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マカロニの末裔たち2 ノーネーム



 眠ることの無い大都会。
ネオンサインや街灯が輝く中、買い物袋を抱えてゆく男の姿があった。
男は顔に刃物傷があり、凶悪そうな面相をしている。
買い物よりも、銃やナイフを手に物騒な商売をしているのが似合いそうな男だった。
男が袋を抱えたまま歩いていると、不意に脇からぬっと手が伸びる。
掴まれたかと思うや、男は細い路地へ引きこまれてしまった。
 ドゴッッッ!!
「ぐっっ!!」
鈍い音と共に男はのけ反り、路上に倒れる。
顔を押さえながら男が身体を起こそうとすると、足で踏みつけられるようにして押さえこまれてしまう。
同時に、男は相手の姿を認めた。
 男を引きずりこんだのは十代後半らしい少女といってもいい若い女。
少年のように短めで黄金のように輝く金髪と海を思わせる見事なブルーの瞳をしている。
実際、面立ちも美しいがどことなく少年的な要素を持っており、ポンチョを背中の方へ捲り上げて胸の膨らみが見えていなければ中性的な容貌の少年と間違えたかもしれなかった。
女は茶色を基調にしたウェスタンハットとポンチョを身にまとっている。
ハットとポンチョにはワシやガラガラヘビといった、西部劇などでお馴染みの生き物が白で描かれている。
ポンチョの下は若い娘らしい、ややスレンダーながら健康的な身体つきで、無袖の革ジャンと半袖のシャツ、ショートパンツにオーバーニーソックス、ブーツといった出で立ちをしている。
そして、その腰には黒光りする拳銃を納めたガンベルト。
拳銃は全長20センチくらいの黒いリボルバー。
正式名称スミス&ウェッソンM10、通称ミリタリー&ポリス。
その呼び名通り、警察用、軍用として採用され長い歴史を持つ銃だ。
 「だ・・誰だテメェは!?」
男は凄んでみせるが、娘ガンマンはたじろぎもせずに尋ねる。
「エドゥアルドはどこだい?」
「あん?誰のこと言ってやがる!」
「とぼけるんじゃねえ!!」
男の態度が気に入らなかったのか、娘は思いっきり男の喉を踏みつけた。
苦痛に思わず男は咳き込みうめき声を漏らす。
それを尻目に女は拳銃を引き抜くと、親指を撃鉄にかけて銃口を突きつける。
「正直に吐きな。命は惜しいだろ?」
本気で撃ちかねないと思ったのだろう、男は呻きながらも大人しく質問に答えた。


 それから三十分ほど経った頃・・・市内のさるマンションの一室にその男はいた。
男はスペイン系らしい白人男性で、高級なスーツやマフラーを身につけている。
その目には冷酷な光をたたえており、多くの命を奪ってきた者であることを示していた。
彼の名はエドゥアルド、スペイン系犯罪組織の幹部だ。
ある事件の被疑者として立件されており、保釈中の身なのだが、どうも裏工作の過程で何やら雲行きが怪しくなり、危険を察知した彼はそのまま逃亡したのだ。
そのため、警察や賞金稼ぎから姿をくらましているのである。
 賞金稼ぎと書いたが、西部開拓時代以来、アメリカには賞金稼ぎという職業が存在している。
ただ、現在ではかつてと異なっており、賞金を出すのは保釈保証業者である。
保釈保証業者とは、逮捕された被疑者に代わり、幾らかの手数料を取って保釈金を立て替える業者のこと。
保釈金は非常に高額で、大概の被疑者にとっては払えない。
そのため、専門の業者が手数料を受け取って保釈金を肩代わりする。
保釈金は被疑者が裁判を受ければ返還されるが、逃亡によって裁判を受けなかった場合には返還されない。
そこで、そういう業者の代理人となり、逃亡者の捜査・逮捕をプロの賞金稼ぎが行っている。
そのため、警察のみならず賞金稼ぎの目も警戒しなくてはいけないのである。
 エドゥアルドが杯を傾けていると、ベルが鳴った。
傍にいる部下達が互いに目配せをすると、一人が玄関の方へ行く。
拳銃を手にして警戒しながら外を覗くと、買い物にやった部下の姿。
ドアを開けると、警備の男は
「おせえぞ。何してたんだ?」
「す、すんませ・・・のわあっっ!!」
突然、突き飛ばされたような勢いで買い出しから戻ってきた男が警備役に突進する。
折り重なるようにして二人が床に倒れたかと思うや、ドアが勢いよく開いてポンチョ娘が飛び込んだ。
 マフィアの男は急いで飛びついた部下を押しのけ、侵入者を撃退しようとするが、それより先に女の銃が火を噴いた。
銃声を聞きつけ、他の部屋から拳銃を持った他の護衛役が飛び出してくる。
女は左手を撃鉄に添えるや、目にも止まらぬ勢いで立て続けに打ち叩く。
轟音と共に拳銃が立て続けに火を噴き、護衛役達は銃を撃つ間もなく、床へ倒れ伏す。
ガンマン娘は敵を全員倒したのを確かめると、薬莢を排出して詰め替える。
その作業が済むと、奥の部屋へゆっくりと足を進めた。


