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後悔と罪悪感(最遊記より:八/三)



(最遊記を題材にした二次創作です。キャラのイメージが原作と異なっている可能性があります。許容出来る方のみご覧下さい)


 激しい雨が窓に叩きつけ、雨音を幾度となく鳴らす。
新聞を読みながら、三蔵は窓の外を見やる。
 (いつまで・・・降りやがる気だよ・・・)
ここ連日降り続ける雨に、三蔵は苛立っていた。
幼いころのトラウマにより、三蔵にとって雨は何よりも嫌いなもの。
何日も降り続ける雨は苛立つものでしか無い。
雨のせいで出立も遅れてしまうから、なおさらだった。
 (クソ・・!どうにかならねえのかよ!?)
自然現象が相手な以上、苛立っても無駄なのはわかりきっている。
だが、それでも苛立たずにはいられなかった。
自然、タバコに手が伸びる。
あっという間に、灰皿はタバコの山になっていった。
 (大丈夫かよ・・・?)
悟空はイライラしながらタバコを吸っている三蔵を、心配そうに見つめていた。
(ちょっと・・・痩せてねえか?)
悟空はジッと三蔵の顔を見つめる。
三蔵の頬は心なしか、痩せこけたような感じに見える。
それも無理はないことで、実はここ最近、三蔵はタバコを吸ってばかりで、ろくに食事をしていなかった。
何よりも嫌いな雨が連日降り続ける中、不機嫌なあまり食事すらしたくなくなっていたからだ。
 ただでさえいつも不機嫌な三蔵だが、食事をしていないことで、その苛立ちはさらに強くなっている。
こんなときには近づかない方がよいのはわかっていたが、それでも悟空には放っておけなかった。
 部屋を出たかと思うと、しばらくして悟空が戻って来る。
その手にはフルーツの缶詰やサンドイッチといった軽食系の食べ物を載せたお盆を持っていた。
 「な、なぁ、三蔵・・・」
恐る恐る悟空が声をかけると、三蔵は不機嫌極まりない表情で睨みつける。
その恐ろしさに、悟空は一瞬引きそうになるが、それを堪えつつ声をかける。
 「な、何か食いなよ。か、身体に悪いって」
「あん?いらねえよ」
「で・・でもよ・・・」
「いらねえって言ってんだろ」
「そ、そんなこと言うなって。せ、せめてフルーツくらい食べろよ」
そう言って悟空は缶詰を開けようとする。
 「いらねえって言ってんだろ!とっとと出てけよ!!」
三蔵はそう叫ぶや、缶切りを投げつけた。
缶切りは悟空の顔に当たり、頬に傷をつける。
 悟空は恐る恐る頬に手をやり、血が出ていることに気づくと、愕然とした表情を浮かべる。
同時に、もの凄い勢いで飛び出してしまった。
 (クソ・・・!!やっちまった・・・)
窓の外から、悟空が宿を飛び出す姿に、三蔵は後悔の念が沸き上がる。
悟空はただ自分を気遣っただけだ。
なのに、邪険にした挙句に怪我までさせた。
悟空がショックを受けて宿を飛び出してしまうのも無理はない。
 (クソ・・・!連れ戻さねえと・・・)
そう思うが、足が動かない。
食べていないからではない。
あんなにひどいことをしておいて、どの面下げて悟空を連れ戻しに行けるのか。
そういう気持ちがあったからだった。
 無意味なプライドだとわかっていても、それでも足が動かない。
(クソ・・・クソクソクソクソクソクソクソッッ!!)
三蔵は苛立ちと共に自身を罵らずにはいられなかった。


 しばらく経った頃、八戒と共に悟空が部屋へ入って来る。
八戒が探して連れ戻して来たのだ。
(連れ戻したてきたか・・・・)
そのことに三蔵はホッとする。
同時に、悟空の服はグッショリと濡れていることにも気づいた。
 このままでは風邪を引いてしまう。
すぐにでも風呂に入れて温かくしなくてはいけない。
そう思って口を開くが、思いとは裏腹になってしまう。
 「おぃ・・・。ウロチョロしてんじゃねえよ・・・」
(そうじゃねえだろうが・・・)
優しくしてやれない自身を罵りたくなるも、口は勝手に言葉を放つ。
「ぬれ鼠のまんまうろつき回るんじゃねえよ。カーペット代弁償しなきゃならねえだろうが。迷惑なんだよ!それにテメェが風邪でも引きやがったら、さらに面倒になるんだよ!とっとと濡れたモン脱いで風呂浴びてきやがれ!!」
三蔵のひどい言葉に、悟空はまたショックを受けた表情になる。
また飛び出しそうな表情を浮かべるが、それをグッと堪えると、悟空はそのまま風呂へ行った。
 (クソ・・・!何で・・こうなるんだよ・・!!)
タバコを灰皿に押しつけながら、三蔵は自己嫌悪に駆られる。
ひどいことをして飛び出すようなことをさせた挙句、やっと帰って来たのに、謝るどころか、さらにひどいことを言ってしまった。
 自分で自分が情けない。
いや、それどころか許せない。
三蔵の心の中で、罪悪感がマグマのように噴き上がり、それが自己嫌悪やそこから来る苛立ちをさらに燃え上がらせる。
 (クソ・・・!!クソクソクソ・・!!)
いっそのこと、罵倒されるなり、殴りつけられでもすれば、まだよかった。
だが、悟空はそんなことはしないで、辛そうな表情のまま風呂へ入っていった。
恐らく、悟空は三蔵の気持ちをちゃんと汲めなかった自分が悪いとでも思っているのだろう。
そんな悟空に、さすがの三蔵も罪悪感を感じる。
 「おぃ・・・」
三蔵は八戒に声をかける。
「何ですか?」
「俺を殴れ」
思わず、三蔵は八戒にそう言っていた。
 「何故です?」
「いいからとっととやれ」
「悟空に悪いと思ってるんですか?でも・・一発殴った程度で、許されるようなことだとでも思ってるんですか?」
「う・・うるせぇな・・・」
痛いところを突かれ、三蔵はバツが悪くて顔をそむける。
 「三蔵・・・少しは悟空に悪いと思ってるってことですね?」
確かめるように、八戒は問いかける。
「うるせぇ・・・イチイチんなこと聞くんじゃねえ」
自分で認めるのは癪だからか、三蔵はそんな風に言いやる。
 「わかりました・・・。それじゃあ・・・殴ります。ただし・・・普通とは違うやり方ですけどね」
八戒の言葉に、三蔵は一瞬怪訝な表情を浮かべる。
直後、八戒が三蔵の手首を掴んだかと思うと、思い切り引き倒す。
おかげで、三蔵はベッドの縁に腰を降ろした八戒の膝のうつ伏せになった。
 (コイツは・・・!?)
膝に載せられると同時に、三蔵はハッとする。
「おぃ!何しやがる気だ!」
「殴るんですよ、平手でね」
「ああん!?ふざけんなぁ!?」
こうなるとは思っていなかったので、三蔵は思わず叫ぶ。
 「おやおや?殴れといったのは三蔵じゃないですか?」
三蔵の抗議に八戒はしれっとそんなことを言いやる。
「殴れとは言いましたけど、どうやってとまでは言わなかったじゃないですか」
「そいつは・・・屁理屈だろうが・・・」
慣れた手つきでお尻をあらわにする八戒に、三蔵は憮然とした感じで言う。
 「屁理屈だろうが、殴るのには変わりませんよ。それとも・・・・三蔵は自分で言ったことも守れないんですか?」
「ぐ・・・」
八戒に痛いところを突かれ、三蔵は言葉に詰まる。
 「クソッ!好きにしやがれ!!」
半ばヤケクソになって三蔵はそう叫ぶ。
「わかりました。それでは・・・」
八戒はそう言うと、いつものように平手を振り上げた。


 パアシィ~ンッ!
「く・・・・・」
弾けるような音と共にお尻に鈍い痛みが走る。
パアシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パッアァ~ンッ!
三蔵は両手でベッドのシーツを握りしめ、声を漏らすまいと口を閉じる。
ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パッシィ~ンッ!パッアア~ンッ!
「全く・・・いけませんねぇ・・」
お尻を叩きながら、八戒はお説教を始める。
 パアッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パアッアア~ンッ!
「雨が嫌いなのは僕達だって知ってますよ。でも、だからって機嫌悪くしたってどうにもならないでしょう?」
「そんなこたぁ・・・わかってんだよ・・・」
だんだんとお尻が色づいてゆく中、声を漏らすまいとしつつ、三蔵は八戒に言い返す。
 「わかってるなら、どうして何も食べようとしなかったんですか?そんなことすれば、悟空が心配するのはよくわかっているでしょう?」
「う・・うるせぇな・・・」
痛いところを突かれ、三蔵は顔をそむける。
 パアッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パアッチィ~ンッ!
「自分が悪いのに・・・心配した悟空に・・・あんなことして・・・。それじゃあ、幾ら悟空だってショック受けて出ていってしまいますよ」
(だから・・・言うんじゃねえよ!!)
八戒の言葉に、三蔵はそう叫びたくなる。
胸の奥深くまで八戒の一言一言が突き刺さってくるようで、何ともたまらない。
 「しかも・・・悟空に謝るどころか・・・さらにあんなこと言って、本当にひどい人ですねぇ・・・・」
「うるっせえな!!イチイチ言うんじゃねえよ!!当てつけてんのか!!」
八戒の言葉に、三蔵は思わず叫んでしまう。
だが、八戒は冷ややかな声で言う。
 「事実じゃないですか。それは三蔵がよくわかっているでしょう?」
「ぐ・・・・・」
八戒の言葉に、三蔵はぐうの音も出ない。
何もかも八戒の言う通りなのは、自分自身が一番よくわかっていたからだ。
 「だからってなぁ・・・。何だってケツ叩かれなきゃ・・いけねえんだよ・・・」
恥ずかしさや悔しさに、三蔵は身を震わせながら言う。
「殴れといったのは三蔵ですよ?それに・・・三蔵、ただ殴ったぐらいで効果があるなんて、思ってます?」
「ぐ・・・・」
再び痛いところを突かれ、三蔵はムッツリと押し黙る。
 確かに普通に殴ったぐらいでは、三蔵には効果は薄いだろう。
肉体的な苦痛だけでは、三蔵に対しては罰にはならない。
今現在のように、心理的にも責めるような方法の方が三蔵には応えるだろう。
 「そうですよねぇ、幾ら三蔵だって自分の事ぐらいはわかりますよねぇ」
「言うなって・・・・言ってんだろうが・・・」
いつもだったら、もっと容赦なく言い返すところだが、さすがに今回は自分でも罪悪感を感じているせいか、おとなしめである。
 「三蔵・・・・悔しいですか?辛いですか?こんな風に・・・お尻叩かれて・・・一々あげつらわれて・・・・」
「テメェ・・・当てつけかよ?イチイチ言いやがって・・・」
さすがにこんな風に言われては、三蔵も苛立ちをあらわにしかける。
 「でも・・・悟空の方がもっと・・・辛かったはずですよ。ただ・・・三蔵が・・・心配だから・・・しただけなのに・・・。それなのに・・・あんなに・・邪険にされて・・・やっと帰ってきても・・・あんなに・・ひどいこと・・言われて・・。本当に・・・辛かったでしょうね・・・・」
(クソ・・・!!)
三蔵は心の中で吐き捨てるように叫ぶ。
まだ風呂を浴びている悟空のことを思いながら、三蔵はたまらない気持ちになっていた。
思い返せば、ケチのつくようなことばかりやってしまった。
ずぶ濡れになった姿を思い返せば、風邪でも引かないかと心配になる。
その一方で、何様のつもりでそんな心配が出来る?そもそもそう仕向けたのは自分だ、悟空に何かあったら、それは自分が仕出かしたことだ、今さら心配など出来る資格があるのか?そんな問いかけが、自身の心の中から聞こえてくる。
 だが、それよりももっと深刻なものがある。
病気や身体の傷はいずれ治る。
だが、心に負った傷はそうそう治せない。
ひどいことをされて、悟空の心がもう治せないくらいに傷ついてしまっていたら。
そう考えると、三蔵は背筋が寒くなる。
無意識に、三蔵は全身が震えてきた。
今さらながら、自分がしたことがどれほどひどいことか、わかったからだ。
 「三蔵・・・自分がどれだけひどいことをしたか、気づいたようですね」
不意に八戒がそう尋ねて来た。
「だったら・・・何だってんだよ?」
自分の気持ちを覚られたことが嫌なのか、三蔵は自身の感情を隠そうとして不機嫌そうな声で問いかける。
 「悟空に・・・何とかしてあげたいですか?」
「ふ・・ふん・・。知らねえなぁ・・・」
三蔵はいつもの素振りを見せようとするが、心なしか声が震えている。
「そうですか?それは残念ですねぇ。いい方法を・・知ってるんですけどねぇ・・・」
思わせぶりな八戒の言葉に、三蔵は思わず聞き耳を立てる。
 「何だ?そいつは?」
「おや?興味が無いんじゃなかったんですか?」
「そ・・そんな・・こたぁ・・言ってねぇよ・・・」
三蔵はあくまでも普段の態度を装いつつ返事をする。
 「わかりましたよ。それじゃあ・・教えますよ。ただし・・・」
八戒はそう言ったかと思うと、不意に足を組む。
おかげで、三蔵はお尻を突きあげた体勢になった。
 「おぃ!何のつもりだ!」
「決まってますよ、本気のお仕置きですよ」
「何・・だと・・・?」
怪訝な表情を浮かべる三蔵に、八戒はニコリと笑みを、だが目は笑っていない笑みを浮かべている。
 「三蔵・・僕だって今日はすごい怒ってるんですよ?だから・・・教える前に・・・・もっと厳しくお仕置きしてあげます。耐えられたら、教えてあげますよ」
「テメェ・・・・」
「三蔵なら耐えられますよねぇ?まぁ、無理ならいいですけど」
「あん?んなワケねぇだろうが!」
馬鹿にされたと思い、三蔵は思わず叫ぶ。
だが、直後してやられたことに気づく。
 「では・・・いきますよ。覚悟はいいですね?」
「好きにすりゃあいいだろうが!」
半ばヤケクソになって再び三蔵は叫ぶ。
同時に思い切り八戒の平手が振り下ろされた。
 ビッダァァァ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッ!!!
「ぐ・・・!!」
平手の嵐に、三蔵は苦痛で顔を歪める。
声を出してたまるかと必死に堪える中、八戒は平手を振り下ろし続けた。


