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悪魔少年の屈辱(BL・R-18)


(BL・R-18要素ありです。許容できる方のみご覧下さい)


 ネオンが煌めき、様々な店の看板や軒先が立ち並ぶ、夜の歓楽街。
客引きらが懸命に、道行く客が店に連れてゆこうとしたり、或いは好色そうな男達が、店を物色して、通りをウロウロしている。
そんな歓楽街の一角に、その店はあった。
 角とコウモリの翼、先端が尖った尻尾が生えた、いわゆる悪魔の姿をした美女と少年がお出迎えしている看板には『イメージクラブ セブンシンズ(七つの大罪)』と店名が書かれている。
店先では、悪魔のコスプレをした美女と美男の店員が道行く客に声をかけている。
店内では、悪魔を中心に、様々なモンスターのコスプレをした店員達が、客にサービスを行っていた。
この店は悪魔(をはじめとした、人型モンスター)とのプレイを売りにしたイメクラ。
ゲームやアニメ好きの客を中心に、売り上げや勢力をジワジワと伸ばしていた。
 「いらっしゃいませー!おや・・!?小野(おの)様・・!?」
現れた男性客の姿に、受付係は嬉しそうな表情になる。
上得意の客だったからだ。
 「お待ちしておりました。お相手は・・・バイオレットでよろしいでしょうか?」
「聞くまでもないだろう?早く・・案内してくれ!!」
受付係に、小野と呼ばれた客は、一秒も待ちきれないといった態度で命令する。
「これは失礼いたしました。おーい!バイオレット君ご指名!7番のプレイルームへ小野様をご案内してくれ!!」
受付係の呼び声と共に、案内係が、小野をプレイルームへと案内する。
 「おやおや?随分と遅かったじゃないか。ミスター・オノ・・・」
客に対するとは思えない、傲慢な態度で、バイオレットは小野に接する。
その源氏名の通り、バイオレットは青みがかった紫色の髪と、同色の切れ長の瞳の持ち主。
15歳前後の少年の風貌ながら、貴族のような高貴さと凛々しさを感じさせる面立ちをしている。
少年らしい成長途上の、薄い滑らかな胸や腹を惜しげもなく露わにし、スリットを入れた腰布の間から見える足も、少年ならではの整った形と色気をあらわにしている。
本物かと見まがいそうな精巧な角や翼、動く尻尾が、バイオレットの背徳的な色香をさらに強めていた。
 「私も忙しい身なのでね・・。それより・・・」
小野は興奮を抑えかねた声と表情で言う。
「ん~?どうしようかな~?そうやってはしたなくがっつかれると、興ざめしちゃうなぁ」
「お・・おぃ!?私は客だぞ!?」
「おやぁ?もう、そんなに興奮してるんだ」
バイオレットは客の股間を見つめ、からかうように言う。
 「ふふ・・。そうだ。じゃあ・・今日はこうしてあげようかなぁ」
微笑を浮かべると、バイオレットはエナメル製のブーツを履いた足で、小野の股間を踏みつける。
「う・・!?何をす・・あう!?ああう・・!?」
「おやおや?男の象徴を踏まれて、感じてるのかなぁ?」
「何を馬鹿・・あう・・!う・・!?」
否定しようとする小野だが、バイオレットの足での巧みな刺激に、小野自身はズボンの下でよりそそり立ち、硬直する。
「く・・!あ・・あっ・・ああーーっっ!!」
ついに、ズボンの中で、小野は自らの欲望を放出してしまった。
 「おやおや?これくらいの我慢も出来ないでお漏らしなんて・・はしたないなぁ。大人の癖に、恥ずかしく無いのかな?」
「お・・お前が・・したのだろう!?」
「そんなに僕としたかったんだね。しかた無いなぁ。がっつくはしたないのはあまり好きじゃないけど・・させてあげるよ」
みっともない姿をさらした客に、ようやくバイオレットは言う。
今にも襲いかかりそうな小野を、わざと待たせているのか、ゆったりとしたしぐさで、バイオレットは腰布や下着を降ろす。
そして、少年らしい小ぶりで整った形のお尻を、小野に向ける。
 「さぁ・・・。お望みのモノだよ。ほら、どうしたいのかな?」
お尻を淫らに振りながら、バイオレットは挑発する。
直後、有無を言わせず、小野はバイオレットに背後から覆いかぶさっていた。


 「ありがとうございましたー!またのお越しをー!!」
店員に見送られ、小野は店を後にする。
その足取りは、ヨロヨロとしており、今にも倒れそうな感じだ。
顔も頬がこけている。
しかし、その表情は呆けたようで、目もどこか焦点があっていない。
 (今日も・・スゴかった・・)
バイオレットとの行為を思い返し、小野はそう呟く。
(とても・・この世のモノとは思えない・・快感だった・・!!)
小野はスケベ親父のような表情を浮かべる。
(元々・・男になど興味は無かった私が・・あんな少年に入れ揚げるとは・・。しかし・・もう・・どうにも押さえられん!?)
小野はバイオレットの顔を思いうかべながら、再び興奮してくる。
あまりにも入れ揚げ、週一、下手すると週に2,3回のペースで通っているのだ。
当然、大金がかかる。
バイオレットに会うために、横領や危ない筋から借金を重ねたりもしていた。
 「ん・・?何だ?お前達は?」
不意に、目の前に現れたスーツ姿の二人組に、小野は怪訝な表情で尋ねる。
「こういうものです。実はちょっとあなたに伺いたいことが・・!?」
二人組の片方が警察手帳を提示した直後、何と小野はナイフで刑事の一人を刺してしまう。
直後、別の刑事が飛び出し、刺されなかったもう一人の刑事と共に、小野の身柄を確保した。


 「なるほどねぇ・・・。それで・・捕まったというわけか・・」
「はい。バイオレット様に貢ぐために、横領等を繰り返していたそうです・・」
「ふふ・・。馬鹿なヤツだなぁ。そんな馬鹿が破滅するのは・・・ふふ、愉快だねぇ」
小野の逮捕の知らせに、バイオレットは罪悪感を示すどころか、ほくそ笑むような笑みを浮かべて言う。
 「全くでございます。卑しい人間風情が、魔族の名門たるバイオレット様と交われるだけでも光栄だと言うものですのに・・・」
バイオレットの言葉に、傍らの男が同意するように言う。
バイオレットは人間ではなく、悪魔。
角も翼も尻尾も、業務用のコスプレではなく、本物であった。
なお、この店の所有者はバイオレット。
人間界で活動するための拠点・隠れみのとして、設置したものだ。
ここで金や地位のある人間を自分の虜にし、破滅へと導くという遊びを行っていた。
既に何十人もの人間(そのほとんどが男)が、バイオレットによって破滅し、名誉や財産、時には命まで失っていた。
 「さて・・・今度は誰を破滅させてやろうかなぁ・・・」
バイオレットはまだ破滅していない客のリストを捲りながら、楽しそうに笑みを浮かべていた。
突然、ホールの方がなにやら騒がしくなった。
 「何だ?喧嘩でもあったのか?」
「しばしお待ちを。見てまいります」
そう言い置き、付き人がホールの様子を見に行く。
少しした後、今度は銃声や悲鳴まで聞こえ始めた。
ただ事ではない。
魔族の本能でバイオレットがそう感じた直後、ドアが開き、付き人が戻って来た。
 付き人は小型の拳銃を手にしている。
顔には、殴られた跡もついていた。
「バイオレット様・・!?至急避難して下さい!!」
「どうした?」
「ヤツです!?あの男です・・!?」
付き人の言葉に、バイオレットの表情が変わる。
 「く・・!?嗅ぎつけられたか・・!!」
「すぐにもやって来ます!!早く落ちのびて下さいまし!!」
「やむを得ん・・!?」
悔しそうな表情を浮かべながら、バイオレットが裏口へ向かおうとしたそのときだった。
 突然、ドアが荒々しい勢いで開く。
直後、ゆっくりと大きな人影が現れた。
人影の正体は背の高い、体格の良い男。
片目に黒い眼帯をしており、さながら、時代劇でお馴染みの片目の大剣豪を思わせる風貌をしている。
 「また貴様か・・!?カズヨシ・チバ・・!!」
バイオレットは憎しみに満ちた表情で呟く。
千葉一厳(ちばかずよし)。
それが目の前の男の名だった。
 「バイオレット・・。貴様・・・性懲りもなく悪さを働いておるか・・!?」
千葉○一を思わせる力強い声で、一厳は言う。
一厳は魔物ハンターとでもいうべき存在。
人に害をなす魔物を退治することを職業としている。
「うるさいなぁ。取るに足らない、卑しい人間風情が、僕のことをあれこれ言わないでくれるかなぁ。ハエみたいにうっとおしいなぁ!!」
バイオレットは人差し指を向けると同時に、指先から紫色のビームを放つ。
同時に、付き人も弾切れになるまで、拳銃をぶっ放す。
対して、千葉は横へステップをするようにうごいてかわす。
かわしながら、床を蹴り、一気に二人の傍まで跳んで間合いを詰める。
直後、千葉の腰から黒い閃光が迸る。
「うっっっ!!!」
鈍いが強烈な痛みと共に、付き人が倒れる。
千葉の手には、刀の形をした、脇差サイズの鉄棒が握られている。
鉄刀(てっとう)或いは兜割(かぶとわり)と呼ばれるもので、捕物や護身用の武器として使われていたものだ。
同じ捕物道具の十手に比べると馴染みが薄いが、かの千葉真一が柳生十兵衛を演じたドラマなどで、使用しているのを見ることが出来る。
 それはさておき、千葉は兜割をバイオレットに突きつける。
「どうする?手下はもう戦えんぞ?」
「寝言は言わないでもらおうか!」
その言葉と共に、先端が大きな鋭い刃と化した尻尾が襲いかかる。
千葉は後ろへ引いて攻撃をかわし、右半身になって兜割を構える。
対して、バイオレットも、尻尾と両手を構える。
両手も魔力で両刃の刃と化していた。
 「うぉぉぉぉ!!!!」
千葉に向かって踏み込みながら、両手と尻尾を、目にもとまらぬ速さで立て続けに繰り出す。
千葉はそれを全て兜割で受け流す。
受け流しながら、千葉は反撃に移り、バイオレットのみぞおちへ、兜割の先端を突き入れた。
「う・・・!?くそぉ・・!?」
屈辱に顔を歪めながら、バイオレットは床へ崩れ落ちる。
同時に、千葉は魔力を封じる効果がある手錠で拘束してしまう。
 「くそ・・!?殺すがいい・・!!」
「いや・・殺しはせぬ」
「どういう・・ことだ・・!?」
バイオレットは怪訝な表情を浮かべる。
今まで、バイオレットの知る限り、千葉に対峙した悪魔やその他の魔物たちは、消滅させられていたからだ。
 「ある筋からの要望でな・・。お前は殺さず・・だが、殺された方が良かった、と思えるような屈辱を与えて制裁してくれ、とな」
「何だと・・!?おぃ!?何をする!?」
千葉の膝の上に乗せられ、お尻をむき出しにされそうになり、バイオレットは慌てる。
「言ったはずだ。屈辱を与えて制裁する、と。お前のその姿にふさわしい仕置きをしてやろう」
そういうと、千葉は膝の上に乗せたバイオレットをしっかりと押さえつける。
同時に、もう片方の手を思いきり振りかぶった。


