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冤罪騒ぎ(いたストポータブルより:/アーシェ・ティファ)



(いたストポータブルを題材にした二次創作です。許容出来る方のみご覧下さい)


 「ああ~~っ!せっかく独占したのに~~っ!!」
スライムは悔しさを滲ませて言う。
苦労して独占したエリアを、アーシェに素通りされてしまったからだ。
「騒ぐのはみっともないわよ。もう少し品位というものを磨いたらどうなの?」
悔しさに声を上げたスライムに、アーシェはそう言う。
 「はぁ・・・本当に絶好調よね・・・」
その傍らで、ティファは羨ましそうに呟きながら、アーシェを見つめる。
何せ、サイコロを振るうたびにいい目が出るのだ。
おかげで、他の参加者達を大差で引き離し、堂々トップである。
 (おかしいんじゃないかと思うくらい調子がいいわよね。まさか・・・?)
あまりにも調子がよいため、ティファはイカサマをしているのではないかと疑ってしまう。
(考えすぎよね。前にバレてあんなに厳しくお仕置きされたんだし)
懲りてイカサマはしないだろうと思うが、やはり目の前でとんとん拍子に一人勝ち状態を繰り返されると、やはり疑ってしまう。
疑惑がもう押さえきれなくなったのだろう、ついにティファは口を開いた。
 「ね、ねぇ、アーシェ。まさかとは思うけど・・ズルなんてしてないわよね?」
「馬鹿なことを言わないで!私はそんなことをするほど落ちぶれていません!?」
イカサマの疑いをかけられ、アーシェはムッとして返事をする。
 「そう思いたいわ。でも・・あなた、前にし、してたし・・・・」
「く・・!あ、あのことは言わないで!わ、私だって・・ば、馬鹿なことをしたと思っているのだから!?」
アーシェは恥ずかしさに顔を真っ赤にして言う。
 「そ・・そうよね。す、するわけないわよね・・。ご、ごめんなさい」
「全く・・心外だわ!!」
イカサマを疑われ、アーシェはすっかり怒ってしまう。
(何をやってるのよ。調子がいいからってイカサマを疑うなんて)
機嫌を損ねてしまったアーシェの姿に、ティファは反省する。
「あっ!危ないっ!!」
突然、スライムが叫び声を上げる。
何だと思うと、ティファの顔めがけ、サイコロが飛んでくる。
どうやら勢い余って大暴投してしまったらしい。
とっさにティファはパンチを繰り出して防ぐ。
 「あ・・!いけないっ!?」
パンチを繰り出してから、ティファは反省する。
とっさのことで手加減せず、思い切りやってしまったのだ。
そのせいで、サイコロが真っ二つに割れてしまう。
 「何をしているの?加減というものを考えたらどうなの?」
「ご、ごめんなさいっ!あら?」
アーシェにきつく言われ、思わずティファは謝るが、割れたサイコロの中に何かがあることに気づく。
 「何かし・・・!?」
何気なく取り上げたそれを見て、ティファは言葉が止まる。
イカサマ用の機械だったからだ。
ハッとした表情を浮かべるや、ティファはアーシェの方を振り向く。
 「アーシェ!?何なのコレは!?」
「く・・!私のしわざとでも言いたいの!?」
イカサマを疑われ、アーシェはムッとした表情で言い返す。
 「だってそうでしょう?あなたにばかり有利な目がずっと出ていたわよ。怪しいくらいに」
「わ、私はしていないわ!?」
本当に覚えが無いため否定するが、ティファは信じない。
「嘘を言わないで!だったらどうしてこんなものが入っているの!?」
否定が却って、ティファの疑惑を深め、ますます疑いを強くする。
 「私が知るわけないでしょう!何よ!負けているからって人を疑って!?これだから庶民の人達は嫌ね!!」
怒りのあまりアーシェは反抗的な態度で言い返してしまう。
それが、ティファの怒りに火を注ぐ。
 「アーシェッ!こっち来なさいっ!!」
「な、何をするのっ!?離しなさいっ!!」
手首を掴み、ティファは強引にアーシェを広場へと連れ出す。
 「アーシェ、素直にイカサマを認めて皆に『ごめんなさい』しなさい」
広場へと連れ出すと、ティファは怖い顔で睨みながら言う。
「ふ、ふざけないでっ!誰がそんなことするものですか!?」
覚えが無いのに加え、力づくで屈服させるような物言いに、持ち前のプライドからアーシェは反抗する。
 「そう・・。なら、仕方ないわね」
ティファはそのままアーシェを膝の上に乗せてしまう。
「く・・!?何をするの!?」
「悪い子にお仕置きをするのよ。覚悟しなさい」
ティファはそう言うと、片手でアーシェの身体を押さえる。
そして、ゆっくりと手を振り上げた。


 バシィィーーーーンンンッッッ!!
「く・・・・!!」
服の上からとはいえ、強烈な平手打ちにアーシェは顔をしかめる。
 パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!
「全く・・・!何やってるのよ!?あなたって人は!?」
ティファはお尻を叩きながら、お説教を始める。
 パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!
「イカサマは反則でしょ!?前にお仕置きされたのに懲りて無いの!?」
「く・・!わ、私では無いわ!?くっ!やめっ・・やめなさいっ!!」
「もう!まだ嘘なんかついて!そんな悪い子は許さないわよ!!」
ティファは怒りの声を上げると、アーシェのお尻をむき出しにしてしまう。
 「な、何をするの!?」
お尻むき出しという恥ずかしい姿に、アーシェは抗議する。
そんなアーシェを無視して、ティファは手を振り上げた。
 バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「本当に・・本当に・・悪い子ねっ!悪い子ねっ!!」
ティファはさらに厳しくアーシェのお尻を叩きだす。
 バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「く・・!やめ・・やめなさいっ!やめなさいっ!やめろと言ってるでしょう!?いい加減にしなさい!!」
「それはこっちの台詞よ?イカサマなんかして!皆に謝りなさい!!」
「だから私では無いと言ってるでしょう!?どうしてわからないの!?」
「あら~?まだ、そんなこと言うのね!」
ティファはさらに怒りを燃え上がらせ、膝を組む。
おかげで、アーシェはほんのり赤く染まったお尻を突き上げる体勢になる。
 「そんな悪い子は・・もっと懲らしめてあげるわ!!」
ティファはそう言うと、さらに勢いよく手を振りかぶる。
バッシィィィィ~~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!
「くあああっ!やめっ!やめなさいっ!やめなさいっ!」
集中豪雨のような平手打ちに、アーシェは悲鳴を上げ、抗議する。
 「まだ反省してないのね!まだまだ行くわよっ!!」
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!
「いやぁぁぁ!やめてっ!くぅぅぅっ!やめてっ!あああっ!痛っ!痛ぁぁぁっっ!!」
あまりの激しさに耐えきれず、ついに懇願するような口調に変わる。
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~~~~っっ!!!!
「やめなさいっ!いやっ!やめてぇぇぇ!いやっ!やぁぁぁ!!やめてっ!いやぁぁぁ!!」
その後、ティファの激しい平手打ちの音と、アーシェの悲鳴とが広場に響き続けた。


 「うっう・・うぅうう・・・・・」
アーシェは涙を浮かべて泣いていた。
お尻は今や、濃厚なワインレッドに染まっている。
 「さぁ、アーシェ、反省したかしら?」
一旦お尻を叩く手を止めて、ティファは尋ねる。
「く・・!わ、私には反省することなど・・あ、ありません・・!!」
身に覚えが無いため、あくまでもアーシェは否定する。
「まだ・・そんなことを言うのね・・!!」
強情なアーシェに業を煮やし、ティファがさらにお仕置きを続けようとしたときだった。
 「ティファ、その辺にしてくれないかしら」
ビアンカが現れ、ティファにそう声をかける。
「ビアンカさん、そうはいかないわ。まだ、反省してないし・・・」
「それが間違いよ。ティファ、アーシェは悪いことは何もしていないわ」
「え?ほ、本当ですか?」
信じられず、ティファは思わず尋ねる。
 「ええ、ユフィ、ちゃんと話すのよ」
「わ、わかってるよ。じ、実は・・・・・・」
ユフィはイカサマサイコロを用意したのは自分であること、自分が操作をしていたこと、それでアーシェが疑われ、お仕置きをされるように仕向けたことなどを話す。
 「何でそんなことをしたの!?」
「い、いやさ、アーシェのお仕置き動画って人気あるんだってば!と、撮れば高く売れるからさ!」
「だからってそんなことしていいワケないでしょ!?」
「ご、ごめんってば!も、もうビアンカにお仕置きされたから許してよ!!」
ユフィは既に真っ赤なお尻を見せながら、許しを乞う。
「ティファ、私から叱ったし、反省してるから、許してあげてくれないかしら?お願いするわ」
「ビ、ビアンカさんがそう言うなら・・・。ユフィ、もしまたやったら、私からもお仕置きよ。いいわね?」
「わ、わかってるわよ!」
それだけ言うと、ユフィは逃げ出す。
 「ご、ごめんなさい!う、疑っちゃって!!」
「謝れば済むという問題では無いわ・・・!!」
ようやくお仕置きから解放されたものの、無実の罪でお仕置きされたことに、アーシェは怒りを隠せない。
 「そうね。ティファ、幾ら疑わしいからって、ちゃんと話も聞かずに、決めつけてお仕置きをするだなんて、それはいけないことだわ」
「ご・・ごめんなさい・・・」
「ダメよ。悪い子はお仕置き、さぁ、いらっしゃい」
「うう・・・」
ティファは嫌そうな顔を浮かべるも、自分が悪い以上、素直にビアンカの膝に乗る。
ビアンカは普段アーシェにしているように、慣れた手つきでティファのお尻をあらわにする。
 「恥ずかしいのもお仕置きのうちよ。しっかり反省してね」
「は・・はい・・・」
恥ずかしさに顔を真っ赤にしてティファは頷く。
それを見たビアンカは、ゆっくりと手を振り上げた。


 パシィーーンッッッ!!
「う・・・・!!」
弾けるような音と共にお尻に痛みが走る。
ティファは思わず声を漏らしてもらう。
 パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!
(本当に・・お尻・・ぶたれてるのね・・)
お尻に感じる痛みに、ティファはそのことを思い知らされる。
途端に、羞恥がグッとこみ上げてくる。
 パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!
「ダメでしょう、ティファ、あらぬ疑いをかけるだなんて・・・」
お尻を叩きながら、ビアンカはお説教を始める。
 パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!
「ご・・ごめんなさい・・!ア、アーシェにばかり都合のいい目が出てばかり・・だったから・・・・」
お尻を叩かれる苦痛に身を強ばらせながら、ティファは謝る。
 パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!パーンッ!
「だからって最初からアーシェのしわざと決めつけるのはいけないわ。どんなに怪しい、疑わしいと思っても、ちゃんと話を聞いてあげないと。あなただって、何も悪いことをしてないのに、疑われて、決めつけられてお仕置きされたら嫌でしょう?」
「ご・・ごめん・・なさい・・・。反省・・してるわ・・・」
謝るティファに、お尻を叩きながらビアンカはさらに言う。
 「ティファ、あなたには二度とこういうことはして欲しくないわ。だから、厳しく行くわよ。覚悟してね」
「え?ちょ、ちょっと待・・・」
「ルカニ!バイキルト!」
ビアンカは呪文で自身の攻撃力を強化し、ティファの防御力を下げる。
そして、思い切り手を振りかぶった。
 バシィィーーーンッッッ!!
「きゃあああ!!」
強烈な平手打ちに、ティファは背をのけ反らせて悲鳴を上げる。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「きゃああっ!痛っ!痛ああっ!ごめんなさいっ!痛いっ!ごめんなさいっ!!」
厳しく強力な平手打ちに、ティファは悲鳴を上げながら必死に謝る。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「ごめんなさいっ!いやああっ!ごめんなさいっ!痛っ!痛い~~っ!やめてっ!許してっ!ごめんなさぁぁ~~いいっっ!!」
ついに耐えきれなくなり、ティファは両脚をバタつかせ、泣きながら『ごめんなさい』を繰り返す。
その後、ビアンカの手が止まるまで、ティファの悲鳴と『ごめんなさい』が響き続けた。


