セネル&チェスター登場(SO2&テイルズより:スタン/セネル、共演パロ)
(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにしたSO2&テイルズ共演パロです。許容出来る方のみご覧下さい)
「悔しい~っ!また負けた~っ!」
そういうと、カイルは座り込む。
ギルド会館の中庭でスタン相手に剣の練習をしているのだが、挑戦しては負けて再挑戦を繰り返しているところだった。
「でも前よりだいぶ強くなったよ」
そういうスタンだったが、カイルは不平そうな表情を浮かべる。
「そんなこと言ったって全然一本取れないじゃないか。強くなった気がしないよ」
「当たり前だ。スタンとお前じゃ経験も技量も全然違う。スタンを超えるレベルになるなんてまだまだ先の話だ」
「あんまり厳しく言うなってば、リオン」
相変わらずのリオンの口調にスタンが思わず言う。
「ふん、事実を言っているだけだ」
「まぁとにかくちょうどお昼だしご飯でも食べよう。その後でまたやればいいじゃないか」
「よお~っし!今度こそ負けないからねー!!」
そういうとカイルは闘志が沸いてきたのか、取りあえず食事をしようと中へ入る。
それに続いてスタン達も中へと入っていった。
「あれ?父さん?知らない人達がいるよ?」
「本当だ?あれ?あの二人・・・・」
ホールへ入って来た三人は、見知らぬ二人組がいることに気づく。
一人はツリ目が特徴的で弓を持った狩人らしい若者。
もう一人は細身で銀髪、顔に十字型のアザのようなものがある若者だった。
「ん?あれ?スタンじゃねーか?」
「チェスター!セネル!どうしたんだい、こんなところで!」
スタンと二人組は相手に気づくと互いに声をかける。
「実は今度から俺らもこっちのギルドで働くことになったんだよ」
「へぇ、そうだったんだ。俺もしばらく前からここに家族で移籍したんだ」
「ねぇ、知り合いなの?」
父親の様子に怪訝に思ったカイルは思わず尋ねる。
「ああ。まだウッドロウさんのところにいたときに長期出張になったことがあるだろ?覚えてるかい?」
「お前が一月もいなかったときのことか。おかげでこっちはカイルの面倒で苦労させられたな」
「俺、そこまでひどくないよ!」
スタンの言葉にリオンとカイルはそんな言葉を返す。
二人がまだウッドロウのギルドで働いていたころ、一月ほど別のギルドにヘルプで出向していたことがあった。
「そのときに出向先のギルドで知り合ったのがこの二人なんだ。弓を持ってる方がチェスター・バークライト、銀髪の方がセネル・クーリッジだよ」
「チェスター・バークライトだ。狩人だから狩りはお手の物だぜ」
「セネル・クーリッジだ。元は民間のマリントルーパーだ。格闘技と船については自信がある。まぁ船の方はここでは用が無いだろうがな」
「俺、カイルです。よろしく」
「リオン・マグナスだ・・・」
チェスター達に対し、カイル達も自己紹介をする。
「そういえば来たばかりかい?よかったら後で案内するよ」
「ああ、そうしてもらえるとありがてえな。んじゃあ俺らはここのおエライさんに挨拶してくるわ」
そういうとチェスター達は会長室の方へと向かっていった。
それからしばらく経った頃・・・。
「ハァ~ッ・・・疲れたぜぇ・・・・」
「そうだな・・・。こんなに疲れたのは久しぶりだ・・・・」
そんな会話をかわしながら、チェスターとセネルがいかにも疲れた感じでギルド会館へと戻って来た。
「どうしたのさ?凄い疲れた顔してるね?」
二人の様子に思わずスタンは心配そうに尋ねる。
