王国軍中尉ルチア・ルヴェル2 チェスの罠



 キュキュ・・・キュキュキュキュキュ・・・。
何かを磨く音がマッセナ大佐の執務室に小さく響き渡る。
大佐は布で何やら小さなものを一生懸命になって磨いていた。
大佐が磨いているのはチェスの駒だ。
 よく見ると机の上にはチェスの盤と駒が置かれている。
いずれも黒檀をはじめとする高級な素材を惜しげもなく使ったもので、王侯貴族のために造られたのではないか、と思えるほどの素晴らしい品だった。
「ふふふふふふ・・・・・」
大佐はどこか妖しい笑みを浮かべながらチェスセットに丁寧に磨きをかけてゆく。
このチェスセットは大佐ご自慢の逸品で、ずっと以前にあるアンティークショップで購入したものだった。
何でも200年ほど前、この国で大きな権勢を振るったチェスマニアのさる大貴族が特注で造らせたものらしい。
あいにく子孫の代になって家が没落してしまったためにこれが質屋へ流れ、以来様々なチェス愛好家やアンティーク愛好家の手を渡り歩いた末に大佐の下へやってきたというわけである。
 「ふふふふふ・・・ルチア中尉には劣るが・・実に美しい・・・」
精緻なつくりのチェスセットに大佐は妙なことを言いながらホレボレしたような目を向ける。
そんなことをやっていると扉が開き、ルチア中尉が大量の書類を抱えてやって来た。
 「何気持悪い顔してらっしゃるんですか・・・」
大佐のあまりのニヤケ面に思わずルチアは呆れたような表情を見せる。
「おや、いつの間に入ってきたのかね」
大佐はチェスセットに気を取られていたためか、思わずキョトンとした表情で尋ねる。
「声をかけたはずですが。どうやら手入れにうつつを抜かしてらっしゃって聞えなかったようですね」
「おやおや。私にかまってもらえなくて寂しいのかね?」
中尉の皮肉にニンマリと笑みを浮かべて大佐は切り返す。
「な・・っ!そんなわけないじゃないですか!?」
思わずルチアは顔を赤らめて反論する。
その姿に大佐は再びニヤニヤする。
「うふふ・・本当に君は可愛いなぁ」
「妙な発言はやめて下さい」
中尉はニコリと笑うと拳銃に手を伸ばす。
それを見るやさすがに大佐はチェスセットを脇へ片付ける。
 「まぁいい、そこへ置いてくれたまえ」
大佐にそう言われるとルチアは机の空いているスペースへ書類を置く。
そのとき、ふとルチアはチェスセットに目をやった。
「まぁ!!」
突然、ルチアは驚嘆の声を上げる。
大佐は訝しげに中尉を見上げた。
「どうしたのかね、そんなに驚いた顔をして?」
「あっ・・も、申し訳ありません。あ・・あの・・大佐・・・そちらのチェスセット・・よろしければ見せていただけませんか?」
「まぁ別に構わないが・・・・」
「あ、ありがとうございます!」
ルチアはチェスセットを借りるや来客用の机にチェスセットを置き、ジッと眺めている。
その表情には羨望や恍惚感がありありと浮かんでいた。
 「中尉・・・もしかして君もチェスが好きなのかね?」
大佐はふと気になってルチアに尋ねる。
ヴィクトール王国は昔から上下を問わずにチェスが盛んな国であり、全国各地でチェス大会が開かれたりチェスクラブなども多く存在している。
軍人たちにもチェス愛好家は多く、そのためルチアがチェス好きでもおかしくはなかった。
「あ・・はぃ・・。素人に毛が生えた程度ですけど・・・」
ルチアはちょっと恥ずかしそうに言う。
どうやら下手の横好きというタイプのようだ。
(ほほぅ・・・。それは初耳だな・・・。いいことを聞いたぞ・・・)
部下とはいえプライベートのことまで把握しているわけではないから、大佐は中尉の話を聞いて思わず嬉しそうになる。
「どうやら、君はそのチェスセットがいたく気に入ったみたいだねぇ」
「ええ。こんな素晴らしいチェスセットで一局出来たらなんて・・・考えただけで・・・」
ルチアは普段のクールな感じとは打って変わって夢見る少女のような表情になる。
「ほほぅ、そうかねそうかね。ならば打たせてあげてもいいかな・・・」
「え!?」
ルチアは思わず声を上げた。
まさかそんなことを大佐がさせてくれるなんて思いも寄らなかったのだ。