 ゴクリ・・ゴックン・・・。
エドゥアルドは自動拳銃を握り締め、緊張した面持ちで食い入るようにドアを見つめている。
扉の向こうでの轟音で何があったのかはすぐに推察できた。
部下がやられた以上、頼りになるのは自分一人。
エドゥアルドは五感をフルに動員し、ドアの向こうの様子を探る。
食い入るように見つめていると、微かにドアノブが動き始めた。
ドアノブはゆっくりと回転してゆく。
侵入者がドアのすぐ向こうにいることに、エドゥアルドはゆっくりと息をのむ。
彼は深呼吸をして自らを落ち着かせにかかる。
やがて、ドアノブが完全に回ったかと思うや、蹴っ飛ばす音と共に思いっきりドアが開いた。
(今だ!!!)
心中で叫ぶや、エドゥアルドは銃をぶっ放す。
直後、人影らしいものが見えたかと思うや、ぶっ倒れた。
 倒れているのはポンチョ姿の男だか女だかわからない若造。
(こんな・・ガキだったのか・・)
エドゥアルドはこんな若者にビクついたのかと思うと自嘲の笑みを浮かべる。
だが、今や若造は床に倒れている。
そう安心したときだった。
 撃ち殺したはずの若造の身体が動いたかと思うと、ゆっくりと立ち上がりだしたのだ。
エドゥアルドは信じられない状況に口をパクパク動かす。
本能的に彼は二度三度と続けて銃をぶっ放した。
一発毎に若造はのけ反り、後ろへヨロヨロと下がったかと思うと再び倒れる。
今度こそと思った矢先、若者は再び立ち上がった。
 不死身の若者にスペインマフィアは愕然とした表情を浮かべて見つめる。
無意識のうちにエドゥアルドの銃はブルブルと震えていた。
突然、目の前の相手がポンチョを捲りあげた。
その下から現れたものを見るや、エドゥアルドはハッとする。
ポンチョの下に見えたのは頑丈な鉄板。
鉄板には銃弾が命中した跡がくっきりと刻み込まれていた。
種が割れるや、エドゥアルドの恐怖が消えうせる。
だが、彼が銃をぶっ放そうとした瞬間、拳銃が弾け飛び、エドゥアルドは右手を押さえる。
手から赤いものがポタポタと滴り落ちていた。
 「まだ・・やる気かい?」
撃鉄を起こしたまま、娘ガンマンは尋ねる。
抵抗すればさらに銃弾を叩き込むつもりだった。
「わ・・わかった・・。俺も・・命は惜しい・・・」
「いい判断さねぇ。最初からそうすりゃよかったのさ」
傲慢な口調にエドゥアルドはムッとしかけるが、首根っこを押さえられている以上、そうもいえない。
渋々手を差し出して手錠をはめられると、銃を突きつけられながら歩きだした。
 「おい・・・せめて・・名前くらい教えろよ」
「あん?俺かい?ノーネーム・・・ブロンディー・ノーネームさ」
「ブロンディー・・ノーネーム・・?てめぇか!ニトロ娘ってのは!!」
「誰がニトロだぁっっっ!!」
ブロンディー・ノーネームごとガンマン娘は激昂するや、思いっきりエドゥアルドの股間に蹴りを叩き込む。
急所への容赦のない一撃に思わず男は苦痛の表情を浮かべた。
「おい!おっさん!もしまた俺をニトロ娘なんて呼んでみな。アンタの大事なモン吹っ飛ばしてやる!わかったかい!」
ブロンディーはエドゥアルドが必死に頷くとようやく離してやり、再び立ち上がらせた。


 ブロンディー・ノーネーム。
それが彼女の名である。
南北戦争前後の時代、名無し(ノーネーム)と呼ばれる、早撃ちに秀でたガンマンがいた。
彼の武勇伝はマカロニ・ウェスタンの巨匠セルジオ・レオーネによって映画化され、『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』、『続・夕陽のガンマン』という三部作で世界に広く知られている。
その末裔がノーネーム家であり、先祖伝来の銃の技を武器に警備業や賞金稼ぎ業で一派をなしている。
ブロンディーはノーネーム家の令嬢であり、10代後半という若さながらも賞金稼ぎや警備で身を立てていた。
なお、家業ゆえか、若い娘ながらも気性が荒く、ニトロ娘などという綽名を奉られている。
もっとも、ごく一部の者を除いてその綽名を口にして無事に済む者はいないが。


 ゴクリ・・・ゴックン・・。
マフィアの平構成員らしいそのスペイン系の男は木陰から息を呑んで様子を伺っていた。
男の見つめる先では、エドゥアルドがブロンディーの車へと引き立てられようとしてゆく。
彼は組織のボスからエドゥアルドへ伝言を言いつかってやってきたのだが、捕らえられたエドゥアルドに出くわしたのだ。
変事を悟った男はすぐに身を隠すと、懐から小型リボルバーを静かに引き抜く。
親指で撃鉄を起こすと、ブロンディーにゆっくりと銃口を向ける。
自分達の幹部を連行しようとする小娘にしっかりと狙いをつけ、引き金を引こうとしたそのときだった。
 突然、真っ赤な光点が腹に現れた。
ハッと気づくや、光点はスルスルと上がってゆき、やがて顔の真ん中のあたりで停止する。
本能的にそのマフィアは光点の源の方を振り向く。
すると、別の木陰に何者かが身を潜めているのが見えた。
 光点の源にいるのは20代後半とおぼしき男。
黒い髪と瞳をした、モデル張りに端正な容貌の人物。
眼鏡をかけ、黒を基調にした古風なスーツとインバネスコートを纏ったその姿はさながら主人につき従う執事やそれに近い高位の従者といった感じだった。
眼鏡とインバネスコートの男は銃を構えている。
男の銃は、細長い銃身を持ち引き金の前に弾倉がついており、また取っ手に取り外し可能な、銃よりも長い木製ストックを装着している。
さらに銃身には赤いレーザーを発する小型のレーザーサイトが装備されていた。
男が手にしているのは、モーゼル・ミリタリーと呼ばれるドイツの拳銃。
命中率の高さと射程距離の長さ、また馬上で扱いやすいことから19世紀末から日中戦争期にかけ、中国の馬賊や軍閥に愛用されたことで知られている。
男は現代式のレーザーサイトを装着できるように改造してこの銃を使っていた。
 マフィアはモーゼルを手にした男がこちらをジッと狙っていることに気づき、一瞬身をこわばらせる。
だが、すぐにも我に返って引き金を引こうとした瞬間、モーゼルが一度だけ火を噴く。
直後、男は宙に足を投げ出すようにしてひっくり返ったかと思うと、そのまま動かなくなった。


