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会いたくて・・・(SO2より:ルシ/アシュ、BL)



(SO2を題材にした二次創作です。BLありです。許容出来る方のみご覧下さい)


 皆が寝静まった夜・・・。街外れの教会にアシュトンの姿があった。
アシュトンは何かを待ちわびているかのように、ずっと夜空を見つめている。
やがて、闇に紛れて黒い影が現れたかと思うと、地上に降り立った。
 現れたのは、黒いローブを身にまとった銀髪の美青年。
敵である十賢者のナンバー2、ルシフェルだ。
だが、アシュトンにも、ルシフェルにも、敵と相対している、という雰囲気は全くない。
「アシュトン、待たせたな」
ルシフェルは、普段からは想像できない優しい笑みを浮かべ、何とアシュトンを抱きしめた。
 「うん・・。凄く・・待ちかねたよ・・」
「私もだ・・。会いたくて・・会いたくて・・たまらなかったぞ」
そういうと、二人は連れ立って、教会の中へと入っていった。
 数時間後・・・。
「アシュトン・・」
「何?」
服を着ながら、ルシフェルは恐る恐る声をかける。
先ほどまで、互いに相手を求めあい、貪り合っていたところだった。
 「き・・気持ち・・よかったか?い・・痛くは・・なかったか?」
「は・・恥ずかしいこと聞かないでよっ!!」
ルシフェルの問いに、アシュトンは顔を真っ赤にする。
「す、すまんっ!だ、だが・・・やはり・・痛いだけでは・・も、申し訳・・ないからな」
「大丈夫だよ。天国に連れてってくれたみたいだったから。それにしても・・君が・・そんなに優しいなんて意外だったね」
「ふん・・それはアシュトンだからだ。他の輩など・・私にはゴミ同然だ。それに、アシュトンこそ、そんなに大人しそうなのに、情熱的ではないか。先ほども・・」
「もうっ!だから恥ずかしいこと言わないでよっ!!」
「す、すまんっ!!」
ルシフェルは必死になって謝る。
「次に会えるのがまたしばらく後になってしまうからな・・。つい・・・」
「もう・・ずるいんだから・・君は・・。そんなこと言われたら・・・何も言えなくなっちゃうよ」
そういうと、アシュトンと顔をルシフェルに近づける。
 「アシュトン・・・愛している・・」
「僕もだよ・・・」
そういうと、互いに唇を重ね合わせた。


 「ふぁぁぁ・・・・」
「大丈夫かい?」
「あ・・・うん・・。ちょ、ちょっと・・寝不足でさ・・・」
あくびをするアシュトンに、クロードは心配そうな表情で尋ねる。
「また、夜中に剣の練習してたのかい?」
「う、うん・・。そ、そんなところ・・・」
微かに罪悪感を感じつつ、アシュトンはそう答える。
ルシフェルは、本来は敵のナンバー2。
決して、愛してはいけない相手だ。
だから、例え仲間にも、話すことは出来ない。
嘘をつかざるを得なかった。
 「アシュトン・・熱心なのはいいけどさ、やり過ぎは却って身体に毒だよ?」
「わ・・わかってるよ。だ、大丈夫だって・・・」
「ならいいんだけど・・。皆も心配しているから、それだけはわかってくれるかい?」
「う・・うん・・・」
心配そうなクロードに、アシュトンはおずおずと返事をした。
 数日後・・・約束の日の当日・・・・。
「ううう~~~~~~~」
アシュトンは呻き声を上げていた。
「大丈夫、アシュトンお兄ちゃん?」
「う・・・うん・・。な・・何と・・ゲホッ!ゲホゲホッ!!」
「こらこら。病人なんだから無理すんなって」
氷枕や氷嚢を使いながら、ベッドに横になっているアシュトンに、レオンとボーマンがそう声をかける。
突然、体調を崩してしまい、レオンとボーマンが看病中だった。
 「まぁとにかく・・今はゆっくり休みなって。皆も心配してっぞ」
「そうだよ。僕がついてるからさ、安心して寝ててよ」
「二人ともありがとうね。じゃあ・・お言葉に甘えて・・」
そういうと、アシュトンは二人が見守る中、静かに目を閉じた。


 その日の夜・・・・。
「やーだーっ!アシュトンお兄ちゃんの看病するんだってばーーー!!」
「そうはいかないよ。子供が夜遅くまで起きてるなんてダメだってば」
クロードはそういうと、レオンを強引に連れて行こうとする。
 「やだっ!ずっとアシュトンお兄ちゃんのそばにいるんだってば!!」
だが、レオンは頑として、譲らない。
「レオン・・・あんまり聞きわけが無いと・・」
クロードは怖い顔を浮かべると、手に息を吐きかけるしぐさをする。
その仕草に思わずレオンはお尻を押さえる。
これ以上ゴネると、お尻を叩かれる。
そう思ったからだ。
 「わ・・わかったよ・・。ね、寝ればいいんでしょ!!」
「わかってくれればいいんだよ。アシュトンの面倒は僕やボーマンさんでちゃんと見るからさ」
「ぜ、絶対だよ!も、もしアシュトンお兄ちゃんに何かあったら、クロードお兄ちゃんでも許さないからね!!」
そういうと、レオンは渋々部屋を出て行く。
 「ちょ、ちょっと・・かわいそう・・だったかなぁ・・」
部屋を後にするレオンに、アシュトンはそう言う。
「いいんだよ。レオンに徹夜させるのもよくないし」
「うん・・。でも・・レオンだって僕のこと、心配してくれてるから・・ああ言ってくれるんだよね・・・」
「そうだけど、でもそれでレオンまで倒れたら却って悪いだろう?」
「そ・・そうだよね・・」
「アシュトンもちゃんと寝るんだよ。これ以上レオンに心配かけたくないだろう?」
「う・・うん・・。そ、そうだよね・・」
「もし、何かあったら呼んでくれるかい。すぐに駆けつけるから」
「うん、ありがとうね。クロード」
「いいんだよ。それじゃあ、ゆっくり寝るんだよ」
クロードはそういうと、静かに寝れるように、寝室を後にした。
 それからしばらく経った頃・・・・。
(そろそろ・・大丈夫かな?)
アシュトンはこっそり起き上がると、慎重に他の仲間達の様子を伺う。
幸いなことに、皆、熟睡していた。
 (よし・・大丈夫!!今のうちなら!!)
アシュトンはベッドの中に枕などを入れ、寝ているように見せかけると、窓を開け、手製のロープを使って地面に降りる。
(皆・・ごめんね。でも・・どうしても会いたいんだ)
心の中で皆に詫びると、アシュトンはルシフェルとの待ち合わせ場所へと急いだ。


 「遅いな・・・・・」
時計を見ながら、ルシフェルは呟く。
待ち合わせ時間になっても、アシュトンが現れないからだ。
(途中で・・事故にでも遭ったのか?いや・・まさか!?私とのことが仲間にバレ、裏切り者として責められてれているのではなかろうな!?)
中々現れないアシュトンに、ルシフェルは心配が募って来る。
 (こ・・こうなったら私の方から・・・)
居ても立ってもいられず、ルシフェルがアシュトンの宿屋へ乗り込もうとしたそのときだった。
 「ご、ごめんっ!ま、待ったっ!?」
息せき切って、アシュトンが駆け込むように現れた。
「おおっ!アシュトンッ!!」
ルシフェルはアシュトンの姿を認めるや、すぐに抱きしめる。
 「よかった・・。中々来ぬから・・途中で事故に遭ったのかと・・心配したぞ・・」
「ご、ごめんね。み、道が混んでたり・・・皆と色々やってて・・・なかなか抜けられなくてさ・・・・」
「な、ならよいのだが・・。私との事がバレ、裏切り者として責められているのではとも思ってな・・・・」
「だ、大丈夫だよ。み、皆にはバレてないし。お、遅れてごめんね」
「いいのだ。アシュトンが無事な顔を見せてくれさえすれば・・ん?」
「ど、どうしたの?」
怪訝な表情のルシフェルに、アシュトンも思わず問い返す。
 「アシュトン・・・もしや・具合が悪いのではないのか?」
「な、なな何言ってるのさ!?そ、そんなことないよ!!」
「しかし、どう見ても顔色が悪いぞ?」
「ち、違うよっ!来る途中で死ぬほど怖い思いしただけで・・あ!!」
誤魔化そうとするアシュトンだったが、不意に身体が揺らぐ。
「あ、アシュトンッ!アシュトンーーーー!!」
ルシフェルが呼びかける中、視界が真っ暗になったかと思うと、そのまま意識を失った。


 「ううん・・・・」
目を覚ましたアシュトンは、見知らぬ部屋にいることに気づく。
「アシュトンッ!目が覚めたのか!?」
「あれ?ル、ルシフェル?どうして?それに、ここどこ?」
「近くの街の宿屋だ。倒れたのを運び込んだのだ」
「そ、そうだったんだ。ご・・ごめん・・迷惑かけて・・」
「いいのだ。それよりゆっくり休むのだ。私がついているから安心するがいい」
「わかったよ。それじゃあ・・お言葉に甘えて・・・」
やはり身体が辛いのだろう、そのまま目を閉じると、アシュトンは再び深い眠りへと落ちていった。


 数日後・・・・。
「アシュトン・・もう身体はよいのか?」
「うん、全然大丈夫。凄く軽くなった感じだよ」
すっかり元気を取り戻したアシュトンに、ルシフェルは安堵の表情を浮かべる。
だが、直後、初めてエクスペルで出会った時、そしてフィーナルに一回目に突入し、返り討ちにされたしまった時のような、恐ろしい雰囲気を纏った。
 「アシュトンッ!!」
「は・・はいっっ!!」
思い切り怒鳴られ、アシュトンは縮こまりながら返事をする。
「何故?あのようなことになったのだ?」
「ご・・ごごめんなさいっ!ほ、本当は体調悪くて・・ダウンしてたんだけど・・。ど・・どうしても・・ルシフェルに会いたくて・・・」
「だからと言ってあんな無茶をしおって!?死んでしまうのではないかと思ったのだぞ!?」
「ご・・ごめんなさい・・・」
謝るアシュトンだったが、ルシフェルの表情は厳しいまま。
 「ダメだ!絶対に許さんっ!!」
そういうと、ルシフェルはアシュトンの手首を掴む。
気づいた時には、床が目の前に迫り、ルシフェルの膝に乗せられていた。
 アシュトンを膝に乗せると、ルシフェルは膝を組む。
おかげで、アシュトンはお尻を突き上げた体勢になる。
(ひぃぃぃ~~~っっ!!やっぱり~~~!!??)
アシュトンは恐怖に身体が震える。
実は、お仕置きをされるのは初めてではない。
以前にも、何度かルシフェルを怒らせる事をしてしまい、そのたびにお尻を叩かれてお仕置きをされていた。
その際の経験から、膝を組んだ体勢でのお仕置きはとっても痛いこと、そういうときはルシフェルが本気で怒っていることを身を以って、それこそ背筋が寒くなるくらいに知っていた。
そんなアシュトンの恐怖を尻目に、ルシフェルはローブの裾を捲り上げ、下着ごとズボンを降ろし、アシュトンのお尻をあらわにする。
 「アシュトン・・・覚悟はよいな?」
アシュトンは黙って頷く。
ダメだと言っても聞き入れてなどもらえない。
大人しくお仕置きを受けるしかなかった。
ルシフェルはアシュトンが頷くのを見ると、片手で身体をしっかり押さえる。
そして、もう片方の手を振り上げるや、思い切り振り下ろした。


 ビッダァァァァァァ~~~~~~~ンンンッッッッッッ!!!!!
「うわああああっっっっ!!!!」
最初から容赦のない一撃に、アシュトンは悲鳴を上げる。
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~ッッッッッッ!!!!!
「ひっ・・!ひぃぃぃぃぃぃ~~~~っっっっっ!!!」
まるで豪雨のような平手打ちに、アシュトンは絶叫する。
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~ッッッッ!!
「馬鹿者めっ!体調が悪いのに出てきたのか!?何を考えている!!」
容赦なくお尻を叩きながら、ルシフェルはお説教を始める。
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!
「ひぃんっ!だ・・だって・・痛っ!痛あああっっ!!ど・・どうしても・・ひぃん・・!痛ああっ!き、君に・・ひぃん・・!会いた・・ひぃん・・かった・・からぁぁ・・・」
涙を浮かべ、苦痛に悶えながら、アシュトンは必死に言う。
 バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!
「それが馬鹿だと言っておるのだっ!!それでどうなった!?倒れたではないか!?目を覚ますまで、私がどんな気持ちだったと思っている!?」
「ひぃん・・。ご・・ごめんなさぁぁい・・・」
涙を浮かべながら、アシュトンは必死に謝る。
 「馬鹿者っ!『ごめんなさい』は当然だろう!無茶をした挙句に心配させおって!!二度とせぬよう・・・身に沁みて反省出来るようにしてやろう・・・」
ルシフェルはそう言うと、特製パドルを取り出す。
 「ひ・・っ!!ひぃぃぃ~~~~!!!」
特製パドルに、アシュトンは顔から血の気が引く。
そんなアシュトンを尻目に、ルシフェルはパドルを振り下ろした。
 ビッダァァァァァ~~~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!
「うっわああああ!!ひぃぃんっ!痛っ!痛いぃぃ!!ひいっ!ぎゃあんっ!ひぃぃんっっ!!」
平手とは比べ物にならないパドルの苦痛に、アシュトンは両脚をバタつかせ、悲鳴を上げる。
 「ごめんなさーいっ!ごめんなさいっ!二度としませぇぇぇんん!!ごめんなさぁぁいいいいい!!ごめんなさぁいっ!!やめてぇぇぇ!!お願いだからやめてぇぇぇ!!ごめんなさぁぁぁいいいい!!!」
その後、必死に謝り続けるアシュトンの悲鳴混じりの声、激しくパドルを振るい続ける音が長い長い間、響きわたり続けた。


