契遼州物語3(ショタ/ショタ)



 第七治安隊隊舎、その奥まった一角に、治安隊長の執務室がある。
室内では、主である近方が、書類の決裁をしていた。
(何だ?)
命令書にハンコを押そうとしていた近方は、執務室へ慌ただしく近づいてくる足音に気づく。
ドンッッ!!
突然、ノックも無しに、いきなりドアが乱暴に開かれた。
 「何の用だ・・?」
ドアの向こうから現れた人物に、近方は露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
やって来たのは、近方と同年代の少年。
藍色の髪と、蒼い瞳をした、美しい面立ちをしている。
少年らしい細身の身体に、黒を基調にした開襟式の軍服と短パン・軍帽・軍用マントを纏っている。
上着の下には、緑色のシャツと黒いネクタイを着込み、日本刀式の軍刀を腰に、左腕に治安隊の指揮官であることを示す腕章を身に着けていた。
 少年の名は佐々原只信(ささはらただのぶ)。
第八治安隊の隊長である。
「ふふ、随分な台詞だね。君と僕との間柄じゃないか」
「ただのいとこ同士だろう。用事が無いなら、帰ったらどうだ?隊長がサボっていて良いのか?」
佐々原の言葉に、近方は不機嫌な声で返す。
二人はいとこ同士だが、近方の方は、佐々原を嫌っている。
 「つれないなぁ。まぁ、そういうところがカワイイけどなぁ。ねぇ、ソウちゃん」
「ソウちゃんなどと呼ぶな!?私は忙しいのだ!?」
近方は苛立った声で言う。
「おぉ、怖い怖い。まぁいいさ。ソウちゃん・・僕は約束を果たしてもらいに来たんだよ」
「約束・・?」
「おやおや?まさか忘れたのかい?」
「忘れてなどいない・・!!」
佐々原の言葉に、近方はさらに不機嫌な声になる。
同時に、数日前のことを思い出していた・・・・。


 数日前・・・。
その日、近方は、管轄区域内の某寺院を訪れていた。
寺院は巡礼地として、地元では有名な場所。
その為、境内は多くの人でごった返していた。
 (話に聞いてはいたが・・・想像以上の賑わいだな・・・)
境内の賑わい振りに、近方はそんなことを思う。
近方は軍服ではなく、詰襟の学生服と短パン、学帽、学生用のインバネスコートを着ている。
今日は非番で、寺院を訪れたのも、観光目的からだ。
 (むむ・・・。さすがに有名なだけあって・・見事なものばかりだな・・・)
壁面や屋根に施された、様々な装飾用の彫刻や絵画の素晴らしさに、近方は感嘆する。
芸術のことはよく知らないが、素人目にも素晴らしいものなのが、見てとれる。
それらの装飾に、近方が思わず見とれていたときだった。
 不意に、甲高い声で何かを唱える声が聞こえてくる。
近方が振り向くと、ガイドに引率された、観光客の一団がやって来るのが見えた。
観光客たちは、近方の方へと近づいてくる。
近方はぶつからないよう、脇へと移動しようとする。
だが、その先に、観光客たちが、ドッと押し寄せてきた。
津波のように押し寄せる観光客らに、近方はおしくらまんじゅう状態になる。
(ま・・まずい!?)
このままでは押しつぶされてしまう。
そんな危機感が頭をよぎった、そのときだった。
 (ん!!??)
近方はお尻に手が当たっていることに気づく。
(押されているせいか・・?)
そう思った直後、いやらしい動きで、お尻を撫で始めた。
 (ち、痴漢だと!?)
こういう大勢の人が集まる場所で、痴漢が現れるのは知っている。
だが、男の自分が狙われるとは、思いもしなかった。
 (く・・!?)
痴漢の手は容赦なく近方のお尻を撫で回す。
まるで毛虫がはい回っているかのような感触に、嫌悪感と屈辱感しか湧いてこない。
(な・・情けない・・!?)
抵抗することも、周囲に助けを求めることも出来ない。
卑劣な変質者に、自分のお尻をいたずらされるがままになっている。
あまりにも悔しくて、情けなくてたまらない。
屈辱感で、近方は思わず身体を震わせる。
そんな近方の姿に、痴漢はさらに攻勢を強める。
 (おい!?まさか!?やめろ!?)
痴漢は何と、ズボンに手を突っ込んできた。
痴漢の手が、直に近方のお尻を触る。
直にお尻を鷲掴みされ、近方の背筋に悪寒が走る。
同時に、胃の中身がこみ上げてきてしまう。
吐きそうになるのを、近方は必死に堪える。
痴漢にあった上に、嫌悪感で吐くなど、あまりにも情けないからだ。
身動き取れず、痴漢のいいようにされている。
そんな状態が、このまま続くのか。
思わず絶望しかけた、そのときだった。
 突然、人間の壁の一角が崩れた。
(今だ!?)
とっさに、近方は崩れたところから、脱出する。
 抜け出した近方が見たのは、治安隊の兵士達に連行される、観光客たちの姿。
制服や腕章のデザインから、第八治安隊だとわかった。
(第八・・・まさか・・)
嫌な予感を覚えつつ、近方はあたりを見回す。
「ふふ・・。奇遇だね、ソウちゃん」
「やはりか・・!?」
佐々原の姿に、近方は表情が険しくなる。
 「そんな顔されるとキツイなぁ。助けてあげたのにな~」
「く・・!そ、そのことは・・礼を言おう・・。不本意だが・・・。助かった・・・」
近方は渋々ながら、礼を言う。
 「ん~?何かあまり誠意が感じられないんだけどな~」
「く・・!どうしろと・・言うのだ!?」
イラッとしそうになるのを、近方は必死に抑えながら尋ねる。
「そうだねぇ。後で・・一つだけ、僕の言うことを聞いてもらう、っていうのはどうかな?」
「一つだけ・・だな?」
「そうだよ~。一つだけだよ~」
佐々原の笑顔に、近方は何か企んでいる、とは感じる。
だが、拒否することは嫌だった。
助けられたことは、事実だ。
要求を拒否すれば、恩知らずになってしまう。
それだけは、軍人としての誇りにかけて、嫌だった。
墓穴を掘るのを承知で、近方は返答をする。
「わかった・・。助けられたのは事実だ・・。お前の望みを聞こう・・。ただし・・本当に一つだけだぞ?」
「ふふ、さすがソウちゃんだね」
佐々原は近方の返事に、満足げに笑みを浮かべる。
そんな佐々原の笑みに、近方は苦々しい表情を浮かべずにはいられなかった。


 数日前のことを思い出し、近方の表情はさらに険しさを増す。
「つまり・・この前の借りを取り立てに来たというわけか・・・」
「まさか・・嫌だなんて、言うつもりなの~?ソウちゃん?」
「そうは言わん!!ちゃんと借りは返す!!」
近方は挑発するような言い方に、思わずそう返してしまう。
 「ふふ・・。それを聞いて安心したよ。さすがソウちゃん、立派な軍人だね」
「こ・・子供扱いするな!?それより・・要求は何なのだ?」
苛立ちを抑えながら、近方は尋ねる。
「ふふ・・・。僕の要求はねぇ・・ソウちゃんだよ。正確には、ソウちゃんのお尻だね」
「な・・何?どういう・・意味だ?」
物凄く嫌な予感を覚えつつ、近方は尋ねる。
「ああ、言葉が足りなかったねえ。ソウちゃん、僕が満足するまで、ソウちゃんをお尻ペンペンさせて欲しいんだよ」
「ふ・・・ふざけるな!?冗談も大概にしろ!!」
「僕は本気だよ?本気でソウちゃんをお尻ペンペンしたいのさ」
「この・・変質者が!?」
近方は思わず言う。
「変質者でも構わないさ。ソウちゃん・・約束をしたのはソウちゃんじゃないか?ソウちゃんは約束も守れない子供なのかい?」
「ち・・違う!?」
「じゃあ、僕との約束も守ってもらおうかなぁ」
「く・・!?」
近方は歯噛みする。
子供っぽいプライドや意地なのはわかっている。
だが、自分が約束をした以上、それを覆すのは嫌だった。
「わ・・わかった・・!!好きに・・するがいい!!」
半ばやけくそで、近方は言う。
「さすがソウちゃん、話がわかる~!じゃあ、さっそく始めようかな~」
佐々原はそう言うと、来客用の椅子に腰を降ろす。
 「さぁ、ソウちゃん。ここに来て」
ニコニコと笑顔で、佐々原は自身の膝を軽く叩いて、呼びかける。
「く・・!」
屈辱感に顔を歪めつつ、近方は佐々原のそばへ行く。
一瞬、佐々原の脇で立ち尽くしたが、覚悟を決めた表情で、佐々原の膝にうつ伏せになった。
 「さすがソウちゃん、いい子いい子」
佐々原は近方の頭を撫でてほめる。
「ば・・馬鹿に・・するな・・!!さっさと始めて・・終わらせたら・・どうだ!?」
「それはソウちゃん次第だね~。フフフ・・・」
佐々原は笑いながら、近方の短パンを降ろす。
 「ああ・・!相変わらず・・可愛いお尻だね・・ソウちゃん」
ウットリした表情を浮かべ、佐々原は近方のお尻を撫で回す。
「ひ・・!や、やめろ・・!?」
痴漢にあったときの嫌悪感を思い出し、近方は全身を震わせる。
「ああ、ごめんごめん。じゃあ・・始めようっかな」
佐々原はそう言うと、ゆっくりと、手を振りかぶった。