 バッシィィ―――ンンッッ!!!
「!!!!!!」
骨盤が砕けるかと思うほどの衝撃に、バイオレットは思わず背をのけ反らせる。
 「どうした?痛いか?」
「ば・・馬鹿を言うな!卑しい人間風情の一撃など・・痛くも痒くもない!!」
千葉の言葉に、バイオレットはそう言い返す。
「そうか・・。素直に認めるとは思わなんだがな」
そういうと、再び千葉は平手を振り下ろし始める。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「・・・!・・・!・・・!・・・!・・・!・・・!」
鍛え抜かれた力強い手が、バイオレットのお尻に容赦なく襲いかかる。
一打ごとに、バイオレットの身体が強ばり、苦悶の表情を浮かべそうになる。
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「・・!・・・!・・っ!・・!・・・ぁ・・・!・・ぅ・・」
叩かれているうちに、耐えきれなくなってきたのか、少しずつ声が漏れ始める。
 打ごとに、バイオレットの身体が強ばり、苦悶の表情を浮かべそうになる。
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「・・っ!・・・ぁ・・・ぅ・・・ぁ・・・っ・・・」
(くそお!?何てことだ!?この僕が・・!!こんな・・こんな・・・辱めを・・!?)
バイオレットは屈辱に身を震わせる。
悔しさで、思わず目尻に涙が浮かんできた。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「ほぅ、泣いているな。悔しいか?」
「く・・!?聞くまでも・・無いだろう!?人間風情が!?僕に・・こんなことをして・・ただで済むと・・思っているのか!?」
バイオレットは怒りの表情で振り返り、睨みつける。
 「その言葉、お前に返してやろう。その人間を散々踏みつけにしておいて・・ただで済むと思ったか?お前から見れば下等な生き物でも・・踏みつけにされれば、逆襲するのだ。よく、覚えておけ」
静かに言いながら、千葉は平手打ちを続ける。
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「くっ!やめ・・やめないか・・!?く・・!?あう・・あっく・・!!」
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「くっ・・!やめ・・あ・・うう・・!やめ・・やめて・・!?」
とうとう耐えきれなくなったのか、バイオレットの口調が、懇願するものへと変わってゆく。
既にバイオレットのお尻は、万遍なく赤く染まっている。
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「ううっ・・!やめっ!いや・・嫌だぁぁ!?も・・もぅ・・・許し・・うわぁぁぁん!!!」
悪魔のプライドをかなぐり捨て、バイオレットは泣きながら、逃げ出そうとする。
 「待て。まだまだ、終わってはおらんぞ?」
「い、嫌だぁ!?も・・もぅ、許してぇぇぇ!!」
「そうはいかんな。これからが、本番だ」
「そ・・そんなっっ!!」
思わず絶望の表情を浮かべるバイオレットを尻目に、無情にも平手が振り下ろされ続ける。
その後、長い長い間、バイオレットの悲鳴とお尻を叩く音が響いていた・・・。


 数日後・・魔界・・。
「く・・くそおっっ!!??」
ベッドにうつ伏せになった姿で、バイオレットは屈辱に打ち震えていた。
お尻は倍近くに腫れ上がっており、まだ腫れも痛みも引いていない。
(この僕が・・人間風情に・・!!あんな・・あんな・・屈辱を・・!?)
思い出すたびに、バイオレットは悔しさがこみ上げてくる。
下等生物である人間に、小さな子供のようにお尻を叩かれ、泣き叫ばされた。
死んだ方がマシと思える屈辱だ。
 (絶対に・・許さんぞ!?必ず・・この屈辱を晴らしてやる!?)
顔を怒りに歪めながら、バイオレットは心にそう誓っていた。


 ―完―

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戦国の村(BL)



(BLありです。許容出来る方のみご覧下さい)


 昔々・・・。いわゆる戦国時代と呼ばれる時代、これはその頃のお話・・・。


 藤木(ふじき)村と勝俣(かつまた)村、二つの村の境となっている鎮夫(しずお)川。
その川を挟んで何とも殺気だった雰囲気が支配していた。
雰囲気の主はそれぞれの川岸に立つ集団。
格好はまちまちだが、槍や刀・脇差など、全員何らかの武器を身につけている。
彼らはそれぞれの村の村人達。
戦乱の時代を反映し、普通の村人や町人ですら自衛のために刀・脇差くらいは持っているのが当たり前。
そんな時代には、百姓といえど、戦いでもめごとの解決を図るのは普通の事だった。
 両村の間では、しばらく前から用水の権利を巡ってトラブルが続いていた。
近隣の友好的な立場の村の代表などが入り、話し合いの場も持たれたりしたが、交渉は上手くゆかず、ついにこういうことになったのである。
 しばらくの間両陣営とも睨み合っていたが、やがて大将格の村人の指示と共に、両者から弓矢を持った村人達が現れる。
互いに弓矢を打ち合い、矢が雨のように自分達に降り注いでくるのを、戸板などを盾にして必死に耐える。
互いに矢を撃ち尽くすと、今度は槍や刀を構え、お互い川に足を踏み入れ、突撃した。
二つの集団と集団が激しくぶつかり合い、双方入り乱れて乱戦となる。
最初のうちは接戦だったが、やがて勝俣村側が押し始めた。
 勝俣村側は一人の男を先頭に立てて攻めかかる。
先頭に立つのは、2メートルはあろうかという、雲突くような屈強な大男。
荒々しげなヒゲを生やし、いかにも恐ろしそうな顔で、金輪を嵌め、鉄の芯を入れた六尺棒をビュンビュンと振りまわすその姿は、まさに昔話の鬼か、あるいはかの牛若丸こと源義経に仕えた弁慶そのもの。
 彼は勝俣村が雇っている武術指導兼用心棒の武芸者。
雇われ武芸者は破竹の勢いで藤木村側の男達を次々と蹴散らす。
このままでは藤木村の敗走、誰もがそう思ったときだった。
 不意に、藤木村側から何者かが進みでて、相手側の用心棒の前に立ちはだかる。
現れたのは、身長170センチ代くらい、相手の用心棒とは対照的にすらりとした、だが無駄なく引き締まり、しなやかさを秘めた身体をした男。
野性味あふれる精悍な、だが現代ならばモデルや俳優が務まりそうな端正さを感じさせる面立ちをしている。
 男は腰を落としたどっしりとした体勢で、刀を構えている。
刀はがっしりしたつくりの、いかにも武骨な実戦用のもの。
男は菅原文蔵(すがわらぶんぞう)と名乗る武芸者、しばらく以前から藤木村に滞在し、目の前の相手同様、藤木村の武術指導兼用心棒をしていた。
 二つの村の用心棒は、互いに得物を構えて睨み合う。
その空気が感染したのか、双方の村の男達も、戦いを中断し、固唾を飲んで見守る。
 敵方の用心棒に気づくや、向こうの用心棒は六尺棒をビュンビュン振りまわして襲いかかって来た。
六尺棒の嵐を、菅原は服一枚の差で見切ってかわす。
中々当たらぬのに苛立ち、金棒の武芸者はやっきになって振りまわす。
ギリギリでかわし続けるうち、金棒の武芸者の動きが焦りでだんだんと乱れてくる。
やがて、大きな隙が出来たところへ、菅原が踏み込んで刀を振り下ろした。
 敵方の武芸者は棒で防ごうとするも、棒ごと顔面を唐竹割りにされ、息絶える。
頼みの用心棒がやられ、勝俣村側に一瞬動揺が走る。
そこをついて菅原は勝俣村側に斬り込む。
用心棒をやられたショックで、勝俣村側は崩れかける。
そこをみた藤木村側は、勢いを盛り返し、槍や刀、脇差を振るって攻めかかる。
すっかり立場は逆転し、今や勝俣村側が防戦一方。
勝俣村側はしばらくは堪えていたが、やがて潰走し、ほうほうの体で逃げ去っていった。


 「だぁぁ!もう少し優しくしろよ!!」
「何言ってるんですか、あなた武芸者でしょう?これくらい我慢したらどうです?」
文句を言う菅原に、傷の手当てをしながら、青年はそう言う。
 青年は20歳前後、新緑のような鮮やかな緑の髪と瞳が印象的で、女性顔負けに美しく、だがどこか手厳しそうで、またプライドなども高そうな雰囲気を持った面立ちをしている。
黒い法衣を着ているところから、僧侶と推察できた。
 僧の名は誠信(せいしん)。
藤木村内の、村立寺院を預かる僧である。
戦国の村では集会や村の行事を行う公共の場所として、村立のお堂や寺を持っていた。
その寺の管理者として、村に雇われているのである。
ちなみに、菅原も誠信の寺に普段は寝泊まりし、村の若者に剣術等の指導をしていた。
 「そう言ったってなぁ、沁みるもんは沁みるんだよ!」
「怪我しなければいいだけでしょう?武芸者なんですから、もっと怪我なんかしないで勝てるように考えたらどうなんです?全く・・・人の気も知らないで・・・」
「ん?何か言ったか?」
最後の言葉を聞きつけ、菅原は怪訝な表情を浮かべる。
 「何でもありませんよ。って何脱がそうとしてるんですか!?」
服を脱がそうとしている菅原に、思わず誠信は文句を言う。
「ん?お前さんを抱こうとな」
「はぁ!?まっ昼間から何考えてるんですか!?」
菅原の言葉に、思わず誠信は声を上げる。
二人は同居人というだけでなく、そういう関係でもあった。
ちなみに、この時代は珍しいことではない。
 「俺とじゃ嫌か?」
「そ・・そういう・・わけでは・・・」
「じゃあいいだろう。お前さんを抱きたいんじゃ!!」
「あ・・ダメです!?ここは・・寺院で・・私は・・!!」
「頼む!抱かせてくれ!?人を斬ったので気が高ぶって・・収まらんのじゃ!!」
「は?もしかしてそれが・・理由ですか?」
菅原の理由に、誠信はキョトンとした表情を浮かべる。
 「ん?そうだが?」
「嫌です。あなたとなんかしたくありません」
「んな殺生なー!このままだと欲求不満で死んじまう!!」
「いっぺん死んだ方がいいんじゃないですか?」
「そりゃあねえだろ!頼・・おいっ!ちょっと待て!?」
抱かせてくれと頼む菅原に、誠信は奥から何やら袋を持ってくる。
 「あなたって人は・・!!若い男を抱くことしか頭にないんですかーー!!」
誠信は怒りの声を上げるや、袋の中から白い玉を取り出し、投げつける。
玉が菅原の身体に当たるや、粉が舞う。
 「ぐええええ!!!ゲホッ!!ゲホゲホゲホッ!!」
粉をくらってしまい、菅原は猛烈に咳き込み、或いは涙で目をぼろぼろにしてしまう。
粉の正体は刺激性の薬草を調合した、一種の目つぶし。
誠信は薬草の知識があり、村人のために様々な薬を作っている。
この目つぶしもその一つで、村人が捕り物を行うときや、或いは若い女性などの護身用のために作ったものだった。
「うわーっ!落ち着けーっ!!目つぶし投げるなってーの!!」
すっかり怒り、目つぶしを投げつけまくる誠信に菅原は慌てて逃げ出した。
 「全く・・・!!人の気も知らないで・・・!!」
寺を飛び出して逃げ出す菅原に、誠信はため息をつく。
菅原に抱かれること自体は嫌ではない。
だが、あれではただの性欲処理と言われているようで嫌だ。
 (私も・・大人げないですが・・・。しかし・・・)
目つぶしなど持ちだした自分もよくないと思いつつ、それでも菅原の発言には我慢出来ない。
そう思わずにはいられなかった。


