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嘘の代償6(封神より:楊/玉、神父兄弟パロ)



(封神を題材にした二次創作で、神父兄弟パロです。許容出来る方のみご覧下さい)


 (暇だなぁ・・・・)
玉鼎はベッドの上でボーッとしていた。
楊ゼンは用があって出かけているので、玉鼎が留守番をしているのである。
 参拝者もいないし、ミサやその他の儀式もないので、暇を持て余していた。
楊ゼンがいれば何かしらやるべきことを見つけるので、何か仕事をしている状況になるのだが、あいにく今は玉鼎一人。
うるさい楊ゼンがいないということで、最初は嬉しそうだったが、こうも何もすることがないのも困ったものである。
 (何か・・・ないものか・・・)
暇をつぶせるものがないものかと考えているうちに、ふと玉鼎はあることを思い出す。
すぐにも飛び上がって地下へゆくと、やがてある部屋の前にたどり着いた。
 中へ入って見回すと、酒瓶を置いた棚が並んでいる。
ミサ用のワインや来客用の酒類などを保管するための地下室だ。
その中で玉鼎はある棚に近づくと、おもむろに一本取り出した。
 (これだこれ・・・・)
瓶を取り出すと、玉鼎は友人の太公望の顔を思い浮かべる。
この酒は太公望からのもらいもの。
太公望が酒好きなためか、よく贈り物として色々な酒をもらっていた。
 (太公望の事だから・・・きっと・・・)
玉鼎は想像するだけで、思わず喉を鳴らしそうになる。
酒好きなだけあって、太公望の舌はかなり肥えている。
友人へのお裾わけや贈り物でも、かなり上質な物をくれることが多かった。
もっとも、付き合わされて結構飲まされたりすることもあるが。
 (楊ゼンもいないし・・・ちょっとくらいなら・・・)
玉鼎はそう考えると、栓を抜きにかかる。
昼間から酒を飲むなどという行為は、楊ゼンが許すわけも無い。
いつもだったら、間違いなく怒られる。
しかし、楊ゼンは出かけている。
少しくらいなら、うまく誤魔化せるだろう。
そう判断したのだ。
 栓が抜かれると同時に、香りが鼻を突く。
その香りに思わず玉鼎はそのままゴクゴクと飲みだしていた。
「ふわあ~~っ。気持ちいい~~~っっっ」
喉越しや味の良さに、玉鼎はあっという間に飲み干してしまう。
すっかり酒に飲まれてしまった玉鼎は、いい気分になって空瓶を放り出し、さらに栓を抜いて飲みだしたり、或いは手当たり次第に、近くにあるものを取っては投げたり振り回したりしていた。
おかげで酒瓶やら何やらがどんどん散乱する。
 「そうだ~。こうしてやれ~~~」
不意に玉鼎はそんなことを言ったかと思うと、今度は礼拝堂の床掃除に使うモップを持ってきた。
そして、それを手にしたかと思うと、地下室内で振り回し始めた。
 「それそれ~~。どうだどうだどうだ~~~~~っっっ」
酔っぱらった勢いで、玉鼎はぶんぶんモップを振り回す。
当然、モップはあちらこちらで棚や瓶に命中し、その勢いで酒瓶が床へ落下する。
無論、落下した瓶は床にたたきつけられた衝撃で割れ、破片や中身が飛び散って、さらにひどい様相を呈していた。
しかし、それでも玉鼎のご乱行は留まらず、汗だくになって疲れ果てるまでの間、酒瓶が割られ続けた。


 「し・・・・しまった・・・・」
汗だくになった姿で、玉鼎は茫然としていた。
今やすっかり酔いは醒め、その表情は恐怖に歪んでいる。
 (まずい!まずいまずいまずいまずいまずいまずいぞ!何とかしないと!!)
玉鼎は必死になって考える。
このままではまた絶対にお尻を叩かれる。
それだけは嫌だった。
 (どうすれば・・どうすればいい!!)
玉鼎は必死に誤魔化す手段を考える。
(そうだ・・!!)
ようやく玉鼎は何かを思いつくと、急いで地下室を飛び出した。
 向かった先は玄関。
靴箱から適当な靴を取り出して履き替えると、玉鼎はまず靴底にたっぷりと泥をつける。
泥をつけてから玉鼎はまず、教会の裏口に向かうと、そこからワザとベタベタと泥の足跡を残しながら、勝手口から中へ入ってゆく。
そして地下室まで行き、また裏口まで戻っていった。
 (よし・・これで・・・)
足跡をつけ終わると、ようやく玉鼎はホッとする。
(これで泥棒の仕業に見えるな・・・)
偽装工作を終え、玉鼎がホッとしたときだった。
 「ただいま帰りましたよー、兄さーんっ」
不意に楊ゼンの声が聞こえてきた。
慌てて玉鼎は弟のもとへ駆けつける。
 「た、たた大変だっ!楊ゼンッ!」
「どうしたんですか?」
兄のただならぬ様子に楊ゼンは怪訝な表情を浮かべる。
「泥棒だっ!泥棒に入られたんだっ!!」
「ええ!本当ですか!?」
「とにかく見てくれッ!!」
玉鼎は楊ゼンを引っ張るように地下へと連れてゆく。
 「これは・・・・」
地下室の凄まじい有様に、楊ゼンは思わず言葉が途切れる。
「ちょっと買い物をしに出た隙に・・・入られたみたいなんだが・・・」
「それは災難でしたね。とにかく警察に・・・」
そこまで言ったところで、ふと楊ゼンはあることに気づく。
 「どうしたんだ、楊ゼン?」
「兄さん・・どうしたんですか?靴が何だか汚れてらっしゃいますけど?」
「え?」
弟の言葉に思わず玉鼎は靴を見やる。
すると、偽装工作用の靴を履きっ放しだったことに気がついた。
 (し・・しまった!?)
玉鼎は後悔するが、後の祭り。
動揺が如実に顔に出てしまい、楊ゼンははっきりと疑念を抱く。
「兄さん・・・何か隠してませんか?」
「ち・・違うっ!何も隠してない!!」
必死になって否定するが、それが逆に隠していることを明らかにする。
 「兄さん・・・正直に言って下さい」
「何も隠してなんかないっ!」
「では、ちょっと足跡を合わせてみてくれます?」
楊ゼンの言葉に玉鼎は言葉に詰まる。
そんなことをすれば、バレるのは間違いなかった。
 「どうしたんです?さぁ、早くして下さい」
「だ・・だって・・・・」
「さぁ・・・早くして下さい。何も隠してることがないなら出来るでしょう?」
容赦なくそう言いやる楊ゼンに、玉鼎は踵を返すと、逃げ出そうとする。
 「どこへ行くんですか!」
だが、それを予期していた楊ゼンは後ろから首根っこを掴む。
「離してくれ!!」
必死に叫ぶ玉鼎だが、楊ゼンが離すわけもなく、そのまま部屋の方へと連行されていってしまった。


 「なるほど・・・・そういうことでしたか・・・」
玉鼎から本当の事を聞き出すと、椅子に腰かけたまま、楊ゼンはハァ~ッとため息をつく。
 「よ・・楊ゼン・・。ちゃ、ちゃんと・・話したんだから・・・お・・お仕置きは・・」
必死になって許しを乞う玉鼎だったが、楊ゼンは厳しい目を向ける。
「何を言ってるんですか。真昼間からお酒なんて、いけないことなのはわかってるはずでしょう?」
「ちょ・・・ちょっとだけ!ちょっとだけのつもりだったんだ!だ・・だから・・!!」
「ダメです。しかも酔っぱらってあんなに物を壊したり、しかも嘘までついて誤魔化そうなんてして。許しませんからね」
弟の宣告に、玉鼎は一目散に逃げ出そうとする。
だが、逃げるいとまもなく捕まえられ、そのまま左側から倒れ込むように膝に載せられてしまった。
 兄を膝に載せると、楊ゼンは慣れた手つきで、神父服の裾を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
「ヤダ・・・。楊ゼンっ・・・やだぁ・・・」
「ダメです。きちんと反省して下さい」
楊ゼンは玉鼎にそう言うと、右手で背中を押さえ、左手にしっかりと息を吐きかける。
 「さぁ、行きますよ。覚悟はいいですか?」
「いいわけないじゃないかっ!やめてくれっ!」
この期に及んでもまだそんなことを言う玉鼎だったが、楊ゼンが聞き入れるわけもない。
そのまま楊ゼンは左手を振り上げると、兄のお尻めがけて振り下ろした。


 パアッシィィ~~ンッッッ!!
「う・・・・!!」
弾けるような音と共にお尻に痛みが走る。
玉鼎は思わず息がつまったような声を漏らした。
 ピシャ~ンッ!パア~ンッ!パチィンッ!ピッシャ~ンッ!
「うぁ・・あっ・・あぅ・・・あっ・・・」
平手が叩きつけられ、赤い手形が玉鼎のお尻に浮かび上がる。
肌を打つ音と共に、玉鼎の口から呻き声が漏れた。
 パアチィンッ!パアンッ!パンッ!ピシャアンッ!パアチィンッ!パアンッ!
「ちょ・・よ、楊ゼンっ!やめ・・痛っ!痛ぁっ!やめ・・やめっ!」
玉鼎はお尻を叩かれる痛みに声を上げながら、弟に呼びかける。
だが、楊ゼンはそれを無視して平手を振り下ろし続ける。
 パアンッ!パンッ!パチィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パシィンッ!
「痛っ!よ、楊ゼンっ!やめてくれ!聞こえてないのか!?」
思わずカッとなりながら玉鼎は振り返って抗議する。
 「聞こえてますよ」
楊ゼンはお尻を叩きながら、淡々とした口調で言う。
「だ・・だったら・・何で・・・」
不平そうに問う玉鼎に、楊ゼンは言い聞かせるように言う。
 「兄さん・・・僕はお仕置きだと言ったはずですよね?」
「そ・・それが・・どうしたんだ・・・」
「兄さん・・・どうしてお仕置きされてるんですか?兄さんが悪い子だったからでしょう?」
「う・・・だ・・・だって・・・」
「だってじゃありません。悪いことをしたらお仕置きなのは兄さんだってわかるでしょう?」
「でも・・痛いんだぞ・・・」
「痛くて辛くなければお仕置きにならないでしょう?まったく・・・」
呆れながら、楊ゼンはお仕置きを再開する。
 パアンッ!パンッ!パシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パンッ!
「うっ・・うく・・あっ・・あぅ・・ああっ・・・」
甲高い音と共に赤い手形が重なり合い、玉鼎のお尻を少しずつ赤く染めてゆく。
 「全く・・・昼間からお酒なんか飲んで・・・」
パアンッ!パシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パチィンッ!ピシャンッ!
お尻を叩きながら、楊ゼンはお説教を始める。
 「ひっ・・!あっ・・!ひぐっ!あっ・・!ああっ!」
玉鼎は両脚をバタつかせ、両腕も揺らすかと思えば、手を握り締めたりする。
お尻の赤みが増してゆくと共に、顔も上気して赤くなり、目尻に涙を浮かべる。
 「ひ・・!ひぃんっ!痛っ!痛ぁぁ・・痛ぁぁいっっ!!」
ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!パンッ!パアンッ!パシッ!パアンッ!
乾いた音が響き、玉鼎のお尻に容赦ない苦痛を与え続ける中、玉鼎は苦痛に声を漏らし、涙を流し続ける。
 「しかも・・酔った挙句に・・あんなに滅茶苦茶にして・・・」
今回のことはかなり怒っているのか、お仕置きとお説教をしながら、だんだん表情が険しいものへと変わってゆく。
 「しかも・・・あんな偽装工作までして・・・それが神父のやることですかっ!!」
パアンッ!パンッ!パシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!
「ひっ・・!あぐっ!あっ!ひぐっ!ひぃぃんっ!!」
今までよりずっと強烈な平手打ちを叩きつけられ、玉鼎は身体を強張らせ、反射的に足を上げ、片手を握りしめた。
 「何するんだっ!!痛いじゃないかっ!!」
玉鼎は振り返って抗議する。
「兄さん・・・さっきも言ったはずですよ?お仕置きだって?」
「うるさいっ!何だってお仕置きなんかされなきゃいけないんだっ!!」
玉鼎は不満極まりないといった様子で叫ぶ。
 「兄さん・・・まさか本気でそんなこと言ってるんですか?」
「だったら何だって言うんだ!ちょっと酒飲んだぐらいでそんなに言わなくていいだろう!そもそもお前がいつもうるさいからじゃないか!それに・・・お前がお尻なんか叩かなければそんなことしなかったんだ!それなのに・・・何でこんなことされなきゃいけないんだ!離してくれッ!!」
「いい加減にしなさいっ!!」
ビッダァァ~~~~ンッッッッ!!!
「ひぎぃぃぃぃ!!!!」
さらに激しい平手打ちを叩きつけられ、玉鼎は背をのけ反らせて悲鳴を上げる。
 「自分が悪いのに・・・全然反省していないどころか・・・逆ギレ・・・。本当に・・悪い子ですね・・・」
「よ・・楊ゼン・・?」
「そんな・・・悪い子は・・絶対に・・許しません!!」
そうつぶやくや、楊ゼンは思い切り手を振り上げた。
 ビッダァァァ~~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!!
「ひぃぃーーっ!!ぎひっ!ひっ!ひっひっ!うわあぁぁーーっっ!!!」
豪雨のような平手の嵐に、玉鼎は幾度も背をエビのようにのけ反らせ、バタ足の練習かと思うほどに両脚をバタつかせながら悲鳴を上げる。
 「ひいいっ!痛っ!痛いぃぃ!!楊ゼンっ!やめっ!やめてくれっ!!」
必死に頼む玉鼎だったが、完全に怒っている楊ゼンは容赦ない。
「何を言ってるんですか。自分が悪いのに、勝手なことばかり言って。そんな兄さんはこの程度じゃ許しませんからね」
「そ・・そんな~~~っっっ!!!!」
絶望の声を上げる玉鼎だが、お仕置きは容赦なく続く。
その後、長い間激しい平手打ちの音と玉鼎の悲鳴が室内に響きわたった。