 「うう・・・ひっぐぅぅぅぅ・・・」
ルシフェルの膝の上で、アシュトンは全身を震わせて泣いていた。
お尻は今や、ワインレッドどころではない色に染め上がっている。
 「ごめんなさぁい・・ごめんなさい・・ごめんなさいぃぃ・・・」
「アシュトン、反省したか?」
一旦パドルを振るう手を止め、ルシフェルは尋ねる。
「したっ・・したよぉぉぉ・・。心配・・かけて・・ごめんなさぁぁぁい・・。二度と・・しませぇぇん・・・」
「わかればよい。だが・・」
ルシフェルはそう言うと、再びパドルを振るう。
 バッシィィィィィ~~~~~ンッッッッッ!!!!
「ひぃぃぃんんんんっっっ!!」
油断していたところを思い切り叩かれ、アシュトンは悲鳴と共に背をそらす。
「もし、また同じことをやって心配させおったら・・今度は鞭で倍は叩く。その上、お灸も据えるぞ。よいな?」
恐ろしいルシフェルのお仕置き宣言に、アシュトンは必死に頷く。
それを見ると、ようやくルシフェルはパドルを手放した。


 「くひぃ・・・!!」
「し、沁みたのか?大丈夫か?」
声を漏らしたアシュトンに、ルシフェルは思わず尋ねる。
 「ううん、大丈夫。冷たくてヒヤリとしただけだから・・」
「そうか・・」
ルシフェルは安堵の表情で、薬を塗り続ける。
 「ごめんね・・心配させちゃって・・」
「全くだ!だが・・・無理をしてでも私に会いに来てくれたのだろう?それは・・本当に嬉しかったぞ・・・」
「ルシフェル・・・」
二人は互いに相手を熱の籠った視線で見つめる。
 「アシュトン・・・。気持ちは分かる・・。だがな・・くれぐれも自分の身体は大切にしてくれ・・。アシュトンに何かあったら・・・私も・・生きていられん・・・」
「ずるいなぁ・・。そんなこと言われたら・・何も言えなくなっちゃうよ・・・。でも・・君の言う通りだね。これからは・・ちゃんと自分を大事にするから・・安心して」
「わかってくれたか。嬉しいぞ」
ルシフェルはそう言うと、顔を近づける。
そして唇を重ねた。


 数日後・・。
パンッ!パンパンパンッ!パンパンパンパンッ!パンパンパンパンパンパンパンパンッッ!!
「うわああんっっ!!ごめんなさぁぁいいい!!!」
「ごめんなさいじゃないだろう?全く・・どこ行ってたんだい!!」
必死に謝るアシュトンに、クロードは容赦なくお尻を叩く。
あの後、大事をとりお尻が治ってから宿へ戻ったのだが、それまでに既に数日が経ってしまっていた。
その間、アシュトンがいなくなったことに皆が気づき、必死で探しまわっていた。
当然、心配させられた分、皆も怒っており、今度は仲間達からお仕置きだった。
 「ごめんなさぁぁぁいい!!二度としませぇぇん!!」
「そんなのは当然だろう?僕も、ボーマンさんも、チサトさんやセリーヌさんだって怒ってるんだからね!!皆からお仕置きだよ!!」
「そんな~~っ!!うわああ~~んっっ!!」
その後、レオンやレナ以外の面々から、順々にたっぷりとお尻を叩かれる辛い時間が続いたのだった・・・・。


 「心配してくれるのは嬉しいし・・・ありがたいけど・・お尻が壊れちゃうかと思ったよ・・・・」(アシュトン、心の叫び)


 ―完―

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闘技大会(SO2より:ディ&ルシ/アシュ、悪魔&神父パロ)



(SO2を題材にした二次創作で、悪魔&神父パロです。許容出来る方のみご覧下さい)


 ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
空気を切り裂く鋭い音と共に剣が振り下ろされる。
ディアスが黙々と素振りをしていたときだった。
「ディアスさーん」
聞き慣れた声に思わず振り返ると、アシュトンが風呂敷包みを提げてやって来るのが見えた。
思わずディアスは優しい笑みを浮かべかけるが、ピッタリとついてきた人物の姿に表情が険しくなる。
 「どうしたんだ、アシュトン?」
「ちょうどお昼だし、そろそろお腹減ってくる頃じゃないかなって思って。それでお弁当用意してきたんですよ」
「そうか。それは済まなかったな。だが、大丈夫か?あいつの嫉妬はかなりひどいだろうに?」
ルシフェルの嫉妬深さとそこから来るお仕置きの凄さはディアスもよく知っているから、自分のせいでアシュトンがまた叩かれるのではないかと、思わず心配になる。
 「確かに嫉妬とか凄いですけど、でもディアスさんも僕にとって大事な人なのはルシフェルも本当はわかってくれてますし。だから大丈夫ですよ。それより・・・闘技大会頑張って下さいね!絶対応援に行きますから!!」
アシュトンは意気込んで言う。
 ファンシティでまた大きな闘技大会が開かれるため、ディアスが出場するために街にまた帰ってきていた。
ここで素振りをしているのもそれに向けてである。
もっとも、毎日の日課なので、特に大会があるからというわけでもないのだが。
「ああ。お前のためにも・・・全力を尽くそう」
「それじゃあ僕はもう帰らないと。頑張って下さいね!」
アシュトンはそう言うと、教会へと帰っていった。


 大会当日の朝・・・・・。
「うぅぅ~~~~っっっ!!!」
アシュトンは悔しくてたまらないと言いたげな表情で呻いた。
 「おぃ!大丈夫なのだろうな!?」
ベッド脇では、ルシフェルが噛みつかんばかりの形相でボーマンに尋ねる。
「静かにしろって。大丈夫だよ。熱は高めだが、普通の風邪だ。しっかり休ませれば大丈夫だよ」
「そうか・・・よかった・・・・」
ホッとするルシフェルとは対照的に、アシュトンは悔しそうにボーマンに尋ねる。
 「ボーマンさぁん・・。それじゃあ・・闘技大会・・行けないんですか?」
「そいつは無理だ。残念だけどな」
「そ・・そんなぁぁ~~~っっ!!ディアスさんの・・応援・・したかったのに~~!!」
アシュトンは悔し涙を流す。
 「うぅ・・こ・・こうなったら・・・」
「馬鹿者っ!何をしているのだ!!」
無理に起き上がろうとするアシュトンをルシフェルは慌てて止める。
「馬鹿っ!無茶して応援に行くつもりかよ!」
「だ・・だって・・・絶対に・・行くって・・言ったのにぃ・・・」
「そんな身体で応援に行ったって、却ってディアスに心配させるだけだろうが!そうしたら勝てる試合も勝てなくなっちまうだろ!!」
「う・・うぅ・・・」
ボーマンの言葉にアシュトンは涙を流す。
 「アシュトン・・・悔しいだろうがとにかく今は休むのだ。そうしなければずっとこのままだぞ?」
「わ・・わかったよ・・・うぅう・・・・」
ルシフェルの言葉に渋々ベッドに横になるアシュトンだったが、その顔には未練や悔しさがありありと浮かんでいた。
 それからしばらく経った頃・・・。
「アシュトン!おじやを用意したぞ!」
ルシフェルは声を上げて部屋に入るが、入るなり、おじやを載せたお盆を取り落としてしまった。
 「な・・な・・な・・・」
目の前の状況にルシフェルはまともに言葉も出ない。
いつの間にか、ベッドは空っぽ、窓は開けっぱなしという状況になっている。
慌てて窓に駆けつけて庭の土を見てみれば、靴の跡。
さらに私服も無くなっている。
(病気をおしてファンシティに行ったのか!?)
そのことに気づくや、ルシフェルは顔から血の気が引く。
「こうしてはおれんっっ!!!」
慌ててルシフェルは紅翼を広げると、窓から飛び出し、ファンシティ目がけて一目散に飛んで行った。


 「ディアス、調子はどうだ?」
控室で静かに試合を待っていると、ボーマン達が様子を見にやって来た。
「まぁまぁというところだ」
「そうか。まあお前さんのことだから大丈夫だろうな」
「さぁな・・。それより・・・アシュトンの姿が無いようだが・・?」
ディアスやアシュトンがいないことに怪訝な表情を浮かべる。
 「ああ、それなんだけど、アシュトン急病なんだよ」
クロードが言いにくそうに言う。
「何?大丈夫なのか?」
ディアスは思わず心配そうな表情でボーマンに尋ねる。
 「大丈夫だ。ただの風邪だしな。あいつが今頃面倒見てるよ」
「そうか・・・」
ディアスは安心しつつも複雑な表情を浮かべる。
ルシフェルの事だ、これ以上ないくらい至れり尽くせりな看病をしているだろう。
だからアシュトンのことは確かに安心だ。
 しかし、アシュトンの『お兄さん』という立場にしてみれば、ルシフェルに可愛いアシュトンを一人占めされているようで、何だか面白くない。
大人げないとは思いつつも、そんな感情を抱かずにはいられなかった。
 「おぃおぃ。アシュトン取られて悔しいのはわかるけどな。負けちまったら目も当てらんねーぞ。アシュトンだって今頃お前さんの勝ちを祈ってるんじゃねーのか?」
「そうだな・・・。ここで負けたらアシュトンに顔向け出来んな・・・」
「その意気だ。思い切り戦って・・勝ってこい。アシュトンのためにな」
「わかっている・・」
「ディアス選手!出番です!」
不意に大会スタッフが現れると、ディアスにそう告げる。
それを聞くと、ディアスは試合場へと赴く。
クロード達も観客席へ戻っていった。
 「おい!ここにいたのか!?」
観客席へ戻って来たクロード達は、突然の聞き慣れた声に思わず振り返る。
すると、全身汗だく、荒い息を吐いているルシフェルの姿があった。
 「あれ?虐待魔じゃないか?何しに来たのさ?」
レオンは突然現れたルシフェルに怪訝な表情を浮かべる。
「誰が虐待魔だ!それより・・・貴様ら!アシュトンを見ていないか!?」
「アシュトンに何かあったのかい?」
クロードはルシフェルのただならぬ様子にそう察して尋ねる。
「私の目を盗んで教会を抜け出しおったのだ!!」
「な・・・何だって!?」
ルシフェルの言葉に全員驚いた。
 「絶対ここに来ているはずだ!病気を押してでも来たがっていたからな!!」
「わ、わかった。俺達も探そう。クロード、レオンと一緒に探してくれ!」
「わかりました」
「俺はノエルと一緒に探す。見つけたらすぐ知らせるんだぞ」
互いにそういうと、それぞれ分かれてアシュトンを探し始めた。


 「う・・・うぅう・・・」
目立ちにくい観客席の奥まった片隅の席。
そこにアシュトンの姿があった。
アシュトンは苦しげな表情を浮かべ、自身を抱きしめるかのように、両腕を回して悪寒に震える自身の身体を押さえつけている。
(マズいよ・・・。だんだんひどくなってきちゃった・・・・)
そのことにアシュトンは焦燥に駆られる。
(お願いだからディアスさんの試合を見届けるまではもって!!)
必死にアシュトンが自身に言い聞かせる中、ディアスの名がアナウンスされる。
ハッとしてアシュトンが顔を上げ、眼下の闘技場を見やると、選手用入口からディアスが姿を現した。
 (ディアスさん・・・・)
アシュトンは心の中でディアスの名を呼び、食い入るようにディアスの姿を見つめる。
やがて別の名前がコールされ、今度は対戦相手が出て来た。
 対戦相手とディアスは互いにジッと睨みあったかと思うと、互いに勢いよく駆け出した。
刃と刃がぶつかり合い、甲高い音が幾重にも響く。
互いに一進一退の攻防を繰り広げる中、ディアスのケイオスソードが決まり、相手が倒れる。
司会者がディアスの優勝を宣言し、スタッフがディアスに優勝賞品を引き渡すのを見ると、アシュトンは安堵の息をついた。
 「ここにいたのか」
(え・・・?)
聞き覚えのある声にアシュトンはハッとして振り返る。
すると、そこにはルシフェルの姿。
 「ル・・ルシフェル・・!?ど・・どうし・・・」
「どうしてだと?決まっているだろう!お前が抜け出したのを見つけてすぐに来たのだ。抜け出してでも行こうとするところなど、ここしか考えられんからな」
ルシフェルの言葉にアシュトンはどんどん顔から血の気が引いてゆく。
 「さぁ・・とにかく帰・・・ど・・どうした!?」
ルシフェルが驚いた表情を浮かべたのを気づくと同時に、アシュトンは視界が暗くなるのを感じる。
(しま・・・・)
ルシフェルが呼びかける中、アシュトンの意識は暗闇の奥底へと沈んでいった。
 目を覚ましたアシュトンの目に飛び込んで来たのは、皆の安堵の表情だった。
「目が・・覚めたのか・・・」
「あれ?み・・皆?どうして?それに・・ここは?」
「ファンシティの宿屋だよ。アシュトンが倒れたのを見つけたから、ここに宿を取って休ませたんだよ」
「そ・・そうだったんだ・・。面倒・・かけちゃって・・ごめんね」
「それくらい構わんさ。とにかく・・今はゆっくり休むこった」
「す・・すいません・・」
アシュトンはそう言うと、そのまま再び眠りについた。


