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最強組長と娘の日常2(父/娘、バイオレンスあり)



(バイオレンスありです。許容できる方のみご覧下さい)


 芹沢組組長・芹沢鴨継の邸宅。
一般人は無論、警察でさえ、おいそれは近づかない場所へ、ゆっくりと歩いてくる影があった。
影の正体は2メートルはあろう屈強な大男。
目出し帽で顔を隠し、布で包んだ棒状のものを肩に担ぐように持っている。
 怪しい男は、屋敷を取り囲む壁の前に立つ。
肩から荷を下ろすと、布を取り去る。
布の下から現れたのは、槍に三日月状の刃をつけた、方天戟と呼ばれる中国の長柄武器。
男はその方天戟を構えたかと思うと、壁目がけて突きを繰り出す。
直後、突きの一撃で壁が崩れ、人一人通れる穴が開く。
その穴を潜って、男は屋敷内へと侵入した。


 「何なのよ?こんな時間に!?」
寝ているところを組員達に起こされ、梛鴨は不機嫌極まりない表情を浮かべる。
「すいません、お嬢様。ですが・・早く出て下さい!!カチコミ(殴り込み)です!!」
「は・・?」
梛鴨はポカンと口を開ける。
 「お前、父さんに腕を潰された上、頭飛ばされて、馬鹿になったの?」
自分にカチコミだと告げた組員に、梛鴨は呆れた声で言う。
その組員は右腕に義手をはめている。
以前(最強組長と娘の日常)、梛鴨のワガママに巻き込まれたせいで、組長に竹刀で右腕を吹っ飛ばされ、頭を転がされた、哀れな運転手だった。
さすがに芹沢もやり過ぎたと思ったらしく、凄腕の闇医者のところへ連れて行って、手術を受けさせた。
首まで転がされたのだが、闇医者の人間離れした腕前のおかげで、首を繋げ、蘇生したのである。
残念ながら、腕は再度つなぐことは出来ない状態になってしまっていたため、義手をはめている。
まぁ・・細かいことは目をつぶっていただきたい(汗)。
 それは置いておいて、芹沢組といえば、日本最強と言ってもよい暴力団。
その本丸である組長の屋敷を襲撃するような馬鹿者など、普通は考えられない。
梛鴨が疑うのも無理は無かった。
 「嘘でも間違いでもありません!!本当にカチコ・・!?」
突然、乾いた音が連続して聞こえてきた。
思わず梛鴨は部屋を飛び出す。
「あっ!?待って下さいっっ!!」
義手の組員をはじめとする、組員達も後を追って、外へ飛び出した。
 縁側に出た梛鴨が最初に見たのは、短機関銃を構えた、数名の屈強な組員達。
そして、その組員達と睨み合う、方天戟を手にした、覆面の大男。
組員達は一斉に短機関銃を発砲する。
乾いた連続音と共に、銃弾の嵐が侵入者に襲いかかる。
同時に、男の方天戟が目にもとまらぬ速さで回転する。
金属の弾き合う音と共に、銃弾が悉く弾き落とされる。
組員達がハッとする間もなく、男は突入しながら、方天戟を一閃する。
直後、機関銃を構えた組員全員、吹っ飛ばされて絶命した。
 「何・・!?あの男・・やるじゃな・・きゃあっっ!!」
不意に複数の手で奥へと、梛鴨は引っ張り込まれる。
「お前たち!?何をするの!?」
「お嬢様!!早く逃げましょう!!」
「馬鹿言わないで!?あんなスゴイのを目の前に・・離しなさいってのよぉぉぉ!!??」
飛びかかりかねない梛鴨を、組員達は総出で押さえつける。
ジタバタと暴れる梛鴨を、組員達は必死に押さえつつ、さらに奥の安全な場所へと連れていった。


 それからしばらく経ったある日・・・・・。
「くそっ!?どこ行きやがった!!」
「まだ遠くには行ってねえはずだ!?絶対に探し出せ!!」
苛立ちの声を上げながら、芹沢組の組員達は、四方へ散ってゆく。
先日の組長宅襲撃を受け、組員達は躍起になって犯人を捜していた。
その犯人に通じる男を追っていたが、撒かれてしまったのである。
 「やれやれ・・・。やっと行ったか・・」
組員達が遠くへ去ったのを見届け、追われていた男が姿を現す。
男は中国人。
組長宅を襲撃した方天戟の男と依頼人との間を取り持つ仕事をした。
そのことを突き止められたため、逃亡中だった。
まごまごしていては、今度こそ捕まってしまう。
すぐに立ち去ろうとした、そのときだった。
 男はハッとした表情と共に、懐からロシア製の自動拳銃を抜き放つ。
直後、目の前に現れた影に、手首を強かに叩かれる。
「う・・!?」
苦悶の声と共に、男は拳銃を取り落し、路上に膝をつく。
 「フフ・・。見つけたわよ!?」
梛鴨は男の喉元に、鉄扇を突きつけて、ほくそ笑む。
「お嬢様、さすがですね!さぁ、コイツを事務所に連れ・・・うぐっっ!!」
義手の組員の言葉に、梛鴨は脛を蹴りつける。
 「何を馬鹿なことを言ってるの?そんなことをしたら、あの方天戟の男を私が仕留められないじゃないの!?組の連中に知られない場所へ連れていくのよ!?」
「お、お嬢様!?本気ですか!?そんな・・無茶で・・ごふううう!!」
「つべこべ言わない!?お前は私の言う通りにすればいいのよ!?」
梛鴨は義手の組員の急所をこれでもかと蹴りつける。
「わ、わかりましたぁぁ!!い、言う通りにしますぅぅぅ!!」
「わかればいいのよ!さぁ、さっさと行くわよ!!」
そんなやり取りの後、梛鴨と義手の組員は、捕えた男を引き連れ、その場を立ち去った。


 数日後・・・・。
「お嬢様・・。本当に・・やるんですか?」
目の前の倉庫を見ながら、義手の組員は恐る恐る尋ねる。
 「当然でしょう!?何のために、あの男をさらって、尋問したと思っているの?」
躊躇い、それどころか恐怖をあらわにしている組員に、梛鴨は馬鹿にしきった表情で言う。
あの後、梛鴨達は他の組員らにばれない場所へ男を連れて行った。
そこで、義手の組員や、口の堅い梛鴨に忠実な組員らに男を尋問(という名の拷問)させたのだ。
ヤクザ流の過酷な尋問の果て、男は屋敷を襲撃した男の隠れ家を白状したのである。
その情報を元に、二人は目の前の倉庫へやって来たのである。
 「フフフ・・・。あの男の骨や関節の軋む音・・きっと興奮するでしょうねぇ・・」
梛鴨は屋敷で見かけた男に関節技を極める瞬間、そしてその男の苦悶の表情を思い浮かべ、笑みを浮かべる。
彼女にとって、強い男の苦悶の声や、肉や骨が軋む音は、心地よいものであった。
 「ですが・・あの男・・只者じゃないようでは・・・」
義手の組員は不安な表情を浮かべる。
拷問という名の尋問の結果、わかった男の正体は、組員にとっては、不安を煽るものでしかなかったからだ。
 「何をビビっているの?その義手はただの飾りなの?」
梛鴨は組員が付けている義手を見ながら言う。
今日の組員の義手は、銃がついていた。
組員の義手は特殊な造りになっており、前の方が取り外し可能で、銃や刃物などの武器を取り付け、戦いに使えるようになっているのである。
今日の相手は只者ではないため、銃をつけてきていた。
 「ヤクザだって・・怖いモンは怖・・ごふっ!!」
組員の態度が気に入らないのか、梛鴨は鉄扇をみぞおちに突き入れる。
こちらも、普段の、扇子としても使えるモノではなく、鉄板を閉じた扇子の形にした、完全に武器用のものを持ってきている。
 「情けないことを言うんじゃないの!?さっさと、ついて来なさい!!」
「わ・・わかり・・ましたぁぁ・・!!」
腹の痛みを必死に堪え、銃付きの義手を構えながら、組員は梛鴨の後について、倉庫へ踏み込んだ。