 「うう・・うっうっう・・・・」
ボロボロと大きな涙を零してティファは泣いていた。
お尻は今や夕陽のような赤に染め上がっている。
 「ティファ、反省してくれたかしら?」
一旦お尻を叩く手を止めて、ビアンカは尋ねる。
「した・・・したわ・・。に、二度と人にあらぬ疑いを・・か、かけたり・・無実の罪で・・お仕置きなんか・・しないから・・だから・・許して・・。ごめんなさい・・」
許して欲しくてティファは必死に謝る。
 「わかってくれたようね。よかった。じゃあ、私からは終わりよ」
ふと、嫌な予感を覚え、ティファは恐る恐る尋ねる。
「あ・・あの・・『私からは』って・・どういう・・?」
「決まってるじゃない。アーシェからの分がまだ残ってるわよ」
「ええ!?こ、これで終わりじゃないの!?」
ビアンカの宣告に、思わずティファは声を上げる。
 「ティファ、一番謝らなくてはいけないのはアーシェにでしょう?」
「で・・ですけど・・」
「ビアンカ、私にさせてくれるなら、早く引き渡してくれないかしら?」
アーシェの言葉に、ビアンカは素直にティファを引き渡す。
 「さぁて・・。ティファ・・・覚悟はいいかしら?」
アーシェは怖い笑顔を浮かべてティファを膝に載せる。
「ア、アーシェッ!ご、ごめんなさいっ!わ、私が悪かったわ!あ、謝るから・・許してっ!!」
「今さら遅いわ。私の屈辱、たっぷり味あわせてあげるわ」
アーシェはそう言うと、お返しの平手を振りかぶった。
 バシィィ~~~~~ンンンッッッッッ!!!
「きゃあああああ!!!」
既に散々お仕置きされたお尻には過酷過ぎる打撃に、ティファは飛び上がりそうになる。
バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!
「よくも・・!よくも・・!やって・・くれたわね・・!!」
冤罪でお仕置きされた恨みに燃えながら、アーシェは平手を叩きつける。
 バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!
「アーシェッ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!お願いだから許してっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!」
ティファは泣きながら必死に謝るが、アーシェが許すはずもない。
 バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!
「何を言っているの!?私の屈辱はこんな程度では無いわ!まだまだ泣かせてあげるわ!!」
怒りの平手を振り下ろしながら、アーシェは叫ぶように言う。
 バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!バアーンッ!
「痛あああいっ!ごめんなさいっ!許してっ!ごめんなさいっ!痛ああ~~いっ!いやぁぁ~~~っ!ごめんなさぁぁ~~いっっ!!」
その後、長い間ティファの『ごめんなさい』とお尻を叩く音が広場に響いていた。


 「うぅううぅ・・・」
ティファは痛みと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら泣いていた。
『私は無実の罪でアーシェをお仕置きした悪い子なので、お尻ペンペンされました』という恥ずかしい札を背中に提げ、真っ赤なお尻を出したまま、広場に立たされていた。
 「うう・・・こんなことになるなら・・もっと慎重にすればよかったわ・・・」
お尻の痛みと熱に泣きながら、ティファはそう後悔せずにはいられなかった。


 ―完―

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八つ当たりの代償(いたストポータブルより:ビアンカ/アーシェ)



(いたストポータブルを題材にした二次創作です。許容出来る方のみご覧下さい)


 「く・・・・!」
悔しさに顔を歪めて、アーシェはジッと表彰台を見つめる。
表彰台にはヤンガスら、今回のゲームの参加者達の姿がある。
だが、アーシェの姿だけが無い。
最下位だったからだ。
見事一位を獲得し、勝利の喜びに震えるヤンガスやその他の参加者を、アーシェは恨めしげに見つめていた。


 (今日こそは・・・勝たなくては!!)
アーシェは鬼気迫る表情を浮かべて、会場へと向かっていた。
前回までで、もう5回も最下位だったからだ。
プライドの高いアーシェにとって、これ以上の屈辱は無い。
(何としても・・勝ってみせるわ!王族の誇りにかけて!)
そう思いながら、アーシェは会場へと向かう道を進んでいった。
 (あっ!アーシェ様!)
会場へ向かうアーシェの姿に、思わずパンネロは声をかけようとする。
パンネロも同じゲームに参加するため、お互い頑張りましょうと言おうと思ったのだ。
だが、アーシェの雰囲気に声をかけられなくなってしまう。
 (凄い・・いきり立ってる・・・)
はたから見ただけで、アーシェが非常にピリピリしているのが感じられる。
(そういえばここのところ連敗だったらしいし・・・・)
パンネロは他の仲間から聞いたアーシェのここ最近の成績を思い出す。
(声かけない方がいいよね・・・。申し訳ないけど・・)
今のアーシェにうかつに声をかければ、火の粉を被るような事態になってしまう。
そう考え、パンネロはそのままその場を後にした。


 ゲーム終了後、アーシェは暗くうち沈んだ表情で、廊下を歩いていた。
(また・・・だわ・・・・)
またも最下位となってしまったことに、アーシェは落ち込む。
(何をしているの!?恥というものを知らないの!?)
アーシェは自身を罵らずにはいられない。
悔しくて、情けなくて、恥ずかしくてたまらない。
思わず涙が出てしまう。
(何を泣いているの!?子供ではあるまいし!恥ずかしいと思いなさい!!)
無意識のうちに泣いている自身を、アーシェは叱咤する。
 「ア、アーシェ様・・」
「!!!!!」
突然、背後から聞こえてきた声にアーシェは驚きそうになる。
思わず涙目のまま振り返り、キッと睨みつける。
すると、いつの間にかパンネロの姿があった。
 「何のつもり?用が無いなら放っておいて」
悔しさに苛立っているところに声をかけられ、思わずアーシェはとげとげしい声で言う。
「す、すみません・・・。でも・・あの・・そ、そんなに結果を気にしない・・方が・・・」
パンネロはおずおずしながら言う。
 「何を言っているの?別に気になどしてはいないわ。た、たかがゲームの勝ち負けなんかに!こ、子供ではないのよ!?」
「す、すみません!で、でも・・何だか・・その・・落ち込んでいたみたいですし・・」
「そ、そんなはずないでしょう!た、たかが最下位くらいで!」
慰めようとするパンネロだったが、それが却ってアーシェの苛立ちに火を注いでしまう。
「で、でも・・さっき・・泣いてらしたみたいですし・・」
「!!!!!!!」
アーシェはこの世の終わりと言わんばかりの表情を浮かべる。
プライドの高い彼女にとって、負けて悔し泣きしているところを見られるなど、屈辱でしか無い。
 「み・・見たのね・・!?」
「い、いえ・・た、たまたま・・・」
「よくも・・・!!許さないわっ!!」
アーシェはそう言うと、パンネロの手首を掴む。
そのまま、どこかへと無理やりに引っ立てていった。


 バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「ああっ!アーシェ様っ!やめてっ!やめて下さいっ!!」
パンネロは悲鳴を上げながら必死に懇願する。
膝の上に乗せられ、お尻をむき出しにされて叩かれていた。
 「よくも・・よくも・・馬鹿にしてくれたわねっ!!」
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
アーシェは怒りを込めて、パンネロのお尻を叩く。
「ひ・・!そ、そんなつもり・・ありませんっ!た、ただ・・元気づけ・・・」
「『元気づける』ですって?私がゲームに負けた程度で落ち込むような、そんなヤワな人間だと思っているの!?」
プライドを刺激され、アーシェはさらに怒りをかき立てる。
 バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「ああっ!そ、そんなこと思ってませんっ!ご、ごめんなさいっ!許して下さいっ!」
パンネロは必死に謝る。
「『許して』ですって?何を言っているの?あんな恥ずかしい姿を見ておいて・・!!」
「わ、わざとじゃありませんっ!お、お願いですから許して下さいっ!!」
「許せると思っているの?私に恥をかかせて・・・覚悟しなさい!」
アーシェはそういうと、部屋にあった金属製の靴べらを手にする。
 ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!ビシィィィィ!!
「あああっ!痛ああっ!やめて下さいっ!ごめんなさいっ!お願いですっ!!」
「よくも・・よくもよくも・・・!!」
屈辱感を怒りの炎に変え、アーシェはパンネロのお尻に嫌というほど靴べらを振り下ろし続けた。


 「うう・・・うっうっうっうっ・・・」
パンネロはボロボロと涙をこぼして泣いていた。
お尻はもはや痛々しい状態になり果てている。
 「ごめんなさい・・許して・・お願い・・ですからぁぁ・・・」
パンネロはひたすら許しを乞う。
「何を言っているの?この程度でまだまだ許せるわけがないでしょう?」
冷ややかな声でそう言い、再び靴べらを振り下ろそうとしたそのときだった。
 「アーシェ、パンネロ、ここなの?」
ドアが開くと同時に、ビアンカが現れた。
だが、パンネロのお尻を見るなり、表情が変わる。
「何をしているの!?」
声をかけると同時に、ビアンカはアーシェからパンネロを引き離し、抱きかかえる。
「うう・・ビアンカさぁん・・・・」
「大丈夫よ、心配いらないわ。さぁ、医務室に行きましょう」
泣いているパンネロに、ビアンカは優しい声で言いながら、部屋を出て行こうとする。
だが、部屋を出る前に、厳しい表情でアーシェに言う。
 「アーシェ、私が戻って来るまでここで待ってなさい。いいわね?」
「な、何故私がそのような・・・」
「いいわね?」
ビアンカのただならぬ気迫に、アーシェは何も言えなくなってしまう。
それを了解と取ったのか、ビアンカはパンネロを抱きかかえて部屋を後にした。


 (何をしているの・・・私の馬鹿・・・)
苦々しい表情を浮かべながら、アーシェは自分を責めずにはいられなかった。
(八つ当たりだなんて・・見苦しいと思わないの?恥を知りなさい!)
恥ずかしさから八つ当たりで暴力を振るった自分が、情けなくてたまらない。
(大丈夫・・かしら・・?)
痛々しいパンネロのお尻を思い出し、アーシェは罪悪感を覚える。
 突然、ドアが開く音が聞こえた。
一瞬、アーシェはハッとするも、平静を保とうとする。
やがて、ゆっくりとビアンカが入って来た。
 「パンネロは・・どうなのです?」
アーシェは恐る恐る尋ねる。
「今、手当てしてもらっているわ。幸い・・・無事に治りそうだわ」
「そ・・そうですか・・・」
平静を装いつつ、アーシェは密かに胸を撫で下ろす。
 「アーシェ、あなた、何をしているの?パンネロにあんなに暴力を振るうだなんて」
ビアンカは厳しい表情でアーシェに尋ねる。
「ぼ、暴力ではありません!お、お仕置きです!あ、あなただってしているでしょう!?」
(違うわ!どうして素直になれないの!?)
思っていることとは裏腹なことを言ってしまう自分に、アーシェは思わず苛立ちそうになる。
 「違うわ。パンネロは悪いことはしていないわ。あなたが自分のプライドのために何も悪くないパンネロを叩いたのでしょう?それは暴力でしかないわ」
「う・・・うるさいわね!あ、あなたには関係ないわ!」
アーシェはそう言うと、部屋を出て行こうとする。
 「待ちなさい!」
そこへ、ビアンカがアーシェを押しとどめる。
「どきなさい!」
「いいえ、どきません。さぁ、パンネロにちゃんと『ごめんなさい』しに行きましょう」
「嫌です!どうして私がそんなことを!」
「何を言っているの?あなただって、自分が悪いことはわかっているでしょう?」
正論にアーシェは言葉に詰まる。
だが、それよりもプライドの方が勝る。
 「嫌よ!パンネロなんかに頭を下げたくはありません!!」
「そう・・。なら・・仕方ないわね」
ビアンカはそう言うと、アーシェをそのまま膝に引き倒す。
 「何をするのっ!!やめなさいっ!!」
当然アーシェは抗議するが、ビアンカがやめるはずもない。
ビアンカはあっという間に、アーシェのお尻をあらわにしてしまう。
「しっかり・・・反省しなさい」
ビアンカはそういうと、アーシェの身体を押さえ、手を振り上げた。


