黒い気持ち(SO2&テイルズより:ロイド/キール、共演パロ、BL)
(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにしたSO2&テイルズ共演パロです。BL要素もあります。許容出来る方のみご覧下さい)
(全く・・・馬鹿馬鹿しい・・・。言うに事欠いて・・・何だってあんなことを言うんだ。冗談も大概にしてもらわないとな)
ギルド会館内の図書室で作業をしながら、キールはガイに対してそんなことを思う。
この間、ガイにお仕置きをされた際に、キールがロイドに恋愛感情を抱いているといったためだ。
(ったく・・・・ロイドも僕も男だぞ!どうして・・・そんなことになるんだ!!)
キールは否定せずにはいられない。
(ふん・・きっと・・ふざけた冗談なんだろ。全く・・笑えないジョークだな!)
そんな風に心の中で呟きながら、キールは作業を続ける。
(でも・・・どうしてロイドの勉強を見てやってるんだ?)
作業をしながら、ふとキールはそのことを考える。
今、キールがやっている作業はロイドのためのテキストや授業計画の作成。
(どうしようもないくらい馬鹿なのに・・・。どうして・・・わざわざ時間を割いてるんだ、僕は?)
考えるうちに、疑問はどんどん大きくなってくる。
ロイドの学力は惨憺たるもの。
それは今まで授業してきてよく知っている。
ロイドなりに努力はしているのだろうが、それでもほとんど改善が見られない。
その状況に、キールも時として苛立ちを覚えずにはいられない。
正直、もう止めようかと思うこともある。
ロイドに構っていないで、自分の研究を進める方がずっと有益なはずだ。
しかし、何故か放っておけない。
何とかしてやりたいと思わずにはいられない。
それに、こうして勉強を見ていると、ときどきロイドが礼を言うことがある。
そうされると、何故か嬉しいと思わずにはいられなかった。
(そうだ・・。おかしいぞ・・・・。まさか・・・やっぱり・・・)
キールは再びガイの言葉を思い出す。
自分の感情を冷静に考察してみると、ガイの言葉が当たっているような気もしてくる。
(違う!違う違う違う!ロイドがあまりに馬鹿すぎて、見かねてるだけだ!!)
キールは必死に自身にそう言い聞かせる。
(でも・・ロイドじゃなかったら、勉強を見てやろうと思ったのか?)
言い聞かせながら、今度はその疑問が沸いてくる。
その答えを探すうちに、またガイの出した答えにいきつきそうになる。
(違う!違う違う違う!!そんなはずはない!!)
いきつきそうになる答えを必死にキールが否定していたときだった。
キールの机は窓に面している。
そのため、ギルド会館の中庭が見渡せる場所だった。
たまため、キールが窓の外に目を向けると、中庭の一角に黒の神父服姿の青年が立っているのが見えた。
(ん・・?あれは・・・確か・・・アシュトンか。何をしてるんだ?)
キールは怪訝な表情を浮かべる。
アシュトンは何だか落ち着かない表情で、ソワソワしている。
しばらく様子を伺っていると、今度はロイドがやって来た。
ロイドがやって来ると、アシュトンはホッとした表情を浮かべる。
キールがジッと窓越しに様子を伺っていると、アシュトンはロイドに何やら話しだす。
(依頼を・・してるのか・・・)
声は聞こえないが、表情ややり取りから想像がついた。
(待てよ・・・。ということは・・二人は直接依頼が出来るくらいの仲ということに・・なるじゃないか!!)
