みつく。
「これは驚いた・・・。その年で買い物も出来ないのか?」
「んだと・・誰がそんなこと言ったぁ!?」
「やれやれ・・世話が焼けるとは思っていたが・・・買い物の仕方から教えなければか・・」
不意にキアラはリストをひったくった。
「やりゃあいいんだろう!それで文句はねえか!?」
「わかればいい・・・。一つ言っておく・・。無駄遣いと・・寄り道はするな」
「言われるまでもねえよ!俺はガキじゃねえ!」
キアラは師が差しだした財布をひったくるようにして取ると、今にも頭から湯気を出しそうになりながら厩舎を後にする。
「やれやれ・・相変わらず世話が焼ける・・・」
後姿を見送りながらそう呟くと、ネロも厩舎を後にした。


 ネロは真剣な表情で商品の棚をジッと見つめていた。
棚に並んでいるのはヘルメットと一体化したマスク。
近くにある別の棚やショーウィンドゥには様々な防具や武器が陳列されている。
武具屋だ。
 ネロはマスクを眺めては手に取り、軽く表面を手で叩いたりさすったりするかと思えば、両手で持ったまま重さを確かめるかのように小さく揺らす。
ネロは店員に声をかけると、幾つかのマスクを選んで試着や試し切り(撃ち)用のエリアへ案内してもらう。
そして、一つずつマスクをつけ出した。
 全部のマスクをつけ終わると、今度は眼帯を外す。
眼帯の下から、光を失った左目と、相当古い目の周りの火傷跡が現れた。
素顔をあらわにするや、慎重な手つきでネロは真ん中のマスクを手にする。
マスクは縦に長いデザインのもの。
左右耳の近くから横に角が突き出しており、カッと口を開いたような感じで下に長くなっており、そのため咽喉の部分も守れるようになっている。
他のマスク同様、白を基調にした色合いで、髑髏のようなデザインだった。
かぶってみると、無理なくフィットし、長時間使用しても不快感などは少なそうだ。
店員を呼ぶと、呪符やその他の武器と共にマスクを買う手続きを済ませて店を後にする。
次に向かったのは服屋だった。
「あぁ、これは。お待ちしてましたよ」
口髭を生やした、やや小太りの店主らしい男が、ネロの姿を見るや声をかける。
「注文の品を受け取りにきた」
ネロはそういうと、引換券を渡す。
「こちらです。どうぞ」
店主はネロをやや奥まったところに案内すると、注文の服を見せる。
服は二種類で、一つは黒に近い藍色の服と漆黒のマントという、中世の騎士を思わせるもの。
もう一つは闇夜のような漆黒のスーツ上下にネクタイと帽子というものだった。
両方とも試着してみたが、どちらにも満足したような表情を浮かべる。
「世話になったな・・・」
「いえいえ。どうぞまたのご利用を」
金を払って二着とも受け取ると、おもむろにネロは店を後にした。