「ああ、薬草採取のクエスト受けてここの郊外の洞窟に行ってきたんだよ」
「ああ、あそこか。あそこのモンスターは強いからなぁ」
スタンは納得した表情を浮かべる。
この街の郊外にある洞窟は薬草の自生地として、また強いモンスターが多数出没する危険なダンジョンとして知られている。
それで大変だっただろうと容易に察せられた。
「もうヘトヘトだぜ。仮眠でもしねえと持たねえよ。まぁその前に報告してこねえとな。面倒くせえけど・・」
「はは。お疲れ様」
ダルそうに言いながらクエスト完了を報告しに向かうチェスターにスタンは思わず苦笑する。
「セネルも一休みしたらどうだい?疲れてるだろ?」
「いや、その前にやっておきたいことがある」
「何だい?」
「ああ。最近忙しくて妹に全然手紙を出してやれなかったからな。それで手紙を出してくる。遅くても一時間くらいで帰るとチェスターには言っておいてくれ」
「わかったよ」
「すまない。ってこうしてはいられない!早くしないとな!」
そういうとセネルは急いで出て行く。
「あれ?セネルのやつ、どっか行ったのかよ?」
報告を終えて再び降りてきたチェスターは、ちょうどセネルが出てゆくのを見かけ、スタンにそう尋ねる。
「うん、妹さんへの手紙を出してくるってさ」
「はぁ~っ、またかよ。妹の事になると本当マメだよなぁ」
チェスターは感心したような、同時に呆れたような口調で言う。
セネルはいわゆるシスコンで、その妹愛振りは元いたギルド内では非常に有名だった。
同じギルドに属していただけに、チェスターもそのことはよく知っている。
「まぁ妹って可愛いものだからね。気持ちは分からないでもないよ。そういえばどうしてるのかなぁ・・・・」
「そうだよなぁ。一緒にいるとウルセーって思うけどよ、こうして離れてると・・なんか複雑だよなぁ」
スタンとチェスターはそんなことを呟く。
二人にもそれぞれ妹がいる。
スタンの妹であるリリスは既に結婚して余所で暮らしているから最近は縁遠くなってしまっているが、チェスターの方はここに移籍するまでは一緒に暮らしていた。
セネル共々移籍することになり、いわば単身赴任状態というわけである。
「たまには・・手紙でも出してやるか。口ウルセぇことばっかり書いてきそうだけどなぁ」
「そうだなぁ。俺も全然手紙なんて出してなかったなぁ。たまには書かないと心配するかな?」
セネルの後ろ姿を見送りながら、二人はそんな会話を交わしていた。
セネルが妹への手紙を出しに郵便局へと向かっていると、ふとアクセサリーショップが目に入った。
(そうだ・・・。せっかくだから・・・他にプレゼントでも・・・)
セネルはそう考えると、ショップへと入ってゆく。
(しまった・・・・)
いざショップへ入ってみて、セネルは困る。
よさげなものが多くて、どれにしようか迷うのだ。
(いっそのこと全部・・。いや・・そうもいかないか・・)
手紙だけならともかくここでプレゼントを買って一緒に送るとなると、色々とお金がかかってしまう。
となると、やはり一つに絞るしかない。
セネルは戦いのとき以上の真剣さで、ガラスケースに並ぶアクセサリーをジッと見つめていた。
一時間くらいして、セネルはホッとした表情で店を後にする。
手には手紙と一緒にラッピングされた小箱を抱えていた。
(迷いに迷ったが・・よさそうなのが見つかってよかった)
セネルはそう安堵しつつ、通りの時計台を何気なく見やる。
「しまった!?」
時計台の時刻を見るなり、セネルは叫ぶ。
アクセサリー選びに時間をかけすぎたことに気づいたのだ。
(早くしないと郵便局が閉まってしまう!!)
