ペアリング騒動(SO2&テイルズより:ルシ・ロイ/アシュ・キール、共演パロ、BL)
(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにしたSO2&テイルズ共演パロです。許容出来る方のみご覧下さい)
「ん?どうしたのだ?アシュトン?」
買い出しに付き合っていたルシフェルは、アシュトンがショーウィンドーの前で足を止めたことに気づき、思わず声をかける。
「あ、うん。ちょっと・・これをね・・・」
そう言ってアシュトンが指差したのは、カップル用のペアリング。
「ほほぅ、中々よさそうなペアリングではないか」
「うん・・。でも・・・」
値札を見ると、アシュトンはため息をつく。
とても払える額では無いからだ。
「欲しいのか?ならば私が・・・」
「いいよ、そこまでしてもらわなくて」
「だが・・・」
「僕のワガママで君にこんな大金払わせるわけにはいかないよ。その気持ちだけで嬉しいから・・・」
「アシュトン~~~!!!」
アシュトンの言葉にルシフェルは感激のあまり、思い切り抱きしめる。
「わわっ!ちょっと!苦しいって!?」
「す、すまなかった。だ、大丈夫か?」
「うん。それより遅くなっちゃうから早く帰ろうよ」
「そ、そうだな」
二人はそう言うと、家路を急いでその場を立ち去った。
それからしばらく経った頃、今度はロイドとキールが同じ場所を通りかかる。
「いやぁ、助かったぜ、キール」
「そうは言ってもよぉ、報告書とか苦手なんだよ。まだ期限あるから大丈夫かなって・・」
「そういうのがいけないんだ!そうやって先送りするから、後で慌てて他人に泣きつくことになるんだからな!わかってるのか!?」
「ご、ゴメンって!」
キールの剣幕にロイドは必死に謝る。
完了したクエストに関する報告書を今日中に提出しなければならず、頭脳労働が苦手なため、キールに手伝ってもらい、提出した帰りなのである。
「ゴメンじゃない!おかげで僕の方はまた論文が遅れるんだからな!」
「だから本当に悪かったって!反省してるぜ!」
拝むようにして必死に謝るロイドに、キールも少し表情が和らぐ。
「しかたないな。今回だけは大目に見てやる。でも次からはちゃんと自分でやるんだぞ」
「わかってるって」
「本当だろうな・・・。どうしたんだ?」
「あ、なぁ、ちょっと後ろの見てくれよ」
「何だ?一体?」
すると、キールはアシュトンが見つけたのと同じペアリングを見つける。
「ペアリングじゃないか。どうしたんだ?こんなのが?」
「いやぁ、結構イイなぁって思うんだけどよ」
「まぁ・・悪くはないな。デザインも品質も。高すぎるのは問題だけどな」
「だろ?だからさ、二人でつけてみたらいいんじゃないかって思ってよ」
「!!!!!」
ロイドの言葉に、キールは思わず顔を赤くする。
「あれ?顔が赤いぜ?」
「な、何でもないっ!」
「え?でもよ・・・」
「何でもないと言ってるだろう!それより早く帰るぞ!」
「あっ!待ってくれって!?」
急ぎ足で歩きだしたキールをロイドは慌てて追いかけた。
(ああは・・・言ったけど・・・)
教会へ帰っていたアシュトンはペアリングを思い出してため息をついていた。
ルシフェルに自腹を切らせるような真似をしたくなくて、ついああ言ったが、やはり愛しい相手とお揃いのものを身につけたい。
(でも・・・ルシフェルにあんなに高いお金払わせちゃうのも・・僕のワガママみたいなものだし・・・・)
魔界のナンバー2であるルシフェルのことだ、あれくらいの額は大したことは無いのかもしれない。
しかし、アシュトンにしてみればあんな大金を自分の個人的な、ワガママといってもいいような望みのためにルシフェルに払わせるなど、申し訳なくてたまらなかった。
(でも・・やっぱり欲しいなぁ・・・。そうだ・・!なら自分で稼げばいいんだ!!)