 買い物を済ませたネロは、厩舎へ向ってトボトボと通りを歩いてゆく。
だが、やがて騒がしい音や声が聞こえてきた。
音の源は酒場。
耳を澄ますと罵声や瓶の割れる音が聞こえてくる。
大方酔っぱらい同士の喧嘩騒ぎだろう。
自分には関係ないこととネロが立ち去ろうとしたそのときだった。
 突然、観音開き式の出入り口が乱暴に開いたかと思うと、ゴロゴロと何かが勢いよくネロの目の前に転がり出した。
その正体は取っ組みあっている二人の人物。
「これでもくらいやがれっっ!!」
止まったとき上に乗っかっていた方がそう叫ぶや、喧嘩相手に思いっきりパンチを叩き込む。
もろに殴りつけられ、相手の男は衝撃で気絶した。
 「へっ。根性のねえ野郎だぜ」
そういうと、喧嘩に勝った方が立ち上がる。
立ち上がったのはキアラ。
顔が微かに赤みを帯びていることから、一杯やったのは間違いなかった。
「ケッ!白けちまったな。飲みな・・・・」
そこまで言いかけ、キアラはネロの姿に気づいた。
 ネロは地面に伸びている男を見やったかと思うと、キアラの方へ視線を向け、ジッと静かに弟子を見つめる。
キアラはゴクリと息を呑んだかと思うと、クルリと踵を返し、脱兎の如き勢いで駆けだした。
ネロは逃げる弟子の背中をジッと見つめているかと思うと、ゆっくりと右手を突き出す。
そして呪文を唱えて意識を逃げるキアラの背中に集中させる。
右手が光ったかと思うや、両端に重りがついた縄が猛烈な勢いで回転しながらキアラの足元目がけて飛んで行った。
ぶえっ!という情けない声と共に足を絡めとられ、キアラは地面に転倒する。
弟子が地面に倒れたのを見るや、ネロはゆっくりとキアラの方へ歩き出した。
「ち・・畜生っ!!」
キアラは魔法でナイフを出すと足に絡みついている重りつきの縄を切ろうとするが、縄は金属製でナイフを幾ら動かしても切れない。
必死にあがいている間にもネロはジリジリと近づいてくる。
キアラは顔を上げてネロの方を見つめたかと思うと、翼をドラゴンの首に変える。
そして、おもむろに光弾をぶっ放した。
 光弾はネロの足元から2メートルの地点に着弾するや、小さな火柱を上げ、土や砂を跳ね飛ばす。
(しくじった!)
目測を誤ったことでキアラは焦り、もう一度撃つ。
だが、焦りが動揺を生み、着弾したのはネロから1メートルの地面だった。
 焦るキアラを尻目に、ネロは立ち止まると冷静な表情のままジッと弟子を見つめる。
弟子同様に片翼をドラゴンの首に変えると、ドラゴンの両眼から赤いレーザーを出す。
二つの光点は地面をスルスルと進んでいったかと思うと、あっという間にキアラの身体に達した。
足首から胴に向かって上昇し、やがて胴の半ばほどで停止する。
己の胴にともった光点を見つめ、ゴクリと息をのむとキアラはネロの顔をジッと見やる。
何の感情もこもっていない能面のような表情。
対して、キアラの額にはジンワリと汗が浮かんでいる。
そのまま、両者は石像と化したかのように動かない。
だが、乱れた息のキアラが両手を使って後ずさろうとした瞬間、ドラゴンの首から電撃を帯びた光弾が放たれた。
命中するや、雷のような電撃がキアラの全身に走る。
「ぐっっ・・・・ちく・・しょう・・・」
キアラは一瞬、苦悶に満ちた表情を浮かべたが、そのままヘナヘナと崩れ落ちたかと思うと気を失った。
 キアラが気を失うのを見届けると、ネロは翼を戻して弟子の元へ行く。
そして弟子を担ぎあげたかと思うと、その場を後にした。


 うっすらと開いたキアラの目に飛び込んできたのは、幌製の天井だった。
「あん・・どこだよ・・?」
キョロキョロとあたりを見回し、自分が幌馬車の荷台にいることに気づく。
(何で・・こんな・・・)
思わず疑念を抱いたそのとき、街での出来事を思い出した。
 「目が覚めたか」
突然声が聞こえ、ハッとしてキアラは荷台の前方、御者席のある方を振り向く。
すると幌をまくって、御者席からネロが入ってきた。
「な・・何の用だ!」
警戒しながらキアラは問いかける。
「話がある・・・」
「俺にゃあ話なんざねえよ!」
キアラは出て行こうとするが、すかさずネロに手を掴まれてしまう。
振りほどこうとするも、まるで石像に手を掴まれているかのようで、微動だにしない。
ついには強引に引っ張られたかと思うと、荷台の床に座り込んでいるネロの膝にうつ伏せにされてしまった。
 「おぃ!待ちやがれ!何する気だよ!?」
自分が置かれた状況に思わずキアラは叫ぶ。
「決まっているだろう、お仕置きだ」
そういうとネロは弟子の上着を捲りあげ、ズボンを降ろしてあっという間にお尻をむき出しにしてしまった。
 「待てコラぁ!何でんなことされなきゃなんねえんだよっ!!」
ジタバタ暴れながらキアラは必死に叫ぶ。
「寄り道はするな。そう言っておいたはずだが?」
「うっせえな!一杯引っかけるぐれぇいいだろうが!!」
キアラは噛みつきそうな勢いでそう言う。
「飲んだくれてクダを巻いた挙句店員を殴り、店の用心棒と喧嘩騒ぎをしてもか?」
ネロの言葉にキアラは一瞬、言葉に詰まる。
キアラを取りあえず幌馬車へ運んでからネロは店へ戻った。
そこで聞いたところによると、キアラは注文するなり猛烈な勢いで飲みまくり、大丈夫かと見かねたバーテンが思わず言葉をかけるや、酔っぱらったせいで逆ギレしてバーテンを殴り倒したのだ。
それを見て店の用心棒が飛び出し、あとは言わずもがなというわけである。
 「うっせえよ・・・」
ムカムカしていたキアラは振り返るや、睨み殺さんばかりにネロを睨みながら言う。
「テメェが悪いんだろうが!俺をパシリ扱いしやがって!何様のつもりだぁ!?テメエがそんなことしなきゃあ俺だってこんなこたぁしねえよ!」
全然反省していない様子で、キアラはそんなことを言った。
 「本気か?」
「ケッ!だったらどうだってんだぁ!?」
「よくわかった・・・」
ネロはそう言うとキアラをしっかりと押さえつける。
ゆっくりと右手を振り上げたかと思うと、弟子のお尻目がけて思いっきり振り下ろした。


