魔物退治2(SO2より:ルシ/アシュ、悪魔&神父パロ、BL要素あり)
(SO2を題材にした二次創作で、ルシフェルが悪魔、アシュトンが神父になっていたり、原作とキャラのイメージが異なっております。BL要素もありです。許容出来る方のみご覧下さい)
「あん?何だか外が騒がしいな?」
戦いに必要になる薬を調合していたボーマンは、外の様子が何だか騒がしいことに気づく。
そんなとき、不意にアシュトンが飛び込んで来たかと思うと、愛用の双剣を取り上げ、どこかへ向かおうとする。
「おい?どうしたんだよ、剣なんか持って?」
「あ!ボーマンさん!大変なんですよ!ルシフェルとディアスさんが大喧嘩始めちゃったんです!!」
「な、何ィ!?」
アシュトンの言葉にボーマンはビックリする。
「早く止めないと!ボーマンさんも手伝って下さい!!」
「わ、わかった!すぐ行く!!」
ボーマンも愛用の籠手を身につけると、アシュトン共々急いで村長の家を後にした。
アイテムを買い終えたクロード達が村長の家へ戻る途中、血相を変えてアシュトン達が向こうからやって来るのに出くわした。
「お兄ちゃん、二人ともすごい慌ててるね?」
「どうしたんだろ、一体?」
二人が怪訝な表情を浮かべていると、ボーマンが声をかける。
「おい!大変だ!あの悪魔がディアスと喧嘩おっぱじめやがったぞ!!」
「ええ!!」
「お前達も手伝ってくれ!!」
「わかりました!!」
クロード達も急いで走りだす。
「それにしても何だってそんなことになったのさ?」
レオンが走りながらそう尋ねる。
「ルシフェルがどうもディアスさんに変な誤解抱いちゃったんだよ。それで僕にディアスさんに近づくなって約束させようとしたんだ」
「それで言い合いになって怒ったあの悪魔がアシュトンを叩いてるところにディアスが出くわしたのかい?」
クロードが尋ねると、アシュトンは返事をする。
「そうなんだ・・・・」
「うわ・・・。そりゃ喧嘩にもなるな・・・」
クロードはやれやれと言いたげな表情で呟いた。
「うわ・・・こりゃ・・すげえな・・・・」
喧嘩の現場に駆け付けるや、ボーマンは地面がえぐれたり木が倒れたりしているあたりの状況に思わず声を漏らす。
駆けつけた一行を尻目に、ディアスもルシフェルも本気モードで戦っていた。
二人とも完全に頭に血が上っており、周りの事などお構いなしに必殺技や魔法を繰り出している。
油断していると、こちらにまで流れ弾が飛んでくるような状況だった。
「こりゃ口で言っても止められる状況じゃねえな・・・」
あまりの事態にボーマンは呟く。
「力づくで止めるしかないな・・・」
クロードやアシュトンも同意するように呟いた。
「僕とレオンでルシフェルを止めるから、クロード達はディアスさんをお願いできます?」
「ああ、わかったよ」
「じゃあ行きます。ピアシングソーズ!!」
アシュトンは愛用の双剣を振り上げたかと思うや、ルシフェルめがけて投げつけた。
「空破斬!」
「ブラックセイバー!!」
「首枷!!」
クロードの剣から、レオンの手から衝撃波がそれぞれ放たれ、同時にボーマンが地面に潜ったかと思うと、ディアスの頭上に現れた。
「ぐわああ!!」
ルシフェルはいきなり飛んできた双剣とレオンの衝撃波をもろに受けてしまい、のけ反る。