アシュトンはその考えに思い至る。
(ここしばらく教会の方は行事とかは無いはずだし・・・。ギルドで幾つかクエストを受ければお金も出来るよね。よし!頑張るぞ!!)
アシュトンは考えを纏めると、そう自身に呼びかけた。
同じ頃・・・。
「全く・・・何を言い出すかと思ったら・・・」
アパートに戻ると、キールは呆れたように呟く。
(男同士でペアリング!?何だってわざわざ恥ずかしいことしなきゃならないんだ!?)
ロイドのデリカシーの無さや迂闊さに、キールは呆れ、憤慨したくなる。
(本当にどうしてああも恥ずかしいことを平気で言いだせるんだ。恥というのを知らないのか?)
ジュエリーショップでのロイドとのやり取りに、そう思わずにはいられない。
(だが・・ああいうことを言うってことは・・・もしかして僕とお揃いのをつけたい・・そう思っているのか?)
ロイドの言葉に、ふとキールはそんな想像をする。
(まさかな・・・。あのロイドが・・でも・・・)
単なる天然振りからの言動だろうと思いつつ、本当に自分とペアリングをつけたがっているのかもしれない。
その可能性を否定できない自分にキールは気づく。
(なにを考えてるんだ!?そんなことより論文を進めたらどうなんだ!?)
キールは自身をそう叱咤すると、論文に取りかかろうとする。
だが、ペアリングとロイドの言葉が頭から離れようとしない。
「く・・・!!ああもうっ!!」
書きかけの論文用紙を投げ捨てると、キールは苛立たしげな表情を浮かべた。
それからしばらく経ったある日・・・・。
「く・・・!!」
苛立ちを隠せない表情で、キールはジュエリーショップの前に立っていた。
(仕方なく・・!仕方なくなんだからな!べ、別にロイドが欲しがってるかもだから・・なんていう理由じゃないからな!気になって、落ち着かなくてたまらないから仕方なくなんだからな!!)
キールは自身にそんなことを言い聞かせながら、店へ入ってゆく。
店内に入るや、例のペアリングが置かれている棚に真っ直ぐ向かってゆく。
目当ての品にたどり着き、商品を手に取ろうとしたときだった。
不意に横から別の手が伸び、同じ商品を手に取った。
「おい!何を・・・ってアシュトン?」
「あれ?キール?どうしたの?」
「べ、別にどうだっていいだろう!それより・・それを渡してくれ!」
「え・・。そ・・それは・・僕が買うつもりだし・・」
(何!?まさか・・・)
キールは愕然とする。
まさか他にもペアリングを買おうとする人間がいようとは思わなかったからだ。
「あれ?もしかしてこれを買うつもりだったの?」
「そ、そそそんなわけないだろう!」
(しまった!何を言ってるんだ!?)
