ダンジュー修道院33 スノーヒル研修(二次創作要素あり)
(注:映画『殺しが静かにやって来る』をベースにした設定を組み込んだ二次創作要素入り作品です。なお、この中での設定はあくまで私の作品内における私的なものであり、原作ならびにセルジオ・コルブッチ監督はじめその他原作の関係者とは全く関係ありません。また、ちょっとだけマルコ神父シリーズとリンクしております。許容出来る方のみご覧下さい)
「バルバロッサ、バルバロッサ・・・おーい、どうしおった?」
自分に呼び掛ける声に気づくや慌ててバルバロッサは振り向く。
すると、ディゴミエ院長の顔が目の前に迫っているのに気付いた。
「あ、院長様。何か用でっか?」
「いや。何だか上の空のようじゃったからな」
「え?そ、そうですかい?」
「ふふん・・・大方チサトのことが気になるのじゃろう?」
院長の問いかけにバルバロッサは図星といった表情を浮かべる。
「院長様にはかないやせんや・・。その通りですわ」
ため息をつきながらバルバロッサは答える。
「まぁ寂しいのはわしも同じじゃ。じゃが・・色々と世間を見せたり勉強する機会を与えるのも若い者のためじゃ。一月の辛抱じゃぞ」
「へぇ、わかっております」
院長に対し、バルバロッサはそう答える。
現在、チサトは一カ月ほどの研修へ行っていた。
息子同然にチサトを可愛がっているバルバロッサにしてみれば、気落ちしてしまいそうになるのも無理はないといったところである。
ディゴミエ院長がさらに二言三言言葉をかけてから去ると、バルバロッサは少しは元気が出てきたのか、壁の窪みにある彫像を乾拭きする手を動かし始めた。
同じ頃・・・アメリカ・ユタ州。
ユタ州の雪山地帯にスノーヒルという都市がある。
この市(まち)にある教会があった。
教会の名は「スノーヒル主と幼な子(おさなご)教会」、主ことイエス・キリストと幼な子殉教者に捧げられた教会だ。
幼な子殉教者とは新約聖書のエピソードに由来するもの。
イエスが誕生した頃、エルサレムはヘロデ王によって支配されていた。
ヘロデは新しい王が誕生するという預言を聞き、それによって自分の王位が脅かされると考えた。
それでイエスの元を訪れようとしていた三人の博士を騙し、生まれた子供を突き止めて殺そうとしたが、天使達のお告げを聞いてイエスたちは安全なところへ逃れてしまい、その目論見は失敗してしまった。
それで怒ったヘロデは博士たちの言葉から子供の年齢を割り出し、ベツレヘムとその周辺にいた該当する年齢の全ての子供を無残にも虐殺した。
こうして罪なくして多くの子供がイエスの身代わりとして殺されてしまったのだが、そこから彼ら虐殺された子供達が幼な子殉教者として聖人とされ、赤ん坊、捨て子、子ども聖歌隊の守護者となった。
この幼な子殉教者から名を取ってこの教会は設立された。
そのため、この教会はヘロデ王と幼な子にまつわるエピソードが壁画の題材として描かれている。
その壁画を、長椅子拭きの作業をしながらジッと見つめている者がいた。
(すごい・・・なぁ・・・)
チサトは目の前の壁画に思わず目を奪われる。
題材はヘロデ王がイエスの誕生を知り、その結果罪もない子供達が虐殺されるところまでを描いている。
特に一番最後の子供達がヘロデの兵士達によって無残にも虐殺される描写はあまりにも生々しく残酷で、見ているうちに涙が出てきそうになってしまう。
(何の・・罪もない・・子たちを・・ひどい・・・)
ヘロデによるこの虐殺はあくまでも伝承であり、史実ではないと歴史学の世界ではいわれている。
しかし、史実の裏付けなどなくても、この壁画が権力による何の罪もない人々に対する暴力の邪悪さ、残酷さをこれほどまでに訴えかけるものであることは間違いなかった。
見つめているうちにあまりにも殺される子供達がかわいそうでかわいそうでたまらなくなり、それが虐殺の犯人であるヘロデ王に否応なしに目を向けさせる。