 数日後・・。
「な・・なぁ・・・」
「何です?話しかけないで下さい。私は忙しいんです」
恐る恐る呼びかける菅原に、誠信ははねつけるように答える。
 「なぁ、俺が悪かったって。謝るからよ、勘弁してくれよ」
「別に謝る必要なんてありませんよ。それより忙しいんですから邪魔をしないで下さい!!」
取りつく島も無い誠信の態度に、菅原はシュンとなって、スゴスゴと部屋を後にする。
 (少し言いすぎましたかね・・?)
すっかり落ち込んだ様子の菅原に、誠信は微かに胸が痛みそうになる。
(何を言ってるんですか!?いい薬です!?あんな下半身男には!!)
先日のことを思い出し、誠信は自分にそう言い聞かせる。
菅原の言動はやはり勘弁出来るものではない。
そう思うと簡単には許してやれない。
そんなことを誠信が考えていたときだった。
 「誠信様!誠信様!」
不意に外から、息せき切って誠信を呼ぶ声が聞こえてくる。
思わず縁側に出ると、村の若者が息せき切って飛んできた。
 「おや?村はずれの五助さんじゃないですか。どうしたんですか?」
「すいませんっ!すぐ来て下さいっ!山仕事してたら怪我人が・・・!!」
「わかりました!すぐに行きます!!」
表情が変わると、誠信は奥から薬の入った袋や箱を取って来る。
 「おい、どっか行くのか?」
真剣な表情で、医療道具を抱えた誠信に、菅原は怪訝な表情で尋ねる。
「怪我人が出たので、出かけるのですよ。いちいち聞かないで下さい」
「待て。俺も行く。色々物騒だしな」
「あなたの護衛なんていりませんよ。治療に行くだけなんですから」
「そう言うなよ~。心配なんだよ。山の方だろ?追い剥ぎとか・・・」
「別にあなたに心配していただかなくて結構です。私は急ぎますから」
「あっ!おいっ!待てよっ!!」
呼び止めようとするが、誠信はそのまま若者と共に行ってしまう。
 「たはは・・。完全に怒ってやがるなぁ・・。どうすっか・・・」
困った表情を浮かべつつ、菅原はポリポリと頬をかいていた。


 「どうです?少しは楽になりましたか?」
「へぇ、痛みが和らぎましたわい」
手当てを終えた患者に尋ねた誠信に、男はそう返す。
 「ならよかったです。皆さん、今日は仕事はおしまいですか?」
「へぇ、こう怪我人が出ちまったんじゃ、山仕事どころじゃねえですから」
「では皆さんで送ってあげて下さい。怪我人ですから気をつけて下さいね」
「わかってまさぁ、さぁ、帰るべ。田助どん」
男達は怪我をした仲間を支えながら、村へと帰ってゆく。
 「すんません、誠信様。わざわざ来てもらって・・」
「構いませんよ。怪我人や病人の手当ても、私達僧侶の大切な役目ですからね」
自分を呼びに来た五助に、誠信はそう答える。
 「そんならよかったです。んじゃあ寺まで送りますね」
「すみませんね。ではよろしくお願いします」
五助は山仕事用の鎌と、護身用の脇差を腰に差すと、誠信の先に立って、山を降りはじめた。
 「そういや誠信様」
「何です?」
「菅原の旦那と喧嘩でもしたんですか?」
「な・・何のことです?」
五助の問いに、誠信は平静を装って問い返す。
 「いや、何か旦那と言い争ってたみたいですし・・・」
「ああ・・。あれですか、何でもありませんよ。心配していただくことはありません」
「そうっすか。ならええんですけど。ん?」
不意に五助の表情が変わり、脇差に手をかける。
 「どうしたんで・・うわっ!!」
突然、木陰から飛んできた矢に、誠信は驚く。
「うわっ!?」
矢は五助の肩に突き刺さり、五助は倒れる。
 「五助さんっ!!」
慌てて駆け寄る誠信だが、そこへ物陰から、刀や脇差、弓矢などで武装した、いかにも山賊や追い剥ぎらしい数人の男達が現れた。
男達はあっという間に誠信達を取り囲み、刀を突きつける。
 「あなた方は・・追い剥ぎですか!?」
「誰でもいいだろ。来い」
「嫌です」
「なら・・仕方ない」
「う・・!!」
鳩尾にパンチを叩き込まれ、誠信は気絶する。
男達は気絶した誠信を連れて行った。


 「遅えなぁ・・。どうしたんだ?」
中々帰って来ない誠信に菅原は怪訝な表情を浮かべる。
そのとき、風を切るような音がしたかと思うと、矢が柱に突き刺さった。
 「何だ!?ん・・!?」
矢文に気づき、急いで外して中身を読む。
目を通すなり、ワナワナと菅原は身体を震わせた。
 「クッソ・・!!やってくれたな!!」
そう言って手紙を投げ捨てる。
菅原は飛び込むように奥に行ったかと思うと、刀を差した姿で寺を飛び出した。


 「おい!連れてきたぜ!!」
誠信を連行した男達は荒れ寺へやって来ると、先に待っていた人物に声をかける。
 そこにいたのは10代半ばか後半くらいの少年。
頭の後ろで髪を束ねた、いわゆるポニーテイルの髪型に、少年らしくもどこか艶っぽく整った面立ちをしている。
すらりとしているが、誠信とは対照的にしなやかさやバネを感じさせる身体に、半袖・丈が膝上までの着物を着ている。
 「お兄さん方、ご苦労さん。ほい、お手当て」
少年はそういうと、賊らしい男達に金を渡す。
「あ~、これっぽっちじゃ足りねえなぁ?」
「何?不満?あいにくこれしか用意してないんだけどな~」
「金じゃねえよ。オメエの尻で払ってくれよ」
「何?先払いの手つけでやらせてあげたじゃん」
「あれだけじゃ足りねえよ!」
「もう・・仕方ないなぁ・・。じゃあ、お兄さんからね」
少年はそういうと、傍の男に抱かれる。
 「へへへ・・たまんねえ・・」
だらしない表情を浮かべながら、賊の男は少年の尻に手を回し、揉もうとする。
同時に少年も男の首に手を回し、抱きしめようとしたかに見えた。
 「ぐ・・!!ぐえええ!!」
直後、苦悶の声が上がる。
いつの間にか少年の手には、両端に分銅がついた鎖があり、それで男の首を絞めていた。
 「調子に乗るんじゃないよ!このクズ!!」
がらりと変わった口調で、少年は閉めながら男の首を不自然な方向へと曲げてしまう。
「こ・・こんガキッッ!!」
仲間をやられ、激昂した賊たちは少年に襲いかかる。
少年は懐に手を入れたかと思うと、何かを投げ放つようなしぐさをする。
直後、男達の額や喉に、大きな針のような形状の手裏剣が刺さっていた。
 「は~もうっ!やっぱ山賊とか使うと後がメンドイよね~~」
事切れた追い剥ぎ達に、少年はため息をつきながら呟く。
直後、少年は今度は誠信の元へとゆく。
 「えーと、あんた誠信さん?藤木村の坊さんの?」
「え・・ええ・・。あなたこそ・・何者です?」
「ああ?俺?俺は弦三郎(げんざぶろう)っていうの。あんた、菅原の旦那と暮らしてんでしょ?」
「よ・・よく・・知ってますね・・」
「ふふん。俺に調べられないことはないモンねー。おっ!来た来た!」
ニヤリと笑みを浮かべ、弦三郎は崩れかけた山門の方を振り向く。
すると、肩を上下させ、荒い息を吐く菅原の姿があった。
 「ふふふ、待ってたよ~。菅原の旦那~~~」
弦三郎はニヤニヤしながら、菅原に呼びかける。
「待ってたよじゃねえ!!弦三郎・・!!やっぱりお前か!?」
「ふふふ、かなり息荒いね~~。全速力で走ってきたの~?」
「んなことぁどうでもいい!!誠信を返さんか!!」
「やだよ~~。腕ずくで取り返してごらん~~~。あっかんべーだっ!!」
子供かと思うようなしぐさで、弦三郎は挑発する。
 「クソ・・!!仕方ない・・!!」
舌打ちしながら、菅原は抜刀し、構える。
対して、弦三郎も分銅鎖を構えて、ジッと睨み合った。
 互いに武器を構えたまま、二人はジリジリと接近する。
一歩、また一歩と接近していたが、やがて途中で二人の歩みが止まる。
二人とも微動だにせず、ジッと相手を睨みつける。
 先に動いたのは菅原。
すっと間合いを詰めるや、斬りかかる。
弦三郎はそれを分銅鎖で受け流し、懐に入り込もうとする。
対して、菅原もそうはさせじと間合いを離し、再び刀を振るって分銅鎖を切断する。
 武器を切断されても、弦三郎は慌てず、今度は懐からトゲ付きの鉄輪を取り出し、拳に握る。
今度は弦三郎から先に攻めた。
間合いを詰めるや、パンチのラッシュが襲いかかる。
菅原はそれを刀で受け流しつつ、蹴りを繰り出して間合いを離しにかかる。
だが、相手もそうはさせじと、しつこく食い下がり、パンチを繰り出し続ける。
やがて、弦三郎の繰り出したキックが菅原の腕を下から蹴りあげ、菅原は刀を取り落とす。
そこへ弦三郎が懐へ入り込もうとする。
 そうはさせじと、菅原も両腕を伸ばして掴みにかかる。
互いに組み合ったまま、相手を制圧しようとするが、ついに弦三郎が姿勢を崩し、そこにつけ込んで菅原が背負い投げを喰らわせた。
 地面に叩きつけると同時に、菅原は逆手に握った脇差を喉に突きつける。
「どうする?まだやるなら・・容赦はしねえぞ!」
「わかったよ。俺も死にたくないからね~。降参降参」
そういうと、ようやく菅原は脇差を喉から離すも、弦三郎をしっかりと掴んだまま。
そのままで、誠信のところへゆき、縄を切る。
 「大丈夫か?」
「ええ・・。何とか・・」
「ならええ・・。それより・・・」
菅原は弦三郎をジロリと見やる。
 「おい・・・。貴様、これで何度目だ?」
「さあねぇ、忘れたよ~」
「忘れたよじゃねえ!!何度も何度もしつこく・・」
「ふふん。付きまとわれて嫌なら、いっそのこと殺す?」
「ガキはやりたくねえ。だが・・・」
菅原は弦三郎を引き倒したかと思うと、膝に載せる。
同時に、着物の裾を捲り上げ、下着を降ろした。
 「あれ?何何?負けたのに抱いてくれるの?」
「馬鹿か・・。貴様みたいなガキには・・こうしてやる・・」
苦々しい表情で呟くと、菅原は手を振り上げた。