 バッシィーンッッ!!
「く・・・!?」
甲高い音と共に、近方のお尻に、鈍い痛みが走る。
近方は思わず顔を顰め、声が漏れてしまう。
(馬鹿者!?何をしている!?)
声を漏らしたことに、近方は思わず自分を叱咤する。
パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!
近方の心理を尻目に、佐々原は立て続けに、平手を振り下ろしてくる。
「・・・!・・・!・・・!・・・!」
近方は声を押し殺し、佐々原の平手打ちに耐える。
 パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!
「ふふ、ソウちゃん、イイ恰好だね。膝の上で、お尻だけ丸出しだなんてね」
近方のお尻を叩きながら、佐々原は言う。
 「く・・!お、お前が・・させたの・・だろうが!?」
「そうだね。でも・・本当に可愛いよぉ、ソウちゃん」
佐々原は愛しさの籠った表情を浮かべて、言う。
パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パチィンッ!
「・・!・・・!・・・!・・・!・・・!・・・!」
近方はお尻に与え続けられる痛みに、必死に耐える。
一打、また一打と、佐々原の手が近方のお尻に叩きつけられる。
そのたびに、近方のお尻に、赤い手形が刻みつけられてゆく。
手形は重なり、近方のお尻を赤く染める。
「ああ~!ソウちゃん、真っ赤なお尻がとってもカワイイよぉぉぉ!!!」
「へ、変なことを言うな!この変態めが!?」
「ああ・・もう!我慢できない!無理!!」
叫ぶように言うと、何と佐々原は近方のお尻の最奥部に、指を突き入れた。
 「ひ・・!?や、やめろ!?この変態!?」
「ああ・・!そうやって・・嫌がるソウちゃんも可愛い!!」
佐々原はだらしない笑みを浮かべながら、さらに近方のお尻にイタズラをしようとする。
「いい加減に・・せんかぁぁぁあ!!!!」
ついに近方は怒りを爆発させる。
膝の上から抜け出すと共に、佐々原を殴りつける。
 「うわっ!何するのさソウちゃん!?」
「それはこちらの台詞だ!?尻叩きだけならまだしも・・痴漢の真似まで・・!!」
近方は怒りを込めて、軍刀を抜き放つ。
「そ、ソウちゃん!ま、待って!ソウちゃんが可愛いからつい・・!!」
「理由になるか!?お前はいつも・・!?」
近方が怒りを佐々原にぶつけようとした、そのときだった。
 ドンッッ!!
突然、ドアが乱暴に開く。
近方も佐々原も思わずドアの方を振り向く。
すると、佐々原に逮捕されたはずの痴漢達の姿があった。
 「お前たちは・・・」
痴漢の姿に近方は嫌悪と怒りをあらわにする。
一方、佐々原は恐怖によるのか、顔から血の気が引いていく。
 「旦那!話が違うじゃないですか!早く報酬を支払って下さいよ!!」
痴漢のリーダーが、佐々原に向かってそんな要求をする。
「お前たち、どういうことだ?」
何かがおかしい。
そのことに気づき、近方が尋ねる。
 「実はこの旦那に頼まれたんですよ!!好きな子を振り向かせるために、痴漢役をやってくれと!!報酬も弾むってね!!それなのに・・牢屋とは話が違いますぜ旦那!!」
「そうか・・・!そういう・・ことだったか・・・」
近方はゆっくりと佐々原の方を振り向く。
近方の表情を見るなり、佐々原は絶望で血の気が引く。
 「ソ、ソウちゃん!ぼ、僕が悪かったから!!で、でも、ソウちゃんのことが好きなのは本当だよ!!」
「貴様の・・歪んだ愛情など・・いらん!!消え失せろ!!」
近方は怒りを込めて、渾身の突きを繰り出す。
直後、壁を突き破り、吹っ飛んでゆく佐々原の姿が目撃された。


 「うう・・!ソウちゃん、愛が痛すぎるよ・・!!」
包帯姿でベッドに横になった姿で、佐々原は嘆く。
(失敗したなぁ・・。でも・・ソウちゃん、僕はどんなに嫌われてもソウちゃんが好きなんだよ!!絶対にソウちゃんを振り向かせてみるからね!!)
近方が聞いたら、再び怒り出しそうな決意を胸に、佐々原は心の中で呟いていた・・。


 ―完―

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契遼州物語2(/ショタ)



 月明かりが照らす中、原野を疾駆する騎馬の一団があった。
先頭に立って、馬を走らせているのは神楽。
神楽の背後には、騎兵銃や回転式拳銃、或いは柳葉刀(りゅうようとう)と呼ばれる、大陸伝統の幅広の刀などで武装した手下達が、付き従っている。
やがて、彼らは、ある谷の入り口までやって来た。
 「ここか・・・・」
目の前にそびえる谷に、神楽は満足げに笑みを浮かべる。
「頭目・・。本当にここに入るんですか?」
部下の一人は、何故か不安げな表情で尋ねる。
「当然じゃないか。何をビクついているのさ、お前たち?」
「しかし・・ここは『毛龍(もうりゅう)の谷』ですよ!!」
馬賊の一人が、思わず大きな声を出して言う。
毛龍とは、契遼州の伝説に登場する魔物。
全身に毛の生えた、巨大な龍の姿をしていると伝えられている。
非常に凶暴で貪欲、見つかったら、人などボリボリと貪り食われてしまう。
そのように、太古から語り伝えられていた。
その毛龍が住み着いている、と伝えられているのが、この谷である。
その為、滅多に入るものはいなかった。
 「馬鹿を言うんじゃない。そんなの、ただの伝説さ。お前たち、それでも契遼馬賊か?おとぎ話なんかに、ビビってるんじゃない!!宝の山を、逃す気なのか!?」
神楽は部下達を叱咤する。
恐ろしい魔物の住む谷、などと信じられていても、中には足を踏み入れる者が時にはいる。
その者達の証言から、この谷には豊かな自然に恵まれていること、そのおかげで、高級毛皮の原料となるテン、漢方薬の最高級の原料である薬用ニンジンなどに恵まれている、ことなども神楽は突き止めていた。
毛皮も、薬用ニンジンも密猟するだけのリスクを冒すだけの価値があるもの。
それに、ここは未だ誰も征服していない、いわば無主の地。
自分が最初の主になる。
それも、未だ少年である神楽にとって、何とも言えない悦びだった。
 「そういうわけでは・・。しかし・・せめて副頭目にも・・・ぐうっっ!!」
途中まで言いかけたところに、神楽の拳が部下の腹に命中する。
少年ながら、馬賊の頭目である神楽だ。
腕が無ければ、荒くれ者ににらみを利かせることなど出来ない。
たった一撃で、屈強な馬賊が地面に倒れ、苦痛に呻く。
「馬鹿言うな!ヤツに話したら、絶対に反対するじゃないか!だから、お前たちだけ連れて来たんじゃないか!!さぁ、グズグズしないで、行くぞ!!」
神楽はそう言うと、谷へ入ってゆく。
ボスを置いてゆくわけにはいかない。
馬賊達は、神楽を追って、谷へと入っていった。