 「呂天覇!?いるのはわかっているのよ!?大人しく出てきなさい!!」
緊張した面持ちで倉庫内を見回す組員を尻目に、梛鴨は倉庫中に聞こえる大きな声で、呼びかける。
だが、出てくる気配は無い。
 「く・・!?いないのかしら?」
「ってか、普通出てくるわけが・・がふっ!?」
鉄扇で顔面を殴りつけられ、義手の組員は思わずのけ反る。
 「つべこべ言わずに探しなさい!!」
「は・・はい・・。わか・・!?」
鼻血の出た顔を押さえながら、組員が返事をしかけた、そのときだった。
 組員の目の前に、大きな人影が現れる。
二人がまさに探している、呂天覇であった。
「で・・出ぇたぁぁぁーーーー!!!」
組員は思わず腰を抜かしそうになる。
だが、それでもヤクザとしての根性を発揮し、義手に装着した銃を発砲する。
至近距離からの発砲に、呂天覇の胴にまともに命中したように見えた。
だが、銃弾はめり込んだように見えたかと思うと、ポロッと床へ転がり落ちた。
 「!!??」
思わず組員は再度、数発続けて発砲する。
胸や腹に、銃弾が容赦なく撃ち込まれる。
しかし、呂天覇は微動だにせず、それを受けてみせる。
銃弾を身体で受け止めた呂天覇は、気合と共に、銃弾を弾き飛ばしてしまった。
 「な・・ぐうわあっっ!!」
義手の組員は恐慌のあまり、逃げようとする。
そこへ、方天戟が振り下ろされた。
 三日月状の閃光が迸ったかと思うや、組員の義手が半ばからスパッと切断されていた。
「!!??」
組員が驚く間もなく、呂の拳が叩きつけられる。
鈍い音と共に、義手の組員は倉庫の端まで吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられて、気絶した。
 組員に目を向けている隙を突いて、梛鴨は呂天覇に飛びかかり、右腕を取る。
得意の関節技をかけようとしたが、微動だにしない。
「く・・!?」
梛鴨は必死に腕を捻じろうとするが、逆に呂天覇に力づくで振り払われる。
振り払われた衝撃で、梛鴨は吹っ飛ばされ、床に叩きつけられた。
 「ぐ・・!?何をし・・!?」
起き上がりかけたところへ、方天戟を構えて、呂が突進してくる。
避けるのはとても間に合わない。
梛鴨が死を覚悟したそのときだった。
 突然、横から猛烈な勢いで鉄パイプが飛んできた。
パイプはまともに呂に命中し、呂は横へ吹っ飛ばされる。
梛鴨は思わず鉄パイプの飛んできた方向を振り向く。
 「父さん!?」
梛鴨は思わず声を上げる。
そこに、鴨継の姿があったからだ。
鴨継は動きやすい格好をしており、右手に刀を下げている。
刀は通常の者よりも幅広・肉厚な造りの頑丈なもの。
その頑丈な刀を中段に構え、呂天覇をジッと見据える。
呂天覇も方天戟を構え、芹沢と睨み合う。
 二人とも武器を構えたまま、ゆっくりと、回り込むように、横へと動き始める。
弧を描くように、横へ移動しながら、互いに間合いを詰めてゆく。
間合いを詰めながら、二人は殺気を全身から立ち上らせる。
二人の身体から立ち上る殺気を浴び、梛鴨は脂汗がドッと噴き出す。
そんな梛鴨を尻目に、やがて、二人は再び立ち止まる。
思いきり踏み込めば、相手に己の一撃が届く。
同時に、相手の一撃を食らいかねない。
そんなギリギリの距離で、両者は互いに睨み合う。
 睨み合いながら、両者とも殺気を相手へとぶつけ合う。
脂汗が噴き出し、焼けつくような痛みと渇きが、互いの喉を襲う。
胃腸を万力で搾り上げられるような苦しみに襲われながらも、二人は睨み合う。
少しでも怯めば、死が待っている。
それをよく知っていたからだ。
しばらく両者は睨み合っていたが、やがて限界に達する。
同時に、二人は得物を振り上げ、踏み込んだ。
 刃と刃が激しくぶつかり合い、火花を散らす。
甲高い音が何度も何度も響き、そのたびに刀と方天戟がぶつかり合う。
何度も立ち位置を入れ替えては打ち合うが、中々決着はつかない。
ついには、両者とも鍔迫り合いになる。
互いに足腰に渾身の力を込め、相手を押しのけようとする。
だが、力が拮抗しているのか、微動だにしない。
ついに、二人とも、互いに床を蹴って後ろへ飛び退いた。
 二人とも、荒い息を吐き、肩を上下させ、胸が膨らみ、或いは引っ込む。
しかし、目には荒々しい闘志が宿ったまま。
互いに得物を構えたまま、両者はジッと睨み合う。
 「あ・・!?」
梛鴨は父親の様子が、変わったことに気づく。
鴨継の息遣いが、今までとは違っていた。
同時に、足先から、だんだんと上がってゆくように、筋肉が盛り上がり、血管が浮き上がる。
やがて、血管と筋肉の浮き上がりは腕に達する。
それに伴い、鴨継の刀が、青い光に包まれてゆく。
 (え!?嘘・・!?『アレ』と使うつもりなの!?)
梛鴨は目を疑う。
父親の切り札が今まさに出ようとしていることに気づいたからだ。
思わず、梛鴨は呂天覇の方を見やる。
呂の方も、鴨継と同様に、全身の血管や筋肉が腕に向かって浮き上がり、或いは盛り上がっている。
そして、方天戟の穂先が、赤い光に包まれていた。
 鴨継、呂、両者とも、呼吸と共に、闘気を極限まで練り上げ、己の得物へと注入してゆく。
やがて、鴨継は刀を頭上に大きく振り上げる。
呂も、方天戟を一旦、後ろへ大きく引く。
(出る!?出るわ・・・!?)
梛鴨が確信を抱いたそのとき、鴨継が裂ぱくの気合と共に、渾身の一撃を床に叩きつけた。
 ゴオオオッッッッ!!!!
鼓膜が破れそうな轟音と共に、強烈な衝撃波が呂目がけて飛んでゆく。
通った跡には幅一メートルに渡って地面が削られ、まるで道が作られているように見えた。
 (本当に出たわ!?『陸津波(おかつなみ)』・・!!)
梛鴨は思わず舌を巻く。
闘気によって、身体能力と刀の耐久力を極限にまで高め、全力全霊の一撃を打ち下ろす。
それにより、衝撃波が発生し、さながら地上を津波のように疾走し、敵に襲いかかる。
その威力は凄まじく、組長専用リムジン(防弾ガラス・装甲板による完全防備仕様)を跡形もなく吹き飛ばしてしまったのを目撃したことがある。
そんな必殺の奥義を繰り出した以上、梛鴨は呂天覇が原形を留めず吹っ飛ぶのを確信していた。
だが・・・・。
 鴨継が衝撃波を放ったと同時に、呂が渾身の突きを繰り出した。
直後、方天戟の穂先から、真っ赤な巨大な馬の光弾が飛び出した。
光弾と衝撃波が互いにぶつかり合う。
ズンと腹に響きそうな鈍い衝撃と共に、両者は相殺され、消滅した。
(え・・!?ええええーーーーー!!???)
梛鴨は目を疑う。
父親の必殺の奥義が相殺される。
そして、そんな芸当のできる強者がいるなど、思いもしなかったからだ。
(って・・そんなヤツを相手にしようとしていたの!?)
今さらだが、梛鴨は顔から血の気が引く。
悔しいが、父親に叶わないのは認めざるを得ない。
その父親と本当に互角に戦える相手を仕留めようなど、無謀極まりない。
そのことにやっと気づいたのだ。
 さすがに二人とも、奥義を繰り出したためか、本当に息が荒くなってきている。
だが、それでも互いに得物を構える。
もはや技は無意味。
残る力を振り絞り、雌雄を決するように見えた、そのときだった。
 突然、車の走る音が響き渡る。
思わず梛鴨が振り向くと、軽トラックが倉庫内へ突入してきた。
その荷台には、覆面で顔を隠し、短機関銃を構えた男達が乗っている。
男達は梛鴨に狙いをつけると、車上から短機関銃をぶっ放した。
 思わず梛鴨は床に伏せる。
同時に、鴨継は床を蹴って、娘の元へと飛ぶように駆けつける。
目の前に、銃弾の雨が着弾したのが、父親の身体の下から僅かに見えるのを尻目に、車の走る音が遠ざかってゆく。
 「手間を駆けさせおって・・。馬鹿娘が・・!?」
「な、何よ!?馬鹿はないでしょ!?」
父親の言葉に、梛鴨はムッとした表情で言い返す。
その直後、武装した組員達がドッと駆けつけてきた。


 「ぎっひぃぃぃ!?も、もそっと優しく・・!?」
「これくらい我慢せんかい。一端のヤクザじゃろうが?」
思わず悲鳴を上げる義手の組員を叱咤しながら、組のお抱え闇医者が手当てを続ける。
 「しっかし・・お前も災難だなぁ。梛鴨お嬢様につき合わされて、また死にかけたな」
「兄貴・・。何とかならないんですかぁ?」
義手の組員は思わず兄貴分に愚痴る。
「悪い、無理だ。梛鴨お嬢様に連れ回されないように、こっちが用心するしかねえな」
「トホホ・・。あれ?そういえば、梛鴨お嬢様は?」
「あー・・・取り込み中だ。組長(オヤジ)とな・・・」
義手の組員の問いに、先輩組員は、遠い目をしながら、そんな返事をした。


 バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!
「きゃああああ!!な、何するのよぉぉぉぉ!!??」
骨まで響きそうな打撃音と共に、梛鴨の悲鳴と抗議の声が響き渡る。
鴨継の膝に乗せられた梛鴨のむき出しのお尻に、鴨継の強烈な平手打ちが叩きつけられる。
 バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!
「ひいいっ!やめっ!やめてよっ!?ちょっとっ!?お尻が壊れたら、どうしてくれるのよっっ!!って聞いてるのっ!?」
お尻を叩き続ける父親に、梛鴨は文句を言い続ける。
 バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!
「梛鴨・・。お前こそ、いつもいつも勝手なことばかりしおって!!ヤツが何者か、わかっているのか!?」
鴨継は娘のお尻を容赦なく叩く。
呂天覇は中国系の裏社会では知らない者は無い、腕利きの殺し屋にして闇武術家。
面白半分に手を出してよい相手ではない。
 バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!
「う、うるさいわね!?カチコミかけられたくせに、父さんたちがマゴマゴしてるのが悪いんじゃない!?恥ずかしくないの!?ヤクザの癖に!!」
「まだまともな分別も出来ん子供が、偉そうなコトを言うな!まだまだ・・仕置きが足らんようだな」
「え・・!?ちょ、ちょっと待・・きゃあああ!!」
バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!バッシィィーーンンッッ!!
再び強烈な平手打ちが振り下ろされ、梛鴨は絶叫する。
「いやぁぁぁぁ!!やめてぇぇぇ!!ごめんなさぁぁぁいいいい!!もう、しないからぁぁぁ!!」
「お前の『もうしない』は聞き飽きたわ。今日はいつも以上に仕置きしてやる」
父親の宣告に、梛鴨は絶望で目の前が真っ暗になる。
その後、長い長い間、お尻を叩く音と梛鴨の悲鳴が響いていた・・・。


 「失礼します・・組長(オヤジ)・・・」
静かに障子を開けて、新見が部屋へと入って来た。
「ううん・・・。父さんのバカァ・・!?」
鴨継の膝の上では、うつ伏せの梛鴨がそんな寝言を呟く。
真っ赤に腫れたお尻に冷たいタオルを載せた姿で、梛鴨は父親の膝の上で、うつ伏せに寝ていた。
 「もう、お嬢様の躾はお済みですか?」
「ああ・・。全く・・馬鹿娘が・・!!」
「組長(オヤジ)に甘えたいのでしょう。今回はヤンチャが過ぎましたがな。それはそれとして・・・呂天覇に依頼をしたヤツの正体がわかりました」
「誰だ?」
「はい・・。実は・・・」
新見は芹沢組と表向き友好関係にある組の組長の名を挙げる。
「なるほど・・・。最近おかしな動きをしておったがな・・・」
芹沢は新見が挙げた名に、納得した表情を浮かべる。
芹沢組の傘下団体に対し、裏で引き抜き工作を仕掛けていたのに気づいていたからだ。
 「はい。おおかた、組長(オヤジ)を亡き者にし、自分が操縦しやすい人間を後釜に据ええて、組を乗っ取ろうというところでしょう」
「そうか・・・。後のことはお前に任せる。二度とそんな不埒者が出ぬようにしろ」
「はっ。承知しております」
そう言うと、新見は部屋を後にした。
 その後、芹沢組と友好関係にある某暴力団の組長が、自動車事故で死亡した。
突然の組長の死により、組は動揺をきたし、内部抗争の危機も囁かれた。
そこへ芹沢が友好関係を理由に調停に乗り出し、親芹沢派の幹部らを組の首脳陣に据えることに成功、跡目相続が完了すると同時に、その組を傘下に組み入れた。
一連の事態のスムーズな経緯に、一部には芹沢組が図を描いたのでは、という噂も出たが、何故かその噂もいつの間にか立ち消えとなった・・・。