 バアッシィ〜ンッッ!!
「ぎ・・!!」
最初から容赦のない一撃にキアラは思わず苦痛の声を漏らす。
バッシィ〜ンッ!ビッダァ〜ンッ!バッチィ〜ンッ!ビッシャ〜ンッ!
「てめ・・ちくしょ・・何しやがるっ!」
キアラはお尻を叩かれながらも罵る。
「仕置きだといったはずだが。聞こえなかったのか?」
バッシィ〜ンッ!ピッシャ〜ンッ!パッア〜ンッ!パッチィ〜ンッ!
「ふざけんなぁ!何でんなことされなきゃなんねえんだっ!」
キアラは暴言を吐くが、ネロは構わず弟子のお尻を叩き続ける。
 バッシィ〜ンッ!ピッシャア〜ンッ!パッアァ〜ンッ!ビッダァ〜ンッ!
「やめ・・畜生っ!やめやがれっ!」
パッシィ〜ンッ!ピッシャ〜ンッ!パッチィ〜ンッ!パッアァ〜ンッ!
 「寄り道はするな。そう言っておいたはずだが?」
弟子のお尻を叩きながら、ネロはお説教を始める。
「うるせえっ!何でテメェの言うことなんざ聞かにゃあなんねんだよっ!」
キアラは非を認めるどころかますます反抗的な態度を見せる。
「お前が俺を気に入らないのは知っている・・・・。だからといって・・反抗は許さん」
バアッシィ〜ンッ!ビッダァ〜ンッ!バアッチィ〜ンッ!ビッシャ〜ンッ!
「うっせえっ!やめろっ!虐待魔っ!鬼畜っ!サドッ!梅毒かぶれの○○レチ○○野郎!てめぇの母ちゃんデベソッ!」
「子供か・・お前は・・。よく舌が回るものだな・・・」
キアラのマシンガンのような暴言に思わずネロは苦笑する。
「うるせえ〜〜!離しやがれ〜〜!!」
キアラは必死に叫ぶが、ネロはそのままお仕置きを続けた。