 「ひぃん・・ひっぐ・・うぇ・・・あぐぅぅ・・・」
力尽きたと言わんばかりにぐったりした様子で、玉鼎は苦しげな声を上げる。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染め上がり、ちょっと触っただけで、火傷しそうに思えるぐらい熱くなっていた。
 「ひぃん・・もう・・やめ・・やめて・・くれ・・・。わた・・私が・・悪かった・・・からぁぁ・・・・」
「反省しました?」
楊ゼンは一旦お尻を叩く手を止めて尋ねる。
 「した・・・してる・・・だから・・・・」
「だったら、何が悪かったか言えますか?」
「ひぃん・・。か・・勝手に・・酒・・・飲んだ・・・」
「そうです。それから?」
「酔っぱらって・・・もの・・壊した・・・」
「後は?」
「ひぃん・・お仕置き・・嫌で・・誤魔化そうと・・したぁ・・・」
「そうです。でも・・・もうひとつ、ありますよ」
「え・・?ええと・・?」
玉鼎は必死に考える。
だが、幾ら考えても思い浮かばない。
 「わからないですか?」
楊ゼンの問いかけに玉鼎はギクリとして、思わず叫ぶ。
「ひぃぃぃ!!た、頼むっ!ちゃんと反省してるからっ!だからもう叩かないでくれっ!!」
(怖がらせちゃいましたね・・・)
玉鼎の取りみだした態度に楊ゼンは反省すると、兄を抱き起こす。
 「兄さん・・・・。地下室の様子からすると・・・一気飲みしたり、ガラスが散乱してる中を走り回ったりしたでしょう?」
「あ・・あぁ・・」
「そんなことしたら、危ないのはわかりますよね?」
「あぁ・・・」
「幸い、怪我も何も無かったようですが・・・下手したら怪我したり、急性アルコール中毒でしたよ。わかりますか?」
「心配・・して・・くれたのか・・・?」
「当たり前じゃないですか。兄弟なんですから」
「す・・すまない・・・」
「いいんですよ。わかって下されば」
そういうと、ようやく楊ゼンはホッとした表情を浮かべた。


 「ちょ・・太乙っ!もっと優しく・・・」
「はいはい。こうかい?」
太乙はもう少し力を抜いて薬を塗る。
 「それにしてもまた思い切りやられたもんだねぇ・・・・」
ワインレッドに染め上がったお尻に、太乙は感心するように言う。
「そうだろう!相変わらずひどいんだ!お尻はヤダって言ってるのに!!」
「それは君が悪いんだろう・・」
「太乙までそんなこと言うのか!バカッ!」
「兄さん・・そんなこと言うものじゃないですよ」
太乙にまでそう言う玉鼎に、思わず楊ゼンはたしなめる。
 「すみません、ワガママな兄さんで」
「別にいいさ。そんなのはわかってるからね。相変わらず君も大変みたいだねぇ」
「ええ、そうですねぇ」
楊ゼンは苦笑しながら返事をする。
 「まぁでも大事な兄さんですから」
苦笑しつつも、楊ゼンは愛情の籠った目を玉鼎に向ける。
そんな楊ゼンに気づかず、玉鼎は相変わらずむくれた表情を浮かべていた。


 ―完―

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虫歯と逃亡(封神より:道/玉、現代パロ)



(封神を題材にした二次創作で、現代パロものです。キャラのイメージが原作と異なっています。許容出来る方のみご覧下さい)


 (今の・・・うちに・・・)
玉鼎はキョロキョロと周囲を見回す。
そして楊ゼンの姿が無いことを確認すると、慎重に窓を開ける。
足音を立てないように静かに降り立つと、そのまま教会を脱兎のごとき勢いで飛び出してしまった。
 「兄さん、そろそろ行きますよ」
玉鼎が抜け出すのと入れ替わりに楊ゼンが入ってきた。
だが、既に部屋はもぬけの殻。
開いた窓と、地面についた靴の跡が逃亡を物語っていた。
 「全く・・まさかとは思いましたけど・・・。逃げ出すなんて・・・」
楊ゼンは呆れたような表情を浮かべると、ため息をつく。
同時に携帯を取り出すと、電話をかけだした。
 「ああ・・もしもし・・・××歯科クリニックですか?すいません。実は急に都合が悪くなってしまいまして・・・。本当に申し訳ありません・・・・」
楊ゼンは電話の向こうの歯医者に丁寧に謝る。
今日入れておいた予約を取り消してもらうと、再びため息をついた。
(とにかく・・・兄さんを探さないと・・・。全てはその後ですね・・・・)
窓を閉めながら、楊ゼンはそんなことを思わずにはいられなかった。
 (何とか・・・逃げだせたな・・・)
しばらく経った頃、玉鼎は通りを歩きながらホッと一息ついていた。
(しかし・・・楊ゼンのことだ・・。絶対・・・探し回るだろうしなぁ・・)
頬を押さえながら、玉鼎は考える。
(それにしても・・・何だって・・・虫歯なんかになるんだ・・・私の馬鹿・・・)
口の奥で疼く痛みに、玉鼎は思わず自分を罵る。
二、三日ほど前に虫歯が出来てしまい、それで楊ゼンが太乙の知り合いの歯医者に予約を入れて、今日治療してもらうことになっていたのだ。
しかし、歯医者が嫌で逃げ出したというわけである。
 (とにかく・・・楊ゼンに絶対に捕まらないようにしないと・・。もし・・・捕まったら・・・・)
玉鼎は楊ゼンに捕まってしまったときのことを想像する。
間違いなく、たっぷりとお仕置きをされてしまう。
散々お尻を叩かれて泣き叫んだ後で、歯医者に連れて行かれるだろう。
そこでも泣き叫ぶ羽目になるのは間違いない。
(絶対に・・・絶対に・・・捕まらないようにしないと!!)
玉鼎はそんな決意を固めていた。
 「あれ?玉鼎じゃないか?どうしたんだい?」
不意に呼び止められ、思わず玉鼎は飛び上がりそうになる。
とっさに振り向くと、道徳の姿があった。
 「何だ・・・道徳か・・・。一体何をしてるんだ?」
「今日は非番だから、ジョギングしてるんだよ。玉鼎こそどうしたんだい?」
何気なく尋ねた道徳だが、玉鼎は冷や汗が出そうになる。
歯医者に行くのが嫌で逃げ出しましたなどと言ったら、間違いなく楊ゼンのところに連れていかれてしまう。
それどころか、道徳からもお仕置きを受けるかもしれない。
 フィットネスジムの指導員という仕事柄、道徳も健康上のことには厳しい。
正直に言おうものなら間違いなく怒られるだろう。
何としてもお仕置きだけは避けたい。
玉鼎は必死になって頭を巡らせる。
 「じ、実はちょうど道徳のところに行くところだったんだよ」
「そうなのかい?」
「あ・・あぁ・・。楊ゼンが急に出かけることになってねぇ。それで・・」
「わかったよ。おおかた楊ゼンに一人だと心配だから、俺とか太乙のところにでも行ってくれって言われたのかい?」
「そ、そうなんだ。め・・迷惑かな?」
「別にいいさ。立ち話もなんだから、とにかくうちに来なよ」
「す、すまないな」
そういうと、二人してその場を離れた。


 (何とか・・・誤魔化せたが・・・どうしようか・・・)
道徳のアパートで、玉鼎は必死に考えを巡らせる。
(どうしよう・・・どうしよう・・ん・・?)
考えている間に、玉鼎は歯痛がさらに強くなってきたことに気づく。
 (ま・・まずい・・!?)
玉鼎は焦る。
このままだと耐えきれないくらい痛くなりかねない。
そうなったら終わりだ。
しかも、悪いことに道徳が淹れたての、湯気が立っているお茶を出してきた。
 「とりあえずお茶でも飲みなよ。話はそれからでいいからさ」
「あ・・あぁ・・・」
飲まないと怪しまれるので、やむなく玉鼎は湯呑みを受け取って口をつける。
(い・・・いいい痛いぃぃぃ・・・!??)
虫歯にお茶の熱さが沁み、玉鼎は思わず顔を顰める。
「ま、まずかったかい?」
「い・・いや・・そうじゃ・・あぅぅ・・」
平気な振りをしてお茶を飲もうとする玉鼎だが、身体は正直なもの。
飲むたびに歯が痛くてたまらない。
 (何だ・・・様子がおかしいな・・・?)
道徳も玉鼎の様子に不審を抱く。
同時に、本当に玉鼎の言っていることが正しいのか、疑わしくなってきた。
 「玉鼎・・。何か・・・俺に隠してることはないかい?」
「な、何を言ってるんだ!?そ、そんなことあるわけないだろう!!」
玉鼎は必死になって否定する。
だが、それがますます道徳の疑念を煽りたてる。
 「本当に・・・楊ゼンから言われた来たのかい?」
「当たり前じゃないか!私を疑うのか!?」
「それじゃあ、確かめてみるよ」
「え・・?」
玉鼎が思わずキョトンとするのを尻目に、道徳は携帯を取り出す。
 (ま・・マズイ!?)
玉鼎は道徳が楊ゼンに電話するつもりだと気づいた。
そんなことをされたら道徳のところにいるのがバレてしまう。
 「待て!待ってくれ!楊ゼンのところに電話するのはやめてくれ!!」
必死になって玉鼎は懇願する。
「どうしてだい?楊ゼンに言われて来たんだろう?」
「言うからっ!本当のことを言うからっ!だからそれだけはやめてくれないか!!頼むから・・・・・」
「やれやれ・・。やっぱり・・何か隠してたんだな・・・」
道徳は携帯をしまいながら、ため息をつく。
「それじゃあ・・・話してもらおうか。一体、どういうことなんだい?」
「話すよ・・・実は・・・」
もはや逃れられないと観念したのか、玉鼎はシュンとした表情で口を開いた。


