ダンジュー修道院35 身代わり
(店長/バイト君シリーズとリンクしています。その点をご了承の上でお読み下さい)
パアッチィ~ンッ!
パンッ!パンパンパンッ!パンパンパアンッ!
「うわああ~~んっっ!!ごめんなさぁぁ~~いっっっ!!」
宿泊客用の坊の中、大輔の悲鳴が響きわたる。
雇い主で恋人な沙耶の膝の上で、真っ赤に腫れたお尻をさらし、両脚をバタつかせて泣いていた。
「ダメでしょ!つまみ食いなんかしちゃ!それじゃあ泥棒でしょ!」
沙耶はそう叱りながら大輔のお尻に平手を振り下ろす。
「だ、だって~!おいしそうだったんだもん~~~!?」
「だからって食べたらダメでしょ!修道士さん達にも迷惑がかかるのよ!!」
お仕置きをしながら沙耶はお説教を続ける。
期末試験が終わり、大輔の大学が春休みに入ったため、少し長めの休みを取って海外旅行に来ているところだった。
修道院に宿を取り、院や市内にある関連施設の見物などをさせてもらっている。
ところが、お子ちゃまな性格で甘いもの大好きな大輔には、ケーキ類をはじめとするお菓子をつまみ食い、盗み食いするという悪い癖があった。
実際、店の商品に手を出し、そのたびにお仕置きをしているのだが、中々直らない。
今日も懲りずに、宿泊客用に修道士達が用意していたケーキを、台所に忍び込んでつまみ食い、いや盗み食いしたのである。
自分の店内でならともかく、余所でこんなことを仕出かした大輔に、さすがに沙耶もいつもより怒っていた。
「よそでまでこんなことして!今日は本当に怒ってるのよ!これを使うわよ!」
そう言って沙耶が取りだしたのはパドル。
「やだっ!やだやだっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいぃぃ~~!!」
パドルでのお仕置きを許してもらおうと、大輔は必死に謝る。
「ダメよ!しっかり反省しなさい!!」
バッチィィ~~ンッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~!!!!
「うっわああ~~~んっっ!!痛いよぉぉ~~~っっっ!!!」
大輔はさらに両脚をバタつかせて泣き叫ぶ、
しかし、沙耶は容赦なくお尻にパドルを降らせる。
(うわああ~~んっっ!!このままじゃお尻壊れちゃうよ~~!!)
涙で視界がぼやけそうなくらい泣きながら大輔は心の中で悲鳴を上げる。
(誰か・・・・誰か・・・助けて~~~~)
そんなことを思いながら大輔はドアの方を見つめる。
すると、恐る恐るドアの隙間から何かが見え隠れしていた。
涙でボヤける目で大輔は必死に見つめる。
やがて見えてきたのは、藍色の見習い用修道服と、エメラルドのような美しい緑の髪に、心配そうにこちらの様子を伺っている零れおちそうなくらい大きな瞳。
(あ・・・あの子っ!?)
大輔はすぐに気づく。
自分より二歳年下で、大輔達の世話をしてくれている一番若い修道士だ。
どうやら自分の事を心配しているらしい。
「うわああああ~~~んっっ!!痛い痛い痛い痛いよ~~!!助けて~~~!!!」
ドアの向こうの修道士によく聞こえるように大輔は大声で泣き叫ぶ。
すると、ゆっくりとドアが開いた。
「あ・・あの・・その辺で・・許してあげて下さい・・・」
オズオズと入って来ると、チサトは沙耶にそう言う。
「そうはいきません。悪いことした子はしっかり叱らないと」
沙耶はそういうとお仕置きを続けようとする。
「でも、もう十分反省してるんじゃないですか?ねえ、大輔さん?」
チサトは助け船を出すかのように、大輔に問いかける。
「してるっ!してるよ~~~!!ご、ごめんなさい~~!!」
「ほら。こう言ってますし。お願いですからここは許してあげて下さい」
「わかりました・・。そう言うのでしたら・・・・」
沙耶はそういうと、ようやく手を降ろした。
「あ・・あの・・・よろしかったら・・これ・・使って下さい」
チサトは大輔を抱っこしている沙耶に、軟膏を差し出す。
お仕置きされて疲れたのか、大輔は沙耶に抱っこされたまま眠っていた。