意思とは裏腹に口から出た言葉に、キールは後悔する。
こんなことを言ってしまったらアシュトンに譲らなければいけない。
だが、譲るわけにはいかなかった。
「よかった。それじゃあ・・・」
「いや。今欲しくなった。僕に渡してもらおうか」
「ええ?いきなりそんなこと言わないでよ。僕だって困るよ」
「そんなこと僕には関係ない。さぁ!渡してくれ!」
「そうは・・いかないよ。これだけは・・・」
「そうか・・なら仕方ないな。ファイアボールッッ!!」
あらかじめ詠唱しておいたのか、キールはいきなり火球をぶっ放す。
「うわっ!何するのさ!?」
「うるさい!大人しくそれを渡すんだ!」
「そうは・・いかないよ!」
アシュトンもキールに奪われてなるものかと、腰につけていたポーチから愛用の双剣を取り出した。
ちなみにこのポーチはルシフェルが魔術を利用して造った特別なもの。
小さなポーチにも関わらず、魔力によって双剣を入れることが可能な、さながら某ネコ型ロボットの四次元ポケットさながらの便利な品物だった。
暴漢や変質者に襲われた時でも身を守れるようにと、こういうアイテムをつくったのである。
これならば神父の姿でも、違和感なく愛用の双剣を身につけていられる、というわけだった。
「そっちがそうなら・・こっちも容赦しないぞ!エアスラスト!」
「ハリケーンスラッシュ!」
「うわあっ!お客さんっ!やめてぇぇ~~~~!!!!」
店の主が騒ぎに気づき、悲痛な声を上げるも、二人には届かない。
すっかり頭に血が上ってしまった二人は、棚や商品には構わず、店内で乱闘を始めた。
「お二人とも・・・。困ったことをしてくれましたね・・・」
「す・・すみません・・・」
「す・・すまなかった・・・」
ため息をつくナールに、アシュトンもキールもシュンとして謝る。
あの後、通報を受けたクロードやガイ達により御用となり、先ほどまで司令部で事情聴取を受けてきたところだった。
警察から解放されたものの、その後はギルドの主であるナールからお説教というわけである。
「宝石店からの賠償等についてはこちらで立て替えておきました。その分、今後の報酬から引かせていただきます。いいですね?」
「は・・はい・・。すみません・・・」
「・・・・・」
アシュトンはひたすら謝り、キールは気まずさに黙りこくっている。
「私からはここまでです。ですが・・・二度とこのようなことはしないで下さい。よろしいですね?」
「は・・はい・・」
「そんなの・・わかってる・・・」
二人はそれぞれそう言うと、ようやく解放され、会長室を後にした。
二人が会長室から出たかと思うと、ルシフェルとロイドが待っていた。
「ル・・ルシフェル・・・」
「ロイド・・・・」
明らかに怒っている様子に、二人とも緊張した声になる。
「アシュトン・・・話がある・・・」
「キール・・ちょっといいかよ?」
逃げられるわけも無く、二人とも諦めたようにため息をつくと、それぞれの恋人について別々のゲストルームへと入っていった。
「この・・馬鹿者があっっ!!」
「ご・・ごめんなさい!」
部屋に入るなり怒鳴られ、アシュトンは思わず縮こまる。
「ごめんなさいではないわ!店で喧嘩した挙句に商品やら棚やら壊して警察行きだと!?何を考えているのだ!」
「うぅ・・・・・」
思い切り怒られ、アシュトンはシュンとしてしまう。
「こんなことをした以上・・・覚悟はよいな?」
そう言いながら、ルシフェルはいつものようにアシュトンを膝の上に載せると、お尻をむき出しにする。
同時に膝を組んでお尻を突き上げるような体勢を取らされ、さらにパドルを手に取った。
(ひぃぃ・・・!相当・・怒ってる・・)
お仕置きが凄く痛く感じる体勢、最初からパドル、その行為にアシュトンはルシフェルの怒りを想像し、顔から血の気が引く。
そんなアシュトンを尻目にルシフェルは右手でアシュトンの背中を押さえると、パドルを手にした左手を振り上げた。
バアッシィィィ~~~~~ンッッッッッッ!!!!!
「うっわあああああっっっっ!!!!」
最初から容赦のないパドル打ちにアシュトンは悲鳴を上げる。
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッ!!!!!!
「ひんっ!ひぃぃぃーーーっっっ!!うぐっ!ひぎっ!ひぃぃーーーっっっ!!」
容赦のないパドル打ちに、まだ始まったばかりだというのに、アシュトンは悲鳴を上げてしまう。
バアッシィィィ~~~~ンッッッッッッ!!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!
「ひんっ!うわあああっ!うぐっ!いたあああっ!痛ぁああいいっっ!!」
とても耐えきれず、アシュトンはベッドのシーツを両手で握りしめ、両脚をバタつかせる。
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッ!!!!