そこに描かれているヘロデ王は何とも奇妙だった。
ヘロデが生きていたのは2000年近くも前の時代。
にも関わらず壁画のヘロデはその時代には存在していないはずの眼鏡をかけている。
また、ヘロデ王は何故か右手に黒い手袋を身につけていた。
(どうしてなんだろう・・?そういえば・・・)
チサトは壁画を見つめているうちに思い出す。
この教会へ研修のためにやってきて以来、この教会には色々と奇妙な点があることに気付いたのだ。
視線を壁画から外したかと思うと、チサトは奥の祭壇に目を向け、祭壇の後ろに立てられている大きな十字架を見つめる。
祭壇の十字架には他の教会や礼拝堂同様、磔にされたイエス・キリストの姿が刻み込まれている。
だが、そのイエスは他の教会のイエス像とは違っていた。
まず目に入るのは首のところだ。
通常、十字架に架けられたイエスは頭にかぶせられた茨の冠と腰布くらいしか身に着けていない。
だが、このイエス像は何故かマフラーを身につけている。
さらに、礼拝堂内の脇に目を転じると、死んで十字架から降ろされたイエスを抱きかかえて嘆き悲しむマリアの姿を描いた壁画がある。
その壁画に描かれているマリアは肌が褐色に近く、黒人系の女性を思わせる容貌だった。
フランスには黒い聖母といわれるマリア像が各地に存在しているからそれ自体はおかしいことではないのかもしれない。
だが、それらはキリスト教以前の時代の宗教の要素と混淆して生まれたものであり、この教会のマリア像はそれとは異なる印象を与えるものだった。
「どうしたんだ、気になってしょうがいないという感じだな?」
突然、背後から声が聞こえ、慌ててチサトは振り返る。
そこに立っているのは40代くらいと思しき神父姿の男。
がっしりとした体格に、立派な口髭を生やし、誠実さや意思の強さを感じさせる面立ちをしている。
「あっ、ウォルフ神父、ご、ごめんなさいっ。掃除もしないで・・・」
すっかり作業がお留守になってしまっていたことを思い返すや、チサトは慌てて謝る。
ウォルフ神父はこの教会の責任者で、研修のためにやって来たチサトの指導もやっていた。
「いや、別に気にしなくて構わんさ。それより・・・やっぱり妙だと思うかな?」
「はい・・・僕が知ってる・・・のとは・・・何だか・・ずいぶん・・・違うように思えまして・・・」
「ふぅむ。よそから・・・それも外国から来た君みたいな子がそう思うのも無理はないな。よし、せっかくだからそのわけを教えてやろう。さぁ、ここを見てみるといい」
ウォルフ神父はそういうと、床を指し示す。
チサトがよく見ると、そこにはこう書かれていた。
『ジョン・サイレンス ?―1898 罪なき人々のために倒れし男』
チサトはすぐに墓碑銘であることに気付く。
さらによく見てみると、ジョン・サイレンスに続いて大勢の人間の名前が刻まれている。
いずれも生没年は1898年、亡くなった日も同じだった。
「これは・・・・?」
「これがこの教会が建てられた理由だよ。今から110年も昔、この市(まち)が小さな寒村だった頃、本当にひどいことが行われていたのだよ」
そして神父はチサトにこの地の悲しい歴史を語り始めた。
1898年頃、まだ小さな村だったこのあたりはポリカットという邪悪で強欲な判事によって支配されていた。
彼は村の住人から一切の仕事を奪って生活できないようにし、犯罪を犯さざるを得ない状況に追い込んだ。
そして飢えから住人達が罪を犯すや、すぐにも賞金をかけ、手先である極悪非道な賞金稼ぎ達に殺させ、彼らに賞金を支払う際に出る手数料によって私腹を肥やしていた。
そんな暴虐が行われている中、ポリカットの手先である賞金稼ぎ一味の頭目ロコによって無残にも夫を殺害された黒人女性ポーリーンの依頼により一人の男がスノーヒルへやって来た。
それがジョン・サイレンスだった。
彼自身、幼い頃に同じような目にあって家族を失い、障害者にされた過去を持っていたため、邪悪な権力者や賞金稼ぎによって苦しめられる弱い立場の人々のため、殺し屋となって戦っていた。