 「頭目!!こんなにありましたよ!!」
手下の一人が、興奮した様子で、地面を指さす。
地面には、薬用ニンジンの花が、これでもかとビッシリ、咲き誇っていた。
手下達は、興奮の息を吐きながら、薬用ニンジンを掘れるだけ掘ってゆく。
「うひょおおお!!こんなに獲れましたよ!!頭目ううう!!」
また別の部下達が、これまた興奮しながら、神楽の元へ駆けつけてくる。
彼らは皆、銃で仕留めたテンを幾つも抱えていた。
 「スゴイですね、本当に宝の山だ!!」
「だから、言ったじゃないか。やっと、わかったのかい?」
分かりきっていたことを言う部下達に、少し呆れたような口調で、神楽は言う。
「まぁいいさ、お前たち、今夜はそろそろ引き上げるよ」
「ええ!?まだこれっぽっちですよ!?」
「あまり欲をかきすぎても、良くない。それに・・・・これ以上は、向こうも焦れてるからねぇ」
何のことかと、部下の一人が尋ねようとしたそのときだった。
突然、神楽は草むら目がけ、拳銃を発砲する。
直後、呻き声と共に、騎兵銃を手にした、治安隊の兵士が、転がり出てきた。
兵士は騎兵銃を抱えたまま倒れる。
直後、馬賊達は銃や刀を構え、あたりを見回す。
 「ふふ・・。いるんだろう、出てきたら、どうだい?」
神楽は、愛用の剣を手にしつつ、笑みを浮かべて言う。
「やはり・・気づいていたか・・・」
声と共に、木陰から、軍刀を手にした近方が現れる。
同時に、隠れていた兵士達も、騎兵銃を構えて、姿を現した。
 「よくわかったねぇ、近方ク~ン、さすがって褒めてあげるよ」
「黙れ!神楽、お前に勝ち目はない!降参せよ!!」
「はぁ?馬鹿なコト、言わないでよね~」
そういうや、神楽は近方目がけ、再度発砲する。
近方は軍刀で銃弾を弾き落とす。
「抵抗するか・・。ならばやむを得・・・・」
発砲命令を近方が下そうとした、そのときだった。
 突然、地響きがあたりに響きわたる。
「何だ・・!?」
近方も、神楽も思わず周囲を見回す。
馬賊も、兵士達も、つられて周りを見回す。
やがて、地響きの主が、姿を現した。
 現れたのは、全長9メートルにもなる、巨大な生物。
太い後ろ足を中心に、身体を水平にし、長い尾を後ろへピンと張った姿勢をしている。
鋭い牙がずらりと並んだ巨大な口と頭とは対照的に、前脚は小さい。
その全身は、20センチ近くある毛に、びっしりと覆われている。
爬虫類的な姿をしながら、哺乳類のように毛に覆われている。
まさに、毛のある龍、という姿だった。
 「も・・毛龍・・!?」
「まさか・・」
神楽や近方をはじめ、全員が驚きのあまり、毛龍をジッと見つめる。
あくまでも、伝説の存在と思っていた。
まさか、実在するとは思わなかった。
だが、そんなことを考えている余裕は、すぐに消える。
突然、毛龍が雄叫びを上げたからだ。
全員、危険を感じる。
直後、その予想は当たった。
毛龍が、たまたま一番近くにいた兵士の一人に、頭からかぶりついたからだ。
骨の砕ける音や肉の引きちぎられる、生々しい音が、その場に響きわたる。
 銜えられた兵士は、最初は口からはみ出た下半身をバタバタさせていた。
やがて、巨大な顎に粉砕された、無残な下半身が、ドスンと地面へ落下する。
兵士も馬賊も関係なく、ただ、呆然とその光景を眺めていた。
だが、再び、毛龍が人間たちを見回すと、我に返る。
「逃げろおおおおおおお!!!!!!!!」
誰かが叫んだ。
その声に、兵士も馬賊も関係なく、我先にと、逃げ出した。
当然、毛龍も獲物である人間たちを追いかける。
人間たちは走りに走る。
毛龍も、自らの食欲を満たすため、必死に追う。
やがて、馬賊の一人が石につまずき、倒れてしまう。
起き上がろうとしたところへ、毛龍の大きな後ろ足が、馬賊を思いきり踏みつける。
絶叫する馬賊を、龍の巨大な口が食らいつき、骨の砕ける音と共に、貪り食った。


 (何とか・・撒けたか・・・・)
毛龍が追ってこないことを確認すると、神楽は安堵の息を吐く。
(まさか・・本当にいるなんて・・・)
あくまでも伝説の存在と思っていた生物が実在したことに、神楽は驚く。
しかも、危うく食われるところだった。
(さっさと・・脱出しないと・・・)
怪物の胃袋に収まるなど、真っ平ごめんだ。
谷の入口へ、向かおうとした、そのときだった。
 突然、木々の間から、サーベルが突きだされる。
咄嗟に、神楽は愛用の剣で受け止める。
「どこへ行く!逃がしはせんぞ!!」
サーベルを構えて迫りながら、近方は言う。
「く・・!しつこいなぁ!!そっちも逃げたらどうだい?毛龍のエサになるよ!?」
「馬鹿を言うな!!あんな獣ごときを恐れて、お前を逃がしてたまるものか!!」
二人は互いに突きを繰り出しながら、そんな会話を交わす。
神楽は何とか間合いを離し、谷から逃げ出そうとする。
近方はそうはさせじと、幾度も突きを繰り出しながら、間合いを保つ。
走りながら、二人は互いに激しい突きの応酬を繰り広げる。
火花と共に、金属がぶつかり合う音が、森に響きわたる。
そんな派手な音を毛龍が見逃すはずがない。
鼻先を血に染めたまま、毛龍は音のする方向を振り向く。
捕食生物ならではの、よく見える目で、毛龍は、斬り合う近方と神楽の姿を認める。
直後、二人の少年目がけ、毛龍は走り出した。
 近づいてくる地響きに、二人の少年は思わず振り向く。
同時に、巨大な龍の口が、二人に襲いかかった。
 とっさに、二人とも、横に飛び退いてかわす。
毛龍は、近方に狙いを定め、近方に喰らいつこうとする。
近方は木々の間を巧みに走り、噛みつかれないようにする。
 (へぇ、ナカナカやるじゃないか)
姿を木陰に隠し、神楽は巧みに身をかわす近方の姿に、感心する。
最初は、この隙に、谷を脱出しようと考えた。
だが、すぐにその考えを捨てる。
毛の生えた大トカゲごときに、近方を食われてはたまらない。
近方は、自分が倒すことに決めているのだ。
その楽しみを守るためだ。
神楽は剣を構えると、毛龍の背後へと近づいてゆく。
幸い、毛龍は完全に近方に気を取られている。
近方も、毛龍の攻撃をかわすのに必死で、神楽には気づいていない。
ある程度の距離まで近づくと、再び、神楽は立ち止まり、両者の様子を伺う。
毛龍は吼えながら、近方に喰らいつこうとする。
近方は軍刀を構え、右に左に巧みに動いて、噛みつきをかわす。
やがて、毛龍に隙が見えたそのときだった。
 神楽は毛龍めがけ、剣を飛ばすように投げつける。
直後、毛龍の片側の後ろ足の太ももに、剣が深々と突き刺さった。
毛龍は苦痛の雄たけびをあげると、片膝を地面について、座り込む。
剣が刺さったのが見えない為、近方は一瞬、困惑する。
だが、すぐに迷いを捨てる。
近方は、片膝をついた毛龍の脇へ回る。
そして、太い首のそばに立つと、裂帛の気合と共に、軍刀を振り下ろした。
手ごたえを感じた直後、近方は飛び退く。
毛龍の太くがっしりした首に、赤い筋が走る。
筋の幅が広がったと見えた直後、鮮血が噴き出した。
毛龍は断末魔の咆哮をあげた後、自らの血だまりに倒れ伏す。
近方は慎重に近づくと、毛龍を数度、軍刀で触れ、死を確認する。
(危なかった・・・む?)
近方は毛龍の太ももに、深々と剣が突き刺さっているのを見つける。
(コレは・・!?)
柄頭にあしらわれた獅子頭の装飾が、神楽のものであることを示していた。
途端に、近方の表情が険しくなる。
逮捕すべき存在である馬賊に、窮地を救われたのだ。
軍人として、何とも恥ずかしいことだ。
しかも、幼児のように尻を叩かれる屈辱を与えられた神楽にだ。
屈辱感で、近方は怒りの炎を燃やさずには、いられなかった。