二人のやり取りから気づいた事実にキールは愕然とする。
ギルドに寄せられる依頼はギルドメンバーからのものであっても、ギルドの管理者を通じての依頼となる。
だが、時としてギルドメンバー本人から直に依頼をされることがある。
そういうことが起きるのは、依頼をする方とされる方がお互いに信頼関係があるときだ。
つまり、ロイドとアシュトンの仲が非常に良いということである。
(いつの間に・・・そんなに・・仲良くなっていたんだ・・・)
キールは今まで気づかなかった事実に愕然とする。
二人を見つめるキールの表情はだんだん、険しいものへと変わってゆく。
同時に何だか苦いものが心の奥底からこみ上げて来た。
そのままキールは二人をジッと見つめている。
だが、やがて険しい表情のまま、図書室を後にした。
「ロイド!」
「うわ・・な、何だよ!?」
キールの顔を見るなり、ロイドはビックリする。
「何だ・・そんな鬼でも見たような顔をして・・・」
「わ、悪い。何か・・すげぇ不機嫌そうな顔してるからさ・・・」
ロイドがそういうのも無理のないことで、今のキールは不機嫌どころではすまない表情を浮かべていた。
「そんなのどうでもいいだろう。それより・・・アシュトンと何か話してたみたいじゃないか?」
「ああ。ちょっと頼まれごとされてさ」
「ふ~ん。何を頼まれたんだ?」
「いや・・。それは・・」
ロイドが言葉を濁すと、キールの表情がさらに険しくなる。
「どうしたんだ?僕にも言えないのか?」
「わ・・悪い・・。口止めされてんだ・・。そ・・それじゃあな!急いでるんでさ!」
ロイドはそういうと、足早に去る。
(どういう・・ことだ・・・。口止め・・・だって?)
ロイドの言葉にキールは苦々しげな表情を浮かべる。
(二人だけで・・・コソコソ・・・何のつもりなんだ・・)
窓から見た二人の姿を思い返し、キールは腸が煮えくりかえってくる。
直接依頼が出来るほど仲の良いという事実が、何とも腹立たしくてならなかった。
(って・・・僕は何を考えてるんだ!?)
不意にキールはハッとする。
(ロイドが誰と仲良くしようが・・それはロイドの勝手じゃないか!どうして・・・こんな気持ちになるんだ!?)
キールに自身にそう問いかける。
(クソッ・・!!何なんだ一体!?)
未知の感情を振りはらおうとするかのように、苛立たしげな表情を浮かべてキールは足早にその場を立ち去った。
「はぁ~。一休みするか~」
そう呟くと、ロイドは部屋を出て、中庭へと向かう。
二人が中庭へと消えてゆくのを見届けると、ゆっくりと物陰からキールが姿を現した。
(何を・・・やってるんだ・・僕は・・・)
忍び足で部屋へと近づこうとする自身に、キールはそう問いかける。
(こんなの・・・覗きと変わらないじゃないか。恥ずかしいと思わないのか?)
キールは自分をそう叱咤する。
(じゃあこのままでいられるのか?ロイドがアシュトンのためにどんな依頼を請け負ったのか、二人で何やってるのか知りたくはないのか?)
一方で、キールの心にそう呼びかける声があった。
(悔しくないか?ロイドがアシュトンなんかのために依頼を受けて。それに・・・アシュトンがロイドと仲がいいのが許せるか?)
(でも・・そんなので・・怒るなんて・・筋違いだろう?ロイドやアシュトンが・・悪いわけじゃ・・・)
(だからって・・我慢出来るのか?平気でいられるのか?)
理性とロイドに対する未知の感情とが互いにぶつかり合い、キールに呼びかける。
キールはしばらくの間、悶々とした表情を浮かべていたが、やがて我慢しきれずに部屋へと飛び込んだ。
部屋の内部には作業台や工具などが置かれている。
ここは一種の工房で、生産やアイテムクリエーションなどを行うための場所だった。
キールも自身の装備品を強化したり、生産系の依頼を受けたときなどに利用したことがあるため、知っていた。
(あれだな・・・・)
室内を見回し、キールは素早くロイドが造っていたと思われる装飾品を見つける。
(さすがに・・・見事だな・・)
キールは思わず感心する。
育ての親の種族や職業の関係で、ロイドは本職の細工師としてやっていけるくらいの腕がある。
そんなロイドが造ったのだから、見事といわずにはいられない。
(これか・・。アシュトンの依頼で・・造っていたんだな・・・)
キールは装飾品を見つめながら、そんなことを考える。
(アシュトンの・・・ために・・・これを・・・)
そう考えると、キールの中で苦く、黒い感情がフツフツとマグマのようにゆっくりと沸き上がって来る。
(僕が勉強を見てやってるときはろくに集中していないくせに・・・。アシュトンのためにはあんなに疲れるくらい・・・仕事が出来るのか?)