 「何だって!何を考えてるんだいっ!!全く・・・」
思い切り怒られ、玉鼎はシュンとする。
「だ・・だって・・・医者は・・嫌いなんだ・・。それに・・凄く・・痛いじゃないか・・。虫歯の治療って・・・」
「だからって逃げ出していいってことにはならないだろう?」
呆れたような口調で道徳は言う。
 「それより・・・玉鼎・・・。こんなことして・・覚悟は出来てるかい?」
「か・・覚悟?な・・何で・・?」
「お仕置きのに決まってるじゃないか。さぁ、こっちおいで」
「い・・嫌だ!お尻・・叩くんだろう?」
「嫌だじゃないだろう、悪いことをしたのは誰だい?」
「ぜ・・・絶対に嫌だっ!!」
玉鼎はそう叫ぶや、逃げ出そうとする。
だが、道徳はドアに先回りして逃げ道を塞ぐと、玉鼎を捕まえた。
 「全く・・・全然反省してないみたいだねぇ・・」
「は・・離してくれっ!道徳っ!」
ため息をつきながら、道徳はソファへ玉鼎を引っ立ててゆく。
玉鼎は必死に抵抗するが、道徳はそれを押さえつけ、ソファに腰を降ろすと同時に膝の上に玉鼎を引き倒した。
 「やだっ!やめてくれっ!道徳っ!!」
膝の上に引き倒されてもなお騒ぐ玉鼎だったが、道徳はそれを無視して、神父服の裾を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
「やめろって言ってるじゃないか!何をするんだっ!痴漢っ!変態っ!」
(はぁ・・・全然反省してないみたいだな・・・予想はしてたけど・・・)
とてもお仕置きを受けるとは思えない友人の態度に道徳は再びため息が出る。
だが、すぐに気を取り直すと、左手でしっかりと玉鼎の身体を押さえ、右手を振り上げた。


 バッシィィィ~~~~ンッッッッ!!
「うわあっっ・・!!」
弾けるような音と共に、玉鼎は背をのけ反らせ、悲鳴を上げる。
雪のように綺麗なお尻の表面に、まるでモミジが降ったかのように、赤い手形が浮かび上がった。
 パアシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パッアア~ンッ!パアッチィ~ンッ!
「う・・あっ・・くっ・・あっ・・・」
お尻を叩く音が響くたびに、玉鼎の口から呻き声が漏れ、顔を顰める。
 ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パアッアア~ンッ!パアッシィ~ンッ!
「ちょ・・ちょっと!何するんだっ!うあ・・痛ぁ・・・」
玉鼎は文句を言おうとするが、道徳はそれを無視してお尻を叩き続ける。
 パアッチィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアシィ~ンッ!ピシャア~ンッ!
「全く・・・何をやってるんだい・・君って子は・・・」
友人というよりも、手のかかる弟に言い聞かせるような口調で、道徳はお説教を始める。
 ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!パアシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!
「歯医者が嫌だからって・・・逃げ出すなんて・・。治らなくて困るのは玉鼎だろう?自分の身体は大事にしなきゃダメじゃないか・・・」
平手を振り下ろしながら、道徳はお説教を続ける。
 「くぅ・・!痛・・・痛ぁ・・・道徳・・痛・・・痛い・・・」
だが、お説教が聞こえていないのか、玉鼎はそう言うばかり。
パアッチィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パッアア~ンッ!パアッチィ~ンッ!
「それより・・・そんなことをしたら・・・楊ゼンに迷惑がかかるし・・。何よりも・・・楊ゼンが心配するだろう?そのことをちゃんと考えたのかい?」
平手を振り下ろしながら、道徳は玉鼎にそう言い聞かせる。
 「道徳っ!さっきから何度も痛いって言ってるじゃないか!聞こえてないのか!?」
だが、玉鼎はとても話を聞いているとは思えない態度で、そう叫んだ。
道徳は一旦お尻を叩く手を止めて言う。
「聞こえてるよ、ちゃんと」
「だ・・だったら・・何でやめてくれないんだ!?ひどいじゃないか!!痛いんだぞ!」
玉鼎はお尻をアピールするかのように揺すってみせる。
さっきまでずっと叩かれていたお尻は、全身が満遍なく赤に染まっていた。
 「玉鼎・・・君、自分がどういう立場にいるか、わかってるのかい?お仕置きされてるんだよ?」
「何でそんなことされなきゃいけないんだ!離してくれっ!痛いっていってるじゃないか!!」
「玉鼎・・。まさかとは思うけど・・・反省してないのかい?」
そんな馬鹿なと思ったが、道徳は尋ねてみる。
 「何で私が反省しなきゃいけないんだ!!もう降ろしてくれ!!」
「玉鼎・・・どうして、そう思うんだい?」
「当たり前じゃないか!嫌だって言ってるのに、楊ゼンが無理やり歯医者なんかに連れて行こうとするからだろう!凄く痛いんだぞ!それなのに連れていくなんて!ひどいじゃないか!!」
「楊ゼンだって君の事が心配だからそうしてるんじゃないか。それなのに・・・逃げ出すなんて、それじゃあ楊ゼンが心配するだろう?」
「だから楊ゼンが歯医者なんかに連れて行こうとしなければやらなかったって言ってるじゃないか!!私は悪くない!!」
「玉鼎・・・まさか・・・本気で言ってるのかい?」
「だったら何だって言うんだ!私は子供じゃない!いい加減に降ろしてくれ!」
あくまでもそんなことを言う玉鼎に、道徳はため息をついた。
直後、思い切り右手を叩きつける。
 ビッダァァァァ~~~~~~ンッッッッッ!!!!
「うっわああああああああああああ!!!!!」
今までとは比べ物にならない打撃に、玉鼎は悲鳴を上げる。
「な・・・何をするんだっ!?」
思わず振り返って文句を言う玉鼎だったが、道徳の表情に思わず表情が強ばる。
 「いい加減にしないかい・・・玉鼎・・・」
「ど・・道徳・・?」
道徳のただならぬ雰囲気に、玉鼎は引きそうになる。
「自分勝手な理由で逃げ出したり・・・それで楊ゼンがどれだけ心配してると思ってるんだい?」
「そ・・それは・・・」
「それなのに勝手なことばかり・・・・。絶対に許さないからな!!」
道徳はそう言うや、足を組む。
おかげで、玉鼎は既に赤く染まっているお尻を突き上げるような体勢になった。
 「ひ・・!ど、道徳っ!これやだあっっ!!」
途端に玉鼎はガラリと態度が変わる。
この体勢で叩かれるととても痛いし、そして何よりも、こういう体勢のときは、相手が本気の本気で怒っているときだと知っているからだ。
そんな玉鼎には構わず、道徳は平手を振り上げた。
 ビッダァァァ~~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~!!!!
「うっわああああああんっっっ!!!!!!!痛ったあああいいいいぃぃぃ!!!」
集中豪雨のような打撃の嵐に、玉鼎は背をのけ反らせて絶叫する。
 「本当に・・・悪い子だなっ!!そんな子は・・・絶対に・・・!!」
バアッジィィィ~~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~!!!!!!
 「ひぃぃぃんっ!やめっ!やめてくれっ!道徳っ!痛いっ!本当に痛いぃぃぃ!!!」
とても耐えきれず、玉鼎は両脚をバタつかせ、泣き叫びながら許しを乞う。
「何言ってるんだい。自分勝手なことばっかりいって、全然反省してない悪い子にはこれぐらいじゃ足りないよ」
余程怒っているのだろう、道徳は容赦の無いことを言う。
「そ・・そんなっ!」
絶望のあまり叫ぶ玉鼎だったが、道徳は容赦なく平手を振り下ろし続ける。
その後、激しい平手打ちの音と悲鳴が響きわたった。


 「ひぃひぃん・・・。うっ・・・うぇぇ・・・」
ボロボロと涙を零して玉鼎は泣いていた。
お尻は今や濃厚なワンレッドに染め上がっている。
 「ひぃひぃん・・。ど・・道徳・・も・・もぅ・・許して・・・」
身体を震わせて泣きながら、玉鼎は必死に許しを乞う。
「反省してるかい?」
道徳はお尻を叩く手を止めて尋ねる。
「したっ!反省してるっ!だから・・・」
「それじゃあ、ちゃんと楊ゼンのところに帰るね?」
「帰るっ・・!ちゃんと帰るからっ!!」
「歯医者も後でちゃんと行くかい?」
「行くっ!約束するっ!!」
必死になって約束する玉鼎に、道徳もちゃんと反省しているとみたのだろう、表情を今までより優しいものに崩す。
「どうやらちゃんと反省出来たようだね・・・。それじゃあ・・お仕置きは終わりだよ」


 「くぅ・・!ど、道徳っ!もう少し・・優しく・・!!」
「これぐらい我慢しなよ」
「何言ってるんだ!空気が触れるだけでも痛いんだ!!」
薬を塗っている道徳に、玉鼎はそう叫ぶ。
 「それは玉鼎が悪いことをしたからだろう?」
「そ・・それは・・・」
「まあしばらく休みなよ。楊ゼンには俺の方から言っておくから」
道徳は頭を撫でてやりながら言う。
 「むぅ・・・。何だか子供扱いだ・・・」
不機嫌そうな表情の玉鼎に、道徳は苦笑を浮かべると、お尻にタオルを載せてやってその場を後にした。


 数日後のある日・・・。
「ひぃん・・!よ、楊ゼンっ!痛いぃぃぃ!!!」
玉鼎が悲鳴を上げるのを尻目に、容赦なくパドルが叩きつけられる。
 「何言ってるんですか!歯医者が嫌だからって逃げ出したりなんかして!どれだけ心配したと思ってるんですか!」
楊ゼンは怒り心頭といった表情で、兄のお尻にパドルを叩きつける。
道徳に連絡をもらって迎えに行ったときは、既に道徳にお仕置きを受けた後だったので、その時は執行猶予ということでお仕置きは許していた。
だが、後日歯医者に連れて行ってしっかり治療を受けさせ、その後も治ると、今まで猶予していたお仕置きをついに実行したというわけである。
 「だって・・・嫌だったんだ・・・」
「だからって逃げだしたりしていいわけがないでしょう!!」
思い切り強烈なパドル打ちを叩きつけながら、楊ゼンはお説教する。
「ひぃん・・・!!私が悪かったからっ!!許してくれっ!!」
「ダメです!本気で怒ってますからね!一週間は座れないくらいお仕置きしてあげます!」
「そ・・そんな~~~~っっ!!!」
絶望に満ちた玉鼎の悲鳴が響きわたる中、パドルを叩きつける音がこだました。


 ―完―

仮病と小細工(封神より:乙/普、現代パロ)



(封神を題材にした二次創作で、現代パロものです。許容出来る方のみご覧下さい)