 (クソ・・!!散々叩きやがって!!)
無意識にお尻を押さえながら、三蔵は毒づく。
ようやく八戒が許してくれたが、これでもかと叩かれたためにお尻は真っ赤に染め上がり、座っているだけでも痛い。
それでも、痛みを堪えて悟空が来るのを待つ。
 (本当に・・・効き目あんだろうな?無かったら・・タダじゃおかねーからな)
座ったまま、三蔵はさらに毒づくように言う。
お仕置きが終わった後、ショックを受けている悟空に対するよい方法を教えてもらったため、それを実行しようというところだった。
 やがて、しばらくすると悟空がやって来る。
「さ・・・サンゾー・・・」
おどおどと、不安げな様子で悟空はこちらの様子を伺っている。
(クソ・・・!そんな目で・・・見んなよ・・・)
不安と恐怖の入り混じった悟空の様子に、三蔵はたまらなくなってくる。
 「こっち来い」
三蔵の言葉に、悟空はギクリとする。
「え・・でも・・・・」
さすがに悟空はためらう。
「いいからさっさとこっちに来い」
思わず三蔵はいつもの不機嫌な調子で言ってしまう。
しまった、と思うも、既に言ってしまった以上は取り返しがつかない。
 「つべこべ言わずにさっさと来い。でねえと・・・わかってんな?」
「わ、わかったってば~!!すぐ行くっ!行くからっ!だから・・・!!」
慌てて悟空は三蔵のもとへ飛び込むようにやって来ると、膝の上にうつ伏せになった。
 「おぃ・・?何してんだよ?」
悟空の行動に、三蔵は怪訝な表情を浮かべる。
お仕置きなどするつもりは無かったからだ。
 「ひぃん・・さ、サンゾーッ!い・・幾らでも叩いていいからっ!!ケツ何回でもぶっ壊してもいいから!!だから・・・一緒にいさせてくれよーっ!!捨てねえでくれよーーーーーっっっ!!!」
悟空は必死になって叫んだかと思うと、自分からお尻を出す。
その身体はまるで熱病にでもかかったかのように、震えていた。
 その姿に、三蔵は愕然とする。
自分が一時の感情に任せてひどいことをしたために、悟空は嫌われた、捨てられたと思ってしまったのだ。
許してもらえるなら、お仕置きだって何だって受ける。
そういう気持ちにまでなっていた。
そのことに、三蔵は罪悪感が沸き上がってくる。
無意識のうちに、悟空を抱き起こすと、そのまま横になってベッドに入る。
 「さ・・サンゾー?」
悟空は怪訝な表情を浮かべる。
「今日だけだ。次はねえからな」
そういうと、三蔵はそのまま抱きしめる。
 (ゆ・・・許して・・くれたんだ・・・)
そのことに気づくや、悟空は今度は安堵で身を震わせる。
(ったく・・・手間のかかるサルだな・・・・)
そう思いつつも、三蔵はホッとする。
 (しかし・・・うまいことしてやられたな・・・)
三蔵は八戒の顔を思い出すと、少し不機嫌な表情になる。
八戒が教えた作戦、それが抱っこしての添い寝だった。
子供じゃあるまいしと思った三蔵だったが、本当にその通りにしたら悟空はすっかり安心した。
それはこちらとしてもホッとするが、八戒にいいように操られたようで、それだけは癪だった。
 (クソ・・今回だけは・・・貸しにしてやるよ・・・)
せめてもの意地に、三蔵はこっそりそう呟いた。


 ―完―

言い訳も過ぎると・・・(最遊記より:八/空)



(最遊記を題材にした二次創作です。キャラのイメージが原作と異なっている可能性があります。許容出来る方のみご覧下さい)


 バッシィィ~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッ!!
「ひいいっ!!ごめんってばーっ!サンゾーッ!!」
激しい平手打ちの音が響きわたる中、三蔵の平手が悟空のお尻に豪雨のように叩きつけられる。
 「こんバカッ!これで何度目だと思ってやがんだっ!!また宿屋のメシ全部食いやがって!!」
「だからごめんって言ってるじゃんかー!許してくれよーっっ!!」
「馬鹿野郎!!何度も同じことしやがって!!今日はケツがぶっ壊れるまで引っぱたいてやる!!」
「そ・・そんな~~~っっ!!??」
悟空は絶望の声を上げる。
三蔵のことだ、本気で悟空のお尻が壊れそうになるくらい叩くだろう。
 (ど・・どうしたらいいんだよ~~~!!??)
バシバシとお尻を叩かれ、泣きながら必死になって悟空は考える。
そのとき、不意に部屋のドアが開く。
同時に、買い物袋を抱えた八戒が入って来た。
 「は・・八戒~~!!助けてくれよ~~~!!!」
買い物から戻って来た八戒に悟空は思わず助けを求める。
「おやおや?どうしたんですか、二人とも?」
「見りゃあわかるだろうが。お仕置きだ」
三蔵はいつものようにそっけない態度で答える。
 「それはわかりますよ。どうしてお仕置きなんかしてるんです?」
「性懲りもなくまた宿屋のメシ全部食いやがったんだよ」
三蔵の返事に、八戒もさすがに厳しめな表情になる。
 「ダメじゃないですか、悟空。それじゃあ三蔵に怒られるのも当然ですよ?」
「そりゃあわかってるけどよ~~!このままじゃケツ壊れちまうってば~~!!!」
「あん?一旦壊れた方がいいんじゃねえのか?」
「ひぃぃぃ!!こ、怖えええよぉぉ!!??」
三蔵の言葉に、思わず悟空は全身を震わせる。
そんな悟空の姿に、さすがに八戒もちょっとかわいそうになってきた。
 「三蔵・・・その辺で許してあげたらどうですか?」
「あん?何甘ぇこと言ってんだよ?躾にならねぇだろうが」
「そうは言いますけど、ここのところ、やり過ぎなような気もしますけど?」
八戒の言葉に三蔵は痛いところを突かれ、不機嫌そうな表情になる。
 「悟空・・ちゃんと反省してます?」
「してるっ!してるってば!!こ、今度こそ、しねーよぉっっっ!!」
「三蔵にも、僕にもちゃんと約束出来ます?」
「するっ!するからっ!だからもう許してくれよーっっ!!」
必死になって約束する悟空に八戒も多少表情を和らげる。
 「三蔵、悟空もこう言ってますし、許してあげたらどうです?」
「ふん・・・好きにしやがれ・・・。やる気が・・・失せたぜ・・・」
三蔵はそういうと、ようやく悟空を解放する。
 「ひ・・ひぃん・・八戒ぃぃぃ・・・」
急いで八戒のもとに駆けつけると、悟空は泣きながら抱きつく。
「もう大丈夫ですよ。今、手当てしますからね」
そう言うと、八戒は悟空を抱き上げ、部屋を後にした。
 「サルは?」
八戒が戻ってくると、三蔵はいつものように新聞を読みながら尋ねる。
「泣き疲れて寝てますよ。すみません、何だか悪者にしてしまって」
「ふん・・。構わねえよ。それより・・テメェ・・少しサルに甘すぎるんじゃねえのか?」
「かもしれませんね・・・」
「まあ好きにしやがれ。ただし・・・何かあったら・・・そんときはテメェがキッチリやれよ?俺は知らねえからな」


 それからしばらく経ったある日、いつものように一行はある街の宿屋に泊まっていた。
「あー・・・ヒマだよなぁ・・・」
悟空はベッドに寝転がってそう呟く。
 八戒は一人で買い物にでているし、悟浄も酒と女が欲しくてどこかのバーにでもしけこんでいるところだ。
活動的なタイプだから、三蔵のように新聞やタバコでも、という方法でヒマを潰すことなど出来ない。
(何か・・・ねえかなぁ・・・)
ベッドで寝転がっていてもつまらないので、悟空はおもむろに立ち上がると、宿屋の中をうろつき始めた。
 (ん・・・この匂い・・・・)
宿の中をウロウロしている間に、悟空はおいしそうな匂いを嗅ぎつける。
無意識のうちにフラフラと匂いを追って、やがてたどり着いたのは厨房。
 厨房には、出来たての料理がズラリと並んでいた。
(や・・ヤベェ・・・食い・・てぇ・・・)
出来たての料理の山に、悟空は食欲が沸き上がってくる。
(で・・でも・・・三蔵と八戒に・・・約束・・したし・・)
だが、辛うじて理性が働き、三蔵と八戒にした約束を思い出す。
またやろうものなら、今までよりずっと厳しくお仕置きされてしまう。
いや、八戒にも怒られてしまうだろう。
悟空は背中を向けてその場を立ち去ろうとする。
だが、背後から料理の匂いがこれでもかと言わんばかりに悟空の鼻を突いてくる。
厨房から出ようとするが、身体は意思とは無関係に立ち止まってしまう。
(む・・無理!?我慢・・出来ねえ!?)
心の中でそう叫ぶと、悟空は料理の方へ振り返り、飛びかかった。
 「ど・・どう・・しよ・・・・」
真っ青になりながら、悟空は呟いた。
料理は全て食べつくされ、お膳は全て空になってしまっている。
(俺の馬鹿!?何でまた食っちまったんだよ~~~!!??)
自身の浅ましさを罵るが、幾ら後悔してももう後の祭り。
 (どうすんだよ!?このままじゃ・・・また・・ケツ・・叩かれちまう・・)
お仕置きの可能性に、悟空は必死になって頭を巡らせる。
だが、幾ら考えても良い案なども浮かばない。
そのうち、誰かがこちらへやって来るような音まで聞こえてくる。
ハッとするや、本能的に悟空は勝手口から飛び出してしまっていた。