 それから数日後・・・・。
(悪いこと・・・しちゃったなぁ・・・・)
先日の事を思い返し、アシュトンは疾しさや罪悪感で一杯になる。
そのとき、不意にドアをノックする音が聞こえた。
 「はーい、いるよー」
アシュトンが返事をすると同時に、ドアが開いたかと思うと、ルシフェルが入ってきた。
「ルシフェル、どうかした?」
「うむ・・。お前に大事な用があってな・・・」
「用?」
「うむ。とにかく私の部屋まで来てもらうぞ」
そういうと、ルシフェルは自分の部屋へアシュトンを連れてゆく。
部屋に入ると、ディアスの姿もあった。
 「あれ?ディアスさんも来てたの?」
「ああ・・・。俺も大事な話があってな・・・・」
「そ・・そう・・・」
二人の雰囲気にアシュトンは押されたような感じになる。
 「そ・・それで・・話って・・何なの?」
「それはもう察しがついているのではないか?」
ルシフェルの言葉にアシュトンは思わず表情が強ばる。
「も・・もしかして・・闘技大会の・・こと?」
「そうだ・・。アシュトン・・この・・馬鹿者がぁぁぁ!!!!!」
思い切りルシフェルに怒鳴られ、アシュトンは思わず身を縮こませる。
 「ご・・ごめん・・なさい・・・」
「ごめんなさいではないだろう!!あんな身体で無茶をしおって!」
反論できず、アシュトンは黙るしかない。
 「アシュトン・・・。あんな真似を仕出かした以上・・・覚悟はいいな?」
「や・・やっぱり・・・お仕置き・・?」
恐る恐る尋ねるアシュトンに、ルシフェルは当然といわんばかりの表情で答える。
「当たり前だろう!何のために地鶏剣士までいると思っているのだ!」
(や・・やっぱり~~~~!!??)
ルシフェルの言葉にアシュトンは顔から血の気が引く。
 いつもだったら、ディアスとルシフェルがいれば騒がしいことになりかねない。
にも関わらず、今日は一緒にいて険悪な気配が全くない。
それはディアスも怒っていて、お仕置きをするつもりだということ。
 「さぁ、わかっているな?」
ディアスはベッドの上に腰を降ろすと、膝を軽く叩いて合図をする。
「は・・はぃぃぃ・・・・」
アシュトンは今にも泣きそうになりながらも、大人しくディアスのもとへやって来ると、膝にうつ伏せになった。
アシュトンが膝に乗ると、ディアスは神父服の裾を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
 「アシュトン・・・」
「は・・はいっ!!」
恐怖で飛び上がりそうになるのを堪えながら、アシュトンは返事をする。
「今日は俺も怒っているからな。だから・・・今日はたっぷりと泣かせるぞ」
その言葉にアシュトンは恐怖に全身が震える。
ディアスは左手でアシュトンの身体をしっかりと押さえると、ゆっくりと右手を振り上げた。


 バアッシィィ~~~ンッッッ!!
「い・・いったぁぁ・・・・」
甲高い平手打ちの音と共にアシュトンは苦痛の声を漏らす。
 バアッシィ~ンッ!ビッダァァ~ンッ!バッアァ~ンッ!バアッジィ~ンッ!
「ひぃん・・!痛っ・・!痛あっ・・!やあっ・・!」
一打ごとにお尻に赤い手形が浮かび、それが幾重にも重なってアシュトンのお尻を赤く染めてゆく。
 「全く・・・お前は何を・・考えているんだ・・・・」
冷静な、だが怒っているのが明らかな声でディアスはお説教を始める。
バアシィ~ンッ!ビッダァァ~ンッ!バッアァ~ンッ!バッジィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!
 「ひぃん・・・。ごめんな・・さぁい・・・。だってぇ・・・どうしても・・・ディアスさんの・・・応援に・・行きた・・かった・・からぁ・・・」
ビッダァァァ~~~~~ンッッッッ!!!
「うわぁぁああああ!!!!」
思い切り叩かれ、アシュトンは背をのけ反らせて絶叫する。
 「馬鹿!だからってこんな無茶な真似をするんじゃない!!」
ディアスは冷静さをかなぐり捨てて思い切り叱りつける。
「いいか・・・。応援に来てくれた・・・お前の気持ちは・・確かに・・嬉しい・・・。だが・・・・病気を押して無理やり来たなど・・話は別だ!そんなことを・・して・・もっと大変なことになったら・・どうする気だ!前にも・・言っただろう!自分の身体は大事にしろと!そんな無茶をしてまで・・・来てもらっても・・・嬉しくは無い!却って・・心配で・・たまらないだけだ!!」
「ご・・ごめんな・・さぁぁい・・・」
心底からの反省の声に、ディアスは一旦お尻を叩く手を止める。
 「反省してるか?」
「し・・してるよぉ・・・。心配させて・・ごめんなさぁぁい・・」
「そうか。なら・・・・最後に思い切り厳しいお仕置きをするぞ。いいな?」
「う・・うん・・・」
アシュトンは頷くと、ほんのり赤くなっているお尻を叩きやすい位置にもってゆく。
それを見ると、ディアスは再び手を振り上げた。
 バアッジィィィィィ~~~~~~ンッッッッッ!!!!!
ビッダァァァァァァァ~~~~~~ンッッッッッ!!!!!
バッアァァァァァァァ~~~~~~ンッッッッッ!!!!!
ビダッアアアァァァ~~~~~~ンッッッッッ!!!!!!
ビバッジィィィィィ~~~~~~~ンッッッッッ!!!!!
「うわぁあああんんんん!!!痛ぁああいいいい!!!!ごめんなさぁぁぁいいい!!!!!!」
泣き叫びながらアシュトンが謝ると、ようやくディアスはお尻を叩く手を止めた。
 ディアスは手を止めると、アシュトンを抱き起こし、膝に座らせて抱きしめる。
「うっ・・うっ・・・痛ぁぁ・・・・」
「よしよし・・・。痛かっただろう・・・・」
ディアスは優しい声でそう言うと、アシュトンのお尻を撫でてやる。
 「すまん、痛い思いをさせて・・・。だが・・お前の事が・・・本当に大事で心配なんだ・・・。それだけは・・わかってくれ・・」
「うん・・。僕こそ・・無茶して、心配かけて・・・ごめんなさい・・・・」
「わかってくれればいい・・・」
「おぃ・・・いつまでそうやってグダグダと話しているのだ!!」
ルシフェルが苛立ちながら、二人に割って入る。
 「まさか・・・お前からも・・・お仕置きをするつもりか?」
ディアスはアシュトンを抱きしめながら、ハッとした表情で問いかける。
「当たり前だろう!お前とて今回のアシュトンが悪い子だったのは認めているのだろうが?」
「そ・・それは・・・」
ディアスは思わず言葉に詰まる。
 「だったらアシュトンを渡さぬか!二度とこんな真似させんように厳しくお仕置きしてやる!!」
「だが・・充分だろう?もうこれくらいで・・・」
「何をいうか!お前達がそうやって甘すぎるからまたアシュトンがお仕置きされるようなことをするのだろうが!!さっさと渡さんか!!」
「そうは・・いかん!!」
ディアスはそういうと片手でアシュトンを抱き抱えて剣を構える。
 「貴様!やる気か!?」
「これ以上・・・アシュトンを叩く気ならな・・・」
(ままま、マズイよ~~!?このままじゃ喧嘩になっちゃう・・・)
アシュトンは慌ててしまう。
 「ま・・待って!待ってよ、ディアスさん!」
アシュトンは必死に呼びかける。
「ディアスさん・・お願いだから・・・・ルシフェルのところに・・行かせて・・」
「アシュトン・・・。だが・・その・・お尻で・・・」
ディアスは心配でならないといった表情を浮かべる。
アシュトンのお尻は既に十分すぎるくらい真っ赤に染まってしまっている。
 普段、アシュトンにお仕置きをするなどとんでもないと思っている自分だって、怒ってこんなに叩いたのだ。
常日頃、アシュトンに容赦ないお仕置きをしているルシフェルなら、今回は相当なものになるだろう。
一週間はまともに座るのも辛いというような目には遭わせたくない。
 「いいんだ・・・・。ディアスさんの気持ちは嬉しいけど・・。でも・・・皆を心配させちゃったのは・・僕だから・・。だから・・・ちゃんと・・・ルシフェルにも謝りたいから・・・。だから・・・お願い・・・ディアスさん・・」
「わかった・・。お前が・・そこまで言うのなら・・・・」
ディアスはそういうと、アシュトンをルシフェルに引き渡す。
ルシフェルはアシュトンを抱きよせると、慣れた手つきで膝の上に載せ、膝を組んで赤く染まったお尻を突き上げる体勢を取らせる。
 「うぅう・・・・・」
覚悟はしていたが、それでもルシフェルの本気のお仕置きを示す行為に、アシュトンは思わず全身を震わせる。
 「貴様、何をしている?」
不意にルシフェルはディアスを睨みつけながら問いかける。
ディアスがアシュトンの傍に座ったかと思うと、アシュトンの手をしっかりと握りしめたからだ。
 「これくらい・・構わないだろう?アシュトン・・・俺がついているからな・・」
ルシフェルはムッと押し黙ったまま、ディアスを睨みつける。
だが、ディアスも一歩も引かずに睨み返す。
 「ふん・・。いいだろう・・。今回だけは・・・譲歩してやる・・・」
絶対にアシュトンの傍にいて、心を支えようというディアスの決意に折れたのか、ルシフェルはそう言うと、いつものようにパドルと鞭を用意する。
 「アシュトン・・・。今日は本気の本気で怒っているからな・・・。だから・・手でなど叩いてやらんからな。いいな?」
「は・・・はぃぃぃ・・・」
ルシフェルの言葉に、言葉を震わせつつアシュトンは返事をする。
「それと・・・本来ならお灸もするところだが・・・今日は地鶏剣士の分もあるからな。それだけは許してやる・・・。ただし・・・一番奥・・・蕾の部分を鞭で何度か叩くぞ。いいな?」
「わ・・わかった・・・よ・・・」
本当は怖くてたまらないが、悪かったのは自分自身と必死に言い聞かせて返事をする。
それを見てとると、ルシフェルはゆっくりとパドルを振り上げた。


 ビッダァァァ~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~!!!!
「うっ・・・わぁぁあああああんんんんんん!!!!!」
最初から容赦の無いパドルの嵐に、アシュトンは絶叫する。
 バアッジィィィ~~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!!!
 「わあああんっ!痛っ!痛ぁぁぁ!!痛いよぉぉぉ!!!」
アシュトンは両脚をバタつかせながら泣き叫ぶ。
「この・・・馬鹿者がぁぁぁ!!!!」
ルシフェルは怒りでゆでダコのように全身を真っ赤にしながらパドルを振り下ろす。
「病気を押してファンシティに行くだと!?何を考えているのだぁぁ!!」
額に青筋を浮かべながら、ルシフェルはお仕置きと同時にお説教をする。
 「ひぃん・・・。だ・・だってぇぇ・・。ディ・・ディアス・・さんの・・応援・・行きたかったぁぁ・・・んだよぉぉ・・・」
「それが理由になるかぁぁ!!あんな身体でいきなりいなくなる!!どれだけ心配したと思っているのだぁぁぁ!!」
「ごめんなさぁぁぁいいい!!二度としませぇぇんん!!」
「当たり前だぁぁぁ!!まだまだこんなものでは許さんっっ!!」
ルシフェルはそう叫ぶや、今度は鞭を取る。
 ビシイィィィィィィィィ!!!
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシィィィィィ!!!
「うわあああっっ!!うわぁぁぁんんんんん!!!!!」
既に真っ赤なお尻に蚯蚓腫れがこれでもかといわんばかりに刻みつけられ、アシュトンは両脚をバタつかせながら絶叫する。
 「くぅ・・・・・・」
その隣で、ディアスは苦しげな表情を浮かべる。
(覚悟は・・・していたとは・・・いえ・・見て・・いられん・・・)
アシュトンが受けている激しいお仕置きに、ディアスは口を挟みそうになる。
 (何を考えている!アシュトンは自分で、虐待魔からお仕置きを受けると決めたのだぞ!ここで・・幾ら・・かわいそうだからと・・・助け舟を出したら・・・アシュトンの決意を無にすることになるぞ!!)
折れそうになる自分の心にディアスは必死に言い聞かせる。
(頑張れ・・・アシュトン!俺も・・ついているぞ・・!!)
アシュトンの決意を無にしまいと、自身を必死に押さえつけつつ、ディアスは強くアシュトンの手を握りしめた。
 「ひぃ・・ひっひぃん・・・ふぅえぇえん・・・・」
アシュトンは小さな子供のように泣きじゃくっていた。
お尻は今やワインレッドどころか、青みがかってしまっている。
 「反省したか?アシュトン?」
ルシフェルは鞭を振るう手を一旦止めて尋ねる。
「して・・してる・・よぉぉ・・・。心配させて・・・ごめんなさぁぁい・・・。二度と・・しませぇぇん・・・・」
「反省はしているようだな・・。ならば・・最後に一発だけ・・・一番奥を叩くぞ。いいな?」
ルシフェルの言葉にアシュトンは黙って頷く。
それを見ると、再びルシフェルは鞭を振り下ろした。
 ビッダァァァ~~~~~~ンッッッッッ!!!!
「!!!!!!!!!!」
お尻の最奥部、もっとも敏感で弱い部分を思い切り叩かれ、アシュトンは声にならない悲鳴を上げる。
蕾への一撃を終えると、ようやくルシフェルは鞭を手放した。


 「うう・・痛ぁぁ・・」
「だ、大丈夫か!?沁みたのか?」
お尻に薬を塗りながら、ルシフェルは慌てて尋ねる。
「ちょ・・ちょっと・・。でも・・大丈夫だよ」
「そうか・・。ならばよかった・・・。おぃ!貴様!力の加減を間違えているのか!?アシュトンに痛い思いをさせおって!!」
アシュトンに優しい笑みを見せた直後、ルシフェルはガラリと変わった怖い顔で、ディアスにそう言いやる。
どっちもアシュトンの手当てを自分がやると一歩も譲らなかったため、二人で手当てをしているところだった。
 「それは貴様のせいだろう?パドルと鞭であんなにも叩いたからな。あれだけ叩けばどんな薬でも沁みて痛いのは当然だろう」
「何を言うか~。アシュトンが悪い子だったから躾けただけだろうが!そもそも貴様とてアシュトンを叩いただろうが!」
「だからといってここまで叩くのはやり過ぎだろう。この・・虐待魔・・・いや・・・虐待魔王の方がふさわしいか、お前には」
「『虐待魔王』だと!ふざけるなっ!その言葉、取り消さぬか~~!!!」
ルシフェルは思わずカッとなる。
お仕置きをするのは、アシュトンのことが何よりも愛おしくて大切に思っているからだ。
だから、虐待などと言われるのはルシフェルにとっては心外どころでは無かった。
 「ふん・・幾らでも言ってやろう・・・。虐待魔王・・」
だが、ディアスは不機嫌を隠さない表情でそう言いやる。
確かに今回の事ではディアスも怒っているし、大いに心配もさせられた。
だからこそお仕置きをしたし、愛すればこそお仕置きをするというルシフェルの気持ちもわからないわけではない。
とはいえ、『お兄さん』としては、アシュトンが泣き叫ぶ姿を見るのは辛いものがある。
その点は中々心の整理がつかず、それだけにルシフェルに対して色々と当たってしまうところもあった。
 「き~さ~ま~~っ!!やはり許せんっ!」
「それはこちらの台詞だ・・」
「わあ~~っ!ちょっと待って待って待ってってば~~~!!」
今にも自分のお仕置きを巡って喧嘩になりそうな二人を、慌ててアシュトンは止めに入る。
 「お願いだから・・・・喧嘩はしないでよ・・・。二人とも・・・僕の事・・・本当に大事に思ってくれてるのは・・嬉しいよ・・。でも・・だから・・・二人が喧嘩するのは・・・嫌だから・・・・」
そう言うアシュトンに、さすがに二人も何も言えなくなってしまう。
二人とも、互いに相手の顔を見やると、不機嫌そうな表情を浮かべてプイッと顔をそむけつつ、手当てを続けていた。


