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カイルの大作戦(SO2&テイルズより:スタン/カイル、共演パロ)



(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにしたSO2&テイルズ共演パロ、『ダンジョン・ストライキ』のカイル編です。許容出来る方のみご覧下さい)


 「どうしてだよっ!!」
カイルは不満極まりない表情で父スタンに迫る。
「カイル、わかってくれないか・・。どうしてもお前は連れていけないんだ・・」
スタンは困った表情で息子に言う。
 「この前もそう言ったじゃないか!どうしていつも連れていってくれないんだよ!!実力不足だって言いたいの!?」
「そんなこと思ってないさ。カイルの実力は俺がよく知ってるよ」
「じゃあ連れて行ってくれたっていいじゃないか!!」
「それだけはダメだ!絶対!!」
「何でだよ!理由を言ってよ!!」
「そ・・それは・・・」
スタンは困惑した表情を浮かべる。
「もういいよっっ!!父さんの馬鹿っ!!」
そう言うと、カイルは二階へ駆けあがっていってしまった。
 「また・・怒らせちゃったなぁ・・・」
スタンはため息をつくと、トボトボと家を後にした。
 (何だよ・・・!!父さんの馬鹿っ!!)
カイルはベッドにうつ伏せになると、枕を握りしめ、悔しげな表情を浮かべる。
(俺だって・・・父さんと一緒に戦いたいのに!力になりたいのに!!それなのに・・・どうして連れてってくれないのさ!!)
心の中でカイルは父に不満をぶつける。
誰よりも大好きで、尊敬する父の力になりたい、共に戦いたい。
それがカイルの願いだ。
 だが、スタンは何かと理由をつけ、全然クエストに連れていってくれない。
先ほども、モンスターに田畑を荒らされて困っている村へ魔物退治に行くスタンに、一緒に連れていって欲しいと頼んだのだが、連れていってもらえなかったのである。
 (どうしてだよ!子供だから?足手まといになるとでも思ってるの!?)
今頃モンスター退治をしているであろう父に向って、心の中でカイルは叫ぶ。
(だったら・・・俺はもう子供じゃない!立派に戦える!それを証明してやるんだ!!)
カイルはそう決心すると立ち上がる。
剣や防具、グミ等の回復アイテムを用意すると、カイルは家を飛び出す。
 「カモンバーニィ!!」
街の外に出たカイルが叫ぶと、丸々した巨大な身体に、ウサギのような耳を持った巨大な生き物が現れる。
「南の街のダンジョンまでお願い!」
背中に飛び乗ったカイルが目的地を告げると、バーニィはカイルを乗せて南へと高速で下っていった。


 「ハァ・・・・・・」
宿屋に入ると、スタンはため息をついた。
「どうしたのだ?仕事が無事終わったというのにため息か?」
ため息をつくスタンに対し、剣が声をかける。
スタンの剣はソーディアンといい、人の人格や魂を剣に移したもの。
スタンの知人で、天才科学者として高名なハロルド・ベルセリオス博士によって開発された技術だ。
 「ん?仕事の事じゃないよ、カイルのことだよ、ディムロス」
スタンは相棒のソーディアン『ディムロス』に答える。
ディムロスは元は人間の戦士でスタンの相棒だった。
だが、数年前にあるダンジョンでクエストを行った時、事故により大怪我を負ってしまった。
あまりにも大きな怪我で、最高レベルの回復術でも治せず、生かすためにはソーディアン技術によって剣として生まれ変わらせるしかなかった。
それにより、現在は人格を持つ剣として、スタンのパートナーとして共に仕事をしているのである。
 「連れてきてやればよかったのではないのか?スタン」
「何言ってるんだよ!カイルはまだ子供なんだぞ!クエストになんて・・連れていけるわけないだろう!!」
スタンは思わず叫ぶ。
「確かにカイルはまだ子供だ。しかし、実力や勇気は認めてもよいと思うぞ?」
「うん・・確かに・・・カイルの実力はわかってる・・・。でも・・・俺が・・・嫌なんだ・・・。勝手なことだっていうのは・・わかってる・・・。でも・・・カイルを危ない目には・・・あまり・・遭わせたくないんだ・・・」
スタンは呟くように言う。
 自分の力になりたいというカイルの気持ちはよくわかるし、父親としては嬉しい。
しかし、自分の仕事は危険と隣り合わせ。
経験豊富なスタンやディムロスでさえ、何度も冷や汗をかくような事態に遭遇してきた。
だからこそ、我が子を危ない目には遭わせたくなくて、ついついカイルを家に置いてきてしまうのである。
 「スタン、一度じっくりカイルと話してみたらどうなのだ?カイルとてじっくりお前が向き合えば、わかってくれるのではないのか?」
「うん。そうだな。何か話したら気持ちが少し軽くなったよ。ありがとな、ディムロス」
「ようやく元気が出たようだな。全く・・・相変わらず世話が焼けるやつだな、スタン」
「そういうなよ~、ディムロス。俺だって子供じゃないんだぜ」
「だったらもっとしゃきっとせんか!スタン・エルロン!」
「わかったってば。とほほ・・・俺、お前に怒られてばかりだなぁ・・・」