 バッチィィ~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「うわああ~~んっ!許してってば燃燈~~~~!!!!!」
礼拝堂の長椅子に腰かけた燃燈の膝の上で、普賢は両脚をバタつかせて泣き叫ぶ。
たっぷりとお仕置きされたのだろう、お尻は倍近く腫れ上がり、見事なワインレッドに染め上がっている。
 「許してじゃない!また懲りずに仕事サボって!しかも嘘泣きで騙そうとして!!そんな悪い子は絶対に許さないからな!!」
「うわああ~~~んっっ!!二度としませぇぇ~~~んっっっ!!」
「それはもう何度も聞いた!今日という今日は許さないぞ!!」
怒り心頭といった様子で、燃燈は普賢のお尻をバシバシ叩く。
いつものように仕事をサボって近所の子供達と遊んでいたのがバレ、さらにこれもいつも通り嘘泣きを駆使して罰を軽くして逃げようなどと小細工を弄したものだから、燃燈の怒りをさらにかき立て、さらに厳しいお仕置きの真っ最中だった。
 (うわあ~~んっ!?どうしよ~~~!!このままじゃお尻壊れちゃうよ~~)
あまりに厳しいお仕置きに普賢が絶望しかけたときだった。
 「ふげ~ん、いるか~い?」
不意に買い物袋を提げた太乙が教会内へ入って来た。
「おや?太乙か?どうしたんだ?」
バシバシと普賢のお尻に平手を振り下ろしながら、燃燈が話しかける。
 「ちょっとリンゴをもらったんだけど一人で食べるには多すぎるからお裾わけに来たんだけど・・・取り込み中だったかな?」
太乙はお仕置き中の二人の姿を見ると、気を利かせるつもりか、リンゴの袋を別の長椅子に置いて立ち去ろうとする。
「うえ・・・うえぇぇ~~~んっっ!!太乙ってば~~~!!!助けてよ~~~!!」
普賢は出て行こうとする太乙に向かって泣きながら助けを求める。
「こら!太乙に助けを求めるんじゃない!!」
ビッダアアアアンッッッ!!
燃燈は普賢を叱りつけると、思いっきりお尻に平手を叩きつける。
 「うっわああ~~~んっ!!痛いよぉぉ~~~っ!!お尻壊れちゃうよ~~~!!」
普賢は全身を激しく動かし、大泣きしてみせる。
太乙はブルブルと全身を震わせたかと思うと、クルリと二人の方を振り向いた。
 「燃燈、もう許してあげないかい?」
「太乙!何を甘いことを言っているんだ!!」
「だって本当に痛いよ、この状況じゃ。普賢だってさすがに反省してるだろうし。ねぇ、普賢?」
「してるっ!してるよぉぉ~~~~!!!!」
普賢は泣きながら必死に太乙に訴えかける。
 「ほら、普賢もこう言ってるんだし。許してあげなよ」
「仕方ないな・・。そこまで言うなら・・・」
太乙にこう言われては燃燈も無視できず、ようやくお仕置きの手を止める。
 「うえええ~~~んっっ!!太乙~~~~」
普賢は燃燈の膝から解放されると、お尻を出したまま太乙に抱きつく。
「よしよし、大丈夫かい?」
「ふえええ~~んっ!痛いって言ってるのにぃぃ・・・燃燈がいっぱいお仕置きした~~~~~~~!!!」
「痛かったねぇ。今、手当てしてあげるよ」
太乙は普賢を慰めながら奥の部屋へと連れて行った。
 しばらくすると、太乙が戻って来る。
「普賢は?」
燃燈が尋ねると、太乙が口を開いた。
「寝室で休んでるよ。結構泣いてたけど、手当てしたら落ち着いたよ」
「そうか・・。しかし、太乙、甘すぎるぞ、お前は」
「そう言われてもねぇ・・・。どうも普賢の涙には弱いんだよねぇ・・」
太乙は苦笑する。
普賢は太乙達より年が離れているせいか、末っ子の弟のような存在として皆に可愛がられている。
中でも、太乙がその筆頭で、ついつい普賢には甘くなりがちだった。
 「お前に厳しくしろといっても・・・難しいだろうが・・・本当に可愛いと思うなら叱るのも愛情だと思うが」
「耳が痛いねぇ・・。出来るだけ・・気をつけるよ・・・」


 数日経ったある日・・・。
「うぅ・・・まだ・・痛いなぁぁ・・・」
神父服の上からお尻をさすりながら、普賢は辛そうな表情を浮かべる。
(ったく燃燈のバカ!!いつもいつも馬鹿力で叩くんだから!おかげでしばらくお尻が痛くてたまらないんだからね!!)
心の中で普賢は文句を言う。
元々力が強い上、お仕置きのときは怒っているからかなり痛い。
特に普賢の場合、小細工を弄して墓穴を掘り、さらに厳しいお仕置きをされてしまうパターンが多いため、何日もお尻の痛みに顔を顰める羽目になることが多かった。
 (あ~あ・・・こうもお尻が痛いと・・・仕事なんて嫌になって来ちゃうなぁ・・・)
普賢はそんなことを考える。
一度サボりの虫がうずき出すと、それが盛んに活動をはじめ、ますますサボりたくなってくる。
(でも上手くやらないと・・・また燃燈にバレでもしたらお尻の骨粉砕されちゃうよ)
普賢はバレずにサボれる手が無いか、考える。
 「こんちは~、普賢神父~~」
そんなとき、不意に聞きなれた声が聞こえてくる。
木タクだ。
(そうだ!?いい手考えた!?)
普賢はクスリとイタズラ小僧のような笑みを浮かべると、おもむろに長椅子に寄りかかるようにしてぐったりし始めた。
 「普賢神父~、また勉強・・・」
学校帰りな木タクは入って来るなり、普賢が苦しそうな姿で長椅子に寄りかかっているのを見つけるや、慌てて駆け寄る。
 「どうしたんすか!?」
「あ・・木タクくん・・?何か・・・急に・・あっ・・・」
普賢はそのまま倒れてしまう。
「普賢神父っ!大丈夫っすか!?」
木タクは声をかけながら抱き起こすと、奥へ連れて行った。
 「大丈夫ですかい?普賢神父?」
木タクはベッドに横になっている普賢に心配そうに声をかける。
「うん。だいぶ楽になったみたい・・。ありがとうね、木タク」
「こんなことどうってことないっすよ」
木タクはそう言いながら、甲斐甲斐しく世話をする。
 「木タク・・少し休ませてもらってもいいかな・・?」
「あっ!すいませんっ!気が回らなくて!?それじゃあ、俺は礼拝堂にでもいますから。何かあったらケータイに入れてくれればすぐ来ますから」
そういうと木タクは気を利かせて部屋を出ていった。
 (やった~~。上手く行った~~~)
普賢はクスリと笑みを浮かべると、成功に気を良くする。
(木タクのことだから・・・上手く誤魔化せると思ったんだ~~。これでもう今日は堂々とサボれる~~~)
普賢は心の中でそう呟く。
いつものように木タクが勉強を見てもらいに来たのを幸い、突然体調が悪くなった振りをして、サボろうという作戦である。
木タクは普賢の事を兄のように慕っているから、まさか仮病などと疑いもしない。
だからバレる心配は無かった。
(ふふふ~。木タクが帰るまでこれでゆっくり休める~~。嬉しいな~~)
してやったりという笑みを浮かべながら、そんなことを心の中で呟いていた。
 (大丈夫っすかねぇ・・・・)
礼拝堂の掃除をしながら、木タクは普賢の事が心配でたまらなかった。
(やっぱり・・・ちゃんと見てもらった方がいいよなぁ・・・)
苦しげな普賢の表情を思い浮かべると、木タクはそう思わずにはいられなくなる。
木タクは携帯を取り出したかと思うと、太乙の診療所の電話番号を呼び出した。


 「すいませ~ん、ちょっといいっすか~?」
不意にドアをノックする音と共に木タクが呼びかける。
「どうぞー」
普賢がそう声をかけると、木タクが入って来た。
 「どうしたの、木タク?」
「調子はどうっすか、普賢神父?」
「ああ。よくなったみたいだよ」
「ならいいっすけど・・。でも・・やっぱり、ちゃんと見てもらった方がいいっすよね」
「え?」
木タクの言葉に怪訝な表情を浮かべていると、往診鞄を提げた太乙が入って来た。
 「やぁ、木タクくんに聞いたよ。倒れたんだってねぇ」
「え・・?た、太乙・・。何で・・?」
「木タク君が心配して連絡くれたんだよ。さてと・・・それじゃあ診察しようか」
普賢は心の中で焦る。
太乙に診察されたら仮病なのがバレてしまうからだ。
 (マズい!マズいマズいマズいマズいよ!どうしよう!?)
普賢は必死に頭を働かせる。
だが、普段は悪知恵が働くのに、今回に限って中々出てきてくれない。
(このままじゃ絶対にバレちゃうよ~~!!どうしよ~~)
焦りに焦るが、それでも普賢は平静を装っている。
玉鼎のように後先考えずに逃げ出したりすれば終わりなのはわかっているからだ。
 「う・・うん・・わかってるよ・・」
普賢は動揺を隠しつつ、神父服のボタンを外すと、胸を太乙に差し出す。
太乙は普賢が胸を出すと聴診器をあてて診察し始める。
だが、診察を始めるや、太乙の表情が変わってゆく。
 「普賢・・・」
(しっ!訳はちゃんと話すから!お願いだから木タクの前でだけはやめて!)
普賢は小声で太乙にそうお願いする。
(わかったよ・・。仕方ないなぁ・・・)
太乙は小声で返事をすると、木タクの方を振り向く。
 「木タクくん。心配だろうけど、今日は帰ってもらっていいかい?」
「え?何でですかい?」
「そんな悪いやつじゃないと思うけど、念のためってことがあるんだよ。最近、新型のが流行ってるのは知ってるだろ?」
「ええ・・まぁ・・」
「だからもしもってことがあるかもしれないから、すまないけど今日は帰ってもらえるかい。心配なら後で私に電話くれれば詳しいことは教えてあげるから」
「わかりました。それじゃあ、俺はこれで失礼するっすね。普賢神父、お大事にっす」
「うん。木タクも気をつけてね~」
そう挨拶を交わすと、木タクは荷物を持って教会を後にした。
 「さてと・・・・。普賢・・・」
木タクがいなくなると、太乙はちょっと怖い顔を浮かべてみせる。
「え・・ええと・・太乙・・・」
「ええとじゃないよ。君、仮病だろう?」
「うぅ・・。ごめん・・・」
「ごめんじゃないよ。何だって・・・こんな真似したんだい・・・」
「だぁってぇ・・・燃燈に叩かれたお尻が・・まだ・・痛かったんだよぉ・・。仕事なんか・・・出来ないくらいぃぃ・・・」
「だからってこんなことしていいってことにはならないだろう?まったく・・・」
呆れたような口調で太乙は言うと、ベッドの縁に腰を降ろし、軽く膝を叩いてみせる。
それを見るや、普賢は怯えたような表情を浮かべた。
 「た・・太乙ぅぅ・・。まさか・・お尻・・・叩くの?」
「何そんな顔してるんだい。さぁ、早くおいで」
「お願いだよぉ・・太乙ぅぅ・・。まだ、燃燈に叩かれたのが残ってて痛いんだってばぁぁ・・。反省してるからぁぁ・・・許してよぉぉぉ・・・」
普賢は目尻に涙を浮かべて訴えかける。
 (ちょっと!?お願いだからそんな顔しないでよ!反則だってば!!)
太乙は普賢の泣き顔に思わず目をそむけてしまいたくなる。
普賢は年の離れた可愛い弟のような存在。
それだけに泣かせるような真似は出来ればしたくない。
このまま太乙は許してしまおうかという気持ちになってくる。
だが、そのとき燃燈の言葉を思い出した。
 (そうだよ。甘やかすだけじゃためにならないじゃないか!本当に可愛いならちゃんと叱らなきゃ!!)
太乙は自分にそう言い聞かせると、半ば自分に活を入れるように、怖い顔を浮かべて言う。
 「何を・・言ってるんだい。普賢が悪い子だったから叱られるんだろう。さぁ、早く来なさい。私だって・・・怒るよ?」
「わ・・わかったよぉぉ・・・」
普賢は諦めたような表情を浮かべると、ゆっくりと太乙の方へとにじり寄る。
やがて、ゆっくりと太乙の膝にうつ伏せになった。
 太乙が普賢の神父服を捲り上げ、ズボンを降ろすと、ほんのり赤みが残ったお尻があらわになった。
(うわぁ・・・さすが燃燈だねぇ・・・まだ痛そうだよ・・・)
この前のお仕置きの跡が残っているお尻に、太乙は思わず顔を顰める。
「た・・太乙ぅぅ・・。お願いだから・・・あまり・・・痛くしないでぇぇ・・。まだ・・お尻・・痛いからぁぁ・・・」
普賢は太乙の方を振り向くと、泣きそうになりながら懇願する。
 「な・・何・・言ってるのさ・・。そ・・それじゃあ・・お仕置きに・・ならないだろう?」
太乙は声が震えそうになるのを必死に堪える。
平静を装いつつ、深呼吸を繰り返してようやく自身を落ち着かせると、太乙は左手で普賢の頭を押さえ、右手に丹念に息を吐きかける。
「じゃあ・・行くよ。覚悟は・・いいかい?」
動揺を押さえながら太乙が尋ねると、普賢は黙って頷く。
それを見ると、太乙はゆっくりと右手を振りあげた。