セネルは焦るあまり、全速力で走りだす。
間に合うようにと必死に走る、走る、走る。
だが、それゆえにセネルは目の前を大きな買い物袋を抱えた気弱そうな少年がやって来ることに気づかなかった。
「うわああっっ!!」
「わあっ!!」
セネルは前から歩いて来ていたルカともろに正面からぶつかってしまう。
「痛たたたたた・・・・・・」
「ご、ごめんなさい。大丈夫?」
ルカは人にぶつかったことに気づくと、思わず謝る。
「いや、こちらこそ悪かった・・ん?」
「あれ?どうかしたの?」
セネルの様子にルカは怪訝な表情を浮かべる。
セネルはジッとルカのお尻の下を見つめている。
何だと思ってルカが自分のお尻の下を見やると、手紙とラッピングされた包みを押しつぶしてしまっていることに気づいた。
「わわっ!ご、ごめんなさい!?」
慌ててルカは謝る。
だが、既に遅かった。
「お前・・・!!よくも・・・!!」
妹への手紙とプレゼントを踏みつけにされたことで、セネルの理性は完全に吹っ飛ぶ。
「ごめんなさいっ!わざとじゃないよ!!」
「許せるかっ!!幻竜撃!!」
怒り心頭に達したセネルは問答無用でルカに光を纏ったパンチを繰り出す。
「うわああっっ!!」
危険を感じるや、ルカは一目散に逃げ出す。
「待てっ!逃がすか!!」
一方、セネルも怒りの形相を浮かべてルカを追いかけた。
その日、いつものようにアシュトンが礼拝堂の掃除をしていたときだった。
「わあああっ!ごめんなさい~~~~~!!!!!!!」
「ごめんで済むか!?絶対に許さんっっ!!!!」
不意に聞き覚えのある声と見知らぬ声、追いかけるような足音に思わず顔を上げる。
同時にルカが礼拝堂に飛び込んできた。
「ルカ?どうしたのさ?」
「アシュトン!助けてっ!!」
必死になってルカが叫んだところへ、後ろからセネルがガッシリと首根っこを捕まえて引き戻す。
「捕まえたぞ・・・」
「あわわわ・・ご、ごめんなさいっ!ぼ、僕が悪かったからっ!」
「黙れ・・!絶対に許さんと言っているだろう!!」
セネルはそう言うとルカを引っ立てていこうとする。
「ハリケーンスラッシュ!!」
「うわっっ!!」
突然、竜巻が飛んできたかと思うと、セネルは後ろへと吹っ飛ばされる。
「ルカッ!大丈夫!?」
セネルと間合いが離れたところへ、いつの間にか双剣を手にしたアシュトンがルカのもとへ駆けつけた。
「あ、ありがとう、アシュトン」
「別にいいよ。それよりどうしたの?」
「よ、よくわからないんだけど・・あの人怒らせちゃって・・ヒッッ!!」
ルカは猛烈な殺気に震え、アシュトンは双剣を構えてセネルと対峙する。
「おい!そいつを渡せ!!」
「そうは・・いかないよ!!ルカ!今のうちに!」
「え・・?でも・・」
「ルカが捕まったら意味が無いじゃないか!僕が食いとめてるうちに皆を呼んできて!!」
「わ、わかった!!」
ルカはそういうと礼拝堂から逃げ出す。
「逃がすか!!」
追おうとするセネルに対し、アシュトンが立ちはだかる。
「行かせないよ!」
「なら・・お前も倒す!!」
そう叫ぶと、セネルはアシュトン目がけて突進した。
「おかしいなぁ・・・。全然帰ってこないなぁ・・・」
「ったく・・何してやがんだよ?」
スタンとチェスターはセネルが戻って来ないことに不審を覚える。
「どうしたんだ?二人とも?」
ロイドと一緒にたまたま通りかかったキールが、二人の様子に怪訝な表情を浮かべる。
「二人ともセネルを見なかったかい?」
「いや、見てないな」
「あれ?帰って来たんじゃないのかよ?」
スタンの問いにロイドは怪訝な表情を浮かべる。
「妹さんへの手紙を出しに行くって言ったきり帰って来ないんだよ。寄り道なんてするような子じゃないんだけどなぁ・・・・」