「すみません、わざわざ」
「いえ。僕の方こそ余計なことしちゃったかもですいません」
「そんなことはありませんわ。こちらこそ大輔くんがご迷惑おかけしちゃって・・・」
「いいんですよ。お客さんにおいしいと思っていただけましたら。でも・・・大輔さんのこと・・・本当に大事に思ってらっしゃるんですね」
「ええ。18歳なのに、子供で甘えん坊で困った子ですけどね」
沙耶は苦笑する。
「でも大切な人なんですね。だからお仕置きされるんでしょう?」
「ええ・・。でも、どうしてわかるんですか?」
「僕も・・・実は同じですから・・・」
そういうとチサトは苦笑する。
その言葉に沙耶に察しがつく。
「あの・・・鬼みたいな方ですか?」
「ええ・・。それなんでちょっと大輔さんのこと・・他人事に思えなくて・・つい・・」
「いいんですよ。気になさらなくて。むしろ大輔くんに見習わせたいですわ」
「そ、そんな、僕なんてまだまだ・・。あ!頼まれた仕事があるんだった!す、すみませんっ!失礼しますっ!」
そう言うと慌ててチサトは部屋を後にした。
その翌日・・・。
「大輔くん、どこに行ったの!?」
沙耶は院内の廊下を歩きながら大輔に呼びかける。
「あれ?どうされたんですか?」
沙耶のそんな姿に気づいたチサトは思わず歩み寄って尋ねた。
「すいません、大輔くん、見ませんでした?見学していたらまた勝手に離れてしまったみたいで・・・」
「そうですか。じゃあ僕も探してみますね」
「すみません、お願いします」
「見つけましたらお知らせしますから」
そういうと二人は別れ、それぞれ大輔を探しにかかった。
それからしばらく経った頃・・・。
(誰も・・・いないよね・・・)
キョロキョロと回りを見回して大輔は様子を確かめる。
見られていないことを確かめると、抜き足差し足、何とも怪しい素振りで入っていった。
大輔が入ったのは厨房。
再び大輔は周囲を見回し、お目当ての品を探す。
(あ、あった~~~!!!)
大輔の目の前にあったのは宿泊客用のケーキ。
昨日、お仕置きされたにも関わらず、懲りずにやって来たのである。
(今日はチーズケーキ~~。おいしそ~~~)
目の前に並んだチーズケーキに大輔は目を輝かせる。
ためらうことなく手を伸ばすと、チーズケーキにパクついた。
(おいし~~~!!!)
一口食べるなりすっかりお気に召した大輔はさらに二個三個と食べてしまった。
「あっ!大輔さん!」
不意に背後から呼びかけられ、思わず大輔は振り返る。
するとそこにはチサトの姿。
(マズイ!?マズイよ!?)
現場を押さえられてしまい、大輔は思わず慌てる。
「何やってらし・・・・」
チサトは大輔が手にしているもの、そして口の周りについた食べかすに状況を察する。
「お、お願い!?な、内緒にして!!」
大輔は飛びつくようにチサトに迫ると、そう懇願する。
「え・・?で・・でも・・・」
「お願いだから~~!!また盗み食いしたってばれたら・・・昨日よりもっとお尻ぶたれちゃうんだよ~~~!!!お、お願いだから助けてよ~~~!!!」
あまりにも虫のいいお願いを大輔はする。
(ど・・どうしよう・・。悪いのは・・・大輔さん・・・だけど・・・)
チサトは迷ってしまう。
大輔がしているのは悪いことだ。
幾らお菓子が大好きだからといって、やってよいことではない。
一生懸命宿泊客のためにお菓子を造っている料理番の修道士達の努力やもてなしを裏切るようなことでもある。
だが、同時にお仕置きをされていた大輔の姿が思い浮かぶ。
自分も普段お仕置きをされているだけに、お仕置きの怖さ、辛さはよくわかる。
それだけにその怖いお仕置きに大輔を引き渡すのは心苦しいものがある。
「ね、ねえ~~!!お願いだよ~~!!助けてよ~~!!!」
大輔は必死になってチサトに助けを求める。
そんな大輔の姿が、何とも哀れに見えてたまらない。
大輔に非があるとしても、何とかしてやりたくてたまらなかった。
「わ・・わかり・・ました・・・」
迷いに迷ったが、チサトはそう答える。