普段の冷静さをかなぐり捨てて、キールは悔しくて、妬ましくてたまらなくなる。
(こんな・・もの・・!!)
キールはロイドが造っていた装飾品を取り上げると、怒りや悔しさ、嫉妬などが入り混じった表情で見つめたまま、宙に投げ上げた。
「エアスラスト!!」
呪文と共に風の刃が装飾品を切り刻む。
「ファイアボール!!」
間髪いれずに、次の呪文を発動して今度は破片を全て黒焦げにしてしまう。
(よし・・これで・・・・)
完全に装飾品を破壊したことを確認し、キールがホッと一息ついたときだった。
「!!!!」
工房を出ようとドアの方を向くと、いつの間にかロイドが立っていた。
「あれ?キール、いつの間に・・・?」
(しまった・・・!!)
キールはロイドに気づかなかった自身の迂闊さに舌打ちする。
「ん?何か焦げくさいような・・・」
(まずい!?)
このままだと自分の所業にロイドが気づいてしまう。
とっさにキールはエアスラストを発動する。
ロイドが足止めされているうちに、キールは工房を飛び出していた。
(何て・・ことを・・・)
通りを歩きながら、キールは自己嫌悪を覚えていた。
ロイドがアシュトンのために装飾品を造っていたのが気に入らなくて、品物を壊した上、ロイドに術を食らわせて逃げ出してきた。
(気に入らないからって・・・悔しいからって・・・こんなこと・・。これじゃあ・・子供と同じじゃないか!!何を・・やってるんだ!!)
自分のしたことが、あまりにも子供じみていて、情けないなどというものではない。
このままどこかへ消えてしまいたい。
そう思いながら、通りを歩いていたときだった。
不意にアシュトンの姿が見えた。
買い物中なのだろう、買い物かごを提げながら、食料品の品定めをしている。
(いい気なものだな・・。僕やロイドが・・どういうことになっているかも知らないで)
アシュトンの姿に、キールはそんなことを思う。
じっとアシュトンを見つめているうちに、だんだんキールの中で再び黒い気持ちが沸き上がってくる。
無意識のうちにキールは愛用の杖を構え、アシュトンに狙いを定めると、術を発動していた。
「くそ・・!どこに・・・行ったんだよ・・?」
ロイドは市内を走りながら、そう呟いた。
(どうしたんだよ・・何か・・あったのか?)
キールの様子を思い返しながら、ロイドは心配でたまらなくなってくる。
ここのところキールの様子が何だかおかしい。
特に、ロイドがアシュトンから依頼を受けてから、いつも不機嫌で、些細なことにも苛立つようになっていた。
(とにかく・・・早く見つけねえと・・・)
ロイドが再びキールを探しに足を踏み出そうとしたときだった。
突然、大きな音が別の通りから響いてきた。
(何だよっ!?)
思わずロイドは音の聞こえた方向へ走りだす。
「な・・・何だよ・・これ・・?」
現場へやって来たロイドは唖然とする。
食料品店の軒先が完全に吹っ飛び、木片や商品の残骸が散らばっていた。
「うわっ!ちょ、ちょっと!やめてってば!!」
「うるさい・・・。お前・・なんか・・・お前なんか・・・」
聞き覚えのある声にロイドは思わず振り向く。
すると、杖を構えたキールが、ジリジリとアシュトンに詰め寄るのが見えた。
「ファイアボールッッ!!」
「うわあっっ!!」
火球が襲いかかり、思わずアシュトンは横に跳んでかわす。
「逃がすものか!!アクアエッジ!!」
だが、さらにキールは術を発動してアシュトンを攻め立てる。
(何だかわかんねえけど!ヤバイッ!!)