 (やっと・・・着いたか・・・)
ようやく谷の入口へたどり着き、神楽はホッとする。
だが、自分の馬の傍にいる人物の姿に、ギクリとする。
 「頭目・・。お待ちしておりましたよ」
柔和な微笑を浮かべながら、眼鏡に長衫姿の青年が、神楽に呼びかける。
青年の名は張徹(ちょうてつ)。
獅頭一味の副頭目である。
 「ちょ、張・・・ど、どうして・・ここに?」
神楽は引きつった笑みを浮かべながら、尋ねる。
この谷には、絶対に行ってはいけない。
張に厳しく言われていたからだ。
その言いつけを破ったのだ。
ただでは、すまない。
とっさに、神楽は獅子頭の形をした、小さな分銅を、張目がけて、投げつける。
だが、張はそれを簡単に受け止めてしまう。
「おやおや?いけませんね~。いきなり暴力なんてね~。幾ら頭目でも、見逃せませんね~」
「ちょ、張・・。ちょ、ちょっとした遊び心だったんだよ。だ・・だからさ・・・」
神楽は後ずさりしながら、弁解する。
「『遊び心』?そのせいで、部下を何人も犠牲にしているんですよ?それに・・下手をすれば、頭目自身も毛龍に食い殺されていたかもしれないんですよ?」
目が笑っていない、怒りのこもった微笑を浮かべながら、張はジリジリと主人との間合いを詰めてゆく。
追いつめられた神楽は、何と、張目がけ、飛びかかる。
飛びかかると同時に、副頭目の顔面目がけ、パンチを繰り出した。
 だが、神楽の突きは難なく受け止められてしまう。
「おやおや?いけませんね~。これは、お仕置き確定ですね」
そういうと同時に、張は神楽のみぞおちに打撃を入れる。
直後、神楽はそのまま、気を失った。


 バッチィィーーンンン!!!
「ひいいいいんんっっ!!ごめんなさぁぁあああいいいい!!!」
パドルが叩きつけられると同時に、神楽の悲鳴が上がる。
神楽のお尻は、既にサルのように、真っ赤に染め上がっていた。
 バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!
「ひいいっ!張っ!ごめんなさいっ!やめてぇぇ!!ごめんなさいっ!!」
「頭目、言ったはずですよ~。毛龍の谷は、危険ですから、絶対に行ってはいけませんとね~。それなのに、何で約束破ったんですか~?」
泣き叫びながら、必死に謝る神楽に、どこか楽しげな表情で、張はパドルを振り下ろす。
「ひぃぃん!だ、ダメって言われれば、い、行ってみたく・・なるじゃ・・ないかぁあ~~っ!!」
「それが理由になりますか~?頭目のその気まぐれの為に、何人の部下が死にましたかね~?それに、頭目も危うく食われるところだったかも、しれないんですよ~?」
バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!バシィンッ!笑顔のまま、容赦なく張は神楽のお尻を叩く。
「だ、だからごめんなさぁああいい!!も、もう、しないからぁぁぁ!!」
「もうしない、のは当然ですよ~。悪い子な頭目のお尻には、まだまだ反省が必要ですね~。あと100回は叩いて差し上げましょう~」
「そ・・そんなぁぁぁぁ!!!」
絶望の声を上げる神楽のお尻に、容赦なく張のパドルが振り下ろされる。
その後、長い間、神楽の悲鳴が響いていた・・。


 同じ頃・・・。
バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「う・・!くぅ・・!くっ・・!ううく・・!!」
苦悶の表情を浮かべながらも、近方は必死に耐える。
近方は机にうつ伏せになり、お尻を突き出している。
ズボンを降ろされ、むき出しにされたお尻に、容赦なく『精神注入棒』と刻まれた棒が叩きつけられる。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「全く・・近方隊長、君ともあろう者が・・賊を取り逃がすなど・・」
「も・・申し訳ありません・・!!総督閣下・・!!く・・!?」
苦悶の表情を浮かべつつ、近方は総督に謝る。
神楽逮捕に失敗した罰として、注入棒による尻打ちを受けているところだった。
バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!ババシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!シンッ!
「謝れば、よいというものではないのだよ?ヤツは開拓地の脅威なのだ。その脅威をのがしてしまうなど・・!!二度と失敗せぬよう、身に沁みて反省したまえ」
バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
総督の非情な声と共に、近方のお尻に、容赦なく精神注入棒が叩きつけられる。
「くうっ!ああっ!くあああ!申し訳・・ありません!!くっ!ああっ!くあああ!!」
その後、長い長い間、お尻を叩く音と、近方の苦悶の声が響き続けた・・・。


 ―完―

契遼州物語(ショタ/ショタ)


 太陽が昇る神木をシンボルとする、東方の島国『扶桑国(ふそうこく)』
その北方、海を越えた大陸のさらに北部に広がる契遼洲(きつりょうしゅう)地方。
扶桑国の何十倍もの広い荒野や草原が広がるこの地域の一角に、その村はあった。
 村は周りをしっかりと防壁で取り囲み、唯一の出入り口である門には、猟銃を構えた村人二人が、番人のように、門上の見張り台に立っている。
見張り台に掲げられた、太陽が昇る神木の旗が、扶桑国の開拓村であることを示していた。
 「ふぁぁ・・・」
「おぃ!真面目にやれよ!!」
若い見張りのあくびに、年長の村人が、思わず叱りつける。
 「んなこと言ったって・・退屈なんだから、仕方ないじゃないですか」
「馬鹿野郎!そんなたるんだこと言ってんじゃない!!馬賊共に襲われたら、どうするんだ!!」
若者のだらけた態度に、年長の村人は怒る。
契遼洲の治安は、決して良いものではない。
かつての主だった、大陸の帝国が、戦争によって手離して以来、勢力拡大を狙う周辺諸国による争いが絶えない。
それは無法者の跳梁跋扈を呼び、そこに住む人々は、自分達で身を守ることを迫られた。
防塁や見張り台に守られた村も、猟銃などで武装した開拓者の姿も、契遼洲では当たり前の光景であった。
「そんなこと言っても・・・退屈なんだか・・・」
若者が弁解しようとしたとき、鈍い音がする。
直後、年長の村人が倒れた。
「あれ!?どうし・・あうっ!?」
顔面に鈍い痛みを覚えると同時に、若者は足を投げ出すように、倒れる。
倒れた若者の顔からは、石が転がり落ちた。
 直後、暗闇の中から、馬に乗った複数の人影が現れる。
馬賊の一団だ。
馬賊たちは馬を進め、村の門へと近づいてゆく。
門前までやって来ると、頭目の指図で、馬賊たちは鉤縄を引っかけ、スルスルと門を昇って超えてゆく。
門を開けると、馬賊たちは、村へと侵入した。
 馬賊たちが村へ踏み込んだ直後、複数の光が、馬賊たちを照らす。
「待っていたぞ・・!!馬賊共!!」
ライトの照らす中、凛とした声と共に、声の主が姿を現した。
 声の主は、13歳前後の少年。
黒曜石のような、美しい艶の黒髪と瞳の持ち主で、少年らしいあどけなさの中にも、凛々しさを感じさせる面立ちをしている。
黒を基調にした軍用マントに、緑を基調にした扶桑国軍の折襟式軍服を身にまとっているが、少年だからか、ズボンは丈の短い、濃い緑色の短パンを履いている。
代わりに、黒いハイソックスと軍靴で、足を覆っていた。
 「だ・・誰だお前は!?さっさとどけ、ガキ!!」
「契遼駐屯軍第七治安隊隊長、近方総司郎(ちかかたそうじろう)である!!武器を捨て、大人しく縛につけ!!」
近方と名乗った少年は、抜き打ちの体勢でサーベル式の軍刀を構えつつ、馬賊たちに命令する。
 「第七治安隊・・近方だと!?」
近方の名乗りに、馬賊たちの表情が変わる。
治安隊はその名の通り、開拓地の治安維持を任務とする部隊。
無法者である馬賊たちにとっては、宿敵だ。
中でも、第七治安隊を率いる近方は、少年ながらも、馬賊の討伐に幾度も実績を上げている。
それこそ、馬賊仲間の間で、賞金が掛けられるほどに。
 「しゃらくせえ!ガキのくせに!!」
馬賊達は激昂し、一斉に拳銃を発砲する。
多数の銃弾が、近方目がけ、襲いかかる。
だが、近方は避けようとしない。
 不意に、軍刀の鞘から、閃光が迸った。
閃光は近方の前で、縦横無尽に、幾重にも重なって走る。
直後、近方めがけて放たれた銃弾が、悉く弾き返された。
 はじき返された銃弾は、馬賊達へと帰ってゆく。
「ぎゃっ!」
「ひぃえっ!?」
一部の馬賊達は、悲鳴と共に、帰って来た銃弾の餌食になる。
その衝撃で陣形が崩れたところへ、近方が突入する。
軍刀が弧を描いて煌めくたび、馬賊達は倒れてゆく。
ある者は腕を、またある者は脚を、別の者は顔を押さえて、呻いている。
 「残るは・・貴様一人だぞ。どうする?」
唯一、無傷で立っている頭目に軍刀を突きつけながら、近方は尋ねるように言う。
部下達は倒され、近方の部下や、村人達もそれぞれライフルや猟銃を構えて、馬賊達を取り囲んでいる。
もはや、残された選択肢は一つしかない。
頭目は、諦めた表情で、銃を捨てる。
直後、兵士達が殺到し、頭目を拘束した。