「本当っ!?あ、ありがとうっ!!」
大輔は救いの神が現れたと言わんばかりの表情で礼を言う。
「で・・でも・・。一つだけ・・・約束してくれますか?も・・もう・・・こんなことはしないって・・・」
チサトはそう答える。
ちゃんと反省はしてもらいたかったからだ。
「するする!ちゃんとするから!!」
大輔は助けてもらえるなら、と言わんばかりに約束する。
「わ・・わかりました・・。そ・・それじゃあ・・・大輔さんは見つからないうちに・・。後は僕の方で何とかしますから」
チサトはそう言って大輔を逃がすと、ケーキが用意されているテーブルの方を向く。
残りのケーキが載っているお盆を引っ掴むや、わざと大きな音を立ててひっくり返す。
さらに、他の鍋なども音が聞こえるようにしてひっくり返す。
直後、音に気付いた何人かの足音が厨房へ駆けつけるのが聞こえた。
「・・・・・・」
緊張した表情でチサトはジッとバルバロッサを見つめている。
むっつりと押し黙ったまま、バルバロッサは、石床に正座しているチサトを見やる。
「チサト・・・」
「は・・はい・・・」
恐る恐るチサトは返事をする。
「自分が仕出かしたこと・・・わかっとるな?」
「は・・はい・・。また・・ドジを踏んで・・ごめんなさい・・・」
答えながら、チサトは胸が痛む。
大輔を庇うために嘘をつかねばいけなかったからだ。
大輔の盗み食いがばれないよう、食器や調理器具をひっくり返し、いつものようにドジを踏んでしまったように見せかけたのである。
「わかっとるんなら・・・ええな?」
バルバロッサはいつものように、椅子に腰かけたまま軽く膝を叩く。
チサトは恐る恐る立ちあがると、いつものように近づいてゆく。
そして、ジッとバルバロッサの膝を見つめた。
(ど・・どう・・しよう・・・)
チサトは土壇場で迷いが出る。
お仕置きの恐怖は拭えないもの。
思わず本当のことを言ってしまおうかとも思ってしまう。
(ダメダメ!そんなことしたら大輔さんが!!)
チサトは再び昨日の大輔の姿を思い浮かべる。
自分は大輔を守ると決めたのだ。
そう決めた以上、何としてでもやり遂げなくてはいけない。
覚悟を決めると、チサトはいつものようにバルバロッサの膝の上にうつ伏せになった。
直後、バルバロッサが慣れた手つきで修道服を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をむき出しにする。
しっかり身体を押さえつける感触を感じると、チサトはバルバロッサの上着の裾をギュッと握りしめる。
「行くぞ・・・ええな?」
バルバロッサの問いにチサトは黙って頷く。
それを見ると、バルバロッサは右手を振り上げた。
バッチィィ~~~ンッッッ!!
「くぅぅ・・・!!」
力強い音と共に鈍い痛みがお尻全体に広がってゆく。
肌に赤い手形が浮かび上がり、チサトの表情は苦痛に歪む。
パアアンッ!パアチィンッ!ピシャアンッ!パアッシィンッ!
大きくいかつい手が振り下ろされる中、チサトは声を押し殺して必死に耐えようとする。
パアアンッ!ピシャアンッ!パッチィンッ!パアアンッ!
「全く・・・相変わらず何をやっとるんや・・・」
ため息をつきたくなりそうな口調でバルバロッサはお説教を始める。
ピシャアアンッ!パアチィンッ!パアアンッ!パアシィンッ!
「・・ぁ・・ぅ・・・く・・ぁ・・・」
我慢しようとするものの、身体は正直なもの。
微かに苦痛の声が漏れ、表情はだんだん苦しげなものへと変わってゆく。
ピッシャ~ンッ!パッアア~ンッ!パアッチィ~ンッ!パッシィ~ンッ!
「く・・・あ・・あ・・ぅう・・」
だんだんと平手の勢いが強くなり、それに伴ってお尻の赤みも少しずつ濃くなってゆく。
そして、チサトの表情もさらに苦しげになっていき、手の甲や額からはジワリと汗が浮かびだしてきていた。
「いつもいつも口が酸っぱくなるくらい言うとるはずや?よく周りには気ぃつけやってな」
バシィンッ!バアチィンッ!ビダァンッ!バアシィンッ!バッチィンッ!