 「ハァ・・・ハア・・・く・・・・」
キアラはぐったりした様子で、荒い息を吐き、肩を上下させる。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染め上がっていた。
「痛いか?」
ネロが冷静な表情で尋ねると、キアラは振り返ってキッと睨みつける。
「たりめえだろうがっ!殺す気かっ!」
「尻を叩かれた程度では死なん。それより・・・・反省したか?」
「うっせえ!反省することなんざねえよ!」
キアラは強情な態度を崩さない。
「あくまでも自分は悪くないというのか?」
「へんっ!テメェが師匠面して俺をパシリに使いやがるからだよ!俺は悪くねえ!」
「そうか・・。なら・・仕方あるまい・・・」
ネロはやれやれとため息をつくと、片手を荷台の隅に向かって伸ばす。
何やら呪文を唱えたかと思うと、うっすらと手が光り出し、荷台の隅に置かれていた袋の口が緩むや、何かが磁石が引きつけられるようにして飛び出してきた。
 現れたのはやや大きめのモグサの塊。
二つのモグサを魔力で引き寄せたかと思うと、おもむろにネロは赤く染まった弟子の双丘に並べるようにして置く。
「おい!何してんだ!」
何か嫌な予感を覚えたキアラは思わず振り返って叫ぶ。
ネロは構わずに魔力で指先に小さな火を灯すと、モグサに火をつけた。
 お灸のてっぺんが火で赤くなったかと思うと、煙と香りがゆっくりと立ち上る。
(何だよ!何が始まるってぇんだよ!?)
キアラはお灸の香りに思わず身を固くする。
直後、モグサがほんのり温かくなったかと思うや、まるで焼き鏝を押し当てられたかのような熱さが襲ってきた。
「ひ・・ひぃぃぃぃ!!!!」
思わずキアラは両脚をバタつかせ、ネロの膝から這い出そうとする。
だが、ネロは片手でしっかりと押さえつけてしまい、逃げるに逃げられなくなってしまう。
「は・・離せ〜〜〜〜!!!」
キアラは叫ぶが、ネロは押し黙ったまま押さえている。
本能的にキアラはお尻を左右に揺すって落とそうとするが、さらにネロに力強く押さえつけられてしまい、それも不可能になる。
「ひ・・熱・・熱ぃ・・熱い〜〜〜〜〜っっっ!!!」
キアラはプライドも意地もなく叫ぶや、バタバタと手足をもがき動かす。
「や・・やめ・・やめてくれよ〜〜〜〜!!ケ、ケツが焼けるぅぅぅ〜〜〜〜!!」
お尻の熱さに耐えきれず、キアラは許しを乞い始める。
だが、ネロは黙ったまま万力のような力で押さえ続けた。
 「ひ・・や・・やだぁぁぁ!ケ、ケツ・・熱いぃぃぃ!!!」
耐えがたい苦痛にキアラは涙をボロボロとこぼし始める。
「や・・・やめて・・くれよぉぉ・・。お・・俺が・・悪かった・・ってばぁ・・・」
「本心か?」
「ほ・・本心だってぇぇ・・・。お・・俺が悪かっ・・ったぁ・・・。よ・・寄り道も・・しねぇ・・よぉ・・・パ・・パシリも・・ちゃんと・・するぅぅ・・・」
「わかった・・なら・・終わりだ・・・」
ネロはそういうと、ようやくお灸をキアラのお尻からのけた。


 (大丈夫なようだな・・・)
ベッドの上にうつ伏せにぐったりしているキアラを見やりながら、ネロはそう呟いた。
お仕置きから解放されて緊張が緩んだのか、そのままキアラは気を失ってしまった。
それで、帰ってくるなり、ネロは弟子の部屋に運び込み、ベッドに寝かせたのである。
 (寝顔だけは・・・大人しいのだがな・・)
普段の火のような気性からは想像できない穏やかな寝顔に思わずネロは苦笑を浮かべる。
赤ん坊をあやすように数回、頭を撫でたかと思うと、ネロはお尻に冷やしたタオルを載せてやった。


 ―完―

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

家出騒ぎ(楊/玉)


 (注:封神を題材にした二次創作です。キャラのイメージが原作とかなり異なっております。許容出来る方のみご覧ください)


 「だ・・・だから・・わざとじゃ・・・」
玉鼎はおずおずと楊ゼンに弁解する。
「ですが師匠が割ったのは事実でしょう?」
楊ゼンはそう言うと、粉々に砕けてしまった壺の破片を指さす。
玉鼎がうっかり割ってしまい、さらにそれを隠して証拠隠滅しようとしたものだった。
 「さぁ、師匠。わかってらっしゃいますよね?」
楊ゼンはそういうと玉鼎の手を掴む。
「よ、楊ゼン!そ、それだけは!」
「ダメです。師匠が悪いんですから。覚悟して下さい」
玉鼎は抵抗しようとするが、楊ゼンは師の抵抗をものともせず、あっという間に膝に載せてしまうと、慣れた手つきでお尻をむき出しにする。
「や、やめてくれ!私が悪かったから!」
「あきらめが悪いですよ、師匠。さぁ、反省して下さい」
直後、肌を打つ音と共に玉鼎の苦痛の声が上がった。


 「くぅぅ・・痛ぁ・・・」
ソファの上でうつ伏せになったまま、玉鼎は苦痛に顔を顰める。
お尻はまるで消防車のような見事な赤色に染め上がっていた。
ただ割ってしまっただけならともかく、お仕置き逃れに証拠隠滅しようとしたのが仇となり、ワインレッドに染め上がり、顔は涙でグショグショ、幼児のように泣き叫ぶまで叩かれてしまったのだ。
おかげでお尻が痛くてたまらないのだ。
 (そりゃ・・・確かに私が悪いけど・・・。だからってこんなに叩かなくてもいいじゃないか・・)
お尻の痛みと熱に玉鼎はだんだん不満が出てくる。
(そもそも何だっていい年してお尻を叩かれてお仕置きされなきゃならないんだ!?痛いし、恥ずかしいのに!?)
そんな考えがポッと出たかと思うと、あっという間に膨らんでいく。
同時に今までのお仕置きへの不満からだんだん玉鼎は腹が立ってくる。
そのとき、ある考えがよぎった。
(そうだ・・・)
その考えが気に入ったのか、玉鼎は微かに笑みを浮かべる。
やがて、痛みがある程度おさまると、玉鼎は荷造りをしてどこかへ出て行ってしまった。