 それからしばらく経ったある日・・・。
「近方総司郎、只今出頭いたしました」
「うむ、待っていたぞ、近方隊長」
敬礼と共に挨拶をする近方に、上官がそう返す。
 「先日はよくやってくれた。おかげで、開拓地の頭痛の種が一つ減った」
「いえ、当然のことをしたまでです。それより、何のご用件ですか?」
「うむ・・。実はだな・・先日、君が捕えた馬賊達だが・・・。彼らに逃亡されてしまったのだよ」
「な・・!?どういうことです!?」
近方は思わず声を上げる。
 「情けないことだが・・・護送中に、別の馬賊団に襲撃され、まんまと奪われてしまったのだ」
「何と・・犯人はわかっているのですか!?」
「これが・・・現場に残されていた・・・・」
上官はそう言って、あるものを机上に置く。
置かれたのは、獅子頭をモチーフにしたアクセサリー。
 「これは・・!?」
「そうだ。『獅頭』一味だ」
上官の言葉に、近方の表情はさらに緊張の度を強める。
『獅頭』とは、ここ最近、契遼州を騒がせている馬賊の一味。
自分達の犯行現場に、獅子頭をモチーフにしたアクセサリーを置いてゆくため、その名がつけられた。
 「奴らが・・ついに・・・現れたのですね・・・」
「そうだ。近方隊長、獅頭一味の捜査を君に命じる。くれぐれも頼んだぞ」
「はっ!お任せ下さい!我が身命に代えましても!!」
敬礼をしつつ、近方はそう返事をする。
その後、慌ただしく、上官の執務室を後にした。


 それからしばらく経ったある日・・・・。
(して・・やられた・・!?)
汚れが目立つ壁に身をひそめつつ、近方は歯噛みする。
捜査の結果、ようやく一味に関する手がかりを掴むことが出来た。
その手掛かりに基づき、部下と共に出動したまではよかった。
だが、その情報は、敵の罠だった。
待ち伏せを受け、部隊はほぼ壊滅してしまった。
近方も、廃墟となった寺院に追い込まれてしまっていた。
 (皆済まぬ・・!!私のミスのせいで・・!!)
心の中で、近方は犠牲となった部下達に詫びる。
(だが・・決して皆の犠牲を無駄にはせぬぞ・・!!)
一味のうち、何人かの顔はしっかりと確認した。
必ず生き延び、一味を壊滅させる。
その思いが近方に、力を与えていた。
 近方は、入口の方をジッと見つめる。
耳を澄ますと、微かな息遣いが、近づいてくるのに気づく。
(来たな・・!!)
敵が寺院内に踏み込んできたことを察知し、近方の表情が緊迫したものになる。
近方は傍らの像の陰へと身をひそめ、様子を伺う。
やがて、二人の馬賊が、姿を現した。
二人とも、六連発の回転式拳銃を手にしている。
馬賊達は近方の姿を求め、寺院内を見回す。
 「おぃ、私はこっちだぞ」
声に反応し、思わず馬賊達は振り向く。
直後、近方の軍刀が一閃する。
近方の近くにいた馬賊が、苦悶の声と共にのけ反って倒れる。
もう一人の馬賊が発砲するが、近方はそれを見切ってかわす。
直後、近方はグッと踏み込みながらもう一人の馬賊に突きかかる。
軍刀の突きを食らい、もう一人の馬賊も、絶命した。
 「ふふ・・。中々やるじゃないか、さすが音に聞こえた近方総司郎だね」
不意に聞こえた声に、近方は軍刀を突きつけるように構えながら、振り返る。
視線と切っ先の先には、近方と同年代の少年が立っていた。
 少年は紺を基調にした、学帽風の帽子に長袖の上着と丈の短い半ズボンを身にまとっている。
琥珀のような美しい瞳の持ち主で、映画俳優顔負けの整った面立ちをしている。
左肩には、担ぐように、獅子頭を乗せていた。
 「何者だ?もしや・・・」
少年が肩に乗せている獅子頭に、近方の表情が険しくなる。
「ふふ、ご明察だね。そう・・僕が『獅頭』の頭目・神楽修市(かぐらしゅういち)、馬賊名神舞(しんぶ)さ」
「貴様が・・。しかし・・まさか扶桑人だったとは・・・」
「意外かい?でも・・それが契遼州さ。野心と実力さえあれば、民族も出身も関係ない。僕は、この契遼の王になるのさ」
「世迷言はそれまでにしてもらおう。例え扶桑人でも・・開拓地の脅威になる者は・・斬る!!」
気迫と共に、近方は神楽に斬りかかる。
対して、神楽は獅子頭を両手で構える。
獅子頭が口を開くや、催涙スプレーが思いきり噴射された。
 「く・・!?」
咄嗟に近方はマントを使って噴射を防ぐ。
近方の動きが止まったところへ、神楽が襲いかかる。
神楽の手には、柄頭に獅子頭の装飾が施された、両刃の真っすぐな剣が握られている。
近方は突き出された剣を、軍刀で受け止める。
刃と刃がかみ合い、互いに相手を押しのけようとする。
鍔迫り合いを繰り広げながら、社交ダンスのように、二人は目まぐるしく位置を入れ替える。
やがて、近方の方が押し始める。
「ハアッっ!!」
気合と共に、近方が神楽を押しのける。
後ろへ体勢が崩れたところへ、近方がさらに斬り込む。
だが、神楽は横へ回り込むように動いて、かわしてしまう。
(しまった!?)
近方はミスを誘った神楽の罠だったことに気づく。
軍刀の切っ先が床を叩くと同時に、近方は後頭部に鈍い衝撃を覚える。
直後、近方の目の前は暗闇と化し、そのまま意識を失った。


 目を覚ますと同時に、近方は床が目の前に迫っているのが見えた。
さらに、目の前に大きな鏡が置かれていることに気づく。
鏡に映し出される近方の姿は、何とも奇妙なものだった。
 近方はZ字のような形で、床に膝をつき、身体を前方に折り曲げた姿勢で、板に拘束されている。
板には両方の手首と足首、そしてお尻が拘束されている。
ご丁寧にも、お尻側にも鏡が置かれているため、鏡を通して、拘束されたお尻が近方にも見える。
拘束されたお尻は、短パンは勿論、下着も脱がされているため、最奥部の恥ずかしい部分まで丸見えだった。
 「な・・何だコレは!?」
「『反省板』っていうやつさ。お尻を無様にさらした恥ずかしい姿でさらしものにして、反省させるためのやつさ」
近方の目の前に、勝ち誇った表情で、神楽が現れる。
 「く・・貴様!外さぬか!?」
「そうはいかないねぇ。それにしても・・フフフ、可愛くて、綺麗なお尻だねぇ」
神楽は笑みを浮かべると、近方のお尻を撫でまわす。
「ひ・・!?やめぬか!?貴様!!この変態!?」
神楽の痴漢行為に、近方は嫌悪感と怒りをあらわにする。
「ああ・・。その怒った顔も可愛いなあ。でも・・もっと別の可愛い顔が見たいんだよね」
神楽はそう言うと、おもむろに手を振りかぶった。
 バッシィーーンンッッ!!
神楽は、拘束された近方のお尻目がけ、思いきり平手を叩きつける。
「ぐ・・!?」
弾けるような音と共に、近方のお尻に鈍い痛みが走る。
お尻の痛みに、思わず近方は苦悶の声を漏らしてしまう。
 「おや?痛いのかな?」
「ば・・馬鹿にするな!こ、この程度・・痛くも痒くもない!!」
小馬鹿にしたような、神楽の声に、近方は思わず言い返す。
「ふふ、じゃあ、100叩きくらいしても、大丈夫だよねぇ」
(100だと・・!?)
神楽の声に、近方は愕然とする。
そんなに叩かれたら、お尻がどうにかなってしまう。
だが、そんなことは決して言えない。
開拓地の治安を守る軍人として、馬賊などに屈するなど、許されないことだからだ。
自身の首を絞めるのを承知で、近方はこう言うしなかった。
「やれるものなら、やってみるがいい!!私は決して貴様には屈服せぬぞ!!」
「言うねぇ。じゃあ、お言葉に甘えて、行きますか!!」
近方の強がりに、神楽は笑みを浮かべる。
そして、再び手を振り上げた。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「・・!・・・!・・・!・・・!」
拘束されたお尻に、容赦ない平手打ちが、何度も何度も叩きつけられる。
顔が苦痛で歪むも、近方は必死に声を押し殺す。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「ふふふ、無様だね。惨めだね。情けないねぇ。こんな恥ずかしい格好で、幼稚園児みたいに、お尻ぶたれてるなんてねぇ。ほらほら~、お尻が猿みたいに赤くなってるよ~」
お尻を叩きながら、神楽は言葉でも近方を攻めたてる。
鏡に映るお尻が見えるように、神楽は近方の頭を持ち上げる。
「う・・うるさい・・!しゃべる・・な・・!?」
「もう・・反抗的だねぇ。そんな悪い子には・・コレでお仕置きしてあげるよ」
神楽はそういうと、今度は鋲付きのパドルを取り出す。
 バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
「が・・!?ううあああ!!!」
平手打ちとは、まるで比べ物にならない激痛に、近方は絶叫する。
一撃でお尻の皮が破れ、血がにじんだ。
「あれ~?痛い?泣いちゃうのかな?」
「ば・・馬鹿に・・す・・うわああああ!!ああああ!!」
反論しかけたところに、再度パドルを叩きつけられ、近方は絶叫する。
 「ほらほら、どうする?『ごめんなさい。もう二度と僕たちの邪魔はしません』って謝れば、あと100叩きくらいで許してあげるよ」
「ふざけ・・るな!!貴様ら馬賊とは取引も・・屈服もせん!!」
「そう。じゃあ、僕も許してなんてあげない。幾ら泣いても叫んでも、倍の200回は叩いてあげるよ」
残酷な笑みを浮かべて、神楽はパドルを振り下ろす。
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
「うっあああああああああああ!!!!!!!!」
その後、長い長い間、近方の悲鳴が寺院内に響いていた・・・・。