 「カイルーッ!ただいまーっ!」
ドアを開けるなり、スタンは大きな声で呼びかける。
だが、全く返事が返って来ない。
 「あれ?どうしたんだ?」
全然返事が返って来ないことにスタンは怪訝な表情を浮かべる。
父親っ子なカイルだから、いつもだったら必ず返事をするはず。
 「おかしいなぁ・・・・。カイルー、寝てるのかー?」
カイルの名を呼びながら、スタンは家の中を探す。
だが、どこにもカイルの姿は無い。
しかも、カイルの愛剣や防具等も無くなっている。
さらに調べてみると、クエストにいつもスタンが持って行くアイテム類や、お金まで無くなっていた。
 「ま・・まさか・・・誘拐?泥棒?でも・・・侵入された形跡は無いし・・」
「もしかしたらヘソを曲げて家出でもしたのではないのか?」
ディムロスが示した可能性にスタンは青くなる。
「ど・・どうしよう・・!ディムロス!」
初めての事態にスタンは慌ててしまう。
「慌てるでない!落ち着かんか!!」
「そ・・そう言ったって・・カイルが!!」
「お前がそんなでは見つかるものも見つからんだろう!しゃきっとせんか!スタン!!」
「そ・・そうだった!俺が慌てちゃ・・・。ごめん、ディムロス」
「とにかく・・まずはカイルが行きそうなところをしらみつぶしに探すぞ」
「ああ、わかってる」
そういうと二人は家を後にした。


