王国軍中尉ルチア・ルヴェル11 初夢(アダルト・ホラー要素あり)
(注:アダルト・ホラー要素ありです。許容出来る方のみご覧ください)
「ふふふふふふ・・・・・」
マッセナ大佐はニヤニヤしながらそれを丁寧に拭いていた。
拭いているのは穴あきパドル。
しっかりとパドルに磨きをかけたかと思うと、大佐は枕の下にそれを敷く。
「ふふふ・・・いい初夢を見られるといいのだがねぇ」
大佐は枕を見つめながらそう言った。
そう、今は2008年一月一日の夜。
これから大佐は寝ようというわけだが、その準備としてパドルを枕の下に敷いたのだ。
それはいい夢を見たいという願いからである。
この国でも初夢の風習があり、一月一日に縁起のいい夢を見ると一年の運勢がよいと信じられている。
だからよい夢を見られるようにとパドルを枕の下に敷いたのだ。
今年もたっぷりと中尉のお尻を叩けるようにと。
「ふふふ・・・それでは眠るとしようかねぇ・・・・・」
大佐はそう呟いたかと思うと、ベッドに入ってそのまま眠りについた。
その夢の中で大佐はいつものように自分の執務室で仕事をしていた。
書類にサインをしていると、不意にドアがノックされる音が聞こえてくる。
大佐が声をかけると、扉が開く。
扉が開くや、大佐は思わず目を見張った。
ルチア中尉が入って来たのだ。
それだけなら別に驚くほどのことではない。
しかし、何と中尉は着物姿だったのだ。
中尉は髪を日本の時代劇風に結いあげ、鼈甲をはじめとする高級素材製のかんざしを幾つも差している。
目にも艶やかな着物を纏い、キセルを手にして歩くその姿はさながら時代劇の花魁のようだった。
「ど・・どうしたのかね!そ・・そんな恰好で!?」
さすがの大佐もあまりの事態にビックリしてしまう。
「大佐・・・・」
ルチア中尉は床に正座したかと思うと、三つ指をついて深々と頭を下げる。
「今まで・・意地を張っていて・・申し訳・・ありません・・。実は・・前々から・・ずっと・・好きだったんです・・」
「い・・今・・何と・・言ったのかね?」
大佐は思わず聞き返す。
ルチアはカアッと顔を赤らめると恥ずかしそうに顔をそむけながら言った。
「本当は・・ずっと・・ずっと・・好きでした・・。でも・・恥ずかしくて・・・言えなくて・・それで・・つれない態度を・・でも・・気を引きたくて・・・それで・・わざとミスをしたり・・して・・いたんです・・・」
大佐は余りの出来事に呆然と佇んでいる。
だが、我に返ると中尉に歩み寄る。
歩み寄ったかと思うと、中尉をギュッと抱き締めた。
「ルチア中尉・・・私は・・・心の底から・・・嬉しいよ・・・。君の気持が・・・」
「大佐・・・・」
ルチアはうっとりした表情で上司を見つめている。
「大佐・・・お願いです・・・。私を・・大佐の膝の上で・・たっぷりと・・可愛がって下さい・・・・」
「ふふふ。望むところだよ。中尉、たっぷりと泣かせてあげよう」
「さぁ・・・中尉、来給え」
大佐はいつものように執務用の椅子に腰かけると、中尉にそう呼びかける。