 (ど・・どう・・しよ・・・)
通りをトボトボと歩きながら、悟空は困り果てていた。
あの後、勝手口からそのまま宿を飛び出してきてしまったのだ。
そして、今に至るまで、宿に帰らず、ズッと街をうろつき回っているのである。
 (心配・・してっかなぁ・・・。帰った方が・・・いいよなぁ?)
そう思いかけつつも、すぐに別の可能性が浮かんでくる。
(でも・・帰ったら・・絶対・・・怒られるし・・・。それに・・・勝手に飛び出してこんな時間までうろついてたってなると・・・)
宿屋の食事をまた全て食べてしまったというだけでも十分厳しいお仕置きをされる理由になるが、宿屋を飛び出して夜遅くまで帰らなかったとなれば、もっと厳しくなってしまう。
(絶対・・帰りたくねぇ!?)
宿屋で待っているお仕置きに、悟空がそう思ったときだった。
 「ここに・・いたん・・ですか・・」
聞き覚えのある声に思わず悟空は振り返る。
すると、いつの間にか八戒の姿があった。
 「は・・八戒・・な・・何で・・」
「帰って来たらいなくなってましたからね。随分、探しましたよ。さぁ、帰りましょう?」
「や・・・ヤダッ!!」
思わず悟空は叫ぶ。
 「悟空、あまりワガママを言わないで下さい。さぁ、帰りましょう?」
「ぜ・・・絶対ヤダってば!だ、だって・・帰ったらお尻叩くんだろ!?」
本能的にお尻を押さえ、後ずさりながら悟空は叫ぶように問いかける。
 「それは・・・仕方ないじゃないですか・・・。皆に心配かけたんですから。さぁ、もう遅いですから帰りましょう?」
八戒は出来るだけ優しい声で、帰るように促すが、既に恐怖にとらわれている悟空は踵を返して逃げ出そうとする。
それを見ると、八戒も力づくもやむを得ないと判断したのか、逃げようとする悟空を捕まえると、肩に担ぎあげた。
 「だああっ!!離してくれよーっっ!!」
悟空は必死になって暴れる。
「ちょ・・ご、悟空・・あまり・・」
大人しくするように説得しようとするが、悟空は恐怖で暴れ続ける。
(仕方ありませんね・・・)
心の中でそう呟くと、八戒は軽くパンッ!と悟空のお尻を叩いた。
 「ひ・・・!!」
軽くとはいえお尻を叩かれ、思わず悟空の動きが止まる。
「あまり聞きわけが無いと、ここでお尻を叩きますよ?それでもいいですか?」
「ひ・・!!わ、わかったから!大人しくすっから!だ、だから勘弁してくれよ!!」
悟空はそう叫ぶと、ようやく大人しくする。
八戒はホッと一息つくと、そのまま悟空を担いで宿屋へ戻っていった。


 八戒に担ぎあげられたまま、宿へ戻って来た悟空だったが、八戒の肩から降ろされると、再び逃げ出そうとする。
 「どこへ行くんですか?」
「ちょ・・・!は、八戒っ!離してくれよっ!」
悟空は必死に逃げ出そうとする。
 「ダメですよ、悟空、今日はお仕置きですからね」
「や・・ヤダぁぁぁ~~~っっっ!!!!」
悟空は恐怖に叫ぶが、それを八戒が許すわけもなく、あっという間に、ベッドの縁に腰を降ろした八戒の膝にうつ伏せにされてしまう。
 「ひん・・・やだやだやだっ!八戒っ!勘弁してくれよ~~~~!!!!」
「そういうわけにはいかないんですよ・・」
八戒は少し困った表情で言う。
悟空がお仕置きを怖がる気持ちもわからないわけではない。
 しかし、あれだけしっかり約束をさせたのに、また破ってしまった。
しかも、お仕置きが怖いからと宿屋を飛び出し、夜遅くまで帰らなかった。
幸い、八戒が見つけたからいいようなものの、下手をしたら危ないことに巻き込まれてしまったかもしれない。
だから、今日はさすがに八戒も厳しく叱るつもりだった。
 「やだっ!やーだーっ!やめてくれってば~~~~!!!!!!」
ズボンを降ろされ、お尻をあらわにされても、悟空は往生際悪く叫ぶ。
それを無視して八戒は悟空の身体を押さえると、右手を振り上げた。


 パアッアア~ンッ!
「ひ・・・!!」
弾けるような音と共に八戒の平手が叩きつけられる。
手形が悟空のお尻に浮かび上がると同時に鈍い痛みがお尻全体にジンワリと広がっていった。
 パアシィ~ンッ!ピシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パッアア~ンッ!
「ひ・・!ちょ・・痛て・・痛てってば!」
八戒の平手が幾度も振り下ろされ、悟空は声を上げる。
「仕方ないでしょう、お仕置きなんですから。それより・・・」
お尻を叩きながら、八戒はお説教を始める。
 パアチィ~ンッ!ピシャ~ンッ!パアア~ンッ!パアッチィ~ンッ!
「ちょ・・やめ・・やめて・・やめてくれってばー!!」
両脚をバタつかせ、いつもとは違って何だか往生際が悪い感じで、悟空は叫ぶ。
 ピシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パアシィ~ンッ!ピシャ~ンッ!
「ダメじゃないですか。前に三蔵や僕に約束したでしょう?もう宿屋のご飯を全部食べたりしないって?」
お尻を叩きながら、子供に言い聞かせるような口調で八戒はお説教をする。
 「それなのに・・・・また破ったりして。それじゃあ悟空が悪いのはわかるでしょう?それに・・・勝手に宿を飛び出したりして。どれだけ心配したと思います?」
「だ・・だって・・仕方ねえじゃんかよ~~~!!!」
「仕方ない?何が仕方ないんですか?」
一旦、お尻を叩く手を止めて八戒は尋ねる。
 「だって・・だってよぉぉ・・。すんげぇ・・・うまそうだったし・・。つ・・つい・・フラフラ~~って・・・。は、八戒だってお、俺がウマそうなもん見たらとまんねーのはよく知ってるじゃんかよ!!」
「それはそうですけど、でも、だからって宿屋のご飯勝手に食べてもいいっていう理由にはならないでしょう?悟空が食べたのは僕達の分だけじゃないんですよ。他のお客さんの分だってあるんですよ。他の人のご飯を食べたら・・・それは立派な泥棒ですよ。悟空だって、自分のご飯を他の人が勝手に食べたら怒るでしょう?」
「そ・・そりゃあ・・そう・・だけど・・・」
八戒の言葉に反論できず、悟空はだんだん声が尻すぼみになってしまう。
 「それに・・・どうしたって・・・宿を飛び出したりしたんです?勝手に飛び出したりして、しかもこんな時間まで帰って来なかったら、僕達が心配するのはわかってるはずでしょう?」
「そ・・そんな・・こと・・・言ったって・・・。だって・・・あのまま・・・いたら・・絶対・・・お尻・・・叩く・・じゃんかよ・・・」
「それは悟空が悪い子だったからでしょう?」
八戒の問いかけに、悟空は押し黙ってしまう。
 「だ・・だって・・・」
「だってじゃありません。反省していないんですか?」
いつもと違って言い訳を並べるからか、八戒は厳しめな声で言う。
 「な、何だよ八戒のバカッ!何で八戒までサンゾーみてぇなこと言うんだよ!!」
いつもと違って厳しい八戒に、悟空は思わずカッとなって叫ぶ。
そんな悟空の態度に、八戒の表情が険しいものへと変わる。
 「悟空・・・それは・・・本心ですか?」
(や・・ヤベェ!?)
八戒の声のトーンが変わったことに、悟空は地雷を踏んでしまったことに気づく。
今さら謝ったってもう遅い。
それに、今日の悟空は言いたいことが山ほどあった。
 「だ・・だったら何だよ!だ、だいたい三蔵が悪いんじゃんかよ!いつもいつもお尻叩くから!お、俺が大食いなのは皆知ってるじゃんかよ!そ、それなのに何だってあんなにお尻叩くんだよ!ひでーよ!お、俺だって、お尻叩かれなきゃ、あ、あんな真似しねーよおっ!」
「つまり・・・こういうことですか?お尻を叩く僕達が悪い、僕達がお尻を叩くようなことをしなければ、悟空だってこんなことをしなかったというわけですか?」
「そ・・そーだよっ!だ、だいたい何だってお尻なんか叩かれなきゃいけねーんだよ!俺ガキじゃねーよ!それなのに・・・バカッ!訴えてやるっ!!」
「いい加減にしなさい!」
ビッダァァ~~~~ンッッッッ!!!!
「ぎゃああああっっっ!!!」
本気で怒鳴った八戒に思い切りお尻を叩かれ、悟空は悲鳴を上げる。
 「何すんだよ、バカーッ!!」
思わず振り返って叫んだ悟空だったが、八戒の表情を見るや、思わず顔が強ばる。
「自分が・・悪いことを・・したのに・・反省するどころか・・・言いわけした上に・・逆ギレ・・・。本当に・・・・悪い子ですね・・・」
「は・・八戒・・?」
八戒のただならぬ様子に、悟空は恐る恐る呼びかける。
 「そんな・・・悪い子は・・・絶対に・・・許しませんよ・・」
八戒はそう呟くや、足を組みだした。
「ひ・・!ちょ、や、やめてくれって!?」
お尻を突きあげた体勢にされるや、悟空は慌てる。
お仕置きがとても痛く感じる上、この体勢にされるときは八戒がとても怒っているときだと知っていたからだ。
 「ダメですよ。今日の悟空は悪い子ですからね」
そういうや、八戒は平手を振り下ろした。
バッシィィ~~ンッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!!
「ぎゃああ~~~んっっ!!痛っ!痛い痛い痛い~~~っっっ!!!」
容赦ない平手打ちの嵐に、悟空は両脚をバタつかせる。
 「ヤダッ!ヤダヤダヤダ~~~っ!!も、もうやめてくれよ~~~!!!」
必死に叫ぶ悟空だったが、完全に怒っている八戒はそのまま平手を振り下ろし続けた。


 「ひっ・・ひぃぃん・・・ふぇぇぇん・・・・」
ボロボロと涙をこぼして悟空は泣いていた。
お尻は今や全体が濃厚なワインレッドに染め上がってしまっている。
 「悟空・・・反省しましたか?」
一旦、お尻を叩く手を止めて八戒は尋ねる。
「は・・八戒・・バカぁ・・・。何だって・・こんな・・叩くん・・だよぉぉ・・」
だが、悟空は謝ろうとせず、そんなことを言う。
 「だから言ってるじゃないですか。約束を破ったり、遅くまで帰って来なくて心配させた悟空が悪いんでしょう?」
「だ・・・だからって・・・こんなに・・叩く・・こと・・ねえじゃ・・ねえかよぉ・・。バカぁぁぁ・・・・」
(困りましたね・・・・・・)
八戒は困惑する。
普段は素直に反省するのに、珍しく強情な悟空に、どうしたらいいのかわからず、困ってしまう。
 「おぃおぃ、どーしたんだ~?」
不意にドアが開いたかと思うと、悟浄が入って来る。
「おや?悟浄、どうしたんですか?」
「ん~?酒場から帰って来たらやたらうるせえからな。おやおや?どうしたんだおサルちゃん、ケツが真っ赤で本物のサルみてぇだな?」
「うるっせーよ!このエロガッパ!?」
「おーおー、ナマイキだねぇ。そんなナマイキちゃんはこーしてやるよ」
そういうや、悟浄は八戒からかっさらうようにして悟空を取り上げる。
 「ちょ!ど、どこ連れてくんだよ!!」
「いーから大人しくしとけって」
悟浄はそのまま、悟空を抱き抱えると、部屋から出ていってしまった。