「ほ、本当ですか、大佐!?」
「あぁ。他ならぬ君の望みだ。君も私も確か夜は非番だろう?どうかね。仕事が終わったら一局私と指してみないかね?六時頃ならば君も私も今日の仕事は終わりだろう?」
「あ、ありがとうございますっっ!!!」
ルチアは心底から嬉しそうに言う。
「ふふふ、いいのだよ別に・・・」
ルチアが執務室から出てゆくと大佐は何かイタズラを思いついた子供のような笑みを浮かべた。
「フフフフフ・・・ルチア中尉がチェス好きだったとは知らなかったが・・・だが・・おかげでとてもよいことを思いついたよ・・ウフフフフフ・・・やぁ・・君のおかげだよ」
大佐はチェスの駒の一つを取り上げると嬉しそうに言う。
「ウフフフフ・・・ルチア中尉・・・今夜は君をたっぷりと可愛がってあげるよ・・・」
大佐は邪悪な笑みを浮かべ続けていた。


 冷静な振りをしつつもどこかソワソワと落ち着かない様子でルチアは午後の仕事を終えるや、真っ先に大佐の執務室へ向かう。
執務室へ現れると大佐は来客用のテーブルの上にチェス盤を用意して待っていた。
「やぁ中尉、待ちかねたよ」
「す・・すいません・・。出来るだけ急いでたんですが・・・」
「まあいい。そこへ座りたまえ」
大佐が向かいの席を勧めるとルチアはオズオズと座る。
ソファに腰かけるとルチアは改めてチェスセットの素晴らしさに目を奪われそうになる。
(わぁ・・・本当に・・凄いわ・・・)
 ルチアの本当に嬉しそうな表情を見るや、大佐も思わず相好を崩しそうになる。
好意を寄せている相手が喜んだり嬉しがったりする姿を見るのは楽しいものだ。
だが、同時にちょっと残念にもなる。
(この笑顔を私に向けてくれると嬉しいんだがねぇ・・・)
好きな子ほどいじめたくなる自分の性分のせいでそうなるのは中々難しいのはわかっていつつも、ついつい複雑な気持ちになってしまう。
(このチェス盤は中尉の心を本当に虜にしている・・。これのおかげで中尉と対局できるのは嬉しいが・・・道具に焼きもちを焼いてしまいそうだよ)
心中で苦笑すると大佐はルチアと向き合う。
「さぁ、始めようか。君が先攻でやりたまえ」


 「ああ・・・・」
ルチアは思わず声を漏らす。
つい先程、チェックメイトをかけられて負けてしまったのだ。
「ふふふ・・これで3勝だな・・」
大佐は思わず笑みを浮かべる。
「まだですわ!大佐、もう一勝負お願いします!」
ルチアは思わずそう言った。
今まで三回対局し、ルチアは中々よいところまでいくものの大佐に切り返されて敗れてしまうのであった。
「う~ん。そうはいっても・・私も疲れたしな・・・」
「お願いです、大佐!せめてあと一局だけ!」
大佐が渋る為にルチアは思わず懇願する。
普段の姿からは想像できないほどルチアはすっかり熱くなってしまっていた。
「そうだなぁ・・・」
大佐は考え込むような素振りを見せると、こっそりルチアの様子を盗み見る。
中尉はどうやらリベンジをしたくてたまらないといった様子だ。
「もう一局だけならやってもよいのだがね・・・ただ・・・」
「ただ・・・何ですか?」
ルチアは恐る恐る尋ねる。
このまま勝負してもらえないのでは、という不安に駆られたのだ。
「普通に勝負するのではつまらないと思ってね。何か趣向を凝らしてはどうか、と思うのだがね?」
「趣向ですか・・・?まさかお金を賭けたりなさるんじゃないでしょうね?」
「それはしないよ。それでは君に怒られてしまうからねぇ」
「では・・どうされるつもりなんですか?」
「そうだねぇ。勝った方が何でも一つ言うことを聞くというのはどうだろうかね?」
大佐はクスリと笑みを浮かべて言う。
「それは・・・・」
ルチアは思わずその条件に渋るような表情を見せる。
大佐のことだから何かよからぬことを考えているのではないかと疑っているのだ。
そのせいか、ときどきチラリチラリと疑わしそうに大佐の方を見やる。
(そんな表情されるとさすがに悲しいものがあるんだがねぇ・・)
さすがに大佐も苦笑せざるを得なかった。
まあもっともその疑惑は当たらずとも遠からずだがね、と心中で呟きはしたが。
「やれやれ・・それでは仕方が無いな」