 同じ頃・・・アシュトン達が住む街の郊外にあるダンジョン。
「はぁ・・・はぁ・・・」
カイルは荒い息を吐く。
 (さすがに・・・強いなぁ・・・)
カイルはグミを口に放り込んで体力を回復させる。
強いモンスターが多く、危険度が高いと聞いたのでやってきたが、それだけに苦労しながら進んでいた。
 (でも・・・ここで頑張れば・・・きっと父さんだって認めてくれる!!)
額や頬の汗を拭いながら、カイルは自身を励ます。
(そうはいっても・・・疲れたからなぁ・・。回復しとかないと)
カイルはそう判断すると、リュックを覗き込む。
 「あれ?」
リュックの中を覗きながら、カイルはそんな声を出す。
グミ類が無くなっているのだ。
 (しまった・・。そんなに持ってこなかったんだっけ・・・)
カイルは家を飛び出したときのことを思い返す。
一刻も早くダンジョンへ行きたかったため、あまりアイテムを用意して来なかったのだ。
 (でも・・途中で帰るなんて嫌だ!絶対に最後まで行くんだ!!)
カイルはそう決意すると、再びダンジョンの奥に向かって進もうとした。
そのとき、何かが頭上を通り過ぎた。
よく見ると、タカが買い物袋をくわえて飛んでいる。
 (買い物袋・・・タカ・・そうだ!!)
カイルはハッとした表情を浮かべるや、急いでタカを追いかけた。
タカを追いかけると、やがて双剣を手にした男の元へ向かうのが見える。
 「蒼破刃!!」
カイルはタカめがけて衝撃波を放つ。
衝撃波にビックリしてタカは買い物袋を落とし、そのまま逃げ出してしまった。
すかさず物陰に姿を隠してカイルは様子を伺う。
 (向こうも・・・警戒してるな。当たり前か・・・)
タカに買い物を頼んだと思しき人物の様子を伺いながら、カイルはそう判断する。
(よし・・ここは・・)
カイルは剣を構えたまま、呪文を詠唱し始める。
 「ウィンドスラッシュ!!」
詠唱が終わり、呪文の名を叫ぶと同時にターゲットに風の刃が襲いかかる。
ターゲットがのけ反ったところへ、カイルは素早く飛び出して買い物袋を奪い取った。
 「ま・・待って!!」
全速力で走るカイルに、相手も必死になって追いかけてくる。
(しつこいなぁ・・・・・)
幾つもの曲がり角を曲がってもなお追いかけてくる相手に、さすがにカイルも焦れ出す。
(どこかで・・・決着つけなきゃ!!)
そう判断すると、走りながらカイルは戦うのにふさわしい場所を探す。
不意に大きな岩がタケノコのように幾つも生えている空間に出た。
 (ここだ!!)
とっさにカイルは、岩と岩の間に飛び込む。
そしてスルスルと糸が縫うように動いて、岩の一つに身を隠した。
 (よしと・・・・)
岩陰に上手く身を隠しながら、カイルは追手の様子を伺う。
チラリチラリと見えるのは、短く幅広な双剣。
(双剣士だ・・・。それなら・・・・)
カイルは父親やその友人達との稽古を思い出しながら、すばやく作戦を組み立てる。
(俺と違って・・・純粋なファイター系・・・・。それなら・・魔法には弱いはず。近づけさせないで・・・魔法で遠くから攻めていけば・・よし!!)
作戦を決めると、カイルは呪文を詠唱し始める。
詠唱時間の長い呪文だが、隠れる場所が多いこの場所なら安全に唱えられる。
 「バーンストライク!」
叫ぶと同時に上空から火の玉が三発たて続けに降り注ぐ。
追手が岩に身を隠して避ける中、カイルも移動する。
動いてはウインドエッジで仕掛け、また移動してはウインドエッジで攻める。
それを繰り返して、カイルは確実に敵を攻め続ける。
 (よし・・・。弱ってきてみたいだな・・・)
物陰から、よろめいた姿をチラリチラリと見せる敵に、カイルはそう確信する。
魔法剣士といっても、本来の主力は剣技。
カイルの術はバーンストライクを除くと、あまり大きなダメージを与えられるものではない。
とはいえ、塵も積もれば山となるということわざもある。
隙の少ないウィンドエッジでチクチクと攻められてはさすがにこたえるはずだ。
 (よし・・止めにもう一発!!)
カイルが再びウィンドエッジを発動すると、相手は力尽きたのか、バタリと倒れた。
 「やったっ!やっつけたぞっっ!!」
相手を倒した嬉しさのあまり、カイルは飛び出す。
どんな相手か確かめてやろうと、カイルは一目散に駆けつけた。
 「あれ・・?」
だが、目の前に倒れているアシュトンの姿に思わず怪訝な声を漏らす。
(あれ・・?神父?でも・・・双剣・・。それより・・どうして・・こんなところに?)
事態がよく飲み込めず、カイルは困惑してしまう。
 不意に、アシュトンが飛び起きた。
(しま・・!!)
咄嗟にカイルは後ろへ飛び退こうとする。
「ハリケーンスラッシュ!!」
だが、勢いよく斬り込んでくるアシュトンの突撃、そして回転する身体から繰り出される大きな竜巻にカイルは吹っ飛ばされ、背後の岩に頭をぶつけてしまう。
(し・・しまった・・・)
ミスに気付いた時にはもう遅く、そのままカイルは目の前が真っ暗になっていった。