 パアッシィィ~~ンッッッ!!
「ひっ・・!ひぃぃ~~んっっ!!」
甲高い音が響くと同時に普賢は背をのけ反らせ、悲鳴を上げる。
 「うわあ~~んっ!痛くしないでって言ったのに~~~!!」
「な・・何・・言ってるんだい・・。お仕置きなんだから・・・痛いのは・・当り前じゃないか・・・」
そう言ってお尻を叩き続けるものの、太乙の声はどことなく力が無い。
 パアンッ!パシィンッ!ピシャアンッ!パアチィンッ!
「わああんっ!やあっ!あああんっ!痛いぃぃぃ!!」
太乙がお尻を叩くたびに普賢は悲鳴を上げる。
 「まったく・・だ・ダメじゃ・・ないか・・。仮病・・なんか・・使ったら・・・」
苦しそうな表情を浮かべながら、太乙はお説教をはじめ、平手を振り下ろすのを続ける。
パアンッ!ピシャンッ!パアンッ!パアチィンッ!
「木タク君・・・本当に・・心配・・してたんだよ?そんな・・こと・・したら・・ダメじゃ・・ないか・・・」
パアンッ!ピシャンッ!パアンッ!パアチィンッ!
「うわあ~んっ!ごめんなさぁぁ~~いっ!」
普賢は泣き叫びながら謝る。
両脚をバタつかせ、涙を浮かべて泣く姿は何とも痛々しい。
 (うぅ・・・。見てる・・こっちが辛いよ・・・)
平手を振り下ろしながら太乙はそう思わずにはいられない。
普賢が悪いことをしたのだからお仕置きされるのは当たり前、痛い思いをしようが、それで大泣きしようが自業自得だ。
しかし、そうはいっても、こんな姿を見せつけられていると、自分がいじめているような気になって、叩いているこちらの方が罪悪感が沸いてくる。
自然、太乙の平手の勢いも乱れがちになっていた。
 (よぅし・・・効いてるみたい・・・)
泣き叫び、両脚をバタつかせながら普賢は心の中でほくそ笑む。
(ふふ。僕が大泣きするから迷ってるんだ。これ以上叩いていいかって。ふふ、やっぱり太乙だよね~。一番僕には甘いもんね~~)
小馬鹿にするような感じで、普賢はそんなことを考える。
 そう、普賢の泣き叫ぶ姿は、お得意の嘘泣きだった。
燃燈以上に自分に対して甘い太乙の性格を利用し、揺さぶりをかけているのである。
(それじゃあ・・・ダメ押しといこうかな)
普賢は心の中で呟くと、思いっきり悲鳴を上げた。
 「うっわあああ~~~~んっっっっ!!!!!痛ったあああいぃぃぃぃぃ!!!」
絶叫に近い悲鳴を上げるや、普賢は太乙の膝から飛び上がりそうになる。
(しまった!?考えごとしてたから強く叩きすぎちゃった!?)
太乙は自身のミスに愕然とする。
 「ひぃ・・ひぃぃん・・。いたぁぁい・・痛いよぉぉ・・。こ・・このまま・・じゃ・・お尻・・・壊れちゃうよぉぉ・・・・」
全身を震わせて泣きだした普賢に太乙は顔から血の気が引いてしまう。
(もう許してあげないと!このままじゃ普賢壊しちゃう!?)
半ば慌てながら太乙は手を止めて尋ねる。
 「は・・反省したかい、普賢?」
「してるぅぅ・・・してるよぉぉ・・」
「それじゃあもう仮病なんか使わないって約束するかい?」
「するぅ・・・するからぁ・・・。だから・・許してよぉぉぉ・・・」
泣きじゃくりながら普賢は答える。
「反省してるみたいだね・・・。それじゃあ・・お仕置きは終わりだよ・・」
「ほ・・本当?」
「うん。痛かっただろ?今、手当てしてあげるから」
そういうと太乙は普賢を起こし、抱きしめてやる。
 「うぇ・・うえええ~~~んっ!太乙~~~」
「よぅしよし・・。痛かったね。もう大丈夫だよ」
太乙はそう言いながら優しくお尻を撫でてやる。
 (ふふふ~~。見事にコロって騙されてるよね~~。ちょろいよね~~)
巧みに嘘泣きで太乙に甘えながら、普賢はほくそ笑む。
だが、普賢は気付いていなかった。
本音が顔に表れていることに。
さらに、それが部屋の片隅にある小さなテーブルの上に置かれていた小さな鏡に映っており、たまたまくるりと頭を動かした太乙の視界に入ってしまったことを。
 不意に強い力で引っ張られたかと思うと、太乙と強制的に顔を合わされる。
(し・・しま・・)
見事に本音があらわになった表情を見られてしまい、普賢は慌てる。
 「普賢・・・嘘泣きだったのかい・・・」
「た・・太乙・・こ・・これは・・・」
「ふざけるんじゃないよ・・・。私が・・どんな思いで叩いたと思ってるんだい!!私だって辛かったんだよ!それを・・・それを・・・」
(ちょ、ちょっと!?凄くマズそうなんだけど!?)
今まで見たことのない太乙の形相に普賢は危険を感じる。
 不意に太乙はネクタイを外したかと思うや、普賢の両手を後ろ手に拘束してしまう。
同時に無理やり普賢を立たせたかと思うや、乱暴に突き飛ばすようにしてベッドの縁に上半身をうつ伏せにさせた。
 「ちょ・・何するのさ!?」
思わず普賢は抗議する。
「うるさいよ・・。少し・・黙っててもらおうかい・・・」
その太乙の様子に普賢も思わず黙ってしまう。
 太乙はおもむろに部屋をぐるりと見回したかと思うと、机の引き出しを開けてみる。
そして中から大きな定規を取り出した。
「ま、待ってよ!太乙!ま、まさかそれで叩く気!?」
「決まってるじゃないか。人の気持ちも知らないで・・・嘘泣きなんかしてのうのうとお仕置きから逃げようなんて悪い子はこれくらい必要じゃないか」
そういうと太乙は思い切り定規を振り下ろした。
 ビッダァァア~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「ぎゃ・・ひぃぃんんんん~~~~っっっ!!!!」
(ななな何これ~~~!!痛いなんてもんじゃないってば~~!!!)
悲鳴を上げ、心の中で普賢は叫ぶ。
 バッジィィ~~ンッッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「きゃああ!ひぃぃんっ!やめてぇぇ!!太乙っ!お願いぃぃ!!」
「うるさいよ・・。少し・・黙ったらどうだい・・・」
太乙は普段からは想像もつかない冷徹な声で定規を振り下ろし続ける。
容赦の無い打撃音と普賢の悲鳴が寝室に響きわたった。


 「ふぅえ・・・うぇぇぇん・・・・」
普賢はボロボロと涙を零して泣いている。
お尻は三倍近くに腫れ上がり、濃厚なワインレッドに染め上がってしまっている。
 「痛いぃ・・・痛いよぉぉ・・・太乙ぅぅ・・。ゆ・・許してぇぇ・・よぉぉ・・」
演技の欠片も見られない、泣き声を上げて普賢は必死に許しを乞う。
だが、太乙はそんな普賢を冷ややかな目で見下ろしている。
 「普賢・・・いい加減にしないかい。まだ・・騙すつもりかい?」
(し・・信じて・・・くれなぃぃぃ・・・・)
太乙の言葉に普賢は愕然とする。
「どうやら今日の普賢は本当に悪い子みたいだねぇ。それじゃあこれを使おうかい」
太乙はそういうと、おもむろに往診鞄を開いて何かを取り出しにかかった。
 (な・・何・・する・・つもり・・?)
恐る恐る普賢は様子を伺う。
やがて太乙は薬品らしい瓶を取り出した。
 「ねぇ・・そ・・それ・・何なのさ・・?」
「これかい。消毒薬だよ。本当に普通のね。でも・・・こうすると・・」
蓋を開けたかと思うと、太乙は少しだけ傾ける。
すると中から消毒液が少しずつタラタラと腫れ上がったお尻に滴り落ちた。
 「うっ・・うわぁぁぁぁああああ!!!!!」
腫れたお尻に消毒液が沁み、普賢は背筋をのけ反らせて絶叫を上げる。
「ひぃぃん・・・痛ぁぁ・・・痛いぃよぉぉぉ・・・・」
あまりの痛さに普賢はさらに泣きだす。
「この涙は本物かな?それとも・・・・」
太乙はそういうと、また消毒液を垂らそうとする。
 「ふ・・ふえーん・・・・」
普賢は子供のような声で泣きだし、同時に両脚の間から生温かい液が流れ落ちる。
「ご・・ごめん・・なさぁぁい・・。し・・信じて・・くれないかも・・し、しれないけど・・・。ほ・・本当に・・反省・・してる・・からぁ・・。も・・もぅ・・仮病・・しませぇぇん・・。嘘泣きなんか・・しませぇぇん・・・。だ・・だからぁ・・許して・・・よぉぉぉ・・・・」
「今度こそ本当に反省してるかい?」
「してるぅ・・してるぅぅ・・・」
「どうやら嘘は無いみたいだね。許してあげるよ。ただし・・・」
そういうと太乙はやや多めに消毒液をお尻に垂らす。
 「うっわああああああんんんんんんんん!!!!!!!!」
油断していたところへ消毒液をかけられ、再び普賢は絶叫する。
「またこんなことしたら、今度は最初から定規でうーんと痛いお仕置きした上に消毒液かけるからね。わかったかい?」
「わかったから!本当にもうしませんっっ!!!!!」
普賢は必死になって誓う。
それを見ると、太乙はようやく瓶に蓋をした。


 「普賢・・・お願いだから機嫌を直してくれないかい?」
太乙はすっかり拗ねてしまった普賢に困った表情を浮かべる。
「ひどいよ!僕、本当に痛かったし怖かったんだからね!お尻壊れちゃうと思ったんだからね!!」
そういうと普賢はプイッと顔をそむけてしまう。
 「それは普賢があんなことしたからじゃないか・・・」
「悪い子だったらお尻が壊れてもいいっていうの!?ひどいよ!!」
「そ・・そうじゃないけど・・・」
「太乙・・もしかして・・僕のこと・・嫌いなんでしょ?」
普賢は目尻に涙を浮かべて言う。
 「そ、そんなことあるわけないじゃないか!?」
太乙は慌ててしまう。
「嘘っ!本当は僕の事嫌いなんでしょ!だからあんなにぶったりしたんだ~~~!!ひどいよ~~~~~!!!!」
普賢が大泣きしてしまい、太乙はさらに慌てる。
 「普賢!普賢!私が悪かったから!何でもするから許してくれないかい?」
「本当・・?」
「ああ・・。普賢に許してもらえるなら・・・なんだってするよ・・・」
「えへへ、太乙だーい好き!」
そういうと普賢は太乙に抱きつく。
ようやく機嫌を直した普賢に太乙がホッとする一方で、普賢はしてやったりといいたげな笑みを浮かべていた。


 ―完―

theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

家出と嘘と(封神より:乙/玉、現代パロ)



(注:封神を題材にした二次創作です。現代パロで、またキャラのイメージや設定が原作とかなり異なっていたり、今までの現パロものと若干設定が異なっている部分があります。許容出来る方のみご覧下さい)