さらに平手の勢いを強めながら、バルバロッサはお説教を続けてゆく。
「あ・・くぅ・・あ・・・ご・・ごめん・・なさい・・・・」
元々素直な性格だから、チサトはすぐにも謝る。
「馬鹿野郎!ごめんなさいは当たり前やろうが!性懲りも無く同じことしおって!」
だが、いつも同じことをしてしまっているからか、厳しい態度でバルバロッサはそう言う。
「お前さんのドジで・・・他の皆にも迷惑がかかっとるんやぞ?わかっとるか?」
「は・・はぃ・・・。本当に・・ごめんなさい・・・」
チサトは他の修道士達にも申し訳無くなってくる。
ケーキをひっくり返して台無しにしたり、また他の器具も落としたりしたから、厨房自体片付けないと使えなくなってしまっている。
ケーキだけならまた作り直せばよかったが、厨房自体後片付けしないと使えないのでは、色々と不便だ。
当然、他の修道士達にも迷惑がかかってしまう。
「反省はしとるようやが・・・。今日は本気で怒っとるさかい。厳しゅうするからな。ええな?」
バルバロッサの言葉にチサトは再び頷く。
理由はどうあれ、皆に迷惑をかけたことは事実だ。
だから、自分が悪いし、お仕置きをされても仕方がない。
そう思っていた。
バルバロッサは膝を組んで既に色づいているお尻を高く突き上げさせる。
落ちないようにさらにしっかりとチサトを押さえると、思い切り腕を振り上げた。
ビッダァァァ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッ!!!
「きゃああああんっっ!!痛あああいいいいっっっ!!」
チサトは甲高い悲鳴を上げ、背をのけ反らせる。
本気で怒っていると言っただけに、今日は容赦ない。
バアッジィィィ~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッ!!!
「この馬鹿っ!いっつも迷惑かけるようなことしやがって!!」
本気になって叱りながら、バルバロッサは容赦なくチサトのお尻に平手の嵐を降らせる。
「ひぃぃ~~んっ!ごめんなさいっ!きゃあああっ!ごめんなさいっ!!」
悲鳴を上げながらもチサトは謝り続ける。
「それだけじゃねえ!お前さんがドジ踏むたびにこっちがどんな思いしてると思ってんだっ!怪我してるんじゃねえかと思ってんだぞ!!」
ビッダァァ~~~ンッッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッ!!!
心配した分もあり、バルバロッサは容赦なく叩く。
「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさぁぁ~~いっっっ!!」
両脚を激しくバタつかせてチサトは泣き叫ぶ。
しかし、未だ怒りの収まらないバルバロッサがなおもお仕置きを続けようとしたときだった。
突然、懺悔室のドアが開いたかと思うと、ラウールが入って来た。
「こら!勝手に入ってくるんじゃねえ!!」
ラウールの姿を見るや、バルバロッサはそう言う。
「す、すいません。でも、こちらのお客さんがどうしてもバルバロッサさんに大事な話があるそうで・・・」
ラウールがそう言うと沙耶と大輔が入って来た。
(大輔さん!?な、何で!?)
チサトは驚きそうになる。
「あの、何でっしゃろか?話って?」
バルバロッサは一旦お尻を叩く手を止めて沙耶に尋ねる。
「はい。実は・・・そこの・・ええと、チサトくん・・・でよろしかったでしょうか?今、膝にいらっしゃる修道士さんのことでして」
「チサトの?」
「ええ。もう許して差し上げていただけませんか?」
「そうはいきませんわ。コイツがドジやらかして皆の迷惑になりましたからな」
「そのことです。実は・・・私達の方が謝らなくてはいけないことでして・・。ほら、大輔くん・・」
大輔は怯えたような表情を浮かべている。
助けを求めるように沙耶の方を見やるが、沙耶は厳しい表情を浮かべている。
「沙耶さぁん・・・」
「甘えるんじゃないの。大輔くん、ちゃんと正直に話しなさい。それとも・・・まだ素直になれないなら膝の上に載る?」
「やだっ!ちゃんと言うからっ!もうお尻叩かないで!!」
大輔はお尻を押さえ、後ずさりながら叫ぶ。
「だったら正直に話せるわね?」
「う・・うん・・・」
大輔はそう言うと、恐る恐る前に出る。
しばらく黙っていたが、やがて勇気を振り絞って口を開いた。