 それからしばらくしたある日・・・。
太乙が宝貝の整備をしていると、電話の音が鳴り響く。
「はいはい〜、今行くってば〜〜」
太乙はそう呟くと受話器を取る。
 「もしもし?」
「あ、太乙様!急にすみません、楊ゼンです」
「どうかしたのかい?」
「師匠がいらっしゃってませんか?」
「いや、来てないけど。どうかしたのかい?」
「ええ・・。急にいなくなってしまわれたんですよ・・。心当たりを探してるんですが・・・」
「それは大変だねぇ。まぁ私も暇なときに探してみるけど」
「ありがとうございます。ではすいませんでした」
電話が切れると、やれやれといった感じで太乙はため息をつく。
「これでいいのかい?玉鼎?」
そう言って振り向いた先には玉鼎の姿。
「ああ、すまないな、太乙」
「でもさぁ、出来るだけ早いうちに帰ってあげなよ。楊ゼン、本気で心配してるよ?」
「何を言ってるんだ。今帰ったらまたお仕置きだなんだと言われるじゃないか!楊ゼンがお仕置きはしないと約束するまで帰るつもりはないからな!」
玉鼎はそんなことを言う。
そう、普段のお仕置きへの不満が募った末、お仕置きをやめさせるために玉鼎は家出をしてしまったのである。
それで太乙のところへ転がり込んだというわけだ。
太乙も玉鼎の方が悪いとは思ったものの、これ以上無茶をされてはと思ったのか、とりあえず玉鼎を居候させているのである。
ちなみに、最初は太乙も説得しようとしたが、あくまでも頑とした態度を崩さないので、今は諦めている。
「まぁ君が何考えようがいいけどね。でも、私のところにいる間は手伝いくらいはしてもらうよ」
「わかってるよ、それくらい」
「それじゃあ仙丹の原料取りに行ってもらえるかい?私は道徳に宝貝の整備頼まれてるんで手が離せないから」
「ああ。どこまで行けばいいんだ?」
玉鼎が尋ねると、太乙は原料の生えている場所と取ってきてほしいものを言う。
それを聞くと、玉鼎は出かけて行った。
 「全く・・・何してるのかな・・?」
太乙は黄布力士を運転しながら呟く。
とっくに帰ってきてもいい時間のはずなのに、全然帰ってこないので探しに出たのだ。
(まさかどこかで寄り道でもしてるとかないだろうね?)
運転しながら思わずそんなことを考えてしまう。
(それにしても・・・しっかりしてるように見えて・・・手がかかるし・・大人げないし。これじゃあ楊ゼンや道徳がお仕置きするのも無理はないんじゃないかねぇ?)
これまでの玉鼎の行動を振り返り、そんなことを呟くと、やがて玉鼎が来ているはずの山が見えてきた。
 (あれ・・?)
空から山を見つめながら、黒く大きなものが地面に見えることに気づく。
よく見てみると、黄布力士の胴だった。
周りの状況からすると不時着という感じだ。
(まさか・・!?)
表情が強張ったかと思うや、咄嗟に太乙は操縦席内に備えつけの電話をかける。
これ以上、楊ゼンに黙ったままでいるわけにはいかないのは明らかだった。
「あぁ・・・楊ゼンかい?すぐ来てもらえるかい?そう・・実はね・・・」