大佐は大げさにかぶりを振るうとチェスセットを片付けようとする。
「あっ!何をなさるんですか!?」
思わずルチアは叫んだ。
「何をって片付けているだけだよ。今日はもうお終いにしたいのでね」
「お願いです!大佐!もう一局だけ!」
「そうはいってもねぇ・・・・」
大佐はわざと困った表情を浮かべてみせる。
対局への欲求に駆られたルチアはこのままでは対局できないと思い、焦りの表情を見せる。
ルチアのその様子に大佐は密かにほくそ笑んだ。
「わかりました!それでは大佐のおっしゃるとおりにします!」
ついにルチアはたまりかねたように叫んだ。
「ほぅ、それでは私の条件にOKしてくれるのかね?」
「はぃ!」
「嘘はないだろうね?」
「はい!絶対にありませんわ!」
ルチアは対局したくて大佐に誓いを立ててしまう。
大佐は冷静な表情のまま、心中で悪魔の笑みを浮かべた。
「フフフ・・・それではあと一局だけやろうか・・・」
大佐はそういうと腰を降ろしてルチアと対峙する。
 (確かに・・・ひっかかるけど・・・でも・・大丈夫よ。あまり実力は変わらないんだから)
ルチアは自分にそう言い聞かせる。
確かに今まで全敗している。
だが、それは全て際どいところの勝負であったことに中尉は気付いていた。
どうやら大佐もチェスはあまり得意ではないらしい。
だから、自分が逆転勝利することも可能だと判断していた。
 (フフフフフ・・・まさかここまで成功するとは・・・)
大佐はポーカーフェイスのまま、心中でほくそ笑んでいた。
実は今までの対局は全て罠だった。
大佐は巧妙に下手な指し手を装い、ルチアに危ういところで勝利したように装っていたのだ。
ギリギリの接戦で敗れたことが、次は勝ってみせるという中尉の闘争心をかき立てたのである。
おかげで中尉は知らず知らずのうちに大佐が張り巡らせた罠にはまり込んでしまっていたのである。
(フッフッフッ・・。それでは・・・本領発揮と行こうかね・・・)
大佐は密かにほくそ笑むと駒に手を伸ばした。


 「そ・・そんな・・・・」
ルチアは驚愕の表情で震えていた。
盤上ではルチアの駒は全て取られてしまい、キングも追い詰められた末にチェックメイトをかけられてしまったのだ。
まるでチェスの神様が降り立ったかのように大佐は完璧な指しぶりを見せた。
おかげでルチアは散々に翻弄されてしまい、勝利どころか大佐方の駒をたった一つとることさえ出来なかったのである。
 「フフフフフフフフフ・・・・。どうやら私の勝ちのようだな」
大佐はニヤニヤと笑みを浮かべながらルチアを見やる。
「さて・・・中尉・・。約束を忘れてはいないだろうね?」
「え・・・あ・・はぃ・・・」
ルチアは緊張のあまりごくりと息を飲む。
はっきりと誓った以上、誤魔化すことはできなかった。
「よろしい・・・では・・そうだなぁ・・・」
もったいをつけて大佐は中々話さない。
考え込むような振りをしながらルチアの様子をジッと見ている。
表情は冷静さを保ってはいるものの、何をさせられるのかという不安を隠しきれていない。
(フフフ・・恐怖と不安を必死に押さえて冷静さを保とうとしているのか・・フフ・・本当に可愛いなぁ・・・)
中尉が自身の不安と必死に戦っている姿に大佐はたまらなく愛しくなる。
そして、それゆえに不安におののき、必死に自分自身を叱咤する中尉の姿をもっと見たいという望みが強まってゆく。
 「そうだなぁ・・・・それでは・・・」
ようやく大佐が決断したのを見るや、ルチア中尉はゴクリと息を呑む。
「『お尻ペンペン』にしようか」
ニヤリと悪魔のような笑みと共に大佐は宣告をした。


 「い・・今・・なんておっしゃったんですか・・・?」
ルチアは自身の耳が信じられず、思わず尋ねた。
「おや?聞えなかったのかね?私は『お尻ペンペン』といったはずだがね?」
大佐は意地悪げな表情を浮かべて言った。
中尉の頬に朱が差したかと思うと唇がフルフルと震える。
否応無しに自分に降りかかった事態を理解したのだ。
中尉が恥ずかしさに思わず赤面する姿に、また大佐は可愛いと思いニヤニヤする。
 「た、大佐・・・幾らなんでも変な冗談はやめて下さい・・・」