 「どうだ?まぁまぁの稼ぎにはなったのかよ?」
ブロンディーは目の前で帳簿をつけている、モーゼル使いの男にそう尋ねる。
「とは行きませんね、お嬢様」
「あん?何でだよ?」
ブロンディーは訝しげな目で自分をお嬢様と呼んだ男を見やる。
彼の名はモーティマー。
祖父の代よりノーネーム家に仕えており、今はブロンディー付きの従者兼護衛として主人と共に逃亡犯を追っていた。
「それはお嬢様がよくご存じのはずでは?先週滞在先の街で騒ぎを起こして色々と弁償することになったのですから」
「う・・うるせぇな・・・」
ブロンディーは視線をそらす。
気の短さが原因で、彼女はよくトラブルを起こす人間だった。
トラブルは主に喧嘩で、かなり派手にやらかすため弁償する羽目になることも多い。
そのたびごとに従者であり、また教育係としての役目ももっているモーティマーに厳しく説教されてしまうのだった。
「あーシラケたシラケた!もう俺は寝るからな!」
これ見よがしにそんなことを言い、彼女が自分のベッドへ行こうとしたそのときだった。
 突然、背後からモーティマーが主人の肩をおさえた。
「ちょっとお待ち下さい、お嬢様」
「あん?何だよ?」
「隠しているものをお出し下さい」
「な・・何言ってんだよ・・」
従者の言葉にブロンディーの額からジワリと脂汗がにじみ出る。
 「誤魔化しても無駄ですよ。さぁ、早くお出し下さい」
「うるせぇ!アヤつけるんじゃねえよ!」
心外だと言わんばかりの素振りを見せると、ブロンディーはベッドの方へ行こうとする。
だが、モーティマーはしっかりと主人を押さえてしまったかと思うと、革ジャンのポケットから何かを取り出した。
 従者の手に握られているのはタバコの箱。
しばらくモーティマーは眺めていたかと思うと、おもむろに口を開いた。
「お嬢様、何ですか?これは?」
「あん?ただのタバコだろ!?」
「それはわかります。何故、お嬢様のポケットに入っているのです?」
「知るか!勝手に入ったんだろうが!」
「ほほぅ、勝手にタバコがお嬢様のポケットに滑り込んだとでも?」
「だから知らねえっつってんだろうが!」
娘主人はあくまでも白を切る。
「お嬢様、以前にも申し上げたはずですが?タバコは二十歳になってから。まだ16歳なのですから酒もタバコもいけませんと」
「うっせえ!俺は知らねえっつってんだろうがぁぁぁ!!」
従者の目を盗んでこっそり購入したのは彼女自身が誰よりもよく知っていた。
だが、それを認めるわけには決していかなかった。
 「どうやら・・・素直に反省してはいただけないようですね・・・」
「たりめえだろうがっ!俺は何も悪くねえっ!タバコが勝手に入ったんだよっ!!」
ブロンディーはあくまでも言い訳にならない言い訳を主張する。
「では、仕方がありませんね」
そういうとモーティマーは手を伸ばしたかと思うや、主人の手首を捕まえてグイッと引っ張る。
ブロンディーが気づいたときには、従者の膝にうつ伏せに載せられていた。
「てめえっ!!何しやがんだあっっ!!!」
「教育係としての務めを果たすだけのことです」
そういうや、モーティマーはブロンディーのズボンに手をかけ、あっという間に降ろしてしまう。
ズボンを降ろされるや、年頃の女の子らしい、丸みを帯びた形がよく、柔らかそうなお尻が姿を現した。
「ふっざけんなあ~~~~!!離せっ!!離しやがれ~~~!!!」
叱られてはたまらないとブロンディーは必死に抵抗する。
だが、モーティマーは手慣れた様子で若い主人を押さえると、ゆっくりと片手を振り上げ、お尻目がけて振り下ろした。


 バシィンッッ!!
「・・っ!!」
強烈な痛みにブロンディーは声を漏らしそうになるが、必死に飲み込む。
バアシィンッ!バチィンッ!ビシャアンッ!バアアンッ!
「全く・・何をしてらっしゃるんですか・・」
主人のお尻を叩きながら、モーティマーはやや呆れ気味でお説教を始める。
「うるせえっ!離せっ!こん畜生っっ!!」
ブロンディーはお尻を叩かれながらも世話係に向かって暴言を吐く。
「そうは参りません。お嬢様にはしっかりと反省していただきます」
バアシィンッ!バチィンッ!ビダァンッ!バアッジィンッ!
「うっせえっ!反省することなんざねえって言ってんだろうがあっっ!!」
両脚をバタつかせながらガンマン娘は必死に抗議する。
 「隠れてタバコを手に入れておきながら反省する必要などないとおっしゃるのですか?」
「俺が手に入れたんじゃねえよっ!勝手にポケットに入ったんだ~~~!!」
あからさまな嘘なのを承知でブロンディーはそう主張する。
「バレバレな嘘はやめて下さい。さぁ、素直に謝って下さい。まだ、私が手加減しているうちに」
バチンバチンと痛そうな平手打ちを振り下ろしながらモーティマーはそう言う。
「ヘッ!誰がお前なんかに頭下げるかってんだよ!こんなん痛くも何ともねえ!」
素直に謝るのが癪で、痛がっていると思われるのが嫌で、思わずブロンディーはそう言いやる。
「そうですか。痛くないのですね、お嬢様は?」
一旦、お尻を叩く手を止めたかと思うと、おもむろにモーティマーがそう尋ねてきた。
その態度に何かを感じたのだろう、ブロンディーは警戒心をもたげる。
だが、一度強がった以上、今さら痛いです、許して下さいなんて言えるはずもない。
自爆するのはわかっていたが、それでも意地を張らずにはいられなかった。
「へんっ!こんなん屁でもねえ!蚊が刺したみてえなもんだぜ!」
「よくわかりました・・・。では・・・」
そういったかと思うと、再びモーティマーは手を振り上げる。
そして思いっきり手を振り下ろした。
 ビッダァ~~~ンッッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバァ~~ンッッ!!
「ひっ!ぎゃっ!ひぎぃぃっっっ!!!」
心底からの痛みにブロンディーは背をのけぞらせ、悲鳴をあげて両脚をバタつかせる。
「な・・何すんだぁぁぁ!!殺す気かテメェぇぇぇぇ!!!」
あまりの痛さにブロンディーは叫ぶ。
「おや?痛かったのですか?」
モーティマーはいけしゃあしゃあという感じで尋ねる。
「痛ってえよバカ!!殺気込めて叩いてんだろ!!」
「それならば反省しますか?」
「うるせえっ!反省することなんかねえって言ってんだろうが!」
「なら仕方ありません。このまま続けるだけです」
「な・・おいっ!やめろっ!このバカ野郎~~~~!!!」
ブロンディーは抵抗しようとするが、モーティマーは難なく押さえつけると、耳を塞ぎたくなるような強烈な平手打ちの嵐を降らせ始める。
激しく肌を打つ音と、若い娘の罵り声や悲鳴が入り混じって室内にこだました。