慌ててロイドは後ろからキールに飛びつくと、押さえつけた。
「何をするんだっ!ロイドッッ!!」
「キールこそ何やってるんだよ!落ち着けって!!」
「うるさいっ!放っておいてくれっ!」
「馬鹿っ!そういうわけにはいかないだろっっ!!」
ロイドはそう叫ぶと、思い切りキールの後頭部を剣の柄で殴りつける。
その衝撃に、キールはウッとうめくと、そのまま気絶した。
「だ・・大丈夫かよ、アシュトン?」
「あ・・う・・うん・・。何とか・・・」
キールを抱えたまま、ロイドはアシュトンに尋ねる。
「とにかく・・・本当ごめん。キールのせいで迷惑かけちまって」
「ロイドが悪いわけじゃないよ。びっくりはしたけどさ」
「ならいいけどさ。俺はひとまずキールをギルド会館まで連れてくからさ。それじゃあな」
そういうと、ロイドはキールを抱えてその場を立ち去った。
目を覚ますと、キールはギルド会館のゲストルームのソファに横になっていることに気づいた。
(ここは・・?あれ?いつの間に?)
キールは身体を起こすと、室内を思わず見回す。
(そういえば・・ロイドが追いかけてきて・・・)
そこまで思い出したとき、不意にドアが開いた。
「あ、目覚めたのか?」
思わず振り返ると、ロイドが入って来る。
「キール、頭痛いとかないかよ?手加減はしたはずなんだけど」
「別に大丈夫だ。あれくらいで頭痛なんか残るわけがないだろう」
「そっか。よかったぜ・・・」
そう呟くと、ロイドは安堵の表情を浮かべる。
だが、次の瞬間、普段とは違った真剣そのものの表情を浮かべた。
「なら・・大丈夫だよな」
「は?何を言ってるんだ?」
思わず聞き返したキールに対し、返事の代わりにロイドは手を伸ばす。
手首を掴まれたかと思うと、キールが気づいた時には、ソファに座ったロイドの膝の上にうつ伏せにされていた。
(な・・まさか!?)
以前、ロイドやガイからお尻を叩かれた記憶が蘇る。
思わず振り返ってみると、ロイドはローブの裾を捲り上げ、お尻を出そうとしていた。
「ロイドッ!何をやってるんだ!?」
「決まってるだろ?お仕置きの用意だって」
「な・・。冗談じゃない!何でそんなことされなきゃいけないんだ!!」
キールは思わず叫ぶ。
「決まってんだろ。アシュトンにあんなことして。下手したら大変なことになってただろ!」
「だからってなんでこんなことされなきゃいけないんだ!離してくれ!!」
「そうはいかねえって。俺だって怒ってるんだからな」
そういうと、ロイドはしっかりと左手でキールの身体を押さえる。
同時に、右手を振り上げた。
バッシィィ~~~ンッッッッ!!!
「ぐ・・!!!」
(本気で・・・叩いてるな・・・)
最初から容赦のない一撃に、キールはそう判断する。
バシッ!バチィンッ!ビダンッ!バアンッ!バシィンッ!
「く・・ぐ・・くぅ・・ぐ・・・」
力強い平手が叩きつけられるたび、キールは声を押し殺す。
ビダンッ!バアシィンッ!バチィンッ!バアンッ!
「く・・ロイド・・やめろ・・やめ・・ないか・・!!」
屈辱感を抑えかねている声でキールは言う。
だが、ロイドはそれでやめるわけもなく、さらにキールのお尻を叩き続ける。
バシィ~ンッ!ビダァァ~ンッ!バジィ~ンッ!バシィンッ!ビダァンッ!
「く・・ぐ・・ぐ・・ぐぅ・・くぅぅ・・」
平手が幾度も叩きつけられ、だんだんお尻が赤く染まってゆく。
(な・・何だって・・こんな・・目に・・遭わなきゃ・・いけないんだ!!)