 ―完―

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最強組長と娘の日常(父/娘)



(青き狼シリーズの外伝です。暴力描写などがあります。許容できる方のみご覧下さい)


 茨城県水戸市郊外・・・。
住宅街の一角に、その屋敷はあった。
忍び返し付きの高い塀や高圧電流網で敷地全体が囲まれ、監視カメラ付きの門の脇には、屈強な男達が待機している。
男達の襟元には○の中に交差した扇子と『芹』の文字が入ったマークのバッジが付けられている。
このマークは水戸を本拠とする広域暴力団『芹沢組』の代紋(シンボルマーク)。
そう、この屋敷は芹沢組組長・芹沢鴨継(せりざわかもつぐ)の屋敷であった。
 屋敷の奥に設置された車庫。
車庫の中には、数台の車が置かれている。
その車を、丁寧に洗車しているヤクザの姿があった。
彼は運転手役の組員。
車の手入れも運転手の仕事のうち。
やり方が悪ければ、兄貴分たちから大目玉なだけに、真剣そのものであった。
 組員が作業をしている中、不意に誰かが入ってくる。
思わず、組員は振り向き、入ってきた人物を見つめる。
 現れたのは、ブレザー系の高校の制服を着た、16,7歳の少女。
腰まで届くルビーのように赤い髪と、同色の瞳の持ち主。
やや目つきがきつめで勝気そうな感じだが、美少女と呼ぶにふさわしい整った面立ちをしている。
体格の方も、一流モデル顔負けのスタイルをしていた。
 「お・・お嬢様、ど、どうしたんですか?」
運転手の組員は、作業の手を休め、どこか恐る恐るという感じの声で尋ねる。
少女の名は芹沢梛鴨(せりざわなお)。
組長である鴨継の実の娘である。
 「お前・・運転手かしら?」
梛鴨は手にした扇子を突きつけるようにしながら、尋ねる。
「は、はい・・」
「ならちょうどいいわ。車を出しなさい。出かけるから」
「へ?ですが・・組長から門限を言い渡されてたはずで・・」
途中まで言いかけたところで、梛鴨が持っていた扇子を組員の顔に叩きつける。
 「う・・!?」
組員は顔を押さえて呻く。
顔を押さえる手の下からは、鼻血がしたたり落ちている。
梛鴨が持っている扇子は、普通の扇子ではない。
武器としても使えるように、鉄製の親骨を使った鉄扇だった。
 鉄扇で叩くと同時に、梛鴨は急所である脛を蹴る。
おかげで組員はさらに強烈な痛みに襲われる。
「ゴチャゴチャ言わないで、言う通りにしなさい。それとも・・肘の一つも外さないとわからないのかしら?」
組員の腕を取り、関節を極めながら、梛鴨は言う。
「ひ・・!わ、わかり・・ました・・!!」
組員は必死に言う。
脅しではないことをよく知っているからだ。
「わかればいいのよ。さっさとしなさい。この愚図!!」
さらに機嫌を損ねては大変と、組員は急いで車を用意する。
梛鴨は用意された車に乗り込むと、組員に命じて、屋敷を後にした。


 市内の繁華街、芹沢組傘下のフロント企業所有の雑居ビル。
その地下室に、梛鴨と運転手の組員の姿があった。
室内には、金網製のリングが設けられ、その中で屈強な男達が、激しい格闘戦を繰り広げている。
周囲の観客席では、金や賭け券を握りしめた観客達が、興奮状態で試合を観戦していた。
 「まぁまぁの試合かしらね。まぁ・・KOFとかに比べれば、全然格が落ちるけど」
気の無い声で、梛鴨は試合を批評する。
やがて、決着がつき、柔道着姿の男が勝利の雄たけびを上げる。
 「あら・・?あの男・・もしかして・・芝浦(しばうら)かしら?元メダリストの」
「これはさすが梛鴨お嬢様!その通りです!あの・・芝浦真人です」
「なるほど・・。スキャンダルの果てに、賭け試合で食う裏格闘家にというわけね」
芝浦を見つめながら、梛鴨は納得したように呟く。
芝浦はかつて、柔道のオリンピック金メダリストとして、世間の脚光を浴びていた。
だが、コーチとなった大学の柔道部で、女性メンバーに対して、パワハラやセクハラ、さらには性的な暴力行為まで行っていた事実が告発された。
当然、メダルを初め、名誉も何もかも失ってしまった。
その後、どんどんと堕ちてゆき、ついには非合法な賭け試合で食っていくにまで成り下がってしまったのである。
 「ええ・・。ですがさすが元メダリスト・・ウチでも一番の稼ぎ頭です。あやつのおかげで、組長も最近はご機嫌です」
「へぇ、なるほど・・・。父さんの金のなる木ってワケね・・。もし・・あの男に何かあったら・・・父さん、怒るわねぇ」
「お・・お嬢様!な、何を考えてるんです!?」
何かを企んでいるような梛鴨に、思わず運転手の組員は尋ねる。
 「なぁに。ちょっとしたイタズラよ。お前・・耳を貸しなさい」
梛鴨は運転手の男に、小声で耳打ちする。
「そ・・それはマズイですよ!?や・・やめま・・うぐ・・!?」
組員のみぞおちに鉄扇が突き込まれ、組員はくの字に身体を曲げる。
その表情は苦悶に満ちていた。
 「ゴチャゴチャ言わないで、私の言う通りにしなさい。それとも・・もっと痛い目に遭いたいのかしら?」
梛鴨の気迫に、組員は黙って頷くことしか、出来なかった。


 一時間ほど後・・・近くの公園に、芝浦の姿があった。
(一体・・何の用だ?)
芝浦はイライラした様子で、園内の椅子に座っている。
試合終了後、賭け試合の興行を仕切っているヤクザから、ここへ行くように指示されたのだ。
賭け試合が生活の糧である以上、逆らうことは出来ない。
だが、既に一時間近く待たされている。
帰ろうと立ち上がりかけた、そのときだった。
 芝浦は闇の中から何かが飛んでくるのに気づく。
見切って受け止めると、手中のものを見つめる。
「扇子・・?」
怪訝な表情を浮かべた、そのときだった。
 「まぁまぁの腕のようね。スキャンダルで世間を追われた元メダリストにしては、だけれど」
若く高い声に、思わず芝浦は振り向く。
梛鴨の姿に、芝浦は不機嫌な表情で尋ねる。
「おい・・!お前か?俺を呼びつけたのは?」
「だとしたら、どうするつもりかしら?」
「それはコッチの台詞だ!?ガキの分際で・・・俺を誰だと思ってやがる!?」
「決まってるじゃない。セクハラやパワハラで何もかも無くした挙句、ヤクザの賭け試合で食ってる、馬鹿な負け犬、そちらこそ何様のつもりかしら?」
「こ・・この・・もう・・許さん!!」
芝浦は完全にキレてしまい、梛鴨めがけて襲いかかる。
だが、手首を掴んだ瞬間、梛鴨は鉄扇を芝浦の手首に押し当てる。
芝浦の手首が伸ばされるように見えるや、強烈な痛みが芝浦を襲った。
 「が・・・!!??」
「ふふ・・。苦しいかしら?もっとやってあげるわ」
笑いながら、梛鴨はさらに手首を極める。
悶絶する芝浦の姿をしばらく楽しそうに見ていたが、やがて足払いで地面に芝浦を転ばせる。
そこへ間髪入れずに、腕ひしぎ十字固めで、思いきり肘を脱臼させる。
「ぎゃが・・!?ひっぎ・・!!」
右腕が異様な姿になったまま、芝浦は逃げようとする。
「どこへ行くの?まだショーは途中よ。最後まで、付き合いなさい」
梛鴨は鉄扇で芝浦の両鎖骨を打ち砕く。
そうして抵抗を封じると、背後から抱きつき、締めあげる。
片肘を外された上、両肩を砕かれて抵抗できず、締められるままの芝浦の顔色が変わる様を、梛鴨は面白そうに見つめる。
やがて、芝浦は完全に気を失った。
 「あら?もうオチたの?元柔道メダリストの癖に、情けないわね」
完全に伸びている芝浦に、失望したような声で、梛鴨は言う。
「お前、ちゃんと撮影したかしら?」
一連の状況をデジカメで撮影していた組員に、梛鴨は尋ねる。
「へ、へい。ばっちりです」
「そう。じゃあ、行くわよ」
「お帰りですか?」
組員の言葉に、梛鴨は不機嫌な表情を浮かべて言う。
「何を言っているの!?4,5日遊んでから帰るのよ!?」
「し・・しかし・・。組長が・・。う・・がふ!?」
梛鴨は組員のみぞおちに鉄扇を突き入れる。
「つべこべ言わない!お前は私に従えばいいのよ!?さぁ、どこか泊まるところを探してきなさい!!」
梛鴨は鉄扇で何度も叩きながら、組員に命令する。
組員は必死に頷き、這う這うの体で、その場を立ち去った。


 それから数日後・・・・・。
(どうした・・もんか・・・)
組員はため息をつきながら、通りを歩いていた。
あの後、梛鴨は屋敷には戻らず、組員が探してきたホテルに泊まっている。
もちろん、宿代は組員持ちである。
帰るよう説得しようとすれば、鉄扇で殴りつけられる。
組長の娘である以上、絶対に手を上げるわけにはいかない。
 (しかし・・迂闊に帰れば・・・・)
自分も無断欠勤しているから、当然兄貴分たちから恐ろしい目に遭わされるだろう。
そうなると、自分も帰るに帰れない。
 「・・!!??」
組員は、不意に前後から数人のヤクザが飛び出してきたことに気づく。
しかも、胸には芹沢組の代紋バッジ。
今、一番会いたくない相手に、組員は逃げ出そうとする。
だが、それも空しい抵抗に過ぎない。
あっという間に取り押さえられ、組員はどこかへ連れ去られていった。
 組員が連れて行かれたのは、雑居ビルの地下室。
ビルは組のフロント企業の持ち物。
この地下室で、対立組織の組員などへの尋問が行われるのを知っているため、連行された組員は気が気ではない。
 「カ・・カシラ!?それに・・・」
地下室内で待ち構えていた新見と芹沢に、組員は思わず畏まる。
「待っていたぞ。貴様に・・聞きたいことがある。梛鴨お嬢様はどこだ?」
「そ・・それは・・!?」
新見の問いに組員は脂汗がドッと吹き出る。
言わなければ恐ろしい目に遭うことは間違いない。
しかし、言っても、無断欠勤でやはり恐ろしい目に遭う。
頭の中でグルグルと色々なものが回り、言葉が出なくなってしまった、そのときだった。
 不意に、芹沢がゆっくりと立ち上がる。
芹沢は、カーボン製の竹刀を肩に担ぐように持っている。
芹沢は、竹刀を振り上げると、片手打ちの要領で、組員の右腕目がけ、打ち下ろした。
直後、組員はとてつもない激痛を覚える。
とっさに自分の右腕を見てみると、肘から下が、ちぎれ飛んでいた。
 「ひ・・!?ひぃえええええええええ!!!!!!」
苦痛と恐怖に、組員は絶叫する。
芹沢は竹刀の切っ先を組員の胸に突きつける。
「このまま、ゆっくりゆっくり、切っ先を突き入れてやろうか?真剣ではない分、苦しいぞ?」
組長の言葉に、組員は全身から脂汗を流す。
「ひぃぃぃぃ!!言います!お嬢様の居場所は・・○○ホテルです・・・!!!!」
もはや恐怖しかない。
組員は絶叫するように、白状する。
 「貴様ら、先に行け」
新見の命令に、部下の組員達が部屋を後にする。
「組長(オヤジ)・・お迎えに参りましょう」
「待て・・。その前に・・こいつの始末をつけんとな」
芹沢は右腕を切断された組員を見下ろす。
息も絶え絶えな組員を、芹沢は冷ややかな目で見つめながら、ゆっくりと、横殴りに竹刀を振りかぶる。
直後、組員の頭がちぎれ飛び、ゴロゴロと床を転がっていった。