 目を覚ますと同時に、視界に飛び込んで来たのはアシュトンの安堵の表情だった。
「目が覚めた?大丈夫?頭痛くない?」
「ここ・・・どこ?俺・・何で・・あれ?誰?」
カイルは見知らぬ場所、見知らぬ人に戸惑う。
 「あ、ご、ごめん。僕はアシュトン、この街の神父だよ。ここは僕の知り合いの医者の診療所だよ」
「え?医者?」
怪訝な表情を浮かべるカイルに、アシュトンが答える。
 「うん。洞窟で・・君と盗賊と間違えて思い切りふっ飛ばしちゃったから。ごめんね、痛かったでしょう?」
ここでようやくカイルは自分が洞窟で出会った相手だと気づいた。
 「あ、ううん。俺こそごめんなさい。泥棒なんかして。あんまり準備しないでダンジョンに入ったから・・」
「それより、君の名前は?僕はアシュトン・アンカースだよ」
「俺、カイルっていいます」
「お?目覚ましたみたいだな」
お互い自己紹介したところへボーマンが入って来た。
 「あれ?誰?」
「誰とはひどいんじゃないか。診察したのは俺なんだがなぁ」
「ご・・ごめんなさい」
「冗談だ。それより、住所とか教えてくれるか?保護者に連絡しないとな」
「え・・?」
ボーマンの言葉に思わずカイルの表情が変わる。
 (マズイよ・・・。ここで住所なんか言ったら・・父さんにバレちゃう!!)
「ん?どうしたんだ?」
「え・・あの・・・」
(どうしよう!うまく誤魔化さなきゃ!!)
カイルは必死に考える。
連絡なんかされたらスタンに絶対に怒られる。
それだけは避けたい。
だが、カイルのそんな願いも空しく、よく知っている、だが今だけは聞きたくない声が聞こえて来た。
 「負けられないんだ!!舞え!紅蓮の翼!皇王天翔翼!!」
ドアの向こう側で派手な爆音や光がし、思い切りドアが開いたかと思うと、ルークとイリアが転がり込んでくる。
同時に、スタンがゆっくりと入って来た。
 「と・・・父さん・・・」
「カイルッ!無事かっ!?」
カイルが呟くように言うと同時に、スタンがアシュトン達をかきのけ、カイルを抱きしめた。
 「ちょ、ちょっと。苦しいってば!」
「わ、悪かった。ごめんごめん」
スタンは謝ると、アシュトン達の方を振りむいて礼を言う。
そして、詳しい事情を聞いているうちにだんだんスタンの顔が険しくなっていく。
 (ま・・まずい・・・)
危険を感じるや、カイルはそっと立ち上がる。
「あ・・あの・・俺・・ちょっと・・急用を・・」
バレバレな嘘を言ってベッドから抜け出そうとしたカイルに、スタンが迫る。
 「カイル、どこに行くつもりなんだ?」
「え・・あの・・」
「カイル・・。いきなりいなくなって俺がどれだけ探したと思う?」
「ま・・・まさか・・・」
「俺、本気で怒ってるからな・・・。さぁ・・カイル・・。覚悟はいいな?」
「いいわけないじゃないか!!」
そう叫ぶや、何とカイルは窓を破って外へ飛び出してしまった。
 「なっ!!」
慌ててスタンは窓から身を乗り出す。
「こらっ!待てっ!カイルっ!!」
「痛い目見るのに待つわけないじゃないか!!父さんの馬鹿ッ!!」
そう言い放つと、カイルは全速力で逃げ出した。


 「こらーっ!待てっ!カイルーーっっ!!」
(そんなこと言われて待つわけないじゃないか!!)
後ろから追ってくるスタンにそう思いながら、カイルは必死に走る。
幸い、足はカイルの方が早い。
このまま逃げ切ってしまおう。
そうカイルが考えたときだった。
 不意にスタンの足が速くなったかと思うや、がっしりとカイルを捕まえてしまう。
「え?ど、どうして!?」
自分の方が足は早いはず。
「これを使ったんだよ」
スタンはカイルを押さえると、シップらしいものを取り出す。
 「あ・・!!」
それを見るや、カイルは思わず叫ぶ。
スタンが取り出したのは韋駄天シップ。
使用すると移動速度が早くなるというアイテムだ。
 「ず・・ずるいよ!!」
「仕方ないだろう。お前が逃げるんだから。さぁ、帰る前に、ちょっと宿屋で話しようか?」
そういうと、スタンは息子を肩に担ぎあげる。
 「ちょ、ちょっと!離してってば!!」
「ダメだって。そうしたら逃げるだろう?」
カイルが色々と叫ぶのを尻目に、スタンはカイル共々宿屋へ向かっていった。