ルチアは恥ずかしさを堪えて言う。
「冗談など言ってはいないよ。フフフ、本気で君のお尻を叩かせてもらおうと思っているのだがね」
「だ・・・誰がそんなことを・・・!!」
さすがにルチアも堪えきれなくなりソファから立ち上がりかける。
「おや、君は自分が言ったことを守れないのかね?」
大佐は中尉の痛いところを突くかのように言いやった。
その言葉にルチアの動作が止まる。
その表情は苦悶に満ちている。
「君ともあろうものが自分が誓ったことも守れないとはね。何とも残念だよ」
大佐はそう言うと大げさに失望してみせる。
ルチアは自身の言い出したことは必ず守る人間だ。
彼女にとって今の言葉は自身のプライドや信念をズタズタに切り裂くナイフとしての作用を果たしたはずだ。
 (口惜しい!!こんなに馬鹿にされるなんて!!)
ルチアは屈辱感と怒りで拳をギュッと握り締めて震わせる。
これが大佐の罠だったということはもう気付いている。
お尻を叩かれるなんて何よりも恥ずかしくて屈辱的なことだ。
だが、それよりも大佐に「自分の言ったことも守れないのか」と馬鹿にされることの方がもっと屈辱感を味あわされることだった。
たとえ大佐の意のままに動かされているのがわかっていても、ルチアは自身を止めることは出来なかった。
 「わかりましたわ。それでは大佐の言う通りにしますわ!」
ルチアはキッと大佐を睨みつける。
その目には抑えつけかねている屈辱感と怒りが沸々と煮えたぎっていた。
「ふふふ・・・いい子だ。さぁ、ここに来たまえ」
ニヤニヤと笑みを浮かべるや大佐は自身の膝を軽く叩いて指し示した。
 「く・・・・・」
ルチアは覚悟を決めるように息を吐くと大佐の傍へ近寄る。
そして大佐の膝にうつ伏せになった。
 「フフフフフフ・・・・・」
悪人っぽい笑みを浮かべながら大佐は自分の膝の上にうつ伏せになっている部下を見下ろす。
ルチアは大佐の膝の上で小刻みに震えている。
屈辱感を必死に堪えているのだ。
(屈辱に苛まれて・・それを必死に堪えているのだな・・。ああ、可愛い。本当に可愛いよ、中尉)
意地悪な笑みを浮かべながら大佐は中尉の姿にこの上ない愛しさを感じる。
彼にとって振り回したりいじめたりするのは実は愛情の現われだった。
好きだからこそ、好意や愛情を抱いているからいじめたくなるのだ。
(可愛い。本当に可愛いよ中尉。もっと、もっと君の可愛い姿を見せてもらおうか)
再び邪悪な笑みを浮かべると大佐はルチアの腰を抑え、右手をズボンにかける。
そしておもむろに中尉のズボンを下し始めた。
 「な・・何するんですか!?」
ズボンを降ろされてしまい、ルチアは思わず抗議の声を上げる。
「おやおや。わからないのかね?お尻ペンペンのときにはお尻は出すものと相場が決まっているじゃないか」
ケロリとした表情で抜け抜けと大佐は言いやった。
 「そ・・そんな・・っっ!!!」
ルチアは恥ずかしさに真っ赤になる。
ただでさえ、お尻ペンペンなどというこの上も無く恥ずかしい行為を課せられているのだ。
その上、異性の視線に自分のお尻をさらす羽目になったら目も当てられない。
あまりの羞恥に中尉は顔全体が真っ赤に染まり、目尻に涙が浮かびそうになる。
 大佐は部下のお尻をジッと見つめている。
丸みを帯びた形のいいお尻は適度に弾力があり、白い肌が白桃を思わせる。
古代の美女彫像さながらの素晴らしいお尻だった。
こんなお尻を真っ赤に染めることが出来ると思うと大佐は笑みが止まらなくなる。
「フフフ・・素晴らしい・・本当に綺麗なお尻だよ・・・中尉・・・」
「み・・見ないで・・下さい・・・」
ルチアは大佐の言葉に恥ずかしさをそそられ、全身を小刻みに震わせる。
その姿にまた大佐はたまらなく愛しさを覚える。
(可愛いなぁ。ふふふ、あまりにも可愛いからこれからたっぷりと可愛がってあげるよ)
大佐は笑みを浮かべたままルチアの腰をしっかりと押さえつける。
そして自身の思いを注ぎ込むかのように右手に息を吐きかける。
「ウフフフフ・・。では、行こうか。覚悟したまえ」
大佐はニコリと笑って宣告するとゆっくりと手を振り上げた。


 パアッシィンッ!!