「なるほど。そうだとすると何かあったのかもな」
スタンの言葉からキールがそう言った時だった。
「皆っ!大変だよッッ!!」
突然、ルカがギルド会館に駆け込んで来た。
「どうしたんだ?そんな慌てて?」
ルカの只ならぬ様子にキールが怪訝そうに尋ねる。
「すぐ皆で教会に来て!凄く怖い人が教会に来てアシュトンと戦ってるんだ!!」
「「何だって!」」
ロイドとスタンはルカの言葉を聞くなり、一目散に飛び出す。
「おいっ!考えなしに飛び出すんじゃない!!」
「ったく・・!相変わらずの直情直球野郎だな!!」
教会に向かって飛び出したロイド達を追いかけ、キールとチェスターも後を追って走り出した。
「それでルカ、どんな奴なんだよ?教会にやって来た奴ってのは?」
ロイドの問いに走りながらルカは答える。
「え・・ええと・・。確か・・銀髪の人で・・」
「銀髪?あのアシュトンと同居してるルシフェルとかいう奴かよ?」
「そんなわけないだろう。あの男だったらルカがこんなに慌てたりしないはずだ」
ロイドの言葉をキールがそう否定する。
「うん・・。知らない人だった・・。あ・・!そういえば・・顔に・・十字型のアザが・・」
「十字型のアザ!?もしかして右の方にないかい?」
「それで細っこくて格闘家タイプじゃねーか?」
ルカの言葉にチェスターとスタンが反応する。
「う、うん。何で知ってるの?」
「悪い、ソイツ俺の連れだわ」
「え?ど、どういうこと?」
「そういえばルカはまだ会ってなかったんだっけ。実はチェスターと一緒にもう一人移籍してきたんだ。それがセネル・クーリッジ、多分教会に乗りこんで来たのはセネルだよ。でも・・どうして・・・」
「じ・・実は・・僕が怒らせちゃったんだ・・。持ってた手紙と・・プレゼントらしい包みを・・尻もちついた時に潰しちゃって・・・」
「それかよ・・。ったく・・あのバカ!!」
チェスターは呆れたように言う。
「え?ど、どういうことなの?」
「ええ、セネルは何ていうか・・シスコンだっけ?そういう子なんだよ。妹さんに出そうとしてた手紙踏みつけにされて怒ったんだよ、きっと」
「あっ!教会が見えてきたぜ!!」
ロイドの言葉に、皆はさらに足を速めた。
教会に駆けつけると、礼拝堂内で二人が戦っていた。
礼拝堂はひどい有様で長椅子は壊れたり倒れたりしており、壁や祭壇にも傷が付いている。
「く・・!!」
アシュトンは必死に防御するが、セネルは格闘家であることを生かし、手数の多さを武器に攻め立てる。
「クソッ!ありゃヤバいぜ!!」
ロイドは防戦一方のアシュトンに焦る。
アシュトンは確かに強い。
だが、それも攻撃を繰り出せなければどうにもならない。
間合いを取って体勢を立て直そうとするが、セネルがそれを許すわけも無く、高い敏捷性を生かしてあっという間に間合いを詰め、間髪いれずに機関銃のように攻撃を繰り出してくる。
これでは一方的に攻め立てられてしまう。
いずれはやられてしまうだろう。
実際、皆が見ているのを尻目に、ガードブレイクさせられ、剛招来でダウンさせられる。
そこへセネルが倒れたアシュトンを掴んだ。
「巨岩裂落撃!!」
セネルは思い切りアシュトンを地面に叩きつける。
「ぐっっ!!」
まともに地面に叩きつけられ、さすがのアシュトンも苦痛に顔を歪める。
「とどめだ!!」
そこへセネルがさらに追い打ちをしようとしたときだった。
「魔神剣!」
「大牙!」
背後からスタンが衝撃波を、チェスターが渾身の力を込めた矢をセネルめがけて放つ。
「誰だっ!ってスタン!チェスター!?」
攻撃を背後から喰らい、思わず振り返ると、セネルは二人の姿に気づく。
「スタンじゃないだろ、セネル、何てことしてるんだい!」
「この馬鹿っ!頭冷やしやがれ!!よく見てみろ!!」
