ダンジュー修道院40
(『青き狼たち』とリンクしています。その点をご了承の上でお読みください)
(そろそろ・・頃合いかなぁ?)
ラウールは時計を確認すると、静かにベッドを離れる。
いつものように、夜の街へ遊びに出ようという魂胆だ。
これまたいつものように、慣れた足取りで、気づかれずに、ラウールは院内を移動する。
(アレ?)
ラウールは、ふと立ち止まる。
夜の闇の中に、怪しい影を見つけたのだ。
(誰だろう?)
物陰に潜み、ラウールは様子を伺う。
その影は、おどおどしてして、見ていて危なっかしい。
こういうことに慣れていないのは明らかだった。
(ってアレ!?チサちゃん!?)
ラウールは、親友であるチサトだと気づく。
(僕に気づいたわけじゃないみたいだし・・。嘘!?チサちゃんが自分から抜け出すつもりなの!?)
ラウールは驚く。
街に遊びに出ようとした自分を連れ戻すためならともかく、チサトが自分から修道院を抜けだそうとするとは。
(あっ!?何か抱えてる!?)
同時に、ラウールはチサトが何か包みのようなものを抱えていることに気づく。
(何なんだろう?よし・・!!)
謎を突きとめてやろう。
そう決意したラウールは、チサトを追いかけはじめた。
夜の闇の中、チサトは林の中を進んでゆく。
普段、ラウールを連れ戻すために通っているからか、その足取りには迷いもためらいも無い。
ラウールも慣れた道のため、スイスイと進んでゆく。
やがて、二人にはなじみの小屋が見えてきた。
小屋は昔、修道院の山林の管理人が住んでいたもの。
今では廃屋になっているが、ラウールが夜遊びに行く時の服やお金の隠し場所として使っている。
チサトはあたりを見回し、誰もいないことを確かめる。
そして、ドアを潜る前にもう一度、慎重に周りを確かめてから、入っていった。
(中に・・何が?)
チサトの奇妙な様子に、ラウールはさらに疑念を深める。
ラウールは慎重に小屋に近づき、窓から中を覗き込む。
中にいたのは、チサトと、もう一人の人物。
チサトと同年代の少年で、怪我をしているらしく、身体のあちこちに手当ての跡がある。
チサトは包みを開くと、中からパンなどの食料を取り出す。
飢えているのか、食料を見るなり、少年は飛びつくように食べ始めた。
(一体何者だろう?)
怪訝に思いながら、ラウールは観察を続ける。
不意に、少年は、顔を上げ、こちらを見つめる。
(気づかれた!?)
次の瞬間、ラウールは嫌な予感を覚える。
屈んで顔を引っ込めた直後、乾いた音とともに、ガラスが割れる。
さらに、ドアが乱暴に開いたかと思うと、少年が、硝煙の匂いが残る拳銃を構えて現れた。
「動くんじゃない!!撃たれたくなければな!?」
銃口を向けながら、マチウス・ハーモニカは警告する。
「だ、ダメですよっ!?ラ、ラウールさん!?」
チサトは地面に座り込んでいるラウールに気づく。
「ま、待って下さい!!こ、この人は僕の友人です!!」
チサトはラウールの前に立ち、マチウスを説得しようとする。
それに対し、マチウスが何やらまくしたてるが、チサトは必死に説得する。
チサトの言うことを受け入れたのか、ようやくのことでマチウスは拳銃を降ろした。
「あ・・ありがとう・・チサちゃん・・・」
「い・・いいえ・・。よかった・・」
ラウールとチサトは、互いに顔を合わせて、安堵の息をつく。
「でも・・どういうことなの?」
「はい・・。実は・・・」
チサトはかいつまんで、事情を話す。
林の中での仕事をしていたとき、偶然、怪我を負って倒れているマチウスを見つけたこと、皆に知らせようとしたが、マチウスがすごい剣幕で誰にも知らせるな、と言ったこと、怪我の中には誰かに殴られたりしたようなものもあったことなど、から、密かに小屋に匿っていること、を話す。
「そうだったんだ・・」
「お、お願いです!だ、誰にも言わないで下さい!!」
「で、でもさ・・。後で厄介事に・・・」
そこで、ラウールはマチウスの姿が目に入る。
マチウスは、思わずラウールがギョッとしそうになるほど怖い顔を浮かべ、腰から銃を抜く素振りを見せる。
無意識に身の危険を感じるや、必死に首を縦に振っていた。
数日後・・・・。
(そろそろか・・・・)
傷の具合を見ながら、マチウスはそう呟く。
だいぶ治って来ており、旅立てるようになるのは時間の問題だった。
そのとき、外から物音が聞こえる。
ハッとして、マチウスは愛用の拳銃を抜く。
「誰だ?」
「ぼ、僕だよ!チサちゃんの友達の!?」
ラウールは窓から顔を見せて呼びかける。
「何の用だ?チサトはどうしたんだ?」
「そ、そのことだよ!?チサちゃんが変な奴らに捕まったんだよ!!」