 バッシィィィ~~~~ンッッッッ!!!
「うわ・・!!」
弾けるような音と共に、弦三郎は悲鳴を上げる。
バシッ!バンッ!ビダンッ!バアアンッ!バシッ!ビダンッ!
「わ・・!ちょ、ちょっとっ!何するのさっ!?」
弦三郎は振り向きながら抗議する。
 「悪ガキに仕置きしてんだよ!見りゃわかるだろ!!」
バシッ!バンッ!ビダンッ!バアアンッ!バシッ!バアンッ!ビダンッ!
「ちょ、ちょっとっ!やめろってばっ!!」
「うるせえ!!人をかっさらう悪ガキがっっ!!切られても文句は言えねえ立場だろっっ!!」
お尻を叩きながら、菅原はそう言う。
 「う・・うるさいなあっ!!アンタが悪いんじゃないかっ!?俺の宿願邪魔したくせにっっ!!」
「何が宿願だっ!?こっちは付きまとわれて迷惑してんだよっっ!!」
バシッ!ビダンッ!バアアンッ!バシッ!バシッ!バンッ!ビダンッ!バアアンッ!バシッ!
「く・・やめ・・やめろってっ!あ・・!う・・あ・・ひ・・!あ・・ダ・・うわあああああああっっっ!!」
突然、悲鳴を上げて弦三郎はのけ反る。
同時に、自身から欲望を放ってしまった。
 「のわあっ!?何してんだっっ!!」
袴を白濁液で汚され、思わず菅原は叫ぶ。
その隙に、弦三郎は菅原の膝から飛び出し、一跳びで木の上まで飛んだ。
 「くぅうう・・!!よくもやってくれたよね・・!!覚えてろっっ!!」
お尻をさすりながら、悔しそうな表情を浮かべて捨て台詞を残し、弦三郎はそのまま姿を消した。
 「クソ・・!!ガビガビだぜ・・!!それより・・」
汚れた服に舌打ちしつつ、菅原は誠信の方を振り向く。
「大丈夫か?」
「え・・ええ・・。何とか・・。それより・・一体何だったんです?」
「悪い、アイツは弦三郎とかいうやつで・・・。忍び崩れか何からしいんだが・・。以前色々あって・・それ以来しつこくつけ回されて・・勝負を挑まれてんだよ・・」
そう言いながら、菅原はため息をつく。
 「それより・・・。すまんっっ!!」
いきなり、菅原は土下座した。
「この間の事は俺が悪かった!!性欲処理みてえなこと言って!!謝るから・・勘弁してくれ!!お前さんに愛想尽かされたら・・俺は・・生きていけん・・!!」
「全く・・ずるいですね・・。あなたは・・・」
土下座する菅原に、誠信はため息をつきながら言う。
 「仕方ありませんね。この前の事は・・私も大人げなかったですからね・・。許してあげましょう・・」
「すまんっ!本当にすまんっ!恩に着るっ!!」
「ただし・・仕方なくですからね。二度と調子に乗らないで下さいよ」
「わかっとるって!あ・・!!」
「どうしたんですか?そんな顔して?」
何かを思い出したような菅原に、誠信は怪訝な表情を浮かべる。
 「どうしたじゃねえよ!誠信っ!こん馬鹿っ!!俺を連れて行かなかっただろうが!!」
自分を連れていかなかったことを思い出し、菅原は声を上げる。
「く・・!も・・元はといえばあなたが悪いのでしょう?」
「その件は悪かった。だけどな、俺を用心棒に連れていけばこういうことにはならなかっただろうが!!」
「う・・うるさいですね!あなたになんか言われたくありませんっ!!」
「馬鹿野郎!弦三郎からの矢文でメチャクチャ驚いたんだからな!!」
「ちょ・・何をするんですかっ!?」
菅原は今度は誠信を膝に載せる。
 「こういうことまたされたら、俺の心臓が持たないからな」
「も・・元は言えばあなたのせいでしょう!!降ろしなさいっ!!」
抗議する誠信だったが、菅原はそれを無視し、上着を捲り上げ、袴や下着を降ろして青年僧のお尻を出してしまう。
 バアッジィィィ~~~ンッッッ!!
「何するんですかっ!?やめなさいっ!!」
「馬鹿野郎!こっちがどれほど心配したと思ってんだ!!」
「あなたが勝手にしたんでしょう!やめ・・やめ・・うわああっっ!!」
肌を打つ音と共に、今度は誠信の悲鳴が響きわたっていた。


 「クッソ~!何でまたあんなことに・・・!!」
弦三郎は悔しそうな表情を浮かべる。
(何であんなヤツにお尻叩かれてイっちゃうんだよ!?)
お尻を叩かれているうちに射精したことに、たまらない屈辱感を覚える。
 「クソ・・!今度こそ首取ってやるんだからな!!」
叩かれたお尻をさすりながら、弦三郎はそう呟いた。


 ―完―

血脈を継ぐもの 後編(格闘・BL・アダルト要素あり)



(注:格闘・BL・アダルト要素ありです。その点をご了承の上で上でお読み下さい)


 雷光のごとき柱が立て続けに三度噴き上がり、黒騎士と名乗った男を数メートル吹っ飛ばした。
(しばらくは立てまい。龍尾剣・雷を食らったのだからな)
吹っ飛ばされた敵の姿に、近藤はそう考える。
龍尾剣・雷(りゅうびけん・いかづち)とは、先ほど使った技。
こちらへ打ち込まれる敵の剣を摺りあげ、或いは棟で弾き、返す刀で雷状の闘気を纏った剣で反撃する。
なお、通常の龍尾剣・雷は雷状の闘気を纏った斬撃のみだが、近藤の場合、さらに雷状の気柱による追撃がついていた。
 近藤は剣を手にしたまま、ゆっくりと黒騎士の方へ接近する。
黒騎士の服は、あちらこちらが破けてしまっており、破れたところから見える肌は所々、火傷を負っていた。
 (なるほど・・・マスクをした上・・それを黒く塗っていたか。だから・・顔がわからんのか)
近藤は剣を手にしたまま、慎重に接近して屈みこむと、ゆっくりとマスクをはぎ取りにかかる。
(これは・・!?)
近藤はマスクの下から現れた顔を見るや、表情が変わる。
(こいつ・・・リチャード・プランタジネットか!?)
武術で食っている者ゆえ、すぐに近藤は相手の正体を察知する。
 (武術バカとは聞いていたが・・・・。なるほど・・・得心がいったな。しかし・・。となるとこのままでは・・・)
そのとき、リチャードの目がカッと開いた。
反応しようとしたときには既に遅く、強烈なキックが近藤を襲っていた。
 腹に蹴りを叩きこまれ、近藤は衝撃で吹っ飛ばされる。
だが、地面に叩きつけられそうな瞬間、すさかず両手でバンッと強く地面を叩いて受け身を取った。
 「ククク・・よくも・・・やりおったなぁ・・・」
リチャードは正体を隠すのに使っていたマスクやフードを引き剥ぎながら言う。
「先に仕掛けてきたのはそちらだろう」
「ふふん。それもそうか。だが・・・。今度は我も本気で叩きつぶしてくれるわ!?」
リチャードはそういうと、ボクサーのような構えを取る。
 「挑まれた以上・・・全力で潰すが・・礼儀・・。覚悟はいいかな」
「それはこちらの台詞だ!」
同じように、素手格闘の構えを見せた近藤にリチャードはフフンと笑ってみせた。


 「ぬうううううんんんっっっ!!!!」
気合いと共にリチャードは猛烈な勢いで間合いを詰めて来た。
対して近藤も間合いを詰める。
互いの顔と顔がぶつかり合いそうな距離にまで迫った瞬間、二人がガッチリと組み合った。
「ぬぐぐ・・・!!」
「ぐぬ・・・!!」
 二人は組み合ったまま、渾身の力を込めて、互いに敵を押しのけようとする。
リチャード側が押したかと思うと、近藤側が押し返し、再びリチャードが押してのける。
まるで接着剤でくっ付きあったかのように、二人ともガッチリと組んだまま、今度は社交ダンスでもするかのように回り始めた。


 (やはり・・・一筋縄ではゆく男では無かったな・・・)
木陰にうまく身を隠し、双眼鏡で二人の組み合いを見やりながら、フィリップは心中でそう呟く。
リチャードはレスリングやボクシングの全欧大会でも賞杯や優勝を幾つも得た男。
それどころか自社の警備会社の特別隊員として、紛争地帯や犯罪多発地帯に乗り込み、ギャングやテロリスト相手に自慢の剣や武技を振るっているのだ。
だが、相手の近藤も武術家は無論、自社の警備会社の特別隊員として、凶悪犯罪組織などとも刃を交えた経験のあるつわもの。
ある意味で似たキャリアを持っている。
だから、幾らリチャードが強いといえど、ただで済む相手ではなかった。
 (万が一のときには・・・)
フィリップは上着の下から、通信機を取りだす。
決闘中の二人には気づかれないよう、既に自社の警備兵達を配置してある。
いつでも突入させられる準備は出来ていた。
 フィリップはジッと様子を伺う。
本当に必要なときまで、決して主人に覚られてはいけないからだ。
リチャードにとって決闘は神聖なもの。
いかに主の身を案じてとはいえ、邪魔をされることほどリチャードにとって怒りを掻きたてられるものはない。
実際、以前にもある武道家との決闘を邪魔され、そのときにきつく罰せられたこともある。
(だが・・・それでも構わない・・・)
フィリップはフィリップで覚悟を決めると、ジッと決闘の様子を伺った。


 「砕け散れっっ!!!獅王咆哮破ッッ!!!」
リチャードの右拳が電灯のようにいきなり光ったかと思うや、真っ青な光り輝くライオンがリチャードの拳から飛び出した。
これがリチャードの奥儀の一つ「獅王咆哮破」。
東洋武術に学んで編みだしたもので、闘気をライオン型のエネルギー弾に変えて拳から撃ち出す。
その弾丸は大きく、本物のライオンより一回りも大きい。
威力も絶大で、車一台を吹っ飛ばすことだって出来る。
 (あの距離!あの技なら・・・社長の勝利は・・)
近距離で、通常のパンチやキックと混ぜながら、巧みに奥儀を撃ちだした主人の姿に、本能的にフィリップは勝利を確信する。
だが、直後、ドンッという大きな音が聞こえた。
 ハッとしてフィリップが双眼鏡で注視すると、近藤がいたはずの地面に深々と足跡が。
(しまったっ!?)
フィリップは近藤が渾身の力がジャンプし、避けてしまったことに気づく。
さらに、その近藤がいつのまにかリチャードの背後に着地していることも。
 バックを取って後ろから組みつくや、近藤は腰を落とし、リチャードの腰を自身の前腰に密着させ、思い切り後ろへ弧を描くようにして投げた。
柔道で言う裏投の技だ。
リチャードを地面に倒すや、すかさず、今度はリチャードの右腕を取り、内股で上腕を挟んで極める。
腕ひしぎ十字固めだ。
 「ぬぐおおおおお!!!!!」
リチャードは右腕に力を込め、強引に近藤を振り切ろうとする。
近藤もそうはさせじとリチャードの肘関節をさらに極めにかかる。
 (いかん・・・)
フィリップはリチャードの様子に表情が曇ってくる。
このままでは主人の腕がへし折られてしまいかねない。
(今しか・・・無い・・・)
フィリップはついに決断を下すと、通信機に呼びかける。
直後、四方八方から何かが糸のように煙を引きながら戦う二人の周囲へと落下する。
着地と同時に閃光が迸り、様々な色の煙があたりを包み込む。
同時に特殊部隊のような格好をし、銃器で武装した男達が突入していった。