チェスターはセネルの頭を掴むと、グイッと周りを見回させる。
「な・・・!?」
冷静になったセネルは滅茶苦茶になった教会、そしてもろに投げ技を食らわされたアシュトンに、ようやく気がついた。
「す、すまんっ!大丈夫か!?」
慌ててセネルはアシュトンを助け起こす。
「とにかく医者を呼ぼう!」
スタンの言葉に皆で頷くと、急いで寝室へアシュトンを連れてゆき、ロイドとチェスターがボーマンの診療所へ走った。
「だ・・大丈夫なの?」
ルカは診察をしているボーマンに、おずおずと尋ねる。
「ああ、あっちこっち打撲とかはしてるけどな。命に別条は無いし、障害が残ることも無いな」
その言葉に全員が安堵の息をつく。
「まぁ取りあえずシップとか出しておくわ。何かおかしいとか思ったらまた来てくれな」
「ありがとうございます」
「んん~、いいってことよ。じゃあ俺はこれでな」
そういうとボーマンは往診鞄を提げて帰ってゆく。
「とにかくよかった・・。大したことなさそうで・・・」
「皆、心配かけてごめんね」
「何言ってるのさ。アシュトンは悪くないよ。それより・・・」
スタンをはじめ、皆の視線が自分に集中し、セネルは居心地の悪さを感じる。
「セネル・・。ダメじゃないか、こんなことしちゃ!」
「ったく・・何やってんだよ!こん馬鹿っ!」
「す・・すまない・・」
縮こまってセネルは謝る。
「すまないじゃないよ、セネル、ちょっと俺達と話しようか?アシュトンさん、悪いけど空いてる部屋貸してもらっていいですか?」
「うん。適当に使ってくれていいよ」
「ありがとうございます、さぁ、行くよ、セネル」
「あ・・あぁ・・・」
スタンに促され、セネルは三人で寝室を後にする。
「セネル・・やっぱり怒られちゃうのかなぁ・・?」
スタン達と共に出て行ったセネルに、ルカは思わず呟く。
「だろなぁ、絶対怒ってるぜ、ありゃあ」
「当然だろうな、どう考えてもセネルが悪いんだからな。それより僕は帰らせてもらうぞ。論文を書かなきゃいけないからな」
「あ!ご、ごめん!僕のせいで引きとめちゃって!ロイド達も帰っていいよ。僕はもう大丈夫だから」
「でもさ、礼拝堂の後片付けとか残ってるだろ?」
「大丈夫だよ。怪我はそんな大したことなさそうだし」
「そうはいかねえって。俺らも手伝うよ。ルカ、キール、手貸してくれよ?」
「う、うん。いいよ。元はといえば僕のせいみたいなものだし」
「ちょっと待て!どうして僕まで手伝わなきゃいけないんだ!?」
勝手に後片付けの助っ人にされ、思わずキールは叫ぶ。
「何言ってんだよ、人手は多い方がいいじゃんかよ。これも人助けだぜ」
「だからって・・」
「キール、もしかして嫌なのかよ?」
困ったように言うロイドに、キールは困ってしまう。
本音としては早く帰って論文に取りかかりたい。
だが、ロイドに困ったような顔をされてしまうのは辛い。
「わ・・わかった・・。手伝えばいいんだろ!」
「ありがとな!」
「勘違いするな!仕方なくだっ!それよりさっさと始めるぞ!!時間を無駄にするんじゃない!!」
そういうと、残りの面々も礼拝堂の後片付けのために出て行った。
同じ頃、来客等を泊める際に用意してある部屋に入ったスタン達は、セネルと向き合う。
「さてと・・セネル・・」
「な・・何だ?」
「何だじゃないよ。自分が悪いことしたのはわかってるかい?」
「あ・・あぁ、すまない・・」
「すまないじゃないよ。セネル、こっちではね、悪いことした子はただ叱るだけじゃないんだ。だから、覚悟してもらうよ」
「うわっ!何をするんだっ!!」
思い切り引っ張られ、体重を崩したと思った瞬間、セネルはベッドの縁に腰を降ろしたスタンの膝の上に載せられていた。
(な・・何だ!?)