 「悟空は・・・どうしたんですか?」
悟浄が戻って来ると、八戒は心配そうに尋ねる。
「あん?俺が散々からかってやりながらケツ撫でてやったらそのうち寝ちまったぜ」
「そうですか・・・・」
ホッとしつつも、八戒は何だか晴れない表情を浮かべる。
 「どうしたんだよ?」
「いえ・・・。今日は・・やり過ぎてしまいましたね・・・。いつもは・・・素直でしたから・・・ああされると・・つい・・・」
「ん~?たまにはそういうこともあるんじゃね?何だかんだ言ったってアイツだってお年頃だしな」
「そういうものですかね・・・」
「まああんまり考え込みすぎると身体に毒だぜ」
悟浄はそう言って出ていってしまう。
 (悟浄みたいに・・出来れば・・また・・違った対応も・・出来たんでしょうけど・・)
生真面目な性格が仇になって、今日の悟空にうまく対応出来なかったことを八戒は悔やむ。
(後で・・・おいしいものでもつくってあげましょう。結構・・泣かせちゃいましたからね・・・)
隣の部屋で寝ているであろう悟空のことを思い浮かべながら、八戒はそんなことを考えた。


 ―完―

不注意の代償(最遊記より:八/三)



(最遊記を題材にした二次創作です。キャラのイメージが原作と異なっている可能性があります。許容出来る方のみご覧下さい)


 その日もいつものように三蔵はタバコを吸っていた。
「ただいま帰りました。って三蔵、また吸ってるんですか?」
悟空と一緒に買い出しから戻って来た八戒は、部屋に充満するタバコの匂いに顔を顰める。
 「あん?今さら何言ってやがんだよ?」
自分のヘビースモーカー振りはよく知っているくせに、そんなことを言う八戒に三蔵はそう言い返す。
「別にタバコを吸うのは構いませんよ。どうせ言ったってやめる気なんかないのはわかってますから。ですけどね・・・」
「あん?思わせぶりな言い方しねえで、言いたいことがあんならさっさと言えよ」
回りくどいことは嫌いなせいか、三蔵はそう言う。
 「じゃあ聞きますけど、三蔵、あなたところ構わずタバコ吸ってますよねぇ。それもよく場所を考えないで」
「あん?それがどうした?」
「どうしたじゃないですよ。こういうことですよ」
八戒は部屋に備え付けのチリ取りや箒を手にしたかと思うと、三蔵の足元を箒で素早く掃く。
掃き終えると、八戒はチリ取りを三蔵につきつけた。
 「何のつもりだ?」
「よく見て下さい。これ、吸殻の灰ですよ?」
「それがどうしたんだよ」
「どうしたじゃないですよ。場所を考えないで吸ってばかりいるから、床やテーブルに吸殻とかが落ちるんですよ」
「ふん・・・知らねえなぁ・・・」
「そうですよねぇ。自分は吸ってばかりで、後始末は僕らに押し付けてますからねぇ」
「ああん!あてつけてんのか!?」
八戒の口ぶりに三蔵はカッとなりかける。
 「そんなつもりはありませんよ。でも三蔵、前にタバコの灰で宿のカーペットを焦がしたのを忘れたんですか?それも二回も?」
「ふん・・・そんなの知るかよ」
「やっぱりそうですか。そうじゃないかと思ってましたけど」
「テメェ・・一々癇にさわること言ってんな・・・」
三蔵は不機嫌そうな顔で言い返す。
 「とにかく・・・・タバコはちゃんと場所を考えて吸って下さい。宿だって迷惑ですし、火事にでもなったらどうするつもりですか?」
「うるせえな・・・」
三蔵はそう言うとまた一本タバコを出そうとするが、八戒に取り上げられてしまう。
 「テメェ、何しやがる!」
「わかってもらえないなら全部没収しますけど?」
「何・・・」
並の人間なら震えあがってしまいそうな目つきで三蔵は睨みつける。
だが、八戒は平静そのもの。
 「どうします?僕の言う通りにしますか?それとも・・チェックアウトするまで我慢しますか?」
「テメェ・・・」
再び睨みつけるが、無意味なのはわかっていた。
「ふん・・・・好きにしやがれ・・・」
「わかってくれればいいんですよ。ああ、一つ言っておきますけど、もし汚したりしたらただじゃ済みませんからね」
ニコリとダメ押しをするかのように、八戒はそう言いやった。


 (クッソ・・・あの・・野郎・・・)
三蔵は八戒の顔を思い出すと、苛立ちに顔を顰める。
(一々姑みてぇに細かいこと言いやがって!!)
八戒の言葉を思い出すと、そう叫びたくなる。
 無論、三蔵とて八戒の言うことが正しいのはわかっている。
しかし、それをあんな風に言われるのはたまらない。
子供ではないのだから。
八つ当たり、筋違いな怒りなのはわかっているが、それでもあんな風に言われたりしたのが悔しくてたまらない。
 一方で、その怒りが不当なものであることもわかっていた。
八戒が正しいことはわかっていても、素直にそれを認められない、それどころか筋違いな怒りを抱く自分に対し、三蔵は苛立ちを募らせる。
それがさらに三蔵の感情に油を注ぎ、燃え上がらせていた。
 (クソ・・!クソクソクソクソクソクソクソクソ!!)
苛立ちが募りに募り、三蔵は無意識のうちにタバコに手を伸ばす。
溜まった苛立ちを紫煙と共に発散させようというのか、出しては吸う。
あっという間に灰皿は吸殻でこんもりと埋まってしまい、それでも三蔵はさらに吸い続けた。
 (ん・・・?)
不意に三蔵は焦げくさい臭いがすることに気づく。
怪訝に思って足元を見下ろしてみると、幾つか吸殻が床のカーペットに落ちてしまっていた。
しかも、焦げて黒い染みを作ってしまっている。
「クソ・・・!!」
三蔵は思わず舌打ちする。
 (俺としたことが・・・)
あれだけ言われたにも関わらず、またも同じ失敗をしてしまった自身の間抜け振りにそう思わずにはいられない。
 「ただいま戻りました・・・・」
不意にドアが開いたかと思うと、買い物袋を抱えて八戒が入って来た。
「おや?どうしたんですか?」
「ふん・・何でもねえよ・・・」
「そうは思えませんけどね。あれ・・?」
八戒はふと三蔵の足元に吸殻が散らばっており、しかもそれが焦げていることに気づく。
 「三蔵・・・・・」
買い物袋を置くと、八戒はゆっくり近づいて呼びかける。
「何だよ・・」
「何だよじゃありません。何ですか?これは?」
「あん?見りゃわかるだろ」
「これが何かを聞いてるんじゃありませんよ。三蔵、僕が言ったこと、まさか忘れたわけじゃないでしょうねぇ?」
「ああん?床にこぼすな、とかいうやつかよ?」
「覚えてはいるようですねぇ・・・・。なのに・・・どうしてまたやるんですか、あなたって人は?」
八戒の問いに三蔵は反抗心が沸いてくる。
自然に言葉が口をついて出ていた。
 「だったら何だってんだよ。何でテメエの言うことなんか聞かなきゃあいけねえんだよ」
三蔵のそんな態度に、八戒は厳しい表情になる。
「三蔵、前に言ったはずですよね?迷惑だし、火事にだってなりかねないから場所を考えて吸って下さいって」
「ああん?どこで吸おうが俺の勝手じゃねえか。何でとやかく言われなきゃならねえんだよ」
(何言ってやがる・・・俺の馬鹿・・・)
三蔵は自身の愚かさにそう思わずにはいられない。
 自分に非があることはわかっている。
だが、それでも、それを認めたくない、他人に頭を下げることなどしたくない。
無駄な虚栄心だとわかっていても、そう思わずにはいられなかった。
 「三蔵・・・本気で言ってるんですか?」
三蔵の態度に八戒の表情がさらに険しくなる。
「ゴチャゴチャうるせえんだよ。だったらどーだってんだ」
(馬鹿野郎!どうして謝れねえんだよ!!)
三蔵は思わず自身を罵る。
自分が悪いとわかっていながら、素直に謝れない、それどころか反抗的な態度を取ってしまう、そんな自分に苛立ちが募る。
 「わかりました・・・。三蔵が全然反省してないのは・・・。だったら・・・僕にも考えがあります・・・」
八戒はそう言うと、おもむろに三蔵の手首を掴む。
「テメェ!何しやがる!」
三蔵は抵抗しようとするが、八戒は難なく引き倒すと、ベッドの縁に腰を降ろし、いつものように三蔵を膝に載せてしまう。
慣れた手つきで八戒は三蔵のお尻をあらわにすると、左手で押さえつけた。
 「テメェ、何すんだ!」
「決まってるでしょう?お仕置きですよ」
「ざけんな・・・何で俺が・・・」
「それは三蔵がよくわかってるんじゃないですか?」
八戒の言葉に三蔵は不機嫌な表情のまま、プイッと顔をそむける。
 「では行きますよ。覚悟はいいですね?」
「やりたきゃあやりゃあいいだろうが・・」
三蔵がそう言いやると、八戒はゆっくりと右手を振り上げた。