 目を覚ました玉鼎の目に飛び込んできたのは、見なれた自分の部屋の内装だった。
「あれ・・ここは・・?」
「ああ、気づいたんですね」
目覚めると同時にかけられた声に玉鼎は一瞬、身体を強張らせる。
まさかと思って振り返ってみると、そこには楊ゼンの姿。
 「よ・・楊ゼン・・。何で・・ここに?」
「何言ってるんですか。ここは僕達の家じゃないですか」
玉鼎は再び室内を見回し、自室であることに気づく。
「どうしてって思ってらっしゃるようですね。教えてあげますよ。太乙様がどこかの山で気を失って倒れてる師匠を見つけましてね。それでこれはいかんと思って知らせて下さったんです」
そこまで聞いて玉鼎は思い出す。
太乙に頼まれて仙丹の原料を取りに行ったのはいいが、運転を誤って墜落してしまい、辛うじて不時着した際の衝撃で気を失ってしまったのだ。
 「さて・・・師匠・・覚悟はよろしいですか?」
「か・・覚悟・・?」
楊ゼンの問いに玉鼎は嫌な予感を覚える。
「太乙様に聞きましたよ・・・。お仕置きをやめさせるために家出したそうですねぇ?」
静かだが、怒っていることは間違いない声で楊ゼンは尋ねる。
「そ・・それは・・・」
「師匠・・・そんなことのために家出なんかして散々心配させて・・・しかも危ないような目にまであって・・・ちょっとやそっとで許してもらえるなんて・・思ってませんよね?」
玉鼎は本能的に後ずさろうとする。
だが、楊ゼンは師の手首を捉えたかと思うや、グイッと引っ張る。
あっという間に玉鼎は椅子に座った弟子の膝の上にうつ伏せに載せられてしまっていた。
 玉鼎を膝に載せると、楊ゼンはいつものように上着を捲り上げてズボンを降ろす。
あっという間に玉鼎の白いお尻がむき出しになった。
「よ・・楊ゼン!ま、待ってくれ!」
玉鼎は抵抗しようとするが、楊ゼンは師の長い髪を掴んで前を向かせるという、普段とは違った乱暴な動作を見せる。
髪を引っ張られて無理やり顔を上げさせられているせいか、玉鼎は普段より抵抗するが、楊ゼンがさらにグッと引っ張って抵抗を封じる。
 「よ・・楊ゼン・・離してくれ・・い・・痛いってば・・・」
「ダメです。離したら暴れるでしょう?」
「は・・離してくれたら大人しくする!約束する!」
「ダメなものはダメです。諦めて下さい」
一見静かな表情だが、たっぷりと怒りの籠った声でそう言うと、楊ゼンは右手で玉鼎の髪を掴まえたまま、左手をゆっくりと振り上げる。
そして限界まで振りあげたかと思うと、思いっきり師のお尻目がけて振り下ろした。