ルチアは恥ずかしそうな素振りを見せたものの、しゃなりしゃなりと歩きながら大佐の傍らへにじり寄る。
やがて、大佐の脇に立つとジッと上司の膝を見つめたのち、ゆっくりといつものように膝にうつ伏せになった。
(あぁ・・・中尉が・・・自分からお尻を差し出してくれているのだ・・・)
そう思うと大佐の胸は怪しく乱れる。
大佐は緊張と興奮に呼吸が乱れそうになり、ブルブルと手を震わせながら美麗な着物に手を伸ばす。
ゆっくりと裾を捲り上げてゆくと、大理石を思わせる美しい肌と均整の取れた両脚が姿を現す。
(ああ・・・・。何と素晴らしい・・・)
着物という普段とは全く異なる姿のせいか、お尻を出すだけの行為にもえもいわれぬときめきを大佐は感じていた。
やがて、裾に隠されていたお尻があらわになる。
いつもお仕置きの際に見ているにも関わらず、見るたびに中尉のお尻の美しさに大佐は息を飲まずにはいられなくなる。
まるで熟れたての水蜜桃のように瑞々しく、形の整ったお尻に、大佐はムラムラと嗜虐的な感情を覚える。
この美しいお尻を心ゆくまで打ちのめしたい、真っ赤に染めて熟しすぎたリンゴのようにしたい、そして中尉をたっぷりと泣かせたいと。
「た・・大佐・・も・・もう・・」
「我慢できないかね?」
大佐の問いにルチアは顔を赤らめると黙って頷く。
「ふふふ・・。それではたっぷりと可愛がってあげよう。覚悟はいいかね?」
ルチアは大佐のズボンの裾を両手でしっかりと掴むと再び頷く。
大佐はニヤリと笑みを浮かべると、ゆっくりと右手を振り上げ、中尉のお尻目がけて振り下ろした。
パアンッ!
「あ・・っっ」
甲高い音と共にルチアは声を漏らす。
だが、普段と違い、その声には苦痛だけでなく、別のものが混じっていた。
パアシィンッ!パアアアンッ!ピシャアンッ!パアンッ!
「あぁ・・・ん・・あっ・・あん・・・」
お尻を叩かれながら、中尉は嬌声を上げる。
ピシャアンッ!パアチィンッ!パアアンッ!ピシャアンッ!
「あぁ・・ひゃ・・あんっ・・ひゃあんっ・・・」
ルチアは身をくねらせ、甘い声を上げる。
お尻はうっすらとピンクに染まっており、何とも猥らな雰囲気を醸し出す。
叩きながら、だんだんと大佐の息遣いが荒くなってくる。
同時にお尻を叩く勢いがさらに強くなった。
バアシィ~ンッ!バチィ~ンッ!バァア~ンッ!バアッシィ~ンッ!
「きゃあっ・・ああんっ・・ああう・・あんっ・・」
ルチアは苦痛と快感の入り混じった声を上げ、蕩けたような表情を浮かべる。
バアシィ~ンッ!ピシャア~ンッ!パアッチィ~ンッ!ピッシャア~ンッ!
「あ・・っ・・もう・・だめ・・ああっ・・きゃあああっっっ!!!」
突然、中尉の腿の間からクジラの潮吹きを彷彿とさせるものが勢いよく噴き出した。
「やだ・・やっちゃった・・そんな・・恥ずかしい・・・・」
ルチアは大佐の膝にうつ伏せになったまま、恥ずかしさに顔を赤らめる。
「ふふふ・・そんなによかったかね?」
大佐はお尻を叩く手を止めると、グショグショに濡れてしまった床を見下ろしながら尋ねる。
「そんな・・そんな恥ずかしいこと聞かないで下さい!?」