「うわあっ!ひいっ!ぎっひいっ!痛っ!痛あああっっっ!!ひぃんっ!ぐうっ!ぎっひぃぃっっ!!」
パドルの嵐にお尻はあっという間に真っ赤に染め上がり、目には涙が浮かぶ。
両脚は水泳選手顔負けの勢いで激しく動き、腕や肩もブルブルと震えていた。
「ひんっ!うわああっ!いたあああっ!痛いっ!痛いよっ!ルシフェルぅぅぅ!!」
「当たり前だっ!お仕置きなのだぞ!それより・・・何をしているのだ!?喧嘩などしおって!!」
「ひぃん・・!ごめんなさい・・。あ・・あの・・ペアリングが・・・どうしても・・欲しかったんだよぉぉ・・・。君に・・プレゼント・・したかったからぁ・・」
「そのペアリングのためにあんな騒ぎを起こしてどうする!!」
「ひぃぃん・・・。ごめんなさぁぁい・・・。反省・してる・・からぁぁ・・・」
アシュトンは泣きじゃくりながら必死に謝る。
「馬鹿者!反省するのも当たり前だろう!あんな騒ぎを起こして・・どれほど私が心配したと思っている!?」
そういうと、ルシフェルはパドルを手放し、アシュトンを抱き降ろしたかと思うと、床に両膝をついて座らせる。
そしてベッドに両肘をついてうつ伏せにさせた。
「な・・何を・・・。ひいっっ!!」
パドルの代わりに長い鞭を取ったルシフェルに、アシュトンはギクリとする。
「ま・・・まさか・・・・」
「決まっているだろう。散々心配かけるような真似をしおって。これで厳しく叱ってやる」
そう言うと、ルシフェルは右手でアシュトンの腰を押さえ、左手の一本鞭を振り上げた。
ビッシャアアアアンッッッ!!!
ビシィィィィィィッッッ!!!
バアッジィィィィンッッッ!!!
「ひぃぃぃっっっ!!ぎっひぃぃぃ!!!ひっぎゃああああ!!!」
耳を塞ぎたくなるような鋭い音と共に、既に真っ赤なお尻に大きな蚯蚓腫れが刻み込まれる。
ビッシャアアアアンッッッ!!!
ビシィィィィィィッッッ!!!
バアッジィィィィンッッッ!!!
「馬鹿者がぁぁ!迷惑や心配をかけるようなそんな悪い子に育てた覚えは無いぞ?アシュトン!」
(僕だって君に育てられた覚えなんかないよ~~~!!)
そう言いたくなったが、そんなことをいえばますます怒られる。
だから、必死になって謝るしかなかった。
「ひっく・・!ごめっ・・くっ!いたあああっ!!ゆるし・・うわあああっっ!!」
一打ごとにアシュトンの全身が震え、ベッドのシーツを掴む両手に力が入る。
「やめてぇぇぇ!!ごめんな・・ひぃぃい!!お願いだか・・ひぃぃ!!やめてぇぇ!!ごめんな・・さぁぁい!!!やめてぇぇぇ!!!」
「許さんっ!許さん許さん許さんっ!この程度ではまだまだ許さんからな~~~!!!!!!」
必死に許しを乞うアシュトンだったが、激怒モードに入っているルシフェルは容赦なく鞭を振るい続ける。
その後、長い間鞭の音とアシュトンの悲鳴がゲストルームに響きわたった。
アシュトンのお仕置きが始まったのと同じ頃、キールも別の部屋でロイドと向き合っていた。
「キール・・・」
「な・・何だ・・?」
平静を装いつつ、キールはロイドに問いかける。
「何だじゃねえだろ!何やってるんだよ!アシュトンと喧嘩だなんて!」
「う・・うるさいなぁ・・。関係ないだろう!」
咎めるようなロイドの口調に、キールは思わずそんな態度を取ってしまう。
「関係無いじゃないだろ!皆に迷惑とか心配かけてよ!悪いと思ってないのかよ!?」
(そんなわけ・・ないだろう・・)
心の中ではそう思う。
だが、それを素直に口に出したくは無かった。
「う・・うるさいって言ってるだろ!余計なお節介はやめてくれ!!」
(だから・・どうして・・・)
謝るどころか反抗的なことを言う自身に、キールは呆れたくなる。
「キール・・それ本気で言ってるのかよ?」
キールの態度に、さすがにロイドの表情も険しくなる。
「だったらどうなんだ?」
(馬鹿ッ!何をしてるんだ!?)