 パアッシィィィ~~~~ンッッッッ!!!
「ぅ・・・・」
弾けるような音と共に手形の跡が三蔵のお尻に浮かび上がる。
平手打ちの衝撃に思わず声を漏らしてしまうが、直後、恥辱に満ちた表情を浮かべた。
 パアシィ~ンッ!ピシャ~ンッ!パアア~ンッ!パッチィ~ンッ!ピシャ~ンッ!
平手が叩きつけられるたび、三蔵のお尻に手形が浮かび上がる。
声など出してたまるものかと、三蔵は固く口を引き結び、ベッドのシーツをしっかりと掴んで耐えようとする。
 ピシャ~ンッ!パアチィンッ!パアア~ンッ!パッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!
「全く・・・何をしてるんですか・・。あなたって人は・・・・」
呆れたような口調で八戒はお説教を始める。
 パアシィ~ンッ!ピシャ~ンッ!パアア~ンッ!パアッチィ~ンッ!ピシャア~ンッ!
「別にタバコ吸うのは構いませんけどね、他人の迷惑くらいは考えて下さいよ。ここは宿屋なんですよ?」
弾けるような音を立ててお尻を叩きながら、八戒は問いかけるようにお説教する。
平手が叩きつけられるたびに三蔵のお尻は少しずつ赤くなり、またそれが濃くなってゆく。
 ピシャ~ンッ!パアシィ~ンッ!パアア~ンッ!パアッチィ~ンッ!
「宿の備品焦がしたら弁償とかしなくちゃいけないんですよ。それだけじゃありません。タバコの不始末で火事だって十分あり得るんですからね。そうしたら関係無い人まで巻き添え食って大変なことになるんですし、そうしたら弁償なんてレベルで済む話じゃあなくなるんですよ、わかってるんですか?」
(そ・・そんな・・こと・言われなくったって・・・わかってるんだよ・・・)
三蔵はそう言いたくなるが、グッと堪える。
そんなことを言うのは、ただの言い訳に過ぎないし、却って見苦しい姿をさらすだけだった。
下手な言い訳や泣き叫ぶような見苦しい真似などしたくない。
無意味な意地、プライドなのは重々承知な上でそう思わずにはいられなかった。
 バシッ!バアンッ!バシッ!バアアンッ!バチンッ!ビダァンッ!
「・・ぅ・・ぁ・・・ぅ・・・っ・・ぅ・・・ぁ・・・」
三蔵は声を懸命に押し殺そうとするが、身体は耐えきれず、微かに声が漏れてしまう。
 「前だって・・・同じことをしたときに、言いませんでしたっけ?それなのに・・・何だって守れないんですか、全く・・・」
(うるせえなぁ・・・。そんなこと・・・言われなくたって・・・わかってるんだよ)
心の中で三蔵は毒づく。
 (そもそも・・・何だって・・・こんなこと・・・されなきゃあ・・・・いけねえんだよ・・・俺は・・ガキじゃ・・ねぇ・・・)
お仕置きを堪えつつ、三蔵の心中でブスブスと不満がくすぶり始める。
自分が悪いことはわかっている。
三蔵だって反省していないわけではないのだ。
だからといって、こんなお仕置きをされるなんて、あまりにも恥ずかしいし情けない。
まるで子供扱いされているようで、悔しくてたまらない。
 一方で三蔵の中にある良心が、そういった感情を筋違いのものだと否定する。
三蔵自身、そのことはよくわかっていた。
だが、余計なプライドが邪魔をして立ちはだかり、三蔵の心中で良心とせめぎ合う。
様々な感情が三蔵の中でぶつかり合い、それらが形こそ違え、三蔵自身の心の中にある醜さをこれでもかとあばき立て、突きつけてくる。
全ての感情が自身への怒りや苛立ちを燃え上がらせた。
 「うる・・・うるせえよ・・・・」
怒りを堪えかねた表情で、三蔵はそう呟いた。
(馬鹿野郎!何を言うつもりだ!)
心の中で三蔵は慌てる。
今までの経験で、自分が何をしようとしているのかは嫌というほどわかっていた。
理性が止めようとするが、それよりも先に感情が先走っていた。
 「ゴチャゴチャうるっせえんだよ!!何様のつもりだよ!テメェに指図されるいわれなんかねえんだよ!!」
後ろを振り返り、憎々しげな声で三蔵は思い切り叫んでいた。
(やっちまった・・・・)
三蔵は思わず後悔する。
こんなことを言えば、八戒は間違いなく激怒する。
(どうして謝れねえんだよ!俺の馬鹿!)
自分が悪いことはわかっているくせに、謝れない自分を罵らずにはいられない。
だが、そんなことをしても意味は無い。
 「三蔵・・・本気で言ってるんですか?」
一旦手を止めて八戒は尋ねる。
静かだが、有無を言わせない口調に八戒の怒りを感じずにはいられない。
たとえ謝っても、さらにきついお仕置きをされることは間違いないだろう。
もっとも、謝るつもりなど毛頭ないし、出来ないで墓穴を掘るのは、嫌というほどわかっていた。
 (もう・・・どうにでも・・なりやがれ・・)
半ばヤケクソで三蔵は心の中で呟くと、開き直ったかのように言う。
「ああん?だったらどうする気だよ?」
「いい加減に・・・しなさい!!」
バアッジィィィ~~~~~ンッッッッッ!!!
「ぐぅぅ・・・!!」
八戒の本気の一撃に、三蔵は思わず声を漏らす。
 「よくわかりました・・・。三蔵が全然反省してないのは・・・。だったら・・・この程度では許しません!!」
八戒はそういうと、さらなる勢いで叩き始めた。
 ビッダァァァァ~~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!
「ぐ・・!ぐぅ・・!あぐ・・!あぅ・!あぐぅぅ・・・!!」
今までとは比べ物にならない、嵐のような平手打ちに三蔵の顔は苦痛に歪む。
 「テメェ・・・やめろ・・やめ・・ねぇかぁぁ・・・」
お仕置きされているというのに、三蔵は相変わらずの態度を崩さない。
そんな三蔵を無視して、八戒は黙々とお尻を叩き続けた。


 (やりすぎて・・・しまいましたね・・・)
三蔵の姿を見つめながら、八戒は反省する。
強情な三蔵の態度に腹を据えかね、また三蔵が頑として謝ろうとしなかったため、気を失うまで叩いてしまったのだ。
おかげでお尻は濃厚なワインレッドに染まり、服は汗だくになってしまっている。
 (僕もいけませんね・・。三蔵が強情なのはわかっているんですから・・・)
三蔵の性格は誰よりも飲みこんでいるのだから、それを利用してうまく謝らせる方向に持っていくべきだろうと考える。
そう考えながら、八戒はお尻に冷やしたタオルを載せ、傍らにタバコの箱と灰皿を置くと、静かに部屋を後にした。
 「くぅぅ・・・」
ようやく目を覚ました三蔵が最初に感じたのは、焼けつくようなお尻の痛みだった。
「クソ・・・気絶するまで・・・叩きやがって・・・」
相変わらずの不機嫌そうな表情を浮かべつつ、目の前に灰皿とタバコが用意されていることに気づく。
 「ご機嫌とりの・・つもりかよ・・チッ・・・」
そんなことを呟きつつ、三蔵はタバコを取ると、一本吸い始める。
(馬鹿だぜ・・・。サルみてぇに・・・謝りゃあ・・いいのによ・・・)
自身の振舞いを振り返ると、三蔵はそう思わずにはいられない。
自分が悪いことは、自身が一番よくわかっているのだから。
同時に、素直に謝るどころか暴言を吐き、その結果気絶するまで叩く羽目に追い込んだことに、微かに罪悪感が沸いてくる。
 だが、そんな感情を抱いたことに、またプライドが疼いてきた。
同時に悔しさや屈辱感も沸き上がって来る。
八戒にすまないという気持ちと、こんな目に遭わされたという不満や屈辱感がない交ぜとなり、再び三蔵の心中をかき乱す。
「ああクソッ!何なんだよっっ!!」
そう叫ぶと、三蔵は灰皿に思い切りタバコを押し付けて消す。
そして全てを取り払おうとするかのように、そのまま不貞寝した。


 ―完―

悟空の涙(最遊記より:八/三)



(最遊記を題材にした二次創作ものです。原作とイメージが異なっている可能性があります。許容出来る方のみご覧下さい)


 「・・・・・・」
むっつりと不機嫌な表情で、三蔵は黙り込んでいた。
(うっわ・・・すっげぇ機嫌悪ぃ・・・・)
恐る恐る三蔵の表情を見やると、悟空は心の中でそう呟く。
いつも不機嫌そうな三蔵だが、ここ数日は特にだった。
 (何とか・・・・なんねえかなぁ・・・)
悟空はチラリと窓の方を見やる。
窓の外はぐずついた天気だった。
ここ数日、天気が悪くて出立には向かないので、宿屋に連泊しているのだ。
それだけでも、三蔵にとっては不機嫌になるのだが、この宿屋があるのは小さな村で、しかも街道などからは外れたところにある。
そのせいか、酒やタバコなどがあまりない。
大きな町なら酒場にでも繰り出せば済むのだが、田舎の村ではそうはいかない。
おかげで酒やタバコにもありつけず、それが不機嫌を増していた。
 「すみません、今戻りました」
八戒が買い物袋を抱えながら、部屋に入って来た。
出立に備えて必要なものを買いだして来たのである。
 「おぃ、必要なモンは全部買って来たのか?」
「ええ。ちゃんとチェックもしてありますから」
「ふん・・・。なら明日にはオサラバ出来るか・・・・」
ムッツリと不機嫌そうな、だがどこかホッとした様子で三蔵はそう呟く。
これ以上ここに足止めされてはイライラやストレスで爆発してしまいそうだったからだ。
 「それなんですけど・・・・。三蔵、もう一泊だけしませんか?」
「あん?」
八戒の言葉に、三蔵はさらに不機嫌な表情で振り向く。
「どういうつもりだ?」
出立できない、酒やタバコで憂さを晴らすこともできない。
そんな一行にとっては拷問のような状況にこれ以上いたくない。
そういう気持ちが、露骨に表情に表れていた。
 「どうも嵐になりそうな気配なんですよ。ですから一日、余裕を見てもう一泊しませんか?」
「冗談じゃねえ。こんなところでもう一泊しろってか?」
嫌でたまらないという気持ちをあらわにしながら、三蔵はそう言う。
「そう言ってもさぁ、この前嵐に遭ってえらい大変だったじゃんかよ。八戒の言う通りにした方がよくね?」
以前、嵐のせいで大変だったことを思い出し、悟空はそう言う。
 「うるせえな・・・。サル、テメェは黙ってろ」
三蔵は不機嫌な声でそう言う。
「三蔵、むげにそう言うものじゃありませんよ」
思わず八戒がたしなめると、今度は三蔵は八戒を睨みつける。
「うっせえな。てめぇには関係ねえだろ。黙ってろ」
「三蔵、そんな言い方ねえじゃんかよ!八戒にだって関係あるんだからよ!」
「あん?何で関係あるんだよ?」
不機嫌極まりない表情になると、三蔵はそう言いやる。
 「何でって・・・仲間だからじゃんかよ!!」
「はん・・・。ざけんな・・。反吐が出る・・・」
三蔵の言葉に悟空は一瞬、耳を疑う。
 「今・・・何て・・・言ったんだよ?」
「あん?反吐が出るって言ったんだよ。聞こえなかったのか?」
「何で・・・何で・・・そんなこと・・言うんだよ・・・。俺達・・仲間だろ?」
「はん?そんな風に思ったこたぁねえよ。だいたい一緒に旅をしてくれと頼んだ覚えはねえ」
「三蔵、もう少し言い方ってものを考えて下さい!」
どうやら成り行きがまずい方向へ行きそうだと見るや、八戒はそうさせじと口を挟む。
「るせえ!好きでお前ら妖怪と旅してるわけじゃねえ!!」
三蔵のこの言葉に、悟空も八戒も石化したように止まってしまい、黙ってしまう。
 しばらくの間、重苦しい沈黙があたりを支配する。
「さ・・・・三蔵の馬鹿野郎っっ!!!」
突然、そう叫ぶや、悟空は目尻に涙を浮かべ、部屋を飛び出してしまった。
「三蔵っ!何てことしたんですか!」
八戒は三蔵に詰め寄ってそう言う。
「あん?俺は本音を言っただけだぜ?」
三蔵は悪びれもせずにそう言いやる。
「何が本音ですか!あなた、自分がしたことがどれほどひどいことか、わかってるんですか!!」
八戒は冷静に言おうとしつつも、だが怒りを堪えかねながら言う。
 「ふん・・。あれくらいで凹むようなタマじゃねえだろ」
「いい加減にしなさい!!」
さすがに怒った八戒は三蔵に思い切りビンタを食らわせた。
 「テメェ、何しやがる!!」
いきなりビンタをされ、三蔵は思わず睨みつける。
「『何しやがる』じゃないでしょう。三蔵、悟空に謝って下さい」
「あん?何でそんな真似しなきゃあならねえんだよ」
三蔵は八戒の言葉に不満極まりない声で答える。
 「本気でそんなこと言ってるんですか?」
「だったら何だってんだ?」
三蔵は挑発するような口ぶりで問い返す。
「そうですか・・・。よく・・・わかりました・・・。三蔵が全然・・・反省していないのは・・・・・」
八戒はそう呟くと、ジッと三蔵の方を見つめる。
「だったら・・・実力行使も・・・やむを得ませんね・・・」
そう言うや、八戒は三蔵の手首を掴んで引っ立てる。
 「おいっ!何しやがる!」
三蔵は思わず抗議するが、八戒はそれを無視して、部屋の片隅の机に向けて、乱暴に三蔵を突き飛ばすように放った。
「テメェッ!何すんだあっ!!」
三蔵は振りかえって噛みつかんばかりに言う。
「三蔵・・机に手をついてお尻をこっちに向けなさい」
「あん?何でそんなことしなきゃならねえんだよ」
三蔵は不満極まりないという表情で言う。
 「おや?嫌だというんですか?」
「たりめえだろ!そんな真似出来るかあっ!!」
元々他人の言うことを素直に聞くような三蔵では無いし、今までの経験から八戒が何をしようとしているのかも察している。
だからますます言うことを聞かなかった。
 (まぁ素直に言うこと聞くような人じゃないですからねぇ・・・・)
八戒はどうしようかと考えを巡らせる。
そのとき、ある考えが浮かんだ。
(これなら・・・)
八戒はそう考えると、小馬鹿にしたような笑みを浮かべてみせた。
 「おぃ、何だそのツラは?」
三蔵は八戒の表情に何かを感じたのか、不機嫌な表情を浮かべる。
「別に何でもありませんよ。三蔵、怖いなら素直にそう言えばいいじゃないですか?」
「何?んなワケねえだろうが!」
「隠さなくたっていいんですよ。でも、意外でしたねぇ。三蔵がお仕置きが怖いだなんてねぇ」
(ち・・・・畜生ぉぉ・・・!!)
三蔵は悔しさに身を震わせる。
お仕置きを怖がっているなどと思われているのだ。
あまりにも情けなくて、悔しくてたまらない。
 「馬鹿なこと言うんじゃねえ!テメェにケツ叩かれるのなんざ、怖くも何ともねえよ!」
悔しさに思わず三蔵は言い返す。
「だったらそれを証明してもらいましょうかねぇ?」
「ぐ・・・!!や、やりゃあいいんだろうが!!」
三蔵は怒りの声を上げそうになるが、それを堪えると、言われた通り、机に手をついた体勢でお尻を突き出す。
 「こ・・・これで・・・文句はねえだろ!!」
悔しさと恥ずかしさに身体を震わせつつ、三蔵は怒鳴るように言う。
(ようやく・・・言う通りにしてくれましたね・・・)
八戒は心の中でホッとする。
同時に三蔵の傍へ寄ると、片手で身体を抱えるようにし、法衣を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
 「三蔵・・・。行きますよ。覚悟はいいですね?」
「ふん・・・。もったいつけねえで、やるんならやりゃあいいだろうが」
憎々しげな表情で睨みつけながら、三蔵はそう言いやる。
それを見ると、八戒はおもむろに空いている方の手を振り上げた。