 パシィィーーーンンンッッッ!!!
(ま・・またなのっ!?)
お尻を叩く音と共に、アーシェは屈辱感を覚える。
パンッ!パシッ!パンッ!ピシャンッ!パアンッ!
屈辱感に身を震わせるアーシェを尻目に、ビアンカは平手を振り下ろしてゆく。
 パシッ!パンッ!パンッ!パシッ!パンッ!ピシャンッ!
「く・・!やめなさいっ!やめなさいっ!」
お尻を叩くビアンカに、アーシェは振り返って言う。
だが、ビアンカはそれを無視して叩き続ける。
 パンッ!パシッ!パンッ!ピシャンッ!ピシャンッ!パアンッ!パシッ!パンッ!ピシャンッ!ピシャンッ!パアンッ!
「く・・!やめ・・やめなさいっ!やめなさい・・やめなさい・・・」
お尻を叩き続けるビアンカに対し、アーシェはひたすらやめろと命令し続ける。
もちろん、ビアンカがやめるはずもない。
 バシッ!バンッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「く・・!やめろと言っているでしょう!?聞こえないの!?」
アーシェは思わず怒りの声を上げて言う。
「聞こえてるわ。そんな大声で言わなくてもね」
「だ・・だったら何故叩くの!?」
「何故?それはあなたがわかっているでしょう?」
ビアンカはそう言いながら、お尻を叩く手をさらに強める。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「く・・!やめ・・やめなさいっ!やめ・・やめなさい・・」
「全く・・・ダメでしょう!負けたのが悔しいからって、人に八つ当たりして、暴力なんか振るったら!」
ビアンカはアーシェの真っ赤なお尻に、容赦なく平手を叩きつける。
 「く・・・!パ、パンネロが・・わ・・悪いのよ・・!ひ・・人を・・ば、馬鹿にして」
バシィィィンッッ!!
「あああっ!!」
強烈な平手を叩きつけられ、アーシェは悲鳴を上げる。
 「パンネロは馬鹿にしてなんかいないでしょう?どうして、素直に人の気持ちを受け取らないの!」
「う・・うるさいわね!あ、あなたなんかには関係ないでしょう!?」
子供のようにお説教とお仕置きをされる屈辱に、思わずアーシェは声を上げる。
 「アーシェ、本気で言ってるのかしら?」
ビアンカは厳しい表情と声で尋ねる。
「だ、だったら何だと言うの!?私の家族でもダルマスカ国民でも無いくせに!何様のつもりなの!?いい加減にしないと本気で怒るわよ!?」
怒りを爆発させ、アーシェは叫ぶように言う。
 「アーシェ、それは本心かしら?」
「だ、だったら何だと言うの!?」
「アーシェ、本心なのね。自分は悪くない、パンネロや私が悪いと言いたいのね?」
「ええ!パンネロが勝ったのをいいことに私を馬鹿にするから悪いのよ!と、当然の報いだわ!あれくらいでは、まだまだ甘すぎたわ!!」
「そう・・。よく・・わかったわ・・」
ビアンカは静かに、だが有無を言わせない声で言うと、ゆっくりと手を振り上げた。
 「ルカニ!バイキルト!?」
「く・・・・!!」
お尻の感覚が鋭くなり、アーシェはさらなる痛みに顔をしかめる。
そこへ、ビアンカがお尻目がけて手を叩きつけた。
 バッシィィィーーーンッッッ!!!
「ああああっっ!!」
今までとは比べ物にならない平手打ちにアーシェは絶叫する。
 バンバンバンッ!バンバンバンバンッ!バンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!
「やめっ!くぅぅ!やめなさいっ!くうっ!やめっ・・やめなさいっ!」
苦痛に悶えながら、アーシェは抗議する。
 「悪いことをしたのに、全然反省しないで、人のせいにする悪い子は絶対に許しません!!うんと懲らしめてあげます!!」
バンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!
ビアンカは怒りの声と共に、平手の豪雨を降らせる。
 バンバンバンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!
「悪い子っ!悪い子っ!悪い子っ!」
「や、やめ・・なさい・・やめ・・やめて・・」
耐えきれなくなったのだろう、命令口調から懇願口調へと変わりだす。
 バンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!バンバンッ!バンバンバンバンバンバンッ!
「ダメです!悪い子のお尻はうんとうんと赤くしてあげます!」
「ひ・・!やめっ・・やめてっ!ああっ!やめてっ!!あああっ!痛っ!痛あああっ!やめっ・・やめてぇぇ!!」
ついに耐えきれなくなり、アーシェは悲鳴を上げる。
その後、容赦なくお尻を叩く音とアーシェの悲鳴が、共に響き続けた。


 「うう・・やめ・・やめて・・やめて・・・」
荒い息を吐きながら、アーシェは懇願する。
既に、お尻はワインレッドどころではない色に染め上がっていた。
 「アーシェ、反省したかしら?ちゃんと『ごめんなさい』出来るかしら?」
そろそろ頃合いと見たのか、ビアンカは手を止めて尋ねる。
「く・・!い、嫌です・・!あ、謝る・・くらいなら・・・」
「だったら、また皆の前でお仕置きするわよ?それでもいいの?」
「う・・・!!」
アーシェは一瞬言葉に詰まる。
そんなことをされたら、二度と外を歩けない。
 「それだけじゃないわよ。恥ずかしい札を下げて、お尻を出したまま、立ってもらうわよ。それでもいいのかしら?」
「わ・・わかりました・・!!ご・・ごめ・・ごめん・・ごめんなさいっ!!こ・・これで・・いいでしょう!?」
悔しそうな顔を浮かべつつ、アーシェは謝る。
 「アーシェ、それじゃあ謝る態度じゃないわよ?」
「う、うるさいわね!あ、謝っているのだからい、いいでしょう!!」
せめてプライドを保とうと、アーシェはそう言う。
「まぁいいわ。でも・・二度としないこと。いいわね?」
「わ、わかっています!こ、子供ではありません!いちいち言わないで下さい!!」
アーシェの態度に苦笑しつつも、ビアンカはようやく手を降ろした。


 「く・・!!」
「大丈夫?沁みたかしら?」
痛みに顔をしかめるアーシェに、薬を塗りながら、ビアンカは尋ねる。
 「何でも・・ありま・・くぅぅぅ・・!!」
「やせ我慢はダメよ。お尻が痛いのだから、無理はよくないわ」
「あ・・あなたがしたのでしょう!?」
アーシェはムッとした声で言う。
 「でも、それはあなたが悪い子だったからでしょう?」
「く・・!た、確かに・・や、やりすぎました・・。そ・・それは・・認めます・・。でも・・だからといって・・・言わなくてもいいでしょう!?」
「わかってくれていればいいわ。二度としてはダメよ」
「わ、わかっています!」
アーシェはそう言うと、プイッと顔をそむける。
そんなアーシェをビアンカは抱き起こすと、ギュッと抱きしめる。
 「な・・何をするの!?」
「え?だっていつもしてるでしょう?痛い思いをさせた責任を取らせてくれるかしら?」
「し・・仕方ないですね・・。そ、そういうなら取らせてあげましょう」
「ありがとう、これでいいかしら?」
ビアンカはそう言うと、アーシェの真っ赤なお尻を優しく撫でる。
「も、もっと撫でなさい!こ、これくらいでは責任を取ったことにはならないわよ!!」
アーシェの言葉に、ビアンカは優しい表情で、アーシェのお尻を撫でつづけた。


 ―完―

王族と品格(いたストポータブルより:ビアンカ/アーシェ)



(いたストポータブルを題材にした二次創作です。許容出来る方のみご覧下さい)


 「本当に助かったわ。ありがとう、アーシェ」
「礼などいらないわ。私には必要があるから、出ることにしただけよ」
礼を言うビアンカに対し、アーシェは愛想の無い態度で返す。
メンバーが足りないからとビアンカに頼まれ、ゲームに参加することにしたのである。
 「それでも出てくれるのでしょう?本当にありがとう」
ビアンカは感謝の笑顔を浮かべて言う。
「べ・・別に・・。そ・・それより・・・他のメンバーは誰なのです?」
笑顔でビアンカに礼を言われ、アーシェは一瞬顔を赤くする。
だが、すぐに普段の態度に戻り、話を変えて尋ねる。
 「ええと・・確かヤンガスさんとトロデ王だったかしら?」
「ヤンガス・・またあの人ですか?」
ヤンガスの名前に、アーシェは少し不機嫌な表情になる。
以前、ビアンカと一緒に参加した際、ユフィとヤンガスが原因で、お尻を叩かれたからだ(『プライドの代償』より)。
 「アーシェ、そんな顔しちゃダメよ?今はもう山賊じゃないんだし。それに、いい人なのはわかってるでしょう?」
「そ・・そんなことはわかっています。私も子供ではないわ」
「ならいいんだけど」
「それより、トロデ王というのは?私以外にも王族がいるのかしら?」
同じ王族という存在だからか、アーシェは思わず尋ねる。
 「ええ。何でも滅んだ国を取り戻し、自分にかけられた呪いを解くためにヤンガスさん達と旅をしているそうよ」
「そう・・ですか・・」
ビアンカの話に、アーシェは人事には思えない。
自分も大国に滅ぼされた国を再興するために戦っているからだ。
 「あら、向こうはもう来てるみたいね。ヤンガスさん、久しぶりね!」
「久しぶりでがすよ。二人とも元気みたいでがすね」
会場につくと、ビアンカは先に来ていたヤンガスに声をかける。
ヤンガスも、二人に挨拶をする。
 「ほら、アーシェもちゃんと挨拶して」
「慣れ合うつもりはありません。前にも言・・!?」
相変わらずの態度でアーシェが返そうとしたそのときだった。
ヤンガスのすぐそばに、緑色の肌に、ローブ系の服を着た魔物の姿があったからだ。
 「な・・何故ここに魔物がいるの!?」
「誰が魔物じゃ!こんな姿じゃが、ワシはこれでも人間じゃぞ!!」
アーシェの態度に思わずトロデ王はカッとなる。
「おさえるでがすよ!その姿では仕方ないでがすよ!」
「離せヤンガスッ!ワシの家臣ならこ奴を手討ちにせぬか!!」
「だからアッシはあんたの家臣ではないでがすよ!!」
カッとなったトロデ王を、ヤンガスが必死に宥めつつ、突っ込みを入れる。
 「な・・。まさか・・あなたがトロデ王なの?」
「そうじゃ!ワシが正真正銘のトロデ王じゃ!トロデーン王国の国王じゃ!!」
トロデは魔物のような姿で、胸を張って言う。
予想だにしない事態に、アーシェは耳を疑わずにはいられなかった。
 「まぁとにかく、ゲームをはじめましょう。ねぇ、ヤンガスさん」
「そうでがすよ。いつまでもこうしているのはよくないでがす」
ショックを受けているアーシェの姿に、ビアンカはそう提案し、ヤンガスも同意する。
やがて、順番を決め、ゲームが始まった。


 「ええい!作戦を命令させろに変更じゃっっ!!」
トロデはカッとなった表情で、そう言う。
中々よい目が出ず、そう言ったのだ。
 「こればかりは仕方ないでがすよ。サイコロの目は運でがす」
「何を言うか!ヤンガス!?貴様、ワシの家臣であろう!家臣ならば鮮やかにワシを勝たせぬか!!」
「だからアッシは家臣じゃないと言ってるでがすよ!!」
ゲームをしながら、二人はそんな会話を交わす。
そういう二人、特にトロデ王を、アーシェは苦々しい表情で見つめていた。
 (全く・・何て見苦しいのかしら・・・)
トロデ王を見ながら、アーシェはそう思わずにはいられない。
魔物のような姿はまだ許せる。
呪いによるもので、本人にはどうしようもないのだから。
 だが、その言動や振舞いは見逃せなかった。
王族は国の頂点に立つ存在。
それゆえに、それにふさわしい品格や立ち居振る舞いが求められる。
アーシェ自身、王族たるにふさわしい品格や振舞いを、常に心がけている。
王族であることが何よりの誇りであるからこそ、尚更それを大切にしていた。
 (それなのに・・・!!)
見ていて、アーシェはだんだん苛立ちを覚える。
トロデ王の振舞いは、とても王族にふさわしいものとは思えないからだ。
 「ええい!?ろくでもない目ばかり出おって!何か仕掛けでもしてあるのではないのか!?ヤンガス!その斧でサイコロを割ってみるのじゃっ!!」
トロデは苛立ちのあまり、そんなことを言いだす。
 「無茶なこと言うなでがすよ!そんなこと出来るわけないでがす!!」
「何を言うか!このままでは最下位じゃ!家臣ならワシを鮮やかに勝たせぬか!?」
「だからアッシはあんたの家臣じゃないでがすよ!っていうか無茶苦茶言わんでくれでがすよ!!」
無茶を言うトロデと、それを拒否するヤンガスとで、そんな言い合いが始まる。
そのトロデの振舞いに、ついにアーシェの我慢が限界を超えてしまった。
 「いい加減にしたらどうなの?」
アーシェは不機嫌極まりない声で、トロデに言う。
「全く・・呆れた王様ね。勝負は自分次第よ。それをサイコロのせいにして。みっともないわね」
「な・・小娘っ!ワシを誰だと思っておるんじゃ!!これでもワシはトロデーン王国の国王じゃぞ!!」
「あなたが国王?呆れたわね?」
「な・・何ぃ!?」
嘲笑するようなアーシェの声に、トロデはカッとなる。
 「だってそうでしょう?あなたには王としての品格が少しも感じられないわ。ただの下品な中年男じゃないの」
「な・・何じゃと!?小娘の分際で!!」
「そう言われても当然だわ。あなた、ヤンガスより下品よ。国王より、盗賊の一味の方が似合っているわ」
トロデ王の振舞いに、アーシェはそう言ってしまう。
 「ヤンガスッ!この小娘を手討ちにせいっ!」
「だから無茶は言うなでがすよ!そんなことしたら二人とも捕まるでがす!!」
無茶苦茶なことを言うトロデに、ヤンガスも思わず言う。
「カッとなったからって手討ちにしろですって?本当に呆れたわね。こんなのが国王だなんて・・・」
アーシェが思わずそう言ったときだった。
 「アーシェッッ!!」
突然、大きな声で名を呼ばれる。
思わずビクッとなりながらも、アーシェは恐る恐る声のした方を振り向く。
すると、怒り顔のビアンカの姿があった。
 「な・・何ですか、いきなり?」
見るからに怒っているビアンカに、アーシェは引きそうになるも、平静を装って尋ねる。
「トロデさんに何てひどいことを言うの!!謝りなさい!!」
ビアンカの迫力に、さすがにアーシェも一瞬怯みかける。
だが、それがアーシェのプライドを刺激する。
 「ひどい?当然のことを言ったまでです。はしたなくて、見苦しいのは事実なのですから」
「そういうことじゃないでしょう?言っていいことと悪いことがあるわ。さぁ、ちゃんと謝りなさい」
トロデに味方し、自分を責めるビアンカに、アーシェは反抗心が沸いてくる。
「嫌です。こういうことはしっかり本人に言うべきよ。私は悪くないわ」
「アーシェ?本気でそんなこと言っているのかしら?」
「だ、だったら何だと言うの?余計なお世話よ!」
ビアンカの迫力に怯みそうになるのをこらえ、アーシェも言い返す。
「そう・・・。わかったわ。そういう子は・・こうです!」
ビアンカはアーシェの腕を掴んだかと思うと、グッと引き寄せる。
アーシェが気づいた時には、ビアンカの膝に乗せられてしまっていた。
 「な・・何をするのっ!離しなさいっ!!」
そう言うが、ビアンカが聞くはずもない。
あっという間にアーシェはお尻を出されてしまう。
 「く・・!!」
人前、それも異性の前でお尻をむき出しにされた屈辱に、アーシェは顔を真っ赤にする。
「さぁ、アーシェ。ちゃんと謝りなさい。そうすれば許してあげるわ」
ビアンカは押さえたまま、チャンスを与える。
「嫌です。こんな下品な人に頭を下げたくありません」
「そう・・。なら、仕方ないわね」
ビアンカはため息をつく。
直後、ゆっくりと手を振り上げた。