 「ひっひっ・・い・・痛ってぇよぉぉ・・・・」
ボロボロと涙をこぼし、しゃくり上げながらブロンディーは嗚咽する。
今やお尻はドギついくらいにペンキを塗り重ねたかのように真っ赤に染め上がっていた。
「お嬢様・・・・」
再び手を止めると、モーティマーはポンポンと軽く背中を叩きながら呼びかける。
「まだ・・足りませんか?」
従者の言葉にブロンディーはゾッとする。
(ま・・まだ・・引っぱたく気かよ!?)
ブロンディーは恐る恐る振り向いてみる。
するとモーティマーがゆっくりと片手を振り上げるのが見えた。
一センチまた一センチと上がってゆくたびにブロンディーの表情に恐怖の色が増す。
やがて最大まで振りあげられた手がピタリと停止する。
怯えた目でブロンディーが見つめる中、勢いよく平手が振り下ろされたそのときだった。
「や、やめてくれ~~~~~っっっっ!!!!!お、俺が悪かったあ~~~~!!!!も、もうタバコ吸わねえよぉぉ~~~~~!!!」
半狂乱になりながらブロンディーは叫ぶように言う。
それを聞くや、ようやくモーティマーの手が止まった。
 「ようやく言えましたね・・・」
ホッとしたように言うと、モーティマーは主人を起こし、膝に座らせて抱きかかえる。
「よいですか、お嬢様?私は別に意地悪で言っているわけではありませんよ。お嬢様の年頃ではタバコに興味を持たれるのはわかりますし、お屋敷の環境を考えれば無理からぬものがあるでしょう。しかし、お嬢様の年では身体に悪いのです。お身体は大事にして下さい。私も、ご当主様も心配いたしますから。わかって下さいますか?」
優しい声でモーティマーは主人にそう言う。
だが
「ひぃ~~ん・・痛いぃぃ・・・あーん・・ひぃぃん・・・」
余程お尻が痛いのか、すっかり赤ちゃん返りしてしまっていた。
「おやおや。仕方ありませんね」
モーティマーは苦笑すると抱きしめて頭を撫でてやる。
しばらくそうしていると落ち着いたのか、寝息を立てて眠り始めた。


 「ええ・・・。今、寝ていらっしゃるところです」
「そうか。いつも世話ぁかけるな」
携帯電話の向こうから、野性味と精悍さに溢れた男らしい声が聞こえてくる。
ブロンディーの父親にしてノーネーム家現当主、モンコ・ノーネームの声だ。
仕事や娘主人の状況を電話で報告しているところである。
「そうでもありません。確かに世話が焼けますが、やりがいがありますから」
「ハハハ、そう言ってくれると助かるわな」
「ところで・・旦那様・・禁煙はうまくいってらっしゃいますか?」
「あ・・そ・・それがだなぁ・・・」
部下の言葉に主人の声が鈍くなる。
それを聞くや、やれやれといった感じでモーティマーはため息をつく。
「どうやらうまくいってらっしゃらないようですね」
「はは。さすがにわかっちまったか・・・」
電話の向こうから主人の苦笑する声が聞こえてくる。
「長い時間がかかるものですから仕方ありません。ですが、幾らガンマンの家系でもヘビースモーカーが揃っているのはあまりよろしいものではないかと。こういうのは何ですがお嬢様がタバコに手を出されそうになるのも一つはお屋敷や会社の環境ではないかと」
「はは・・違えねえ・・・」
電話の向こうで主人が再び苦笑する。
ガンマンの家系や、タバコや酒がトレードマークな稼業に従事しているということがあるのか、家族や従業員にも愛煙家が実に多い。
そのせいでブロンディーのタバコへの興味は相当なものがあった。
「私の方でも気をつけますが、やはり旦那様が手本をお示しになるのが一番よろしいかと存じます」
「あぁ。わかってるよ。それじゃあ、ブロンディーのことぁ頼んだぜ」
そういうと、電話が切れる音がした。


 ―完―
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theme : 二次創作
genre : 小説・文学

マカロニの末裔たち ジャンゴ(二次創作要素あり)


 

 (『続・荒野の用心棒』、『ジャンゴ 灼熱の戦場』を元ネタにしておりますが、ほとんどオリジナル設定です。許容出来る方のみご覧ください)