 ビッダァァァァ~~~~~~ンッッッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~!!!!
 「ぐ・・・!!」
最初から容赦の無い平手打ちが豪雨のようにお尻に襲いかかる。
思わず声を漏らしそうになるが、必死になって三蔵は声を呑みこむ。
 バアッジィィ~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!!!!
手形が幾重にも重なり合い、あっという間に三蔵のお尻を染め上げてゆく。
 「全く・・・あなたって・・・人は・・・・」
呆れたような口調で八戒は三蔵のお尻に平手を叩きつける。
バッジィィ~~~ンッッッ!!!
ビダァンバァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッ!!!
三蔵は口を一文字に引き結び、声を漏らすまいと必死になる。
 (クソ・・・・クソクソクソクソクソクソクソクソクソ!!!!!)
お仕置きに耐えながら、三蔵は心の中で罵り声を上げる。
(何だって・・・あんな真似しちまったんだよ!?)
自身の行為を振り返るや、そう思わずにはいられない。
自分が本当にひどいことを言ってしまったことは、三蔵とてわかっていた。
八戒が怒るのも無理は無いし、言っていることも正しい。
だからこそ、挑発に載せられた形とはいえ、机に手をついてお尻を出したのだ。
とはいえ、神妙に反省出来る三蔵では無い。
自らの非は認めつつも、お仕置きの屈辱に身を震わせずにはいられなかった。
 バアッジィィィ~~~~ンッッッッ!!!
バァジィンバァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!!
「本当に・・・何を考えてるんですか!あんな・・・ひどいことを言って!」
八戒はお説教しながら、容赦なく平手を三蔵のお尻に降らせてゆく。
あっという間にお尻は全体が赤く染め上がり、また濃さが増してゆく。
 「・・ぅ・・・く・・・ぅく・・・ぁ・・・・」
叩かれているうちに、だんだんと三蔵の口から微かに苦痛の声が漏れ始める。
「どれだけ・・・悟空が・・・傷ついたか・・・。悲しい思いを・・したか・・・わかっているんですか!」
(んなこたぁ・・・言われねえでもわかってんだよ!!一々言うんじゃねえ!!)
叩かれながらも、三蔵は心の中で毒づく。
自分だって悪いことをしたのはわかっている。
そうでなければ、こんな屈辱的な行為など受けているはずがない。
しかし、一々自分の仕出かしたことを口に出して責められるのは、プライドを逆なでされる。
自分勝手なことを言っているのはわかっていた。
だが、それでも反発を覚えずにはいられなかった。
 「だったら・・・何だってんだよ・・・」
三蔵は振り返ると、憎々しげに睨みつけながら言う。
「テメェは一々うるせえんだよ!たかがあの程度でグダグダ言いやがって!だからサルがつけあがるんだよ!あんまりサルを甘やかすんじゃねえ!テメェは親馬鹿のイチャモン屋かよ!!」
八戒の言葉に疾しさや罪悪感を刺激され、それがプライドを逆なでして反抗してしまう。
言うなり三蔵は思わず後悔するが、こうせずにはいられなかった。
 「三蔵・・・・。本気でそんなこと・・・言ってるんですか?」
八戒は今までより険しい表情で問いかける。
(クソッ!こうなりゃヤケだ!!)
こんなことを言ってしまった以上、例え素直に謝っても許してくれる八戒ではない。
いや、三蔵にしてみれば謝ることすら、そのプライドが許さなかった。
だから、半ばヤケクソで三蔵は開き直った。
 「あん?だったらどうだってんだよ?何だったらもう一回言ってやろうか?どうやら耳が聞こえてねえみたいだからなぁ?」
ご丁寧に嘲笑までつけて三蔵は言い放つ。
「いい加減にしなさい!!」
ビッダァァァ~~~~~ンッッッッッッ!!!!!
「ぐっっ・・・・!!!」
今までよりもずっと強烈な一撃がお尻に叩きつけられ、さすがに三蔵も苦痛に表情を歪める。
同時に、手をついて身体を支えるのが辛くなったのか、そのまま机の上に上半身をうつ伏せに倒れ込んでしまった。
 「悟空に・・・ひどいことを言った挙句に・・・反省も・・しないで・・・自分勝手なことばかり・・・・。絶対に・・・絶対に・・・許しません・・・・」
八戒はそういうと、バッグを取ってくる。
(何・・する気だ・・・?)
苦しげな息を吐きつつ、三蔵は八戒の様子を伺う。
バッグを開けたかと思うと、八戒は中からパドルを取り出した。
(マジかよ・・・・・)
三蔵は一瞬恐怖を感じる。
今までの経験から、パドルでのお仕置きがどれだけ辛いものかは嫌というほどわかっていた。
 「おや?怖いんですか?」
そんな三蔵の心理を見透かしたかのように八戒は問いかける。
「ん、んなワケねえだろ!そんな板っきれ怖くも何ともねえぜ!!」
自分の馬鹿さを罵りたくなりつつ、三蔵はそう叫ばずにはいられなかった。
 「そうですよねぇ。我慢強い三蔵ならパドルで幾らぶたれたって平気ですよねぇ」
目が笑っていない笑みをうかべつつ、八戒は三蔵を巧みに追い詰める。
「んなモン、蚊が刺したみてぇだぜ!!甘く見るんじゃねえ!!」
(だから何だってそんなこと言うんだよ!!畜生っ!!)
思う通りの言葉が言えない自身の口を呪いたくなりながら、三蔵はそう叫ぶ。
 「なら安心しました。それなら・・・うんときつくお仕置きしてあげますよ。これでね」
「ふん・・・。やりたきゃ勝手にしやがれ!!」
(俺の・・・馬鹿野郎・・・)
自分で自分の愚かさに呆れて頭を抱えたくなりながら、三蔵は自身に引導を渡す言葉を口にしてしまう。
八戒は机にうつ伏せになっている三蔵を片手で押さえると、ゆっくりとパドルを振り上げた。
 ビッダァァァァァ~~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!
「!!!!!!!!!!!」
パドルの凄まじい乱打に、三蔵は声にならない叫びを上げる。
(クソッ!無理だろ!耐えられるかってんだよ!!)
心の中で三蔵はそう叫ぶ。
だが、今さら泣きごとなど言えなかった。
(畜生・・・!!俺の・・・馬鹿!!)
自身の愚かさを罵りつつ、三蔵は必死になってパドルのお仕置きを耐えていた。


 (どうしたかなぁ・・・?)
部屋を飛び出した悟空は、恐る恐る部屋へ戻って来ていた。
(喧嘩・・・してねぇかなぁ?それより・・・お仕置き・・されてるんじゃ・・・?)
あんなにひどいことを言われたにも関わらず、悟空は三蔵が心配でたまらなかった。
今までの経験から、ああいう状況になると、八戒が三蔵にきついお仕置きをするのを知っているからだ。
普段自分がよく三蔵にお仕置きをされているから、お仕置きの怖さや辛さは誰よりも知っている。
だから、心配せずにはいられなかった。
どんなにひどいことを言われても、悟空にとって三蔵は大切な仲間だから。
 ドアの前までやってくると、悟空は恐る恐る耳をつける。
すると、想像した通りに激しい打撃音が聞こえて来た。
(やっぱり・・・・・)
予想が見事に当たったことに、悟空は緊迫した表情になる。
(俺が・・・泣いたから・・・。三蔵・・ケツ・・・叩かれてんだ・・・)
泣いて出て行ってしまったのは無理も無いことだったが、それでも自分のせいで三蔵がひどい目に遭っている。
そう思うと悟空は居てもたってもいられなかった。
本能的に部屋に飛び込んでいた。
 「もう勘弁してやってくれよ!八戒っ!!」
部屋に飛び込むや、悟空は叫ぶように頼み込んだ。
「悟空・・・」
八戒は悟空の姿を認めるや、パドルを振り下ろす手を一旦止める。
 「これ以上叩いたら三蔵壊れちまうよ!も、もういいからさぁ!だから許してやってくれよ!!」
「テメェの・・せいだろ・・。どの面下げ・・・ぐぅぅ・・・」
性懲りもなく悟空に憎まれ口を叩こうとした三蔵に八戒は容赦ないパドル打ちを叩きつける。
「まだ・・・そんなこと・・言いますか・・・」
八戒はそう言うと、再びパドルを振り上げようとする。
「待てって!待てってば!八戒っ!どうしてもってんなら俺が代わりに受けるからっ!!」
「悟空・・・・」
必死になる悟空にさすがに八戒も手が止まる。
 (どうしましょうかねぇ・・・・・)
八戒は三蔵と悟空を交互に見やりながら考えを巡らせる。
このまま叩き続けても三蔵のことだ、素直には反省すまい。
となると、気絶するまで叩くことになってしまう。
それでは意味は無い。
 (仕方ありませんね・・・)
八戒は腹をくくると、悟空に向かって怖い顔をつくってみせる。
「悟空・・・その言葉・・・本気ですか?」
「う・・うん・・・・」
「うんと・・・厳しいですよ?幾ら泣いても後悔しても、遅いんですよ?」
「わ・・わかってる・・でも・・・三蔵・・許して・・もらえんなら・・・幾らでも・・こ・・怖え・・けど・・・」
悟空は恐怖に身を震わせつつ、そう答える。
「な・・何・・勝手に・・話・・・進めて・・やがる・・・。テメェも・・・余計なことすん・・じゃ・・ねぇ・・・・」
三蔵は悟空にそう言う。
「わかりました。そこまで言うのなら。悟空、壁に手をついてお尻を出しなさい」
「あ・・う、うん・・・」
悟空は言われたとおりに壁に手をつくと、お尻を突き出す。
八戒はそれを見ると、悟空のズボンを降ろしてお尻をあらわにし、空いている方の手で身体を抱えた。
 「三蔵、よく見て、反省して下さいね」
こちらの様子を伺っている三蔵にそういうと、八戒はパドルを振り上げた。
 バアッジィィィ~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~ッッッッッ!!!!
「ぎゃああああんっっ!!いってぇぇぇ~~~~!!!!!」
容赦ないパドル打ちの嵐に悟空は最初から泣き叫ぶ。
「ひぃぃんっ!痛えっ!痛えよおっ!!八戒ぃぃぃ!!」
「代わりに受けると言ったのは悟空でしょう?警告したはずですよ?」
八戒はそういうとバシバシと容赦なく悟空のお尻を叩く。
 「うわあああんっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!ごめんなさい~~~!!」
「悟空・・・謝るのは構いませんけど、三蔵が反省しなきゃ意味ないですからね」
三蔵にお仕置きをされているときの癖で必死に謝る悟空に苦笑を浮かべそうになりつつも、八戒は三蔵にも言い聞かせるような口調で言う。
 (クソ・・・クソ!クソクソクソッ!!)
三蔵は自身に苛立ちを感じずにはいられなかった。
自分にひどいことを言われたにも関わらず、悟空は恨むどころか、お仕置きをされている自分を庇って身代わりになっている。
自身のちっぽけなプライドのために、悟空がひどい目に遭っている。
そうさせた自分に苛立ちや怒りを覚えずにはいられなかった。
 「やめろ・・・やめろ・・・・」
苦しげな息を吐きつつ、三蔵はそう言う。
「やめろっつってんだ!もういい!!」
怒鳴るように言う三蔵に、八戒は手を止めた。
 お尻の痛みに顔を顰めながらも立ち上がると、三蔵は二人の傍へゆく。
「この馬鹿っ!何余計なことしてんだっ!!」
二人のところへやって来るなり、三蔵は悟空にそう怒鳴る。
「ひぃん・・・だってぇ・・・・」
「三蔵、そんな言い方・・・」
「ったく・・・・いつまでもメソメソしやがって・・・」
そういうと、三蔵は悟空を引っ張ってベッドまで戻ってきたかと思うと、ベッドの縁に腰を降ろして悟空を抱っこする。
 「え・・?三蔵・・・?」
「今日だけはこうしてやる。明日からは甘ったれんじゃねえぞ」
仏頂面でそういうと、三蔵はより強く抱きしめる。
悟空はようやくホッとした表情を浮かべると、安心したのか、そのまま寝入ってしまった。
 「ったく・・・。世話のかかるサルだな・・・・」
「そんなこと言って満更でもないんじゃないですか?」
「ああん?テメエの目は節穴か?」
「相変わらず素直じゃないんですから。まぁそこが三蔵らしいんですけどね」
「妙なこと言うんじゃねえ!」
「わかってますよ。ああ、そうだ。薬とか取って来ますね」
そういうと、八戒は部屋を後にした。