 バッシィィィ~~~~ンンンッッッ!!!
「く・・・!!」
痛みよりも屈辱感で、アーシェは声を漏らす。
 (ま・・またなの!?)
煮えかえるような屈辱感に、アーシェは身を震わせる。
パアンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パシンッ!
アーシェは口をしっかりと閉じ、声を出すまいとする。
それが苦痛を強めるが、それでもアーシェは声を出さない。
 パンッ!パシンッ!ピシャンッ!パァンッ!パァンッ!パシンッ!
叩かれるたび、苦痛でアーシェの表情が変わる。
アーシェは苦痛の顔を見られまいと、必死に堪える。
 ピシャンッ!パァンッ!パアンッ!パシンッ!パシンッ!ピシャンッ!パァンッ!
「全く・・・。何てことをしてるのっ!あなたって子はっ!!」
ビアンカは手を振り下ろしながら、厳しい声でお説教を始める。
「う・・うるさいわね・・」
お尻を叩かれる苦痛を堪えながら、アーシェは振り返り、言い返す。
ピシャンッ!パァンッ!パアシィンッ!パアンッ!パシンッ!ピシャンッ!パァンッ!
「あ・・あなたには・・関係・ない・・でしょう・・!く・・!」
「そういう問題じゃないでしょう?前に教えたはずよ?人を馬鹿にしてはダメよと」
ピシャンッ!パァンッ!パアシィンッ!パアシィンッ!ピシャンッ!パァンッ!パアシィンッ!パアンッ!パシンッ!パアシィンッ!パアンッ!パシンッ!
お尻を叩きながら、ビアンカはお説教を続ける。
 「ば・・馬鹿になど・・して・・いないわ!!本当の・・ことを・・言っている・・だけよ!!」
「本当だから何を言ってもいいというわけじゃないでしょう?あなただって、国を無くしたことを馬鹿にされたら嫌だし、悔しいでしょう?」
「く・・・!!」
ビアンカの問いにアーシェは一瞬、言葉に詰まる。
反論できないからだ。
 「あなただってわかるでしょう?例え本当でも、言われて傷つくことが誰にだってあるのよ。そういうことをしてはダメよ。そんなことをすれば、誰もあなたの友達になってくれないわ。一人ぼっちになってしまうわ。それに・・・あなたがそんなことをすれば、大切な人達を傷つけることにもなるのよ?そうなったら悲しいでしょう?」
ビアンカはアーシェにわかってもらいたくて、話しかけ続ける。
 「く・・・・!!」
アーシェは板挟みになる。
ビアンカの言うことが正しいのはよくわかる。
だが、あんな下品な中年男に頭など下げたくない。
自分と同じ王族だからこそ、絶対に嫌だった。
それに、人前でお尻を叩かれる屈辱を味合わされた上、謝らされるのも悔しい。
 (でも・・何よりも・・・!!)
アーシェは睨み殺さんばかりの目でトロデ王を見つめる。
(あんな・・魔物みたいな人をどうして・・・!!)
ビアンカが自分では無く、トロデ王に肩入れしている。
それが、悔しくてたまらない。
そのことが、アーシェをさらに頑なにしていた。
 「う・・・うるさいわね!ど、どうしていつもお節介ばかりするの!あ、あなたには関係無いわ!!」
「アーシェ、そういうことじゃないでしょう?」
「うるさいと言っているでしょう!私のことなんか放っておいて!!迷惑なのよ!いい加減にしないと本気で怒るわよ!!」
怒りのあまり、アーシェはそう言う。
 「アーシェ、本気でそう言っているのかしら?」
ビアンカは険しい顔で尋ねる。
「だ、だったら何よ!いい加減にして!私にこんな辱め・・絶対に許さないわ!!」
「よくわかったわ。なら・・私も容赦しません!!ルカニ!バイキルト!!」
本気で怒ったビアンカは、アーシェのお尻の守備力を下げ、自分の攻撃力を倍にする。
直後、再び手を振り上げた。
 ビッダァァァァ~~~~~~~ンンンッッッッ!!!
「くぅ・・!!ああっ!!」
呪文で格段に増した苦痛に、アーシェは声を上げてしまう。
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~ッッッッッッッ!!!!!
「あ・・ああああっっ!!な・・何をするのっ!!」
耐えがたい苦痛に、アーシェは思わず振り返って抗議する。
「全然反省してない悪い子には、うんと厳しいお仕置きです。覚悟しなさい」
ビアンカはそう言うと、さらに平手を振り下ろす。
 バアッジィィィィィ~~~~~~ンンンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~ッッッッッ!!!
「く・・!やめ・・やめなさいっ!やめなさいと言っているでしょう!!」
「悪い子の声は聞こえません。しっかり反省しなさい」
アーシェの抗議を無視して、ビアンカはアーシェのお尻を赤く染め上げてゆく。
 バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~ッッッ!!
「く・・やめ・・やめなさい・・!く・・痛・・痛ぃ・・・痛いっ・・や・・やぁ・・やぁぁぁ・・・・」
平手打ちはさらに降り続け、アーシェの声は抗議から悲鳴へと変わってゆく。
 バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~ッッッッッ!!!!!
「やめ・・やめて・・!く・・やめてっ!痛っ!痛いっ!!やぁ・・!!やだっ!!やめて・・やめてっ!!痛っ!痛いっ!痛いぃぃ!!やめてっ!痛いっ!やめてっ!!」
ついに耐えられなくなったアーシェはプライドも構わず叫びだす。
だが、それでもビアンカは容赦なくお尻を責め続ける。
激しい打撃音とアーシェの悲鳴が長い間、響き続けた。


 「うぅ・・うっう・・うぅぅうぅう・・・」
泣きそうになるのを堪えながら、アーシェは声を漏らす。
そのお尻はワインレッドに染め上がり、見るからに痛々しい。
 「アーシェ、ちゃんとトロデ王に『ごめんなさい』するかしら?」
一旦お尻を叩く手を止めて、ビアンカは尋ねる。
「い・・嫌です!!そ・・それくらいなら・・お尻が壊れる方を選びます!!」
涙目のまま、アーシェは振り返って言い放つ。
 「アーシェ、無茶を言わないで。そんなことをしたら、あなたはどうなるの?」
強情なアーシェを、ビアンカは説得しようとする。
「あ、あなたには関係無いわ!わ、私よりそこの下品な魔物王の方がいいくせに!!」
アーシェは思わず叫ぶ。
だが、直後、後悔する。
絶対に知られたくないことを、自分で言ってしまったからだ。
 「アーシェ・・もしかして・・トロデ王にやきもちを焼いたの?」
ビアンカは思わず尋ねる。
「ち、違いますっ!あ、あなたがあんな下品男を庇うのが嫌だなんて、お、思うわけありませんっっ!!」
慌てて否定するも、動揺した姿が、無言の肯定となる。
そんなアーシェを、ビアンカは優しく抱きしめる。
 「ごめんなさいね。私のせいで、悔しい思いをさせてしまったわね」
「あ・・あなたのせいよ!あ、あなたがお節介して・・そ、そのくせに・・他人にか、肩入れするから・・!お、おかしくなってしまったわ!!」
抱きしめられたまま、アーシェは不満をぶつける。
 「だから、私に責任を取らせてくれないかしら?」
「し・・仕方ありません。い、いいでしょう・・・」
「でも・・その前に、ちゃんとトロデ王に『ごめんなさい』しないとね」
ビアンカはアーシェを抱っこしたまま、そう言う。
 「く・・!ど、どうしてあんな人に・・・・」
「アーシェ、あなたには悪い子にはなって欲しくないの。お願いだから、聞いてくれないかしら?」
(な・・何でそんな目で見るの!?)
ビアンカは少し悲しそうな顔でアーシェに言う。
そんなビアンカに、アーシェは何だか罪悪感が沸いてくる。
 「く・・!し、仕方・・ないわね・・」
アーシェは渋々ながら、トロデ王の方を向く。
「わ・・私も・・い、言いすぎました・・・。ご・・ご・・ごめん・・なさい・・・」
恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、アーシェはようやく謝る。
 「ま・・まぁ・・いいじゃろう。ワ、ワシも大人げなかったからの」
「アンタはいつも大人げないでがすよ」
「余計なことを言うでないっ!!」
トロデ王はアーシェの事を許しつつも、ヤンガスの突っ込みに言い返す。
 「こ・・これでいいでしょう!さぁ!ちゃんと責任を取らないと許さないわ!!」
「わかったわ。では、どうして欲しいかしら?」
「こ、このまましっかり抱きしめていなさい!私は疲れたから寝るわ!起きるまで・・ちゃんといないと許さないわ!!」
そういうと、アーシェはそのまま静かに目を閉じる。
 「何とも・・安らかな寝顔じゃのう」
「だいぶビアンカに懐いたようでがすね」
アーシェの寝顔を見ながら、トロデとヤンガスはそう言う。
「ええ。何だかんだ言いつつも、皆とも打ち解けているようでよかったわ。私のことを慕ってくれているのも嬉しいわ」
ビアンカはそう言うと、優しい笑顔でアーシェを見守っていた。


 ―完―

喧嘩両成敗(いたストポータブルより:/アーシェ・ユフィ)



(いたストポータブルを題材にした二次創作です。許容出来る方のみご覧下さい)


 「やったやったっ!大勝利~~!!!」
ユフィは上機嫌で、ぎんこう城の廊下を歩いていた。
参加したゲームで見事に優勝したためである。
「賞金もたっぷりもらえたことだし、何に使おうかな~」
優勝賞金の使い道を考え、ニヤニヤ笑いが止まらない、そんなときだった。
 (あれ?)
ユフィはふと、誰かの声が聞こえてくることに気づく。
(誰だろ・・?)
耳を澄まし、よく聞いてみると、近くの部屋のドアが微かに開いているのが見えた。
静かに近づき、ドアの隙間からユフィは中を覗いてみる。
すると、アーシェとビアンカの姿が見えた。
アーシェはお尻を出したまま、ビアンカに抱っこされている。
お尻は濃厚なワインレッドに染め上がり、顔には涙の跡がくっきりと残っている。
お仕置き後なのは明らかだった。
 「も、もっとしっかり抱きしめなさい!!」
「これでいいかしら?」
ビアンカはアーシェの命令通り、しっかりと抱きしめる。
「まぁいいわ。って、手が動いてないわ!ちゃんとお尻を撫でなさい!!」
要望通り、ビアンカは抱っこしたまま、お尻を撫でてやる。
 「アーシェ、少しは楽になったかしら?」
お尻を撫でさすりながら、ビアンカは話しかける。
「この程度で楽になるわけが無いでしょう?そもそも・・あなたがこんな目に遭わせたのでしょう!?」
アーシェは思わずムッとして、言い返す。
 「でも、それはアーシェがスライム君にあんなことを言ったからでしょう?」
ビアンカの指摘に、アーシェは一瞬言葉に詰まる。
アーシェがまた、王族のプライドからスライムを傷つけるようなことを言ったからだ。
「あ・・あれは言いすぎました・・。でも・・だからってこんな目に遭わせなくてもいいでしょう!?どれだけ痛くて恥ずかしいと思っているの!?」
自分の非を認めつつ、お尻を叩かれた屈辱と苦痛に、アーシェはキッと睨みながら言う。
「辛い思いをさせたのは悪かったわ。でも、あなたには悪い子になって欲しくないの。それだけはわかってちょうだい」
「ま、全く・・迷惑なくらいにお節介ですね・・」
そう言いつつ、アーシェはこっそりこうも呟く。
「でも・・それは・・き、嫌いでは・・ないわ・・」
「え?何か言ったかしら?聞こえなかったのだけど?」
「な、何でもありません!そ、それより・・こんな痛くて恥ずかしい思いをさせたのですから、き、きちんと責任を取りなさい!そうしなければ許さないわ!!」
恥ずかしさを隠すように、アーシェはそう言う。
「わかったわ。あなたの望み通りにするわ。どうして欲しいかしら?」
「いいでしょう・・。私は疲れたからこのまま寝ます。起きるまで、ちゃんとこのままでいなさい。いいですね!!」
そう言うと、アーシェはそのまま静かに目を閉じた。
 「あらあら、疲れちゃったのね。無理も無いかしらね」
寝息を立て始めたアーシェに、ビアンカはそう言う。
「むぅ・・・。どこに行くの・・!離れてはダメと・・言ったでしょう・・?」
夢の中でビアンカが離れようとしたのか、アーシェはしっかりビアンカの服の裾を掴む。
 「ふふ・・。寝顔は天使みたいなのにね・・・」
すっかり安心しきった寝顔に、普段の高飛車で人を寄せつけない態度を思い返し、そう呟く。
「でも大丈夫だから。今だけは、好きなだけ甘えてね」
安心しきった様子で寝ているアーシェの頭を撫でながら、ビアンカはそう言った。
 (ナニナニ~~!?面白そうなモン見れたじゃない~~!!)
ユフィはニヤニヤ笑みを浮かべながら、小型ビデオカメラを回す。
アーシェがビアンカに甘えている姿を、しっかり撮影したのである。
 (コレでからかうのも面白そうだし・・マニア向けに売ればいいお金になるよね!!)
そんなことを考えつつ、ユフィは一部始終を撮影していた。