 ―完―

幽霊屋敷の冒険(SO2より:ルシ/アシュ&クロ/レオ、悪魔&神父パロ、失禁あり)



(SO2を題材にした二次創作で、悪魔&神父パロです。失禁もあります。許容出来る方のみご覧下さい)


 クロード達の住む街に通じる街道。
そこからやや外れたところに、その建物はあった。
かつては非常に立派な屋敷だったようだが、今やすっかり荒れ果て、誰も住んでいない廃屋と化しているのが明らかだった。
そんな廃屋敷の前に立つ二つの人影があった。
 「ふーん、ここがその屋敷?ただのボロ屋敷じゃない」
廃屋敷を見上げながら、レオンはそう呟く。
「ね・・ねぇ・・レオン・・。本当に・・やるつもり・・なの?」
オドオドしながら、アシュトンはレオンにそう尋ねる。
「当たり前じゃない。何のために、武器まで用意してわざわざやって来たと思ってるのさ、アシュトンお兄ちゃん?」
レオンは愛用の本をアシュトンに見せつけるようにし、同時にアシュトンが身につけている双剣を指差しながら尋ねる。
 「でも・・やっぱり・・危ないんじゃ・・ないかなぁ?や・・やめた・方が・・」
アシュトンはレオンを説得しようとする。
「何言ってるのさ!ここまでせっかく来たのに!」
「だけど・・危ないことは・・・それに・・クロード達だって心配するんじゃないかなぁ?」
「も~うっ!だったらいいよ!僕一人でやるから!!」
アシュトンの態度にじれたのか、レオンはそんなことを言う。
 「な、何言ってるの!こんなところにレオン一人を置いて帰るわけいかないよ!!」
「だったら協力してよ~。ねぇ~、いいでしょ~?」
レオンは作戦を切り替えたのか、アシュトンに甘えてみせる。
「わ・・わかったよ・・・。レオンがそう言うなら・・。それに・・・レオンを置いてくわけにも・・いかないから・・・」
諦めたような口調で、アシュトンはそう答える。
 「やった~~!!アシュトンお兄ちゃん大好き~~」
レオンは嬉しそうな表情でアシュトンに抱きつく。
「そうと決まれば善は急げだよ!お兄ちゃん!早く早く!」
レオンはリュックサックからカンテラを取り出しながらアシュトンを促す。
「はいはい。僕も行くから」
(どうしてこうなっちゃったんだろ・・・)
ため息をつきながらそう思いつつも、レオンを放っておくわけにもいかず、アシュトンはレオンと共に廃屋敷へと足を踏み入れた。


 「街道沿いの廃屋敷?」
「うん。アシュトンも聞いたことあるんじゃないかい?」
「確か、幽霊屋敷とかいう噂のあるところだっけ?」
「そうだよ。怪しい人影やら何やら見えるって噂があるところだよ」
「そこがどうかしたの?」
「うん。ただの噂だったらいいんだけど、浮浪者が勝手に入ったりしてるかもしれないし、かなり老朽化してて危ないかもしれないから、調べることになったんだよ」
「ふぅん。そうなんだ」
「子供が面白がって勝手に探検したりするかもしれないから、遊びに来る子達なんかにさりげなく注意しておいてくれるかい?」
「そうだね。危ないところに行かせるわけにもいかないからね」
「それじゃあ僕はまだ仕事があるから行くよ」
クロードがそう言って立ち去ったのと入れ替わりに、今度はルシフェルが入って来た。
 「あれ?どうしたの?ルシフェル?そんな怖い顔して?」
ルシフェルの表情に、アシュトンは怪訝な表情を浮かべる。
「アシュトン!」
「なっ、何?一体?」
突然、詰め寄られ、アシュトンは思わず驚く。
 「今の話は一体どういうことだ!?」
「え・・?今のって?」
「幽霊屋敷だ!」
「ああ、それがどうかした?」
「どうかしたではない!そんなところがあるなど、聞いておらんぞ!!」
「ま・・まぁ・・最近になってそういう噂が出たところだしねぇ・・・・」
「そんなことはいい!よいか!絶対にそんなところに行ってはいかんぞ!」
「何言ってるのさ、そんなところに行くわけないじゃないか?」
「そうか?あのいけすかない小僧が面白がってお前を巻き込んで一緒に行くかもしれんではないか~~~~!!!!!!!」
「あのねぇ、幾らレオンだってそんなことするわけないでしょ?とにかく、僕だって自分から近づく気なんか絶対にないから安心してよ」
「本当だな!?決してないと誓うか!?」
「本当だよ、ちゃんと約束するから」
アシュトンの言葉にようやくルシフェルはホッとした表情をみせると、やっと去っていった。
 (うぅ・・僕の馬鹿・・・。どうして・・・あんな約束しちゃったんだろう・・・)
屋敷の中に佇みながら、アシュトンは後悔の念にさいなまれていた。
ルシフェルの勢いに押された、約束をした次の日、いつもの通りレオンが遊びに来た。
ただ遊びに来るにしては、荷物の詰まったリュックサックを背負っていて、何だか変だと思っていたら、幽霊屋敷を探検して、その真相を明らかにしてみせるなどと言いだしたのだ。
当然、アシュトンはそんな危ない真似はしてはいけないと説得しようとしたが、レオンの決意を翻すどころか、逆におねだりをされて手伝う羽目になってしまったのだ。
 (うぅ・・・絶対・・怒られるよね・・・)
アシュトンは気持ちが沈んでくる。
例え何も無かったとしても、約束を破って屋敷に行ったというだけで、十分お仕置きの理由になる。
誤魔化す自信など無いから、絶対にバレるだろう。
帰ったら待っているだろうお仕置きに、思わず身体が震えてくる。
 (それにしても・・・本当に・・傷んでるなぁ・・・)
カンテラをグルリと一回りさせながら、アシュトンはそう思わずにはいられない。
かなり長い間風雨にさらされているせいか、床板は所々腐っていたり、中には穴が開いてしまっているところもあった。
 「お兄ちゃん~、そっち何か見つかった~?」
不意に階段の上から、レオンが声をかけてきた。
「ご、ごめん。ちょっと考え事してて・・・まだ・・どこも・・・」
「もぅ~っ!何やってんのさ~!何のために来たと思ってるの?」
「ご、ごめんね!ぼ、僕も手伝・・・うわあああっっっ!!!」
うっかり腐っていた床板に足を置いてしまったのか、ポッカリ穴が開いたかと思うや、地下室らしい部屋にアシュトンは転がり落ちてしまった。
 「痛ぁぁ・・・・」
落ちたと同時に、お尻を地下室の床にぶつけてしまい、アシュトンは顔を顰める。
「アシュトンお兄ちゃん!大丈夫!?」
慌てて穴まで駆けつけたレオンは、穴から眼下のアシュトンに呼びかけた。
 「だ、大丈夫・・。お尻・・打っちゃったけど・・え?」
アシュトンはレオンに答えつつ、何かを見つける。
「どうしたの?アシュトンお兄ちゃん?」
「レオンッ!地下に通じる階段があったらすぐに降りてきて!!」
「わ、わかった!!」
返事をすると、レオンは急いで地下へと向かった。


 「お兄ちゃん・・一体どうし・・・」
階段を見つけて降りて来たレオンは、部屋に入り、アシュトンの傍までやって来ると、絶句した。
 部屋の奥には、祭壇のようなものが置かれており、そこには禍々しく、邪悪な感じを漂わせる悪魔の像が安置されている。
しかも、供え物を置く台には、腐りかけた人の腕が置かれ、台には変色した血がこびりついていた。
 「な・・何・・これ・・?」
さすがにレオンも驚き、恐る恐る壁際の本棚に近づくと、一冊の本を取り出す。
開いてみれば、人を呪ったり魔物を呼び出すための儀式や呪文が書かれた、いわゆる黒魔術の本だった。
 「お兄ちゃん!これ見て!」
「これ・・黒魔術の・・・!!」
アシュトンもレオンが見せた本のおぞましい内容に絶句する。
まさかと思って二人は他にも調べてみる。
 「お兄ちゃん!アシュトンお兄ちゃん!」
不意にレオンが大声でアシュトンを呼ぶ。
アシュトンが駆けつけると、レオンが別の部屋を見つけていた。
 「どうしたの?レオン?」
「これ・・この中・・覗いてみて!!」
「え・・?どうし・・・」
レオンに言われて部屋の中を覗いたアシュトンは、衝撃のあまり、両手で口を押さえる。
室内は、人骨が幾つも散らばっていた。
いずれも新しい、ここ数日のうちのものらしく、無残にも砕かれた跡などを見れば、殺されたものだと容易に想像できた。
 「な・・ひ・・ひどい!何てこと・・・・」
無残な白骨にアシュトンは全身が震えてくる。
「レオンッ!早く出よう!クロード達に知らせなきゃ!!」
「う、うんっ!」
廃屋敷の恐ろしい真実に気づくや、二人はすぐにも逃げ出そうとする。
だが、そのとき、突然、モクモクとガスが噴き出した。
 「え・・うわあっ!!」
不意を突かれ、さすがに二人とも防ぐ暇も無くガスを吸ってしまう。
直後、二人はまるで石にでもなったかのように硬直してしまった。
 (しまった・・・これっ!?)
アシュトンは麻痺効果のあるガスだと気づいたが、既に後の祭り。
ガスが霧散すると同時に、ドアが開き、目だし穴を開けた頭巾を被った数人組が現れたかと思うと、二人を運び出していった。


 (何を・・する・・つもりなんだろう?)
廃屋敷からやや離れたところにある森の中で、麻痺状態のまま、アシュトンは恐る恐る頭巾の集団の様子を伺っていた。
二人とも、麻痺状態のまま、祭壇らしい人工の岩の上に載せられている。
 頭巾の男達は、悪魔の像を掲げ、異様な言語を繰り返し詠唱し続ける。
やがて、ブラックホールのようなものが現れたかと思うと、数体のモンスターが現れた。
(ま・・まさか・・!?)
アシュトンは素早く事態を察する。
モンスターへの生贄として二人を捧げるつもりなのだ。
 (な・・何とかしなきゃ!?)
必死になるアシュトン達だったが、悲しいかな、麻痺に冒され、指一本動かすことすらかなわない。
焦りと恐怖でドッと汗がにじみ出る中、ジリジリとモンスター達は祭壇に近づいてくる。
やがてモンスター達は祭壇の上に上がり、アシュトン達に顔を近づける。
 モンスターの生温かい息が顔にかかり、恐怖と嫌悪にアシュトンは顔を歪める。
このまま逃げることも抵抗することもできず、食べられてしまうのかと思ったそのときだった。
 「吼竜破っっっ!!!!」
「デモンズゲート!!」
突然、龍の形の闘気が飛びかかり、同時に空中に巨大な門が現れるや、死神が鎌を一振りし、モンスターや頭巾の集団を吹っ飛ばす。
 「そこまでだ!!」
声と共に現れたのはクロードとルシフェル。
「貴様ら・・・私のアシュトンに何をしとるか~~~~!!!!!!」
青筋を立てて激怒するや、ルシフェルは魔法でモンスターや頭巾連中を吹っ飛ばす。
同時にクロードが斬り込み、モンスター達や頭巾集団を倒してゆく。
ものの十分もしないうちに、全員倒されていた。
 頭巾の集団を後からかけつけて来た兵士たちに引き渡すと、クロード達は用意しておいた薬で二人の麻痺を回復する。
 「お・・お兄ちゃん~~」
「ルシフェル~~」
恐怖から解放された二人は、ホッとしてそれぞれの恋人に抱きついた。
「よしよし、もう大丈夫だよ」
「とにかく・・帰るぞ」
そういうと、それぞれ介抱するようにして帰っていった。