突然の事態にセネルは困惑する。
パンッッ!!
「う・・!」
不意をつくように、お尻に痛みが走る。
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
「な・・何だっ!?」
たて続けにお尻を襲う痛みに、セネルは思わず振り返る。
すると、スタンの平手がお尻に叩きつけられるのが見えた。
「スタンッ!何をしてるんだ!?」
「見てわからないかい?お仕置きだよ」
「お・・お仕置き!?何でだ!?」
「ここではね、悪い子はこうやってお仕置きしてるんだ。今日は痛い思いしてもらうよ、セネル」
「冗談じゃない!何でよりにもよって尻叩きなんだ!やめてくれ!!」
抗議するセネルだったが、スタンがそれを許すわけもない。
セネルをしっかりと押さえ、スタンはさらに平手を振り下ろした。
パンッ!パシンッ!パアンッ!パチンッ!パアンッ!
「く・・!やめ・・!やめろ・・!やめてくれ・・!!」
セネルは痛みに顔を顰めながら言う。
「そうはいかないよ。それよりセネル、ダメじゃないか。あんなことしちゃ」
スタンはお尻を叩きながら、いつもカイルにしているように、お説教を始める。
パンッ!パアアンッ!パシンッ!ピシャンッ!
「く・・!う・・!く・・!くぅぅ・・!」
セネルは必死になって声を漏らすまいとする。
(く・・!まさか・・尻叩きが・・こんなに・キツいだなんて・・!!)
ベッドのシーツを両手で掴み、必死に耐えながら、セネルはそう思わずにはいられない。
前衛だから確かに痛みには耐性がある。
にも関わらず、お尻の痛みは少しずつ強くなってきて、耐えるのが辛くなってゆく。
「セネルの気持ちもわかるよ、確かに。大切な人への手紙やプレゼント、確かに踏みつけにされたりしたら怒るよ。俺だって、カイルへの手紙やプレゼントを踏まれたりしたら怒ると思うよ」
パンッ!パシィンッ!ピシャンッ!パアアンッ!
セネルのお尻を叩きながら、スタンはそう言う。
「く・・!あ・・!う・・!あぅ・・!」
セネルはお仕置きを耐えようとするも、意思とは裏腹に口からは苦痛の声が漏れる。
「でも・・だからって、カッとなって追いかけ回したり、止めに入った人にまで暴力を振るうなんて。そんなこと、したらダメだろう?」
「く・・!そ・・そんなこと・・わかってる!!」
セネルは抗議するような口調で言う。
自分が悪いことはわかっている。
しかし、お尻叩きなどというお仕置きに、どうしても素直になりきれなかった。
「わかってるんならどうして冷静になれなかったのさ?ダメじゃないか」
「う・・うるさいなっっ!!イチイチそんなこと言われたくないッッ!!それよりもういい加減にしてくれっっっ!!」
お説教や尻叩きが嫌で、思わずセネルは叫んでしまう。
「セネル・・。それ、本気で言ってるのかい?」
一旦お尻を叩く手を止めてスタンは尋ねる。
「それならどうしたって言うんだっ!俺は子供じゃない!何で尻叩きなんだっ!しかもお説教まで!恥ずかしいなんてものじゃないんだっ!いい加減にしてくれ!俺だって本気で怒るからな!!」
お仕置きに対する不満で、セネルは声を荒げてしまう。
「わかったよ。全然反省してないんだね。それじゃあ・・俺も容赦しないよ」
そういうと、スタンは膝を組む。
おかげで、セネルはお尻を突きあげた体勢になった。
同時に、スタンはセネルのズボンを下着ごと降ろしにかかる。
「うわあっ!何をしてるんだっ!やめてくれっ!おいっっ!!」
予想外の行為にセネルは慌てて叫ぶ。
スタンはそれに構わずセネルのズボンを降ろす。
おかげで、既に少し赤く色づいたセネルのお尻があらわになった。
同時にスタンは右手を振り下ろした。
ビッダァァァ~~~~~ンッッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッッ!!!