だが、不幸にも運命はサイレンスや哀れな街の人々には微笑まなかった。
ロコ一味によって人質に取られた人々を救おうと、満身創痍にも関わらず、また罠であることを知りながらもただ一人立ち向かおうとして無残にも返り討ちにあってしまい、人質達も法の名の元に賞金稼ぎ達により虐殺されてしまったのだ。
その後、スノーヒルの人々は罪なくして邪悪な権力者とその手先たちによって殺された人々や彼らを救おうとして非業の死を遂げた男の菩提を弔うため、そして悲劇を忘れないためにこの教会を建設した。
この教会が捧げられた相手としてキリストと幼な子殉教者が選ばれたのは、人々を救うために死んだ哀れな殺し屋と、罪なくして殺された村人達のそれぞれの非業の死を、イエスと幼な子達の生涯に重ね合わせたからだ。
また、ポリカットは眼鏡をかけて右手に黒い手袋をいつもしており、ポーリーンは黒人系で、サイレンスは首の傷を隠すために常にマフラーを身に着けていたので、そこからヘロデ王をポリカット、嘆き悲しむマリアをポーリーン、イエスをサイレンスに見立てるためにヘロデに眼鏡と黒手袋、マリアに褐色の肌、イエスにマフラーを加えているというわけである。
「そんな・・・わけが・・・あったんですね・・・・」
「ああ・・・本当に・・悲しい話だよ・・・」
チサトは顔を上げると、サイレンスに見立てられた十字架上のイエスを見つめる。
イエス像は満身創痍で痛々しいが、その目は何故か力強い。
どんなに自らが傷つけられようとも、死が迫っていようとも、苦しむ人たちのために身をささげるという意思が伝わってくるようだった。
それだけに、そんな人が惨たらしく、またただ人間らしく生きようとしていただけの人々が無残に殺されてしまった事実が悲しくてたまらなくなってくる。
思わずチサトの目から光るものが頬を伝ったそのときだった。
「チサトお兄ちゃ~ん~、あーそーぼー」
突然、教会の外から甲高い声が重なり合って聞こえてきた。
振り返ってみると近所の子供達が堂内へ入って来た。
「あれ?みんなどうしたの?」
チサトは身を屈め、子供達と近い目線になると、にこやかな笑みを浮かべて尋ねる。
「また遊んでよ~、チサトお兄ちゃんってば~」
「ちょっと待っててね」
チサトはそう言うと、ウォルフ神父の方を振り向く。
「ウォルフ神父・・子供達と遊んできても構いませんか?」
「ああ。構わんよ。ただ・・あまり遠くにいかないようにな」
「わかってます。隣の広場で遊びますから」
「それなら私も目が届くから大丈夫だろう」
「ありがとうございます」
チサトは礼を言うと、子供達の方を向いて二言三言言葉を交わす。
すると子供達は嬉しそうな歓声を上げてチサトを取り囲むようにして出て行った。
一時間ほど経った頃、ウォルフ神父は執務室で書類と睨めっこしていた。
ペンを動かしながら、時々ウォルフ神父は顔を上げて窓の外を見やる。
窓からは教会に隣接する広場が見えた。
広場では子供達とチサトがボールで遊んでいる。
感じからするとバスケとかその類の遊びのようだった。
子供達と遊んでいるチサトの目はとっても生き生きとしている。
心の底から子供達と一緒に遊んだり、何かをしたりすることが好きなのだということが見て取れた。
そんなチサトの姿にウォルフ神父は表情が思わず和らいでくる。
無心に子供達と遊ぶチサトの姿は何とも微笑ましい感じがする。
デスクワークなどで気分が滅入っているとき、チサトの素直で一生懸命な姿や、子供と無邪気に過ごしている姿を見ると何だか元気が沸いてくるように思えるのだ。
おかげでウォルフ神父は仕事を続けようという気持ちになる。
だが、窓の外を見ていると、それに水を差す事態が起こってしまった。
勢いよくチサトがボールを投げたのだが、全然見当違いの、道路の方へすっ飛んで行ってしまう。
運の悪いことにちょうど通りを進んでくる通行人がいた。