同時にディアスもクロード達の技を食らってのけ反ってしまった。
「誰だ!剣など投げ・・・・」
ルシフェルが犯人の方を見やると、そこにいたのはアシュトン。
「あ、アシュトン?」
「ルシフェル!!いい加減にしてよ!!」
アシュトンは普段とは違い、怒り顔でこちらへズンズン近づいてくる。
「ルシフェル!君って人は何考えてるの!!村の人たちに迷惑でしょ!!」
剣を手にしたまま惨憺たる有様になっているあたりを指しながら、アシュトンは怒る。
さすがにルシフェルも珍しく怒っているアシュトンにすっかり頭が冷える。
「君がヤキモチ焼いたり心配性が過ぎて僕を叩くのはまだ許せるよ!でも、喧嘩なんかしたり、それで人に迷惑かけるなんて最低だよ!!」
「あ、アシュトン・・・怒っているのか・・?」
すっかりルシフェルはタジタジとなってしまう。
「当り前じゃないか!こんなに周りめちゃくちゃにして、村の人に迷惑かけるルシフェルなんてもう知らないから!!」
そういうとアシュトンはその場を速足で立ち去って行ってしまう。
「ままま!待ってくれ~~~~!!!アシュトン~~~!!」
慌ててルシフェルは追いかける。
本気でアシュトンの機嫌を損ねてしまったことに気付いたのだ。
「ついてこないでよ!!」
「待て!待ってくれ!私が悪かった!!お願いだから機嫌を直してくれ~~!!」
ルシフェルは必死に謝り通すが、珍しく怒っているアシュトンの機嫌は中々直らない。
必死に謝りながらアシュトンの後ろをついていくうちに、ルシフェルの姿は皆の視界から消えて行った。
「大丈夫、ディアスさん?」
アシュトンはボーマンの手当てを受けているディアスに、心配そうに尋ねる。
「ああ、これくらいどうってことない」
「すいません、ディアスさん。僕やルシフェルのせいで怪我なんかさせちゃって」
「いや。俺もカッとなりすぎてしまったな・・・」
「そうだよ。あれはやり過ぎだよ。周りがめちゃくちゃになってたもん」
レオンはそう突っ込みを入れる。
「そういえばあの悪魔、どうしてるのさ、アシュトンお兄ちゃん?」
「一応部屋で大人しくしてるよ。僕が本気で怒ったのが効いたみたいだね、見ててちょっとかわいそうになるくらい落ち込んでるよ」
「何だかんだ言ってアシュトンバカだからな、あいつは。お前に『もう知らない』なんて言われてかなりこたえたんだろ」
「僕も言いすぎちゃったかなぁ・・」
ルシフェルの様子を思い出し、アシュトンも反省する。
「あのさぁ、あいつを魔物たちのいる洞窟に連れて行かない方がいいんじゃないかな?」
不意にレオンがそんなことを言う。
「そうだよなぁ。ヤキモチ焼かれて味方を攻撃されたら困るよな・・・」
「フォローしたいけど・・・・否定・・しきれないですね・・・」
「それにあいつ、頭に血が上ると何も周りが見えなくなるだろ。かすり傷だろうがアシュトンが傷ついたらもううるさくて、モンスター退治どころの騒ぎじゃなくなるぞ」
「でも・・・ルシフェルが大人しくここに残るなんてあり得ないですよ?」
「それなんだが・・・アシュトン・・・。奴を大人しくさせとく手が無いわけじゃないんだが」
「え?本当ですか、ボーマン先生」
「ああ・・・」
そういうとボーマンはアシュトンの耳になにやらささやく。