 「ちょ、ちょっと!離してってば!!」
カイルは膝の上で必死に暴れる。
「何言ってるんだ。勝手に家を飛び出して、あんな危ないダンジョンになんか行って!今日は怒ってるからな!」
スタンはそう言うと、ズボンを降ろして息子のお尻をあらわにする。
 「うわっ!何やってるんだよっ!父さんの変態っ!!痴漢っ!!」
お尻をむき出しにされ、思わずカイルは叫ぶ。
(って・・お尻出さなきゃお仕置き出来ないだろ・・・)
息子の暴言に思わず苦笑するスタンだが、すぐに真剣な表情に戻ると、左手でカイルの身体を押さえる。
そして、ゆっくりと右手を振り上げた。
 バァシィィ~~~ンッッッ!!!
「痛っっ!!」
思い切りお尻を叩かれ、思わずカイルは苦痛の声を上げる。
バシィンッ!バンッ!バチィンッ!ビダァンッ!バシッ!バアンッ!
相当怒っているのだろう、最初から容赦の無い音を響かせながら、スタンはカイルのお尻を叩いてゆく。
 「ちょ・・!痛っ!痛ぁ!痛っ!うわあっ!」
父親の容赦ない平手打ちにカイルは悲鳴を上げ、両脚をバタつかせる。
スタンの平手が振り下ろされるたびにカイルのお尻に赤い手形がつき、それが幾重にも重なってカイルのお尻を赤く染め上げてゆく。
 「うわっ!ちょ、ちょっと!?やめてよ父さんっ!!痛いってば!!」
両脚をバタつかせながら、カイルは必死に抗議する。
叩かれていくうちに、カイルのお尻は、アシュトンに負けないくらい真っ赤に染まってゆく。
 「馬鹿!何言ってるんだ!勝手に家を飛び出した挙句に、一人であんな危ないダンジョンなんか行って!!どれだけ心配したと思ってるんだ!!」
思い切り平手を叩きつけながら、スタンは厳しい声で息子を叱りつける。
クエストへ連れていってくれないことに腹を立てて家出したのかと思いきや、まさか危険なダンジョンに一人で行っていたとは。
さすがにそこまで無謀なことをしていたとは想像もつかず、それだけにスタンの怒りも相当なものだった。
 バッシィィ~~ンッッ!!
バチィンッ!ビダァンッ!バアシィンッ!バアアンッ!バッシィンッ!
「何だよっ!そもそも父さんが悪いんじゃないか!!いつも子供扱いして!クエストにも連れて行ってくれないくせに!!だから・・俺だって立派に戦えるって証明してやろうと思ったんだ!!」
カイルは不満をぶちまけるように言う。
 カイルの目標は父であるスタンのように立派な剣士になること。
そして、父のパートナーとして、共に戦いたい。
そう思っているが、中々スタンには認めてもらえず、魔物や盗賊退治の仕事にも連れていってもらえないのだ。
だから、危険なダンジョンに一人で挑戦して、実力を認めさせようと思ったのである。
そうすれば父もクエストに連れて行ってくれると思ったからだ。
 「そういうのが子供だって言ってるんだ!!人に散々心配かけて!そんな子は許さないからな!!」
スタンは怒りの炎が燃え上がるのでは、というくらい憤慨する。
本当の事を言えば、カイルの気持ちはとても嬉しい。
父親冥利に尽きるというものだ。
 だが、自分の仕事はとても危険なもの。
まだ子供なカイルを危険な目には遭わせたくない。
そういう気持ちが、スタンにカイルを自身の仕事へ加えることにためらいを感じさせていた。
だが、カイルにはあいにくそういう親心は通じていないらしい。
 「何だよっ!父さんの馬鹿ッ!!いじめっ子っ!鬼っ!悪魔っ!尻叩き魔っ!!児童虐待って訴えてやるからっ!!」
お仕置きがよッぽど不満なのだろう、そんなことをカイルは叫ぶ。
「全く・・・全然反省してないなぁ・・・」
息子のそんな姿にため息をつくと、スタンは平手を振り下ろす。
 バッシィィ~~ンッッ!!
バアアンッ!バアシィ~ンッ!ビッダァァ~~ンッ!バッアァ~~ンッ!!
「ちょっと!やめ・・やめてよっ!父さんっ!痛いってば!!」
カイルはお仕置きの痛さに思わず呼びかける。
だが、スタンはそれでも平手を振り下ろし続けた。