 「ふう~っ!本当に・・スゴイなぁ。全然屈服しなかったよ」
血で赤くなったパドルを投げ捨てながら、神楽は感心した表情で言う。
近方はパドル打ちの嵐で、完全に気を失っている。
100回以上叩かれたお尻は、皮が破れ、血が滲んで痛々しい有様になっていた。
だが、そんな責め苦を受けながらも、近方は神楽に屈することは無かった。
 「お頭・・・。コイツをどうしますか?」
コトが終わったのを察し、拳銃を手にした手下達が入って来る。
「このままでいいよ。最初から殺すつもりなんて無いし」
「ですが、このまま放っておけば、間違いなくお頭を仇と付け狙いますぞ」
「いいんだよ。僕はいずれこの契遼州の王になる。ライバルがいなくちゃ、面白くない。近方なら、僕の最高のゲーム相手になってくれるだろうしね」
笑みを浮かべて、神楽はそう言うと、部下達と共に、その場を後にする。
反省板に拘束され、痛々しいお尻をさらしたままの近方の脇に、自分達の犯行であることを示す、獅子頭を置いて・・・。


 後日・・・。
「く・・・!?」
近方は顔を顰め、思わずお尻をさする。
(く・・!何と情けない・・!尻を叩かれた程度で・・歩くのも差しつかえるなど・・!?)
未だお尻の痛みに悩まされる自身を、近方は叱咤する。
(必ず・・捕えてみせる・・!!絶対に・・後悔させてやるぞ!!)
不敵な笑みを浮かべる神楽の手配書を見つめたかと思うと、近方は手配書を頭上へ投げ上げる。
直後、軍刀が一閃し、手配書を真っ二つにした。


 ―完―

聖女の企み、騎士の受難(エルレイン/クロエ、共演パロ)



(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにした、SO2&テイルズ共演パロです。許容できる方のみご覧下さい)


ティアがエルレインに告白し、義母娘になった世界でのお話・・・。


 「母さん、どうしたのかしら?何か考え事をしてるみたいだけど?」
物思いにふけっているようなエルレインに、思わずティアは尋ねる。
「ええ・・。実はちょっと面白いことを思いつきましてねぇ」
「面白いこと?」
「ええ。クロエのことです。クロエをお尻ペンペンしたら、とても面白そうだと思いましてね」
「まぁ・・!それは素晴らしいわ!?」
ティアは思わず興奮する。
お仕置きマニアなティアにとって、他人がお仕置きされる姿を見るのも、何よりの楽しみだった。
「母さん!絶対にいい考えだわ!!是非、やりましょう!?」
「そう言ってくれると思いましたよ。では・・・・」
既に策を考えていたのだろう、エルレインはティアに耳打ちする。
「なるほど・・。さすが母さんだわ・・!!それで行きましょう!!」
「では・・・頼みましたよ、ティア」
「任せて!!きっと上手くやってみせるわ!!」
そう言って、部屋を後にしたティアの態度に、エルレインは満足そうに、笑みを浮かべた。


 数日後の夜・・・・・。
「ふむ・・・。異常は無しだな・・・」
宝物蔵の内部を確認し終えると、クロエは呟くように言う。
クロエがここにいるのは、宝物蔵の警備の為。
ティアを通じて、警備の依頼を受けたのである。
 「む・・?誰だ!?」
気配を感じ、クロエは思わず剣を構える。
「私よ。剣をしまってくれないかしら?」
「す、すまぬ!?つい、気配を感じたのでな・・・」
クロエは謝りながら、剣をしまう。
 「いいのよ。あなたは依頼を果たそうとしてるだけだし。それより、差し入れよ」
ティアはそう言うと、お茶と弁当を差し出す。
「すまぬな。感謝する」
「いいのよ。夜は長いから。お疲れ様」
ティアはそう言うと、弁当とお茶を置いて、蔵を後にする。
だが、クロエから姿が見えなくなると、密かに物陰から、様子を伺う。
ティアは、クロエが差し入れの弁当を全部食べてからも、ジッと様子を確認している。
やがて、クロエがだんだん、うつらうつらとし始めた。
クロエは自身の頬を叩くなど、眠気を追い払おうとする。
だが、眠気はあまりにも強力だった。
ついに、クロエはズルズルと床に崩れ落ち、そのまま眠り込んでしまった。
 ティアは慎重にクロエに近づく。
頬を何度か強めに叩いてみたが、クロエは起きない。
完全に眠り込んだことを確認すると、ティアは守備兵を数人、中へ呼び入れる。
守備兵達は、ワザと足跡を残して、貴重な宝物数点を、蔵から運び出す。
「コレで・・OKだわ。起きてからが、楽しみだわ」
ティアは寝ているクロエを見下ろすと、笑みを浮かべ、その場を後にした。


 翌日・・・。
「本当に・・申し訳ございません・・・!!」
クロエは全身を震わせながら、必死に謝る。
不覚にも眠り込んでしまい、おめおめと宝物数点を盗まれてしまったのだ。
謝っても、謝りきれるものではない。
 「いえ、あなたが無事で幸いでした。宝物は取り返すことも出来ますからね」
エルレインは責めることなく、優しい口調で慰める。
この方が、クロエの罪悪感を、より煽ることが出来るからだ。
案の定、クロエの表情が、より罪悪感で歪む。
「ですが・・騎士としてあるまじき失態・・!!私は・・自分が・・情けない・・!!エルレイン様にも・・申し訳が・・・」
「なるほど・・・。では、ここで懺悔してはどうですか?」
「懺悔?」
「そうです。懺悔をした上で、お仕置きとお説教を受けて、反省する。今のあなたには、それが必要です」
「う・・うむ・・。だが・・お仕置きというのは・・どんなものなのです?」
「ふふ・・。それは『お尻ペンペン』と決まっています」
「な・・!?」
クロエは驚く。
まさか、そんなお仕置きとは、思いもしなかったからだ。
 (お・・お尻ペンペンだと・・・!?そんな・・まさか・・・!?)
幼児のようなお仕置きをされる自分の姿を想像し、クロエは羞恥に顔を赤くする。
(そんなお仕置きなど・・・。だが・・!?)
自身の失態のせいで、エルレインや大聖堂に、大きな損失を与えてしまった。
そのことが、クロエに重くのしかかる。
 お尻ペンペンは恥ずかしい。
だが、自身の罪から逃げるのは、もっと嫌だった。
クロエはしばらく思い悩む。
やがて、意を決した表情を浮かべると、エルレインの方をジッと見つめる。
 「わかりました・・!!エルレイン様・・!!懺悔・・させて・・下さい・・!!」
「本当に、よろしいのですか?」
「はい・・!!私に・・その・・お尻ペンペンの罰をお願いします!!」
「では、クロエ。こちらへいらっしゃい」
エルレインは膝を軽く叩いて、呼びかける。
自分から願い出ただけに、クロエは素直に、エルレインの元へ行く。
そして、そのまま、静かに膝の上にうつ伏せになった。
 「良い子ですね、さすがです」
エルレインはクロエの頭を優しく撫でて、褒める。
「い・・言わないで・・下さい・・!?」
子供扱いされたためか、クロエは羞恥に顔を赤くして、身を震わせる。
「わあっ!?」
突然、クロエは声を上げる。
いきなり、ズボンを降ろされ、お尻をむき出しにされたからだ。
 「エ、エルレイン様!な、何を・・!?」
「おや、これは言い忘れました。お仕置きは、裸のお尻にします」
「エ・・エルレイン様・・せ、せめて・・・」
「なりません。恥ずかしいのも、お仕置きのうちです。懺悔したいと言ったのは、あなたでしょう?」
「う・・!?わかり・・ました・・」
クロエは羞恥に顔を赤くしつつ、観念して、うなだれる。
「では・・行きますよ。しっかりと、反省しなさい」
羞恥に身を震わせるクロエに、エルレインは宣告する。
エルレインは、ゆっくりと手を振り上げると、クロエのお尻目がけ、思いきり手を振り下ろした。