「え・・・そんな・・・何か・・気が引けるなぁ・・。騙すみたいで・・・・」
「でもこのままじゃ魔物退治どころじゃねえぞ。あいつがいる限り。こうした方がいいとは思うが?」
「そこまで言うのなら・・・」
「ルシフェル~、ルシフェル~」
アシュトンは恐る恐るドアを開けると、部屋に入る。
部屋の中ではルシフェルがドヨーンと落ち込んだ姿でいた。
「ああ、アシュトンか?どうしたのだ?」
「コーヒー淹れたんだけど・・・飲む?」
「あ・・あぁ・・もらおうか・・・」
そういってルシフェルはコーヒーを受け取るが、恐る恐る、こちらの方を伺っている。
「何妖しい真似してるのさ?『もう知らない』なんて言ったの、まだ気にしてるの?」
「あ・・あぁ・・・」
突然、ルシフェルは床に降りたかと思うや、何と土下座した。
「る、ルシフェル!?」
突然の行動にアシュトンはビックリしてしまう。
「すまん!アシュトン!お前が心配なのと、ヤキモチ焼きすぎてあんなにも叩いてしまった!!本当にすまん!!」
ルシフェルは必死に謝る。
「頼む!この通りだ!お願いだから嫌わないでくれ!!」
必死になって謝るルシフェルに、アシュトンは何だかかわいそうになってくる。
「ルシフェル・・・頭上げてよ・・・」
「あ・・アシュトン・・。許して・・くれるのか?」
「許すも許さないも無いよ・・・。っていうか・・ここまでされたら・・・僕だって怒るに怒れないよ・・・・」
「あ・・・アシュトン~~~~~」
許してもらえてホッとしたのか、ルシフェルは安堵の息をつく。
「それよりもう一杯コーヒー用意したんだけど、飲むかい?」
「もちろんだ!アシュトンの用意してくれたものなら何杯だって飲むぞ!!」
ルシフェルはそういうと、もう一杯コーヒーを受け取る。
「どう?おいしいかな?」
「いつも言っているだろう、お前の淹れてくれるものは何だって世界一だ・・ん・・」
不意に眠気を感じたかと思うと、ルシフェルはそのまま倒れてしまう。
倒れるや、ルシフェルは寝息をたてはじめた。
「さすがボーマンさんの薬・・。よく効いたなぁ・・・」
コーヒーに仕込んであった眠り薬の効果に思わずアシュトンは声を漏らす。
「ごめんね、騙して。でも、僕は魔物退治に行かなきゃいけないんだ。ルシフェルが心配してくれるのは嬉しいけど・・・。出来るだけ早く帰ってくるから」
アシュトンはすっかり眠っているルシフェルにそう呟くと、部屋を後にした。
「ふぁぁ・・・・・眠ってしまったのか?」
ルシフェルは目を覚ますと、何気なく窓の外を見やる。
「!!!!!」
窓の外がすっかり暗くなっていることにルシフェルは驚く。
慌てて壁にかかっている時計を見るや、クロード達が言っていた出発予定時刻をとっくに過ぎているではないか。
「まさか!」
慌ててルシフェルは部屋を飛び出すと、一階にいた村長に詰め寄る。
「おい!そこの年寄り!!」
「な、何ですか!?」
村長はルシフェルの剣幕に驚いてしまう。
「私と一緒にやって来た奴らはどうした!!」
「皆さんならとっくに魔物退治に向かわれましたが」
「何~~~!!何故私を起こさなかった~~~!!!」
「一人体調が悪くて寝てるから面倒を頼むと言われまして・・・」
(あ~い~つ~ら~~!!私が邪魔者になると思って置いていきおったな~~!!)