ルチアはそう言うとへそを曲げたように顔をそむける。
「ふふふ・・。どうやら気持ち良かったようだねぇ。でもお漏らしなんていけない子だ。そんな子はもっともっとお尻を真っ赤にしてあげよう・・うふふふふ・・」
「そ・・そんなこと・・されたら・・嬉しすぎて・・おかしくなってしまいます・・」
ルチアは顔を赤らめて言う。
「ふふふ・・。安心したまえ。どんなことがあっても君が好きだから・・」
「ああ・・・嬉しいです・・大佐・・」
大佐は中尉を抱き上げると、そのまま唇を重ね合わせる。
そして、さらに強く抱こうとしたときだった。
「ううん・・・」
大佐は目を覚ますとすっかり日が昇っていることに気づく。
「おや・・。夢だったのか。せっかくいいところだったのに・・」
大佐は身体を起こすと残念そうな表情を浮かべる。
(それにしても・・・夢とはいえ可愛かったなぁ・・。ウフフフ・・・)
大佐はルチアの花魁姿を思い出すと、だらしない笑みを浮かべる。
(しかしこんなにいい夢を見られるとはな。これは今年もたっぷりと中尉のお尻を叩けそうだな)
大佐は一人ほくそ笑むといつまでもにやにやしていた。
真っ暗な闇の中、ルチアは全速力で走っていた。
走りながらルチアは時々後ろを振り返る。
背後からは中尉とは別の足音が聞こえてくる。
やがて、懐中電灯やランプと思しき光が見えてきた。
光の正体は大佐。
大佐は何とも異様な姿をしていた。
頭には鉢巻を捲いて左右に懐中電灯を差し込んでおり、胸には自転車用のランプをぶら下げているのだ。
その腰にはケインや乗馬鞭を差しており、手には木製の大型パドルを手にしている。
まるでかつて岡山の寒村を恐怖に陥れた殺人鬼をパロったような異様な姿で、大佐は中尉を追いかけてくる。
パンッ!パンパンパアンッ!
ルチアは異様な上官目がけて引き金を引く。
銃弾は正確に額や心臓を射抜き、大佐はドサリと地面に倒れる。
大佐が倒れるのを見て、ルチアはホッとするが、しばらくすると大佐の身体が痙攣し始めた。
(ま・・まさか・・・・)
ルチアはゴクリと息をのんで大佐の死体を見守る。
すると恐ろしいことに死体がムクリと起き上がってきたではないか。
「ウフフフ・・・・」
不気味な笑い声を浮かべたかと思うと、何と皮や肉がズルズルと剥がれおちる。
同時に死臭が鼻を突き、胃の奥から苦いものがこみ上げてくる。
ゾンビとなった大佐はケインを引き抜くと中尉に襲いかかろうとする。
ルチアは銃を撃ちまくると踵を返して必死に逃げだす。
闇の中を走っていると、やがて洋館が見えてきた。
洋館の中へ飛び込むと、中尉は扉をしっかりと閉めて鍵をかける。
ゾンビ大佐がドアにしがみつくや、ケインやパドルを振り回して扉を破ろうとする。
だが、厚く大きくて重量のある扉は微動だにしない。
ゾンビ大佐が入ってこれないのを確認するや、ようやくルチアはホッとする。
扉からやや離れると、ルチアはあたりを見回した。
(あら・・・・?)
ルチアは天井から何かがぶら下がっていることに気づく。
何か鐘のような大きなものが提げられているようだ。
(何かしら・・?)