ボールはものの見事に通行人にクリーンヒットしてしまう。
ヘナヘナと崩れ落ちてそのまま気を失った通行人にビックリしたチサトや子供達が慌てて駆け寄る。
様子を見ていたウォルフ神父も放っておくわけにはいかず、外へ出て行った。
それからさらに時間が経った頃・・・。
チサトはウォルフ神父のベッドの縁に腰かけ、恐る恐るといった表情でジッとドアを見つめていた。
やがて、静かにドアが開いたかと思うと、ウォルフ神父が入って来た。
「ウォルフ神父・・・あの人は・・?」
チサトは自分が気絶させてしまった通行人のことを尋ねる。
「大丈夫だ。怪我はない。念のため頭の検査もしてもらったが異常は無いそうだ」
「そうですか・・よかった・・・」
気絶しただけで済んだことにチサトはホッとする。
「だが・・・・事故とはいえ、人に怪我をさせかけるなど、あってはならんことだぞ、チサト見習い修道士?」
ウォルフ神父は真剣な表情を浮かべると、そう言う。
「は・・はぃ・・。本当に・・ごめんなさい・・・・」
「反省はしているようだが・・・それなりの罰は受けてもらう。いいかね?」
「はい・・・覚悟は・・出来てます・・・」
「よし・・・それなら・・・こっちに来るんだ」
ウォルフ神父が手招きをすると、チサトは大人しく椅子に腰かけているウォルフ神父の元へゆく。
「この教会では・・・昔から君のような若い子の処罰には尻叩きのお仕置きをしてきた。いいかね?」
ウォルフ神父は少し怖い顔になると、言い聞かせるように言う。
「はい・・・わかりました・・・」
チサトはそう言うと、素直にウォルフ神父の膝の上にうつ伏せになる。
「おや?素直だな?」
神妙にうつ伏せになったチサトに、ウォルフ神父は意外な表情を浮かべる。
尻叩きのお仕置きなど恥ずかしいもの。
特にチサトくらいの年の子にとっては。
だから嫌がるそぶりくらい見せるものだと思っていたのだ。
「僕の・・・修道院でも・・お尻を・・叩かれる・・お仕置きを・・されて・・ますから・・・・・」
恥ずかしさをこらえながらも、チサトは答える。
「そうだったのか・・。しかし・・えらいな、君は。実は・・君が来る少し前まで受け入れていた神父がいるのだがね・・・。まぁ君よりずっと年上で23,4歳ということもあろうし、それに結構プライドが高くて意地っ張りな性格のようで・・・ちょっと大変だった子がいたのだよ・・」
「逃げたり、暴れたりしたんですか?」
思わずチサトは怪訝な声で尋ねる。
「いや、そうじゃない。プライドが高いからためらいはしたがちゃんと来たし・・だが、泣いたり素直に謝るのを恥じて、限界で耐えきれなくなるまで素直にならないので、許すに許せずに困ってしまったんだよ」
「そう・・だったんですか・・・。僕には・・想像がつかないです・・・」
基本素直な性格で、謝るのも早いせいか、チサトにはプライドを守るために、限界も限界まで素直にならない、というのは想像の外だった。
「それはともかく・・・それでは行くぞ、いいかな?」
「は・・はぃ・・」
チサトはそう答えると、両手でウォルフ神父の上着の裾をしっかりと掴む。
ウォルフ神父はそれを見てとると、左手でチサトの身体を押さえ、ゆっくりと右手を振り上げた。
「はくしゅんっ!!」
突然、マルコ神父は盛大なくしゃみをした。
「おぃおぃ、どうしたんだ?風邪かよ?」
思わずネド神父は心配そうな表情を浮かべる。
「ただのくしゃみですよ。別にあなたに心配してもらうほどのことでもありません」
「相変わらずつれねえなぁ。少しは優しくしてくれたっていいだろう?」
「何を寝ぼけたことを言ってるんですか?自分の普段の言動を振り返れば自業自得なのはわかりきったことでしょう?」
「やれやれ・・・すっかりいつものツンツンに戻っちまったなぁ。この間のはどこに行っちまったんだ?」
ネド神父の言葉にマルコ神父は途端に真っ赤になってしまう。