そのことを悟るや、ルシフェルは怒りに燃える。
「おい!一緒に来た神父も出かけたのか!?」
「は、はい!!」
「どこだ!やつらはどこへ行った!!」
「む、村から北にある山の洞窟です!そこが魔物どもの住処なので」
「アシュトン!!今行くぞ~~~!!!」
ルシフェルは自慢の紅翼を広げるや、村長の屋敷の窓をぶち破って飛び出す。
村長はポカンとした表情で飛んでゆくルシフェルを見つめていた。
「ハリケーンスラッシュ!!!!」
大きな竜巻が生じるほどの勢いで回転しながら敵を切り、同時に竜巻に巻き込んで魔物を吹っ飛ばす。
「まぁ、こんなもんだね」
必殺技で魔物をやっつけると、アシュトンはそう呟いた。
「皆、大丈夫かい?」
同じく敵を倒したクロードが、仲間にそう尋ねる。
かなりの魔物を倒してきたせいか、全員身体のあちこちが砂や土で汚れており、服もあちこちが裂けていた。
「もうすぐ洞窟の一番奥だ。きっと魔物どものボスがいるだろうから、皆気を引き締めて行こう!!」
その言葉に全員も頷くと、さらに進んでいった。
(おかしいな・・・いないぞ・・・)
洞窟の一番奥へやって来たクロードは全然敵が現れないことに違和感を抱く。
不意にクロードはハッとして頭上を見上げた。
「気をつけろ!!」
「ええ~~~っ!!嘘~~~!!!」
全員、頭上を見上げるや、上空から魔物たちが降ってくるではないか。
レイドアタック(頭上から魔物が降ってくる奇襲攻撃。これをされるとピヨリ状態になってしまい、しばらくの間パーティメンバーは行動できず、不利な状態で戦わなければいけなくなる)だ。
「フハハハハ!!ひっかかったな!!」
魔物のボスらしい存在が現れ、クロード達を嘲弄するや、さらに背後や正面からも続々と魔物たちが現れる。
「お前達!やってしまえ!!」
ボスの命令と共に魔物たちが一斉に一行へと襲いかかった。
ハリケーンスラッシュで竜巻を起こしながらアシュトンが魔物たちの間を切り抜け、クロードが勢いよく飛び上がって自慢の必殺技「兜割」で敵の頭を叩き割る。
ボーマンが自作の爆弾を投げて牽制しつつ、自慢の拳で乱舞を叩きこむ。
そうかと思えばディアスが長剣を振るって魔物たちを薙ぎ倒し、レオンは呪文を唱えてはあるときは「ノア」で洪水を起こして敵を押し流し、或いは「アシッドレイン」で強酸性の雨を降らせる。
さらには「グレムリンレアー」で魔物を呼び出してはけしかけ、「シャドウフレア」で攻撃力のある物体をシャワーのように敵に降らせた。
(くぅ・・・こんなに多いと・・厄介だな・・・)
次々と敵を斬り倒すものの、その多さにさすがにアシュトンも息が上がって来る。
双剣を振るって敵を薙ぎ倒していると、甲冑姿で大きな剣を持った魔物がレオンに目をつけているのが見えた。
(まさか!!)
レオンは呪文を唱えるのに集中していて気付いていない。
とっさにアシュトンは駆け出していた。
「危ないっ!レオンっ!!」
アシュトンの声にレオンはハッとする。
すると今にも敵が大きな剣をこちらへ投げつけてくるのが見えた。
逃げようにも呪文を行使する体勢になってしまって動けない。
やられるのを覚悟するや、アシュトンがレオンを抱きかかえるようにして盾となった。
「ぐわああっっ!!」
「アシュトンお兄ちゃんっ!!」
回転しながら飛んでくる大剣をもろに食らい、アシュトンは大きな傷を負ってしまう。
さらに鳥系の魔物が飛ばしてきた羽根が毒羽根だったのか、毒状態で全身が緑色になってしまった。
「く・・・アシュトンッ!!」
「くそぉ・・!!邪魔だっ!!」
クロード、ボーマン、ディアスが、特にディアスなど怒り状態になってアシュトンを助けに向かおうとするが、敵もそうはさせじと三人それぞれに集中攻撃を浴びせるかのように殺到する。
レオンもアシュトンを助けようとするも、魔物たちに追い回され、呪文を唱えることも出来ず、ダメージを受けないように逃げるので精一杯。
パーティメンバー全員が自分を守るので手一杯な間に、負傷したアシュトンめがけて魔物たちが殺到する。
アシュトン自身を含めて全員が、アシュトンがやられると思ったそのときだった。
不意に突然、空中に巨大な門が現れた。
門が開いたかと思うと、髑髏の頭に漆黒のローブ、両手鎌を手にした死神を思わせる巨大な悪魔が姿を現した。
巨大悪魔は両手鎌を振るうや、アシュトンに襲いかかろうとした魔物たちをことごとく消滅させる。
「な、何だ!?」
クロードは突然現れた巨大悪魔に目をぱちくりさせる。
巨大悪魔と門が消えたかと思うと、入れ違いに何者が降りて来た。
漆黒のローブに銀色の髪、真紅の翼。
ルシフェルだ。
「な・・・!!」
アシュトンを説得して一服盛って眠らせたはずのルシフェルが現れたことにクロード達は驚く。
「な、何だ貴様!?魔物のくせに人間に味方するか!!」
魔物たちのボスは突然現れたルシフェルに叫ぶ。
「黙れ!このゴミがっっ!!」
ルシフェルが呪文を唱えるや、洞窟内で雷雲が轟き、あっという間に魔物たちを消滅させてゆく。
(何て強さなんだ!?)