中尉は拳銃を構えたまま、緊張した面持ちでゆっくりと近づいてゆく。
やがて、それがゆっくりと正体を現した。
「・・・!!!!!」
現れたそれを見るや、ルチアは声も出なくなる。
ぶら下がっていたのは人間の生首だったのだ。
切りたてなのだろう、傷痕は生々しく、床にポタポタと赤いものが滴り落ちている。
しかも、よく見ると大佐の生首ではないか。
「あぁ・・ひ・・ひどい・・!!」
誰がやったか知らないが、首を刎ねた上にぶら下げるなんてあまりにもひど過ぎる。
大佐には普段からお尻をぶたれているものの、それでもさすがに見ていて忍びなかった。
せめて床に降ろしてやろうと中尉は大佐の宙づり生首に手をかけようとする。
そのとき、突然大佐の生首がニヤリと笑みを浮かべた。
「ウフフ・・・ルチア中尉・・待っていたよ・・・」
生首が語りかけてきた衝撃に、中尉は愕然とする。
思わず拳銃をぶっ放すや、急いで別の部屋へと逃げだした。
「誰・・・誰なの?」
別の部屋に逃げ込むや、ルチアは先客がいることに気づく。
「先輩~。待ってましたよ~」
そういって現れたのはルゥ少尉だった。
「何だ・・ルゥ少尉な・・・」
そこまで言いかけてルチアはおかしなことに気づく。
ルゥが奇妙な格好をしているのだ。
彼女は何故か自身の顔に似せたゴム製の仮面をかぶっているのである。
「どうしたの?そんなものかぶって?」
「実はこうなっちゃったんですよ~。見て下さい」
そういうとルゥ少尉は両手でマスクの端を手にし、ゆっくりと捲りあげた。
「あっっ!!!」
ルチアは仮面の下から現れたものを見るや、声を上げる。
仮面の下から現れたルゥ少尉の顔には普段の面影は全く無かった。
その顔は真っ黒に焼けただれ、果物を斧か何かで叩き割った跡のような無残な様相を呈していたのだ。
余りの凄まじさにルチアは声も出ず、呆然と立ち尽くしているのみだった。
「ねぇ・・先輩・・先輩の顔・・とっても綺麗ですよねぇ・・。先輩の顔の皮・・下さいよぉ・・ねぇ・・お願いですよぉ・・」
おぞましい顔でニタニタ笑いながらルゥはルチアに接近する。
ルチアは恐怖にジリジリと後ずさる。
だが、ついには背後の壁にぶつかり、それ以上下がれなくなってしまった。
それを見ると、ルゥは軍用ナイフを取り出す。
「ねぇ・・先輩・・顔・・顔・・顔下さいよぉぉぉぉ!!!!!!」
狂ったように叫ぶや、ルゥが躍りかかる。
ルチアは抵抗しようとするが押し倒され、そのまま意識を失った。
布団が勢いよく跳ねあがったかと思うと、ルチアはスプリングで飛ばされたかのような勢いで上体を起こした。
肩を上下させ、荒い呼吸をしながらルチアはあたりを見回す。
すると、自分が寝室にいることに気がついた。
(夢・・・・)
それに気づくと、ようやくルチアは落ち着きを見せる。
(それにしても縁起でもないわね・・。初夢がよりにもよって・・・)
ルチアは思わずため息をつく。
(全く・・・ライトの男にゴムの仮面って・・絶対あれのせいね!!)
ルチアはまわりを見回すと、部屋の片隅に置いてあるダンボールを睨みつける。
ダンボールは上が開いているため、中に入っているものが見えた。
中には本が大量に詰まっている。
小説本らしく、「八つ墓村」、「犬神家の一族」、「病院坂の首くくりの家」といった横溝正史の作品のヴィクトール語版がこれでもかと言わんばかりに入っていた。
(全く・・大佐も何を考えているのかしら・・こんなもの送りつけて・・)
ルチアは再びため息をつく。
これらの本は全て大佐からクリスマスプレゼントとして贈られたものだった。
中尉としてはこんなもの願い下げだったのだが、大佐が強引に送って来たのである。
プレゼントとしてもらった以上、大佐につき返すわけにもいかず、かといって古本屋にでも売ってしまおうかとも思っていたのだが、中尉のそういう考えを読んでいたのだろう、大佐は事あるごとに「クリスマスプレゼントはどうだったかね?」などとさりげなく尋ねて来るのだ。
そのとき、読んでいないことがバレてしまい、それで「せっかくのプレゼントをほったらかしにしておくなんていけない子」などと言われてきつくお仕置きをされてしまったのである。
それで、そんな羽目にならないよう、否応なしに横溝作品を読んでいるのである。
そのおかげでおかしな夢を見てしまったというわけだ。
(もう・・・冗談じゃないわ・・本当に・・)
ルチアは窓から段ボールごと放り出したくなるのを堪えつつ、溜息をついた。
―完―
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