「あ、あ、あれは混乱してただけです!!私の本心じゃありませんっ!!仕事があるからもう行きますっ!!」
マルコ神父は慌てて駆け出す。
しばらくして人目に付かないところまでくると、ようやく立ち止った。
「ハァ・・・ハァ・・・」
両肩を大きく動かし、マルコ神父は深呼吸をする。
「全く・・相変わらずデリカシーが無いんですから・・・」
マルコ神父はネド神父の悪口を思わず言う。
「私も・・・私ですね・・。何だって・・あんなことを言ってしまったんでしょう・・」
そう呟くと、マルコ神父は数日前のことを思い出し、後悔する。
マルコ神父はネド神父がらみの変な夢を見たことが原因で、すっかり落ち着かなくなり、イライラするような状態になった末、ミスを犯してしまった。
それでまたネド神父にお仕置きされたのだが、そのときに感情を爆発させてそのことをぶちまけたのである。
それで、どうやらネド神父は自分に対して脈があると思うようになり、さらに調子に乗った行動を取るようになったのである。
「全く・・あんな・・最低な人・・好きなわけ・・ないでしょう!!」
マルコ神父ははっきり言いやる。
だが、その表情はどこか複雑で、嫌いだという感情が大きく占める中、そうでない感情もあるような様子だった。
「ああもうっ!!違うったら違うというのに!!全くっ!!スノーヒルのせいですからねっ!!」
内心では八つ当たりだとわかっているが、マルコ神父はスノーヒルを非難する。
実はマルコ神父はしばらく前までスノーヒルで研修をして来た。
そのスノーヒルで、実はお仕置きを受ける羽目になってしまい、何故かそのときの記憶が不意に蘇ったかと思うや盛大なくしゃみをしたというわけである。
マルコ神父は雑念やイライラと振り払うかのように数回頭を左右に振ったかと思うと、その場を後にした。
パシィ~ンッッ!!
甲高い音と共にお尻の表面で痛みが弾け、思わずチサトは目をつぶる。
パシィ~ンッ!ピシャ~ンッ!パアア~ンッ!パッチィ~ンッ!
チサトは口を一文字に引き結んで耐えようとする。
「全く・・前にも言ったが・・・もっと周りに気をつけないとダメだろう?」
ウォルフ神父はお尻を叩きながらそうお説教をする。
素直で真面目だが、ドジなのは今までのチサトの態度などを見ればわかるからだ。
今まではそんなにひどいものではないので、口頭で注意したり叱る程度だった。
ピシャ~ンッ!パッシィ~ンッ!パッアア~ンッ!パッチィ~ンッ!
「今回は気絶した程度で済んだからよかったが・・・」
パアシィ~ンッ!ピシャ~ンッ!パアア~ンッ!パッチィ~ンッ!
「ぅ・・・ぁ・・・っ・・・く・・・」
だんだん痛みが増してきて堪え切れなくなってきたのだろう、チサトの口から微かに苦痛の声が漏れ始めた。
ピッシャ~ンッ!パッアァ~ンッ!パッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!
「最悪な事態もありえたかもしれんのだぞ?わかってるかね?」
バシバシとお尻を叩きながらウォルフ神父はチサトに問いかける。
「きゃんっ・・!ひゃあんっ・・!ごめんなさいっ・・!迷惑かけて・・・ごめんなさいっ!!」
チサトは悲鳴を上げつつも謝る。
「反省してるか?」
「してます・・・ごめんなさ~いっ!」
「よし・・・それならここまでにしておくか」
そういうと、ウォルフ神父はお尻を叩く手を止めた。
「大丈夫か?」
赤く染まったお尻に薬を塗ってやりながらウォルフ神父はチサトに尋ねる。
「はい・・少しは楽になりましたから・・・」
「そうか。最後だいぶ痛そうだったように見えたからな。やり過ぎたかと心配したんだが」
「大丈夫ですよ。それより、ご迷惑かけちゃってごめんなさい」
「間違いや失敗は誰にでもあるさ。どこが原因なのか、しっかりと考えて次に生かせばいいんだ」
「はい」
―完―
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