 鬱蒼と生い茂るジャングルの微かな隙間から、ピラミッド状の神殿や、石造りの段々畑の跡が見え隠れする。
中米の古代文明のものと思しき遺跡の真っただ中、その女の姿があった。
年は20代後半から30代初め、やや長めの黒曜石のように光沢のある美しい黒髪と褐色に近いやや浅黒い肌の持ち主。
南の海さながらの見事な青い瞳をしており、美しいが雌豹のような強さと野性味を感じさせる面立ちをしている。
 鍔広の帽子にポンチョ、マフラーやガンベルトなどといった、西部劇さながらの出で立ちに身を包んでいるが、どれもが闇夜が人の姿になったと思えるほどの深い色合いの黒で統一されていた。
さらに、女が椅子代わりに腰かけている棺桶までご丁寧に黒一色で塗装されていた。
 女は石をあつめてかまどのようなものをつくっており、その上で小型の薬缶に火をかけている。
それを尻目に、何やら小さな壺を用意すると、茶葉らしいものを壺に入れる。
そして口を塞いで逆さにして振ったかと思うと、少し斜めになるようにして口を上に戻す。
中で茶葉が壺の片側に高く積もっているのを確かめると、茶葉の少ない方に水筒で水を少し注いで茶葉を湿らせたかと思うと、茶葉の少ない方に金属製のストローを差した。
そして、沸騰前の70度くらいで薬缶を取り上げたかと思うと、一口分くらいのお湯を入れる。
そしてストローを銜えたかと思うと、満足この上ない表情を浮かべた。
一口分を飲み干すと、再び女は湯を一口分だけ注いで飲むということを繰り返す。
 パアンッ!!パパンッ!
乾いた音がしたかと思うと、茶壷と薬缶に穴が空き、ジョボジョボと中身がこぼれ出す。
「マテ茶(南米で親しまれているお茶。壺とストローを使って飲むのが伝統的なスタイル)かよ・・・余裕しゃあしゃあだなぁ・・・」
女が振り向くと、いつの間にか男が立っていた。
男はたすき掛けに弾帯を身に着け、突撃銃を手にしている。
さらに周りを見回すと、同じように弾帯やライフル、短機関銃や拳銃などといった武器で隙間なく武装した、明らかにならず者といった男達が少なく見積もっても20人はいた。
 だが、女は男達には構わず、煙草を取り出したかと思うと、火をつけておもむろに一服し始めた。
「おぃ・・!いい加減にしろっっ!!」
女の態度に男は怒りで表情を歪める。
「それはこっちのせりふさ・・・。ティータイム邪魔されて機嫌が悪いんだよアタシは・・・・」
「ふざけんなぁこのアマアッ!俺達を誰だと思っていやがるんだぁ!!」
「ただのチンケな遺跡泥棒だろう?」
女の人を食ったような態度に男達はムッとする。
彼らは悪名高い犯罪組織で、この遺跡をはじめとする中南米各地で今は盗掘に当たっていた。
実際、遺跡のあちこちに盗掘者によるものと見られる、無残な破壊の跡や掘り返した跡などが生々しく残っている。
 「ふ・・・ふてぇアマだな・・。だが・・・知っていやがるくせに何だって俺らに手を出した・・・?」
侮蔑と不審が入り混じった表情で男は尋ねる。
彼らの一党は中米の犯罪界では顔が利く組織であるため、彼らに手を出そうという者はいないのだ。
だが、彼女は一党が滞在する町にいた数人の下っ端を血祭りに上げ、ただ一人生かした者に敵を討ちたければこの遺跡へ来いと言ったのである。
それで子分はすぐにもボスに注進し、一味が遺跡へ押しかけたというわけだった。
 「ゴキブリを一匹残らず駆除してくれと頼まれたのさ・・・それだけのことさ・・・」
「ご・・ゴキブリだあっ!?ナメやがって!!ぶっ殺せえっっ!!」
男の命令と共にならず者たちが銃を構えたそのときだった。
 女が動いたかと思うと、凄まじい勢いで棺桶の蓋が跳ね上がる。
棺桶に両腕を突っ込んだかと思うや、女は何かを抱える。
それは先端に20以上穴が開いた巨大な筒。
手元側には取っ手や引き金、ベルト式の銃弾を詰めた箱型の大きな弾倉などがついている。
かなり古いタイプの機関銃だった。
 ならず者たちがハッとする間もなく、機関銃が凄まじい勢いで火を噴いた。
遺跡中に鼓膜が破れんばかりの轟音が轟き、薬莢が宙を舞う。
さながら大鎌で麦を刈り取るかのように、次々と盗掘団の面々がなぎ倒されていった。
中にはジャングルへ逃げ込もうとする者もいたが、女は容赦なく逃げるものへも銃口を向ける。
熱病の発作でも起こったかのように全身が震えたかと思うと、男達は地面へ崩れ落ちる。
機銃の咆哮がようやくおさまった頃には、首領格の男しか残っていなかった。
 撃ち尽くしたガトリング銃を地面へ放ると女はタバコを地面に捨て、足で踏みつけて消す。
「どうする?お仲間はもう死んじまったよ」
「て・・・テメェ・・・ナニモンだ・・?」
首領は侮蔑をかなぐり捨て、警戒感をあらわにしながら尋ねる。
「ジャンゴは・・・知ってるかい?」
「あぁん?伝説のガンマンがどうし・・・・・」
そこまで言いかけて男はハッとした表情を浮かべる。
「おやぁ?ゴキブリでもものは知ってるようだねぇ・・・・」
「き・・聞いた事がある・・・。こ・・この・・メキシコに・・・ジャ・・ジャンゴの・・衣鉢を継ぐ・・奴らが・・い・・いると・・・」
男はゴクリと息をのみ、緊迫した表情を浮かべながら言った。


 ジャンゴ。
メキシコの裏社会を生きる者達でその名を知らない者はいない。
彼は西部開拓時代、アメリカとメキシコを股にかけて遍歴したガンマンだった。
ガトリング銃を隠した棺桶を引きずりながら各地を旅し、その銃の腕を武器に世を渡っていた。
だが、アメリカとメキシコ国境にある小さな町で、マリアという女性と出会い、昔の恋人の仇であったジャクソン少佐なる元南軍将校出身のならず者を殺した後、銃を捨ててマリアと共に堅気として生きる道を選んだ。
その経緯は『続・荒野の用心棒』として映画化されている。
 その後、さらに彼はメキシコ国内で修道士への道を選んだが、折しもその頃のメキシコは政治的混乱によって軍閥が跳梁跋扈し、無法の限りを尽くすという、まさに暗黒時代だった。
そんな中、フランスに擁立されたがベニト・フアレスによって処刑されたマクシミリアン二世が連れてきたハンガリー人傭兵(マクシミリアンはオーストリアやハンガリーを支配していたハプスブルク家出身)達が作った軍閥により、マリアとの間にもうけた娘が他の村人達と共に奴隷狩りの犠牲となり連れ去られるという事件が勃発した。
そこで、彼は娘を救うため、そして彼の娘同様、軍閥の暴虐の犠牲となった人々を救うため再び銃を取りガンマンに戻った。
死闘の果てに軍閥を殲滅し、家族や人々を解放することに成功したジャンゴは、その後、悪人や軍閥によって苦しめられている人々のため、再び遍歴の旅に出た。
そこまでが『ジャンゴ 灼熱の戦場』として記録されている部分である。
遍歴の果て、再びジャンゴは娘の元へ帰ってきた。
そして、彼はあることをした。
ハンガリー人達相手に戦いを挑んだ際、出会い共に戦った地元住人の少年と自分の娘とをめあわせたのだ。
そして今は立派な男となっており今は婿でもあるかつての少年にガンマン式戦闘術を伝授したのである。
その男も生まれてきた子にジャンゴから受け継いだ技や新たに生み出した技を伝え、それ以来ジャンゴの名を名乗るガンマン式戦闘術の流派が誕生し、今に至るまでその衣鉢を伝えているのである。