屈辱に身を震わせながら、キールはそう思わずにはいられなかった。
自分が悪いことはわかっている。
怒られても文句は言えない。
だが、だからといって、お尻叩きなど受け入れられるものでは無かった。
「ロイド・・やめろ・・やめないか!!やめろって言ってるだろう!!聞こえてないのか!!」
キールは振り返って叫ぶ。
「聞こえてるよ」
「だったら・・何で叩くんだ!?」
「キール・・・悪いことしたのは誰だよ?」
「そ・・それは・・・」
キールは思わず言葉に詰まる。
ロイドの言う通りだ。
返す言葉などあるはずがない。
「キールが悪い子だったんだからお仕置きされてんだろ!アシュトンにあんなことして!!」
ロイドはそう言いながら、キールのお尻をさらに叩く。
「アシュトンに暴力なんか振るって!俺が止めなきゃ大変なことになってたかもしれないだろ!!」
バアッジィ~ンッ!ビッダァァ~ンッ!バアッジィ~ンッ!ビッダァァ~~ンッッ!!
「ぐ・・!く・・!ぐぅ・・!ぐぅ・・!あくぅ・・!」
さらにロイドの平手は強くなり、お尻に刻み込まれる赤みはさらに濃厚になってゆく。
それに従って、キールの表情や声に苦痛が増していった。
「人に暴力振るうなんて最低だぜ!!幾らキールでも、そんな悪い子絶対に許さねえからな!!」
ビッダァァ~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~ッッッッッ!!!!!
「ぐ・・!!ぐっ・・くぅぅぅ!!!!」
お説教とお仕置きをしているうちに、ロイドの感情はさらに高まってきたのか、ロイドは平手の豪雨を降らせる。
「ぐ・・やめ・・やめろ・・やめ・・ないか・・」
ロイドに平手の嵐を振り下ろされてもキールはそれでも抗議をしようとする。
だが、ロイドもそれに耳を貸すことなく、お尻を叩き続けた。
「く・・あ・・あぐ・・くぅあぁあ・・」
キールは両肩を上下させ、荒い息を吐く。
厳しいお仕置きをされたせいか、お尻は既に真っ赤に染まっていた。
(くぅぅ・・・熱い・・・火が・・燃えてる・・みたいだ・・・)
お尻に感じる熱さと痛みに、キールはそう思わずにはいられなくなる。
「キール・・・反省したかよ?」
一旦お尻を叩く手を止めて、ロイドは尋ねる。
(『反省したかよ?』だって?何の・・つもりで・・・そんなこと・・言えるんだ!?)
ロイドの言葉にキールは思わず反発したくなる。
(そもそも・・誰のせいだと思ってるんだ?ロイドのせいじゃないか。ロイドが・・・アシュトンなんかのために・・依頼なんか・・受けるから・・・!!)
キールは心の中でそう叫ぶ。
だが、一方で理性と良心が口を開く。
(何を馬鹿なことを言ってるんだ?ロイドが誰から依頼を受けようが、それはロイドの自由だろう?それにロイドがアシュトンと親しくても、ロイドが悪いわけじゃない)
しかし、間髪いれずにまた別の感情がキールに問いかける。
(それでいいのか?悔しくないのか?ロイドとアシュトンが仲良くしてて?ロイドはアシュトンなんかのために、疲れるくらい集中してたんだぞ?僕が勉強を見てやってた時とはえらい違いじゃないか)
(黙れ!黙らないか!!)
キールは心の奥底で、自分の心の中に渦巻く感情に向かって叫ぶ。
(くそ・・!くそ・・!何だって・・・!!)
ロイドの膝の上で押し黙ったまま、キールは煩悶する。
「キール、どうして黙ってるんだよ?何か言ったらどうだよ?」
だが、そんな葛藤を知るわけもなく、ロイドが再び問いかけた。
キールにとっては無神経なロイドの態度に、キールは今まで抑えかねていたものを爆発させてしまった。
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!何でロイドにお説教なんてされなきゃいけないんだ!!いい加減にしてくれ!!」
「キール・・・それ・・・本気で言ってるのかよ?」
ロイドは険しい表情で尋ねる。
「だったら何だっていうんだ!!僕の・・僕の・・何が・・わかるっていうんだ!!アシュトンなんか死ねばよかったんだ!!」
「いい加減にしろよ!!」
ビッダァァ~~~~ンッッッッッ!!!