 それから一時間ほどほど経った頃・・・。
繁華街で散々遊んだ梛鴨は、ホテルのロビーに足を踏み入れる。
直後、その表情が強ばった。
 「梛鴨お嬢様・・。お待ちしておりました・・。さぁ、お屋敷へ戻りましょう」
ボディーガードの組員達を従えながら、新見は言う。
「嫌よ!まだ、遊び足りないわ!?」
「梛鴨お嬢様・・。ワガママはいけませんなぁ・・」
新見の言葉と共に、組員達がドッと取り押さえにかかる。
だが、組員達が触れそうになったかに見えたとき、全員、うめき声と共にのけ反り倒れる。
顔面や胸には、鉄扇で殴られた跡や突かれた跡が残っていた。
さらに、梛鴨は新見の懐へ飛び込むや、喉に押し当てるように鉄扇を突きつける。
 「さすが梛鴨お嬢様、相変わらずの腕前ですなぁ。全員、一流道場や外国の特殊部隊で修行させた者ばかりなのですがな・・・」
「この程度で捕まえようなんて・・舐められたものよね。父さんには逃がしたとで・・!?」
不意に強烈な殺気を背後に覚え、梛鴨は振り返る。
視線の先には、今一番顔を合わせたくない相手の姿があった。
 「と・・父さ・・ん・・!?」
「梛鴨・・・」
父親の雰囲気に、梛鴨はタジタジとなる。
咄嗟に、梛鴨は鉄扇で父親の顔面目がけて打ちかかる。
だが、体捌きでかわされ、組みつかれてしまう。
 「は・・離してっ!?」
ジタバタともがいて抵抗するが、竹刀で人の頭をちぎれ飛ばすほどの力を持つ父親に叶うはずも無い。
「梛鴨・・・。悪さが過ぎたな・・・。家に帰るまで・・覚悟しておけ」
父親の宣告に、梛鴨は顔から血の気が引く。
芹沢は娘を抱きかかえ、新見や組員らを引き連れて、ホテルを後にした。


 バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!
組長専用の大型高級車の後部座席。
ゆったりとしたスペースの中で、激しい平手打ちの音が響き渡る。
 「きゃあああっ!痛ああっ!痛いぃぃぃぃぃ!!!!!!」
平手打ちの音と共に、梛鴨の悲鳴が上がる。
父親の膝に乗せられ、むき出しにされたお尻は、既に真っ赤に染め上がっていた。
 バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!
「やああっ!痛ああっ!痛いっ!やだっ!やめてっ!?父さんやめてぇぇぇ!!」
一発一発が重く強烈な平手打ちに、梛鴨は両足をバタつかせて、泣き叫ぶ。
 バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!
「『やめて』だと?自分のしたことがわかってるのか?芝浦を壊しおって・・。おかげでどれだけ組の損失になったのか、わかるか?」
娘のお尻を叩きながら、芹沢は言う。
芝浦は賭け試合の参加者の中でもトップスター選手。
組にとっては良い収入源だった。
 「ひぃん・・!ちょ、ちょっとした・・イタズラのつもり・・ぎゃあひぃんっ!!」
「イタズラで済むか!これで・・何度目だと思っている?」
芹沢は怒りを堪えかねた声で言う。
実は梛鴨が賭け試合の選手を襲って怪我させたのはこれが初めてではない。
既に数人が犠牲になっており、おかげで組はそのたびに損失を受けていた。
バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!バッシィーンッ!
「ひぃん・・!も・・もう・・しないからぁぁぁ!!だ、だからやめてぇぇぇぇ!!」
「そんなのは当然だ。ヤクザの娘なら、落とし前をしっかりとつけろ。おぃ、まっすぐ屋敷には帰らなくていい。3,4・・いや、8、9回りしてからにしろ。その間・・たっぷり仕置きしてやる」
「そ・・そんなぁぁぁぁぁ!!!!!ご、ごめんなさぁぁいいいいいい!!!」
必死に謝る梛鴨だが、芹沢が許すはずも無い。
その後、宣告通り、屋敷への道のりをたっぷり9回りする間、梛鴨はお尻を叩かれ続けていた・・・・。


 ようやく車が屋敷に到着すると、屋敷内の組員達と共に、先に到着していた新見が出迎える。
「組長(オヤジ)・・お疲れ様です・・・。おやおや・・さすがにぐったりしておりますな」
真っ赤に腫れ上がったお尻を出したまま、父親の膝の上で泣き疲れて寝ている梛鴨に、新見は苦笑する。
 「ふん・・。世話を焼かせるわ・・馬鹿娘が・・・・」
「まぁ・・組長(オヤジ)に構ってもらいたいのでしょうな。結構な甘えたですからな、梛鴨お嬢様は。父親として、幸せ者ではありませんか?」
「馬鹿を言え。おかげでまた、組に損害が出たわ。新見・・また金づるになりそうな選手を探しておけ」
「はっ。承知しております。それと・・薬箱等は用意してございます」
「用意がいいな。まぁ面倒が無くていいがな」
芹沢は娘を抱っこしながら、車を降りる。
 「おぃ、風呂の用意をしておけ。尻を叩いた後は、いつも子供っぽくなるからな。一緒に風呂に入らんと、また癇癪を起こしおる」
「既に用意は出来ております。ご安心下さい」
新見の言葉に、そうか、とだけ言うと、芹沢は梛鴨をだきかかえ、屋敷へと入っていった。


 ―完―

青き狼たち12(バイオレンスあり)



(バイオレンスありです。許容できる方のみご覧ください)


 「どこだ!?どこ行ったのよ!?」
「何としてでも捕まえるのよ!?」
夜の闇に包まれた林の中、殺気だった女達の声が響き渡る。
女達はいずれも修道服に身を包んでいる。
だが、手には修道服には不似合いな、拳銃や短機関銃を手にしており、表情は鬼のように険しく、殺気で満ち満ちている。
彼女たちは、カーミラ団と名乗る、女ばかりの盗賊団。
修道院を隠れ家にし、修道女の姿で世間を欺きながら、ヨーロッパ各地で犯行を繰り返していた。
シスター姿の女盗賊たちは、剣呑な表情で必死に探し回る。
だが、目的の相手が見つからず、しばらくしてその場を立ち去った。
 「ふぅ・・・・・」
ため息と共に、樹上から人影が降りてきた。
人影の正体は山崎。
山崎は女性用の修道服に身を包んでいる。
 「撒くのは上手く行ったけど・・・。僕としたことが、しくじったなぁ。バレちゃうなんてなぁ・・・」
山崎は着地直後、ため息を吐く。
団員達が追っていたのは山崎。
盗賊団の被害にあった企業等の依頼により、女に化けて潜入していたのだ。
だが、正体がバレてしまったため、逃走中なのである。
 「ぼやいたって仕方ないか~。せめて手に入れた情報は持ち替えら・・!?」
表情が変わったかと思うや、山崎は変装用の修道服のみを残して飛び退く。
直後、日本刀の鋭い切っ先が、宙に残された修道服を貫いた。
同時に、修道服から煙や閃光が迸る。
煙幕に身を隠し、山崎は脱出しようとする。
だが、煙の中から三度、切っ先が山崎目がけて襲いかかる。
 「う・・!?」
山崎は呻くと同時に、地面に崩れ落ちる。
そのまま、山崎は意識を失った。


 「くぅ・・・・!?」
「おやおや?やっとお目覚めですか?」
目覚めと同時に聞こえた声に、思わず山崎は顔を上げる。
目の前に立っていたのは、20代後半くらいの女。
ルビーのような見事な深紅の髪と瞳が特徴的で、貴族を思わせる高貴な美しさを、しかし同時に肉食獣のような残忍さも感じさせる面立ちをしている。
実際、チラリと見える、通常よりもよく発達した犬歯が、まるで吸血鬼を思わせた。
 「あれあれ~?カーミラさんじゃない~。わざわざ出向いてくれたの~?光栄だな~」
目の前の相手に、山崎はおどけた口調で返す。
彼女こそ盗賊団のボス、カーミラだった。
 「ふふ・・。捕まったというのに、随分と余裕ですねぇ」
後ろ手に縛られ、天井からロープで吊るされた姿の山崎に、カーミラはそう言う。
「そんなことないよ~。コレでもイッパイイッパイさ~」
「まぁいいでしょう。私としたことが・・見事に一杯食わされましたよ。スパイで・・しかも男だったとはねぇ」
「ふふ、褒め言葉として受け取っておくよ~」
カーミラに対し、山崎は余裕な態度で返す。
 「この状況でもその態度・・。感心しますが・・いつまで続きますかねぇ。試してあげましょう」
カーミラの言葉と共に、背後にいた手下の女盗賊たちが現れる。
今度は銃ではなく、鞭やパドルを手にしていた。
 「何・・?何のつもりさ?」
平静を装いつつも、山崎は気が気ではない。
盗賊の一人が背後に回るや、山崎のズボンに手をかける。
あっという間に、山崎は下着ごとズボンを脱がされ、お尻をむき出しにされてしまった。
 「コレは・・!?男にしておくのはもったいないお尻ですねぇ」
カーミラはうっとりした様子で山崎のお尻を見つめる。
そして、おもむろにお尻を撫で始めた。
 「ひ・・!?ちょ、ちょっとっ!?」
山崎は思わず悲鳴を上げ、お尻をモジモジさせる。
「こんなにいいお尻なのに・・!男のお尻だなどと・・・!?許せません!?」
お尻を愛でるような表情が、だんだんと怒りの表情へと変わってゆく。
 (しまった・・!コイツ、レズの気があるんだった!?)
山崎は顔が青くなりかける。
潜入捜査に中で、山崎はカーミラにレズ的嗜好があることを突き止めていた。
女だけの盗賊団を作ったのも、その趣味ゆえだ。
それだけに、男に対する嫌悪感、特に山崎のように女性と見まがわれるタイプ、なまじの女性よりも美しい、可愛いと思われるタイプに対しては、憎悪をむき出しにしていた。
 「女に化け・・よくも私を騙してくれましたね!?」
すっかり般若か阿修羅かと思うような表情に変わったカーミラは、部下から鞭をひったくると、山崎のお尻目がけて振り下ろした。