 バアッシィィンンン!!!
「うわあっっ!!」
最初から容赦のない一撃に、思わず玉鼎は悲鳴を上げ、全身を強張らせる。
バアシィンッ!ビッダァンッ!バッアァンッ!ビバッジィンッ!
「ひゃ・・ひっ・・あっ・・ひうっ・・・」
音からしていかにも痛そうな平手打ちに、始まったばかりだというのにもう玉鼎は悲鳴を上げている。
ビッシャアンッ!バアッシィンッ!ビッバダァンッ!バアッジィンッ!
「ひっ・・!よ、楊ゼンっ!い、痛い・・ひぃぃ!」
「何言ってるんですか、痛いのは当たり前でしょう?お仕置きなんですから。まだ始まったばかりですよ?」
いささか冷ややかな口調で楊ゼンはそう言いやる。
ビッダァ〜ンッ!バアッジィ〜ンッ!ビッバダァ〜ンッ!バッアァ〜ンッ!
「ひっ・・!そ・・そんなこと・・言ったって・・ぎゃんっっ・・!痛ぁぁっ!!」
ビッシャア〜ンッ!バッジィ〜ンッ!ビバッダァ〜ンッ!ビッジャ〜ンッ!
「痛あっ!楊ゼンっ!痛ああっ!痛いぃぃっっ!!」
激しい平手打ちに玉鼎は叫ぶような悲鳴を上げる。
目には涙が浮かび、頬は上気してほんのり赤く染まっている。
お尻も平手が幾重にも重なって赤く色づいていた。
 「ったく・・いい年して何やってらっしゃるんですか・・本当に・・」
バアッシィ〜ンッ!ビッダァ〜ンッ!バアッジィ〜ンッ!バアッアァ〜ンッ!
容赦ない平手打ちと共に、呆れた口調で楊ゼンはお説教を始める。
「お仕置きをやめさせるための家出なんて・・本当に何考えてるんですか?馬鹿な真似はしないで下さいよ・・・」
バアッジィ〜ンッ!バッシィ〜ンッ!ビッシャア〜ンッ!バアッジィ〜ンッ!
「う・・うるさいなぁ・・・」
苦痛に喘ぎながら、玉鼎は振り向くとそんなことを言った。
「元はと・・いえば・・・道徳や楊ゼンが・・悪いんじゃないか・・・。何かあればお仕置きだなんだって人のお尻叩いて・・。そりゃ・・私が悪いけど・・・だからって・・・だからって・・・私は子供じゃないんだ!!だからお尻なんか叩くんじゃない!!」
今までのうっぷんを晴らそうとするかのように玉鼎は叫んだ。
 「それは・・・本心ですか・・?」
静かな表情のまま、楊ゼンが尋ねる。
「そうだ・・・本心だ・・」
「つまり・・・自分は悪くない・・お尻なんか叩く僕や道徳様が悪いと、本気で思ってらっしゃるのですね?」
「それが・・どうしたんだ・・」
ややふて腐れたような口調で玉鼎は言う。
楊ゼンは一度深呼吸をしたかと思うと、思いっきり左手を叩きつけた。
 バアッジィィィンンンンンンン!!!
「ひぃぃぃぃっっっっ!!」
「いい加減にして下さい!!」
冷静さをかなぐり捨てた楊ゼンは激しい平手打ちと共に師を叱りつける。
「よくわかりました・・・・。師匠が全然反省してらっしゃらないのは・・・」
「よ・・楊ゼン・・?」
危険な雰囲気を察知したのか、玉鼎は恐る恐る話しかける。
だが、いきなり立たせられたかと思うと、まるで囚人でも連行するような荒々しさでテーブルまで引っ立てられるや、突き飛ばされるようにして、テーブルの隅にうつ伏せにさせられてしまった。
 「よ・・楊ゼン・・い・・痛い・・離して・・」
楊ゼンが右手で髪を掴んで引っ張るものだから、思わずそんなことを言う。
だが、楊ゼンはまるで能面のような冷やかな表情を浮かべたまま、あたりを見回す。
すると、ちょうどテーブルに大きなヘアブラシが無造作に置いてあるのを見つけ、それを手に取った。
 「よ・・楊ゼン・・ま・・まさか・・・」
震える声で問いかける玉鼎に楊ゼンは冷ややかな表情のまま答える。
「ええ。これで師匠のお尻をたっぷりとぶってあげます」
その言葉に玉鼎は目を見開いてギクリとするや、慌てて許しを乞い始める。
「や・・やめてくれ!そ、そんなので叩かれたらお尻が壊れる!は、反省してる!だ、だから!」
「さっき僕が悪いっておっしゃってたのはどなたでしたっけ?」
楊ゼンの問いかけに玉鼎は言葉に詰まる。
だが、これから与えられるさらなるお仕置きへの恐怖に、本能的に逃げようとする。
それを見てとるや、楊ゼンはグイッと師の髪を引っ張る。
「ひ・・い・・痛っ!は・・離して・・!」
髪を引っ張られ、無理やり顔を上げさせられる苦痛に玉鼎の抵抗が止まる。
楊ゼンが力を緩めて苦痛が去り、玉鼎がホッとしているところへ、楊ゼンは背中をお尻の方へ向けたヘアブラシを振り下ろした。