「ぐ・・!うわああっっっ!!」
激しい打撃の嵐に、セネルは悲鳴をあげる。
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!!
「ひっ!ひぃぃっ!スタンッ!やめ・・やめてくれっ!俺が悪かったっ!謝るっ!謝るからっっ!!」
お仕置きの苦痛にセネルは必死に叫ぶ。
「ダメだよ、今日はきっちり反省してもらうから。今日は厳しくお仕置きするよ」
「そ・・そんなっっ!!」
絶望の声をセネルがあげるのを尻目に、スタンはお尻を叩き続けた。
「ハァ・・ハァ・・くぅぅ・・・」
スタンの膝の上でセネルはぐったりしていた。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染め上がっており、触ると火傷しそうなくらい熱くなっている。
「セネル・・・反省したかい?」
一旦お尻を叩く手を止めて、スタンは尋ねる。
「あ・・あぁ・・。す・・すまない・・。俺のせいで・・迷惑をかけた・・・」
「それだけじゃないだろう?セネル、俺もチェスターも帰りが遅くて心配したんだよ?」
「う・・。わ・・悪かった・・。スタン・・チェスター・・心配かけた・・・」
「わかってくれたみたいだね、それじゃあ、終わりだよ」
「う・・!く!」
「だ、大丈夫かい?し、沁みたかな?」
苦しそうな声を漏らしたセネルにスタンは慌てる。
「いや、大丈夫だ。だが・・・」
「どうかしたかい?」
「いや、まさか・・この年になって尻叩きなんてな・・・。何か・・情けないような・・・」
「だったらもうバカなことしなきゃいーんだよ。当たり前のことだろが?」
セネルの言葉にチェスターがそう言う。
「そ・・それは・・わかってる・・・」
「本当かよ?お前、前のギルドでもしょっちゅう妹絡みで暴走してたからな」
「そ、それはチェスターだって似たようなものだろう!」
「お前ほどじゃねーって!」
「まぁまぁ、二人とも落ちついて」
言い争いになりそうな二人をスタンが宥める。
「わ、悪い。つい・・・」
「お・・俺も・・すまなかった」
「わかってくれればいいよ。でもセネル、あまり気にしなくていいよ。セネルみたいにお尻ぶたれてお仕置きされてる子、ここはたくさんいるからさ」
「マジかよ、おい?」
「ああ。カイルは勿論、ルカやイリア、レオンやジーニアスだってそうだよ。それにキールやアシュトンさんも実はお尻叩かれてるし、ルークも時々ガイとかに怒られてるからさ」
「そうだったのか・・。それは・・知らなかったな・・」
初めて知る事実に、セネルは目を丸くする。
「よし、終わりと。あっ!そうだ!」
薬を塗り終えると、スタンは突然セネルを抱っこする。
「うわっ!スタンッ!何をやってるんだ!っていうかどこを触ってる!?」
抱っこされた上にお尻を撫でられ、思わずセネルはビックリする。
「あ、あれ?嫌だった?いや、こうしないとお仕置きした後カイル、凄く機嫌が悪くなるからさぁ」
「俺はカイルじゃない・・・・」
「ごめんごめん、いつもの癖でさ。カイルをお仕置きした後は大変なんだよ。抱っこしてお尻撫でてあげたり、一緒に風呂も入って寝るのも一緒じゃないと凄く機嫌悪くてさぁ」
「おぃおぃ、そいつは甘やかしすぎじゃねーのか!?」
さすがにチェスターが突っ込みを入れる。
「いやぁ、リオンにも前そう言われちゃったんだけど・・どうしてもカイルには甘くなっちゃってさ・・。厳しくしないととは思ってるんだけど・・・」
(チェスター・・俺もシャーリィ絡みでは大概だろうが・・スタンも・・)
(ああ。大したムスコンだよな)
スタンの態度に顔を見合せながら、チェスターとセネルはそんなひそひそ話を交わしていた。
―完―
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