 ビシッッッ!!
「ぐう・・・!?」
空気を切り裂く鋭い音と共に、鞭が山崎のお尻に叩きつけられる。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「く・・!くぅ・・!うく・・!あっう・・!くぅうう・・!」
一撃、また一撃と鞭が容赦なく山崎のお尻を襲う。
ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「うっ・・!くぅっ!あっう・・!ああーっ!!」
鞭が何度も何度も振り下ろされ、幾重にも蚯蚓腫れが刻みつけられる。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「スパイとは・・いい度胸です!どこまで・・持ちますかねぇ?」
残酷な笑みを浮かべ、カーミラは山崎のお尻を鞭打ち続ける。
 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
「ううあっ!あっう・・!くうっあ・・!ぐっああ・・!ああっ・・!ああーっっ!!」
皮膚が破れ、山崎のお尻から、ジワジワと血がしたたり落ちる。
だが、それでもカーミラは鞭打ちをやめない。
鞭が血で赤く染まるまで打ち続け、山崎のお尻はナイフで切り裂かれたような跡が何重にも刻みつけられる。
 「ふふ・・。そろそろですね」
カーミラは鞭で痛々しいお尻を、満足げに見つめる。
そして、部下からナイフを受け取ると、山崎のお尻に斬りつけた。
 「ぐぅ・・!?あう・・!ぐぅうぅぅ・・!!」
苦悶の声と共に、傷口から、血がしたたり落ちる。
「ホホ・・・。散々に叩かれ、赤くなったお尻・・。そこから滴り落ちる若い血潮・・!いつ見ても良いモノです・・!!」
血が滴る山崎のお尻を、カーミラはウットリしつつ見つめる。
やがて、ジッと顔を近づけると、傷口に噛みついた。
 「うわあっ!?な・・何を・・あ?あぅ・・!?えあ・・!?うあう・・!?」
血を啜られているうちに、山崎はだんだんとおかしな気持ちになってくる。
「は・・はえあ・・。あう・・はあえあ・・!?」
だらしない声を上げ、しばらく山崎は悶える。
やがて、再び意識を失った。
 「ふふ・・。男にしてはおいしい血でしたねぇ。ですが・・私の周りに男はいりません!!お前たち!?始末して来なさい!!」
カーミラの命令と共に、手下達が、気を失った山崎を降ろす。
そして、外へと運んでいった。


 「全く・・夜中に面倒くさいなぁ」
「仕方ないだろ。カーミラ様の命令なんだから!!」
女盗賊たちはブツブツ言いながら、山崎を森の中へと運んでゆく。
やがて、適当なところで、山崎を降ろした。
 「さてと・・・。さっさと片付けるよ」
そういうと、一人が懐から拳銃を取り出す。
そして、山崎の頭に突きつけようとしたときだった。
 「「「うっっ!!」」」
不意に、背後からうめき声や地面に崩れ落ちる音が聞こえてきた。
「何だ!?」
思わず女盗賊は拳銃を音のした方へ向けようとする。
そのとき、後頭部に鈍い衝撃を覚え、女盗賊は崩れ落ちた。
 「全く~、もうちょうと早く来て欲しいよね~」
山崎は闇の中から現れた影に、不満げに言う。
現れたのは、女盗賊たちと同じ、シスター姿の女。
20代前半くらい、活動的な短めの黒髪に、男性と見まがいそうな、凛々しさを感じさせる面立ちをしている。
右手には、やや短めの日本刀を手にしていた。
 「そう言わないでよ。コレでも急いだんだから」
日本刀を手にした女は、山崎にそう返す。
彼女の名は沖田光代(おきたみつよ)。
沖田総司の末裔で、シンセン社のエージェントである。
山崎と共に、一味に潜入していた。
 「冗談だって。それより・・用意はOKなの?」
「心配ないわ。警察もウチのエージェントもスタンバイ完了よ」
「じゃあ、行きましょうか。お尻のお返しもしたいからね~」
山崎はそういうと、沖田が持ってきた長巻を受け取る。
沖田も変装用の修道服を脱ぎ捨てる。
無駄なく引き締まり、均整の取れたその身体には、『誠』の文字を描いた防弾着と、ボディラインが目立つ、身体にピッチリした上下の服を身にまとっていた。


 ドドドドドドド!!!
「死になさい!?政府のイヌ共!?」
怒りの声と共に、カーミラは短機関銃を乱射する。
修道院は完全に包囲されている。
手下達が抵抗しているも、攻め落とされるのは時間の問題だった。
カーミラは僅かな手下を連れ、脱出用の抜け穴に入る。
そして、抜け穴から、地下の下水道へ逃げ込んだ。
 一行は下水道の中を必死に駆け抜ける。
やがて、街はずれのあたりまでやってきたときだった。
「誰です!?」
カーミラと護衛の手下達は、短機関銃を構えて立ち止まる。
暗がりの中から、防弾着姿の沖田が現れた。
 「その格好・・。あなたもイヌでしたか!?」
「好きに呼んで構わないわ。カーミラ、もう逃げ場は無いわ。大人しく・・・降参しなさい」
カーミラからの返答は、短機関銃の一斉射撃だった。
沖田は避けることもせず、短い気合と共に、突きを繰り出す。
直後、沖田の目の前に、数十もの切っ先が現れ、銃弾を悉く突きで打ち落す。
さらに、沖田は下水道の床を蹴る。
次の瞬間、カーミラ一行の眼前まで、接近していた。
カーミラたちが逃げようとする間もなく、沖田の神速の突きが全員に繰り出される。
喉の詰まったような声と共に、カーミラをはじめ、盗賊たちは全員、その場に崩れ落ちた。
 「もしもし・・。沖田です。カーミラを確保しました」
完全にカーミラが気を失ったのを確認し、沖田は連絡を入れる。
その後、警察がカーミラを連行していった。


 ―完―

青き狼たち11(バイオレンスあり)



(バイオレンスありです。許容できる方のみご覧ください)


 「全く・・!何で僕がこんなことしなくちゃいけないんだ・・!」
「ブツブツ言うな。これも仕事のうちだろう」
不平を言うマチウスに、カイがたしなめるように言う。
二人とも、双眼鏡を手にし、向かいのビルの様子を伺っていた。
ビルの看板には『加藤興業』という、一見企業らしい名前。
しかし、社名の下には、代紋と呼ばれる暴力団のマーク。
当局からの依頼により、暴力団事務所の監視をしているのだった。
 しかし、見張りなどという、地味で退屈な仕事が、マチウスにはつまらなくてたまらない。
それがここ数日続いており、イライラを募らせていた。
そこへ、カイに言われ、思わずカッとなる。
 「うるさい!そんな年も変わらないくせに、偉そうに説教なんかするんじゃない!」
「お前こそいい加減にしたら、どうなんだ!?カンチョウの知り合いの息子だか何だか知らないけどな!!」
お互い、相手の態度に怒りを覚え、今にも掴み合いになりそうな雰囲気になった、そのときだった。
 不意に、カイの身体が硬直し、双眼鏡を構える。
「おぃ?何のつもりだ?」
怪訝に思ったマチウスは、カイと同じ方へと視線を向ける。
直後、マチウスも硬直し、目を見開いた。
 二人の視線の先には、事務所へ向かって歩いてくる一人の男。
男は左目の周囲に、ひどい火傷の跡があり、左目も失明している。
 「あいつは・・!」
カイは思わず呟く。
よく知っている男だったからだ。
 男の名は平山五太郎(ひらやまごたろう)。
水戸を本拠とする広域暴力団『芹沢組(せりざわぐみ)』の直系幹部であり、組織の戦闘隊長というべき役目についている。
警察は無論、シンセン社の持つ、日本国内における危険人物や組織のリストにも、トップクラスの扱いで載せられている人物だった。
ちなみに、芹沢組はかの芹沢鴨(せりざわかも)とその一党の子孫達によって設立された組織。
そのうち、平山五郎の子孫に当たる人物でもあった。
 マチウスも、食い入るように、平山を見つめている。
芹沢組は日本でも一二を争う、強大な暴力団組織。
その勢力を武器に、海外の組織とも太い繋がりを築いている。
その中には、アメリカの組織もあり、アメリカの当局や警備会社にとっても、芹沢組は警戒・監視の対象となる組織だった。
当然、ハーモニカ社のリストにも、載せられていた。
 二人とも、双眼鏡越しに、平山の姿を食い入るように見つめている。
平山はゆっくりと、ビルの玄関へと向かってゆく。
やがて、平山は玄関の前に立つと、羽織っていたロングコートを脱ぎ捨てる。
同時に、左手に下げていた日本刀を抜き放ち、ゆっくりとビルの中へと進んでいった。
 殴り込みだと気づくや、カイは携帯で通報しようとする。
だが、背後の足音に思わず振り返る。
「おいっ!どこへ行くんだ!?」
カイは思わず声を上げる。
拳銃を握りしめて、マチウスが飛び出していったからだ。
 「くそ・・!」
さすがに放っておくわけにはいかない。
カイは携帯をしまうと、急いで後を追いかけた。