 「はぁ~っ、やっと終わった・・・・」
太乙はどっと疲れが出たといった表情でそう呟くと、どっかと腰を降ろした。
先ほどようやく最後の患者を診終えたところだ。
「先生~、それじゃ失礼しま~す」
「ご苦労様~、明日も頼むよ~」
仕事を終えて帰ってゆく看護師達に太乙はそう挨拶する。
「さてと・・・私も一休みするかな・・・」
そんなことを呟くと、太乙は二階にある自宅の方へ引き上げていった。
 「ハァ・・・凝り凝りだなぁ・・・・」
シャワーを浴びつつ身体を動かし、太乙はそんなことを呟く。
(マッサージでも受けたいけど・・・平日も土曜も仕事だしなぁ・・・日曜はここら辺の店は休みだし・・・自営業は辛いよね)
身体を洗いながらそんなことを太乙は考える。
医者はいわゆる自営業、サラリーマンなどと違って病気とかでも中々休めない。
休めるのは日曜日くらい、そのときは当然マッサージ店も、他の医者も休みだ。
同じ医者でも、どこかに勤めているならサラリーマンと同じだから、シフトで平日に休むことも出来る。
だが、自分で経営しているとそうはいかないのである。
自然、疲れも溜まるというものだ。
 そんなとき、不意にベルが鳴った。
(誰だろ?)
「ちょっと待ってー!」
そういうものの、呼び鈴はますます激しく鳴り続ける。
「ああ~!誰だい一体!!」
あまりにも鳴りまくる呼び鈴にさすがに太乙もイラつきかける。
やむなく腰にバスタオルを巻いただけの格好で玄関の方へ駆けつけた。
 「誰だい一体!いい加減にしてよ!」
そう言いながら太乙がドアを開けると、現れたのは玉鼎の姿。
「あれ?玉兄(ぎょくにい)じゃないか、どうしたんだい?」
思わず太乙はそう尋ねる。
玉鼎とは昔からの付き合いで、玉鼎の方が年上なので普段は玉兄と呼んでいた。
 「どうしたのさ、こんな時間に?しかもそんな荷物持って?」
太乙は玉鼎が引いているスーツケースを見やりながらさらに尋ねる。
「とにかく上がってよ。詳しい話はそのあとで」
「ああ・・・」
太乙に促され、玉鼎はスーツケースを引きながら上がっていった。


 「それで、どうしたんだい?」
着替え終わると、太乙は玉鼎に麦茶を出しながら尋ねる。
「ああ。すまないがしばらく泊めてくれないか?」
「え?どうしてだい?」
太乙が尋ねると、玉鼎は何やら取り出して渡す。
中身は楊ゼンの手紙で、しばらく出張するのだが、兄のことが心配なのでしばらく面倒を見てやって欲しいということだった。
 「なるほどね、まあ別にいいよ」
太乙の言葉に玉鼎はホッとした表情を浮かべる。
「すまないな」
「別に構わないよ。それにしても楊ゼンも心配性だねぇ」
「だろう?私は子供じゃないって言ってるのに・・・」
(まあ楊ゼンが心配するのもわかるけどね・・)
太乙は玉鼎を見やりながら心の中でそう呟く。
見た目はとてもカッコよくてデキる男に見えるし、おかげで弟の楊ゼンともども美形神父兄弟として信者や近所の奥様・お姉さま方に大人気な玉鼎だが、正体がそんな立派なものじゃないことはよく知っていた。
大人っぽい見た目とは逆にワガママで大人げなくお子様、それが本当の姿なのだ。
おかげで昔から燃燈や道徳をはじめとする友人達からしばしば叱られてはお仕置きをされていた。
今でもそれは変わっておらず、しっかり者な弟にお仕置きされる日々を送っている。
それだけに楊ゼンが心配して兄弟そろっての友人である太乙のところに預ける気持ちもよくわかった。
 「まぁそれはとにかく・・・勝手にもの触ったりしないでよ?」
「わかってるよ!私は子供じゃない!」
「わかってくれてればいいけどね」
「全く・・・どうして皆いつもいつも・・子供じゃないって言ってるのに・・」
「はいはい。それより汗かいてるんじゃないかい?一風呂浴びたらどうだい?」


 それから二三日経った頃・・・。
「ふ~っ。お昼でも食べようか・・・・」
午前の診察が終わった太乙は、身体を伸ばしてあくびをしながらそう呟く。
そんなこんなで二階の自宅で、買ってきたコンビニ弁当を食べていたときだった。
 突然、卓上に置いていたケータイがブルブルと震動する。
取りあげて見てみると楊ゼンのケータイ番号。
「もしもし、楊ゼンかい?」
「あっ!太乙先生っ!兄さんが来てませんか?」
「玉兄なら二三日前からうちに来てるよ。っていうか出張するから面倒見てくれって君がよこしたんだろう?忘れたのかい?」
何を今さら言ってるんだ、と問いたげな口調で太乙は言う。
 「兄さんそんなこと言ってるんですか?」
「もしかして違うのかい?」
楊ゼンの口調に太乙は何やら玉鼎の言っていることと話が違うということを感じ取る。
「ええ・・実は・・・・」
電話の向こうから楊ゼンが話す内容にだんだん太乙の表情が変わっていく。
「それは・・・本当かい?」
「ええ・・・」
「わかったよ。帰ってきたらよ~く言い聞かせておくよ。だから待っててくれるかい?」
「わかりました。色々とすみません・・・」
「いいさ、別に」


 太乙のところに戻って来るや、玉鼎は太乙が怖い顔をしていることに気付く。
「ど・・どうしたんだ・・?そんな顔して・・・」
思わず気圧されたのか、玉鼎は恐る恐る尋ねる。
「話があるんだけど・・・いいかい?玉鼎?」
(う・・・)
太乙の呼び方に玉鼎は嫌な表情になる。
普段は玉兄と呼んでいるが、怒っていると玉鼎と呼び捨てになるのだ。
 「嫌だ・・・だって怒ってるじゃないか・・・」
「玉鼎・・・あんまりワガママ言うと・・」
そういうと太乙はハァ~ッと手に息を吐きかける真似をする。
「わ、わかった!わかったから!話は聞く!だからお尻叩かないでくれ!!」
慌てて玉鼎がそう言うと、ようやく太乙は手を降ろした。
 太乙の寝室に連れて行かれた玉鼎は正坐させられると、ベッドに腰を降ろした太乙にジッと怖い顔で見据えられる。
「さてと・・・実は楊ゼンから電話があってねぇ・・・」
(やっぱり・・・余計なことを・・・)
玉鼎はそう心の中で呟く。
「君・・・家出したんだって?何だってそんなことしたんだい・・」
「う・・・それは・・・」
そう呟くと玉鼎はそのまま押し黙ってしまう。
 「どうしたんだい?まさか言えないような理由かい?」
「だって・・・言ったら怒るじゃないか・・・」
「今だって怒ってるんだけど?それならちゃんと言えるまでお尻叩いてあげようか?」
「わ・・わかったよ!言うからっ!」
「それじゃあ何だってこんなことしたんだい?」
「楊ゼンが・・・悪いんだ・・・。いつもいつもお尻叩くから・・。だからお仕置きをやめるって約束するまで帰らないつもりだったんだ」
「そういうことかい・・・全く・・・それで・・あの手紙はどうしたんだい?」
「ああ、あれか?あれは楊ゼンの手紙とか帳簿の筆跡をなぞったりしてつくったんだ。よく出来てただろう?」
「よく・・出来てたじゃないよ・・。つまり・・・勝手な理由で家出した挙句・・・僕に嘘ついて騙してたってことだね?」
玉鼎は危険を感じるや、慌てて逃げようとする。
だが、あらかじめ予想していたのか、太乙は先回りして捕まえてしまう。
 「ちょ・・!離してくれっ!太乙っ!」
「何言ってるんだい!散々悪いことして!今日は怒ってるんだよ!」
そういうや太乙はベッドまで玉鼎を引っ立ててゆき、ベッドの縁に腰を降ろすと同時に玉鼎を膝に載せてしまう。
「ひ・・・!やめ・・・!」
お仕置きの恐怖に玉鼎は悲痛な声を漏らすが、太乙はそれを無視して玉鼎の神父服を捲りあげると、ズボンを降ろしてあっという間にお尻を出す。
左手で玉鼎の身体を押さえると、太乙はゆっくりと右手を振り上げ、勢いよく振り下ろした。


 パアッシィィ~~ンッッッ!!!
「ひぃんっ・・!」
弾けるような音と共にお尻の表面で痛みが弾け、思わず玉鼎の口から声が漏れる。
パッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パッアァ~ンッ!パッチィ~ンッ!
甲高い音と共に太乙の平手が振り下ろされ、玉鼎のお尻に手形が刻みつけられてゆく。
 「全く・・・・何をやってるんだい・・・玉鼎・・・」
呆れたような口調で呟くようにして、お尻を叩きながら太乙はお説教を始める。
ピッシャ~ンッ!パッアア~ンッ!パッチィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!
「ちょ・・・太乙・・痛い・・・」
玉鼎は平手を振り下ろす太乙に抗議しようとするが、太乙はそれを無視してお尻を叩く。
 パッチィ~ンッ!パッアア~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアッシィ~ンッ!
「お仕置きをやめさせるための家出なんかして・・・・」
パッシィ~ンッ!パッアァ~ンッ!ピッシャ~ンッ!パアッチィ~ンッ!
「痛・・・太乙っ!痛いってば!」
パチィ~ンッ!パッシィ~ンッ!パッシィ~ンッ!ピッシャ~ンッ!
「しかも・・そのために嘘ついたり・・・手紙の偽造なんてして・・・本当に何を考えてるんだい?」
さすがに予想外な行動だったのか、呆れが入り混じった声で尋ねる。
 「そんなこと・・・どうだって・・・いいじゃないか・・・それより・・・太乙・・・さっきから何度も痛いって言ってるだろ!?」
何度も抗議しているのにお仕置きする太乙に怒りの混じった声で玉鼎は言う。
「玉鼎・・・君・・・自分の立場わかってるのかい?君はお仕置きされてるんだよ?」
平手を振り下ろしながら太乙はそう尋ねる。
 「何を言うんだ!何だって私がお仕置きされなきゃいけないんだ!!」
だが、玉鼎は不当だとでも言いたげに声を上げる。
「は・・・?玉鼎・・・本気で言ってるのかい?」
太乙は玉鼎の態度にまさかと言いたげな表情を浮かべる。
幾ら玉鼎が大人げなくてお子様な性格だといっても、さすがに自分の非ぐらいはわかると思っていたからだ。
 「本気に決まってるだろう!早く降ろしてくれないか!!」
玉鼎は振り向くと、今にも噛みつきそうな表情で抗議する。
「じゃあ・・聞くけど・・どうして自分が悪くないって言うんだい?」
深呼吸をして自身を落ち着かせながら太乙は尋ねる。
「そんなの言うまでもないだろう!だいたい楊ゼンが悪いんだ!何かあればすぐにお仕置きだなんだってお尻叩くから!私は子供じゃないって言ってるのに!だから決めたんだ!楊ゼンがもうお尻叩かないって約束するまで家出してやるって!!」
「つまり何かい?楊ゼンがお尻叩くのが悪いって言いたいのかい?」
「決まってるだろ!説明しないとわからないのか!?」
「玉鼎・・・・楊ゼンが私のところに電話かけてきたとき・・どんなだったと思う?本当に慌ててたんだよ?どれほど君のこと探したか考えたかい?」
「それくらい・・・当然だろ・・・いつもお尻叩いて痛い思いさせてるんだから・・・少しは心配させたってバチなんか当たらないだろ」
「いい加減にしなさいっっ!!!!」
ビッダァァ~~~ンンンッッッ!!!!
玉鼎の態度にさすがに太乙も本気で怒り、渾身の平手打ちを叩きつけた。
 「ぎひぃぃっっっ!!!!痛いぃぃぃぃ!!!」
あまりの痛さに玉鼎は背をのけぞらせて悲鳴を上げた。
「何するんだっ!痛いじゃないか!!」
思わず玉鼎は振り返って抗議する。
だが、太乙の表情に思わず引いてしまう。
 「玉鼎・・・・君・・・本気でそんなこと・・思ってるのかい?」
静かな、だが怒気が満々な声に玉鼎は思わず身体を震わせる。
自分のミスを覚った玉鼎だったが、今さら引っ込みもつかず、どうにでもなれと半ばヤケになって叫んだ。
「だったら何だって言うんだ!さっさと降ろしてくれ!!」
「そう・・・よくわかったよ・・・・君が全然反省してないってことがね・・・」
そういうや、太乙は足を組む。
玉鼎のお尻が突き上げられた体勢になったかと思うや、太乙の平手が真っ向から振り下ろされた。


 ビッダァァ~~~~~ンンンッッッ!!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!!
「ひぃぃぃぃんんんんっっ!!!痛ぁぁいいいっっっ!!!」
まるでどしゃ降りのような平手の嵐に玉鼎は悲鳴を上げる。
 バアッジィィ~~~~ンンンッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!!
「ひっ・・!太乙っ!やめ・・・やめて・・」
「何を言ってるんだい!さんざん楊ゼンに心配させた上に私に嘘までついてっ!それも自分勝手な理由でっ!そんな悪い子は絶対許さないよっ!!」
「ひ・・!ひぃんっ!ゆ・・許し・・・」
玉鼎は必死に許しを乞うが、太乙の平手がさらに容赦なくお尻に降り注ぐ。
幾重にも重なる肌を打つ音と玉鼎の悲鳴が部屋に響き渡った。