ロイドのさらなる怒りの平手打ちに、キールは声にならない声を上げる。
「全然反省してないどころか・・人に・・死ねなんて・・・!絶対・・絶対・・許さないからな!!」
ロイドはそう叫ぶと、室内にある机にまでキールを引っ立ててゆく。
机上にキールの上半身をうつ伏せにさせると、お尻を突き出した体勢で押さえつけた。
「何をするんだ!!」
思わず抗議するキールだったが、ロイドが机上から長く幅広の定規を取り出すのを見ると、ギョッとする。
「ま・・まさか・・・」
「キール・・・。人に暴力振るった上に・・・死ねだなんて・・・。絶対に・・許さないからな!!」
今までとは比べ物にならない怒りを燃え上がらせ、ロイドは定規を振り上げた。
バアッジィィィィ~~~~~ンンンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~ッッッ!!!!
「ぐうっ!!うぐっ!うあああっ!あっ!あああっ!!」
定規の乱打が既に真っ赤になっているお尻に容赦なく襲いかかり、キールは悲鳴を上げる。
バアッジィィ~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッッ!!!!
「ひ・・!痛・・ぎぃ!痛・・・痛いぃぃぃ・・・」
もはやキールも堪えきれず、目尻には涙が浮かび、声も湿ってくる。
「ひっ!痛っ!痛あああっ!いや・・・いやだぁ・・!!やめ・・やめて・・・痛ぁぁぁ・・・いや・・だぁぁ・・やめて・・痛いぃぃ・・・」
キールは泣きながら、必死に許しを乞う。
だが、既に怒り心頭に達しているロイドは容赦なくキールのお尻に定規を叩きつけ続ける。
ビッダァァァ~~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~ッッッ!!!
「うわぁぁあ!!も・・もう・やだっぁあ!!!痛いぃぃぃ!!!」
プライドもすっかり崩れ落ち、キールは泣き叫ぶ。
「ロイドッ!や、やめてくれっ!!僕が悪かったっ!!謝るっ!!謝るからっ!!痛いぃぃぃ!!うわぁぁぁ!!」
キールは無意識に両脚をバタつかせながら泣き叫ぶ。
「今度こそ、反省したかよ?」
ロイドは定規を振るう手を止めて尋ねる。
キールは目尻に涙を浮かべながら、黙って頷く。
それを見ると、ようやくロイドは定規を手放した。
「だ、大丈夫かよ?」
ロイドは思わず心配そうな表情で尋ねる。
「別に・・・。これくらい・・く・・・」
キールは平静を装うとするが、お尻の痛みに思わず顔を顰める。
「や、やっぱりちゃんと医務室行こうぜ!!辛いんだったら手貸すからさ!!」
ロイドは思わずそう言うと、キールに近づこうとする。
「平気だと言ってるだろう!それとも・・・僕をさらしものにしたいのか!?」
キールは思わずカッとなりながら言う。
「そ・・そういう・・わけじゃ・・」
ロイドは思わず声が小さくなる。
「これくらい・・自分で何とか出来る!放っておいてくれ!!」
「わ・・わかったよ。で・・でも・・辛かったら無理するなよ?」
ロイドはそう言うと、静かに部屋を出て行こうとする。
だが、やはり心配なのだろう、部屋を出かかったまま、ジッとキールの様子を伺っていた。
「何をしてるんだ!さっさと出て行ってくれ!!」
キールはそう叫ぶと、本を投げつける。
慌ててロイドは逃げるようにして部屋を立ち去った。
「・・ったく・・・。自分で叩いておいて・・・」
ロイドの姿が消えると、キールはそう呟く。
(でも・・悪いこと・・したな・・・)
だが、同時に申し訳ない気持ちにもなってくる。
自分の事を心配してくれた行為なのはわかっていたからだ。
なのに、お尻を叩かれてお仕置きをされた、という事実を他人に知られたくなくて断り、ロイドに邪険にしてしまう。
(どうして・・素直になれないんだ・・・。僕の馬鹿・・・)
心の中でそう呟きながら、キールが自分で手当てを始めようとしたときだった。