 バッシィィーーーンンンンッッッ!!!
「・・・!?」
弾けるような音と共に、クロエのお尻に鈍い衝撃が走る。
クロエは思わず身を強ばらせる。
パンッ!パァンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
間髪入れずに、最初よりは弱めの打撃が、連続で、クロエのお尻に叩きつけられる。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「・・!・・!・・!?・・・!!?」
エルレインの平手がクロエのお尻に振り下ろされるたび、クロエの表情が歪む。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「クロエ・・あなたはいけない子ですねぇ・・・」
お尻を叩きながら、エルレインはお説教を始める。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「・・ぅ・・・ぁ・・・ぅ・・ぁ・・・・ぁ・・くぅぁ・・・」
お尻を叩く音が重なるうち、クロエの口から少しずつ、苦痛の声が漏れ始める。
クロエのお尻は赤い手形が幾つも刻み込まれ、だんだんと色づき始める。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「あなたを信頼したからこそ、警備の仕事を依頼したのですよ。それなのに・・・仕事中に眠り込んでしまうなど・・・」
「も・・申し訳・・ありま・・く!う・・!くぅ・・!あっく・・!」
お尻を叩きながら、エルレインはお説教を続ける。
クロエは謝りながら、苦痛の声を漏らす。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「その為に、大聖堂の大切な品々が、賊に奪われてしまいました。あなたの失敗が原因なのですよ。わかっていますか?」
「わ・・わかって・・います!も・・申し訳・・ぐっ!くっ!ううっ・・!!」
「おやおや?痛いのですか?」
苦悶の声を上げるクロエに、エルレインは問いかける。
もちろん、その間も容赦なくお尻を叩き続ける。
 「き・・聞かないで・・下さい・・!?」
クロエは羞恥に顔を赤くする。
騎士としての名誉やプライドを重んじるクロエにとって、お尻叩きが痛い、などとはとても言えないからだ。
そんなクロエの様子に、エルレインは微かに笑みを浮かべる。
 「おや、どうやらまだ余裕があるようですねぇ。ということは、あなたには、まだまだ反省が必要ですねぇ」
「そ・・そんな!?」
クロエは思わず声を出してしまう。
今でも、本当は辛いのだ。
これ以上、叩かれたら耐えられない。
 「おや?まさか、ちゃんと反省出来ないのですか?」
「い・・いえ!ち、違います!!」
クロエはすぐに否定する。
「では、いきますよ。今から100回、お尻を叩きます。叩くごとに、ちゃんと数を数えて『ごめんなさい』するのですよ」
「そ・・そんな・・!?」
クロエはまた、声を出してしまう。
100回叩かれるのは確かに辛い。
だが、それ以上に、数を数えて『ごめんなさい』するのは、何よりも恥ずかしかった。
 「クロエ・・・。まさか、出来ないのですか?」
「い・・いえ!で・・出来ます!!」
見えない圧力に、思わずクロエは言ってしまう。
「では、言った通りにするのですよ」
エルレインは密かに笑みを浮かべる。
墓穴を掘ったクロエは、黙って頷くしか無かった。
 バシィーンッ!!
「く・・・!い、1・・!ご・・ごめん・・ごめん・・なさい・・・」
クロエは羞恥を堪え、言われた通りにする。
「クロエ、声が小さいですよ?はっきり聞こえなくては、カウントしません。やり直しです!」
バシィーンッ!!
エルレインはクロエを叱りながら、平手を叩きつける。
「く・・!い、1・・ご・・ごめん・・なさい!!」
今までより強烈な平手打ちに、苦悶の声を上げるも、クロエは言われた通りにする。
バシィーンッ!バシィーンッ!バシィーンッ!
「2・・ごめん・・なさい!3・・ごめ・・ん・・なさい・・!あっ!4・・ごめん・・なさい・・!」
羞恥と苦痛に身を震わせながら、クロエは数を数え、『ごめんなさい』と謝り続ける。
バシィーンッ!バシィーンッ!バシィーンッ!
「5・・ああっ!ごめん・・なさい・・!6・・うっく!ごめ・・ん・・な・・さい!7っ!ああっ!ごめん・・なさ・・い・・!!」
その後、100数え終えるまで、お尻を叩く音と、苦痛混じりのクロエの『ごめんなさい』が、部屋に響いていた・・・。


 「ああ・・!?凄く・・イイわ!?」
テレビに映る、お仕置きされるクロエの姿に、ティアは興奮する。
「ティア、あなたのおかげですよ。こんなにイイものが撮れました」
映像を見ながら、エルレインはティアを褒める。
ティアが泥棒の振りをして、宝物を持ち出した為、クロエをお仕置きすることが出来たからだ。
おかげで、このような映像を隠し撮りして、楽しむことも出来た。
万々歳である。
 「ねえ・・母さん・・・」
ティアはお尻をモジモジさせながら、呼びかける。
「おやおや?自分もお尻ペンペンされたくなってきたのですか?いやらしい子ですねぇ」
「だって・・あんなスゴイの見てたら・・我慢出来ないわ」
「ふふ、いいでしょう。よくやってくれましたしね。ティア、いらっしゃい」
エルレインの手招きに、ティアはすぐにも、膝の上にうつ伏せになる。
ティアが膝に乗ると、エルレインは慣れた手つきで、ティアのお尻をむき出しにする。
 「おやおや?叩く前からブルブル震えて。そんなに興奮しているのですか?」
「だって・・今から叩かれると思うと・・・」
ティアは頬を紅潮させながら、言う。
「全く・・いやらしい子ですね。そんな悪い子はうんとお尻ペンペンしてあげます」
そういうと、エルレインは思いきり手を振りかぶった。
 バッチィ―ンッ!!
「あああんっ!?」
肌を打つ音と共に、悦び混じりの、ティアの声が部屋に響く。
パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!
「ああーんっ!きゃあんっ!?いやあんっ!ああんっ!」
「もうっ!そんな声出して!悪い子っ!やらしい子っ!」
平手を振り下ろしながら、エルレインは、嬌声を上げるティアを叱り続ける。
その後、嬌声混じりのティアの悲鳴と、お尻を叩く音が響いていた・・・。


 ―完―

少年憲兵4



 「どうしたんだい?キョロキョロしてさ?」
不意にあたりを見回したオオガミに、一緒に歩いていた青年神父が、怪訝な表情を浮かべて尋ねる。
神父は20歳くらい、腰まで届く金髪の持ち主で、明るい感じの整った面立ちをしている。
彼の名はエルヴィン。
オオガミの管轄区域内に教会がある縁で、オオガミと親しい間柄であった。
 「いや・・。気のせいのようです。すみません」
「そ、そう?なら、いいんだけどさ」
「それより、早く教会に戻りましょう。これから、用意もありますでしょう?」
「そ、そうだね!皆も待っているし!!」
エルヴィン神父はハッとした表情を浮かべると、買い物袋を抱えて、急ぎ足になる。
オオガミも、買い物袋を抱え、あとへついていった。
 「いやぁ、いつもすみませんねぇ。色々とお世話になってしまって」
「いいのです。これも憲兵の職務の内ですから。すみません。巡回がありますので、失礼いたします」
オオガミは敬礼をしながら、神父に言う。
そして、その場を去っていった。
 「あれ・・?」
エルヴィンは、何かが落ちていることに気づく。
「これは・・」
拾ったものをエルヴィンはジッと見つめる。
拾ったのは、憲兵隊のマークが入ったボタン。
恐らく、制服から取れてしまったのだろう。
 (届けてあげないと!?まだそんな遠くには行ってないはずだし!!)
神父はそう呟くと、ボタンを持って、道路の方へと出る。
すると、少し距離はあるものの、オオガミの後ろ姿を発見する。
思わず、エルヴィンが声をかけようとしたときだった。
 突然、オオガミ目がけて、車が突っ込むように走って来る。
気付いたオオガミは、脇へ避けようとする。
だが、車はオオガミに対し、さらに勢いを増して迫って来る。
直後、鈍い音と共に、オオガミの小柄な身体が吹っ飛ばされた。
 「!!!???」
目の前で起こった事態に、神父は愕然とする。
思わず声を上げようとするが、あまりの驚きに声が出ない。
その間に、車から目出し帽をかぶった男が降りたかと思うと、呻いているオオガミの頭を、砂を詰めた革製の棍棒で殴りつける。
オオガミが完全に気を失うと、放り込むように、後部座席へと乗せる。
そして、そのまま猛スピードで走り去った。
ようやく神父が我に返ったときには、車は完全に姿を消してしまっていた。