 「・・・・・・・」
不機嫌極まりない仏頂面を浮かべて押し黙ったまま、リチャードは椅子に腰かけ、フィリップの報告を聞いていた。
 「では・・・近藤めは無事に逃げおおせたのだな?」
「はい。信じがたいことですが。あれだけの閃光弾と発煙弾を撃ち込まれ、銃器等で武装した特殊部隊出身の者たちを、一人で、しかも素手で叩きのめして脱出するとは・・・」
フィリップが突入を指示した後の出来事を報告しながら、秘書はそう言う。
 フィリップが突入させた社員達は、いずれもSASや米国海兵隊など、先進国の特殊部隊出身者。
閃光弾や発煙弾を撃ち込まれて目や呼吸も通常ならままならず、ましてや素手。
普通なら簡単に制圧されてしまう。
ところが、近藤は彼らを素手で叩きのめしてまんまと逃げおおせたのだ。
 「ふん。そうでなければ・・この我がわざわざ勝負を挑むにふさわしい敵と思うか?」
「失礼いたしました」
「まあ近藤めは無事脱出出来たのだからよい・・・・。だが・・・・おかげで・・・我とやつとは・・・勝負を決することが出来なんだ・・・。それだけではない・・。知らぬこととはいえ・・・我は・・・部下達の力を借りた・・。神聖なる・・・決闘に・・。我は近藤めに・・・卑劣漢と思われるやもしれぬ・・・」
心の底からの悔しさに、ぶるぶるとリチャードは拳を震わせる。
 不意に、リチャードがキッとフィリップの方を振り向いた。
(来た・・・)
フィリップは心の中でそう呟く。
こういうときの主人の取る行動は自分がよく知っていた。
「フィリップ!!貴様!よくも・・・我の・・・決闘を・・・台無しに・・してくれおったな・・・」
「申し訳ありません。社長の身が・・・つい・・・」
「黙れ!たとえ我が敗れようと、死力を出しつくし、男と男の決闘の末に敗れたのならば文句などないわ!!だが・・・そなたは・・・勝負を・・・汚しおった!許せぬ!決して許せぬ!!例えそなたでも!!」
「わかっております。既に・・・覚悟は出来ております」
「まことか?」
「はい」
「ならば・・・・来るがよい。勝負を汚した罪・・・贖ってもらうぞ」
リチャードはそういうと、軽く膝を叩く。
フィリップはそれを見ると、素直に社長の膝にうつ伏せになった。
 リチャードはフィリップのスーツの上着を捲りあげると、ズボンを降ろしてフィリップのお尻をあらわにする。
あっという間にフィリップの、成人男性のものとは思えない、女性顔負けに白くて綺麗なお尻があらわになった。
 「あ・・・・・」
お尻に外気を感じるや、フィリップは羞恥に顔を赤らめる。
「何だ?恥ずかしがっているのか?」
「す・・すみません・・・」
「今さら何を考えている。一度や二度ではあるまいに」
リチャードは部下の素振りに呆れたような口調で言う。
フィリップがリチャードの怒りを買ってお仕置きされたのはこれが初めてではない。
というより、大企業の主らしからぬ性格のリチャード、フィリップがその怒りを買ってお仕置きされることはしばしばだった。
 「まぁいい。覚悟はよいな?」
「は・・はい・・」
フィリップが頷きながら答えると、リチャードは左手で秘書の身体を押さえる。
同時にゆっくりと右手を振り上げた。


 バシィンッッ!!
「くぅ・・・!!」
強い衝撃と音と共に、フィリップのお尻に大きな手形が浮かび上がる。
初っ端からの容赦ない平手打ちに、思わずフィリップの表情が変わり、苦痛の声が漏れる。
 バシィ~ンッ!ビダァ~ンッ!バアア~ンッ!バッジィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!
「・・ぁ・・・ぅ・・っ・・・っ・・・ぁ・・」
フィリップは社長のズボンの裾を掴み、必死にお仕置きを耐えようとするが、鍛え上げられた主人の身体は容赦のない打撃をフィリップのお尻に与える。
 ビッダァ~ンッ!バッジィ~ンッ!バッアァ~ンッ!ビバッジィ~ンッ!
「全く・・・!お前と・・いうやつは・・・!!」
バシバシとお尻を叩きながら、リチャードはお説教を開始する。
 ビッダァ~ンッ!バッアア~ンッ!ビバッジィ~ンッ!バッダァ~ンッ!
(うぅ・・・痛・・・痛た・・・痛ぁ・・・)
主人の平手打ちを必死に堪えようとしつつも、苦痛にフィリップは表情を歪めずにはいられない。
 ビッダァ~ンッ!バッジィ~ンッ!バッアア~ンッ!ビッダァ~ンッ!バッジィ~ンッ!
(くぅぅ・・こ・・これじゃ・・・泣いちゃい・・そう・・。で・・でも・・・そんなこと・・・したくは・・ないぃぃ・・・)
フィリップは今にも泣き叫び出してしまいそうになる自分を抑えようとする。
 (社長に・・・お仕置きされるのは・・・仕方ない・・・。他人から見れば・・・理不尽かも・・しれないけど・・・社長にとっては・・・何よりも・・・大切で・・・神聖なもの・・・。僕は・・・それを・・・汚したんだから・・・)
フィリップは自分自身にそう言い聞かせる。
リチャードのお仕置き理由は他人から見れば理不尽だろう。
だが、フィリップはリチャードにとって強いものとの決闘が何よりも大切で、そして神聖なものだということを理解している。
格闘技や武術の事は知らないし、理解もほとんどない。
だが、フィリップにとって、社長が何よりも大事にしているものは大切にしたい、そうするべきだと思っていた。
だから、たとえ社長の身を案じてとはいえ、リチャードが大切にしているものを汚す真似をした以上、お仕置きされることに不満は無かった。
 (でも・・・幾ら辛くても・・・泣いたり・・叫んだりは・・したくない・・・。それだけは・・・!!)
フィリップはフィリップなりのプライドを働かせ、必死に口を噤んで堪えようとした。
 「よくも・・・よくも・・・・男と・・男の・・・勝負をっっ!!お前には・・・お前には・・・我の気持ちが・・・強きものと拳を・・交えたい・・・我の気持ちが・・・・わからぬのかあああっっっ!!!」
バッアァァ~~ンッッ!!ビッダァァ~~~ンッッ!!ビバッジィ~~~ンッッ!!バアッッ~~~ンンンッッ!!ビッダァァ~~~ンッッッ!!
説教しているうちに激昂してきたのか、リチャードの平手打ちがさらに強烈なものへと変わってゆく。
 「ぐ・・!ぐぅぅ・・!ひっぐ・・!あぐぅぅ・・!す・・すみません・・社長・・」
さらに容赦のないものになった平手打ちに苦悶の身ぶりを見せながら、フィリップは謝る。
「すみません・・だと?フィリップ・・・そなた・・・詫びた程度で・・・許しを得られるとでも・・・?」
「い・・いえっ・・!決して・・そのようなことは・・・」
フィリップはハッとする。
リチャードの感情の地雷を踏んでしまったのだ。
 「許さぬ・・!!黙って・・・神妙に受ければ・・・早めに勘弁してやろうと思っておったが・・・。口先だけの詫びで早く仕置きから逃れようとするかっ!?」
(しまった・・・!!)
フィリップはうっかり許しを乞うような態度を見せてしまったことで、リチャードに勘違いされてしまったことに気づく。
 「許さぬ!そんな・・性根は・・絶対に・・・許さんっ!!!」
リチャードはそう叫ぶや、足を組む。
おかげでフィリップは赤く染め上がったお尻をグッと突き上げる体勢を取らされる。
(こ・・・これは・・!!)
今までの経験から、フィリップはお仕置きが非常に痛くなる体勢だとすぐに気付く。
同時に、その後のことも。
 ビッダァァ~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「うわあああああっっっっ!!!!」
突然、豪雨のような勢いで平手打ちが降り注いだ。
 (き・・・来たぁぁぁ・・・)
覚悟はしていたが、強烈な平手打ちの嵐にフィリップは悲鳴を上げてしまう。
リチャードが足を組んだときは、本気で怒った時。
そのときは今までよりズッと強烈なお仕置きをされてしまうのは今までの経験でわかっていた。
 ビッダァァ~~~~ンンンッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「許さんっ!許さん許さん許さんっ!」
「ぐううっ!うわああっ!うわあっ!うわああ~~~~~っっっ!!」
怒りにかられたリチャードが平手を叩きつける音とフィリップの悲鳴、それらがない交ぜとなってホテルのスイートルームにこだました。


 「うぅ・・・ううう・・・ひっくぅぅ・・・」
ボロボロと涙をこぼしてフィリップは泣いていた。
お尻は今や倍近くは大きく腫れ上がり、濃厚なワインレッドに染め上がっている。
厳しいお仕置きに疲れ果てているのだろう、フィリップはぐったりしていた。
 「フィリップ・・・少しは反省しているか?」
ようやくお尻を叩く手を止めると、リチャードは尋ねる。
「は・・はい・・・。社長の・・・大切な・・勝負を・・汚して・・・台無しにして・・しまって・・・申し訳・・ありませんでした・・・」
「もうせぬか?」
「は・・はい・・。誓い・・ます・・・」
「ならいいだろう。だが・・・・」
一旦言葉を切るや、リチャードは再び平手を叩きつけた。
 バッアァァ~~~ンンンッッッ!!!
「うわあああああっっっ!!」
「もし・・また邪魔しおったら・・・この程度では・・・済まさぬぞ・・」
そう言うと、ようやく本当にリチャードはお尻を叩く手を止めた。