「何だと!?まさか・・」
「心当たりあるの!?」
「少しあるさ。どこへ連れてかれたんだ?連れていけ!!」
マチウスは、ラウールにそう言うと、小屋を後にした。
ふもとの町の郊外、その一角に、今は廃墟となった、古い石造りの建物がある。
その建物のアーチから、縄で縛られ、チサトが吊るされていた。
修道服のあちこちが破れ、暴行を受けたのは明らかだった。
「クソ・・!!ガキのクセに・・!?」
男は苛立った様子で、吐き捨てるように呟く。
マチウスの居場所を吐かせようと、散々に痛めつけたにも関わらず、吐かないからだ。
「どうだ?吐いたのか?」
リーダー格の男が、拷問をしていた部下に尋ねる。
男はアジア系の顔立ちで、顔には生々しい傷跡がある。
部下同様、暴力を生業としている雰囲気を、全身から醸し出していた。
「ダメです。ガキのクセにしぶといヤツで・・・・」
「それで済むか!何としてもマチウスの居場所を吐かせろ!!ヤツのせいで、組長(オヤジ)や若頭(カシラ)、そして俺達がどうなったか、忘れたのか?」
「んなワケ・・ありませんや・・!!」
二人は顔を見合わせ、憎悪に顔を歪める。
彼らは元日本のヤクザ。
日本屈指の広域暴力団『芹沢組』の下部組織の構成員だった。
上部団体の命で、彼らの組はアメリカへ進出。
地元組織と友好や敵対関係を築きながら、徐々に勢力を拡大していた。
だが、ある時、重要な取引の際、警察の手入れを受けた。
その際の銃撃戦で、警察に協力していたブロンソン・マチウス父子によって、組長と若頭を撃たれて失ったのだ。
それによって、組は壊滅、生き残った組員達も散り散りとなった。
彼らも生き残りであり、各地を放浪しながら、ハーモニカ父子への復讐を狙っていた。
そのため、ヨーロッパへ来ていたところへ、同じようにやって来ていたマチウスを見つけ、復讐のために襲撃した。
あと一歩のところまで行ったのだが、そこでチサトによって、助けられたため、チサトをさらい、隠れ家を吐かせようとしているのである。
「兄貴・・!!ヤツが・・ヤツが来ました!?」
不意に、別の男がリーダーに注進に来る。
「確かか?」
「はい!間違いありません!!」
「よし!!ハジキは持ってるな!?今度こそ・・逃がすな!!」
元ヤクザ達は、それぞれ、ズボンや上着の下に隠していた拳銃を手にする。
緊張した面持ちで、復讐に燃える元ヤクザ達が見守る中、ゆっくりとマチウスが姿を現した。
マチウスは首にハーモニカを下げ、愛用の帽子とロングコートを身につけている。
少年とは思えない、堂々とした態度で、ゆっくりと、ヤクザ達の方へと向かってゆく。
「チサちゃんっ!!」
ヤクザ達の意識がマチウスに行っている隙をつき、ラウールはチサトを降ろす。
「ど、どうして知らせたんですか!?」
「いいからっ!早くこっちっ!!」
ラウールはチサトを連れて、安全なところに隠れる。
そして、恐る恐る、様子を伺う。
ヤクザ達は、拳銃を構えたまま、ジッとマチウスを注視する。
緊張のあまり、顔から汗がドッと噴き出し、顎から滴り落ちる。
だが、彼らは発砲しない。
抗争の経験から、拳銃はあまり距離があると、当たらないと知っているからだ。
撃ちたくなるのを堪え、ヤクザ達はジッとマチウスが間合いに入るのを待つ。
マチウスはゆっくりと、ヤクザ達に向かって進んでゆく。
そして、ついに拳銃の間合いに入ったその時、ヤクザ達は引き金を引いた。
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
4発の銃声が響いた直後、倒れたのはヤクザ達の方だった。
マチウスは全員、息絶えていることを確かめると、銃をガンベルトに戻す。
「うっわ・・!!」
ラウールは思わず感嘆していた。
ヤクザ達は既に銃を手にし、いつでも発砲出来る状態だった。
対して、マチウスはガンベルトに拳銃を納めていた。
既に銃を構えている複数の相手に、発砲する隙も与えずに返り討ちにするなど、早撃ちなどという次元では無い。
「う・・・・!!」
一方、チサトは今にも吐きそうな表情を浮かべる。
確かに、彼らは悪党だ。
実際、自分も彼らに拷問された。
マチウスやラウールが助けに来てくれなかったならば、殺されていただろう。
だが、それでも、彼らヤクザの死を喜ぶことなど出来なかった。
無意識に、チサトはヤクザ達のために、十字を切る。
その間に、マチウスは去ってゆく。
だが、不意に別のヤクザ二人が、こっそり、物陰からライフルと散弾銃を構えているのが見えた。
「危ないっ!!」
とっさにチサトは声を上げる。
気づいたマチウスは振り返り、隠れていたヤクザ二人に発砲する。