 (私と・・・したことが・・・・)
先日のお仕置きを思い返し、アーシェは苦々しい表情を浮かべる。
(あんな風に抱っこしろだの、お尻を撫でろだなんて・・!!恥ずかしいと思わないの!?)
お仕置き後、ビアンカに甘えた自分自身を、アーシェは罵る。
幼い子供のように、誰かに甘えるなど、何よりも恥ずべきことだった。
 (でも・・あんなに安心できたのはいつ振りかしら?)
一方で、アーシェはそんなことも思う。
レジスタンスに身を投じて以来、心安らぐ間など無かった。
あんな風に安心しきって、誰かに抱かれながら眠ることなど無かった。
 (何を考えているの!?私には安らぎなど必要ありません!!)
アーシェは、ふと思ってしまったことを必死に否定する。
(本当におかしいわ!?そんなことでどうするの!?)
自分を必死に叱咤していたそのときだった。
 「あっれ~?アーシェじゃない~。そんなトコでナニ百面相してるの~?」
不意にユフィが現れたかと思うと、話しかけてきた。
「話しかけないで。慣れ合うつもりなどありません」
アーシェは露骨に嫌そうな表情で言う。
 「そこまで嫌わなくていいじゃない~。そりゃあ私はビアンカさんじゃないけどさ~。でも・・ウププ・・」
ユフィは言いかけて、思い出し笑いをする。
「何がおかしいの?」
「え?だってさ~、普段のそのツンツンした態度からは全然想像出来ないよね~。ビアンカにあんなに甘えてるトコロなんてさ~~」
「な・・何のことです?」
動揺しそうになるのを堪え、アーシェは問い返す。
 「誤魔化そうったってダメだよ~。見たんだから~。ビアンカに抱っこしろとか、お尻撫でろとか言ってるのさ~。いや~、本当に傑作だったよねぇ。ウプププ・・・・」
ユフィは再び笑いそうになるのを堪えて言う。
「な・・・・!!??」
アーシェは恥ずかしさに顔を真っ赤にする。
「み・・見たのね・・!?」
「も~バッチリだよ~。あーっ!面白かったー」
(な・・何てこと!?)
アーシェは愕然とする。
絶対に見られたくない姿を見られてしまったからだ。
「いや~、ツンツンしてるのに、実は甘えん坊なんだ~。カッワイイ~。よかったらユフィちゃんが抱っこして、お尻撫でてあげようか~?」
調子に乗って、ユフィはアーシェをからかう。
(ゆ・・許せない・・!?)
アーシェはユフィに怒りを覚える。
恥ずかしい姿を見たことも、自分をからかうことも。
無意識のうちにアーシェはユフィを突き飛ばしていた。
 「痛っっ!!」
壁にぶつかり、思わずユフィは声を上げる。
直後、顔を壁に向けた状態で押さえつけられる。
「な、何すんのよ!?」
文句を言うユフィに対し、アーシェはユフィを押さえつけたまま、片手を振り上げた。
 バンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「うわっ!何すんのよっ!?痛いってばっ!!」
アーシェは服の上からユフィのお尻を叩く。
痛さに思わずユフィは文句を言う。
 「黙りなさいっ!!よくも・・よくも・・!!」
アーシェは怒りのあまり、思い切り手を振るう。
バンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「ちょっ!痛いって言ってんじゃないのっっ!!やめなさいよっ!!」
「黙りなさいと言ってるでしょう!この覗き魔!?コレだから庶民の人は・・!!」
「ちょっと!今何て言ったのよ!?謝りなさいよ!!」
「あなたこそ謝りなさい!この恥知らず!!」
「言ったな~!アタシだって怒ったんだからっ!!」
ユフィはそう言うと、アーシェを突き飛ばし返す。
同時に、今度は自分がアーシェを壁に押さえつけた。
 バンッ!バンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「な・・何をするの!?やめなさい!!」
お尻を叩くユフィに、アーシェは抗議する。
「何言ってんのさ!自分だって叩いたくせに!!」
ユフィはそう言うと、アーシェのお尻を叩き返す。
 「やめなさいっ!!よくもっっ!!」
アーシェは必死にもがいて、ユフィの脛を蹴っ飛ばす。
「痛・・・!!よくもやったな!?」
「こちらの台詞です!よくも私にあんな辱め・・!!」
互いにカッとなり、喧嘩を始める。
やがて、ぎんこう城の警備兵達が騒ぎに気づき、駆けつけるまで、喧嘩は続いた。


 (何て・・馬鹿なことを・・・)
アーシェは後悔せずにはいられなかった。
(感情に任せて喧嘩なんて・・・。見苦しいと思わないの?)
自分の振舞いを振り返り、己を責めずにはいられない。
 「ああ~~っ!どうしよどーしよっ!マズいじゃん!!」
一方、ユフィも頭を抱えていた。
「このままじゃ絶対にまたお仕置きじゃん!!どうしよ~~~!!」
(全く・・今さら何を・・・)
ユフィの振舞いに、アーシェは思わず不快感を覚える。
 「全く・・見苦しいわね・・」
ユフィを見ながら、アーシェはそう言う。
「自業自得というものでしょう?嫌なら最初からやらなければいいわ。これだから・・・全く・・庶民の人達は・・」
「ちょっとっ!またバカにしたでしょっ!?」
ユフィは思わずカッとなる。
 「あなたの振舞いを見れば当然でしょう?情けないと思わないの?」
「人の事言えるの!?そっちだってビアンカにあんな甘えてたくせに!?」
「あ、あれは違います!せ、責任を取らせるためにし、仕方なくしているだけよ!?」
「嘘言わないでよ!?あれは本気で甘えてたじゃんか!!」
「あ、甘えてないわ!!」
「いーや!絶対ビアンカに甘えてる!?」
「よくも・・嘘を・・」
「何!?やる気!?」
いきり立った二人は、再びやり合おうとする。
 「こら!二人とも何してるの!!」
突然、叱る声が響き、二人とも振り向く。
いつの間にか、ビアンカとティファの姿があった。
 「な・・何でもありません・・」
アーシェは平静を装って答える。
「アーシェ、ダメでしょう?喧嘩なんかしては・・」
「け、喧嘩などしていません!き、聞き間違いだわ!!」
喧嘩をしていたと思われたくないため、アーシェは必死に否定する。
 「まぁいいわ・・・。それよりアーシェ、覚悟はいいかしら?」
「く・・!」
アーシェは悔しげな表情になる。
お尻を叩かれるなど、願い下げだ。
だが、ユフィの前でそんなことは言えない。
ユフィを馬鹿にした以上、お仕置きを嫌だなどとは言えない。
自分も怖がっていると思われてしまう。
そんな風に思われるくらいなら、お尻が壊れるほど叩かれる方を選ぶ。
それがアーシェのプライドだった。
 「わ・・わかっています!わ、私はユフィなんかとは違うわ!!」
せめてものプライドを保とうと、アーシェはそう言う。
そして、堂々とした態度を装って、椅子に腰かけたビアンカの元へと向かう。
だが、ビアンカの傍まで来たところで、足が止まってしまう。
 (何をしているの!?早く乗りなさい!?)
アーシェは自分を叱咤するが、足が進まない。
「あっれ~?やっぱり怖いんだ~?」
「ち、違いますっ!!」
馬鹿にするような口調のユフィに、アーシェは思わず言い返す。
(このままでは・・!!こうなったら・・!!)
覚悟を決めて、アーシェは飛び込むようにビアンカの膝にうつ伏せになる。
「さぁ!乗ったわ!こ、これでいいでしょう!?」
ビアンカやユフィに向け、アーシェはそう言う。
 「アーシェ、それは反省してる態度じゃないわよ?」
「う、うるさいですね!こ、こうして素直にお尻を差し出しているのですからいいでしょう!!」
ビアンカの注意に、アーシェは思わず言い返す。
「まぁいいわ。それよりアーシェ、しっかり反省するのよ」
ビアンカはそう言いながら、アーシェのお尻をあらわにする。
「も、もったいぶらないで!た、叩くならさっさとやればいいわ!!」
プライドを保とうと、アーシェはそう言う。
ビアンカは片手でアーシェの身体を押さえると、もう片方の手を振り上げた。
 「さてと・・ユフィ・・あなたも覚悟はいいわね?」
アーシェがビアンカの膝に乗るのを尻目に、ティファもユフィにそう言う。
「ちょ、ちょっとタンマ!か、勘弁してよっ!は、反省してるからさ!?」
ユフィはお仕置きを逃れようと、必死になる。
 「ダメよ。ユフィも悪かったんだから!さぁ、来なさい!お仕置きよ!」
「じょ、冗談じゃないわよっっ!!」
ユフィはとっさに逃げ出そうとする。
それを読んでいたティファはドアに先回りし、ユフィを取り押さえてしまう。
 「ちょ、ちょっとっ!離せってば~~!!」
ユフィは必死に抵抗する。
だが、ザンガン流格闘術の使い手であるティファ相手では空しい抵抗だった。
 「ダメよ!全く・・逃げたりなんかして・・!!」
ティファは少し怒った表情を浮かべると、ユフィを膝に載せてしまう。
「だぁぁーー!やめろってばー!痴女っ!変態ーー!!」
お尻を出され、ユフィは絶叫する。
「さぁ、行くわよ。覚悟はいいわね?」
ティファは片手を振り上げて言う。
「いいわけないじゃないっ!バカッ!やめろよっ!!」
ユフィの抗議を聞き流し、ティファは手を振り下ろした。


 バッシィィィィ~~~~ンンンッッッ!!!
「くぅ・・・!!」
(ダメよ!ユフィやティファもいるのよ!!)
思わず声を漏らしてしまった自身を、アーシェは叱咤する。
他人の前で見苦しい姿などさらしたくない。
より苦しい思いをすることになってもと、アーシェは必死に声を押さえる。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
弾けるような音と共に、お尻に痛みが走る。
アーシェはビアンカの服の裾を掴む両手に力を込め、声を出すまいとする。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「アーシェ、ダメでしょう?喧嘩なんかしたら・・」
お尻を叩きながら、ビアンカはお説教を始める。
ピシャンッ!パァンッ!パンッ!パシンッ!パァンッ!
「く・・・!し・・仕方・・ない・・でしょう・・!あんなところを・・・見られて・・」
お尻の痛みに顔をしかめつつ、アーシェは言う。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「く・・!しかも・・あんなことを・・言われて・・!!ゆ・・許せなかったのよ!!」
ユフィの顔を見ながら、アーシェはそう言う。
恥ずかしいところを見られた上に、それをネタにからかわれる。
アーシェにとっては、何よりも恥ずかしく、悔しいことだった。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「悔しい気持ちはわかるわ。年頃の女の子ですもの。誰だって恥ずかしいし、嫌に決まってるわよね」
お尻を叩きながらも、ビアンカはアーシェに共感を示す。
 「く・・!な・・ならば何故・・くぅ・・!!」
どうして叩くのか、とアーシェは抗議するように言う。
「でもね、あなたがしたことはよくないことだわ。ユフィだってあなたに叩かれて痛かったはずよ。幾ら許せないからって、人に暴力を振るうのはよくないことよ。それに、喧嘩騒ぎなんて起こせば、逮捕されるかもしれないのよ。そうなれば、大切な人達を悲しませてしまうわ。それでもいいの?」
(そんなワケ・・・ないでしょう・・・!!)
そう思ったが、アーシェは心の奥に飲み込んでしまう。
こんな風にお尻を叩かれ、お説教された上で頭を下げるのが嫌だったからだ。
もちろん、ビアンカが正しいこと、自分に非があることはよくわかっている。
だが、つまらないプライドだと承知した上で、素直に頭を下げるのは嫌だった。
 「う・・うるさいわね!あ、あなたには関係無いわ!!い、いつも言ってるでしょう!?いちいち構わないで!私の身内でも、ダルマスカ国民でも無いくせに!!迷惑だと言っているでしょう!!」
素直に謝るのが癪で、アーシェはそう言ってしまう。
 「アーシェ、そういう態度はいけないと言っているでしょう?悪いことをしたら、素直に『ごめんなさい』でしょう?」
ビアンカは少し厳しい表情を浮かべて言う。
「う、うるさいと言っているでしょう!聞こえなかったの!!こ・・こんな目に遭わせて!い、いい加減にしないと本気で怒るわよ!!」
持ち前のプライドから、アーシェはそう言い放つ。
 「アーシェ?本気でそう言っているの?」
「そ、それが何だというの!は、離しなさい!!」
「そう・・。よく・・わかったわ・・・」
ビアンカは呟くように言ったかと思うと、呪文を唱える。
 「ルカニ!バイキルト!」
「く・・・!!また・・!?」
お尻の感覚が変わったことに、アーシェは思わず呟く。
 「アーシェ、これが最後よ。ちゃんと『ごめんなさい』しなさい」
ビアンカは最後の警告をする。
「嫌です・・!それくらいなら・・お尻が壊れる方を選びます!!」
アーシェは顔をそむけながら、そう言う。
「わかったわ。じゃあ・・・私も許しません!!」
ビアンカはそう言うと、呪文で攻撃力を強化した平手を振り上げた。
 バッシィィィィ~~~~ンッッッッッ!!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!!!
「く・・・!!くぅぅ・・!!あっ・・!あああ・・!!」
散々に叩かれた上、防御力を下げられたお尻には過酷過ぎる平手打ちが襲いかかる。
耐えようとするも堪えきれず、アーシェは声を漏らしてしまう。
 ビッダァァァァ~~~~~~~ンンンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッ!!!!
「く・・!あ・・!痛・・!やめ・・やめなさい・・!こ・・こんなこ・・くぅぅ・・!!」
抗議しようとするが、痛みに声は悲鳴へと変わってゆく。
 バアッジィィィィ~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~ッッッッ!!!
「やめ・・やめなさ・・やめ・・やめてっ!!ああっ!痛っ!痛ぁぁぁ!!痛いっ!痛いっ!やめてぇぇぇぇ!!!」
プライドをかなぐり捨てて、アーシェは許しを乞い始める。
だが、ビアンカは容赦なく平手を振り下ろし続ける。
アーシェの悲鳴と、厳しくお尻を叩く音、それらがない交ぜになって部屋に響き続けた。