クロード、ディアス、ボーマンはルシフェルの強さに舌を巻く。
あまりにも数が多いためとはいえ、自分達が苦戦している魔物の軍団をあっという間にほぼ壊滅状態にしてしまったのだから。
「おい!見ろ!あの真紅の翼・・・」
「ま・・まさか・・・」
魔物たちはルシフェルの翼に何かに気付いたような表情を浮かべていた。
「貴様ら!控えろ控えろ控えろ~~~!!こ、こここのお方をどなたと心得てるんだ~~~~~~!!!!」
突然、魔物のボスが慌てだしたかと思うと、配下の魔物たちに命令する。
魔物たちはルシフェルの周りに集まったかと思うと、何と、どこぞの人気テレビドラマのクライマックスシーンさながらに一斉に土下座をした。
(えええ~~~!!な、何がどうなってるんだ・・・!?)
クロードは魔物たちの態度に困惑する。
「し、しししし失礼いたしました!!ま、まままままさか!ルシフェル様がお、おおおおいでとは!!」
魔物のボスは必死になって平伏する。
事態が理解できず、ポカンとしている手下を見つけるや、ボスは必死に言う。
「おい!お前達!頭が高いぞ!!このお方は悪魔の国の総理大臣!ルシフェル様だぞ!!」
ボスの言葉に魔物たちもハッとし、慌てて土下座する。
「し、しかし何ゆえルシフェル様が人間界に?」
平伏したまま、魔物のボスは恐る恐るルシフェルに尋ねる。
「そんなことは貴様らの知ったことではない!!それより・・覚悟は出来ているだろうな?」
「は・・覚悟?」
ルシフェルの言うことに魔物たちは困惑する。
「とぼけるな~~!!!あそこで傷を負った上に毒状態になっている人間がいるだろうが~~~~!!!」
「ま・・まさか・・!」
魔物のボスはアシュトンを見やると、怒り状態のルシフェルに目を向ける。
「も・・もしや・・この・・人間は・・・」
「よくも私の未来の妻を傷つけおったな~~~~~!!!灰にしてくれるわ~~!!」
「ぐわああ~~~~っっ!!!」
呪文が炸裂し、あっという間に魔物のボスは消滅してしまった。
自分達のボスが瞬殺されてしまったことに魔物たちは茫然とする。
ルシフェルは魔物のボスを灰にするや、怒り狂った顔でまだ残っている魔物たちをぐるりと見回す。
「よくも・・・よくも・・・アシュトンを傷つけおったな・・・。貴様ら・・全員万死に値する・・・。皆殺しにしてくれるわ~~~~!!!!!」
「うわあああ~~~!!!ヤバイぞ~~!!ルシフェル様の想い人を傷つけちまったんだ~~~~~!!!」
「に、逃げろ~~~!!!」
慌てて魔物たちは逃げ出す。
ルシフェルは両手に呪文の光を浮かび上がらせるや、凄まじい勢いであらゆる呪文を連発し始めた。
たちまちあたりは大混乱になる。
「うわああ!あの野郎っ!俺たちまで殺す気か~~~~!!!」
ルシフェルが滅茶苦茶に魔法を行使するものだから、流れ弾がボーマン達にまで襲いかかって来る。
「一匹たりとも逃がさん~~~~!!!!!全員消し炭にしてくれるわ~~!!!」
ルシフェルは叫ぶや、逃げ出す魔物達に容赦なく呪文で攻撃する。
あっという間にその場にいた魔物は全員消滅させられてしまった。
魔物達が全滅し、ようやく落ち着いたルシフェルはすぐにもアシュトンの元へ駆けつける。
「アシュトン!もう大丈夫だ!今、助けてやるからな!!」