 「そ・・そんじゃ・・・まさか・・・」
女の傍らに転がっているガトリング銃を見つめ、額に汗を噴き出しながら震える声で男は言う。
彼はうわさで、ジャンゴ流の当主はその地位の証としてジャンゴ自身がかつて使っていたガトリング銃を持っていると聞いたことがあるのだ。
「アタシが・・・・当代の・・・『ジャンゴ』だよ。信じられないかい?」
女の言葉に男は愕然とする。
無理もないといった素振りをジャンゴと名乗った女は見せたが、不意に雰囲気が変わった。
 女は真剣な表情を浮かべたかと思うと、ポンチョを跳ね上げるようにして捲る。
ポンチョの下からはこれまた西部開拓時代のものと思しき古いコルト式リボルバーを納めたガンベルトが現れた。
男も真剣な表情を浮かべると、上着を左右に広げる。
するとズボンに自動拳銃を突っ込んでいるのが見えた。
 ジャンゴと盗掘団の首領はジッと睨み合っている。
チリチリと強い日差しが照りつける中、男の肌には玉のような汗が浮かぶ。
日差しと、極度の緊張からチリチリと喉が焼けつくような感覚を覚え、同時に胃の腑を締め上げられるような感覚も感じていた。
 男は手を銃にやりたい誘惑に否応なしに駆られる。
だが、女ガンマンの姿がそれを阻んだ。
目の前に立ちはだかる女を撃ち殺すしか生き残る道はない。
それはよくわかっていた。
しかし、敵は伝説のガンマンの衣鉢を継いだ者。
うかつに抜けば返り討ちの危険は大いにあり得た。
 「ハァ・・ハッハッ・・・ハァァ・・・・」
いつの間にか、男の口から荒い息が漏れだす。
顔は脂汗でビッショリと湿っていた。
(勝てねぇ・・・無理だ!)
全く隙のないジャンゴの立ち姿に、男は否応なしにそれを覚らされていた。
無意識のうちに男の両脚は震えている。
恐怖を感じているのだ。
しかし、逃げることも叶わない。
恐怖を感じながらも、向かい合うことでかろうじて敵の殺気を受け止めているからこそ、撃たれないですんでいるのだ。
だから逃げ出そうとすれば間違いなく撃ち殺される。
それには確信があった。
 抜くこともできず、かといって逃げ出すこともできず、にっちもさっちもいかずに首領が睨み合っていると、不意にジャンゴが一歩踏み出した。
(な・・・何しやがる気だ!!)
警戒感をかきたてて様子を伺うと、何とこちらへ歩み寄ってくるではないか。
一歩、また一歩という牛のようにゆっくりとした歩みだが恐怖を煽るには十分だった。
男は声も出せず金魚のように口をパクパクさせている。
本能的に拳銃を引き抜いたかと思うと、男は銃をぶっ放していた。
 ズキューンッ!
ポンチョに覆われたジャンゴの肩口を銃弾がかすめる。
銃弾が掠めた跡がポンチョに出来たが、怪我はない。
ジャンゴは一瞬立ち止まったが、構わずに歩き出す。
 ズキューンッ!パアーンッ!
再び銃声が轟き、地面の土を跳ね上げ、或いは顔のそばを銃弾が掠める。
しかし、恐怖と動揺のためだろう、銃弾はかすることはあっても命中はしない。
命中しないことに男はますます動揺し、やっきになって撃ちまくる。
だが、動揺がさらなる命中率の低下を呼び、それがさらに動揺を呼んで男はしゃにむに撃ちまくる。
ジャンゴは悠然とした態度で歩みながらジッと男の様子を伺う。
そして、極限にまで男の動揺が達したとみたそのとき、稲妻のような勢いで手が動いた。
 パンッ!
乾いた音と共に女ガンマンの手に握られたコルトから煙が上がる。
直後、男は銃弾の衝撃でクルリと回転する。
パンッ!パンパンッ!
立て続けにジャンゴは三度、ファニング(早撃ちの技。銃を持つのと反対側の手で撃鉄を高速で叩くようにして起こす)で連射する。
乾いた射撃音が響くたびに男の身体はコマのように回転しながら後退し、最後の一撃を叩きこんだ際、盗掘用に掘られた穴の中へ転がり落ちた。
パアンッ!
女は穴の傍へ落ちた帽子を撃つ。
すると衝撃で帽子は穴へ転がり落ち、死体の胸のあたりで止まった。
ジャンゴは確かに敵を倒したのを確かめると、拳銃をベルトに収め、ガトリング砲を棺桶に仕舞う。
そして棺桶に結わえた縄を手にすると、棺桶を引きずりながらその場を後にした。