銃声と共に、ヤクザ達は銃を放り出し、地面へと倒れて息絶えた。
その後、再びマチウスは去って行った。
それからしばらく経ったある日、懺悔室にチサト達二人とバルバロッサの姿があった。
「なるほど・・・。そんな理由で・・ヤクザどもにさらわれたと・・?」
「は・・はい・・・」
恐ろしい顔で睨むバルバロッサに、戦々恐々とした様子で、チサトは返事をする。
マチウスの一件で、ラウール共々聞かれているのだ。
既にバレているし、嘘がつけないため、チサトは正直に全てを話したのである。
「こんバカッ!!何でそんな大事なこと隠しとったんじゃいっ!!」
マチウスをかくまっていたことを、バルバロッサは叱る。
「ご・・ごめんなさい・・!誰にも・・言うなって・・・」
「馬鹿正直に言う通りにする奴があるか!!チサト・・こげん真似して・・覚悟は出来とるやろうな?」
「は・・はい・・」
「だったら・・来いや・・・」
チサトはゆっくりと立ち上がると、おずおずとバルバロッサの方へと向かう。
そして、いつものように、バルバロッサの膝にうつ伏せになる。
バルバロッサは慣れた手つきで、チサトのお尻を出すと、片手で押さえつける。
「行くで?覚悟はエエな?」
「は・・はい・・・」
恐怖を感じながらも、チサトは頷く。
それを見ると、バロバロッサは思い切り手を振りかぶった。
バッシィィィ~~~ンンンッッッ!!
「い・・いたぁぁぁ・・!!」
最初から容赦ない平手打ちに、チサトは悲鳴を上げる。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「いっ!きゃんっ!やあっ!ああんっ!いたぁぁ!!」
強烈な平手打ちに、とても耐えきれず、チサトは悲鳴を上げ、身体を悶えさせる。
そんなチサトの姿を、ラウールは戦々恐々として、見つめていた。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「こんバカタレッ!バカタレッ!どないして、見つけた時に、せめてワシにくらいは言わんかったんやっ!!」
バルバロッサは怒りを込めて、お尻を叩く。
バルバロッサもかつて、裏社会の人間だったため、その恐ろしさをよく知っている。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「ご・・ごめんなさいっ!だ・・誰にも・・言わないでくれって・・ひいんっ!!」
「馬鹿正直に守る奴があるかいっ!?下手すれば、殺されとったんやぞ!?」
「ご・・ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
チサトは必死に謝るが、バルバロッサが許すはずもない。
「謝るんは当たり前や!二度とせえへんように・・骨身に沁みさせたるっ!!」
バルバロッサはそう言うと、叩き方を変える。
バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「きゃああああ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!いやっ!きゃああああ!!ごめんなさぁいっ!ごめんなさぁぁいい!!」
その後、ラウールが顔面蒼白で見つめる中、チサトの悲鳴が響き続けた。
「ごめん・・なさい・・ごめんな・・さい・・」
涙目になりながら、チサトは必死に謝る。
お尻は熱した石炭のように赤く、且つ熱くなっていた。
「反省したんか?」
「し・・しました・・。大事なこと・・隠して・・危ない目に遭って・・心配かけて・・ごめん・・なさい・・・」
「わかっとるようやな・・・」
バルバロッサはチサトを起こすと、膝の上で抱きしめる。
「チサト・・。人助けや・・その優しさはエエ・・。だがな・・・。そのために、危ない目に遭うこともあんのや・・・。下手をすれば・・ホンマに殺されとったんや・・。せめてのう・・そこのバカ以外には、ワシは言うとくれ。お前さんに何かあったら・・ワシはホンマに悲しいのや・・・」
「ごめんなさい・・・。心配かけて・・・」
「いいのや。チサト、お前さんは医務室行って、手当てしてもらえ。ワシは今度はヤツに用があるけぇのう」
ラウールを指差しながら、バルバロッサは言う。
チサトはお尻をしまうと、痛みを堪えながら、懺悔室を後にする。
「さてと・・・・・」
バルバロッサは、今度はラウールと向き合う。
「ご・・ごめんなさい・・。僕・・急にお腹の調子が・・」
そう言って出て行こうとするが、バルバロッサが逃がすはずもない。
「待てや。お前さんの腹痛はケツを叩けば治るで」