 アーシェのお仕置きが始まるのとほぼ同時に、ユフィのお仕置きも始まった。
バッシィィィ~~~ンッッ!!
「い・・痛ああっっ!!」
強烈な平手打ちに、ユフィは悲鳴を上げる。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「だぁぁっ!何すんのよっ!!」
「何すんのよじゃないでしょう?ユフィこそ何をやってるの?」
お尻を叩きながら、ティファはお説教を始める。
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「人のお仕置きを覗いた上に、それをからかうだなんて・・ダメでしょう?」
「る、るさいなぁ!ちょ、ちょっとしたイタズラじゃないっ!!」
ティファのお説教に対し、ユフィはそう言い返す。
 「そういうのはイタズラにしてもよくないわよ。あなただって、お仕置きされてる姿を見られて、それをネタに馬鹿にされたり、笑われたら嫌でしょう?」
お尻を叩きながら、ティファはそう言い聞かせる。
「う・・。だ、だってさ・・い、いつもいつも庶民のくせにとか馬鹿にするからっ!だ、だから仕返ししてやろうって!そ・・それに・・マニア相手に売ればいいお金に・・!?」
途中まで言いかけてユフィはハッとする。
こんなことを言えば、ティファの怒りをさらにかき立ててしまう。
 「そう・・。そんなことを考えてたのね!?そんな悪い子は許さないわよ!!」
バンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「うわあああああっっっ!!」
さらに強くなった平手打ちに、ユフィは足をバタつかせる。
(ヤバイじゃんっ!こうなったら・・・)
ユフィは必死に策を考える。
お仕置きから逃げるためなら、プライドなど構わない。
ユフィはそう考えると、さっさと謝ってしまおうという結論に達する。
 「ごめんなさいっ!!も、もうしないからっ!!アタシが悪かったからっ!ごめんなさいっ!!」
(おかしいわね・・)
早々に謝るユフィに、ティファは疑念を覚える。
素直に反省するようなタイプでは無いのは知っているからだ。
(まさか・・!!)
反省したと嘘を言って逃れる気では、その可能性をティファは考える。
(なら・・・)
すぐに対策を考え、ティファは口を開いた。
 「ダメよ。心から反省したと、私が思うまで叩くわ」
「ちょ、ちょっとっ!そりゃないじゃんかっ!!」
慌てるユフィを尻目に、ティファは平手を振り下ろす。
バンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「だぁぁぁっ!痛っ!痛いっ!痛いってばっ!!」
ユフィは悲鳴を上げるが、ティファは容赦なくお尻を叩く。
 「い・・痛いって言ってるじゃんかぁ!!この・・鬼っ!悪魔っ!鬼畜っ!!大根足ババアッッ!!」
平手打ちの雨に、思わずユフィはそう言ってしまう。
「ふ~ん、やっぱり反省したなんて嘘だったのね・・・」
ティファの言葉にユフィは慌てて弁解する。
「ち、ちち違うって!く、口が滑っただけで・・・!!」
「ダメよ!人をからかったり、喧嘩なんかした上に、嘘をついてお仕置きから逃げようなんて!そんな悪い子は許さないわ!!」
ティファはそう言うと、さらに力強く平手を振るう。
 バッジィィィ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッ!
「ぎゃああああ!!痛いぃぃぃぃぃぃ!!!」
豪雨のような平手打ちにユフィは絶叫する。
 ビッダァァァァ~~~~ンンンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~ッッッッッ!!!
「ティファぁぁぁ!!ごめんなさぁぁーーいっっ!!今度こそ本当に反省したからーー!!」
ユフィは泣き声を上げながら、必死に謝る。
「ダメよ。身にしみて反省しなさい」
ティファはそう言うと、ユフィのお尻に平手の雨を降らせる。
「うわああああんんん!!ごめんなさーーいっっ!!もう・・二度としませんからぁぁーーーーーーー!!!」
その後、ユフィの悲鳴が長い間、響き続けた。


 「ぐぅ・・うっ・・うぅうぅうぅう・・・」
「ひぃん・・・ひぃいぃぃいんん・・・・・」
泣きそうになるのを必死に堪えるアーシェの呻き声、ユフィのすすり泣く声、それらが共に部屋に響いていた。
二人のお尻は既に熟れすぎたリンゴやトマトさながらに染め上がっている。
火炎系の最強呪文でも喰らったかと思うほど、熱くなっていた。
 「くぅ・・ひっ・・ぐぅ・・・ひぃん・・・」
「痛い・・痛いってばぁ・・・。ご・・ごめんなさぁぁい・・・」
堪えようとしつつも、悲鳴が混じるアーシェに対し、ユフィは泣いて謝る。
 「ユフィ、反省したかしら?」
ティファは一旦お尻を叩く手を止めて、ユフィに尋ねる。
「した・・!したからっ!も・・もう・・叩かないで・・!!」
「じゃあ、ちゃんとアーシェに『ごめんなさい』出来るわね?」
「する・・するからっ!!あ、アーシェッ!ご、ごめんなさいっ!!に、二度としないからっ!!」
「アーシェ、私からも謝るわ。ユフィには二度とあなたを馬鹿にしたりさせないから、許してくれないかしら?」
ユフィを膝に載せたまま、ティファも謝る。
 「あ・・あんな辱めをされて・・そう・・簡単に・・ああっ!!」
まだ許せず、謝罪を拒否しようとしたアーシェに、ビアンカがお尻を叩く。
「ダメでしょう?ちゃんと『ごめんなさい』したのだから、許してあげなきゃ。それに・・あなたもちゃんとユフィに『ごめんなさい』しなさい」
「な・・何故・・私が・・!!も、元はといえば・・・」
「確かにユフィがからかったのは悪いわ。でも、あなただってユフィを叩いたりしたでしょう?お互い様なんだから、あなたも謝って」
「い・・嫌ですっ!!それくらいなら・・いっそお尻を壊して下さいっっ!!」
謝りたくなくて、アーシェはこの期に及んでも意地を張る。
 「アーシェ、あまり頑固だと・・・また広場でお尻を叩くわよ?」
「な・・・!!」
ビアンカの脅しに、アーシェは愕然とする。
「それだけじゃないわ。また、恥ずかしい札を下げて、お尻を出したまま立ってもらうけど、それでもいいの?」
アーシェにちゃんと謝ってほしいため、ビアンカは敢えて容赦ないことを言う。
「く・・!し、仕方ありません・・!!わ・・わかりました・・!謝れば・・よいのでしょう!?く・・!ご・・ごめ・・ごめん・・なさい・・!!」
広場でまたさらしものにされるよりはと、アーシェは顔を真っ赤にしながらユフィに謝る。
「ちゃんと謝れてよかったわ。さぁ、二人ともお仕置きはおしまいよ」
そう言うと、ようやくビアンカはお尻を叩く手を降ろした。


 「ひ・・!!ひぃぃっ!!ちょっとっ!もっと優しくやりなさいよっ!!」
薬を塗るティファに、ユフィはそう文句を言う。
「仕方ないでしょ?よく効く代わりに沁みるんだから」
「うぅ~~。散々だよ~~」
ぼやくユフィを尻目に、アーシェもビアンカから手当てを受けていた。
 「く・・・!!」
「アーシェ?沁みたかしら?」
「これくらい何と・・ううっっ!!」
平気だと言おうとするも、お尻の痛みに、アーシェは顔をしかめる。
 「もう・・相変わらず意地なんか張って・・。痛いなら素直に痛いって言いなさい」
「私には弱音などはいてい・・な、何をやっているの!?」
突然、抱きかかられた上にお尻を撫でられ、アーシェは思わず声を上げる。
 「え?だって疲れたでしょう?遠慮しないで休んで」
「い・・いりませんっ!」
「それは困るわ。あなたにこんな痛い思いをさせたのだから、責任を取らせて欲しいの。それでもダメかしら?」
アーシェが受け入れやすいように、ビアンカはそう言う。
 「く・・!し、仕方ありません!そ、そこまで言うなら許すわ・・。ユフィ!?何をニヤニヤしているの!?」
お尻に氷袋を載せたまま、ニヤついているユフィに、アーシェは思わず言う。
 「イヤ~。何か嬉しそうだな~って。やっぱりビアンカさんに甘えるの好きなんじゃないの~?」
「あ、甘えてなどいません!!せ、責任を取らせるためにしているだけです!べ、別に・・好きなんかじゃ・・し、仕方なくよ・・!!」
「ユフィ、からかったらダメと言っているでしょう?あなただけ、広場で叩いてあげようかしら?」
ティファがわざと怖い顔をしてユフィに言う。
「じょ、冗談だって!?も、もう馬鹿にしないから勘弁してよ!!」
またお仕置きされてはたまらないと、ユフィは必死に弁解する。
 「全く・・・懲りてない人ね・・・」
アーシェはそう言いつつ、疲れたのだろう、目を閉じてしまう。
そしてそのまま、寝息を立てて寝入ってしまった。
 「あらあら、疲れて眠っちゃったみたいね」
すっかり眠ったアーシェにビアンカは優しい笑顔を浮かべて言う。
「へぇ・・アーシェってこんな顔も見せるのね」
すっかり安心しきった寝顔に、ティファは意外と言いたげな表情で言う。
「でしょでしょ~?だから写真でも撮ればって思ったんだよね~。って叩く真似しないでよっ!!」
三人それぞれ、アーシェの寝顔にそう言いながら、寝ているアーシェを見守っていた。


 ―完―

イカサマの代償 アーシェ&マーニャ編(いたストポータブルより:/アーシェ・マーニャ)

(いたストポータブルを題材にした二次創作です。SO2ルシアシュ悪魔&神父パロのキャラもゲスト出演しています。許容出来る方のみご覧下さい)


 「く・・・!!」
アーシェは悔しさに顔を歪め、ジッと表彰台を見つめる。
表彰台には1位から3位までの参加者の姿がある。
優勝者のスライムは喜びに勢いよく何度も跳ねている。
一方、準優勝だったユフィは、優勝できなかった悔しさに、アーシェ同様顔を歪めていた。
そんな二人を、部屋の片隅で、アーシェは恨めしそうにジッと見つめていた。


 「優勝おめでとう!!頑張ったわね!」
「あ、ありがとう!!ビアンカさんのおかげだよ!」
表彰式終了後、スライムはお祝いの言葉を言うビアンカにお礼を言う。
中々優勝できないスライムに同情し、特訓をしてくれたからだ。
その甲斐あって、念願の優勝を果たせたのである。
 「スライムくんの努力のたまものよ。皆で優勝を祝って酒場でパーティするから行きましょう」
「ありがとう!」
スライムはお礼を言うと、ビアンカと共に酒場へ向かっていった。