言葉とは裏腹に、キールは慌てる。
こんなことを言えば、人のよいロイドでも怒るに違いない。
「全然・・反省してねえんだな・・。なら・・俺も容赦しないからな!!」
ロイドはそういうと、キールの手首を掴み、思い切り引っ張る。
「な・・何をするんだっ!?」
抗議するキールだったが、ロイドはそれを無視してルーム内のテーブルまで引っ立ててゆく。
「キール・・・そこのテーブルに手ついてお尻出せよ」
「そ・・そんなこと・・」
「キール・・?」
出来るわけないだろう、と言いかけたところに、ロイドにもの凄い目で睨みつけられる。
その気迫に逆らえず、やむなくキールはテーブルに手をついてお尻を突き出す体勢を取る。
キールが言う通りにすると、ロイドは片手で背中を押さえ、もう一方の手でお尻をあらわにする。
「くぅ・・・!!」
お尻に感じる外気に、キールは羞恥心と屈辱感で顔を赤くする。
そんなキールを尻目に、ロイドはゆっくりと左手を振り上げた。
バシィィィッッッ!!
「く・・・!」
(馬鹿っ!みっともないだろう!声なんか出すんじゃない!)
思わず声を出してしまった自分を、キールは叱咤する。
パンッ!パシィンッ!パアンッ!パチンッ!ピシャンッ!
必死に声を押し殺し、キールは平手打ちを耐えようとする。
それだけに、より苦しげな表情を浮かべていた。
パアンッ!パチィンッ!ピシャンッ!パアアンッ!
「ったく、何やってんだよ!」
キールのお尻を叩きながら、ロイドは叫ぶように言う。
「そ・・そんな声・・出すな・・く・・!聞こえてるよ・・うく・・!」
大きな声でお説教を始めようとするロイドに、キールは痛みに顔を歪めつつそう言いやる。
パアシィンッ!ピシャンッ!パアアンッ!パシィンッ!
「聞こえてるよじゃねえだろ!アシュトンと喧嘩なんかした上に店滅茶苦茶にしたっていうじゃんかよ!何てことしてんだよ!!」
「く・・・!」
(そんなこと・・言われなくたって・・わかってるよ・・!!)
そう言いたくなるが、それを必死に堪える。
ピシャンッ!パアシィンッ!パチィンッ!パアアンッ!パシィンッ!
「う・・く・・ぅ・・ぁ・・くぁ・・」
(馬鹿!みっともないのがわからないのか!?)
無意識のうちに声を漏らす自身をキールは叱咤する。
だが、身体は正直なのだろう、耐えようとしても声が出てしまう。
パアアンッ!パシィンッ!パチィンッ!ピシャンッ!パアアンッ!パシィンッ!
「う・・くぅ・・あっ・・くぁ・・くぅ・・くっうぅ・・・!」
肌を打つ音とキールの呻き声が漏れるたび、お尻に赤みが増してゆく。
「喧嘩して・・・店壊して・・・それで皆にどれだけ心配とか迷惑かけたと思ってんだよ!」
「い・・言わないで・・くれ!!ぼ・・僕だって・・恥ずかしいんだ!くっ!」
平手打ちの痛みに、キールは顔を顰めながらそう言う。
ピシャンッ!パアアンッ!パチィンッ!ピシャンッ!パアシィンッ!