「う・・・・っ!」
甲高い音と共に痛みがお尻の表面で弾け、ルチアは思わず声を漏らした。
パシィンッ!ピシャアンッ!パアンッ!パチィンッ!
「フフフフフフ・・・・」
大佐は妖しい笑みを浮かべながら部下のお尻を叩く。
ルチアは大佐のズボンのへりを握り締めると声を押し殺して耐える。
叩いていくうちに、雪のように白かったお尻はほんのりとピンクへ変色してゆく。
(あぁ・・・綺麗だ・・本当に・・・)
ルチアのお尻がほんのり変色していく様子に大佐は心から感嘆の声を漏らす。
それは森が紅葉で少しずつ色づいてゆく美しさに似ていた。
パアンッ!パシィンッ!パチンッ!パアンッ!ピシャアンッ!
一撃ごとに中尉のお尻のピンクは広がっていき同時に濃くなる。
ルチアは声を殺して耐えているがやはり苦しいのだろう、ときどき微妙にお尻や肩を震わせるのが大佐には見えた。
 (フフフ・・・苦しいのだね、恥ずかしいのだね。だが、それを見せまいと必死になっているのだね。さすがだよ、中尉)
マッセナは部下の忍耐心とプライドに感心する。
(本当に・・本当に・・可愛いよ、君は。だが・・・だからこそ・・・君をお尻ペンペンしているのだよ・・・。愛しいからこそ・・好きだからこそ・・・泣いている姿や怯える姿も見たいのだよ・・・フフフ・・・さぁ中尉・・もっと・・もっと・・君の可愛い姿を見せてくれたまえ)
悪魔の笑みを浮かべるや、大佐は部下の可愛い姿をもっと見たくてさらに平手に力を込め始めた。


 バアシィンッ!バチィンッ!バアンッ!ビシャアンッ!
「ぅ・・・!っ・・・!ぁ・・・!ぅ・・・・!」
平手の勢いが強くなったため、ルチアはさすがに苦しくなり微かだが声を漏らし始めた。
お尻は既にピンクから赤に変わっている。
(さすがに・・痛いわ・・)
ルチアは苦しそうな表情を浮かべて思う。
お尻は既にカッカッと熱を発しており、痛みも最初は弾けるようだったのがお尻全体にズンとのしかかっているようだ。
本音を言えば痛くて苦しくてたまらない。
出来ることならヒーヒー喚いたりアンアン泣いたりしたいくらいだ。
 (で・・・でも・・そんなのは・・絶対に・・嫌・・・)
ルチアは口を一文字に結んでそう思う。
余りにも恥ずかしくて情けないからだ。
それにそんなことをしたら大佐を喜ばせるくらいだろう。
お尻を叩かれていること自体が既に大佐を大いに喜ばせているが、これ以上大佐に楽しい思いをさせてやるつもりはない。
せめてもの抵抗をしてやるつもりだった。
 「フフフ・・・ルチア中尉。無理はしなくてよいのだよ」
ルチアの意図を見抜いたように大佐が悪人臭い笑い声と共に話しかけてきた。
「何のことです?こんなもの蚊に刺されたようなものですよ」
ルチアは平気な振りをすると顎を上にツンと反らせて答える。
「フフフ、プライドが高いというか意地っ張りだなぁ。まぁそこが可愛いのだがね」
大佐はそう言うと一旦お仕置きの手を止めてちょっとお尻に手を触れたかと思うとサッと指を流すようにさする。
途端にお尻を凄まじい痛みが駆け抜けた。
「く・・・・・・・!!!!!」
お尻を駆け抜けた雷撃のような苦痛にルチアの全身が硬直する。
(い・・・痛いっっっっ!!!!)