 「く・・!!何をやっているの!?私は・・・!!」
拳を壁に叩きつけたくなるのを我慢し、アーシェは呟く。
(これで何度目の負けだと思っているの!?恥を知りなさい!!)
アーシェは苛立ちのあまり、自分を罵る。
もう既に、数回続けて負けていたからだ。
 (しかも・・あんなハンター風情や魔物にまで・・・!!)
ユフィとスライムの顔を思い出し、アーシェはさらに苛立つ。
敗北自体悔しいが、特にユフィとスライムにまで負けたことは、王族としてのプライドを何よりも傷つけられた。
 「あらら~、随分イライラしてるわね~」
不意に聞こえた声に思わずアーシェは振り向く。
すると、いつの間にかマーニャの姿があった。
 「何のつもりです?用が無いなら話しかけないで」
イライラしているところを見られ、アーシェは不機嫌な声で返す。
「そうツンツンしなくていいじゃないのよ。あなた、最近負けが込んでるんでしょ?」
「そ・・それが何ですか!あなたには関係ありません!!笑いたいならすればいいわ!!」
苛立ちのあまり、アーシェはマーニャにそう言う。
 「別にそんなつもりないわよ。私だって実を言うと負け続け。それも・・ミネアなんかに!!ああもうっ!悔しいったらありゃしないわ!!」
マーニャは今までの敗北を思い出し、怒りに燃える。
彼女もアーシェ同様、負けが込んでいる。
特に、妹であるミネアに完敗しているのが、姉としてのプライドをいたく傷つけられていた。
 「それがどうしたのです?あなたの負けは私には関係ありません」
そう言いつつも、アーシェは耳を立てている。
自分同様、負け続けな境遇が気になるのだろう。
 「だからね、わかるのよ。悔しいって気持ちが。あなたもどうしても負けたくないって相手がいるでしょう?」
「え・・えぇ・・・」
アーシェはユフィとスライムの顔を思い出しながら答える。
 「だからさ、いい方法を伝授してあげようと思ったわけよ」
「憐れみですか?だったらいりません!!」
持ち前のプライドから、アーシェは拒否しようとする。
「違うって。私も勝ちたいからよ。あなたが上手くいったら、次は私が使おうと思ってるのよ」
「つまり、実験台ですか?」
アーシェはムッとしつつ尋ねる。
「まぁそういうことだけど・・・嫌ならいいんだけど?」
「い・・嫌とは言っていません!で、どういう方法なのです?」
「あなた、ユフィがミネアにお仕置きされた件は知ってるわよね?」
「あ、当たり前です!馬鹿にしないで!!」
「実は・・・ユフィがそのときに使ったサイコロとコントローラーがここにあるのよね~」
そう言って、マーニャは特製イカサマサイコロとコントローラーを差し出す。
 「これが秘策ですか?何を考えているの?バレたのを忘れたの?」
アーシェは呆れたように言う。
このイカサマがバレ、ユフィがミネアに厳しいお仕置きをされたのは周知の事実だったからだ。
 「あれはやり方が悪いのよ。続けて何度も操作して、露骨な目の出し方をしたからバレたのよ。たまにならバレないわよ」
「ですが・・・・」
アーシェは躊躇う。
確かに負けるのは悔しい。
だが、イカサマというのもいかがなものか。
 「あら?スライムにすら負けて悔しくないの?それとも・・あなたのプライドはその程度なのかしらね?」
挑発するようなマーニャの態度に、アーシェは思わずムッとする。
「わかりました!やりますわ!これで・・今度こそ勝利を収めてみせます!!」
「ふふ。その意気よ。期待してるわ~」
挑発に乗り、イカサマを了解したアーシェに、マーニャは笑みを浮かべた。


 「く・・!どうすれば優位に立てるというの・・?」
アーシェは思わず弱気になる。
下手をすれば最下位転落という事態に立ちつつあるからだ。
 (本当はやりたくないけど・・・仕方ないわ・・・)
アーシェは他の参加者にバレないよう、コントローラーを操作する。
出来ればイカサマなどしたくはない。
だが、また負けるのも嫌だった。
スライムにすら負けるくらいなら、それがアーシェをイカサマへと駆り立てる。
サイコロを操作し、アーシェは自分の都合のよい目を出し、進む。
 「あ~あ~っ!せっかく独占したのに~~!!」
スライムは悔しげに言う。
アーシェが通過したエリアはスライムが独占したエリア。
エリアを独占すると、買い物料が一気に上がる。
どれか一店でも止まれば、高額の買い物料が収入として入って来る。
だが、アーシェが止まらないで済む目を出したため、素通りされてしまったのである。
 「残念でしたね。さぁ、あなたの番よ」
(よかったわ・・バレなくて・・・)
平静を装ってスライムにサイコロを渡しつつ、アーシェはイカサマがバレなかったことに安堵する。
だが、安心はしていられない。
しばらく何事も無く進んでいたが、今度はあと一つ店を買えばユフィが独占、というエリアへ差しかかる。
 (ここも抜けないと・・・幸い・・・奥の店は私のものだわ)
アーシェは慎重に操作し、エリア内の一番奥にある店に止まれる目を出す。
奥の店はアーシェのもの。
止まれば増資が出来る。
アーシェは自分の店に止まると、すかさず増資をする。
 「あ~~っ!増資されちゃった~~!!」
ユフィは思わず悔しがる。
増資されれば、それだけ買い物料が上がる。
止まれば高い出費を迫られる。
また、店の値段が上がるため、五倍買いも難しくなる。
それだけ、店を手に入れにくくなる、というわけだった。
 「感情をあらわにするのはみっともないわ。もう少し冷静になることね」
ユフィにそう言いつつ、アーシェはホッとする。
(今度もバレなかったわ・・・)
ユフィはこのイカサマを知っている。
だから、バレるかもと思ったのだ。
 (意外と・・バレないものね・・・。これなら・・・確かに勝てるわ!!)
ユフィにもバレなかったことに、アーシェはイカサマに自信を持つ。
(見ていなさい!あなたたちなんかに、絶対に負けないわ!!)
アーシェはスライムとユフィに、密かに闘志を燃やす。
やがて、アーシェはだんだんとサイコロを操作する回数を増やしていった。


 「ねぇ、ミネアさん」
「何です?忙しいから話しかけないでくれません?」
ミネアは苛立ちを押さえつつ、尋ねる。
最下位転落と思われたアーシェが巻き返し、逆にトップに躍り出ようとしているからだ。
下手をすれば、こちらが最下位になりかねない。
 「あのさ、アーシェ、やたら調子良すぎに思えない?」
「そう思いますわ!ここぞというときにイイ目ばかり!まるで誰かが操・・!?」
ミネアは思わず言いかけて、ハッとする。
 「ユフィさん・・まさか!?」
「かもね~。まぁ証拠が無いから何とも言えないんだけど~」
「ちょっと待って下さい!」
ミネアはそう言うと、占いを始める。
 「どうやら・・・ユフィさんの想像は当たっているようですね・・・」
占いの結果に、ミネアはそう呟く。
「ユフィさん、あなたは証拠を挙げて下さい。私は・・ちょっと出てきます」
「え?どこ行くの?」
「ええ、どうも共犯がいるようですので。その共犯を挙げてきます」
そういうと、ミネアは試合場を後にする。
 「証拠ねぇ・・。どうしようかな・・そうだ!!」
ユフィは手袋らしきものを取り出す。
「へっへーん、マジシャンハンド、手に入れておいてよかった~」
マジシャンハンドとは、SO2の世界に存在するアイテム。
セリーヌと知り合って手に入れたものだ。
これを装備すると、ある特技を行えるようになる。
ユフィはマジシャンハンドを装備し、何食わぬ顔で自分の番が回って来るのを待つ。
 「どうしたの?あなたの番よ?」
アーシェはそう言うと、サイコロを渡そうとする。
「ああ!ごめんごめん。ちょっと考え事しててさー。あっっ!!」
受け取ろうとしたその時、ユフィはバランスを崩す。
その勢いでユフィはアーシェに倒れ込み、二人ともステージ上へ倒れてしまう。
 「何をしているの!?危ないでしょう!?」
「ごめんごめん、ついフラッとしちゃってさ~」
「ふらっとではないわ!怪我をしたらどうしてくれ・・!?」
アーシェは文句を言おうとしかけて、違和感に気づく。
 「何何?もしかしてこれかな~?」
ユフィはアーシェの目の前にコントローラーを突きつける。
「な・・何故あなたが!?」
「へっへーん。悪いけど、ピックポケットさせてもらったよ~」
ユフィはニヤリと笑みを浮かべて言う。
ピックポケットとは、SO2の世界に存在する特技。
いわゆるスリ行為で、他人からお金やアイテムを盗むことが出来る。
 「コレ、アタシが前に使ったイカサマ用コントローラーだよね~?何でアーシェが持ってるのかな~?」
「あ、あなたには関係ありません!!」
「そうはいかないよ~。スライム、悪いけどビアンカさん、呼んできて~」
「く・・・!!」
アーシェは一瞬逃げ出そうとする。
だが、それを読んだユフィがすかさず口を開いた。
 「あれれ?恥ずかしくないの?スリがバレて逃げるなんてさ~。それが王女様のすること?」
「ば・・馬鹿にしないで下さい!あ、あなたのような見苦しい真似などしません!!」
思わずアーシェはそう言うが、直後後悔する。
こんなことを言えば、自らのプライドにかけて、逃げることは出来ない。
「そうだよね~、王女様なんだから、逃げたりなんてしないよね~」
「と、当然です!あなたと一緒にしないで!」
墓穴を掘るのがわかっていても、アーシェはそう言ってしまう。
やがて、スライムと共にビアンカが場内へ駆け込むように入って来た。


 「アーシェ!?ほ、本当なの!?あなたがイカサマをしたって・・?」
まさか、信じられない、そう言わんばかりの表情を浮かべながら、ビアンカは尋ねる。
「だったらどうだと言うのです?あなたには関係無いわ」
そんなビアンカに、アーシェはいつものように、愛想の無い態度で言う。
 「そういうわけにはいかないわ。さぁ、アーシェ、ちゃんと皆に『ごめんなさい』しましょう?私も謝るから」
ビアンカはアーシェにそう言う。
「嫌です、何故私がこんな人達に頭を下げなくてはいけないの?」
アーシェはユフィとスライムを見やりながら言う。
 「アーシェ?イカサマは悪いことでしょう?それはあなたにもわかるでしょう?」
謝るのを拒否したアーシェに、ビアンカは厳しい表情になる。
「うるさいですね。あなたには関係無いわ。身内でもないくせに、構わないで」
謝るどころか、アーシェは反抗的な態度をとる。
「そう。わかったわ。そういう悪い子には・・私も容赦しません!!」
ビアンカはそう言うと、アーシェを無理やりに連れだす。
 「く・・!!何をするの!?離しなさい!!」
アーシェは抵抗するが、それを無視してビアンカはアーシェを広場へと連れ出す。
「ちょっとっ!ミネアッ!離しなさいよっっ!!」
同じ頃、アーシェをそそのかしたマーニャも、ミネアに広場へと連行されていた。
 「あら、ミネア?どうしたの?アーシェ達とゲームしていたんじゃないの?」
「ええ、実はアーシェさんのイカサマの件で・・どうやら姉さんがそそのかして、入れ知恵をしたのがわかりましてね」
「何ですって!?本当なの!?」
ビアンカは思わず尋ねる。
 「ええ・・。身内ながら・・恥ずかしいですよ・・」
「ちょっと!言いたい放題言わないでよね!!」
文句を言う姉を無視し、ミネアは話を続ける。
 「それで・・・姉さんも共犯ですから、懲らしめないとと思いまして」
「そうね。ちょうど二人とも揃っているし、やりましょうか?」
「それはいいですね。ちょうど皆さんも見てますし」
「ちょっとっ!ミネア!私達を置いて何勝手に話進めてるのよ!?」
危険を感じ、思わずマーニャは叫ぶように言う。
 「アーシェッ!どうしてくれるのよ!あなたが失敗なんてしたから・・!!」
「私のせいにしないで下さい!あなたこそ・・・・」
「ダメでしょ!二人とも喧嘩しない!!アーシェ・・・覚悟はいいわね?」
喧嘩しそうになる二人を止め、ビアンカは厳しい表情で問いかける。
 「嫌だと言っても、どうせ叩く気なのでしょう?好きなだけ叩けばいいわ」
せめて自分のプライドを保とうと、アーシェは挑発するような態度を取る。
「そういう態度はよくないでしょう?まぁいいわ。しっかり反省するのよ」
ビアンカはそう言うと、慣れた手つきでアーシェを膝に載せ、お尻をあらわにする。
 「く・・・・!!」
屈辱感にアーシェは顔を赤くしそうになるが、皆の視線を前に、平静を装う。
「じゃあ、行くわよ。いいわね?」
「いちいち言う必要などありません。さっさとやればよいでしょう?」
アーシェは振り返り、キッと睨みつけながら言う。
ビアンカは片手でアーシェを押さえ、もう片方の手を振り上げた。
 「姉さん、覚悟はいいかしら?」
「いいわけないでしょっ!離しなさいよっ!!ちょっとっ!何してるのよーー!!」
対照的に、マーニャはもがいて逃げようとする。
ミネアが腰布を取ろうとしているのに気づき、思わず声を上げた。
 「え?お尻を出さないとお仕置き出来ないでしょう?それもわからないのかしら?」
ミネアは目が笑っていない笑顔で言うと、姉の腰布を取ってしまう。
「いやーっ!何するのよっ!痴女っ!変態ー!訴えてやるからーー!!」
「姉さん、言いたいことはそれだけかしら?」
再び、恐ろしい笑みを浮かべると、ミネアはパドルを手にする。
そして、下着こそ履いているものの、丸出し同然なお尻目がけ、振り下ろした。