 寝室の床に正座させられた状態で、アシュトンとレオンはジッとルシフェル達の様子を伺っていた。
「さてと・・・・レオン・・」
「な・・何?」
クロードに呼びかけられ、レオンは思わずギクリとする。
 「お兄ちゃん、前に言ったはずだよね?あの屋敷は危ないかもしれないから絶対に近づいちゃダメだって」
「だ・・だって・・・お・・面白そうだから・・・探検してやろうって・・思った・・・だけだよ・・・」
「そんなの理由にならないだろう?その結果どうなったと思ってるんだい?悪い奴らに捕まって、モンスターの生贄にされるところだったじゃないか」
「うぅ・・・」
レオンがお説教されているのを尻目に、ルシフェルも口を開く。
 「アシュトン!」
「は・・はいっ!」
「言ったはずだぞ!危ないから絶対に近づいてはいかんと!」
「うぅう・・・ごめんなさい・・・」
「ごめんなさいではないわ!小僧の口車に乗ってノコノコ出かけおって!私やこの若造が駆けつけなかったらどうなったと思っているのだ!!」
反論できず、アシュトンはうな垂れてしまう。
 「アシュトン・・・こんなことを仕出かした以上・・・わかっているな?」
いつものように軽く膝を叩きながら、ルシフェルはアシュトンに呼びかける。
「は・・はぃぃぃ・・・・」
お仕置きは免れないと既に覚悟していたからか、アシュトンは素直に、ベッドの縁に座っているルシフェルのもとへゆくと、大人しく膝にうつ伏せになる。
アシュトンがうつ伏せになると、ルシフェルはいつものように慣れた手つきで神父服を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
同時に膝を組んで、お尻が突き上げられるようにした。
 「う・・うぅう・・」
これから待ち構えている、容赦の無い厳しいお仕置きを想像し、恐怖にアシュトンは身を震わせる。
そんなアシュトンを尻目に、ルシフェルはバッグを引き寄せると、愛用のパドルを取り出し、ヒタヒタと軽くパドルではたくようにアシュトンのお尻に触れる。
 「ひ・・!ひぃぃん・・!」
パドルの触れる感触にアシュトンは思わず目尻に涙を浮かべる。
「何を泣いている。まだ叩いてもおらんのだぞ?」
「だ・・だって・・怖いんだよぉぉ・・・」
アシュトンは涙を浮かべたまま振り返って答える。
 「それはお前が本当に悪い子だったからだろう?」
「そ・・そう・・だけど・・・」
「まぁいい。今日は今までのが嘘だったと思えるくらい叱ってやる。覚悟はいいな?」
「は・・はぃぃぃ・・・・」
恐ろしさに全身が震えるが、それでもアシュトンは返事をすると、両手でシーツをしっかりと掴み、素直にお尻を差し出す。
ルシフェルは左手でアシュトンの背中を押さえると、パドルを握った右手を振り上げた。
 「さぁ、何をしてるんだい?早くおいで」
一方、クロードもレオンにそう言う。
だが、レオンはジリジリと後ろに下がろうとしていた。
「こら、どうして来ないんだい?」
「い・・行くわけないじゃないか~!お尻叩かれるってわかってるのに~~!!」
往生際悪く、レオンはそんなことを言った。
 「レオン・・反省してないのかい?」
レオンの態度にクロードの表情が険しくなる。
「そうじゃないけど・・。お、お願いだからお尻叩くのはやめてよ~」
「ダメだよ。レオンが悪い子だったから叱られるんだろう?さぁ、早く来ないとお兄ちゃん怒るよ?」
「今だって怒ってるじゃんか~!絶対にヤダっっっ!!!」
レオンはそう叫ぶや、部屋から飛び出そうとする。
だが、それを察したクロードにあっという間に捕まってしまった。
 「ヤダッ!ヤダヤダッ!離してってば~~~~!!!」
「ダメだよ。どうやら全然反省してないみたいだね」
クロードはそう言いながら椅子に腰を降ろすとレオンをしっかりと押さえつけ、やはり慣れた手つきで、白衣の裾を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
 「レオン、素直に来れれば少しは手加減してあげようと思ってたけど、全然反省してないみたいだから、これを使うよ」
そう言うと、クロードはヘアブラシを取り出した。
「ヤダ!ヤダヤダやめてよ!お願いだから手で叩いてよ!」
「ダメだよ。お兄ちゃん本気で怒ってるからね」
そういうと、クロードはブラシを振り上げた。


 バアッジィィ~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!!
「うわっああぁぁぁああああんんんんん!!!!!!!」
嵐のようなパドルの連打にアシュトンは絶叫する。
 「この・・・馬鹿者がぁぁぁ!!!!!」
ビッダァァア~~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~!!!!!
 「痛ぁぁ!痛い痛い痛い痛い痛いよぉぉぉ!!!ルシフェルぅぅぅ!!!!」
アシュトンは両脚をバタつかせ、泣き叫ぶ。
「当たり前だろう!!お仕置きなのだから!!」
だが、ルシフェルは容赦なくアシュトンのお尻にパドルの嵐を叩き込んでゆく。
 「全く・・何を考えているのだ!あんな屋敷、いかにも怪しくて胡散臭いのは見てわかるだろうが!わざわざ行く馬鹿があるか!」
パドルの嵐を降らせながら、ルシフェルはお説教をする。
「それでも・・・まさかと思って・・心配だから・・・絶対に行くなと約束させたというのに・・・・」
「ひぃん・・!痛っ!痛ぁぁ!ひいいっ!ひぎいっ!ひっひぃんっ!」
ルシフェルがお尻を叩きながらお説教をする中、アシュトンは両脚をバタつかせ、悲鳴を上げながら身をよじる。
始まったばかりだというのに、もうお尻が赤く染め上がってしまっていた。
 「それなのに・・・小僧のオネダリに負けてノコノコ行きおって~~~!!!私が気づいて駆けつけなかったらどうなったと思っているのだ!!」
バアッジィィ~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~!!!!!
「ひぎぃぃぃんん!!ごめんなさいっ!ごめんなさぁぁーーいっっ!!!」
激しいお仕置きに、アシュトンは必死になって許しを乞う。
「馬鹿者がぁぁぁ!!『ごめんなさい』は当たり前だろうが!こんなものではまだまだ許さんぞ!」
そういうと、ルシフェルは今度は鞭を取り出す。
 ヒュウウンッッッ!!
ビシッ!ビシビシビシビシィッ!ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシィィィッッ!!
「ぎびひぃぃぃぃぃ!!!びひっぎびぃぃぃ!!!!」
パドルとは違った、鋭い切り裂くような痛みに、アシュトンは目を剥きそうになる。
 「ひぎぃぃ!やめてぇぇ!お願いだからやめてぇぇ!!ごめんなさぁぁいい!!」
アシュトンは全身を揺り動かし、両脚をバタつかせながら必死に謝る。
だが、完全にお仕置きモードに入っているルシフェルは容赦なく鞭を振り下ろし続けた。
 「ふぅぇぇん・・・ひぃぃん・・うわぁぁん・・・」
恥も外聞も無く、アシュトンは泣いていた。
お尻はワインレッドどころか、所々青みがかっており、表面は鞭による蚯蚓腫れで覆い尽くされている。
 「ごめん・・なさい・・本当に・・ごめんなさぁい・・・」
「反省しているのか?」
一旦、鞭を止めてルシフェルは尋ねる。
 「ひぃん・・。約束破って・・危ないことして・・・心配かけて・・・ごめんなさぁぁぁぁい・・・・・」
泣きじゃくりながらアシュトンは言う。
「反省はしているようだな・・・。ならば・・・最後に五回・・・ここを叩く。いいな?」
ルシフェルはお尻の割れ目の最奥部、蕾を軽くつつきながら言う。
アシュトンは黙って頷くと、ベッドのシーツをしっかりと握りしめる。
本当はもう叩かれたくないが、そんなことを言ってもルシフェルが許してくれるわけも無いし、そうしたら反省が足りないとさらに厳しくお仕置きされるのはわかっていた。
許してもらうためには、どんなに怖くても痛くても素直にお仕置きを受ける。
それしかなかった。
 ルシフェルは再び鞭を振り上げると、割れ目の奥、蕾を目がけて思い切り叩きつける。
バァシィィンンンンンッッッッッ!!!!
「うわっああああああんんんんんんんん!!!!」
非常に敏感なところを鞭で思い切り叩かれ、背をのけ反らせながらアシュトンは絶叫する。
ビダぁァァアアアンンンンンンンンン!!!!!
「ぎびぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
二打目が襲いかかり、再び絶叫が上がる。
さすがに耐えきれないのだろう、アシュトンは失禁してしまい、ルシフェルのローブがグッショリと濡れてしまった。
 ビバッジィィンンンンン!!!!バアッアアアアンッッッッ!!ビバッダァァアアアンッッッッッ!!!!
「いっぎゃああああ!!ごめんなさぁぁぁいいいいいいいい!!!!!!」
もっとも弱くて痛い部分を叩かれる苦痛の中、アシュトンは必死に許しを乞う。
ようやく鞭が止まると、アシュトンはグッタリしたまま、心底からの安堵の表情を浮かべた。


 バアッシィィ~~~ンッッッ!!
「うわあああんっ!痛ぁああ~~いっっ!!」
ブラシで思い切り叩かれ、レオンは悲鳴を上げた。
 バアッシィィ~ンッ!ビッダァァ~~ンッッ!バアッアァ~~ンッッ!ビバッダァァ~ンン~~ッッッ!!
「全く・・・何をやってるんだい・・・」
呆れたような口調でクロードはお説教を始める。
 ビッダァァ~~ンッ!バアッシィィ~~ンッッ!バッアァ~~~ンッ!バアッチィィ~~~~~ンッッ!!ビバッダァァ~~ンッッ!!
「やあっ!やああっ!痛っ!痛ぁぁいっっ!!」
ブラシが振り下ろされる中、レオンは悲鳴を上げる。
 「あの屋敷は危ないから行っちゃダメだって言っておいたじゃないか。それなのに何だって行くんだい?」
ブラシでレオンのお尻を少しずつ赤く染めてゆきながら、クロードはお説教をする。
「ひぃん・・!ちょ・・ちょっとした・・好奇心だよ~。そ・・それくらい・・・いいじゃ・・なぁい・・・」
「馬鹿!何を言ってるんだ!」
バアッジィィィィ~~~~ンッッッッッ!!!
「うわああああ!!」
思い切り叩かれ、レオンは悲鳴を上げる。
 「それでどうなったと思うんだい!悪い奴らに捕まって、生贄にされるところだったんだぞ!!ああいう場所にはどういう危険があるかわからないんだ!面白半分に行っていいところじゃない!!」
「だからってこんなに叩かなくたっていいじゃない!お兄ちゃんの馬鹿!」
レオンは振り返るや、クロードにそう叫んだ。
 「レオン・・何のつもりだい?」
クロードは一旦ブラシを振り下ろす手を止めて尋ねる。
「言った通りだよ!どうして僕がこんなにお尻叩かれなきゃいけないのさ!!」
「レオン・・・自分が悪いって思ってないのかい?」
「そうじゃないけど・・だからってお尻叩くことないじゃないか!どれだけ痛いかわかってるの!?お兄ちゃんの馬鹿っ!鬼っ!悪魔っ!いじめっ子っ!」
お尻を叩かれるのが相当不満なのだろう、レオンはクロード目がけてそんな言葉を投げつける。
 「レオン・・・本気で言ってるのかい?」
「だ・・だったら・・何だって言うのさ!児童虐待って訴えてやるから!!」
険しい表情になったクロードに、一瞬怯みそうになるも、レオンはそう言い放つ。
 「いい加減にしないか!!」
ビッダァァァ~~~~ンッッッ!!!
「うわあああんっっっ!!」
再び思い切り叩かれ、レオンは絶叫する。
 「どれだけ・・・心配したと思ってるんだ・・・!!それなのに・・・勝手なことばかり言って!そんな悪い子は絶対許さないからな!!」
そういうや、クロードは膝を組む。
 「やだっ!!やだやだっ!!これやだあぁ!!」
さらに厳しいお仕置きをされる体勢にレオンは必死になって叫ぶが、クロードはそれを無視してブラシを振り下ろした。
 バアッシィィ~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~!!!!
「うわあああ~~~~~んっっっっっ!!!」
ブラシの豪雨にレオンは絶叫し、両脚をバタつかせる。
 「お兄ちゃあああんん!!!ごめんなさぁぁいいい!!謝るからぁぁ!!許してよぉぉぉぉぉ!!!」
すっかり反抗的な態度をかなぐり捨ててレオンは謝る。
だが、クロードは冷ややかな声で、こう言いやった。
 「今さら謝ってもダメだよ。お兄ちゃん本当に怒ってるからね。これからうんと厳しくお仕置きしてあげるよ」
「そ・・・そんなぁぁぁ~~~~っっっっっ!!!!」
絶望のあまり、レオンが叫ぶのを尻目に、容赦なくブラシ打ちの嵐が、小さなお尻に襲いかかった。
 「あーん・・あーん・・痛いよぉぉ・・・あーんあーん・・・」
全身を震わせ、赤ちゃん返りしてしまったかのようにレオンは泣いていた。
お尻は今や全体が真っ赤に染め上がっている。
 「レオン・・・反省したかい?」
「あーん・・・してる・・してるよぉぉ・・・」
「もうああいう怪しいところに行かないって約束するかい?」
「するっ・・・するからっ!!だからもう叩かないで~~~!!!!」
レオンは必死になって許しを乞う。
「今度こそ反省したみたいだね・・・。それじゃあ・・・終わりだよ」
クロードはそういうと、パドルを手離した。


 「痛ぅ・・・痛ぁぁ・・」
「だ、大丈夫か?アシュトン?」
顔を顰めるアシュトンに心配そうな表情を浮かべつつ、ルシフェルはお尻に薬を塗ってやる。
 「だ・・大丈夫・・・。それより・・・心配させちゃって・・ごめんね・・」
「わかってくれればいいのだ。もう、馬鹿な真似はしてはいかんぞ?」
「うん・・・」
「とにかく今はゆっくり休むがいい。後の事は全て任せろ」
「ありがとう、ルシフェル」
アシュトンはそう言うと、静かに目を閉じた。
 「ちょ、ちょっと!もう少し優しくしてよ!沁みるってば!」
一方、レオンも同じようにクロードに薬を塗ってもらっていたが、こっちは思い切り文句を言う。
 「ごめんごめん、大丈夫かい?」
「もう!本当、気をつけてよね!ただでさえお尻が痛いんだからさ!」
レオンは頬を膨らませながら言う。
(それはレオンが悪い子だったからじゃないか・・・・)
そう突っ込んでやりたかったが、それを我慢すると、クロードはレオンを抱っこする。
 「レオン、また僕のところにお泊りするかい?」
「そんなの決まってるじゃないか~。今日は一杯叩いた分、お風呂も一緒に入ってもらうからね!」
クロードはレオンの言葉に思わず苦笑するが、愛情の籠った目を向けながら抱きしめた。


 ―完―

嘘と闘技場(SO2より:ルシ/アシュ、悪魔&神父パロ)



(SO2を題材にした二次創作で、ルシ/アシュ、悪魔&神父パロです。許容出来る方のみご覧下さい)