そう叫びそうになったが必死に声を押し殺した。
「ほら。こんなに痛がっているではないか。プライドよりもお尻の方を考えてあげたまえ」
クスクスと笑いながら大佐はヌケヌケと言う。
「よ・・余計な心配は無用です!こんなの痛くも何ともありませんから!」
「フフフ・・・。そうか。なら・・・もう少し本気にならせてもらおうか」
その言葉にルチアはゾッとする。
(これでも手加減してたというの?)
同時に本気の平手打ちの威力を想像して恐怖が駆け抜ける。
(い・・今だって・・・耐え切れないくらいなのに・・・)
もっと強い力で叩かれたらお尻が壊れてしまうかもしれない。
無意識のうちに恐怖で全身が震えてくる。
 (おお・・・・・怖がっているんだね・・・無理も無い・・)
大佐は中尉が無意識のうちに小刻みに身体を震わせるのを見、また膝で震動を感じ取って中尉の感情を察する。
(気丈な中尉が自分の膝の上で子供のように怖がっている)
その事実と中尉が無意識に見せる姿に、再び愛おしさがこみ上げてきた。
普通の人間ならこの辺でやめてやって抱きしめたりしてやるところだろう。
だが、大佐はあいにくそんな出来た人間ではなかった。
 彼にとっては怖がらせたり恥ずかしい思いをさせたりするのは好意や愛情なのだ。
愛しい相手のそういう姿にたまらなく愛おしさを感じるのだ。
だから、大佐に火を注ぐことになってしまうのである。
(中尉、本当に可愛いな、君は。可愛いから・・もっと・・もっと可愛がってあげよう)
大佐は再び右手を自分の顔に近付ける。
何度も叩いた為に大佐の手も赤くなってしまっていた。
だが、そんなことはどうでもよい。
大佐はもう一度自身の右手に念入りに息を吐きかける。
それは自身の思いを右手に注ぎ込み、中尉のお尻へぶつけようとしているように見えた。
(さぁ・・もっと君を可愛くしてあげるよ)
そう呟くと自身の思いをぶつけるかのように中尉のお尻へ右手を叩きつけた。


 「きゃああ!!あああっ!!くぅぅぅぅ!!」
甲高い炸裂音と共に中尉は悲鳴を上げるや背を仰け反らせた。
中尉の額にはジットリと脂汗が浮かび上がっており、息も荒い。
お尻も今やすっかりワインレッドどころか赤黒い感じになってしまっていた。
あの後意地を張ってしまったが故に大佐の本気の平手打ちの洗礼を受けたルチアはすっかり限界に達してしまっていた。
 (も・・もう・・無理だわ・・・)
荒い息を吐きながらルチアは床をジッと見つめている。
何だか床がぼやけて見えた。
バアシィンッ!バシィンバアチィンバシィンバシィンバシィンッ!
バァンバァンバァンバシィンバシィンバシィンバシィンバシィン!
「きゃああ!!きゃああ!痛いっ!痛あっ!きゃあっ!!」
大佐の容赦の無い平手打ちにルチアは幾度も背を海老反りに仰け反らせて悲鳴を上げる。
もはやプライドも意地も無かった。
あまりの痛みと恥ずかしさでそんなものは崩れ落ちていた。
バシンバシンバシンバシンバシンバシンバシンバシンッ!
バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンッ!