 バアッチィィ〜〜〜〜ンンッッッ!!
「ひっっ・・・!!」
ヘアブラシの背を思い切りお尻に叩きつけられ、玉鼎は苦痛に背をのけ反らせる。
ビッダァ〜ンッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバアンッ!!
「ぎゃひぃんっ!!ひっ!ひぎゃっ!ああうっ!ぐあっ!!ひぅぅぅ!!」
豪雨のように短冊のような赤い跡が幾重にも折り重なって玉鼎のお尻に刻み込まれてゆく。
 「ひっ・・!!痛・・・ひうっ・・・痛いっ!!あぐぅ・・!!」
玉鼎の表情は苦痛に歪み、目尻にはジワジワと光るものが浮かんだかと思うと、頬を濡らす。
「痛・・・楊・・ゼン・・痛ぃ・・やああ・・痛い・・・痛いぃぃ・・ひぃん・・やあ・・やあだぁ・・・ひぃん・・・痛ぁぁ・・いぃぃ・・・・」
玉鼎はボロボロと涙をこぼし、苦痛のあまりに身体をよじり、或いはお尻を左右に揺らす。
「師匠、何やってるんですか?逃げようなんて真似は許しませんよ?」
楊ゼンはまるで馬の手綱を引くかのように師の髪を引っ張って顔を上げさせて抵抗を封じる。
「ひっ・・そ・・そんなこと・・してなぁぁ・・いい・・・」
「でしたらちゃんとお尻を出して下さい。それとも・・もっと欲しいですか?」
「す・・する・・・!ちゃんと・・する・・から・・」
玉鼎は必死になってお尻を差し出す。
真っ赤に染まり、腫れ上がったお尻がブルブルと小刻みに震えながらさらなる罰を待っていると、ブラシの背が襲いかかった。
 ビッダァ〜ンッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバァンッッ!!
「ひぎゃあっ!ひっひぃんっ!痛っ!痛ああっ!痛いぃぃっっ!!よ、楊ゼ・・ひぃんっ!」
「泣いたってダメですよ!だいたい今まで何でお尻叩かれてきたと思ってるんです!?師匠が悪い子だったから怒られたんでしょう!?」
激しいブラシ打ちの嵐を師のお尻に降らしながら、怒りの声と共に楊ゼンはお説教をする。
「ひぃん・・・だ・・だけど・・うわぁぁ・・・痛あっ!ひぃんっ!」
「それを何ですか!?お仕置きをやめさせるための家出ですって!?そんな自分勝手な理由でいなくなって!どれだけ人が心配したと思ってるんですか!!」
バアシィ〜ンッ!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「ひぐぅぅ・・・よ・・楊ゼン・・・す・・すまない・・。わ・・私が・・悪か・・ったか・・らぁ・・ひぅぅ・・痛ぁ・・・ひぃん・・痛いぃぃ・・・」
尋常ではない楊ゼンの怒りにさすがに玉鼎もやり過ぎたと思ったのだろう、ようやく謝罪の言葉を口にする。
だが、それでも楊ゼンは容赦なくブラシを叩きつけた。
 「ひぃんっ!うぁぁぁ・・・」
「今さら謝ったって遅いですよ、師匠。散々人に心配はかける、危ない目に会う、自分が悪いのに謝らないで人のせいにする、そんな悪い子はたとえ師匠だろうがまだまだ許しませんよ!!」
「や・・やぁ・・ひ・・ひぃん・・・」
玉鼎は身体を揺らすが、再び楊ゼンが髪を引っ張って抵抗を封じる。
 ビッダァ〜ンッ!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「ひっ・・!ひぃん・・!痛・・痛い・・やめ・・やぁ・・・楊ゼン・・ひぃん・・」
バアッジィ〜ンッ!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバァンッ!
「やめ・・やだ・・許し・・やぁ・・やぁぁ・・ごめん・・楊ゼン・・ひぃん・・ごめ・・ごめん・・ごめん・・なさぁい・・・」
師の口から出た言葉に少しだけ楊ゼンはブラシの勢いを弱める。
「反省してますか?」
「し・・してるぅぅ・・・。も・・もぅ・・こんな・・ことしない・からぁ・・・。ごめん・・なさぁい・・・・」
「約束しますか?」
「するぅ・・絶対・・する・・・・・」
「わかりました。それなら・・・許してあげましょう・・・」
そういうと、ようやく楊ゼンはブラシを振るう手を止める。
髪を掴んでいた手が離されると、安堵したように玉鼎はヘナヘナとテーブルに崩れた。


 「うくぅぅ!!楊ゼンっ!染みる!」
「我慢して下さい、これくらい」
楊ゼンは真っ赤に腫れ上がった玉鼎のお尻に薬を塗りながらそう言う。
「少しは楽になりましたか?」
「ああ・・・。ところで・・頭を撫でるのを・・・やめてくれないか・・・」
楊ゼンの膝にうつ伏せになったまま後ろを振り向くと、玉鼎はそう言う。
片手で薬を塗りながらもう片方の手で玉鼎の頭を撫でていたからだ。
 「不満ですか?」
「当たり前じゃないか・・・。子供じゃないのに・・・」
「お仕置きをやめさせるために家出するなんて子供だと思いますけど?」
「そ・・それは・・・!!だから悪かったって言ってるだろう!」
再び子供扱いされてしまい、玉鼎は不平気に言う。
「はいはい、わかっていますよ」
楊ゼンは再び玉鼎の頭を撫でてやる。
玉鼎はむぅと頬を不満げな表情を浮かべるとプイッと顔をそむける。
その様子に苦笑しつつも、ワガママで手のかかる兄を見守るような温かい表情を浮かべながら、楊ゼンは師のお尻の手当をしていた。

 ―完―

theme : 二次創作
genre : 小説・文学

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