 バッシィィィ~~~~ンッッッ!!
「く・・・!!」
(何をしているの!?見られているのよ!)
声を漏らしそうになる自分自身を、アーシェは叱咤する。
その他の参加者達も見ているのだ。
泣き叫ぶような醜態だけは見せたくなかった。
 パンッ!パンパンッ!パンパンパンッ!パンパンパンッ!
「アーシェ、ダメでしょう?イカサマなんてしたら・・・・」
お尻を叩きながら、ビアンカはお説教を始める。
 パンッ!パンッ!パンパンッ!パンッ!パンパンッ!パンパンッ!
「・・!・・!・・!・・!・・!」
お尻を叩かれるたび、アーシェは苦痛に顔を歪める。
だが、決して声を漏らすまいと、耐え抜く。
 パンパンッ!パンッ!パンパンッ!パンッ!パンパンッ!
「イカサマは悪いことなのよ?あなただってわかっているでしょう?」
静かに、言い聞かせるように、ビアンカはお説教を続ける。
「う・・うるさい・・わ・・!あ・・あなたには・・関係・・く・・!ありません・・!!」
アーシェはお尻の痛みに顔をしかめつつ、言い返す。
イカサマがいけないのは承知している。
しかし、それを言われるのは癪でたまらなかった。
 「そういうことを言うものじゃないわよ、アーシェ。例え相手が誰であろうと、忠告は素直に受けるものよ。それに、悪いことをしたら素直に『ごめんなさい』をして」
お尻を叩きながら、ビアンカはそうお説教をする。
イカサマは確かにいけないことだ。
だが、それよりも、ビアンカには、アーシェの事が心配だった。
平気でイカサマをするような悪い子になってしまえば、誰とも友達になれないし、せっかく出来た友達も失ってしまう。
それがアーシェにとって、良いはずは無い。
 「う・・うるさいわね!わ、私には・・構わないで!!」
パンッ!パンパンッ!パンッ!パンッ!パンパンッ!パンッ!
お尻を叩かれる苦痛に顔をしかめながら、アーシェはあくまでもそう言う。
 「アーシェ、そうはいかないわ。あなたが平気でイカサマなんかするような子になれば、ご両親だって悲しいでしょう?ダルマスカの人達だってそうでしょう?」
「く・・・・!!」
ビアンカの言葉にアーシェは思わず黙る。
自分のしたことが、両親や国民に顔向けできるものでは無いことはわかっていた。
だが、それを他人に言われたくは無かった。
自分のつまらない意地なのはわかっている。
それでも、素直になれなかった。
 「う・・うるさいわね!!か、構わないでと言っているでしょう!?ダルマスカ国民でも無いくせに!!偉そうに説教なんかしないで!!そ、そもそも、何様のつもりなの!?いつも人に構って!うっとおしいのよ!!それに・・こんなことをして!!は、離しなさい!!いい加減にしないと、私も本気で怒るわよ!!」
自分のしたことを他人の口から責められる悔しさ、誘惑に負けてイカサマに手を出した自分自身への苛立ち、それらがない交ぜとなって、アーシェはビアンカにそう言い放つ。
 「アーシェ、本気でそう言っているのかしら?」
さすがのビアンカも、反省の見られないどころか、逆ギレなアーシェに、声のトーンが変わる。
その雰囲気に一瞬、アーシェは飲まれかけるが、持ち前のプライドから言い返す。
 「だ、だったら何ですか!?い、いい加減に離しなさい!公衆の面前でこんな目に会わせて!ぜ、絶対に許さないわ!!」
「そう・・。あくまでもそうなのね。わかったわ・・・」
ビアンカは静かに言うと、呪文を発動する。
「ルカニ!」
「く・・!何をしたの!?」
アーシェは思わず尋ねる。
急にお尻の痛みが増したからだ。
 「お尻に呪文をかけたわ。お尻の守備力は大幅に下がったはずよ」
「な・・何ですって・・!?」
アーシェは表情が変わりそうになるのを堪える。
「そして・・バイキルト!!」
ビアンカは攻撃力を高める呪文を自分自身にかける。
 「アーシェ、最後の警告よ。皆に素直に『ごめんなさい』しなさい」
「い・・嫌です!こんな風にはずかしめられた上に屈服するくらいなら・・・。お尻が壊れる方を選びます!!」
ビアンカの警告を、アーシェはあくまでも突っぱねる。
「そう・・・。なら、私も容赦はしないわ」
そういうと、ビアンカは思い切り手を振り下ろした。
 バッシィィィィ~~~~ンンンンッッッッ!!!
「く・・うぅうぅぅ・・・・!!!!」
今までとは格の違う苦痛に、アーシェは悶え、声を上げる。
 バンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「く・・!ああっ・・!やめ・・やめなさい・・!」
バンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「やめ・・なさい・・!いい加減に・・しないと・・!ああ・・!うっ・・!うぁぁ・・!」
アーシェはあくまでも抵抗を続けるが、激しいお仕置きに、やがて悲鳴が増してくる。
 バンッ!バンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「やめ・・!やめ・・なさい・・!やめ・・やめて・・!やめて・・!!」
完全に耐えきれなくなり、ついに命令の言葉が懇願に代わる。
 バンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「やめ・・!やめてっ!い・・痛いっ!やめて・・・!!やめてっ!!」
「ダメよ。今日のアーシェは本当に悪い子だったわ。まだまだ反省しなさい」
「そ・・そんなっ!ああっ!やめてぇぇ!!い・・痛いっ!やぁぁぁぁ!!やめてぇぇぇ!!」
もはやプライドもかなぐり捨てて、アーシェは悲鳴を上げる。
「やぁぁぁぁ!やめてぇぇぇ!!許してっっ!!いやぁぁぁぁぁ!!」
アーシェの悲鳴とビアンカのひたすらお尻を叩く音、それらがない交ぜになって広場に響きわたった。


 バッシィィィィ~~~~~ンッッッッ!!!
「きゃああああ!!」
パドルを思い切り叩きつけられ、マーニャは悲鳴を上げる。
 「ちょ、ちょっとっ!何すんのよーーー!!」
「言ったはずですけど?お仕置きですよ、姉さん」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
「何爽やかな顔で叩いてんのっ!痛っ!ひっ!や、やめなさいよっ!!」
笑顔でパドルを振るう妹に抗議するマーニャだが、ミネアが聞くはずもない。
 バンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「全く・・何をやってるんですか・・姉さん・・」
呆れた口調でミネアはお説教を始める。
 バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「後先考えないで・・馬鹿なことばかりする姉さんだとは思ってましたけど・・・」
「ちょ、ちょっとっ!何言ってんのよっ!!馬鹿にしてんのっ!!」
「え?馬鹿になんてしてませんよ。だって、本当のことですから」
毒舌入りのお説教に怒るマーニャに、ミネアはさらに毒舌で返す。
 バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!バンバンッ!
「よりにもよってアーシェさんにイカサマの入れ知恵とは・・・。本当に恥ずかしい姉さんだわ・・・。情けなさ過ぎます・・・・」
「う、うるさいわねっ!!ア、アーシェが上手くいけば私だってやれると思ったのよっ!!そ、そうすればミネアなんかケチョンケチョンにやっつけて・・・」
「へぇ~、姉さん、私を倒そうなんて考えてたのかしら?」
「う・・うるさいわね!!わ、私のオマケ扱いのくせに!!妹のくせして生意気よ!!姉をたてなさいよっ!!」
妹にお仕置きされる屈辱に、マーニャは思わず言ってしまう。
 「お・・オマケ!?よ・・よくも気にしてることを!?も、もう・・許しません!!」
ミネアは別のパドルに持ち替えたかと思うと、思い切り振り下ろす。
ビッダァァァァ~~~~~~~ンンンンッッッッ!!!!
「きゃああああ!!な、何よそれっっ!!」
マーニャは思わず声を上げる。
見るからに凶悪で痛そうなデザインの上、熱風だか雷撃だかまで表面から吹き出している。
 「ああ?これかしら?双剣使いの美青年神父にべたぼれな魔王の特製パドルですけど?」
「ちょ、ちょっとっ!アタシを殺す気!?」
下手をすればお尻がズタズタになって死ぬのでは、それほど恐ろしげなパドルに、マーニャは叫ぶように言う。
「お尻を叩かれたくらいで死にません、姉さん。しっかり反省して下さいね」
ニコリと笑みを浮かべると、ミネアは恐怖の特製パドルを振り下ろす。
 バッジィィィィ~~~~ンッッッッ!!!!
ゴオオオッッッ!!
「!!!!!!!!!!!!」
骨まで響く痛み、同時に肌に襲いかかる熱風、それらの苦しみで、マーニャは声にならない声を上げる。
「ひぃぃぃぃ!ミネアッ!許してえぇぇぇ!!ア、アタシが言いすぎたからっ!!」
パドルのあまりの痛みに、マーニャはプライドを捨てて謝る。
 「いいえ。姉さんのお尻はまだまだパドルを下さいと言ってます。これからですわ」
「いやぁぁぁぁ!!やめてぇぇぇぇ!!ごめんなさぁぁぁいいい!!」
謝るマーニャだが、ミネアは容赦なくパドルを振り下ろす。
その後、マーニャの絶叫が広場にこだました。


 「く・・・・!!」
「ううう~~~~!!こんなことになるなんて~~~!!」
アーシェは屈辱感に顔をこわばらせ、マーニャは後悔の涙を滝のように流す。
二人とも真っ赤に染め上がり、幾周りも腫れ上がったお尻を出したまま、立たされている。
その首には『私たちは悪い子で、イカサマをしたのでお尻ペンペンされました』という札を下げていた。
ようやくお尻叩きからは解放されたものの、まだまだ許してもらえず、恥ずかしい姿でさらしものになっているのである。
 「アーシェの馬鹿っ!あなたが失敗なんてするから~~!!」
「わ、私のせいにしないで下さい!あなたも同罪でしょう?」
文句を言うマーニャに、アーシェは思わず抗議する。
 「アーシェ・・アーシェ・・・」
不意に呼びかけられ、思わずアーシェは振り向く。
すると、いつの間にかビアンカの姿があった。
 「な、何の用ですか?」
アーシェは思わず険しい表情になる。
「もうあなたも十分反省してくれたでしょう?さぁ、帰りましょう」
「い、嫌です!あ、あなたの手など借りま・・くぅぅぅ!!」
アーシェは拒否しようとするが、お尻の痛みに座りこんでしまう。
 「ダメよ。無理をしたら」
「く・・!!あなたがやったのでしょう!?自分でしておいて・・・」
「ええ。だから私に責任を取らせてくれないかしら?あなたに痛い思いをさせた責任を取るために、あなたの手当てや世話をする。それでどうかしら?」
ビアンカはアーシェが受け入れやすいように、そう言う。
「それなら・・仕方ありません。その代わり・・しっかり責任を取らないと許しませんからね!!」
「わかったわ。さぁ、行きましょう」
ビアンカはそう言うと、アーシェを連れて広場を後にしようとする。
 「ちょ、ちょっとっ!私も連れてってよ!!」
「ダメですよ。姉さんはまだ反省タイムです」
思わずビアンカに懇願するマーニャだが、ミネアがそれを却下する。
「そんな~~!!ずるい~~!!」
「当然です!姉さんが諸悪の根源なんですから!またこのパドルで叩きましょうか?」
ミネアは例の熱風が出るパドルを見せる。
「わ、わかったわよ!立ってるから!し、しまいなさいよ!!」
「わかればいいんです。私が戻るまで、しっかり反省してて下さいね」
ミネアは笑顔で言うと、ビアンカと共に広場を出て行ってしまう。
「うう~~~っ!本当・・・散々だわ~~~~」
一人残されたマーニャは、再び滝のような涙を流していた。


 同じ頃・・異世界のある街の小さな教会・・・。
「ルシフェル~。お昼だよ~~」
アシュトンはドアを開け、中に向かって呼びかける。
部屋の中では、銀髪の美男子が工具を手にして、作業をしていた。
尖った耳が人では無いことを示していた。
「む?もうそんな時間か?」
振り返ったルシフェルは、アシュトンにそう尋ねる。
金づちなどの工具を持ち、作業用エプロンや手袋をしているその姿は、とても魔界のナンバー2、魔王クラスの実力者とは思えない。
 「うん。あれ?何作ってたの?」
「うむ。特製パドルをな。安心しろ、アシュトンに使うものではないわ。注文の品だ」
「そ、そうなんだ・・・」
アシュトンは安堵するも、ドギマギしてしまう。
ルシフェルのパドルがどれほど痛くて辛くて怖いものかは、自分が一番よく知っているからだ。
 「そんなにパドルの注文って多いの?」
アシュトンは思わず尋ねる。
ここ最近、ルシフェルへのパドルの注文が増えているからだ。
なお、どういう風の吹きまわしか、アシュトンのお仕置き道具を作る経験を生かし、パドルをはじめとするお仕置き道具の製造販売を最近になって始めていた。
 「当然だろう?私が造るのだからな。あの小僧のような悪ガキでも、一度で良い子になると評判なのだ」
ルシフェルは自慢げに言う。
「そ、そうなんだ。よかったね」
ルシフェルお手製の道具を使われてお仕置きされる人に同情しつつ、ルシフェルの商品が好評なことにアシュトンは喜ぶ。
 「そうだ!儲けた金で旅行にでも行こうではないか!」
「ええ!?でも教会を放っては・・・・」
「構わん!善は急げだ!早速プランを立てねば!!」
「ああっ!待ってってばーーー!!」
一人で勝手に話を進めようとするルシフェルを、アシュトンは慌てて追いかけた。

 ―完―
プロフィール

山田主水

Author:山田主水
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