 パアンッ!パンッ!パアアンッ!パアンッ!
「こら!何だそのへっぴり腰は!もっとしっかり腰を据えろ!」
師範の声が響き渡り、門人たちは足や腰に細長い棒でピシピシ叩かれながら銃を構え、的に向かってぶっ放す。
その傍らでは、藁人形に向かってロープを投げる練習をしている者もいる。
そうかと思えば、やや離れたところではカウボーイの出で立ちで馬術の練習に励むもの、ロデオの練習をする者がいた。
 「皆・・・真面目にやってるようじゃないか・・・・」
窓から外の様子を見ていたジャンゴはそう呟く。
「うん。皆本当に一生懸命だよ。おかげで僕も忙しいけどね」
ベッドにうつ伏せになっているジャンゴの肩を揉みほぐしながら、その青年は言った。
 青年はジャンゴと同じ艶と光沢のある美しい黒髪の持ち主。
だが、メキシコ系と白人系双方の血が混じるジャンゴとは異なり、薄い肌の色や髪同様黒い瞳がアジア系であることを示していた。
長身でしなやかな身体を持つジャンゴとは対照的に、小柄で華奢なすらりとした体つきをしている。
黒い瞳はこぼれおちそうなくらい大きく、美しくも力強さ・野性味と感じさせるジャンゴとは違って可愛い系の美少年といった感じを与える。
実際、胸が無いことや声が微かに男っぽいことを除けば女の子と間違えられてしまいそうだった。
青年はマッサージ師や接骨医が用いる詰襟式の白衣に身を包んでいる。
彼の名は隆章(たかあき)、元々は日本で接骨医として働いていたが、スポーツトレーナーとしての経験を積みたくてアメリカへ渡り、そのアメリカでトレーナー修行をしている際、ロデオ大会での救護班に加わったのだが、その大会でたまたま怪我をした選手を手当てしたことがきっかけでジャンゴと出会った。
 ジャンゴ流は元々はガンマン式戦闘術の流派であるが、ときが経つにつれカウボーイ馬術やロデオ、早撃ち射撃などカウボーイの技術にルーツを持つスポーツの指導も行うようになった。
そして今ではメキシコ北部からアメリカ西部にかけて多くの支部を持ち、またガンマン式戦闘術を身につけた腕利きの警備員を派遣する警備業なども行い、スポーツ・警備の世界で名だたる存在となっている。
スポーツ部門での事業に力を入れる中、ジャンゴは優秀なトレーナーを探し求めていた。
そこで、大会で出会った隆章の腕に惚れ込んだらしく、自分のところの専属トレーナーとしてスカウトし、メキシコへと連れて来たのだった。
 「ふふ・・。隆章のおかげだよ。皆も・・アタシもおかげでいつもベストコンディションさね。ありがとうよ」
「そんなの当たり前じゃない。だって・・・少しでも力になりたいって思うのは当たり前じゃない・・夫婦なんだから・・・」
勇気を振り絞るように言うと、隆章は恥ずかしそうに顔をそむける。
そう、隆章はジャンゴ流の専属トレーナーであると同時に、ジャンゴの夫でもあった。
隆章の腕と可愛らしさにゾッコン惚れ込んだ末にジャンゴがおいしくいただいてしまい、その結果結ばれたのである。
 「ふふ・・そう言ってもらえると・・アタシぁ・・・本当に嬉しいよ・・」
ジャンゴは身体を起こすと、年下の可愛らしい夫を抱きしめる。
だが、力が強いのか、苦しそうな表情を隆章は浮かべた。
 「ジャンゴちゃぁん・・・く・苦しいってば・・・」
「あぁ、ごめんごめん。隆章が可愛くてねぇ。ついつい力入れすぎちゃったのさ」
「もぅ、気をつけてよ。ジャンゴちゃん力強いんだから」
「悪かったって。ところで・・・隆章・・アタシに何か隠してないかい?」
妻の言葉に隆章は硬直する。
 「な・・ななな何言ってるの?ジャンゴちゃん、ぼ、ぼ、僕何も隠し事なんか無いよ!」
動揺しているのが明らかな素振りを見せながら必死に否定する。
「ターカーアーキー・・・・約束したろ?夫婦の間に嘘や隠し事は一切無しって?」
優しい笑みを浮かべ、子供にするように頭を撫でてやりながらジャンゴは尋ねる。
「うぅ・・・。わ・・わかったよ・・ジャンゴちゃぁん・・でも・・何でわかったの?」
観念した隆章は恐る恐る尋ねる。
「せっかく帰ってきたってのに何だかアタシの顔色をうかがうような素振りを見せたからさ。こりゃ何か隠してるなってピンと来たんだよ。さぁ、正直に話してくれるかい?」
「うん・・ちょっと・・待っててね・・・」
隆章はそういうと部屋を後にする。
しばらくして戻ってきたかと思うと、恐る恐る隆章は何かを差し出した。
 差し出したのはマテ壺(マテ茶を飲むための壺)。
ヒョウタンで造られた伝統的なタイプの壺だ。
だが、マテ壺は大きくひび割れてしまっていた。
 「・・・・・・」
無言のまま、ジャンゴはジッとひび割れたマテ壺を見つめている。
その目は愕然としたように見開かれ、ブルブルと身体は震えている。
彼女はマテ茶が何よりの大好物で、マテ茶用の茶器には目が無い。
実際、彼女の私室にはマテ茶器のコレクションがあり、その中でもお気に入りの逸品の一つが目の前の壺だった。
だが、そのマテ壺は無残にもひび割れてしまっている。
 「ごめん・・ごめんね・・。ど・・どうしても・・これで・・飲んでみたかったの・・。でも・・でも・・・使い方・・悪かったみたいで・・・ひ・・ひび・・が・・・。ご・・ごめんなさいっ!!」
必死になって隆章は謝る。
ジャンゴは数度深呼吸を繰り返し、自身を落ち着かせる。
「悪かったとは・・思ってんの・・かい?」
「う・・うん・・。ごめんなさい・・・」
「なら・・・・わかってるだろ?」
ジャンゴはベッドのふちに腰かけると、ポンポンと軽く膝を叩く。
それを見るや、隆章はジワリと目尻に涙を浮かべる。
「ジャンゴちゃあん・・・」
「そんな顔してもダメだって。悪いことしたのは隆章だろ?悪い子にはお仕置きって決まってんの。さぁ、来れるだろ?」
「う・・うん・・・」
隆章は恐怖に震えつつも妻の傍へ行く。
ジャンゴの傍らに立つと、ジッと膝を見つめていたが、一瞬泣きそうな表情を浮かべて妻の顔を見やる。
ジャンゴは可哀想に思わないでもなかったが、それを押さえこんで促す。
ようやく隆章が覚悟を決めてうつ伏せになると、ジャンゴは上着の裾を捲りあげ、ズボンを下ろす。
すると女の子のように丸みを帯びた形のよい、卵のように色白で綺麗なお尻が姿を現した。
 (これで・・・本当に男なのかい・・?)
ジャンゴは夫のお尻を見ながらそう思わずにはいられない。
あまりにもきれいなものだから、とても成人男性のものとは思えないのだ。
幾ら夫が童顔で若々しいといっても、突っ込みを入れたくもなろうというものだ。
 しかし、隆章の方はそんな余裕があるはずもなく、ブルブルと震えている。
「なぁに震えてんのさ。まだ叩いちゃいないだろ?」
「だ・・だって・・・怖いんだもん・・・」
涙を浮かべて振り返ると、悲痛そうな声で隆章はそう言う。
「そりゃあお仕置きだから仕方ないだろ?隆章、覚悟はいいかい?」
妻の問いに隆章は覚悟を決めて頷く。
それを見ると、ジャンゴは左手で夫の背中を押さえる。
隆章は目をつぶり、妻のズボンの裾を両手でギュッと握りしめて待ち構える。
ジャンゴの右腕がゆっくりと上がっていったかと思うと、隆章のお尻目がけて振り下ろされた。