毒状態になって気を失っているアシュトンを抱き上げるや、ルシフェルは高速で飛んでゆく。
「あっ!!待て!!一人だけ先に行くな!!」
一行はアシュトンを連れてゆくルシフェルを慌てて追いかけていった。
「う・・・・うぅうん・・・・」
呻くような声と共に目を覚ましたアシュトンの目に飛び込んできたのは、ルシフェルの顔だった。
「アシュトン!目が覚めたのか!!」
ルシフェルは鼓膜が破れてしまうのではと思えるくらいの声で呼びかける。
「る・・ルシフェル・・?何で・・・ってあれ?ここは・・?」
「例の村長の家だ。全速力で戻って来たのだ」
「そ、そうなの・・。でも・・どうして・・?」
「お前が私を置いて魔物退治に出かけてしまったから慌てて追いかけたのだ。やっとの思いで駆けつけてみれば、お前は大怪我を負って毒にまでやられていた・・・。どれほど驚いたかわかっているのか?」
「心配かけちゃったね・・・ごめん・・・。手当てしてくれたんだね・・・」
「全くだ・・・。さて・・・それでは覚悟はいいか?」
「え?覚悟って?」
アシュトンはきょとんとした表情で尋ねる。
「アシュトン・・・今日の事で私がどれほど心配したかわからぬはずがあるまい?」
「ひ・・!!まさか!!」
本能的にアシュトンはベッドの上で後ずさる。
だが、ルシフェルは逃げようとするアシュトンをしっかり捕まえてしまった。
「お、お願いっ!ルシフェルっ!一服盛ったりしたのは悪かったから!!」
「一服盛った?どういうことだ?」
(し・・しまった!!)
アシュトンはお仕置きの恐怖に余計なことまで言ってしまったことに後悔する。
「どういうことだ!!一服盛ったとは!?」
「ご、ごめん。心配性なルシフェルのことだから、洞窟に出発する間際になってまた反対するんじゃないかとか、皆にヤキモチ焼いて味方に攻撃仕掛けたり、僕が少しでも傷ついたら大騒ぎになって魔物退治どころじゃなくなりそうだからって・・・それで君を騙して眠り薬入りのコーヒーを・・・本当にごめん・・・」
「なななな~~~!!何~~~!!」
ルシフェルは明かされた事実に愕然とする。
「アシュトン!私を騙すようなことまでしていたのだな!!それで・・・あんなことにまで・・・・絶対に許さんぞ!!」
「うわあああ~~~~~んっっ!!許して~~~!!」
アシュトンは叫ぶが、完全に怒ったルシフェルは容赦なくアシュトンを膝に載せると、いつものようにお尻をむき出しにし、平手を振り下ろした。
ビッダァァァ~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「うわああ~~~んっっ!!痛いぃぃぃ~~~っっっ!!!」
最初からフルスロットルなお仕置きにアシュトンは悲鳴を上げる。
バッジィィ~~ンッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「許さんっ!許さん許さん許さんっっ!!」
逆上しながらルシフェルはアシュトンのお尻に平手の豪雨を降らせる。
「あれほど・・・私が反対したというのに!!どうしてもというから・・・!!だからやむなく来させたが・・」
お尻を叩きながら、ルシフェルは怒り声でお説教を開始する。
ビッダァァ~~ンッッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!!