 ジュエリーショップのショーウィンドー、その前に買い物袋を提げたまま、アシュトンはジッと佇んでいた。
見つめているのはある腕輪。
(凄い・・なぁ・・・)
腕輪は非常に凝った装飾と貴重な宝石類を惜しげも無く駆使して造られている。
その素晴らしさにアシュトンは思わずため息をつく。
 「どうしたのだ?」
不意にルシフェルが声をかけてきた。
同じように買い物袋を提げている。
一緒に買い出しをしているところだった。
 「ああ、うん・・ちょっとね・・・」
「さっきからこの腕輪をジッと見つめているが・・・もしかして欲しいのか?だったら私が・・・・」
「ち、違うよっ!それに君に買ってもらうわけにはいかないよ!だって・・・君に似合うから・・・プレゼントしたいなぁ・・なんて・・でも・・」
そう言ってアシュトンは値札に視線を落とす。
その値段は、アシュトンの年収をも上回るものだった。
 「アシュトン~~~」
アシュトンの言葉にルシフェルは思わず抱きしめてしまう。
「ちょ・・く、苦しいよ!!」
あまりに強く抱きしめるものだから、アシュトンは苦しくなってしまう。
「す、すまん!だが・・お前があまりにも嬉しいことを言うからな・・・」
「でも・・高すぎて・・僕にはとても手が出せないし・・・」
「その気持ちだけで十分だ!無理などしてはいかんぞ!」
「う・・うん・・。そうだね・・・」
そんな会話を交わしながら、二人はその場を去っていった。
 (ああは言ってくれたけど・・・)
庭で愛用の双剣を振りながら、アシュトンはこの間のことを考えていた。
ルシフェルのことだ、自分がプレゼントをしたいという気持ちだけで、本当に嬉しいと思っているだろう。
でも、アシュトンにしてみれば、せっかくだからプレゼントしたい。
 (でも・・高すぎて・・・とても僕には手なんか出せないし・・・)
小さな教会の神父の収入などたかが知れている。
教会で使用するものだったならば、信者から寄付を募ることも出来るが、個人的なプレゼントのためにそんなことをするわけにはいかない。
 (でも・・どうしても・・あげたいし・・。何か・・一気に稼げるアルバイトでもないかなぁ・・・・・)
素振りをしながらアシュトンはそんなことを考える。
(ん・・?)
アシュトンは愛剣を見やりながら、あることに気づいた。
(そうだ・・・・。一つ・・・あったじゃないか!!)
アシュトンは一つだけ、高収入を得られる方法があることを思い出す。
(これを何回かすれば・・・あの腕輪が買える!!)
だが、同時に別の事も思い出す。
 (でも・・これやったら・・・絶対・・ルシフェル・・怒るよね・・)
アシュトンがやろうとしていることは、過保護で心配性なルシフェルにとって危険すぎて絶対にやらせたくない仕事だった。
だから、どんな事情があってもこれだけは絶対にやってはいけないと固く約束させられていた。
(やったの・・バレたら・・・絶対・・お尻叩かれちゃう・・。それどころか・・お灸もされちゃうかも・・・)
恐怖のあまりにアシュトンは思わずお尻に手を回す。
(でも・・でも・・・それでも・・・絶対に・・・プレゼントしたい!)
しかし、プレゼントをしたいという気持ちの方が強かった。
(決めた・・。お尻・・・壊れちゃうことになっても・・やろう!!)


 それからしばらく経ったある日・・・。
「むむ・・・?おかしいな?」
「あれ?どうしたのさ?」
アシュトンは難しい顔をしているルシフェルに、怪訝そうな顔で尋ねる。
 「うむ。アシュトン、双剣をどうかしたのか?」
「あ、あぁ、剣ね。あれなら店の方に出してあるんだよ。最近忙しくて手入れとか出来なかったから、しっかり手入れしてもらおうって思って」
「そうだったのか。いや、いつもあるはずの剣が無いのでおかしいと思ってな」
「し、心配させちゃったかな。あ、そうだ。ごめん、今日もまた出かけないといけないから」
「また・・・ヘルプに行くというのか?」
ルシフェルは不機嫌そうな表情になる。
 「う・・うん・・・。ごめんね・・・。昔すごくお世話になってた神父様だから・・どうしても断れなくて・・」
アシュトンはすまなそうに言う。
最近、昔世話になった神父が老齢と体調不良が原因で大変ということで、この街からかなり遠く離れた村の教会へヘルプに行っているとルシフェルに言っていたからだ。
おかげで、アシュトンは午前中早くから出かけてしまうし、帰りも遅くなる。
ルシフェルにとっては不機嫌そのものな事態がここ最近、続いていた。
 「お前の性格では・・・仕方が無いが・・。だが・・出来るだけ早く帰ってくるのだぞ」
「う・うん、本当にごめんね。そろそろ行かないと。それじゃあ行ってきます」
素早く支度を済ませると、アシュトンは慌てて教会を後にした。
 (よかった~。うまく誤魔化せた・・・)
街の郊外に出ると、アシュトンはホッとする。
(でも・・・大丈夫かなぁ・・疑ってるみたいだし・・・。それに・・)
不安と同時に、アシュトンは胸が痛みそうになる。
よその教会へ行くというのは嘘だったからだ。
プレゼントを買うためのバイトに行くために、嘘をついて出てきているのである。
そのことに対する罪悪感もあった。
 (でも・・あと・・もう少し・・今日・・行けば・・)
アシュトンがそう考えていると、呼び出したバーニィがやって来た。
「それじゃあ、ファンシティまでお願いね」
バーニィの背中に乗ると、アシュトンはそう告げた。


 「ハリケーンスラッシュ!!!」
斬り込みながらの高速回転と共に竜巻がモンスターに襲いかかる。
竜巻を食らうや、モンスターが消滅し、同時に観客席が湧く。
「見事、見事優勝です!!」
最後のモンスターが倒されるや、アナウンサーがそう告げる。
 (よかった~~~)
対戦相手のモンスターが倒れ、優勝宣言にアシュトンはホッとする。
ここはファンシティの闘技場。
アシュトンが腕輪を買うために考えたアルバイト、それはファンシティ闘技場に選手として出場することだった。
レベルの高い試合に出場すれば高額の優勝賞金が得られるからである。
それを数日かけて繰り返し、今日でとうとう目標金額に達したのである。
ちなみに、双剣は闘技場で戦っていることがばれないよう、あらかじめ会場の方に預けてあった。
 「それでは優勝賞品の授与です!!」
女性のスタッフが賞金と共に現れ、アシュトンの前にやってくる。
(よかった・・。これで・・)
賞金を受け取ろうとしたとき、突然、目の前が真っ暗になった。
(え・・?)
同時にアシュトンは崩れ落ちる。
突然、倒れた選手に、救護のスタッフが飛び出したりする中、アシュトンはそのまま意識を失った。


 目を覚ましたアシュトンの目に最初に飛び込んで来たのは、ルシフェルの顔だった。
「アシュトン!目が覚めたのか!!」
ルシフェルはそう叫ぶなり思い切り抱きしめる。
「る、ルシフェル!?ど、どうしてここに!?」
アシュトンは困惑する。
ここはファンシティ内の医務室。
教会で留守番しているはずのルシフェルがいることに驚いたのだ。
 「闘技場でお前が倒れたという連絡が入ったから急いで駆け付けたのだ!」
「そ・・そうだったんだ・・・」
「とにかく今はゆっくり休め」
「あ・・うん・・・」


 (うぅ・・・どうしよう・・・)
数時間後、一緒に教会に帰ってきたアシュトンは、オドオドしながらルシフェルの様子を伺っていた。
双剣とバッグを抱えているルシフェルはむっつりと押し黙っている。
怒っているのは明らかだった。
(僕の馬鹿!どうして倒れちゃったりしたんだよ~~~!!!)
アシュトンは不覚にも闘技場で倒れてしまった自分を責めたくなる。
こうなった以上、嘘をついて闘技場でお金を稼いでいたことがバレてしまう。
 「アシュトン・・・」
「は・・はいっ!!」
飛び上がりそうになりながら、アシュトンは返事をする。
「どういうことだ?昔世話になった神父の手伝いのために出かけると聞いていたが?」
「そ・・それは・・・」
「それがどうしてファンシティの闘技場に出場していたのだ!!」
「ご・・ごめんなさいっ!!こ・・この前・・見つけた腕輪・・。あれ・・・どうしても、買って・・・プレゼントしたかったんだよぉぉ・・。でも・・・凄い高いから・・・・」
「そういうわけか・・・。だが、アシュトン。以前に約束させたはずだぞ?闘技大会など危ないから絶対に出てはいかんと!!」
「ご・・ごめん・・なさい・・・」
「それだけではない・・・。お前が倒れたなどというから・・出場記録を調べてみたが・・・一日に何試合もたて続けに出ているではないか!!」
「だ・・だって・・・早いうちに・・お金・・溜めたかったし・・・」
「馬鹿者ぉ!幾ら体力自慢でも何試合もたて続けに出れば持つわけがなかろう!しかもそれを連日続けおって!そんなことをすれば倒れるのは当たり前だろう!!」
思い切り怒鳴られてしまい、アシュトンはシュンとなってしまう。
 「しかも・・・そのために私に毎日のように嘘をついていたな・・」
「うぅうぅ・・。本当に・・・ごめんなさい・・・」
「ごめんなさいではない!わかっているな?」
ルシフェルは長椅子の一つに腰を降ろし、提げていたバッグやアシュトンの双剣を脇に置くと、膝を叩いてお仕置きの合図をする。
それを見ると、恐怖に顔から血の気が引きつつも、アシュトンは長椅子に上半身を預けるようにして、大人しく膝にうつ伏せになった。
 アシュトンが膝の上に載ると、ルシフェルは膝を組む。
おかげで、アシュトンはお尻を突き上げる体勢になった。
(や、やっぱりぃ~~~!!!!)
本気で怒っていることを示す行動にアシュトンは全身が震えてくる。
ルシフェルはそんなアシュトンを尻目に、いつものように上着を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
 「アシュトン・・・」
「は・・はいっっ!!」
アシュトンは飛び上がりそうになりながら返事をする。
「今日は・・今日は・・絶対に許さん・・。手でなど叩いてやらんからな・・。覚悟するがいい・・・」
「ひ・・ひぃぃぃぃ!!!!!」
最初から道具での厳しいお仕置きを宣告され、アシュトンは悲鳴に近い声を上げる。
そんなアシュトンを尻目に、ルシフェルは傍に置いたバッグから愛用のパドルを取り出した。
しっかりとアシュトンを押さえると、ゆっくりとパドルを振り上げた。


 ビィッダァァ~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~!!!!
「うわっ・・うわぁぁぁぁんんんんんんん!!!!!!」
最初から容赦の無いパドル打ちの嵐に、アシュトンは絶叫する。
「この・・・馬鹿者がぁぁぁぁ!!!!」
最初から怒りに駆られた声を上げながら、ルシフェルはパドルでお尻を乱打する。
 バアッジィィ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~!!!!!!!
「うわぁぁあああんんん!!痛いっ!痛いよぉぉぉ!!!ルシフェルぅぅぅ!!!」
あまりの痛さにとても耐えることなどできない。
アシュトンは両脚をバタつかせながら、ルシフェルに必死に訴えかける。
 「当たり前だろう!!お仕置きなのだから!!」
だが、ルシフェルは非情にもアシュトンにそう言いやると、パドルを雨あられのように振り下ろした。
 「ひぎぃんっ!ひっひぃんっ!痛っ!痛ぁぁぁ!!お尻痛いぃぃぃぃぃ!!!!!!」
極度の苦痛に、プライドなどに構っている余裕などなかった。
アシュトンは小さな子供のように喚き叫ぶ。
 「この馬鹿者がぁぁぁぁ!!!危険だから絶対に闘技場になど出場するなとあれだけ厳しく言っておいただろうが!!!」
激しいパドル打ちを叩きつけながら、ルシフェルはお説教を開始する。
闘技場はその名の通り戦いの場。
過保護で心配性なルシフェルにとって、かすり傷一つですら、アシュトンが傷つくことは耐えがたい。
そんなルシフェルにしてみれば、闘技場など絶対に参加させるわけにはいかなかった。
だから、それこそお仕置きをチラつかせて脅してでも、絶対に出場しないと約束させていたのである。
 バアッジィィィ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~!!!!!!
「それなのに・・・!剣が無いからおかしいなどと思っていたら・・・よそに隠して私の目を盗んで出場しておったとは!!」
ルシフェルは怒りに燃えながらパドルを叩きつける。
既にアシュトンのお尻は濃い赤に染まっていた。
だが、ルシフェルの怒りは収まること無く、容赦なくアシュトンのお尻にパドルを叩きつける。
 「しかも・・・何試合も一日に申し込んで連続出場だと!馬鹿者っ!そんなことをすれば過労で倒れるに決まっているだろうがぁぁぁ!!!!!!!」
試合に出場して危険な目に自身をさらしたのみならず、何試合も連続で出るなど、そんなことをすれば過労になってしまう。
 「おまけに・・・嘘をついて騙すことまでしおって~~~!!!そんな悪い子は絶対に許さぁぁぁんんんんん!!!!」
バアッジィィ~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~!!!!!!!
 「うわぁぁぁんんん!!ど、どうしても・・・プレゼントしたかったんだってばぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
アシュトンは必死になって叫ぶ。
「馬鹿者ぉぉぉぉぉ!!!」
だが、ルシフェルはそう叫ぶと、思い切りパドルをお尻に叩きつけた。
「うっわあああああんんんん!!!!」」
強烈なパドル打ちに、アシュトンは絶叫する。
 「アシュトン!だからといってどんな無茶な真似をやっていいとでも言うのか!!」
「そ・・そうじゃ・・・」
「お前が闘技大会に出ているなどと知って、どれだけ驚いたと思っている!自分の身体を危険にさらしたり、無茶な出場をして挙句の果てに倒れるなど!そんなことをして稼いだ金で私が喜ぶとでも思うのか!?」
「そ・・それは・・・・」
アシュトンは反論できずに尻すぼみな声になってしまう。
「こんなにも・・・こんなにも・・・心配かけおって・・!!そんな子は・・・こっちでも叱ってやる!!!」
パドルに代わって取りだしたのは鞭。
鞭を手にするや、再びルシフェルは狂ったように振り下ろした。
 ヒュウンッッッッ!!
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシィィィィ!!!
「うぎゃあああああああああ!!!!!」
切り裂くような鋭い痛みに、アシュトンは再び絶叫する。
 「うわあああんん!!!ごめんなさぁぁぁいいいい!!!許してぇぇぇぇぇ!!!!!」
絶叫しながら許しを乞うアシュトンだが、ルシフェルの怒りはまだまだおさまらない。
「何を言うか~~!!!こんなの・・・序の口だ!!」
「そんな~~~~~!!!!」
絶望の声が上がる中、鞭の鋭い音が礼拝堂に響きわたった。