 「う・・あぅ・・・」
「大丈夫か?フィリップ?」
リチャードは膝の上にフィリップを座らせ、真っ赤に腫れたお尻を、優しく撫でさする。
 「いえ・・平気です・・これくらい・・・」
「そうか・・。すまぬな。フィリップ」
「いきなり・・どうされたんですか、社長?」
「我とて・・・馬鹿ではない。お前が・・いつも我を案じてくれているのはわかっておる。我の所業は・・・組織の長たるものに決してふさわしい所業ではない・・・。だが・・・わかっておっても・・・どうにも止まらんのだ。我の・・・ワガママのせいで・・・いつも痛い思いをさせてしまっているな・・・」
 「そんなこと・・・お気になさらずとも・・・。それが・・・社長じゃないですか。こういうのは・・・何ですが・・。重役連中に囲まれているときより・・剣を振るい・・・強い者と立ち合っている社長は・・本当に生き生きとしてらっしゃいます・・。それは・・確かに・・社長の身は心配です。でも・・・社長の・・何よりの・・・生きがい・・楽しみを奪いたくはありません・・・。社長・・・いや・・・リチャード・・・あなたのことが・・・本当に好きですから・・・」
「フィリップ・・・・」
そういうと、互いにキスをする。
 「あの・・社長・・・」
「何だ?二人きりの時はリチャードであろう?」
「はい・・リチャード・・その・・・あなたが・・欲しいです・・」
「わかった。痛い思いさせた分、気持ちよくしてやるからな」
 リチャードはそういうと、秘書でもある恋人のお尻の奥へ手をやる。
そして、ゆっくりと指を中へ差し込むと、ゆっくりとこねくり回す。
「あん・・・リチャードぉ・・・」
「ふふ。熱いぞ。吸いついてくるぞ。相変わらずいやらしいやつだな」
「だって・・・リチャードが欲しい・・・んですもの・・・」
「ふふ。欲しがりめが。前もこんなに大きくしおって」
リチャードはフィリップの昂りを見やると、ニヤリとしながら意地悪げにささやく。
 「リチャードの・・意地悪・・僕・・もう知りませんっ!」
フィリップはそんなリチャードの態度に拗ねてみせる。
「ふふん。そんな風に拗ねてるところも可愛いな。だが・・・そろそろ我も・・・限界だ」
そういうと、リチャードはフィリップを抱き上げてベッドの方へと行く。
 「ふふ・・・最高の眺めだな」
ベッドの上に四つん這いになり、お尻を見せている恋人の姿に、リチャードは思わずにやける。
「悪趣味ですってばぁ。早く・・下さいよぉ・・・・」
ゆっくりとお尻を振りながらフィリップはおねだりをする。
「わかっておるわ。さぁ、行くぞ」
リチャードは自身の硬くなった分身を出すと、指で柔らかくした最奥部に先端を当てる。フィリップの腰を両手でしっかりと押さえると、ゆっくりと押しこみ始めた。
 「あ・・・うく・・ああぅく・・・」
太く硬いものが入って来る感覚に、思わずフィリップは表情が蕩けそうになる。
「うぉ・・・熱・・・キツ・・・よすぎて・・・たまらん・・・」
「リチャードぉ・・早く・・来て・・・」
「わかっておるわ。さぁ、たっぷりと味わうがいい」


 ―完―

theme : 自作BL小説
genre : 小説・文学

血脈を継ぐもの 前篇(格闘・BL要素あり)


(格闘・BL要素ありです。その点をご了承の上でお読み下さい)


 (ええと・・・ここだったか?)
何かのイベントのスタッフという感じの格好をした、アラビア系の男は目的のドアの前に立つと、ドアの名札を確かめる。
(よし、ここだ)
名札を見て間違いないことを確かめると、男はドアをノックする。
 「ミスター・コンドウ、出番です」
だが、何故か返事は来ない。
(おかしいな)
再びノックをし、呼びかけるも返事は来なかった。
(まさかビビってバッくれたとかじゃないだろうな?)
そんな疑惑が頭を擡げ、男はドアを押して室内に入る。
 部屋の中は控室。
男は控室内を見渡し、部屋の片隅で目的の人物を見つけ出す。
(何だ・・・いたのかよ)
ホッとしつつ、男はお目当ての相手を見やる。
男の目に現れたのは日本人の男。
 その日本人は武骨で精悍な、例えるなら黒澤映画などで活躍し、日本を象徴する名優であったさる時代劇俳優にどことなく似ていた。
無駄なく引き締まり、狼やドーベルマンを思わせる強さとしなやかさを兼ね備えた肉体を、浅葱色をベースにした衣服で包んでいる。
両脚を組んで座り、膝の上に刀を横たえ、目を閉じているその姿は瞑想をする宗教者のようだった。
 (ったく・・・寝てんのかよ?しょうがねえな・・・)
アラビア系の男は呆れた感じで、日本人の男を起こそうと近づく。
(え・・・?)
不意にアラビア系の男は違和感を覚えた。
何か、目に見えない膜のようなものが迫ってくるかのように感じたのだ。
「う・・・おふ・・・」
不意に男は腹を押さえて蹲る。
まるでギリギリと果汁を搾る機械に胃がかけられているかのように感じたのだ。
その感覚はどんどん増してゆき、やがてタラタラと脂汗が噴き出し、挙句の果てには呼吸まで苦しくなって来る。
「ひ・・はひ・・・助け・・・はひ・・・」
苦しみのあまり、男がそう呟いた時、ゆっくりと日本人の男の目が開いた。
 同時にまるで嘘のように苦しみが引いてゆく。
「はふ・・・・助かった・・・」
ホッとして男が一息入れたところで、日本人の男が口を開いた。
 「出番ですかな?」
「あ・・はい。すぐに会場の方へ・・どうぞ・・・」
男は静かに頷くと、膝上の刀を手に提げ、ゆっくりと立ち上がる。
そして、静かに出て行った。
 (ったく・・・・何だったんだ?)
男はさきほど感じた異様な感覚に首を傾げる。
あんな経験は初めてだ。
(まあいいか。考えたってわかんねえんだから)
そう考えて頭を悩ませることをやめると、男はさっさと控室を後にした。


 会場内のボックス席の一つ。
そこにその男はいた。
男はイギリス系と思しき白人男性。
仕立ての良いサヴィル・ロー(イギリスの通り。王族や有名人御用達の名門紳士服店が立ち並ぶ区域として知られる)製のオーダーメイドスーツや、秘書らしい青年を連れているところから、地位と身分のある男性だと容易に想像できた。
 男は背は高く、猫科の猛獣や神話の英雄を思わせる、力強くかつ見事に均整の取れた体格の持ち主で、王族や貴族を思わせる威厳と端正さ、力強さを備えた面立ちをしている。
実際、彼は王の血を持っていた。
彼の名はリチャード・プランタジネット。
西洋史に詳しい方、ロビンフッド物語を好きな方なら、ある人物を思い浮かべるだろう。
 そう、獅子心王としてその武勇を知られ、騎士道物語の華と謳われた英雄、リチャード1世だ。
彼はその末裔であり、貴族の称号を持ち、警備業をはじめとして様々な業務を営むキングダム・グループという企業グループを営んでいた。
 「つまらぬ・・・・じつにつまらぬな。そうは思わんか?」
リチャードは退屈そのものといった感じで、傍にいる人物に話しかける。
影に寄り添うように立っているのは一人の青年。
青年は見事な栗色の髪の持ち主で、眼鏡がよく似合う、女性と見まがうばかりの美しい面立ちをしている。
すらりとした身体つきで、リチャードほどではないが、仕立ての良いスーツを身につけている。
リチャードが差し出したワイングラスに酒を注ぐといった行為などから、リチャードの秘書や従者的な存在であると想像できた。
 「はぁ。私にはよくわかりませんので・・」
「ふ、それもそうか。そなたにはこの我のことしか興味はないからな」
そういうとリチャードはボックス席の椅子に腰かけたまま、部下を抱き寄せる。
「あ・・・社長・・。こんな・・・ところで・・・」
「こら。二人きりのときはリチャードと呼べと言っておいたはずだぞ。忘れたのか?それでは後でお仕置きが必要か?フィリップ?」
リチャードはニヤリと笑みを浮かべてフィリップこと部下の青年に尋ねる。
フィリップはリチャードの秘書であるが、同時にリチャードとそういう関係にもあった。
 「あ・・・やめて下さい・・・しゃ・・リチャード・・・。こんな・・ところで・・」
「何を言ってるんだ、ここはそうは言ってないぞ?むしろ興奮しているんじゃないか?大人しそうな顔して意外とマニアックだな」
愛しい主からの愛撫に生じる昂りを見せる部下に、リチャードはニヤニヤしながら言葉で責め立てる。
恥ずかしさにフィリップが顔をしかめ、このまま頂いてしまおうとリチャードが考えた時だった。
 不意に会場が大きくどよめいた。
思わずリチャードが会場の方を振り向く。
すると次の対戦相手達が出て来ていた。
 そのうちの一人、ミスター・コンドウと呼ばれた男を見るや、リチャードの表情が変わる。
すっかり真剣な表情に変わったリチャードは席へ戻ると、食い入るように試合を見つめる。
コンドウは鞘から刀を抜き放ち、静かに構える。
それは、身体を半身に開き、刀身を左に傾斜させるような構え。
相手もこの国で伝統的に使われてきたアラビア風の三日月刀を引き抜いて構えるが、何故か全く動かない。
 リチャードの目はジッとコンドウの対戦相手方に視線を注いでいる。
何故動かないのか。
その理由を知るためだ。
 リチャードの目は対戦相手の表情と肌の様子を捉える。
コンドウの対戦相手は全身から脂汗と思しき汗を噴き出しており、その表情は極度の緊張感に満ちている。
敵が容易ならざる相手であることを肌で感じ取っているのだ。
実際、アラビア人の選手は少しずつだか後ずさっている。
ときどき刀を振り上げたりしては斬りかかろうとするが、相手に圧倒され、後ずさってしまう。
 そんな試合内容にリチャードは少しずつ興味を覚えてくる。
コンドウとやらは微動だにしない。
だが、リチャードはコンドウがゆっくりと闘志を解き放っていることに気付いていた。
例えるなら、コンドウの周りに見えないドーム状のバリヤーが張り巡らされ、それがジワリジワリと周りへと広がってゆく、そんな感じだろうか。
 相手のアラビア人武術家もそれなりに修業を積んできているから、敵の闘志に呑まれまいと必死になる。
しかし、見る者が見れば格の差は歴然、とてもアラビア系武術家に勝ち目は無い。
本音を言えばさっさと降参するなりしたいところだろう。
だが、大勢の観衆が見物する中、そんな無様な真似は武術家として出来ない。
ほとんどヤケクソと言わんばかりの表情で、アラビア人は刀を振り上げ、コンドウに斬りかかった。
今にも刃がコンドウの身体に達するかと思われた瞬間、微かにコンドウが後ろに身を引いた。
アラビア人武術家の刀は僅か数ミリの差で、コンドウの身体どころか服にも触れず、勢い余って試合場のマットに前のめりの体勢で刀を叩きつけてしまう。
マットに刀が斬り込んだ瞬間、ようやくコンドウが動きを見せた。
コンドウはポンと足を振り上げる。
直後、アラビア人はウッと呻いてそのまま崩れ落ちた。
鳩尾に蹴りを食らったのだ。
審判がコンドウの勝利を宣言するや、コンドウは刀を鞘に納めて静かに出て行った。


 「ほほぅ・・・・。そこそこ・・・出来るやつではあるようだな・・・」
リチャードは先ほどの試合にすっかり興味を示していた。
「フィリップ」
「はい、社長」
「あの日本人について調べるのだ。済み次第、速やかに我に報告せよ」
「わかりました」
 それから数時間ほど経った頃。
リチャードは外国人やこの国の政府要人向けの高級ホテルのスイートルームにいた。
リチャードは真剣な表情で何か研いでいる。
研いでいるのは剣。
 剣は肉厚で両刃、片手でも両手でも使える長さの柄がついている。
リチャードの愛剣だ。
リチャード自身、古式剣術を筆頭に様々な武術・格闘技を習得しており、ヨーロッパ圏の大会で幾度も優勝や賞杯を獲得しているつわものだった。
 「失礼します」
リチャードが愛剣を手入れしていると、フィリップが入って来る。
「来たか。どうであった?」
「はい。私が調べましたところでは、あの男は近藤勇蔵、日本屈指の武術道場の主にして、アジア圏を代表する企業、新撰グループの幹部でもあります。また、あの男を調べていて、いささか社長が面白いと思う事実も判明いたしました」
「何だ?」
「あの男、日本では知らぬ者がいない、近藤勇という男の末裔だそうです。その男も武術家で、今から140年ほど前、時の政府の布告に応じて友人らと共に対テロ特別警察とでもいうべき組織を造り上げ、多くの反政府的なテロリストを震撼させた男だそうです」
「ほほぅ・・・。それは面白い・・。奴も・・・戦士の血脈を継ぐものか。気に入ったぞ!フィリップ・・・わかっておるな?」
「社長・・・やはり・・・近藤めと・・・立ち合うつもりですか?」
「決まっていよう!我の一番の喜びを知らぬそなたではあるまい?」
主人の意思にフィリップはため息をつく。
止めても無駄なことは長年の経験からよくわかっていた。
「わかりました・・・社長の・・お望みの通りにいたします・・・」
「ふふ。頼むぞ。愛いやつだ。後でまた可愛がってやるからな」