 「ぅう・・・・」
オオガミは目を覚ますと、ガンガンと頭が割れるような感覚を覚える。
(この痛みは・・?そうだ!?確か・・・)
オオガミは車にはねられた上、降りて来た男に、棍棒で殴りつけられたことを思い出す。
(つまり・・・私はさらわれた・・誰に・・?何の為に?)
そのことを考えていた、まさにそのときだった。
 不意に、扉が開く音が聞こえてきた。
思わずオオガミは顔を上げる。
なお、オオガミはうつ伏せの状態で、台に拘束されている。
 「お前は・・・!?」
現れた男の顔を見るなり、思わずオオガミは声を上げる。
「フフ・・覚えていてくれましたか?オオガミ分隊長殿?」
「忘れるものか・・!?そうか・・お前だったか!?ヤッツイオ!?」
オオガミは不快感を込めて、ヤッツイオを見つめる。
ヤッツイオはオオガミの部下の一人だった。
だが、犯罪組織に、金銭と引き換えに、捜査情報を流していた。
その不正がバレ、当然のことながら、懲戒免職となった。
 「その台詞・・そっくりお返ししましょう・・・」
ヤッツイオは鞭を舌なめずりしながら、言う。
その目には、憎しみの炎が宿り、キャンプファイヤーのように燃え上がっていた。
 「そうか・・・。私への・・復讐か・・!?」
「そうです・・!!ふふふ・・。今から・・あなたに・・この上もなく・・恥ずかしくて、惨めな思いをさせてあげましょう!!」
ヤッツイオはオオガミの背後に回る。
そして、オオガミのズボンに手をかけると、おもむろに引き下ろす。
おかげで、オオガミの小ぶりなお尻があらわになってしまった。
 「ふふ・・!!無様ですなぁ。己がクビにした男の前で、こんな恥ずかしい格好とはねぇ」
元部下の嘲笑に、オオガミは顔を赤らめる。
だが、言い返したりはしない。
ヤッツイオを喜ばせるような真似はしない。
そう考えているからだ。
 「さてと・・。では・・ショータイムと行きましょう!!」
ヤッツイオはそう言うと、鞭を振り上げる。
そして、オオガミのお尻目がけ、振り下ろした。


 バッシィーンッッ!!
「・・・!!」
鞭の強烈な打撃が、オオガミのお尻に叩きつけられる。
思わずオオガミは、苦痛に顔を歪める。
同時に、声を押し殺す。
ヤッツイオなどに、屈服しない。
そう決意しているからだ。
ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「クク・・!フフ・・!ヌフフ・・!!」
ヤッツイオは、オオガミの小さなお尻に、容赦なく鞭を叩きつける。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「どうだ・・!どうだ・・!どうだ・・!小僧・・!!」
怒りと憎しみを込めて、ヤッツイオは、鞭を振るい続ける。
鞭はオオガミの小さなお尻に、容赦なく蚯蚓腫れを刻みつけてゆく。
やがて、蚯蚓腫れは幾重にも重なり、オオガミのお尻を赤く染めはじめる。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「・・ぅ・・・ぁ・・・っ・・・か・・・ぁ・・っく・・あ・・っ・・う・・!?」
さすがに、耐えきれなくなり、オオガミの口から、苦痛の声が漏れ始める。
だが、声を漏らしてしまいながらも、オオガミは耐えようとする。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「苦しいか!?痛いか!?ならば・・無様に泣き叫んで、許しを乞うてみるがいい!!」
ヤッツイオは憎悪に満ちた声で、鞭を叩きつけるように振るう。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「くっ!あっ!くぅああ!だ、誰が・・お・・お前などに・・!?くっ!あくっ!ううくぅ!?」
狂ったように叩きつけられる鞭の嵐に、オオガミは苦悶の声を上げ続ける。
だが、それでも、必死に耐える。
憲兵としての誇りが、オオガミを支えていた。
ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「くそっ!くそくそくそっ!くそくそくそっ!!」
怒りに任せ、ヤッツイオは鞭を振るい続ける。
鞭の音と、オオガミの苦悶の声が、部屋に響き続けた・・・。


 「くっ!強情なガキめが!!」
ヤッツイオは怒りに任せ、床に鞭を叩きつけるように投げ捨てる。
オオガミのお尻は皮膚が破れて血が滲み、惨憺たる有様になっている。
捨てられた鞭も、血で赤く染まっていた。
オオガミは目尻に涙を浮かべ、荒い息を吐いている。
だが、それでも、ヤッツイオに、許しを乞うことはしていない。
 「クソ!クソッ!?イチイチ癇に障るガキだぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!」
ヤッツイオは完全にキレてしまい、口調も変わる。
「泣きもしねぇ!許しも乞わねえ!!ムカつく!ムカッツク!イケすかねええええ!!!!!!!!!!!」
ヤッツイオは床を何度も何度も踏みつけ、叫ぶ。
「こうなったら・・・!!」
ヤッツイオは狂気に駆られた表情で、拳銃を取り出す。
拘束されたオオガミに狙いを定め、引き金を引こうとする。
 ドンッッ!!
突然、ドアが開く音が聞こえてきた。
ハッとして、ヤッツイオはドアの方を振り向く。
同時に、乾いた音が部屋に響く。
 「ぐ・・・!?」
右腕を撃ち抜かれ、ヤッツイオは銃を取り落し、膝をついて、床に座り込む。
直後、拳銃を構えたロッテンマイヤーが、武装した憲兵達を引き連れ、突入してきた。
 「ほ・・本部・・長・・」
「よかった・・。生きていたか・・・」
ロッテンマイヤーはオオガミの方を見て、安堵の表情を浮かべる。
直後、ヤッツイオの方を振り向くが、そこには鬼気迫るロッテンマイヤーの姿があった。
 「貴様・・!逆恨みの挙句に・・このような所業・・・。ただで・・済むと思うなよ」
その表情と声に、ヤッツイオは恐怖を覚える。
咄嗟に、腕の苦痛も忘れ、逃げ出そうとする。
だが、ロッテンマイヤーの出した足に引っかかり、転んでしまう。
 「どこへ行く?そうだ。お前が牢に行く前に・・・・はなむけだ!!」
ロッテンマイヤーはヤッツイオを立たせた直後、ボクシングの構えを取る。
「ドラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!!!!!!!!!!」
どこぞの少年漫画のような、裂帛の、長い掛け声と共に、ロッテンマイヤーの両拳が、嵐となって、ヤッツイオに襲いかかる。
「や・・ヤッダバア――――――ッッッッッッ!!!!!!!!!!」
漫画チックな断末魔と共に、ヤッツイオは壁に叩きつけられ、気絶する。
ヤッツイオの顔面は、拳の嵐で滅茶苦茶に腫れ上がっており、実の親が見ても、判別不可能かと思うほど、変わり果てていた。
「ふん・・!下種め!!」
ボコボコにされたヤッツイオに怒りと侮蔑の目を一瞬くれると、ロッテンマイヤーはオオガミの元へと向かう。
 「分隊長・・・大丈夫か?」
「ほ、本部長・・申し訳・・ぐ・・!?」
「無理をするな。それにしても・・ひどい目に・・」
拘束を外しながら、ロッテンマイヤーは、オオガミが力尽きて、気を失ったことに気づく。
ロッテンマイヤーはブランケットでオオガミを包み込み、安堵の息を吐きながら、抱きかかえて、その場を後にした。


 ―完―

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