「お~い、ちょっといいか~?」
不意に救急箱を抱えてガイが入って来た。
「な・・何をしに来たんだ!ノックぐらいしたらどうなんだ!!」
いきなり入ってきたガイに、思わずキールは叫ぶ。
「悪い悪い。ちょっとロイドに頼まれたんだよ。どうしても気になるから手当てしてやってくれって」
「余計な・・ことを・・・」
キールは思わず舌打ちしたくなる。
「ロイドは心配してるだけだろ。あまり邪険にするなよ。ロイドがかわいそうだぞ」
ガイは二人の間を取り持つかのように言う。
「ガイには関係ないだろ!それに・・どの面下げて僕の手当てなんか出来るんだ!そもそも、ガイのせいじゃないか!ガイが変なこと言うから、僕だっておかしくなったんだぞ!!」
「わかってるよ。だから責任取って手当てするって。それに・・これ以上ワガママ言うと、医務室で、皆の前で手当てしてもらうけどいいのか?」
「く・・」
キールは悔しそうな表情を浮かべると、そっぽを向く。
それに構わず、ガイはキールの傍へ腰を降ろすと、手当てを始める。
ガイに手当てされるのが不本意でたまらないのだろう、キールはうつ伏せになったままガイを睨みつけ続ける。
(すごい睨んでるな。まあ仕方ないか・・・。でもまぁ・・ヤキモチ妬いて・・あんなことするなんてな。意外だったな)
「な・・何がおかしいんだ?」
ガイの表情に思わずキールは問いかける。
「いや、何でもないけどな」
「嘘だ!絶対何か考えてただろ!どうせ大人げないとか僕の事馬鹿にしてたんだろ!!」
「悪かったよ。謝るから拗ねるなって」
「拗ねてなんかない!!」
(どう見ても拗ねてるだろうが・・・)
そう思ったが、口には出さずにガイは手当てを続ける。
(それにしても・・・どうしたもんかねぇ・・・・。キールの方は素直じゃないからまだ自分の気持ちを認めようとはしないだろうし・・・。ロイドは鈍感過ぎるしなぁ・・)
薬を塗りながら、ガイは二人をどう取り持とうか考える。
(まぁ今はとにかく、お尻の方だな。それにしても・・・・)
ガイはたっぷりとお仕置きされたキールのお尻を見やる。
(こりゃあ凄まじいな・・・。凄まじいといえば・・アシュトン、大丈夫か?今頃向こうも嫉妬で大変なことになってないといいけどな)
キールのお尻の状況に、ガイはそう心配せずにはいられなかった。
同じころ・・・。
ビッダァァァ~~~~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッ!!!!
「うわあああんっっ!!ごめんなさいっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい~~~~~!!!!!」
激しくパドルが叩きつけられる音と共に、アシュトンの悲鳴が響きわたる。
「馬鹿者ぉぉぉぉ!!私に隠れてロイドとコソコソしおってぇぇぇ!!!絶対に許さぁぁぁんんん!!!」
「どうしても君にプレゼントしたかったんだよ~~!!ロイドなら腕もいいから~~!!」
アシュトンは必死になって弁解する。
ロイドにした依頼はルシフェルへのプレゼント製作。
キールが嫉妬して術で壊してしまった品がそれだった。
「それでどうなったぁぁぁ!!あのポニーテール術師に難癖つけられて襲われるような羽目になったではないか!!それに・・・最近ロイドとコソコソベタベタするのを見せられてどれだけ悔しかったかわかるかぁぁ!!!」
嫉妬の炎を燃え上がらせながらルシフェルは叫ぶ。
「だからそれはごめんってばー!謝るから許してよ~~!!」
「何を言うか~!今日はキツくキツくお仕置きしてやる!さらに・・これから十日毎日百叩き、合わせて1000叩きはしてやるぞ!!!」
「そ・・そんな~~~~っっっ!!!」
燃えに燃え上がった嫉妬の炎とそこから来るお仕置き宣言にアシュトンは絶叫する。
その後、長い間、そして十日たて続けに、アシュトンの悲鳴が教会に響きわたった。
―完―
スポンサーサイト