 まだ日が昇らない時刻。
市内の公園に近藤の姿があった。
「998・・・999・・・1000っっ!!」
近藤は数を数えながら刀を振るう。
毎朝欠かさず行っている素振りだ。
 (一息・・・入れるか)
近藤は刀を鞘に納めると、一緒に持って来たペットボトルを取りだし、ミネラルたっぷりのスポーツ飲料で喉を潤す。
(ん・・・・・・)
ペットボトルを傾けながら、近藤は異変に気づく。
無意識のうちに左手で鞘ぐるみの刀の鯉口を切っていた。
 「誰だ・・・・・・」
いつでも抜刀できる体勢で、近藤は背後を振り向く。
すると、フード付きの真っ黒なローブで全身を覆った奇妙な人物が立っていた。
 「さすが・・・・。昨日の武術試合で難なく相手を倒しおった男だな・・・」
「見ていたのか・・・・。何者だ」
「黒騎士とでも名乗っておこう。貴様と・・・立ち合いが望みだ・・・」
「断っても・・無駄なようだな・・」
「わかるか。さすがだな・・・」
「俺とて武術家の端くれだ。舐めると・・痛い目を見るぞ・・」
「ふふん・・・我に勝てるかな?」
そういうと黒騎士と名乗った怪人物はローブの下から、頑丈なつくりの西洋剣を抜き放って構える。
対して近藤も、刀を抜き放って対峙した。


 (こいつ・・・・・)
近藤は黒騎士と向き合うや、表情が変わる。
(喧嘩を売ってくるだけあって・・・出来るな・・・)
近藤はローブの敵が身体から発散する闘志を感じる。
それは、自分と決して遜色の無いもの。
(昨日までの試合で倒した者とは・・・月とスッポンだ。舐めてかかっては・・・倒されるぞ)
近藤は刀を両手で構えたまま、闘志を全身から放つ。
 闘志はドーム状にゆっくりと周囲へと広がってゆく。
だが、ちょうど二人の間の真ん中あたりで闘志の動きが止まる。
黒騎士が放つ闘志が壁として立ちはだかっているからだ。
(まるで・・・巨大な岩山・・。だが・・・負けはせぬ!!)
近藤は心の中で呟くと、さらに闘志を解き放った。
 (こやつ・・・やるではないか・・・)
ローブの下でリチャードはニヤリと笑みを浮かべる。
黒騎士の正体はリチャード。
フィリップに命じ、この国に滞在中の間の近藤の行動を調べさせ、その結果、毎朝必ずこの公園で朝の一人稽古に励むことを突き止めた。
そこで、そのときを狙って近藤に勝負を挑んだのである。
 自らも武術家であり、また偉大な戦士の血を引くことを誇りとしているリチャードにとって、強い相手と立ち合うことこそ、何よりも己の血潮を熱くさせてくれるもの。
それこそがリチャードの何よりの生きがいの一つであった。
 リチャードは闘気を放って近藤の闘気を押しのけようとするが、近藤もすかさず闘気を放って押し返す。
互いに武器を構え、ジッと睨みあっているだけだが、両者ともポツリポツリと汗が吹き出し、喉がチリチリと焼けつくような感覚を覚える。
 二人とも、一歩、また一歩と歩みを進めてゆく。
間合いを詰めるたびに、見えざる闘気のバリヤのぶつかり合いはさらに強まる。
二人とも、メラメラと燃え盛る、キャンプファイヤーばりに巨大な炎へ接近し、その熱風に当てられているかのような感覚を覚える。
 (火傷でも・・しそうだ・・・)
近藤は両腕の表面が熱くなり、汗が噴き出す様子にそんなことを思う。
(だが・・・それは・・・敵も同じこと・・・。ここが踏ん張りどころだ)
肌に灼熱の熱さを感じながらも、近藤はさらに突き進んでゆく。
 (我に・・・ここまで汗をかかせおるとは・・。やりおるわ!!)
一方、リチャードは近藤の闘志に当てられながらも、敵に感嘆の意を覚える。
(素晴らしい!実に・・・素晴らしい!この男・・・・わが剣によって・・・必ず倒してくれる!!)
よき敵に出会えた喜びに、リチャードは嬉しさでこみ上げてくる。
やがて、ひと飛びで敵の懐へ斬りこめる距離まで来たところで、再び両者とも立ち止った。
 ここで、再び両者とも剣を構えたまま睨み合う。
ジワリと汗が吹き出し、場所によっては火傷でもしたかのように肌が赤くなったりしている。
やがて、二人ともゆっくりと、弧を描くようにして横へと動き始めた。
やがて両者の位置が完全に入れ替わると、再び立ち止る。
そこで、再び両者とも睨み合う。
互いに睨み合い、睨み殺してくれんといわんばかりに睨む。
さながら目からバチバチと雷光が飛び、それがぶつかり合っているかのようだった。
幾度も両者の表情が変わるが、それでも踏み込まない。
 (耐えろ!耐えろ耐えろ耐えろ!)
近藤は自身を幾度も叱咤する。
これは気力と気力の勝負。
一瞬でも気負けしてはいけない。
 (こやつ・・・まだ耐えるか!?)
リチャードは近藤に内心で舌を巻く。
自分はこれでもかと言わんばかりに殺気を近藤にぶつけている。
これが他の相手だったら、殺気に耐えられなくなって何かアクションを起こすところだ。
だが、近藤は頑として耐え抜いている。
これでは仕掛けようもない。
 (いかん・・・我の方が・・・痺れを切らしそうだ!?)
リチャードは近藤の忍耐力に危機感を覚える。
このままでは敵はこちらの殺気による威圧を耐えきってしまうだろう。
そうしたらこちらが不利になる。
既にリチャードの方はこの硬直状態に痺れを切らしかけているのだ。
(くそおっ!もう・・・我慢出来んっ!!)
リチャードは膠着状態についに痺れを切らし、地面を蹴立てて斬り込んだ。
 「オオオオオッッッッ!!!!」
気合いと共にリチャードが真っ向から斬りかかる。
渾身の力でリチャードの豪剣が振り下ろされる。
そこへすかさず近藤も身を進め、同時に刀を振り上げる。
 (しまっ・・・!!)
敵の刀と己の剣が触れた瞬間、リチャードはハッとする。
敵に剣を摺り上げられると同時に攻撃を弾かれてしまったのだ。
当然、リチャードは体勢を崩し、隙が出来る。
直後、バチバチと切先に雷のような青い光を纏った近藤の刀が振り下ろされる。
 「ぐおおっっ!!!」
強烈な衝撃と共にリチャードはさらに大きくのけ反る。
さらに、追撃と言わんばかりに、近藤の刀に纏われた雷光が地面に着弾するや、三発立て続けに地面から雷の柱のようなものが上がってさらにリチャードを吹っ飛ばした。


 (やはり・・・・心配だ)
リチャードが近藤と立ち合いを始めた頃、フィリップはヤキモキしていた。
(社長に叶う武術家などいないと思うが・・。しかし社長が戦おうとする相手も油断ならない・・・。私が行けば勝負を邪魔したと社長は怒るだろう。だが・・・それでも構わない)
そう決意すると、フィリップはすぐにもホテルを後にした。


 ―続く―

theme : 自作BL小説
genre : 小説・文学

アッシュ神父の不運な日常(鬼畜・微BL要素あり)



(注:鬼畜・微BL要素ありです。その点をご了承の上でお読み下さい)


 薄暗い裏通り、売春婦らしい女を抱えている男がいた。
いかにも金で買うしか女とは縁のない、脂ぎったオヤジという感じの男は、あろうことか女の首に齧りついて血をすすっている。
血に染まった男の口をジッと観察していると、まるで狼や犬のように鋭い犬歯がある。
吸血鬼だ。
 「あ~っ、クソッ!やっぱりまじぃな~~。まあ仕方ねえよな。売春婦じゃロクなもん食ってねえしな」
吸血鬼は血を吸われて気を失った売春婦の身体を乱暴に放り捨てる。
「不味くて食えたもんじゃねえ・・・。くっそ・・腹が減ってたからって売春婦なんぞに手を出すんじゃなかったぜ・・」
そういって吸血鬼がその場を去ろうとしたときだった。
 突然、足首が締まったような感覚を覚えたかと思うと、グッと地面に引き倒される。
(くそっ!な、何だっ!?)
思わず吸血鬼は地面に爪を立てて防ごうとする。
だが、夕闇の中、何かが勢いよく落下してきたかと思うと、両手の甲にそれがグサリと突き刺さった。
 刺さったのは注射器を彷彿とさせる代物。
(ゲッッ!!)
手に刺さった代物を見るや、吸血鬼は表情が変わる。
刺さったものの正体をよく知っていたからだ。
 直後、手の血管がグッと浮き上がったかと思うや、一瞬で血が沸騰して両手が内部から破裂するようにして吹っ飛ぶ。
「うぐわあっっ!!」
吸血鬼は思わず悲鳴を上げる。
 「こ・・こんなもん・・・使う奴はぁあああ・・・・」
恐る恐るといった様子で吸血鬼は闇の中に向かって目を凝らす。
やがて、ゆっくりと闇の中から何者かが姿を現した。
 現れたのは神父服姿の青年。
年は19~22,3歳くらい、やや長めの黒い髪の持ち主で、眼鏡をかけている。
女性と見まがうばかりの端正な面立ちだが、どこかキツめな印象を与えるものだった。
身長170センチぐらいで、すらりとした、細身だが均整のとれた身体つきをしている。
神父服の上から交差するようにして、注射器風の飛び道具をつけた革帯を二つ上半身に身につけており、腰に締めた帯には二本、棒状の武器を差している。
そして指の部分が空いた手袋をつけた両手に両端に分銅がついた鎖を握り、その鎖付き分銅の一端が吸血鬼の片足を捕えていた。
 「ふふ・・捕まえましたよ・・」
「てめぇは・・・アッシュ!!」
吸血鬼は青年神父の姿を見るなり、恐怖とやはりといった表情を浮かべる。
青年の名はアッシュ。
魔物狩りを任務とする神父だ。
 アッシュは細身の身体からは想像できない力強さで吸血鬼の身体を足元まで引き寄せる。
「な・・何をする気だ」
「私が吸血鬼に聞きたいことなんてわかってるでしょう?」
「しゃ、しゃべると思ってんのか!?吸血鬼にも仁義ってやつがあんだよ!!」
「ほほぅ。中々見上げた心がけですねぇ。でも・・それがどこまで続きますかね」
そういうと青年神父は腰帯から棒状の武器を取りだす。
 アッシュが手にしたのは全長30数センチ、握りの部分に糸を巻いて持ちやすくし、その上には大きな鉤が両方についている。
先端は突きも出来るようにするどく尖っていた。
サイ、あるいは筆架叉(ひっかさ)と呼ばれる、空手や中国拳法などで用いられる武器で、両手にそれぞれ一本、いわゆる二刀流の感じで使われる武器だ。
 「ちょっ!ま、待てっ!待て待て待てっ!」
危険を感じて吸血鬼は叫ぶが、直後アッシュは両腕を振り上げる。
直後、鈍い音と中年男の絶叫が立て続けに響き渡った。