「たい・・大佐っ・・もう・・やめ・・やめて・・やめて・・下さいっ・・やめ・・やめて・・もう・・嫌・・いや・・やだぁぁっっ!!!」
ルチアは目から大粒の涙をボロボロとこぼすや小さな子供のように泣き出した。
 「たい・・・大佐ぁ・・・わた・・私が・・なに・・何か・・気に触ること・・・しました・・かぁ・・・。で・・でしたら・・あや・・謝ります・・からぁ・・・だか・・だからぁ・・ゆる・・許して・・下さいぃ・・やだ・・もう・・やだぁ・・・痛いの・・やぁぁ・・・・」
もはやプライドを保てなくなったルチアには許してもらうことしか頭に無かった。
彼女はこんな目に合わされるのは大佐に対して何か気に触るようなことをしてしまい、その仕返しだか何かでこんなことをされているようにしか思えなかった。
 「中尉、違うよ。君は何も悪くないのだよ」
大佐はそう言うと今までとは打って変わってルチアの頭を優しく撫でてやる。
「う・・嘘・・言わないで・・下さい・・だ・・だったら・・何で・・こんな・・こんなぁ・・意地悪・・するんですかぁ・・・」
ルチアは涙を浮かべたまま振り返ると抗議するような表情でキッと睨みながら尋ねる。
「何でと言われても困るのだよ。君にはわかってもらえないだろうからねぇ」
そう言うと大佐は一呼吸置くや、ルチアを抱き起こす。
突然抱き起こされてルチアは一瞬、あっけに取られた様子を見せる。
大佐の顔が近づいたかと思うや、次の瞬間、中尉は大佐に口付けをされてしまっていた。
 (え・・・!?まさか・・また!?)
初めて大佐からお尻ペンペンをされてしまったときの記憶が蘇り、ルチアは羞恥に耳まで真っ赤になる。
「何するんですかっっ!!!」
中尉は思いっきり叫んだかと思うや大佐の頬を思いっきりひっぱたいていた。
「う・・・。さすがだな・・効いたよ・・・」
心底から痛そうな表情を浮かべるや、ルチアを右手で抱えたまま大佐は頬を左手でさする。
「何するんですか!」
「何って私の気持ちを示しただけだがね」
「はあ?」
中尉はわけがわからないといった表情をする。
 「フフフ・・前にも言っただろう。中尉、君を私のスイートハニーにしてみせるって。私は君のことが心底から好きなのだよ」
「ふ・・ふざけないで下さい!!だ、だったら何でこんなことを!!」
「仕方ないだろう。私は好きな子はいじめたくなるタチでねぇ。愛おしいと思えば思うほど泣かせたりしたくなるのだよ。フフフ・・だから、今日のお尻ペンペンはこれでもかと言わんばかりに私の気持ちを込めたのだよ」
「なっ・・!そんなはた迷惑な気持ちはいりません!!」
中尉はさすがに拒否する。
「フフフ、つれないなぁ。だがそれが可愛い・・・。可愛いから・・フフフ、もっと可愛がってあげよう・・・」
「大佐の『可愛がる』はいりませんっっ!!」
はっきりノーを突きつけるやルチアは大佐を押し戻そうとする。
 「すいませ~ん。この書類・・・・」
突然、ドアが開いたかと思うや大佐の従卒が書類を抱えて入ってきた。
だが、部屋に入るや彼は硬直して立ち止まる。
「し、失礼しました~~~~~」
何やら勘違いしてしまったような表情を浮かべるや従卒は書類を置いていくと慌てて出て行く。
「な・・ち、違うのよっ!」
慌てて中尉は誤解を解こうと大佐の従卒の後を追いかけようとするが、大佐に腕を思い切り後ろから引っ張られてしまった為にバランスを崩して再び膝の上にうつ伏せになってしまった。
 「た、大佐!何なさるんですか!このままじゃ誤解されたままですよ!」
「私は構わないのだがね・・・。むしろ君とのことを誤解された方が大いに嬉しいよ」
大佐は平気でそんなことを言う。
「私が困ります!!離して下さい!!」
「そうしたいのはやまやまなんだがねぇ。そうはいかないのだよ」
「何故です!?」
中尉は咬みつくような強い口調で尋ねる。
「実は君のつれない姿がとても可愛くてねぇ・・・。あまりにも可愛いからもっと可愛がってあげたくなってしまったんだよ」
大佐の言葉にルチアは背筋が寒くなる。
大佐の可愛がるとはイコールお尻ペンペンだ。
さっきまでのことでそれは嫌というほどお尻に覚えこまされている。
「も、もう大佐の『可愛がる』は結構です!!行かせて下さい!!」
「まぁそう言わずに。あと2、30回分だけ可愛がらせてくれたまえ」
恐ろしいことをさらりというや大佐は中尉が逃げられないようにしっかりと腰をおさえてしまう。
直後、肌を打つ甲高い音と中尉の叫び声が執務室内に響き渡った。


 ―完―
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