 ―完―

theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

やり過ぎの代償(最遊記より:八/三&空)



(最遊記を題材にした二次創作です。キャラのイメージが原作と異なっている可能性があります。その点をご了承の上でお読み下さい)


 ビッダァァ~~~ンッッ!!
バアンッ!バンバンッ!バッチィンッ!バンバンバンッ!ビッダァンッ!
「ひいいんっ!ごめんってばーっ!サンゾーッ!!」
泣き叫びながら悟空は必死に謝る。
膝の上に載せられた悟空のお尻は既に大きく腫れ上がった上に赤く染め上がっていた。
 「ごめんじゃねえだろ!テメエはニワトリか!?これで何度目だと思ってんだっ!!」
ビッダァァァ~~~~ンッッッッ!!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!
三蔵は本気で怒りながら悟空のお尻に容赦の無い平手打ちを降らせる。
「だ・・だって・・・うまそうだったから・・・つぃ・・ひっぎゃああんっ!!」
思わず弁解すると、また容赦の無い平手打ちを叩きつけられ、悟空は背をのけ反らせる。
「だからってまた宿屋のメシ全部食うんじゃねえよ!しかも・・・野宿用の保存食まで食っちまいやがって!何考えてんだテメェはあああ!!!」
またかと呆れてしまうことに、悟空はまた宿屋の夕食を全部盗み食いしてしまったのである。
さらに、どうもそれでも満足できなかったらしく、八戒が買い出しで用意した野宿用の保存食や携帯食料まで、これまた綺麗に全部平らげてしまったのだ。
おかげでまたもや宿屋に平謝りに謝らなければならなくなり、しかも二度手間でまた野宿用の保存食を買いに行かなければならなくなった。
懲りずに同じことを、しかも今度は新しいことまでやらかした悟空に三蔵が怒っていないはずはなく、こうしてまたもやお尻で食い意地のツケを払わされているのだった。
 「ごめんってば~~~~っっっ!!二度としねえよーーーーっっっ!!!」
悟空は必死に謝る。
「馬鹿野郎!今まで何度もそう言ってるだろうが!」
「今度こそ本当にしねえからーーーーー!!!!」
「信用できるかっ!!」
ビッダァァァ~~~~ンッッッ!!!
「ぎゃっあああ~~~~んっっっ!!!!」
三蔵にさらに強烈な平手打ちを叩きつけられ、悟空は悲鳴を上げる。
 「テメェ・・・・今日という今日は・・・・この程度じゃ勘弁しねえからな・・」
そう呟いたかと思うと、突然三蔵は悟空を肩に担ぎあげた。
「さ、三蔵っ!どこ行くんだよ!?」
突然三蔵が自分を抱え上げたまま部屋を出て行くことに気づくや、悟空は慌てて尋ねる。
三蔵は答えずにやがて一階の方へ降りていったかと思うと、さらに外へ出て行った。
 (な・・何する気だよ・・・・?)
外の通りに出て来たことに悟空は嫌な予感を覚える。
三蔵は悟空を担ぎあげたまま、あたりを見回すと、ちょうどベンチが設置されているのを見つける。
ベンチを見つけるや、それに腰を降ろして悟空を膝に載せた。
 「三蔵っ!待ってくれよっ!こんなところで叩くのかよ!?」
慌てて悟空は叫ぶように尋ねる。
こんなところで叩かれたら、大勢の通行人にお尻をぶたれている姿を見られてしまう。
「だったら何だってんだ?」
「や、やめてくれよ~~!!本当に悪かったからっ!!叩くんならせめて部屋の中にしてくれよ~~!!」
悟空は必死になって懇願する。
幾ら自分が悪いとわかっていても、さらしものにされて叩かれるのはあまりにも辛い。
 「あん?甘えたこと言ってんじゃねえよ。食い意地丸出しで何度も同じことやらかすテメェが悪いんだろうが。今日は徹底的に躾けてやる」
「ひ・・ひぃん・・」
今までとは比べ物にならない容赦の無い三蔵の姿に悟空は涙を浮かべる。
ビッダァァァ~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~ッッ!!!
「ぎゃあああああ!!!ごめんってば~~~!!!!」
大勢の通行人が行きかうのを尻目に、再びお仕置きが始まる。
時々通行人が何だという表情で足を止め、二人を見やるが、それには構わず、三蔵は悟空のお尻を叩いていた。


 (遅くなっちゃいましたね・・・・)
買い物袋を抱えて八戒は宿屋への帰り道を急いでいた。
(悟空にも困りましたねぇ。お尻を叩かれるのはわかってるでしょうに)
またも懲りずに同じことをした悟空に八戒は苦笑する。
(きっと今頃お仕置きされて泣いてるでしょうね。もう少し三蔵が素直だったらよかったんですけど・・・)
歩きながら八戒は悟空のことが心配になる。
三蔵は非常にひねくれた部分があるから、例え心配していても素直に泣いている悟空を慰めたり出来る人間では無い。
だから八戒が帰るまで、悟空は一人ぼっちで泣いていることだろう。
出来るだけ早く帰って悟空を慰めたい。
そう思いながら八戒が宿屋にたどり着いたときだった。
 (あれ?何ですかね?一体?)
宿屋の前に何故か人だかりが出来ていることに、八戒は怪訝な表情を浮かべる。
「サンゾーッ!サンゾーッ!俺が悪かったからーっ!もう許してくれよーっ!!」
不意に人だかりの向こうから悟空の声が聞こえて来た。
それを聞くなり、慌てて八戒は人だかりをかきわけて進んでゆく。
 「!!!???」
最前列に出るや、八戒は我が目を疑う。
目の前にいるのは悟空。
悟空は宿屋の入り口の前に後ろ向きで、真っ赤に腫れ上がったお尻を出したまま立っていた。
 「悟空!?一体どうしたんですか!?」
慌てて八戒は駆け寄る。
「ひ・・ひぃん・・。は・・八戒ぃぃ・・・」
悟空は八戒の姿を見ると、涙を浮かべ、お尻を出したまま抱きついた。
 「どうしたんです?何でお尻出して立ってるんです?」
「ひぃん・・さ・・・三蔵がぁぁ・・・・」
「三蔵?まさか三蔵がやらせたんですか!?」
「ひぃん・・。何度も同じこと・・やってっから・・・ちょっとや・・そっとじゃ・・わかんねえだろって・・・。だから・・そ・・外で・・ケツ叩いて・・・。そ・・そんあと。ひぃん・・。三蔵が・・いいって・・いうまで・・。ケツ出して・・外で・・立ってろってぇぇ・・・ひぃぃん・・・・」
八戒は愕然とする。
今回の件で三蔵がかなり怒っているであろうことは想像できた。
何度叱っても同じことをやらかしているのだから、いつもよりお仕置きが厳しくなるのは当然だろうし、それ自体は仕方ないとは八戒も思う。
自分だって今回はいつもより厳しくお仕置きするだろうと思っているからだ。
とはいえ、外で叩いた上に、お尻を出したまま立たせるなど、それはやり過ぎだ。
確かに精神的に子供っぽいところはあるだろうが、悟空だって年頃の男の子。
さらしものにされるなど、どんなに痛い道具よりも辛かったに違いない。
ボロボロ大粒の涙を零し、震えている姿に八戒は胸が痛むどころではなかった。
 「悟空、もう大丈夫ですからね。さぁ、お尻をしまって。僕の部屋に行きましょう」
「ひぃん・・。でも・・・」
「大丈夫ですよ。僕からうまく三蔵に言っておきますから。悟空は何も心配しないでいいですからね」
八戒はそういうとズボンを履かせてやり、悟空を抱きあげて宿屋へ入っていった。


 (八戒が入れてやったか・・・・)
窓から様子を見ていた三蔵は、八戒が悟空を中へ入れるのを見届けると、心の中で安堵する。
(クソ・・!俺としたことが・・・)
三蔵は自分自身に対して苛立ちが募って来る。
確かに何度も怒られても同じことを仕出かす悟空も悪いかもしれない。
だが、三蔵の方もあまりにも感情的になり過ぎた。
そのあまり、外に出て大勢の人間が見ている前で叩いた挙句に、一人で立たせてさらしものにまでしてしまった。
 幾ら精神的に子供っぽくても、悟空だって年頃の男の子。
こんなことをされたらプライドも何もかも木端微塵、それどころか一生トラウマになってしまうかもしれない。
 (何で・・こんなこと・・・しちまったんだよ・・・)
ムクムクと罪悪感が沸いていて三蔵を責め立てる。
悟空の辛さや恥ずかしさ、悲しさを想像せずにはいられない。
それなのに怒りに任せてひどいことをしてしまった。
悟空に恨まれたとしても文句が言えることではない。
 (クソ・・・どうすりゃあ・・・いいんだ・・・・)
三蔵は頭を抱えたくなる。
今すぐにでも悟空のところに行ってやりたい。
抱きしめてやれるものならそうしてやりたい。
だが、そんなことはとても恥ずかしくて出来なかった。
何よりも、自分があんなにひどいことをしておきながら、どの面下げて悟空にそんなことをしてやれるだろうか。
無用な意地・プライドだとわかっていても、素直に悟空を慰めてやれないことに対する苛立ち、取り返しがつかないほどひどいことをしてしまったことへの罪悪感、それらが三蔵をこれでもかと責め立てる。
 「クソ・・!!」
苛立ちが募ってたまらず、思わずタバコに火をつけようとしたそのときだった。
 突然、ドアが開いたかと思うと八戒が入って来た。
(来やがったか・・・・)
八戒が外で泣いている悟空と会ったときに予想は出来ていたが、それでも実際に八戒の姿を見ると、つい身構えてしまう。
 「三蔵・・・。あなた・・何てことしたんですか・・・・」
静かな、だが怒りを抑えかねた声で八戒は話しかける。
「あん?何のことだ?」
三蔵は平静を装って問いかける。
「悟空のことですよ・・・。何を考えてるんです・・。あんなに・・ひどいこと・・・」
「あん?あれくらいどうってことねえだろ?バカザルだからな」
(クソ!何でこんなこと言うんだよ!!)
心とは裏腹の発言をしてしまう自身を三蔵は罵りたくなる。
 「本気で言ってるんですか?悟空があんな目に合わされて、どれだけ辛い思いしたと思ってるんです?」
「グダグダ抜かすんじゃねえよ。躾だ、躾」
(だからどうしてこんなこと言うんだよ!!)
自分の過ちを認めるどころか、墓穴を掘るような発言に三蔵は苛立ってしまいそうになる。
 「いい加減にしなさい!!お仕置きされた子の気持ちをあんなにも踏みにじって満足ですか!?」
自分の過ちを認めようとしない三蔵に八戒も怒りを爆発させる。
「ああ!?だったら何だってんだ!?テメェの面なんぞ見たくもねえよ!とっとと出てきな!!」
これ以上話したくなくて、三蔵はそう言いやる。
「わかりました・・・・。全然反省してないっていうのは・・・。だったら・・僕も容赦しませんよ!!」
そう叫んだかと思うや、八戒は三蔵の手を掴む。
 「テメェ!何しやがる!!」
三蔵は抵抗しようとするが、八戒に無理やり立たされたかと思うと、ベッドに思い切り突き飛ばされてしまう。
ベッドに三蔵を突き飛ばすや、八戒はすかさず部屋に備え付けのタオルで後ろ手に拘束する。
さらに枕や布団をお腹の下に入れると、ベッドの上でお尻を突き上げる体勢を取らせ、いつものように三蔵のお尻をむき出しにした。
 「テメェ・・・」
三蔵は振り向いて八戒を睨みつける。
「そんな顔して脅しても無駄ですよ。今日は本当に怒ってるんですからね」
八戒はそういうと、部屋に備え付けのヘアブラシを手にする。
三蔵の傍らに立ったかと思うと、ゆっくりとブラシを握った右手を振り上げた。