 「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・」
スタンの膝の上で、グッタリした姿で、カイルは荒い息を吐く。
お尻は既に真っ赤に染め上がっていた。
 「カイル・・・反省したか?」
スタンは一旦お尻を叩く手を止めて尋ねる。
さすがにそろそろ限界なのは一目でわかる。
スタンとしては出来ればこの辺で許してやりたかった。
 「俺・・・悪くない・・・・」
だが、カイルは強情にもそんなことを言う。
「何でそんなことを言うんだ・・・。わからずやだなぁ・・・」
「父さんになんか謝りたくない!!叩きたければ叩けばいいじゃないか!!父さんこそわからず屋のくせに!!」
「な・・・・!!」
カイルにそんなことを言われ、思わずスタンもカッとなってしまう。
思わずスタンは膝を組んだかと思うと、思い切り右手を振りかぶっていた。
 バッシィィィ~~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!
「う・・・うわああああっっっっ!!!」
今までとは比べ物にならない平手の嵐にカイルは絶叫する。
 「うわあっ!うわあっ!やめてっ!やめてっ!父さんっっ!!」
カイルは必死に許しを乞う。
だが、スタンはそれでも平手打ちの嵐を振り下ろし続ける。
 「スタンッ!やめろっ!やめんかスタンッッ!!!」
不意にディムロスが叫んだ。
その呼びかけにスタンはハッとして我に返る。
 「ディムロス・・・」
「スタン、もうやめんか!!このままではカイルのお尻が壊れてしまうぞ!!」
「え・・あ・・!!」
我に返ったスタンは息子のお尻を見るや、愕然とする。
 感情的に叩いたものだから、今やカイルのお尻は赤どころか紫がかった色に変色してしまっていた。
「俺・・何て・・ことを・・・」
「うぅ・・ううぅ・・・。と・・父さん・・・俺の事・・・嫌いなの?」
ボロボロと涙を零しながら、カイルが訴えかけるように呟いた。
 「お・・・俺は・・・父さんのこと・・・好き・・なのに・・・。どうして・・どうして・・・いつも・・・連れてって・・くれないのさ・・・。力になりたい・・・認めて欲しい・・・それだけ・・・なのに・・・。どうして・・・俺の事・・・本当は・・嫌いなの・・。だったら・・そう・・言ってよ・・ひぃぃん・・・・」
カイルは全身を震わせ、泣きじゃくりながら言う。
 「違う!違うんだ!カイル!!」
スタンは叫ぶように言うと、カイルを抱き上げ、抱きしめる。
「父・・さん・・?」
「ごめん・・・。お前の気持ち・・・全然わかってなかった・・・。本当に・・ごめん。実は・・・危ない目に・・・遭わせたく・・なかったんだ・・・」
「え・・?」
「俺の仕事は本当に危ないんだ。だから・・・・そんな目に・・遭わせたく・・なくて・・。お前が・・・怪我でもしたら・・・そう思うと・・怖くて・・・怖くて・・・。だからつい・・・」
「そ・・それ・・本当?」
「ああ・・・。お前に・・嘘なんか言わないよ」
「ふ・・ふぅわああん~~~!!」
カイルは思い切り泣きだすと、スタンにしがみつく。
 「よかった・・・よかったよぉぉ・・・。全然クエストに連れてって・・くれないから、子供としか思ってもらえてないんじゃとか・・・。本当は・・俺の事・・嫌いなんじゃ・・そう思ってて・・。でも・・でも・・そうじゃ・・なかったんだ・・・よかったぁぁ・・」
「辛い思いさせてたんだな・・。俺こそ・・ごめん・・・」
スタンはカイルに謝ると、しっかりと息子を抱きしめた。


 「大丈夫か、カイル?」
スタンはお尻を撫でてやりながら、カイルに尋ねる。
「あ・・うん・・。ちょっと・・痛いけど・・。それより・・・心配させちゃって・・ごめん・・・」
「ううん。俺こそ・・・色々とごめんな」
スタンは息子にそういうと、再び口を開く。
 「カイル、実はまた別の村にクエストに行くんだ。同じようにモンスターに困ってるらしいからさ。それで・・・一緒に来るか?」
「え・・?い、いいの?」
思わぬ父の言葉に一瞬カイルはキョトンとする。
 「ああ。今まで寂しい思いさせちゃったしな。ただし・・・クエストに行く以上は、皆と同じ。特別扱いなんかしないぞ。それだけはいいな?」
「わかってるよ!やったーっ!父さんと一緒に戦えるーー!!!」
父と一緒にクエストに行けるという喜びに、すっかりカイルは有頂天になる。
 (だ・・・大丈夫かなぁ?)
すっかり浮かれてしまっているカイルに思わずスタンは不安になる。
「ディムロス・・・・やっぱり・・まだちょっとカイルには早かったかな?」
「さぁ。だが、また無茶な真似されるよりは、我らと一緒の方がまだ目が届きやすいだろう?」
「そ・・そうだよな・・・」
ちょっと不安になりながら、スタンはすっかり浮かれているカイルを見守っていた。


 ―完―

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