 バアシィンッッ!!
「きゃあんっ!」
最初から容赦のない一撃に思わず隆章は悲鳴を上げ、背をのけ反らせる。
バシンッ!バチィンッ!バアンッ!バシッ!バンッ!
「きゃんっ!ひゃんっ!ひぃんっ!ひっ!ひゃんっ!」
相当痛いのだろう、始まったばかりだというのに隆章は悲鳴を上げて両脚をバタつかせる。
「ひぃんっ!痛ぁいっ!ジャンゴちゃあんっ!痛いよぉっっ!」
あまりの痛さに隆章は悲鳴を上げる。
「なぁに言ってんだい、痛くなきゃお仕置きになんないだろ?」
バシバシと年下の夫のお尻を赤く染めながらジャンゴは言う。
「ひぅん・・そんなこと言ったって・・痛いんだもん・・・」
「泣きっ面見せたってダメだって。今日のアタシぁ怒ってんだからね」
そういうとさらにジャンゴは夫のお尻を叩き出した。
 バシッ!バアンッ!バチンッ!ビダァンッ!バアンッ!
「やあんっ!ひゃんっ!ひんっ!きゃあっ!ひゃあんっ!」
ビッダア~ンッ!バアッジィ~ンッ!バアッア~ンッ!バッシィ~ンッ!
「別にアタシのマテ壺使うのは構わないけどさぁ、人のモンは大事に扱ってもらわないとねぇ」
バシッ!バジィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!バッアァ~ンッ!
「ひぅ・・ひゃあんっ!ごめんなさいっ!ジャンゴちゃんごめんなさい~~!!」
もう耐え切れないのだろう、隆章は泣きだしたかと思うと許しを乞う。
「何がごめんなさいだい?ただ謝りゃあいいってぇもんじゃあないだろ?」
「ふえ・・・大事な・・マテ壺・・壊しちゃって・・・ごめんなさい~~~~!!」
手足をバタつかせながら隆章は必死にジャンゴに謝る。
「ちゃんと言えたねぇ・・・よしよし・・・いい子だ」
ジャンゴはそういうとお尻を叩く手を止め、夫を起こすとお尻を出したまま膝に座らせる。
 「ひ・・ひぃん・・。も・・もう・・怒って・・ない・・?」
隆章は涙を浮かべながら恐る恐るジャンゴに尋ねる。
「怒ってないから安心しなって。ほら・・よしよし・・」
ジャンゴは隆章を抱きしめながら頭を撫でてやる。
「うわぁぁ~~~んっっ!!ジャンゴちゃあん~~。痛かったよ~~」
安心したのか、隆章はさらに泣きだした。
「ったくこのジャンゴの旦那様だってぇのに甘ったれだねぇ・・・」
そう苦笑しつつも母親が幼児にするかのように、ジャンゴは夫の真っ赤に染まったお尻を優しく撫でてやった。
 それから数日ほど後、いつものようにジャンゴがマテ茶を楽しんでいると、突然ドアをノックする音がした。
「誰だい?」
「あ・・あの・・僕だよ・・。ちょっと・・いい・・かな・・?」
隆章の声が聞こえると、すぐにジャンゴは中へ入れてやる。
「どしたのさ、隆章?」
ジャンゴは尋ねると、隆章はオズオズと手に持っているものを差し出す。
隆章の手に乗っていたのは、ヒョウタン製のマテ壺。
ただ、素人の作の悲しさか、不格好だった。
 「こいつは・・・?」
「ぼ・・僕が・・つ・・つくったの・・。こ・・壊しちゃった・・や・・やつの・・代りには・・な・・ならないだろうけど・・。う・・受け取って・・くれる・・?」
おずおずと伺うような表情で隆章は言う。
「ふふ・・・ありがと。大切にするよ」
ジャンゴは心底から嬉しそうな表情を浮かべると手製のマテ壺を受け取る。
「よ・・よかった~~。そ、それじゃ行くね」
「ちょっと待った。隆章、ちょいと来てくれるかい?」
「なぁに?ジャンゴちゃん」
怪訝そうな表情を浮かべて近づいてきた隆章の顔をしっかりと捕まえたかと思うや、ジャンゴは額にキスをしてやる。
「あ・・・」
隆章は一瞬のことにビックリしてしまい、ゆでダコのように顔を真っ赤にする。
「ふふ・・アタシからのお礼さね。ん?隆章?」
隆章は硬直したかと思うと、そのままドサリと床に倒れて気を失ってしまった。
「やれやれ・・。ちょいと刺激が強すぎたかねぇ?」
ジャンゴは隆章のお子様な反応に苦笑すると、身体を抱え上げて医務室へ連れていった。


 ―完―

theme : 二次創作
genre : 小説・文学

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山田主水

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