「ご、ごめんなさいっ!実は・・・ぼ・・僕が・・ケーキ・・・盗み食いしちゃったんです!!ど・・どうしても・・お尻・・・叩かれるの・・・嫌で・・。そうしたら・・・そこの・・・・チサトくんが・・・。何とかしてくれるって・・。そ・・それで・・。ほ、本当にごめんなさいっ!」
ブルブル震えながら大輔は言う。
大輔の言葉にバルバロッサは一瞬、呆気に取られていた。
だが、直後チサトを抱き起こすと、顔を合わせる。
「チサト!?」
「は、はい!?」
「今のは・・・本当か!?」
「え・・あの・・・」
「どうなんだ!?」
「す・・すみません・・。ほ・・本当です・・・」
「何だってそんな真似しおったんや!?」
「ご・・ごめんなさい・・。だ・・大輔さん・・・。本当に怖がってて・・・。僕自身、お尻叩かれる辛さは・・・わかるから・・。それで・・・嘘つくのは悪いって・・・わかってても・・・でも・・・。本当にごめんなさい・・・」
「全く・・・」
バルバロッサはため息をつく。
「そんなら話は別や・・。お仕置きは・・・終わりや・・・」
「大丈夫か?」
バルバロッサはお尻に冷たいタオルを載せて、ベッドにうつ伏せになっているチサトにそう尋ねる。
「だ、大丈夫です。それより・・・嘘ついたり、他の皆に迷惑かけるようなことしちゃって・・・ごめんなさい・・・」
「そうやな。お前さんがあの子を助けたいって気持ちはええ。だがな・・・。そのために嘘ついたり、皆に迷惑かけたりしたらあかんで。それに・・・お前さんがドジしたって聞くたびに心配するやつもおるんやぞ?」
「は・・はい・・・」
「まあ済んだことや。今はとにかくゆっくり休みぃや」
「は・・はい・・・」
バルバロッサは立ち去ろうとする。
「あ・・あの・・バルバロッサさん・・」
「何や?」
「あの・・・大輔さんに薬・・持っていってあげて・・くれますか?」
チサトは案じるような表情で言う。
「わかっとるわ。だから安心して休みや」
「あ、ありがとうございます」
チサトはそう言うと静かに目を閉じる。
バルバロッサはチサトを起こさないように静かに医務室を後にした。
(ここやったな)
バルバロッサは沙耶達の部屋をドアの前に立つと、ノックをしようとする。
そのとき、ドアの向こうから何やら音と声が聞こえて来た。
(ん?こいつは?)
思わずバルバロッサは微かにドアを開けて中の様子を覗いてみた。
ビッダァァァ~~~ンッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッ!!!
「うわあああんっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさぁぁい~~!!」
激しくパドルを叩きつける音と共に必死になって謝る大輔の声が響きわたる。
「ごめんなさいは当たり前でしょ!何てことしたの!盗み食いした上に修道士さんを身代わりにさせるなんて!!」
沙耶は容赦なくパドルを恋人のお尻に叩きつける。
今や大輔のお尻は熟れ過ぎたトマトのようになってしまっていた。
「うわあああ~~~んっっ!!も、もう許してよ~~~!!っていうかまた叩くなんてひどいよ~~~!!!」
大輔は大泣きする。
「何を言ってるの!私が怪しいと思って話させなければそのまま知らんぷりする気だったんでしょ!そんな悪い子は絶対に許さないわよ!まだまだお仕置きよ!!」
そういうと沙耶はさらにお尻を叩く。
ただ盗み食いをしたのみならず、他人に罪を被って身代わりにお仕置きされるようなことまでさせた。
それは沙耶としてはどうしても許せなかった。
見つけた後、どうも様子がおかしく、問い詰めて、それこそお尻を叩いてまでして、ようやく話しただけに、もし沙耶が気づかなければそのまま知らんぷりを決め込むつもりだったのはよくわかっていた。
「うわあああ~~~んっっ!!ごめんなさああい~~~」
大輔は必死に謝るが、怒り心頭な沙耶はさらにパドルを振り下ろし続ける。
(こっちもお仕置き中か。しばらくかかりそうだな)
バルバロッサはそう見て取ると、紙を用意する。
『チサトからですわ。よく効くんで使って下さいとのこってすわ』
そう書くと紙を添えて軟膏をドアの近くに置いていった。
―完―
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