「うわああ~~んっ!痛っ!痛いよ~~~~!!!」
どんな魔物の攻撃よりもきつい平手の連打にアシュトンは両脚をバタつかせて泣き叫ぶ。
「あんな大怪我を負った挙句に毒にまでやられたではないか!!私が危うく駆けつけなければ死んでいたところだぞ!!」
お説教を続けながらルシフェルはアシュトンのお尻を容赦なくワインレッドに染めてゆく。
「どれだけ・・・私が驚いたか・・心配したかわかっているのか!!」
ビッダァァァ~~~ンッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「うわあ~~んっ!ごめんなさい~~!!」
「その上・・・私を騙して一服盛っただと!!絶対に許さんぞっ!!」
「ごめんなさい~~!!本当に悪かったってば~~!!」
「馬鹿者おおおおお!!!あれだけ心配かけた挙句に嘘まで吐きおって~~!!そんな悪い子はこれを使ってくれるわ!!」
そういうや、ルシフェルは焼いも騒ぎのときに使ったパドルを取り出す。
「ひ・・・!!お、お願いっ!それだけはやめて!!お願いだから!!」
パドルを見せられるや、アシュトンは恐怖に身を震わせる。
「何を言うか~~~!!!さんざん人を心配させた挙句に、嘘をついて眠り薬まで盛っておったような悪い子にはこれでも足りんだろうが~~~~!!!」
「うわああ~~~~んっっっ!!!ごめんなさぁぁあ~~~いっっっっ!!!!!」
アシュトンは必死に謝るが、完全に怒りモードに入っているルシフェルは容赦なく特製パドルを振り下ろす。
ルシフェルの激しい怒号とパドルの打撃音、アシュトンの悲鳴が入り混じって室内に響き渡った。
「ふぇぇえん・・・ひっくぅぅ・・・痛いぃぃよぉぉ・・・」
ボロボロと涙をこぼしながらアシュトンは泣いていた。
お尻は今やワインレッドを通り越した色になってしまい、三倍近く腫れ上がっている。
「アシュトン・・・反省したのか?」
一旦パドルを振り下ろす手を止めると、ルシフェルはそう尋ねる。
「ひぃん・・・し・・してる・・してるよぉぉ・・。嘘ついたり・・・心配かけて・・・ごめん・・なさぁぁい・・・・」
泣きじゃくりながらアシュトンは必死に謝る。
「わかったくれたようだな・・・・」
そういうと、ルシフェルは本当にお尻を叩く手を止めた。
「大丈夫か?アシュトン?」
真っ赤に腫れたお尻に薬を塗ってやりながら、ルシフェルは心配そうな表情で尋ねる。
「う・・うん・・・。何とか・・・・」
「それにしても・・・よかった・・・。本当に・・・助かって・・・」
そう呟くと、ルシフェルはアシュトンを抱きしめる。
「ルシフェル・・・震えてるの?」
アシュトンは自分をルシフェルの腕の感触に、思わずそう尋ねる。
「怖かった・・・・」
「え?」
不意にルシフェルが言った言葉に、アシュトンは怪訝な表情を浮かべる。
「怪我を負って・・しかも毒にまでやられたお前を見て・・・・心の底から怖かった・・アシュトンが・・・死んでしまうのではないかと・・・。いかに・・私が・・・強大な力を持つ・・・魔界の実力者で・・・あろうと・・・。死んでしまった者を・・・蘇らすことなど・・出来ない・・・。お前を・・・お前を・・失うことになるのか・・。そ・・・そう思うと・・・本当に・・・恐ろしくて・・・怖くて・・・ならなかった・・・」
アシュトンに話しかけながら、ルシフェルの身体は熱病にでも罹ったかのように震える。
「僕の・・・せいで・・・本当に・・辛い・・思い・・・させちゃったんだね・・。ごめん・・・・」
「アシュトン・・。神父としての・・・務めを果たそうとする・・・お前の気持ち・・・わからないわけではない・・・。だが・・・お願いだ・・・。無茶だけは・・しないで・・くれ・・・。お前を失ったら・・・私は・・・本当に・・・辛いのだ・・・」
「心配してくれて・・・ありがとう・・。もう・・・無茶はしないよ・・・」