 「ひっ・・・ひぃぃん・・・ふっえ・・・ふぇぇん・・・」
玉鼎はしゃくり上げながら子供のように泣いていた。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染まった上、一回りか二回りほど大きく腫れ上がっている。
 「ひぃん・・・太乙ぅ・・・痛・・・痛いぃぃ・・・も・・もぅ・・やだぁ・・・・お仕置き・・・やだぁぁ・・・・」
ボロボロ泣きながら振り返り、玉鼎は必死に訴えかける。
「少しは反省したかい?」
「してる・・・してるよぉ・・・・・」
「それじゃあ何が悪かったか言えるかい?もし・・・言えなかったら・・・あと100回はペンペンするよ?」
「ひゃ・・・100ぅぅ!!!」
太乙の宣告に玉鼎は飛び上がってしまいそうになる。
 「ひ・・・!!わ・・・ワガママいって・・・家出・・したぁ・・・」
「そうだねぇ、それから?」
「そ・・そのために・・た・・・太乙に・・嘘・・・ついたぁ・・・」
「だねぇ。でも・・一番大事なこと忘れてないかい?」
「え・・・?」
玉鼎はキョトンとした表情を浮かべる。
太乙の言いたいことがわからなかったからだ。
 (何だ・・・一体・・・何が・・・足りないんだ?)
玉鼎は必死に考える。
「あれ?わからないかい?仕方ないなぁ・・・・それじゃあ、あと100回くらいお尻に聞いて・・・・」
「ひぃぃぃんんっ!も、もう叩かないでくれっ!本当に反省してるから~~~~!!!」
心底恐ろしいのだろう、玉鼎は熱病にでも罹ったかのように全身を震わせながら叫ぶ。
 (あらら。ちょっと薬が効きすぎちゃったなぁ)
太乙はやり過ぎたことに気づくとさすがに反省する。
「いいかい、玉鼎。君が家出したおかげでどれだけ楊ゼンが心配してるか考えたかい?」
「そ・・それは・・・」
「人に心配かけるようなことをするのは何よりもいけないことだよ。だからこんなに怒ったんだよ。わかってくれるかい?」
「う・・・すまなかった・・太乙・・・」
「こらこら。一番謝らなきゃいけないのは楊ゼンにだろう、玉兄」
「ああ・・・そうだな・・・ちゃんと・・・後で・・・謝らないとな・・・」
玉鼎がそういうと、ようやく太乙はお尻を叩く手を止めた。


 「ひぃんっ・・!太乙っ!もっと・・優しく・・!ひっ!痛いっ!」
「少しは我慢してよ、玉兄」
「そんなこと・・言ったって・・・痛いんだっ!くうっ!」
お尻に薬を塗ってもらいながら玉鼎はそう言う。
 「とりあえず今日は泊っていきなよ、まだお尻痛いだろうし」
「太乙・・・やっぱり・・・怒られるかな・・・」
おずおずと不安そうな表情で玉鼎は話しかける。
帰った後の楊ゼンの反応が怖いのだ。
 「そんなこと考えてるとまたお尻が痛くなっちゃうよ。今はとにかく寝て身体休めなよ」
「そうだな・・・」
玉鼎は手当てが終わると、目を閉じてそのまま眠りに入る。
「やれやれ・・これで私より年上なんだからねぇ」
太乙は玉鼎の姿に思わず苦笑するも、優しさの籠った視線を向ける。
そのとき、ケータイが再び鳴った。
 「ああ、楊ゼンかい?今寝たところだよ。お尻の腫れが引いたら連れて帰るから。ん?別に気にしなくていいよ。玉鼎が色々やらかすのは昔からじゃないか。何を今さらって感じだよ」


 それからさらに二三日経ったある日・・。
ビッダァ~~ンッッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「ひぃぃんんんんんっっ!!楊ゼン痛いぃぃぃ!!!!」
楊ゼンの私室では激しく肌を打つ音と玉鼎の悲鳴が響き渡る。
 「当り前でしょう!自分勝手な理由で家出してっ!どれだけ僕が心配したと思ってるんですかっ!しかも太乙先生に迷惑かけてっ!」
楊ゼンは激しい口調で叱りながら兄のお尻にパドルを雨あられと降らせる。
「今日という今日は許しませんっ!!」
「ひぃぃぃんんんっっ!!!許してぇぇぇぇ!!!!」

 ―完―

theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

嘘とサボりと心配と・・・(封神より:楊/玉)



(封神を題材にした二次創作です。キャラのイメージがかなり原作と異なっております。許容出来る方のみご覧ください)


 (いい・・陽気だなぁ・・・)
温かく心地よい、いかにも春らしい陽気の中、洞府の庭にある亭(あずまや)で玉鼎は一心地ついていた。
(こんなに・・・心地いいと・・・何にもしたくなくなってくるな・・。太公望がよくサボるのもわかるような気がする・・・)
お茶を飲みながら玉鼎はそんなことを考える。
 「師匠ー、師匠ー」
不意に聞き覚えのある声が聞こえて来る。
玉鼎が振り向くと、楊ゼンがやって来ていた。
「楊ゼン、どうしたんだい?」
「師匠。そろそろ会議に出かける時間ですよ」
「そうか・・・もうそんな時間か・・・」
玉鼎は弟子の言葉にさっきまでの気分も消えてしまう。
今日は月に一度の十二仙の定例会議の日。
出かけなければいけないのはわかってはいた。
 「師匠、何をグズグズしてるんですか。遅刻でもしたら道徳様や燃燈様に叱られてしまいますよ」
「わかってるよ・・。嫌なこと・・思いださせないでくれ・・・」
弟子の言葉に玉鼎は不機嫌そうな表情を浮かべる。
以前、会議があるのをすっかり忘れてしまい、そのことで道徳からお仕置きされたり、また別の時には会議があったのを慌てて思いだして駆けつけたものの、結局遅刻で燃燈から叱られるなどということがあったのだ。
そのことを思い出してしまったせいか、不機嫌になったのである。
 「必要なものは部屋に用意しておきましたから、早くして下さい」
「わかったよ・・・今・・行くから・・・」
楊ゼンに促され、しぶしぶと玉鼎は自身の部屋の方へと向かっていった。


 玉鼎は楊ゼンがあらかじめ用意しておいた愛用の上着や肩当てを見やると、ため息をつく。
 (せっかく・・いい心地で過ごしてたのにな・・・)
春の心地よい陽気にどっぷりつかり過ぎたせいなのか、会議なんかに行かずにサボってしまいたいという気持ちになっているのだ。
(でも・・そんなこと言えば・・楊ゼンが怒るしなぁ・・・)
サボりやワガママには厳しい楊ゼンのこと、言えば間違いなくたっぷりとお尻を赤く染められてしまう。
(会議には・・行きたくないしなぁ・・でも・・どうしたら・・・)
そのとき、玉鼎はいいものがあるのを思い出した。
すぐにも玉鼎は戸棚へ行く。
扉を開け、中のものを見るや、玉鼎は微かに笑みを浮かべた。


 (遅いなぁ・・・どうしたんだろう?)
なかなか部屋から出てこないことに、楊ゼンは不審を感じる。
気になって仕方がないので、楊ゼンは師の部屋へ向う。
扉を開けるなり、目に飛び込んで来たのは床にぐったりして倒れている師の姿。
 「どうしたんですか!?」
慌てて楊ゼンは駆け寄り、玉鼎を助け起こした。
玉鼎の顔はサルのように真っ赤で、息もかなり苦しげだった。
額を触ってみると、まるで熱した石炭のように熱い。
慌てて楊ゼンは玉鼎を抱き上げるとベッドに寝かせる。
そして急いで部屋を後にした。
 「大丈夫ですか?師匠?」
「あぁ・・少しは落ち着いたよ・・・」
心配そうな表情で見つめる楊ゼンに、玉鼎はぎこちないながらも笑みを浮かべる。
「よかった・・少しは楽になったみたいですね・・」
「あぁ・・お前のおかげだよ」
「すみません、師匠。僕がいつもついていながら具合が悪いのに全然気づかなくて・・」
「楊ゼンが気にすることじゃないよ。それより・・少し喉が渇いたな・・」
「ああ!これは気づきませんでした!すぐにお茶持ってきますね!」
「ああ、頼むよ」
急いでお茶を取りに行った楊ゼンを尻目に、玉鼎はホッとした表情を浮かべる。
 (うまく・・いったみたいだな・・・)
キッチンに向かう弟子の足音を聞きながら玉鼎はそう心中で呟いた。
(隠しておいてよかったな、仮病薬)
成功を確信しながら、玉鼎はさらにそんなことを呟く。
玉鼎の病状は薬による偽物。
以前、人間界での仕事に追われて中々帰ってこない楊ゼンに帰ってもらいたいがために作った代物だ。
ただし、仮病薬による嘘だとばれた揚句にきつくお仕置きされてしまい、処方箋は没収、薬も楊ゼンにより全部捨てられてしまった。
しかし、そんなこともあろうかと隠しておいたものが存在しており、それを今回使ったのである。
 (仮病薬は全部捨てたと思ってるはずだから、疑うこともないだろう。ふふ、本当に病気だと思ってるから、多少ワガママ言っても叱られないだろうし、楊ゼンも優しくしてくれるから、万々歳だな)
玉鼎はこれでもかといわんばかりに作戦がうまく行ったことに満足げな笑みを浮かべた。


 その日の夕方・・・。
楊ゼンが夕飯の準備をしていると、呼び鈴が鳴った。
「はーい、今行きますー」
玄関のドアを開けると現れたのは太乙。
「こんばんは、太乙様、どうしたんですか?」
「話は聞いたよ、玉鼎風邪だってね?だからお見舞いついでに会議の資料とか持って来たんだ」
「わざわざありがとうございます。こちらです」
楊ゼンは太乙を玉鼎の寝室へ案内する。
 「師匠、太乙様がお見舞いに来て下さいましたよ」
「わざわざすまないな、太乙」
「別に構わないよ」
そう返事をすると太乙は資料の入っている大きな封筒を楊ゼンに渡す。
「それにしても災難だったねぇ、急に体調崩しちゃうなんて」
「ええ・・・ちゃんと師匠の健康には気をつけてたはずなんですが・・・」
楊ゼンは玉鼎の風邪に気づけなかったせいか、どこか落ち込んだ感じを見せている。
「ふふ、そんなこともあろうかといいものを用意して来たんだよ」
「いいもの?何ですか?」
楊ゼンが怪訝な面持ちで尋ねると、太乙は大きなバッグを見せる。
そのバッグから取り出したのは大きな注射器。
 「た・・太乙・・それは・・?」
お化けサイズで、いかにも痛そうな注射器に玉鼎は微かに表情が変わる。
「ふふふ、こんなこともあろうかとつくっておいた特製注射器さ。これさえあればどんな病気でもあっという間に治せるのさ」
「本当ですか、太乙様?」
「もちろん、この前普賢が病気したときに使ったら一発で治ったからねぇ」
「師匠、せっかくですから打っていただきましょう」
「え・・?そ・・それは・・」
見るからに痛そうな注射器に玉鼎はさすがに躊躇いの表情を浮かべる。
 「太乙様、どこに打つんですか?」
「お尻だよ。大きいからねぇ」
「わかりました。さぁ、師匠。打ってもらいましょう?」
「い・・いやだっ!!」
玉鼎は叫ぶや、ベッドから逃げ出そうとする。
 「師匠!どこ行くんですか!?」
楊ゼンは慌てて師を押さえにかかる。
「は、離してくれ!!」
「何を言ってるんですか!早く治さないと辛いのは師匠でしょう?」
「だからってそんなの嫌だ~~!!」
太乙の特大注射を見やりながら心底嫌そうに玉鼎は叫ぶ。
「師匠、太公望師叔みたいなこと言わないで下さい」
ちょっと困った表情を浮かべながらも楊ゼンは玉鼎をうつ伏せに押さえると、お尻を出す作業にかかる。
ベッドで寝ているためにいつもよりずっとラフな格好だったことと、お仕置きで慣れているせいかあっという間に楊ゼンは師のお尻をむき出しにする。
 「さぁ、お願いします、太乙様。僕がちゃんと押さえてますので」
「それじゃあさっそく・・・」
太乙は楊ゼンが玉鼎を押さえているのをみると、注射器を構える。
「ひ・・・!!」
後ろを振り向くや、今にも太くて長い針がお尻に迫ってきそうな雰囲気に玉鼎は恐慌状態になる。
 「ひいいいいっっ!!二人ともやめてくれないか!!ど、どこも悪くないから~~~!!」
注射器への恐怖に耐えきれず、とうとう玉鼎は白状してしまった。
「は・・?何を・・言ってるんですか?」
楊ゼンは師の言葉が信じられず、怪訝な表情を浮かべる。
「い・・言うから・・・正直に・・言うから・・。だから・・注射は・・・」