 「く・・!」
鼻を衝く血の匂いに、思わずマチウスは不快そうな表情になる。
実際、すぐ目の前に、拳銃や刃物を手にしたまま、急所を切り裂かれて絶命しているヤクザたちの死体が転がっていた。
だが、マチウスはそのまま、平然と進もうとする。
 「おい!待て!待たないか!?」
そこへ、カイが駆けつけ、呼び止める。
「何だ?邪魔をする気か!?」
顔を合わせるなり、マチウスは怒鳴りつける。
 「お前こそ何勝手なことしてるんだ!俺達の仕事はあくまでも監視だぞ!!」
「うるさい!このままオメオメと逃がしたら恥だろう!!」
「だからって応援も待たずに飛び込む馬鹿がいるか!?」
二人はビル内に響きそうな大声で、言い合いを始める。
そんなとき、何かが転がり落ちてくるような音が聞こえてきた。
 ハッとして、二人とも、音のした方を振り向く。
直後、階段を何者かが転がり落ちてきた。
落ちてきたのは、小型の拳銃を握りしめたヤクザの死体。
「コイツは・・!?」
死体の顔を見るなり、カイはハッとする。
 「知ってるのか?」
「ここのボスだ。ん?何だ・・?」
死体をあらためるうちに、カイもマチウスも奇妙なことに気づく。
切り裂かれた服の下に、奇妙な斑点があるのだ。
正体を確認しようとしたそのとき、二人は再び階段の方を振り向いた。
 階段を、二人は食い入るように、ジッと見つめる。
見つめながら、緊張した面持ちでマチウスは拳銃を、カイは抜き打ちの体勢で脇差を構える。
やがて、階段をゆっくりと降りてくる足音が聞こえてくる。
 足音は一歩ごとに、こちらへ降りてくる。
やがて、ゆっくりと、平山が姿を現した。
全身に返り血を浴び、朱に染まった刀を提げているその姿は、何とも鬼気迫るものだった。
 カイもマチウスもゴクリと息をのむ。
平山の全身から放たれる殺気に当てられたのだ。
無意識のうちに、二人ともジワリと脂汗が噴きだし、内臓を万力で締め上げられているかのような、そんな苦悶を覚える。
 「く・・・!?」
逃げ出したくなるのを堪え、二人は武器を構える。
決して逃がすわけにはいかない。
カイは脇差を抜き放ち、マチウスもいつでも連射できる体勢を取る。
 ドンッ!ドンッ!ドンッ!
マチウスの手が撃鉄を叩くと共に、銃声が三度鳴り響く。
それに対して、刀をだらりと下げた平山の右腕が動いたと思った瞬間、稲光のような閃光が三度煌めいた。
直後、金属の打ち合う音と共に、銃弾がマチウスとカイの方へと跳ね返ってくる。
「馬鹿にするなっ!!」
マチウスは再び発砲し、跳ね返ってきた銃弾を悉く撃ち落とす。
だが、その間に、平山が間合いを詰めてきていた。
咄嗟に、マチウスは左手で予備の小型拳銃を突きつけようとする。
だが、それより先に、再び閃光が迸った。
 「ぐ・・!?」
マチウスは苦悶の表情を浮かべ、尻もちをつくように、倒れる。
その両ももは、内出血で赤黒く染まっている。
 「くそ・・!」
マチウスは座り込みながらも、拳銃を構えようとする。
だが、平山の刀が煌めくや、拳銃は半ばから切り落とされていた。
「この・・!」
平山の背後から、カイが脇差を振るって襲いかかろうとする。
だが、閃光を迸らせながら、平山は振り返る。
 「うぐ・・!?」
苦悶の表情と共に、カイは腹を押さえ、両膝をついて座り込む。
腹には大きな内出血が現れ、カイは内臓を切り裂かれた激痛に襲われる。
 「クソ・・!クッソ・・!」
マチウスは切り落とされた拳銃を構える。
もちろん、撃てるはずは無い。
それでも、闘志を叩きつけるように、平山を睨みつける。
 平山はそんなマチウスを、片目でジッと見つめ返す。
直後、マチウスに向かって、ゆっくりと歩き出した。
「く・・!うう・・!?」
ゆっくり接近してくる平山の姿に、マチウスは脂汗を噴き出す。
一歩、また一歩と距離が縮まるたび、浴びせかけられる殺気が増えてゆく。
必死に睨みつけ、殺気をはねのけようとするも、逆に圧倒され、身体が動かなくなってしまう。
やがて、平山はマチウスの傍へたどり着く。
平山は、開いている方の目でジッとマチウスを見下ろす。
対して、マチウスも睨み返す。
命の危機にも関わらず、睨み返す気丈な姿に、平山は感心したような笑みを浮かべる。
だが、それも一瞬のこと。
切先をマチウスの方へと向けると、ゆっくりと刃をマチウスめがけ、繰り出した。
 マチウスは死を覚悟する。
だが、スレスレで切っ先が止まる。
同時に、刀が上へ跳ね上がり、飛んできた何かを切断した。
 マチウスは左右に落ちた何かを見やる。
切断されたのは、鎖。
それぞれの片端に、分銅がついていた。
 平山は刀を構え、鎖の飛んできた方を見つめる。
数メートルの距離をおいて、平山の隻眼はある男の姿を認めた。
 男は30歳前後、すらりとした体格で、眼鏡の似合う、温和で知的な印象の面立ちをしている。
実際、科学者用の白衣姿が、その印象を強めていた。
男の名は山南敬介(やまなみけいすけ)。
かの山南敬助の子孫で、新選グループの幹部の一人であった。
 山南は両手で鎖を構える。
鎖の両端には分銅が付いている。
分銅鎖(ふんどうくさり)と呼ばれる、捕物などに使われた武器である。
 マチウス達を相手にするときは打って変わった、真剣な表情で、平山は刀を構える。
二人はそれぞれ得物を構え、一歩ずつ、間合いを詰めてゆく。
やがて、ギリギリのところで、二人の歩みが止まる。
 山南と平山は互いに相手をジッと見つめる。
見つめながら、殺気を相手へと放つ。
殺気と殺気がぶつかり合い、互いに強烈な圧迫感を覚える。
ジワリジワリと、汗が噴きだし、顎を伝って、床へと滴り落ちる。
 先に動いたのは平山だった。
平山の打ち込みを、山南は体捌きでかわし、鎖で受け弾く。
同時に、体当たりで吹っ飛ばそうとする。
平山も負けずに、肩からぶつかるように山南に体当たりする。
押し合いながら、両者は位置を入れ替え、間合いを離す。
そのとき、山南は平山の眼帯目がけ、分銅を繰り出した。
直後、稲光のような閃光と共に、平山の刀が一瞬消える。
山南が着地したときには、鎖が途中から切断されていた。
 「見事な切り返し・・。それが『稲光(いなびかり)』の技ですか・・」
「さすがに知っているか・・・・。その通りだ・・・。先祖代々受け継ぎ・・磨き上げてきた技だ・・・」
山南の問いに、平山はニヤリと笑みを浮かべて答える。
稲光とは、平山の家に代々伝わる奥義。
その名の通り、稲光のような神速の打ち込みを繰り出す技だ。
あまりの素早さに、斬られた部分の外皮がくっついて外に出血せず、いわゆる内出血で身体に斑点が出来たような状態になる。
先祖である平山五郎が得意とした、猛烈な切り返しの技を代々受け継ぎ、強化に強化を重ねた末に生み出した技だった。
 「ちょうどいい・・!先祖から受け継いだ恨みと因縁・・。貴様の身体に刻み込んでやる!!」
平山は狂気を帯びた笑みを浮かべる。
山南の祖先は、平山の祖先を暗殺したメンバーの一人。
まさに先祖代々の恨みの対象だった。
 「キャアオラァァァァ!!!!」
この世のものならぬ、狂気を秘めた雄たけびと共に、平山は野獣のように飛びかかる。
一気に間合いを詰めるや、狂ったように刀を振るう。
平山の刀を、山南は予備の分銅鎖で、右に左に受け流す。
鎖と刀が打ち合うたび、火花が飛び散る。
激しい打ち合いの中で、山南はだんだんと端の方へと追い詰められてゆく。
山南を追い詰めながら、平山は普通の打ち込みに織り交ぜて、稲光を繰り出す。
そのたびに、山南のズボンや上着が切り裂かれ、その下に赤黒い斑点が生じる。
壁際へ追い詰められたときには、何かの病気か?と思うほど、体中が斑点だらけになっていた。
 「ハァ・・ハァ・・・」
分銅鎖を構えているも、山南の息は荒くなっている。
「くく・・・。そろそろだな・・・。止めを刺してやる・・・」
そういうと、平山は刀をゆっくりと振り上げる。
そして、山南の胴めがけ、必殺の稲光を繰り出したそのときだった。
 山南は、神速で振り下ろされる刀目がけ、闘気でコーティングした分銅鎖を繰り出した。
鎖は刀に絡みつき、打ち込みが止まる。
「貴様・・!?」
平山は刀を引き戻そうとする。
その引き戻そうとする力を利用し、山南は平山の懐へと入り込む。
平山の右肩と右手首を掴むや否や、山南は床を蹴り、自らコマのように身体を回転させながら飛び上がる。
同時に平山の肩に凄まじい激痛が走る。
山南が着地した時には、平山の右肩は外され、不自然な方向へ腕が曲がっていた。
 「ぐぬ・・!?」
平山は左手一本で刀を構え、山南に突きを繰り出す。
それを体捌きでかわすと、山南は左手首を取り、開いている方の手で、平山の左肘に衝撃を与える。
直後、鈍い音と共に、今度は左肘が外れた。
 「ぐおおおお!?テメェ・・!?何をしたぁぁぁ!?」
「柔術と接骨術を応用して、肩と肘の関節を外させてもらいました。『番外し(つがいはずし)』といいます」
「ぐ・・!?くそおっっ!!」
平山は怒りの目で睨みつける。
 「無理です。その両腕では、刀は持てません。悪いことはいいません。降参しなさい」
山南の言葉に、平山は一瞬、抵抗をあきらめたような素振りを見せる。
だが、次の瞬間、窓ガラス目がけ、飛び込んだ。
 「しまった!?」
山南は割れた窓に駆け寄り、外を見下ろす。
平山は両腕が脱臼したまま、路上へ着地すると、そのまま逃走した。
 「これは・・失敗でしたね。私としたことが・・・」
山南は痛恨の表情で呟く。
だが、すぐに表情が変わったかと思うと、倒れているカイとマチウスの方へと歩みを進めていった・・・・。