 ビッダァァ~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~ッッッッッ!!!
「ぐ・・!!ぐぐぐぅぅ!!!!」
最初からブラシで豪雨のような打撃がお尻に降り注ぐ。
さすがに三蔵もこらえられるわけもなく、苦痛に表情を歪める。
 「テ・・・テメェ・・・殺す・・気・・か・・・・」
三蔵は八戒を睨みつけながら言う。
「何を言ってるんですか。こんなのあなたが悟空にしたことに比べれば大したことじゃないでしょう?」
冷ややかな口調で言うと、再び八戒はお仕置きを始める。
 ビッダァァ~~~ンッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~ッッッッッ!!!!!
「ぐ・・!!ぐぬ・・!ぐぅく・・ぐっく・・」
三蔵は歯を食いしばり、必死に声を押し殺そうとする。
 「本当に・・・何てことしたんですか・・・あなたって人は・・・」
ヘアブラシをお尻に叩きつけながら、八戒はお説教を始める。
ビッダァァ~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!
「ぐ・・!ぐふ・・!ぐぬ・・!ぐっくぅ・・!」
三蔵は堪えようとするも、耐えきれるものではなく、顔にはジットリと脂汗が浮かび上がり、苦悶の表情を浮かべている。
 「外でお尻叩いた上にお尻出したまま立たせるだなんて!やり過ぎだとは思わなかったんですか!?」
既に真っ赤に染まっているお尻にさらにブラシを叩きつけつつ、八戒はそう問い詰める。
「う・・うるせえよ・・。俺の・・やることに・・文句があるってんのか?」
(クソ!どうしてこうなるんだよ!?)
強気な態度で八戒を睨みつけつつ、心の中で自身に悪態をつく。
自分が悪いことは誰よりもよくわかっている。
それなのに、それを認められない。
どうして悟空のように素直に謝れないのか。
自分に苛立ってしまい、八つ当たりなのを承知で八戒に怒りを向けてしまう。
 「まだそんなことを言うんですか!!どれだけ悟空が傷ついたと思ってるんです!お仕置きされた子の気持ちも考えなさい!!」
バッジィィィ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッッ!!!!
「ぐ・・!!ぐぐぅ・・・!!」
三蔵は苦痛に顔を歪めるが、それでもなおも八戒を睨みつける。
そんな三蔵に、八戒も容赦無くブラシを振り下ろし続けた。


 「うう・・・あれ・・?」
ベッドの上にうつ伏せになったまま、悟空は目を覚ます。
「あれ・・?八戒・・どこ行ったんだ?」
八戒の姿が無いことに悟空は訝しげな表情を浮かべると、恐る恐るお尻を触ってみる。
赤みが残っているお尻は触れると痛みが走るが、歩けそうだと判断すると、ズボンをはいて部屋を後にした。
 三蔵達の部屋の前までやって来ると、悟空は立ち止り、恐る恐るドアを見つめる。
まだ三蔵には許してもらっていないのに、入ってしまった。
八戒が何とかすると言っていたものの、大人しく説得されるような三蔵では無いのは悟空も知っている。
(喧嘩になってたら・・・どうしよう・・・)
そう思うと、入る度胸が無い。
でも、勇気を出して悟空はドアに耳をつける。
すると、何やらバシバシと激しく叩くような音が聞こえて来た。
(な、何だよ!?)
悟空はハッとするや、本能的に飛び込んでいた。
 部屋に飛び込んだ悟空の前に現れたのは、ベッドの上で拘束されてお尻をむき出しにしている三蔵と、ブラシを持って怖い顔をしている八戒の姿。
三蔵のお尻は悟空よりもずっと赤くなっていた。
 「な、何してんだよ!?二人とも?」
思わず悟空は声をあげてしまう。
「ああ、目が覚めたんですか?ちょっと待ってて下さいね。まだ三蔵のお仕置き中ですから」
「お、お仕置き?な、何でだよ?」
「テメェの・・せいだろうが・・・・」
怪訝な表情を浮かべている悟空に、三蔵が睨みつけながら言う。
 「外でテメェのケツ引っぱたいのが気にいらねえんだとよ。おかげでこっちまでケツ叩かれてんだ・・ぐうっ!!」
悟空に恨みごとを言う三蔵に思わず八戒が思い切り叩く。
「筋違いの恨みごとはやめなさい!それより・・・悟空にちゃんと謝って下さい!」
「ああん?ふざけんなあっ!何で俺がサルなんかに頭下げなきゃあなんねえんだ!!」
「三蔵っ!とっとと八戒に謝れよ!このままじゃあお尻壊れちゃうって!!」
自分よりもずっと腫れ上がってしまっている三蔵のお尻を見るや、悟空は思わず言う。
 「ふざけんなぁ・・!そんな真似・・出来るかっつってんだろうが・・」
「意地なんか張ってる場合じゃねえよ!!」
「うるせえっ!テメエが原因のくせに偉そうに言うんじゃねえ!!」
「人のせいにするんじゃありません!!」
八戒が三蔵の態度に怒ってさらに叩きだす。
見ていられなくなったのか、悟空は思わず八戒の腕にしがみついた。
 「何するんですか!」
「八戒!もうやめてくれよ!このままじゃあ本当に三蔵のお尻壊れるって!!」
「三蔵みたいなわからず屋にはいい薬ですよ。今日は僕も本気で怒ってますからね。まだまだ許す気なんかありませんよ!」
(や・・やべえ・・。八戒まで頭に血が上ってる・・・)
本気で怒っている八戒の姿に悟空は焦りに焦る。
このままだと本気で三蔵を壊してしまいかねない。
何とか二人を取り持たなくてはいけない。
必死に悟空は考えた。
 「だ、だったら俺が代わりになるから!!」
「な、何言ってるんですか!?」
悟空の発言に八戒は驚く。
「サル!余計なことするんじゃねえ!!」
三蔵も思わず口を挟む。
三蔵とて自分が悪いのは百も承知だ。
悪態こそついていても、八戒がお仕置きするのはわかる。
だからこそ、悟空を身代わりになど出来るわけも無い。
 「このままじゃあまた気絶するまで叩いちまうんじゃんか!!そんなの俺やだって!だったらその分俺が受けるから!」
(困りましたね・・・・)
八戒は頭を抱えたくなる。
確かに三蔵のことだ、謝るくらいなら気絶するまで叩かれる方を選ぶだろう。
それは八戒としても不本意だし、何よりも三蔵に反省して欲しいのだ。
(でも・・幾ら叩いても・・謝る三蔵じゃないですし・・。でも・・・)
八戒はチラリと悟空を見やる。
三蔵の頑なさを解せる可能性があるのは悟空だけだ。
自分が今考えていることはかなりひどいことに違いない。
だが、三蔵に本当に反省してもらうにはこれしかない。
 「わかりました・・・。それじゃあ悟空・・・。代わりに受けてもらいますよ。いいですね?」
八戒は真剣な表情で悟空に問いかける。
「う・・うん・・」
「おい!何勝手に話進めてんだ!!」
(何をするつもりだ!?)
三蔵は慌てる。
悟空を身代わりにするつもりなど毛頭ない。
 「三蔵・・。よく見ていて下さい。あなたの・・頑固さが・・招いたことですからね」
八戒はそういうと、三蔵からよく見える場所へ椅子を持ってくる。
椅子に腰かけると同時に悟空を膝の上に載せ、未だ赤みが残っているお尻をあらわにした。
「おい!馬鹿野郎!何してやがる!!」
三蔵は必死に言うが、八戒はそれを無視すると、ブラシを思い切り振り下ろした。


 ビッダァァ~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!!
「ぎゃあああああんっっ!!!いってえええよぉぉ~~~~!!!!!」
既に散々お仕置きされたお尻にはあまりにも過酷なブラシ打ちに、悟空は悲鳴を上げ、両脚をバタつかせる。
 (クソォ・・見て・・られるかよ・・・)
身代わりになってひどい目に遭う悟空を正視できず、三蔵は思わず目をそらそうとする。
「三蔵!ちゃんと見なさい!」
目をそらそうとする三蔵に対し、八戒は容赦なく言う。
とても逆らえる雰囲気で無いからか、三蔵はやむなく悟空を再び見つめだす。
 「ひぃぃんっ!ごめんっ!ごめんってば~~~!!!」
必死になって許しを乞う悟空だが、八戒は容赦なく悟空のお尻を叩き続ける。
(クソ!クソクソクソ!俺のバカ!?)
三蔵は自分に腹が立ってたまらなくなってくる。
悟空は悪くない。
だが、自分がつまらない意地を張ったために、目の前で大泣きしながら叩かれている。
あんなにひどい目に遭わされたのに、恨むどころか自分の事を心配して身代わりになっている。
その気持ちが何ともいたたまれなくなってくる。
 「やめろ・・・やめろ!やめろってんだ!!」
三蔵は悟空をお仕置きする八戒にそう叫ぶ。
「反省してるんですか?三蔵・・・」
「あ・・あぁ・・。お・・俺が・・・や・・やり・・過ぎた・・・」
「他に言ってほしいこともありますが・・。まぁ反省してるようですからね・・それじゃあ許してあげます」
そういうと、ようやく八戒はお尻を叩く手を止めた。
 「だ、大丈夫かよぉ・・?三蔵・・?」
お仕置きから解放されると、悟空は顔を顰めながら、三蔵に尋ねる。
「このバカッ!何だって余計なことしやがんだ!!」
三蔵は思わず叫ぶ。
「だ・・だってぇぇ・・・」
「だってじゃねえ!!おぃ、こっち来い!」
「ひ・・!ケ、ケツ叩くのかよ?」
余計なことをしたと怒られるのかと、思わず悟空は怯える。
 「叩かねえよ。だから来い」
そう言われ、ようやく悟空はおずおずと近づく。
悟空が目の前までやって来ると、三蔵は思い切り引き寄せる。
悟空が気付いたときには、三蔵の懐で抱きしめられていた。
 「さ、三蔵?」
「今回だけだ。次は・・・ねえからな・・・」
三蔵は顔をそむけると、悟空をしっかりと抱きしめた。


 ―完―

theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

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山田主水

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