「それを聞いて・・・安心だ。そうだ。もっとよく効く薬を調合してくるから待っててくれるか?」
「うん」
ルシフェルは調合用の手袋を持って部屋を後にする。
ルシフェルが出て行ってしばらくしたかと思うと、いきなり乱暴な勢いでドアが開き、息せききったディアスが入って来た。
「アシュトン!大丈夫か!?」
「デ、ディアスさん!どうしたの?そ、そんなに息あがっちゃって?」
両肩を大きく上下させ、汗もビッショリかいているディアスにアシュトンは怪訝な表情を浮かべる。
「あの悪魔がお前を抱えて一人飛んで行ってしまったのでな・・・。今、ようやく村に戻って来たところだ・・・・」
「そ・・そうだったんですか・・・」
「どうやら・・・無事なよ・・・」
そこまで言いかけてアシュトンの真っ赤なお尻が目に入る。
「アシュトン!!」
「ど、どうしたんです、ディアスさん?」
突然、ディアスが怖い顔になったのにアシュトンは戸惑う。
「そのお尻はどうした!?まさかあの悪魔にいじめられたのか!?」
「え・・?な、何を・・・」
「許さん!斬り捨ててくれる!!」
ディアスはそういうや、今にも部屋を飛び出しかねない勢いになる。
「ち、違うってば!いじめられてなんかないから!!」
アシュトンは慌ててディアスを止める。
「本当なのか、アシュトン?」
「本当だよ。凄い心配させちゃったから・・・それで叱られちゃったんだ。おかげで凄く痛いけどね・・・・」
「だが・・・嬉しそうだな」
「うん・・・。本当に僕の事思ってくれてる・・・だからあんなに叱ってくれるんだっていうのは・・・・わかるから・・。お尻が大変だけどね・・・・」
「複雑な気分だな・・・。こんなにお前を叩いたり泣かせているのは許せんが・・・。だが・・・お前は幸せそうだからな・・・。あの悪魔の事が好きなのか?」
「え・・そそ・・それは・・」
アシュトンは慌てると顔を赤くしてしまう。
「恥ずかしいなら答えなくていい。十分わかった・・・」
「ごめん・・・ディアスさん・・。男で・・・神父なのに・・・こういうこと・・・いけないとは・・思うんだけど・・・」
「俺はアシュトンが幸せになってくれればいい・・」
「ディアスさん・・・・」
アシュトンがホッとした表情で呟くと、ディアスは部屋を出てゆこうとする。
「あれ?ディアスさん、どこへ?」
「また・・・旅に出る・・・。会える時があったら・・・また会おう。それに、俺がここにいるのを見られたら、またあの悪魔がヤキモチを焼いてお前を叩くかもしれないからな」
「ときどきは・・・・教会に顔を見せに来て・・・下さいね」
「ああ・・。お前も元気でな・・・」
そう言い残すとディアスは立ち去った。
ルシフェルがもっとよく効くお尻用の薬を持って廊下を歩いていると、出てゆこうとするディアスに出会った。
「貴様は・・・」
ディアスの姿にルシフェルは思わず表情が険しくなる。
「安心しろ、俺はこれから旅に出る」
ディアスの言葉にルシフェルは一瞬安堵するも、険しい表情を崩さない。
「だが・・・一つだけ言っておく。絶対にアシュトンを悲しませるような真似をするな。必ずアシュトンを幸せにしろ。いいな!!」
「わかりきったことを言うな!!何故貴様に言われなければならん!!」
「俺はアシュトンの『お兄さん』だからな。俺にしてみればどこかの馬の骨に兄弟を取られたようなものだ」
「『馬の骨』だと!貴様・・・・」
ルシフェルは思わず頭に血が上りかける。
「言いたいことはそれだけだ」
そういうとそのままディアスは立ち去ってしまう。
「は!まさかあの男!アシュトンにちょっかい出したのではないな!!待っていろ!今すぐ行くぞ!!」
ルシフェルはそう叫ぶや、慌ててアシュトンのいる部屋へと向かっていった。
―完―
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theme : 自作小説(二次創作)
genre : 小説・文学