 それからしばらく経ったある日・・・・。
バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「う・・!くぅ・・!うくっ!ううくぅ・・!!」
お尻を叩く音が響くたび、カイは苦悶の表情を浮かべる。
ズボンを降ろされ、むき出しにされたお尻は、すっかり真っ赤に染め上がっていた。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「言ったはずだぞ?あくまでも監視が仕事だと。勝手な行動は許さんと」
弟子のお尻を叩きながら、近藤はお説教をする。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「も・・申し訳ありません・・!ご迷惑をかけ・・ました・・」
「わかっているようだな。だが、許すわけにはいかん。いいな?」
「は・・はい・・!覚悟は出来てます・・!!」
師の問いに、カイは静かに頷く。
「いい心がけだ。では・・行くぞ」
近藤はそういうと、再び手を振り下ろした。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「うっ!くぅぅ!うっく・・!あっ!あうう・・!あっくぅぅ・・!」
お尻に与えられる過酷な平手打ちを、カイは必死に耐える。
その後、お尻を叩く音と、カイの苦悶の声が部屋に響いていた。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「馬鹿っ!やめろっ!やめろぉ!何するんだーっ!!」
父親の膝の上でお尻を出した姿で、マチウスは叫ぶように抗議する。
そのお尻はカイに負けず劣らず赤くなっていた。
 「やめろじゃない。お前、わかってるのか?勝手なことをして、どれだけ迷惑をかけたと思っている?」
息子のお尻に力強い平手打ちを振り下ろしながら、チャールズはお説教をする。
 「う、うるさいなぁ!目の前に悪党がいるのに、オメオメ逃がすなんて馬鹿な真似が出来るわけないじゃないか!?」
「それが勝手なことだと言ってる。お前の仕事はあくまでも監視だ」
「うるさい!うるさいうるさい!親だからって、偉そうに説教するんじゃない!!いい加減にしないと、本気で怒るからな!!」
「本気で言ってるのか?」
息子の言葉に、さすがに表情が険しくなる。
「だ・・だったらどうだっていうんだ!!」
「そうか・・。なら、こうするまでだ」
そういうと、チャールズは膝を組む。
そして、突き上げられたマチウスのお尻目がけ、思いきり手を振り下ろした。
 バシーンッッ!!
「ぐっうう・・!!」
先ほどよりずっと強烈な平手打ちに、マチウスの表情が歪む。
 バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!
「馬鹿・・!やめ・・ひいいっ!ぎっひ!ぎゃあひぃ・・!!」
本気モードの父親のお仕置きに、マチウスの口から悲鳴が漏れ始める。
 バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!バシーンッッ!!
「やめろ・・!馬鹿!やめ・・やめて!ひいいーっ!やめろーっ!ひいいいーーっ!!」
その後、長い長い間、マチウスの悲鳴が響き続けた・・・・。


 同じ頃・・・水戸市郊外のある日本邸宅。
その一室で、二人の男が顔を合わせていた。
一人は身長180センチ前後、見事に鍛え上げられた身体を和服で包み、精悍な面立ちをしている。
もう一人はすらりとした細身の体格に、仕立ての良いスーツを身にまとっていた。
和服の男は芹沢鴨継(せりざわかもつぐ)、邸宅の主で、芹沢組の組長である。
スーツの男は新見錦助(にいみきんすけ)、芹沢組のナンバー2であり、直系の傘下組織『新見組(にいみぐみ)』の組長でもあった。
 「平山の件はどうなった?」
タバコをふかしながら、芹沢は尋ねる。
「ご心配ありません。治療をした上で、海外への潜伏も済ませております」
ボスの問いに、新見はそう答える。
 「そうか・・。ならいい。平山が高飛びしたのは痛いが・・・。身の程知らず共の始末は出来た・・・」
「全くです。組長の目を誤魔化せると思うとは愚かな奴らです」
新見は平山に斬られたヤクザ達を思い浮かべ、嘲笑するような表情を浮かべる。
加藤興業は芹沢組の下部団体。
だが、芹沢組と対立する組織に気脈を通じ、離脱しようとしていたのだ。
それに対する制裁として、平山を殴り込ませ、皆殺しにしたのである。
 「おかげで、浮ついていた奴らも落ち着きました。改めて、組長に忠誠を誓っております」
「ふん・・・。腰抜け共め。まぁいい・・・」
新見の報告に、芹沢はそう言う。
 「今回は奴らに勝ちを譲ってやる・・。だが・・・必ずや・・・」
芹沢は新選グループの面々の顔を思い浮かべ、怒りと憎悪の炎を燃やす。
それに同意するように、新見も怒りの光を静かに、目に宿していた。


 ―完―


 簡易プロフィール


 山南敬介(やまなみけいすけ)
 新撰グループ幹部の一人。
グループの製薬研究所の所長。
山南敬助の子孫で、柔術をベースにした格闘術、並びに分銅鎖などの隠し武器の使い手。
必殺技は、敵の関節や骨を外す『番外し(つがいはずし)。
イメージは堺雅人。


 平山五太郎(ひらやまごたろう)
水戸を本拠とする広域暴力団『芹沢組』の直系幹部の一人で、組織の戦闘隊長。
平山五郎(ひらやまごろう)の子孫で、使用武器は日本刀。
必殺技は、神速の打ち込みを繰り出す『稲光(いなびかり)』
あまりの素早さに、斬られた外皮は再度癒着し、内臓や血管のみが斬られた状態になる。
そのため、この技を食らうと、内出血により、赤黒い斑点が受けた場所に生じる。


 芹沢鴨継(せりざわかもつぐ)。
芹沢組組長、芹沢鴨の子孫。
必殺技などは不明。
イメージは佐藤浩市。


 新見錦助(にいみきんすけ)。
芹沢組ナンバー2並びに、傘下組織『新見組』組長。
必殺技などは不明。
イメージは相島一之(大河ドラマ『新選組!』の新見錦役)。


青き狼たち9ー2(バイオレンスあり)



(バイオレンスありです。許容できる方のみご覧ください)


 「ヤマザキさん、どこに行ったんだ!おーい、ヤマザキさん!!」
カイは必死に声を上げて、山崎に呼びかける。
「全く・・これから稽古だってのに・・。って時間だ!仕方ないな・・!!」
腕時計を見ると、慌ててカイは道場の中へと戻ってゆく。
 「やれやれ・・。やっと行ったねぇ・・」
突然、木の幹から声がしたかと思うと、表面から人型の木の皮が浮かび上がる。
皮がはがれたと思うと、下から山崎が現れた。
(全く・・稽古なんてメンドくさくってしてられないんだよねぇ。せっかくの休みなんだしさ~。思いきり遊ばなくちゃね~)
そんなことを呟きながら、山崎は繁華街へと向かっていった。


 「ああ~っ!くそーっ!」
山崎は心底悔しげな表情で、クレーンゲーム機を見つめる。
もう少しで取れそうだったのに、あと少しで落としてしまったからだ。
 「もう一回!」
お金を投入し、山崎は落とした景品を狙って、クレーンを動かす。
ゲームに集中していたため、山崎は背後から何者かが迫っていることに気づかない。
「よし・・ここで・・!?」
山崎は背中に堅い筒状のものが押し付けられたことに気づく。
 「おっと・・動くなよ。風穴は嫌だろう?」
男のものと思しき声に、山崎は頷く。
山崎は男に促され、ゲームセンターを出る。
外で待っていた車に乗り込まされると、車内の男からも拳銃を突きつけられる。
 「おや?アンタは確か・・大藪組の・・・」
車内で待ち構えていた男の顔に、山崎は思わず呟く。
「くく・・。あの時は世話になったな」
男は笑みを浮かべつつ、憎悪の目で山崎を見つめる。
男やその仲間は、かつて大藪組という暴力団に所属していた。
だが、当局の依頼を受けた山崎により、犯罪の決定的な証拠を押さえられてしまい、組は壊滅、組員達は四散した。
当然、山崎のことを恨んでおり、復讐の機会を狙っていた。
「皆で可愛がってやるぜ。せいぜい楽しみにしてな。クク・・・」
拳銃を山崎に突きつけたまま、下卑た笑いを浮かべたそのときだった。
 突然、車が停止した。
「どうした?」
頭株の男の問いに、部下がフロントガラスの向こうを指し示す。
指先には、僧侶の格好をした、屈強な体格の男。
通せんぼをするかのように、錫杖を突いて立ちはだかっていた。
 「おい!どかせ!」
運転席の部下が、命令と共に、クラクションを鳴らす。
だが、僧侶はどく気配は全くない。
「仕方ねえ。痛い目見せてやれ!」
その命令と共に、今度は助手席から一人出てゆく。
いかにも腕自慢のケンカヤクザといった感じの男は、顔を凄ませ、僧侶に近づいてゆく。
男は僧侶の襟首を掴み、脅しつけようとする。
だが、直後、男の身体が地面に倒され、気を失った。
 「何だ!?クソ!こうなったら轢いちまえ!!」
頭の命令と共に、車が僧侶目がけて突進する。
だが、あわや轢かれる、と思ったそのとき、僧侶は飛び上がり、車の背後へ着地する。
直後、車の真ん中に亀裂が走ったかと思うや、真ん中から、真っ二つに斬り割れた。
「!!!???」
乗っていたヤクザたちはあまりのことに、声も出ない。
その隙に、山崎は車を飛び出し、逃げ出そうとする。
だが、今度は山崎の前に、僧侶が立ちはだかる。
同時に、僧侶は仕込杖の切っ先を喉元に突きつける。
 「何、もしかして、俺がお目当てだったの?アイツらみたいにさ」
「察しがいいな。一緒に来てもらうぞ」
「嫌だ・・って言っても連れてかれるだろうしねぇ。いいよ、別に」
山崎はあっさり同意する。
「賢明だな。では、ついて来い」
僧侶の命令に、山崎は後についてゆこうとする。
 「おい!何勝手に話進め・・ぎゃふっっ!!」
ヤクザの一人が追いかけようとしたそのとき、胸を真っ赤に染めて倒れる。
「やめといた方がいいよ~?この坊さんの手下に蜂の巣にされるよ?気づいてないだろうけど、狙撃手があちこちに隠れてるしさ」
山崎の言葉に、ヤクザたちはハッとし、周囲の建物を見回す。
ヤクザ達に警告のつもりか、直後、ヤクザたちの足元に数発、銃弾が着弾する。
嘘ではない、脅しではない、とわかるや、ヤクザたちは打って変わって大人しくなる。
 「やれやれ・・。また、乗るわけねぇ」
今度は僧侶と共に車に乗り込み、山崎はため息を吐く。
「そういうことだ。しばらく我慢しろ」
山崎に目隠しをしながら、僧侶はそういう。
「はいはい、わかってますよ。でも、出来れば短い時間で済むといいんだけどなぁ」
そんなことを言う合間に、車はその場を後にした。