「い・・いやあああ~~~っっ!!」
逃げる間もなく、ラウールはバルバロッサの膝に乗せられ、お尻を出されてしまう。
直後、バルバロッサの手が、今度はラウールのお尻に叩きつけられた。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「こんバカタレッ!チサトはともかく・・お前までどうして大事なこと、黙っとったんじゃいっっ!!」
チサトに対する時以上の怒りを込めながら、バルバロッサはお尻を叩く。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「ひいいっ!チサちゃんに・・どうしてもって・・頼まれたんですってばーー!!」
「ダ阿呆ッッ!!理由になるかっ!!話聞けば、ヤバイことに巻き込まれそうなのは、わかりそうなもんだろうがっっ!!」
弁解するラウールに、バルバロッサはさらに怒りを燃え上がらせる。
命にかかわる事態になるかもしれなかったのだ。
きちんと、上に報告をしてもらわなければ困るのである。
バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!バシーンッ!
「ひいいっ!だ・・だって・・言えば・・バルバロッサさん・・怒るかも・・しれなかったし・・・・」
「隠しといて、こんな騒ぎになった方が、もっと怒るだろうが!?ワレ・・実家のお袋さんも話聞いて、たまげたのやぞ!?」
「え!?か、母さんが!?」
バルバロッサの話に、ラウールは驚く。
普段はいい加減なラウールだが、実家の母への愛は人一倍。
それだけに、驚かずにはいられなかった。
「そうや・・。お前さんがヤクザ連中の撃ち合いに飛び込んでったと聞いてな・・・エライ心配しとったんや・・。怪我はありませんか?とかな」
「そ・・そうだったんだ・・・」
さすがのラウールも母を心配させてしまったことに、罪悪感を覚える。
「さすがに少しは悪いと思ったか?なら・・・行くで・・」
「ちょ、ちょっと待・・・!!」
慌てるラウールだが、それより先に、バルバロッサの平手が降り注ぐ。
バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「ひいいいいーーーーーっっ!!や、やめてぇぇぇぇええ!!!」
集中豪雨のような平手打ちに、ラウールは絶叫する。
バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!バンバンバンッ!
「実家のお袋さんにまで心配かけおって!死ぬほど反省しいや!!」
「いやあああああああ!!ごめんなさぁぁぁいイイ!!!許してぇぇぇぇえ!!」
その後、チサトより長い間、ラウールの悲鳴が響き続けた。
「うう・・冷やしてるのに・・お尻・・熱いよぉぉ・・・」
「ラウールさん、大丈夫ですか?」
お尻の熱さを嘆くラウールに、チサトは心配そうに尋ねる。
二人とも、真っ赤なお尻をタオルで冷やしながら、医務室のベッドにうつ伏せになっていた。
「な・・何とか・・」
「ごめんなさい・・。僕のせいで・・・」
「いいんだよ。僕とチサちゃんの仲だし。いつもは僕のせいでお仕置きされてるから、コレでおあいこだよ」
申し訳なさそうに言うチサトに、ラウールは笑顔で答える。
そんなラウールの姿に、チサトは少し表情が和らいだ。
後日・・・。
パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!
「うわあ~んっ!母さんっ!ごめんなさーいっ!!」
お尻を叩く音と共に、ラウールの悲鳴が響く。
パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!
「なりません!ラウール、私が連絡を受けて、どれだけ心配したと思っているのです!?」
膝の上の息子のお尻を叩きながら、クラリスはお説教をする。
先日の一件で修道院から報告を受け、そのことで息子を叱りに来たのである。
パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!パアーンッ!
「ごめんなさーいっ!反省・・してる・・から・・・!!」
「当然です!二度と心配かけるようなことをしないよう、きつく叱ってあげます!!」
クラリスはそう言うと、息子のお尻を叩き続ける。
ようやく許された時には、バルバロッサのとき以上に、お尻が赤く、熱くなっていたらしい・・・・。
―完―
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