 「うぇ・・うぇぇん・・。ごめん・・・ごめんなさぁぁい・・・」
アシュトンは泣きながら必死に謝る。
あまりに暴れたために、神父服は汗でグッショリと全体が濡れてしまっていた。
お尻はワインレッドどころか、青みがかってしまっており、表面は畑の畝のようになってしまっている。
 「アシュトン・・・・反省したか?」
鞭を振るう手を止め、ルシフェルは尋ねる。
「した・・してるよぉぉ・・・。約束破って・・・嘘ついて・・・それで倒れたりして・・・心配させて・・・ごめんなさぁぁい・・・・」
アシュトンは必死になって謝る。
「反省してるようだな・・・」
ルシフェルはそういうと、鞭を手放し、アシュトンを抱きあげると、膝に座らせた。
 「アシュトン・・・。お前の気持ち・・私だって嬉しいぞ、本当は・・・。だがな・・・。幾ら死にはしないと言っても・・・・実戦と変わらぬ危険があるのはお前とてわかっているだろう?」
「う・・うん・・・」
「神父とはいえ・・・腕に覚えの剣士なお前ならば、確かに闘技場でも優勝できるだろう。だがな・・・万が一ということもある・・。それに・・いかな理由であれ・・お前が危険なことの中に身を投じることが・・・お前を大切に思う者達をどれだけ心配させるか、わかっているか?それに・・・過労で倒れるほど試合に出場するなど・・・・」
「色々と心配させちゃったんだね・・ごめん・・・」
「わかってくれればいいのだ。もう・・・二度としないな?」
「うん・・・ちゃんと・・約束するよ・・・」


 それから数日後・・・。
「あ・・あの・・ルシフェル・・・」
「何だ?」
「こ・・これ・・受け取ってくれる?」
そう言ってアシュトンは、ラッピングされた箱を差し出す。
受け取ったルシフェルが開けてみると、入っていたのは例の腕輪。
 「これか・・・」
「うん・・。お尻も治ったから・・・さっき・・・買って来たんだ。ど・・どうかな?気に入ってくれた?」
「お前が、過労で倒れたり、私にお仕置きされてまでプレゼントしてくれようとしたものではないか!気に入るどころか・・・幸せすぎて死ぬかと思っているのだぞ!!」
「も~、大袈裟すぎるよ、ルシフェルってば」
「自分の気持ちを素直に言っただけではないか。おお、そうだ。実は私からもプレゼントがあるのだ!」
「え!?本当!?」
「ああ。ちょっと待っていろ。おぃ!早く持って来んか!」
ルシフェルの命令と共に、獣人風のモンスターが何かを担いで現れた。
モンスターが持っているのは人一人は入れそうな大きさの樽。
 「ど、どうしたのこれ!?」
目の前に置かれた樽に、アシュトンは目を輝かせる。
「うむ。お前がプレゼントをしようとしてくれていたと知ってな・・。私もお返しにプレゼントしたいと思ったのだ。原料のレベルから厳選し、私自らの手で作り上げた樽だ」
「えっ!この樽君が造ったの!?」
「そうだ!素晴らしい出来栄えだろう!」
ルシフェルは自信満々で言う。
ルシフェルお手製樽は、最高級の職人によるものにも負けない品質だったからだ。
 「ありがと~~~!!!大切にするよ~~!!」
アシュトンは嬉しさのあまり抱きつく。
「ふふふ。そう言ってもらえて造った甲斐があったというものだ」
ルシフェルは幸せ満点と言いたげな表情を浮かべながら、そう言った。


 ―完―

ボーマン先生のルシアシュ語り(SO2より:ルシ/アシュ、悪魔&神父パロ)



(SO2を題材にした二次創作で、ルシアシュ悪魔&神父パロです。許容出来る方のみご覧下さい)


 はあ~っ・・・。今日も平和そうだなぁ・・。
おっ!こんちはってところかな?
まぁ知ってる奴も多いから、何を今さらって感じだろうが、一応自己紹介しとくな。
俺はボーマン・ジーン、ある街で診療所&薬局をやってる、医者&薬剤師だ。
 ん?何で俺が話してるんだ?アシュトンやレオンに替われって?
おぃおぃ、そんなこと言うなって。
そりゃあこんなもっさい野郎の語りなんて聞きたくないだろうよな、悔しいけど。
世のご婦人方は俺よりディアスやアシュトン、あの悪魔みたいな美形連中の方が好きだろうからなぁ。
ってこのままじゃ話が脱線しっ放しだな。
まあとにかく、今日は何で俺がこんな話してるかっていうとな、俺の目から見た、アシュトンとあの悪魔についてのことを話せっていうことなんだよ。
まぁとにかく・・・そうだなぁ・・・何日か前の日のことでも話すとするかねぇ・・。


 その日も、いつもとそんな変わらない日だったねぇ。
いつもみたいにうちに来る患者をその日も診てたんだよ。
いい陽気で平和だなぁと思ってたんだが・・・そのうち何だか待合室の方が慌ただしくなってきたんだ。
何だと思ったら、聞き覚えのある声がギャンギャン叫んで、患者やスタッフの怯えたような声まで聞こえてきたんだよ。
これでもうすぐにわかったよ、厄介な奴が来たなって。
 いきなり乱暴に診察室のドアが開いたかと思うと、案の定、ズカズカと入り込んできたんだよ。
そう、俺の話を聞いてるお前さん方にはお馴染みの、あの悪魔、ルシフェルさ。
 入って来るなり、ちょうど俺が診てた患者は、若いお姉ちゃんだったんだがな、まぁ結婚してなきゃあ俺が口説きたいくらいの美人だったよ。
ってここはオフレコな、ニーネにバレたら殺されるからな。
 あの悪魔・・・ディアスばりに顔はいいからな、入って来るなり、診察してた患者が一瞬で目を奪われてポーッとしてたよ。
悔しくなるよなぁ、一目見ただけで世のお姉様方やご婦人方のハートを持っていっちまうんだからなぁ。
こういうときは美形連中を恨みたくなるねぇ。
まぁもっとも・・あいつの方は患者なんか目もくれてなかったね。
あの悪魔、知っての通り凄まじいアシュトンバカだからな。
「おぃ・・・。何だその嫌そうな顔は・・」
俺の顔を見るなり、あいつはムッとしながらそう言ったな、確か。
まあ自分では気づかなかったが、露骨に嫌そうな顔をしてたみたいだな。
そうなるのも無理は無いんだがな、あの悪魔のやってることを考えればな。
 あの悪魔が俺のところに来る理由はたった一つ・・・すぐに想像はついたんだが、それでも一応尋ねたよ。
「何の用だってね?」
そうしたらあいつはこう言ったよ。
 「ふん!そんなこと決まっているだろう!貴様には学習能力が無いのか!?さっさと往診鞄を用意して教会まで来い!!」
最初からわかりきっちゃいたんだけどな、さすがにムッとするな。
こっちは患者を診てるんだよ、普通だったら患者を診てからにしないとな。
だけど、あいつにはそういうのは関係無いんだよ、まあ俺の話聞いてくれてるお前さん方の方がよくわかってるだろうからな。
 「そういうわけにはいかねえって。まだ患者診てるんだしな」
無駄なのは分かりきってたが、やっぱりこれくらいは言わねえとだし、ていうか言ってやりたかったよ。
ん?そうしたらどうなったって?
そりゃあ決まってるよ、あの悪魔、滅茶苦茶癇癪起こしたよ。
「ええい!つべこべ言わずにさっさと言う通りにせんか!建物ごと全て吹っ飛ばしてくれるぞ!!」
そんな恐ろしいこと言いながら、手に呪紋の光浮かべたんだよ、あいつ。
こうなりゃ俺だって逆らうわけにはいかない。
患者も驚いて、慌てて逃げだしちまったよ、もちろん待合室にいた全員もな。
ああ・・・今思い出しても・・・腹が立ちそうになってくるな。
あの悪魔が押しかけてきて、俺を往診に連れ出そうとするたんびに、患者が驚いて逃げるからなぁ。
そうなるとその後は一日閑古鳥状態になっちまうんだよ・・・。
おかげで結構大変なんだよな・・。
まぁそれはとにかく・・・こうなったらあいつの望み通りにしてやるしかないからな、往診鞄とか用意して、奴と一緒に教会に行ったよ。
 「ええい!何を愚図愚図している!?さっさとせんか!こうしてる間にもアシュトンがぁぁぁ~~~~!!!!!」
俺が準備してるのを見ながら、イライラしながらそう叫んでたよ。
あんまりにもイライラしてるからさ、思わずそんなにイラついてると脳卒中にでもなるぞ。カルシウム不足なんじゃねえのか?とか言ってやろうかと思ったよ。
まぁそんなこと言わなかったけどな。
あいつにそんな冗談は通じないからな、特にアシュトンが絡むときは。
そんなことしたら・・・確か『滅びの風』とか言うんだったか?あいつの最強技であの世まで吹っ飛ばされるだろうからな。


 早くしろ早くしろとせっつかれながら教会に行ってみたら、案の定アシュトンが具合悪そうな感じでベッドに寝てたんだよ。
まぁアシュトンに何かあったのは想像ついたよ、あいつが俺を呼ぶのは、アシュトンに何かあるときだけだからな。
 「あああ~~!?大丈夫か!?アシュトンっ!?」
具合悪そうに寝てるアシュトンを見ると、あいつ、居てもたってもいられないって状態になったよ。
「もうすぐ、もうすぐだぞ!スケベ医者を連れてきたからな!」
そういうあいつの顔は、本当にアシュトンのことが心配でたまらないって感じだな。
まああいつの溺愛ぶりは今に始まったことじゃないけどな。
 まあとにかく、患者を目の前にしたら、俺もやることはちゃんとやらないとな。
往診鞄から聴診器とか取り出して、診察を始めたよ。
まぁ、それは別にいいんだがな・・・。
「おぃ!どうなのだ!?まさか悪い病気にでも罹ったのではあるまいな!!」
じれったそうな顔しながら、しつこく隣でそんなこと叫びまくるもんだから、診察どころじゃないんだよ。
 「おぃ・・・静かにしろよ。お前が傍でギャーギャー叫んでたら診察なんかまともに出来ないだろ。少しは落ち着けって」
「馬鹿者がぁぁぁ!!これが落ち着いていられるかぁぁ!?貴様、アシュトンが可愛くないのかぁぁ!!」
落ち着かせようとしたら、あの悪魔、逆ギレなんかするからたまんないってな。
この街のお姉さま方やご婦人方の中には、教会の不思議な間借り人ことこの悪魔のことを、クールな感じでカッコいいなんて思ってるのもいるそうだが、こいつの本当の姿を見せてやりたいよ。
 「あのなぁ、お前が心配なのはわかるけどな。お前が騒いだってアシュトンがよくなるわけじゃあないだろうが?」
「く・・・」
「それよりアシュトンが心配だったら替えのタオルとか、水とか用意してやれよ。そっちの方がズッとアシュトンのためになるだろうが」
「ぐ・・ぐぬぅぅ・・!や・・やればいいのだろうが・・・!だが・・誤診でもしたら許さんぞ!!」
そう言い捨てると、ようやく出ていったよ。
ホッとしながら、俺は診察を再開したよ。
 まあどうやらそんな大したやつじゃなかったよ、診察しながら、色々と聞き出してもみたんだが、春の大事な礼拝とか祝祭の準備なんかで色々忙しかったみたいでな。
それで、起きてる間だけじゃ無理だったらしいんで、あの悪魔の目を盗んで、こっそり徹夜とかしてたんだと。
連日徹夜で作業してたもんだから、無理が祟って倒れちまったみたいだな。
まあそれだから、ゆっくり休めば治るって言ってやったよ。
そうしたらアシュトンはホッとしてたね。
同時に、あの悪魔も戻ってきたよ。
 「貴様!?どうなのだ!?」
入って来るなり、いきなり聞いてきたよ。
心配なのはわかるけどな、だからって大声はやめろって。
とにかく一旦あいつを部屋の外に連れ出して、診察結果を教えてやったよ。
過労で倒れただけだ、しばらくしっかり休めば治るって言ったら、あいつ、ようやく表情が和らいで、ホッとしてたよ。
よっぽど心配だったんだろうなぁ。
 だが、その後、すぐに世にも恐ろしい顔になったな、こっそり徹夜して作業してたって話聞いたらな。
「何だと!?そんなことをしていたのか!!あれだけ徹夜など絶対にいかんといつも口を酸っぱくして言っているというのに~~~!!!???」
そう言ってるあいつは何だか全身から炎が燃え盛ってるように見えたよ。
「言いつけを破った上に、こそこそ隠れてばれないように徹夜だと!そんな悪い子に育てた覚えは絶対にないぞ!」
怒りながらそんなこと言ってたなぁ。
っていうかアシュトンだってお前に育てられた覚えはねえだろうよ。
だいたい『そんな子に育てた覚えは無い』って言葉は、俺やディアスが使うべき言葉だろうが。
あいつが使う言葉じゃねえだろ。
まあ診察は終わったし、薬もあらかじめ用意しておいた分で大丈夫そうだったから、取りあえずその日は帰ったよ。
だが、帰りながらも、アシュトンにご愁傷様と言いたくなりそうだったな。
あの悪魔、俺の診察結果を聞いたら滅茶苦茶に怒ってたからな。
無事に治った後は、絶対に泣かされるだろうからな、たっぷりとケツ叩かれて。