 それから1,2時間経った頃・・・。
町郊外に佇む洋館にアッシュ神父の姿があった。
(ここですね・・)
アッシュは洋館の前に立つと、ジィ~っと食い入るように洋館を見つめる。
その表情には執念が感じられる。
やがて、ゆっくりとアッシュは敷地内に足を踏み入れた。
 まるで忍者のように足音を立てることもなく、アッシュは地下へ通じる階段を下りてゆく。
やがて、通常ならワインなどを保管するための部屋へやって来た。
(感じる・・・・ここだ・・・・。間違いない・・)
アッシュ神父はドアの向こうから漂ってくる妖気に目指す相手の存在を確信する。
やがて、アッシュは慎重に腰からサイを引きぬいて構え、静かにドアを開けると、恐る恐る様子を伺う。
そして誰かが襲ってくる気配が無いことを確かめると、室内へ踏み込んだ。
 両手にサイを構え、慎重にアッシュ神父は室内を見回す。
すると、部屋の真ん中に大きく手の込んだ彫刻を施した豪華な棺が置かれていた。
その棺を見るや、アッシュの表情にさらなる緊迫が走る。
これまで以上に慎重に、ゆっくりとアッシュは棺へ接近する。
やがて、棺の傍までやって来ると、神父はゆっくりと棺の蓋をあけにかかる。
細心の注意を払って音が出ないように蓋を開けると、中から何者かの姿が現れた。
 現れたのは高級な夜会服とマントに身を包んだ中年男性。
きりっとした面立ちに口髭と頬髭を生やし、背が高くすらりと引きしまったその姿は政治家や大企業の経営者といった感じだった。
だが、よく見てみると、微かに口から鋭い犬歯がチラリと見えている。
吸血鬼だ。
食い入るように棺の中で眠る吸血鬼を見つめているうちに、アッシュの表情がだんだんと変わってゆく。
やがて、アッシュは両手のサイを逆手に持ちかえるや、吸血鬼の胸目がけて振り下ろした。
 肋骨と肋骨の間を通り左右の肺を見事に貫いたと思った瞬間、ボンッという音と共に煙が噴き出す。
(しまったっ!!)
罠にかけられたことにアッシュは思わず歯噛みする。
同時に強烈な打撃がアッシュ神父を襲う。
その衝撃でアッシュの身体は壁に叩きつけられた。
 「ぐ・・・ぐふ・・・」
せき込みながらもアッシュは立ち上がる。
煙が晴れると同時に、棺で眠っていた吸血鬼が姿を現した。
 「おやおや~?誰かと思えばアッシュ神父ではないか?」
吸血鬼はアッシュの姿を見るやそう呟く。
「ふふん。性懲りもなく俺を仕留めにきたか?」
ニヤニヤ笑みを浮かべながら吸血鬼はアッシュにそう問いかける。
 「決まってるでしょう!フランコ!今日こそ覚悟しなさい!!」
「どうかな~?お前に俺が倒せるかな~?」
ニヤニヤと小馬鹿にするような口調でフランコと呼ばれた吸血鬼はそう挑発する。
「言いましたねっ!!」
カッとなるやアッシュ神父はサイを構えて突っ込んでゆく。
だが、難なくかわされたかと思うや、もろに反撃を食らってしまった。
 「うっっ!!」
ボディに蹴りを叩きこまれたかと思うや、流れるような動きでフランコはアッシュ神父のあちこちにピンポイントの打撃を打ち込んでゆく。
 「くっ・・!何をしたんですっ!」
全く手足が自由にならないことに気づくや、アッシュは叫ぶように言う。
「フフフ・・・。いわゆるツボを幾つか突かせてもらった。お前は手足を動かすことは出来ん」
「無抵抗の者をいたぶり殺そうと言うわけですか。はっ。イイ趣味してますねぇ」
「殺す・・・?何を言ってるんだ。俺がお前を殺すわけがないだろう?」
「じゃあどうしようと言うんです!」
「ふふ。そりゃ決まってるだろう?こういうことだ」
吸血鬼は神父の手首を掴んだかと思うや、グイッと引き寄せる。
引き寄せたかと思うや、フランコはアッシュを小脇に抱え、神父服の裾を捲りあげるや、ズボンを降ろしてあっという間にお尻をむき出しにしてしまった。
 「ちょっ!な、何するんですかっ!?」
「言わなくても分かりきってるんじゃないのか?まあいい。身の程知らずに俺に挑んできた愚か者にその代償を支払わせてやるだけのことだ」
そういうや、吸血鬼は片手を振り上げた。


 パッシィ~ンッ!
「く・・・」
甲高い音と共にお尻の表面で痛みが弾ける。
パッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パッアァ~ンッ!
弾けるような音と共に吸血鬼は平手を振り下ろし、赤い手形が神父のお尻に刻みつけられてゆく。
 「く・・やめ・・やめなさい・・・」
「ふふん。何を言っている。愚か者に代償を支払わせてやるといっただろう。忘れたか?」
そういうとフランコはお尻を叩き続ける。
(く・・・な・・何だって・・こんな・・ことに・・)
屈辱感でアッシュ神父は歯噛みせずにはいられない。
 パッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアッシィ~ンッ!パッアッアア~ンッ!
「それにしても貴様も大した者だなぁ?」
パシパシとお尻を叩きながら吸血鬼は神父に話しかける。
「何が・・です?」
屈辱感を抑えかねている声で神父は問い返す。
「これで何度目だったか?もう10回は同じ目に合わされてるんじゃないのか?」
ニヤニヤ笑みを浮かべながらフランコはそう言う。
 アッシュ神父がフランコに敗れ、お尻を叩かれるのはこれが初めてではない。
何度もフランコに挑戦しては敗北し、そのたびにお尻で敗北の代償を払わされているのだった。
「だったら・・・何だって言うんです?」
「お前、学習能力ってやつがないんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょう!馬鹿にするのもいい加減にしなさいっ!!」
思わずカッとなって神父は叫んだ。
 「しかしそう思わずにはいられんが?俺に何度もやられたにも関わらずしつこく挑んでくるのだからな?」
「こんな屈辱・・・与えられてリベンジしないでいられるわけ・・ないでしょうが・・・」
怒りで声を震わせながらお尻を叩く吸血鬼に神父はそう言い返す。
「だがそれにも限度があると思うが?やっぱり貴様は学習能力が無いんじゃないのか?」
「いい加減にしなさいっ!それ以上言ったらたたじゃおきませんよっ!!」
さすがにアッシュは怒りを爆発させる。
 「ほっほ~う。まだそんなことを言うのか~」
(しまった・・・・)
フランコの口調にアッシュは罠にかけられたことを悟る。
「俺に敗れた身でありながら悪口雑言・・・立場をわきまえているとはとても言い難い・・」
「だったら何だって言うんです!魔物なんかに屈服なんかしませんよ!」
「どうやら仕置きが足りないようだな。フフフフ・・・・」
吸血鬼は鬼畜な笑みを浮かべる。
「そんな身の程知らずな馬鹿者にはもっとキツく仕置きしてやろう。ククク・・・」
そういうや、今度は振り下ろしていた方の腕を伸ばし、指をパチンッと鳴らす。
直後、地面に魔法陣が現れたかと思うと、王侯貴族が使っていそうな、ゴージャスなデザインの椅子が現れた。
 フランコは魔法で呼び出した椅子にどっかと腰を降ろすと、足を組んでアッシュ神父を載せる。
おかげでアッシュは赤く色づいたお尻を突き上げる体勢になった。
この体勢になると同時に、アッシュの表情が微かに変わる。
「おやぁ?さすがにビビってるのか?」
「な・・何を言ってるんですか!こんなの・・怖くも何ともありませんよっ!!」
恐怖を感じたことを、それを気付かれたことが屈辱なのだろう、アッシュ神父はそう言い張る。
「ふふん。なら遠慮はいらんな」
そういうと、フランコは思いっきり右手を振り上げた。


 バッアァァ~~ンッッッ!!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「ぐっ・・!ひっ・・!ぎひぃぃ・・!ぎゃひぃ・・!」
まるで豪雨のように降り注ぐ平手の嵐に、アッシュ神父は苦痛に身を悶えさせる。
 「ふふん。痛いなら素直に泣いた方が身のためだぞ?」
「こんな・・もの・・痛くも・・何とも・・ありませんよ・・」
「相変わらず強情だな。ふふん、まあ、そうでなくてはつまらんがな」
そういうと、再び吸血鬼は平手の嵐を降らせる。
激しく平手を打ちつける音と、神父の苦悶の声が響き渡った。


 「全く・・強情だな・・・」
やや呆れが入り混じった表情で、使い古したベッドの上にぐたりとした姿でうつ伏せになっているアッシュ神父を見やりながらフランコは呟く。
神父のお尻は二倍近く腫れ上がり、ワインレッドどころか紫がかった色になってしまっていた。
 「全く・・・執念深くて・・・しつこい奴だな・・・。呆れるが・・大した・・若造だ」
吸血鬼は好意と愛しさが入り混じった表情を浮かべ、優しさの籠った目で神父を見降ろす。
「何度やられても懲りずに・・そして・・執念深く追って来る・・・そして・・幾ら屈辱を与えようが絶対に屈服しまいとする・・そのプライド・・ふふ・・どれもが・・本当に可愛くて・・たまらんな」
そういうと、吸血鬼は身を屈ませ、愛しさの籠ったキスを神父の頬にした。


 「くぅぅ・・・・・」
ようやく目が覚めたアッシュ神父は上体を起こしてあたりを見回す。
「ここは・・?痛ぅぅっっ!!」
突然、お尻に痛みを感じてアッシュ神父は振り返る。
するとむき出しにされたお尻の上に濡らしたタオルが置かれているのに気がついた。
 「何で・・あっ!」
ようやくアッシュ神父は今までのことを思い出す。
同時に何かが目の前に置かれていることに気がついた。
 ハッとして手に取ってみると手紙。
慌ただしくアッシュは手紙を開けてみる。
 『これを読んでいるということはもう目が覚めたのだろう。
ふふふ、尻を叩かれている姿は何とも可愛かったぞ。次は○○○の街に行くつもりだ。屈辱を晴らしたいなら追ってくるがいい。もっとも・・・今度も俺が尻を叩いてやるがな。今から尻用の軟膏でも買っておくがいい。マイ・スイート・ボーイ』
ブルブルと全身を震わせると、アッシュはめちゃめちゃに手紙を引き裂いた。
 「誰がマイ・スイート・ボーイですかっっ!絶対・・・絶対・・今度こそ倒してやりますからっっ!!!!」
お尻の痛みも忘れて叫び、神父はそう誓った。


 ―完―

theme : 自作BL小説
genre : 小説・文学

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