 かなり長い時間走った末、ようやく車が止まり、降りることを許される。
車から降りても、目隠しはされたまま、山崎は僧侶やその手下に促され、建物の中へと足を踏み入れる。
廊下や階段をいくつか超えたところで、ようやく目隠しが取れたが、そこは道場のようになっており、壁には刀や槍などの武器が幾つも掛かっていた。
 「何コレ?」
思わず山崎は僧侶とその手下を見回す。
「儂の鍛錬場の一つだ。山崎蒸甫、貴様と立ち合いが望みだ!」
「ええ~っ!そんなメンドくさいの、嫌なんだけど~」
「貴様が嫌でも・・儂には立ち合わねばならん理由があるのだ!!」
そういうと、僧侶は二枚の写真を投げつける。
一つは武将の肖像画、もう一つは新田貞美の遺影らしきもの。
 「まさか・・・!?」
「そうだ・・!儂は新田義奉(にったよしとも)、今は出家して義捧斎(ぎほうさい)と名乗っておる。儂こそ・・新田義貞が子孫、貞美の父親じゃ!!」
笠を脱ぎ捨て、錫杖を山崎に突きつけた体勢で、義捧斎は正体を名乗る。
 「ちょ、ちょっと待った!貞美と戦ったのは俺だけど・・でも、殺してない!!」
「それはわかっておる。あの女教祖の手の者に狙撃されたのはな」
「だったら・・・」
「だが・・。それでも、貞美が貴様に敗れたのは事実!!新田一族の誇りと意地を賭け・・貞美に代わり・・貴様に再戦を申し込む!否やは言わせぬ!!」
(って冗談じゃないよ!メンドくさっ!!)
心の中で、山崎はそう叫ぶ。
だが、目の前の義捧斎の様子に、それは不可能なこともわかっていた。
「わかったよ。やればイイんでしょ・・。トホホ・・何でこんな面倒なこと・・」
「わかればよいのだ。さぁ、どれでも好きな得物を取るがいい!」
新田は場内の武器を指しながら言う。
嫌でも戦うしか無いと悟ると、山崎の反応は早い。
壁の武器類を見回し、長巻を見つけると、駆け寄り、手に取ってみる。
重さや長さ、何よりも壊れやすいような細工がしていないか、それらを念入りに調べ、確認した上で、長巻を構えた。
 「長巻か・・。なかなか良いものを選んだな・・。では・・儂はコレだ・・」
義捧斎が選んだのは刀。
肉厚・幅広で、刀というより、ナタのよう感じだ。
切れ味よりも、耐久性や防具の上からでも叩きのめせる打撃力を重視した、まさに実戦用の刀だった。
 「では・・・参る・・!!」
義捧斎は腰を落とし、重心を低く構えた体勢を取る。
同時に、山崎からは長さがわかりづらいように、刀を脇に構える。
低い姿勢のまま、義捧斎はジリジリと、山崎へ接近する。
山崎も、長巻を構え、ゆっくりと間合いを詰める。
長巻を構えたまま、山崎は義捧斎の様子をジッと伺う。
山崎は、義捧斎の背後の床に、焼け焦げたような跡があることに気づく。
不審を覚え、山崎はさらに義捧斎をジッと見つめる。
義捧斎の身体に隠れて確認しづらいものの、切っ先から、何かがポタポタと滴り落ちていること、それが床を焼き焦がしていることに気づく。
 不意に、義捧斎が刀を切り上げるように振るう。
直後、山崎目がけ、溶岩のしずくのようなものが飛んできた。
とっさに山崎は身体を捌いてかわす。
滴は床に着地するや、床を焦がす。
直後、義捧斎が一気に間合いを詰め、刀を突き入れてきた。
 「うわっ!?何ソレッッ!!」
刀をかわしながら、思わず山崎は言う。
義捧斎の刀身から、ジワリジワリと、溶岩状のしずくが滴っているからだ。
同時に、刀を振るいながら、義捧斎が特殊な呼吸をしていることにも気づく。
 「そうか・・!闘気術か・・!?」
「さすがだな・・。儂は闘気を溶岩状に変えられるのだ・・!!そうれいっっ!!」
切先を、マグマ状の闘気で覆い、巨大な溶岩の刃として、山崎に繰り出す。
 「うわっ!どっかの海軍大将じゃあるまいしっ!!うわあっ!!」
山崎は必死に突きをかわす。
だが、かわしたと同時に、義捧斎が刀を振るう。
直後、溶岩の滴が飛び散り、山崎の足にかかる。
 「う・・うわあああ!!??」
肉の焦げる音、熱した刀を突き込まれ、こねくり回されているかのような激痛に、山崎は絶叫する。
 「くあ・・うう・・!?」
山崎は脂汗をドッと流すも、長巻を支えに、何とか立ち上がろうとする。
しかし、そこへ今度は腕を狙って溶岩の滴が飛んでくる。
 「ぐう・・!!うわぁ!?」
両腕も封じられ、山崎は床に大の字に倒れる。
「悪く思うな・・。これも・・戦いだ・・・」
義捧斎は闘気の溶岩が滴る刀を、倒れた山崎に突きつける。
そして、今にも胸に突き入れようとした、そのときだった。
 突然、入口から、義捧斎の配下たちが転がり込んできた。
いずれも、打撃の跡があり、気を失っている。
直後、両手にそれぞれ刀を構え、土方が入ってくる。
 「返してもらうぜ」
「そうはいかん!邪魔するなら貴様も・・ん!?」
刀を構えようとしたそのとき、手りゅう弾のようなものが投げ込まれる。
床に着地するや、煙が噴きだした。
 「しまった・・!?」
煙が消えた時には、土方も山崎も消えていた。
「おのれ・・・・!!このままでは・・済まさんぞ!!」
義捧斎は怒りに柄を握りしめる。
そのあまりの力に、柄は砕け、刀身も闘気のマグマで蒸発してしまった。


 それからしばらく経ったある日・・・。
「どうだ?傷の具合は?」
「ん~?大丈夫大丈夫!ホラ、このとーり!!」
山崎は手足を思いきり動かしてみせる。
 「そうか。ソイツはよかったな。なら・・やっても大丈夫だな」
「え?何のこと?」
嫌な予感を覚えつつ、山崎は尋ねる。
「仕置きだ。さっさと尻出しな」
「え!?な、何でさ!?」
思わず山崎は言う。
 「おぃおぃ、しらばっくれても無駄だぞ。稽古をサボってゲーセンに行ってたのはわかってんだ」
「土方さ~ん、は、反省してるからさ~、それに俺、こんな目に遭ったんだから、勘弁してよー」
山崎は両手を合わせ、拝み倒すように言う。
 「ダメだ。稽古サボりは俺も勘弁出来んからな。それに・・勇さんだって、今回のことでは心配したんだぞ。わかってるのか?」
「う・・で、でもさ~」
「諦めろ。皆に迷惑や心配をかけたのは事実なんだからな」
「そうは言っても・・やっぱり・・嫌っ!!」
山崎はそういうと、煙玉を床に叩きつけようとする。
だが、それより先に土方が飛び込み、身体を押さえ込んでしまう。
 「ちょ、ちょっと!離してよっ!土方さん!!」
「やれやれ・・。仕方ねえな・・・」
ため息をつきながら、土方は山崎を膝にうつ伏せにする。
直後、思いきり手を振りかぶった。


 バッシィーンッッ!!
「うわあっ!!」
思いきりお尻を叩かれ、山崎は悲鳴を上げる。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「ちょ、ちょっとっ!痛いってば~!土方さぁ~んっ!!」
「当然だろう?お仕置きなんだからな。しっかり、反省しろよ」
土方はそう言いながら、山崎のお尻を叩き続ける。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「うわあっ!痛っ!痛ああっ!ちょっとっ!やめてってばあっ!!」
「全く・・・。稽古サボりとは・・いい度胸してるなぁ?」
お尻を叩きながら、土方はお説教を始める。
 「だ、だってさぁ、せっかくの休日なんだよ?休みの日まで、稽古とか修行なんて、メンドくさいじゃない~。せっかくなんだから、思いきり遊ぼうよー」
「馬鹿野郎!そんな態度で仕事が務まるか!それより・・・その結果、どうなった?ヤクザや新田の父親に捕まって、危ういところだっただろうが?」
「あ、あれは油断してただけだって~!い、いつもの俺ならあんなヘマしな・・」
バッシィィィーーーーンンンンッッッ!!!!
「うわあああああ!!!!」
突然の強烈な平手打ちに、山崎は絶叫する。
 「『油断してた』・・だと?おい・・!!」
(ヤバ・・!?地雷踏んじゃった!?)
山崎は顔面蒼白になる。
 「そんな根性で・・武道家として・・エージェントとして・・やっていけると思ってんのか!!」
バッシィィィーーーーンンンンッッッ!!!!
バッシィィィーーーーンンンンッッッ!!!!
「あぎゃああひいいいいいい!!!!」
あまりの打撃に、山崎は目から火花が飛び散る。
土方は山崎のズボンを降ろし、膝を組む。
おかげで、山崎は赤く染まったお尻を突き上げた体勢になる。
「いい機会だ・・。根性・・文字通り叩き直してやる・・。ハァァ・・・」
山崎は奥義の無呼吸連撃の体勢を取る。
そして、再び手を振り下ろした。
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
「うわあああああ!!!ぎゃあひいいいいいい!!!」
無呼吸ゆえに間髪入れずに繰り出される連撃に、山崎は絶叫する
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
「土方さぁぁんん!!ごめんなさぁぁいいい!!許してぇぇぇ!!」
「馬鹿野郎!根性叩き直してやる、って言っただろう!覚悟しろよ!!」
「そんなああああ!!うわあああああ!!!!」
山崎は絶望の声を上げる。
その後、長い長い間、山崎の悲鳴が響き続けた。


 「うっう・・うぅぅぅうううぅぅううう・・・・」
山崎はボロボロと涙を零して泣いていた。
お尻は今や倍以上に腫れ上がり、ワインレッドに染め上がっている。
 「ごめんなさい・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
山崎は許して欲しくて、必死に謝る。
「何が悪かったんだ?言ってみろ」
土方は一旦、手を止めて尋ねる。
 「うう・・!稽古・・サボって・・遊んで・・ました・・・」
「それから?」
「うう・・。それで・・ヤクザや義捧斎にさらわれ・・ました・・・」
「そうだが・・・・一番大事なことは何だ?」
「ひっく・・。それで・・皆に・・迷惑や心配・・かけました・・・」
「そうだ・・。仲間に心配や迷惑をかける真似をするんじゃない。いいか。確かにお前さんの腕は認める・・。だがな、仕事柄、いつも危ない状況になりかねないんだ。軽はずみな行動や考えが・・お前自身にも・・周りの皆にも危険を招く可能性があるんだよ。わかったか?」
「わ、わかりましたー!も、もう・・しません!!!」
山崎は必死に誓う。
それを見て、ようやく土方は手を止めた。


 「どうだった?」
「ああ、一応は反省してたぜ。俺の言いたいこともわかってはいるな」
「そうか・・。すまなかったな。トシには嫌な役目をさせてしまったな・・」
土方の報告に、近藤はそういう。
「別に構わんさ、アイツには勇さんより俺の方から叱った方がちゃんと効くからな。俺は会社の方があるんで、失礼する」
そういうと、土方は部屋を後にした。


 ―完―

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