 それから二、三日くらいして、またあの悪魔に半ば強引に連れてかれて教会へ往診に行ったよ。
もちろん、アシュトンの診察にな。
まぁ過労で倒れたんで、病気とかじゃなかったからな。
治るのも早かったな。
まぁあいつが俺に往診させたのはアシュトンのことが心配なのもあるんだろうが、別の理由もあっただろうからな。
もう大丈夫、しっかり治ってるってお墨付きが欲しかったんだよ。
 案の定、もう大丈夫だって俺が太鼓判押したら、あの悪魔、雰囲気がガラリと変わったからな。
「ならばよかった・・さて・・・アシュトン・・・この馬鹿者がぁぁぁ!!!!」
思い切り叱られて、さすがにアシュトンもシュンとなっちまってたなぁ、見ててちょっとかわいそうになるくらいに。
 「うぅ・・。ごめんなさい・・・」
「『ごめんなさい』ではない!突然倒れてどれほど心配したと思っている!?それに・・・どうやら私の言いつけを守っていなかったようだな?」
「あ・・あぅぅ・・・」
あいつのいう一言一言に、怯えたみたいな顔したよ、アシュトンは。
無理も無いんだろうがな。
さすがに、俺も気を利かせたつもりじゃあないけど、部屋から出てったよ。
とはいえ、ドアの前に陣取って、あいつがやるはずのお仕置きの様子を見てたけどな。
 そりゃあ、いつもはそんな覗きなんてやらないからな。
でもまぁ、お前さん方が一番聞きたいのは、あいつとアシュトンのお仕置きのことだろ?
そうなりゃ見るしかないからなぁ。
 とにかく、ドアの隙間からこっそり様子を見てたんだが、まぁかわいそうなくらいシュンとしてるよ、無理も無いけどな。
怖くてたまらないから、しばらくは立ったまま顔色伺ってたけど、あの悪魔が許すわけもねえし、それより心配かけたって自分でもわかってるから、素直に膝にうつ伏せになったんだよ。
いつも思うけど、本当にスゴイし、エライよ、アシュトンは。
 考えてみろよ、アシュトンって二十歳(はたち)だぜ?
幾ら自分が悪いって思ってたって、尻叩きだなんて言われて、はいそうですかって素直に受けられやしねえだろ?
抵抗するとか逃げるとかしたっておかしくねえよ。
それなのに、いつも素直にお尻出せるんだからなぁ、本当にいい子だよ。
 まあ素直に膝に載ったけど、やっぱり怖いんだろうな、震えてるよ。
でもあいつは、それにはお構いなしに、慣れた手つきで、神父服の裾を捲り上げて、下着ごとズボンも降ろしたよ。
当然、アシュトンのお尻はむき出しさ。
 それにしても・・なんつうか・・・綺麗なお尻だよなぁ。
形もいいし、雪みたいに白いし。
まあアシュトン自身、本当に男かって思うほどキレイだけどな。
ああ見えても男だから身長180センチあるんだが、そうとは思えないくらいすらりとした感じだしな。
ああヤバ・・・何か妙な気持ちになりそうだ・・ってこんなこと言ったらニーネに殺される!
 とにかくそれは置いといて・・・アシュトンの尻を出したかと思ったら、今度は膝を組んだよ、あいつ・・・。
やっぱりかなり怒ってんだなぁ、膝を組むと叩かれる方にとっちゃ凄く痛く感じるからな、それだけお仕置きがきつくなるんだよ。
まあお前さん方にはもうわかってるだろうけどな。
今にも泣き出しそうな表情してるけど、無理も無いな。
でも、それでも逃げ出したりしないのが本当に凄いな、レオンだったら間違いなく逃げるか暴れるところだろうしな。
 「では行くぞ・・・。覚悟はいいな?」
アシュトンを左手で押さえると、あの悪魔、そんなこと言ったな。
覚悟は決めてるから、アシュトンも素直に頷いて、ベッドのシーツ掴んだよ。
それを見ると、あいつはゆっくりと右手を振り上げたんだ。


 ビッダァァァァ~~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~ッッッッッ!!!!
「うっわあああああんんんんんんん!!!!!!!!」
最初に滅茶苦茶痛そうな一発を叩き込んだかと思うと、次は平手の嵐だ。
神父とはいえ、ディアスにも負けず劣らずの剣士だから、アシュトンって痛みには強いんだよ、本当は。
でも、あんな平手打ちの嵐叩き込まれたら、耐えられるわけがない。
大泣きするのも無理は無いって。
っていうか、まだお仕置きが始まったばかりだってのに、もう尻全体が薄めの赤に染まってんだぞ。
優男に見えるけど、悪魔だから人間なんかよりずっと力があるのかもしれねえな。
 「この・・・馬鹿者がぁぁぁぁ!!!!」
ビッダアァ~~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~!!!
「うわぁぁぁあんんんん!!!痛ぁぁぁぁいいいいい!!!!!!」
うっわぁ・・・すっげぇな・・。
アシュトン、大泣きな上に両脚バタつかせてるじゃんかよ。
っていうか、あの野郎、幾ら怒ってるからって、感情的になりすぎだろうが。
あっという間に手形が何重にも重なって尻がますます赤くなっていくな。
 「こっそり私に隠れて徹夜だとぉぉぉ!!!??何を考えているのだぁぁ!!」
「ひぃん・・。だ・・だってぇ~~。どうしてもやっとかなきゃいけなかったんだよぉぉぉぉぉ・・・」
「それでどうなったぁぁ!?体調を崩して倒れてしまったではないかぁぁ!!どれだけ心配したと思っているのだぁぁぁ!!??」
さすがに容赦ねぇなぁ、フルスロットルって感じで叩きまくってるよ。
俺だって格闘には自信があるから何十発でも打てるけどよ、ああはそういかねえよ。
まあそれより何より、マジギレって感じだな。
見てるこっちにも鬼気迫るってやつだ。
 まああいつの気持ちもわからなくはないけどな。
倒れたりすりゃあ誰だって心配するしな。
でもよぉ、だからっつってやり過ぎじゃねえか?
もう尻、ワインレッドになっちまってるぞ。
 「しかも・・しかも・・・いつもいつも徹夜などしてはいかんとあれほど厳しく言っているだろう!何のために誓いまでさせたと思っているのだ!?」
そうなんだよなぁ、もともとあいつがどうして魔界くんだりからアシュトンのところに来たかっていうと、アシュトンの生活態度を正すためなんだよなぁ。
アシュトンは確かに真面目でイイ奴なんだが、それだけに前は結構徹夜して仕事とかってことも多かったからなぁ。
それを見かねて、まぁベタぼれしたからってこともあるんだが、押しかけ居候になったからなぁ。
だから、生活態度のことには滅茶苦茶厳しいんだよな、あいつ。
 「ひぃぃぃんっっっ!!ごめんなさぁぁいいいい!!!反省してるからぁぁ!!許してぇぇぇ!!ごめんなさぁぁいいい!!!」
両脚バタつかせながら必死になって謝ってんなぁ、まあ無理もねえけど。
もう尻は倍くらい腫れ上がってるしなぁ、あいつも勘弁してやりゃあいいのによ。
 「馬鹿者ぉぉぉぉ!!!『ごめんなさい』は当たり前だろうが!今日は本気で怒っているのだぞ!」
そう叫びながら、何か取りだしたな。
って・・あいつの愛用の特製パドルに鞭かよ。
あっちゃあ~、こりゃあ地獄だわ。
 案の定、アシュトン顔から血の気が引いてるよ。
まぁあいつが膝組んだ時点で、平手のお仕置きだけで許してやるとは思ってなかったけどな。
パドルだけじゃなくて鞭とはな、こりゃあマジギレどころじゃないな。
 ビッダァァァ~~~~ンッッッッ!!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~!!!
「うわあああんっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい~~~~~~~!!!!!!!!」
あらら・・・・もう絶叫って感じだな。
パドルなんかで叩かれたら痛いなんてもんじゃないだろうしな・・・。
本当に苦しいんだろうな、両脚どころか、全身で、それこそまな板の上の魚って感じで暴れまくってるよ。
あれだけ暴れたら、さすがに俺だって押さえきれねえぞ。
でも左腕だけでしっかりと押さえ込んでやがる。
大人で、しかも剣士なアシュトンだぞ。
腕一本でしっかり押さえちまうなんて、やっぱり人間じゃねえんだなぁ、あいつ。
まぁあれだけ叩かれてんのに、まだあんなにももがける体力があるアシュトンも凄いけどな。
 相変わらずのハイペースで叩きまくってっけど・・・ん?どうやらパドルを振り下ろすのを止めたなぁ。
アシュトンもホッとしてハァハァ一息ついてっけど・・・すげぇ顔だな。
涙と鼻水で完全にグショグショになってるし、ボロボロ泣きじゃくって必死に謝ってるよ。
もういい加減に許してやりゃあいいのによ、でもあいつ、まだ許してやらねえって顔してるな。
 ああ、やっぱりそうだ、まだ勘弁してやらねえんだ。
パドルは離したけど、今度は鞭を取ったよ。
ヒュウンッ!!
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシィィィィィ!!!!
「!!!!!!!!!!」
うっわ・・・すっげぇ・・。
痛すぎて声にならねえんだ。
もう痛いどころじゃねえな。
口パクパクさせながら、両脚動かしたり、身体を強張らせてるだけだ。
普段過保護で甘やかしまくってんのが嘘みたいだよな。
本当に同じ人物かって思いたくなるぜ・・・。
これじゃあレオンやディアスが虐待魔なんて不名誉なあだ名つけるのも無理はねえよなぁ・・・・。


 「ひぃん・・ごべ・・ごべんな・・じゃあひ・・・ごえんびゃ・・なざぁいい・・」
あららら・・・あんまりにも叩かれすぎて、呂律が全然回らなくなっちまってるよ。
尻はもう三倍くらいに腫れちまってるし、表面は蚯蚓腫れで埋め尽くされてるわ、触ったら絶対火傷しそうなくらい熱くなってるな、ありゃあ。
 さすがにあいつもそろそろ勘弁してやろうって思ってるんだろうな、鞭を振るう手を止めて聞いてるよ。
「反省したか?」
「しでるぅぅ・・・じでる・・だらぁぁ・・・。心配・・かげでぇぇ・・。約束・・破ってェェ・・ごへんじゃ・・ざじゃいい・・・」
「よし・・・わかっているようだな・・」
お、あいつの顔が優しくなったぞ。
許してやる気だな。
でも・・このパターンだと確か・・あっ!やっぱり振りあげたかと思うと、思い切り引っぱたきやがった。
かわいそうに・・・・。
油断してるところ叩かれたもんだから、痛いなんてもんじゃねえぞ。
 「だが・・もしまたやりおったら・・今度はこんなものではすまさんぞ!今日の倍は叩いた上にお灸も据えるぞ!いいな!」
うわぁ・・・厳しいなんてもんじゃねえな・・。
だいたい今日のだって十分どころかやり過ぎだろうが。
今日の倍叩いた上にお灸まで据えたら、虐待になるぞ?
 「に、二度としませぇぇん!!!約束しますぅぅぅ!!!ごめんなさぁぁぁい!!!」
さすがにアシュトンも必死だよ。
やっと許してやったみたいだな・・・。やれやれ・・・見てるこっちの方が心臓に悪いぜ。


 「痛・・・痛ったぁぁ・・!!」
「わ、悪い。沁みるか?」
薬塗ってやりながら、つい聞いちまったよ。
「おぃ!貴様!優しくやらんか!」
あれだけ叩いたのはどこ吹く風って感じで、あの悪魔、そんな風に文句つけてきたよ。
 「おぃおぃ、お前さんが叩きすぎるから悪いんだろうが」
無駄なのはわかってるがな、ついそう言っちまったよ。
「何を言うか~!悪い子だったから躾けただけだろうが!!」
心外だって言わんばかりに、そんなことのたまったよ、あいつの中ではこれも躾の範囲なんだよな。
だからレオン達に虐待魔って言われんだよ。
まあこんなこと言っても通じねえし、あいつに滅びの風くらわされるのがオチだから言わねえけどな。
 「アシュトン・・大丈夫か?」
自分でやったのを忘れたかのように、心配そうにあいつはアシュトンに聞いたよ。
「う・・うん、大丈夫。ちょっと・・痛いけど・・。それより・・・心配させちゃってごめんね」
尻が痛すぎて辛いだろうに、アシュトンは自分が悪いって顔してあいつに謝ったよ。
ったく・・・人が良すぎなんだよなぁ。
幾らお仕置きだって言ったって、こんだけ叩かれりゃあ恨みごとの一つも言いたくなるもんだろ?
でもアシュトンはそんなこと思わねえんだよな、それどころか自分が悪かったって思うんだよ。
「わかってくれればよいのだ。そうだ!今夜の夕飯はお前の好物のハンバーグにしよう!せっかくだから特製だ!そうと決まれば善は急げだ!食材を買ってこねば!!」
一人でそんなこと言ったかと思うと、あれよあれよって間に出てっちまったよ。
 「ったく・・相変わらず一人で色々突っ走ってんなぁ・・」
「そ・・そうですねぇ・・・」
さすがにアシュトンも苦笑せずにはいられなかったみたいだな。
 「なぁ・・・自分でも時々思わねえか?何であんなやつと一緒に暮らしてるんだって?」
手当てしながらつい聞いちまったよ。
「そ・・そうですねぇ・・。時々は・・・考えちゃいますねぇ」
やっぱりか、そうだよなぁ、普通は。
 「でも・・・僕の事・・・本当に大切に思って・・愛してくれてるのはわかりますから。確かに・・ルシフェルのお仕置きは・・痛いし・・怖いし・・辛いですよ。でも・・・僕の事本当に大事に思ってくれてるから、叱ってくれるんですよ。それはボーマンさんだって同じでしょう?」
はは、こりゃあ一本取られたな。確かにそうだ。
俺も、こう見えてもアシュトンのお仕置きをしたことはあるからな。
アシュトンが大事だからこそ、お仕置きをするっていうのはわかるな。
 「だから・・・すごく・・痛いですけど・・。でも・・その分・・・愛されてるのは感じられます。痛いし・・辛いし・・嫌だけど・・でも・・・嬉しいです。愛してくれてるって、感じられるから」
あらら~、逆に惚気られちまったな。
まあお幸せにな。


 まぁ、こんなところかねぇ。
少しは楽しんでもらえたかい?
それじゃあ今日はこの辺でな。
今日も患者が待ってるからな。
お前さん方も身体には気をつけろよ。


 ―完―

プロフィール

山田主水

Author:山田主水
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