 「そ・・それは・・本当・・ですか・・?」
玉鼎が話したことがまだ完全には信じられないのか、楊ゼンはそう尋ねる。
「ああ・・・」
「つまり・・・会議サボりたさに、仮病薬で僕や皆に嘘をついたと・・・」
楊ゼンの言葉に玉鼎は頷く。
しばらくの間、何とも気まずい沈黙があたりを支配した。
 「太乙様・・・」
「何だい?」
「しばらく席を外していただけますか?」
「構わないよ。私は用事を思い出したんでもう帰るよ。二人でゆっくり話しなよ」
そういうと太乙は出て行く。
やがて、二人きりになると、楊ゼンは静かに口を開いた。
 「師匠・・・」
「な・・何だ・・・」
「こんなことして・・覚悟は出来てますか?」
「ひ・・・!!そ・・そんな・・出来心だったんだ!!だから・・・」
「ダメです。さぁ、こっちに来てもらいますよ」
楊ゼンは師の手首を引っ掴むと、強引に椅子の方へ引っ立ててゆく。
椅子に腰かけると、グイッと手を引っ張り、膝の上に玉鼎をうつ伏せに載せてしまった。
そして慣れた手つきでお尻をむき出しにする。
 「ひっ・・!!やだっ!楊ゼンっ!許してくれっ!!」
玉鼎はお仕置きを避けようと必死に懇願する。
「ダメです。嘘ついたりサボったりして、今日は怒ってますからね」
そういうと楊ゼンは左手で師の身体を押さえると、ゆっくりと右手を振り上げた。


 パアシィンッ!!
「あ・・・」
甲高い音が響き渡り、お尻の表面で痛みが弾けると同時に玉鼎の口から声が漏れた。
雪のように白い肌には赤い手形がモミジのように浮かび上がる。
 パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!
間髪入れずに平手が次々と玉鼎のお尻に振り下ろされ、手形がどんどん増えてゆく。
ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!ピシャアンッ!
「ぁ・・ぅ・・っ・・・ぁ・・・」
痛みと恥ずかしさに玉鼎の表情が微かに歪み、小さいながらもうめき声が漏れる。
 「全く・・・何を考えてらっしゃるんですか・・・」
師のお尻に平手を振り下ろしながら、呆れたような口調で楊ゼンはお説教を始めた。
パアシィンッピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!
「仮病薬なんか使って・・・皆に嘘ついて・・騙すようなことなんかして・・」
ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!パアアンッ!パアチィンッ!
「う・・く・・ひぃん・・だって・・はひぃん・・」
パアアンッ!パアチィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!
「それで・・・会議サボったりして・・・そんなこと・・やっていいとでも思ってらっしゃるんですか?」
ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!パアアンッ!パアチィンッ!
「だから・・・ほんの・・出来心だって・・言ってる・・じゃあ・・ないかぁ・・・。そんなに・・怒らなくたって・・いいじゃ・・ないか・・・」
「出来心だったら何やってもいいんですか?違うでしょう?全く・・・あなたって人は・・」
反省が見られない師の態度に、思わず楊ゼンは呆れた口調で言う。
図星をさされたせいか、玉鼎はムッとした表情を浮かべると、反発するかのような口調で言った。
 「うるさいな・・・・」
そう呟くや、玉鼎は弟子の方を振り返り、キッと睨みつけながら叫ぶように言う。
「いつもいつもうるさいな!何だってお前にそんなこと言われなきゃならないんだ!!弟子のくせにいつもえらそうに!!だいたい何だってお尻なんか叩くんだ!!私は子供じゃない!!離してくれ!!」
自分の非を認めるどころか、逆ギレした玉鼎の姿に楊ゼンもさすがに表情が変わる。
 「師匠・・本気で・・おっしゃってるんですか?」
楊ゼンの態度に不穏なものを感じたが、既に頭に血が上っている玉鼎は構わず当たり散らすように言い返す。
「だったら何だって言うんだ!楊ゼンの鬼っ!悪魔っ!幾らでも言ってやる!この尻叩き魔!サドっ!鬼畜っ!!」
「いい加減にしなさい!!」
ビッダァァ~~~~~ンンッッッ!!
玉鼎の態度にさすがに腹が据えかねたのか、楊ゼンは思いっきり師のお尻に平手を叩きつける。
「ぎっっ!!あぅぅぅ・・・」
強烈な平手打ちに玉鼎は一瞬背をのけ反らせ、うめき声を漏らすが、すぐに振り返ると噛みつくように抗議した。
 「何するんだ!!痛いじゃないか!!」
「うるさいですよ・・・師匠・・・」
だが、楊ゼンは冷ややかな態度で返す。
「よ・・楊ゼン・・?」
弟子の様子にさすがに玉鼎は不審を感じ、おずおずと尋ねるような調子になる。
 「よく・・わかりました・・。師匠がちっとも反省してらっしゃらないのは・・・。それなら・・・こっちも・・それなりの態度を取らせてもらいます・・・」
そういうと再び楊ゼンは玉鼎の身体を押さえると、右手を振り上げた。


 バアッジィィンン!!!
「うわああっっ!!」
今までとは比べ物にならない、重く強烈な平手打ちに玉鼎の口から悲鳴が上がる。
(痛ぅぅ・・い・・痛ぁぁ・・・)
あまりの痛さに顔をしかめるが、さらに平手が降り注ぐ。
ビッダァンッ!!バアッジィンッ!バッアァンッ!ビッダァンッ!
「ひっ!痛っ!痛いっ!楊ゼン痛いっ!!」
容赦のない平手打ちに玉鼎は苦痛を訴える。
「お仕置きなんですから当たり前でしょう!全く!」
しかし、師の態度に怒っている楊ゼンは容赦なく平手を叩きつける。
 ビッダァンッ!バアッジィンッ!ビッダァンッ!バッアァンッ!
「ひっ・・!ひゃんっ!うわっ!ああっ!」
「サボりたいばっかりに、仮病薬で僕や皆に嘘をついて・・・」
平手を叩きつけながら楊ゼンは再びお説教を始める。
 バッアァンッ!ビッバダァンッ!バッジィンッ!バッアァンッ!
「ひ・・!痛・・・楊ゼン・・痛ぁ・・痛いぃ・・・」
重く強烈な平手打ちを受けているうちに玉鼎のお尻はあっという間に真っ赤に染め上がってしまう。
あまりにお尻が痛くて、玉鼎の目には涙が浮かんできてはボロボロとこぼれ落ちた。
 「どれだけ僕や皆に心配をかけたと思ってらっしゃるんですか!!」
バッジィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!バッアァ~ンッ!バッジィ~ンッ!
「うわああっ!ひぃぃっ!痛っ!痛いいぃっっっっ!!」
弟子から与えられる容赦のないお仕置きに玉鼎は背をのけ反らせ、或いは全身を左右にモゾモゾと揺り動かす。
ビッダァ~ンッ!バッアァ~ンッ!バッジィ~ンッ!バッアァ~ンッ!ビッダ~ンッ!
バッジィ~ンッ!バッアァ~ンッ!バッジィ~ンッビッダァ~ンッ!バッアァ~ンッ!
「ひぃぃぃんっ!痛っ!痛いっ!楊ゼンっ!許してくれっ!!私が悪かったからっ!!」
玉鼎は弟子の方を振り向くと必死に許しを乞う。
 「反省してるんですか?」
だが、逆ギレなどという振舞いをしたせいか、冷ややかな態度で楊ゼンは尋ねる。
「してるっ!してるからっ!もう嘘もつかないっ!サボりもしないっ!心配かけるような真似もしないから!!だから・・もう許してくれっ!!ちゃんと謝るからっ!!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!」
目尻に涙を浮かべ、頬を紅潮させて玉鼎は必死に謝る。
 「どうやら・・ちゃんと反省して下さってるみたいですね・・・」
玉鼎の態度に楊ゼンがそういうと、玉鼎はちょっとホッとした表情を浮かべて言う。
「し・・してる・・だから・・もぅ・・・」
「反省してらっしゃるなら、ちゃんと素直にお仕置きを受け続けられますよね?」
「え・・!?そ・・そんな・・・」
思ってもみなかった楊ゼンの言葉に玉鼎は愕然とした表情を浮かべる。
 「何て顔してるんですか?まさかまた嘘ですか?」
楊ゼンの言葉に慌てて玉鼎は否定する。
「ち・・違うっ!ちゃんと反省してるっ!!」
「だったら素直にお仕置きを受けて下さい」
「楊ゼンっ!お願いだからそれだけは許してくれっ!本当に!もうやだあっ!お尻痛いのいやだっ!もう許してくれっ!!」
玉鼎はまるで小さい子供のように必死になって許しを乞う。
「ダメです!どれだけ僕が心配したかと思ってるんですか!!師匠が悪い子だからお仕置きされてるんでしょう!まだまだ許しませんからね!!」
そういうと再び楊ゼンは右手を振り上げた。
「うわぁぁ~~~んんんっっ!!痛ったいぃぃ~~~~っっ!!許してぇぇぇ~~~!!!」
まるで集中豪雨のような平手の嵐と鼓膜が破れるかと思うばかりに立て続けに鳴り響く打撃音と共に、玉鼎の悲鳴がこだました。


 「ひぃん・・ひっひぃん・・えっく・・・」
ボロボロと涙をこぼしながら玉鼎は弟子の膝の上で泣いていた。
体力も限界なのだろう、ぐったりして、額や手の甲からは汗が滲んでいる。
お尻は濃厚なワインレッドに染め上がり、倍近く腫れ上がっていた。
 「師匠・・・しっかり反省できました?」
楊ゼンは普段の調子に戻ると、そう尋ねる。
「した・・もぅ・・十分・・した・・から・・・だから・・・もぅ・・」
「そうですね、ちゃんと反省出来ましたしね」
そういうと楊ゼンは右手を降ろし、師の身体を起こすと膝の上に座らせる。
 「師匠・・痛かったでしょう?大丈夫ですか?」
楊ゼンは真っ赤になった玉鼎のお尻を優しく撫でてやる。
「大丈夫な・・わけ・・ないじゃ・・ないかぁ・・あんなに・・叩いて・・おいて・・。本当に・・痛かったし・・それに・・すごい・・怖かったんだぞ・・・」
「すみません。でも・・本当に・・ビックリして・・心配したんです・・。それだけは・・・わかって下さい・・」
「あぁ・・こっちこそ・・すまなかった・・。二度と・・しないよ・・・」
「そう言っていただけると嬉しいです。でも、お尻が痛くなくなったら忘れたりしないで下さいよ」
お尻の痛みが残っている間は守るものの、痛みや記憶が薄れるや似たようなことをやらかしてくれる師の記憶力に思わず楊ゼンは苦笑する。
「わかってるって!私は子供じゃない!!」
(そういうところが子供っぽいんだと思いますけど・・・)
そんなことを思って再び苦笑を浮かべるものの、愛情の籠った笑みを浮かべると、玉鼎のお尻を優しく撫でてやった。


 ―完―

theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学

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