「ロイド・・!も・・もう・・やめろっ!やめてくれっ!」
「何言ってんだよ。キールが悪い子だったからお仕置きされてんだろ?それより・・・何だってあんなことしたんだよ!」
お尻を叩きながら、ロイドは尋ねる。
「そ・・それは・・」
ロイドの問いにキールの声がしぼむ。
ペアリングを買ってプレゼントしようとしただなんて恥ずかしくて言えない。
また、そういう理由で喧嘩をしたというのも、恥ずかしくて言えないことだった。
「い・・言いたくない・・!」
「何言ってんだよ!キールが喧嘩したとか聞いて驚いたんだからな!どれだけ心配したかわかってんかよ!?」
「う・・うるさいなぁ!そっちが勝手にしたんだろう!僕のせいじゃないっ!?」
(馬鹿・・。どうしてそういうことを・・・)
素直に謝れず、逆に暴言を言う自分に、キールは呆れたくなる。
「キール・・。本気で言ってんのかよ?」
さすがに怒ったのだろう、ロイドの声が心なしか低くなる。
謝らないと、そう思うが、持ち前のプライドや意地がそれを邪魔する。
「だ・・だったら何だっていうんだ!いい加減にしてくれ!僕は子供じゃない!お尻なんか叩かないでくれ!こっちだって本気で怒るからな!」
「ふざけんなっっ!!」
バアッジィィィィ~~~~~~~ンッッッッッッ!!!!
「ぐっ・・うぅぅううう・・!!」
渾身の怒りを込めた一撃に、さすがのキールも表情を歪める。
「こっちが・・どれだけ・・心配したかって・・!それなのに・・!絶対に許さねえからなっっっ!!」
本気の怒りモードになるや、ロイドはさらに勢いよく平手を振り下ろした。
ビッダァァァァァ~~~~~~ンッッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~!!!!!!!
「うっ!うぐっ!うわっ!くあああっ!ひっ!ひぐぅぅぅ!!!」
お尻に猛烈な平手の嵐を浴びせられ、キールは悲鳴を上げる。
とても堪えきれず、無意識に赤いお尻が左右に揺れる。
ビッダァァァァ~~~~~~ンッッッッッッ!!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~ッッッ!!!
「くぅっ!痛っ!痛ぁぁぁ!ロイドッ!やめ・・やめてくれっ!ぼ・・僕が・・悪か・・っ・・くぅぅぅ!!」
「何言ってんだよ!反省もしねーで逆ギレなんかしてよ!そんな悪い子・・キールでも絶対に許さねえからなっっ!!」
「そ・・そんな・・!ぐああ!!」
本気で怒ったロイドにキールが絶望の声を漏らす。
その後、激しい平手の音が部屋に響きわたった。
「ひぃん・・ひぃぃん・・うえっ・・ひぃぃん・・・・」
ベッドの上でアシュトンは泣きじゃくっていた。
鞭でたっぷりとお仕置きされたお尻はワインレッドどころでは無い色に染め上がっている。
「反省したか?」
一旦鞭を止めてルシフェルは尋ねる。
「ひぃん・・した・・したよぉぉ・・・。迷惑かけて・・・心配かけてぇぇ・・・ごめん・なさい・・・・・」
「わかっているようだな・・。だが・・・」
一旦言葉を切ると、ルシフェルは再び鞭を叩きつける。
「ひ・・ひぃぃぃーーーーっっっっっっ!!!!!」
油断していたところへ叩かれ、アシュトンは絶叫に近い悲鳴を上げる。
「もし・・またこんなことをしおったら・・・一か月毎日平手・パドル・鞭で100回ずつ叩くぞ。よいな!?」
「は・・はぃぃぃ!!二度としませんっっ!!!」
アシュトンが叫ぶように言うと、今度こそ本当にルシフェルは鞭を手放した。
「うぅ・・。ぐっす・・・。ひぃん・・。うっう・・。ぐす・・」
一方、キールも真紅に染め上がったお尻を出したまま、泣いていた。
「キール・・・まだ・・強情を張るんなら・・コレ使うぜ?」
ロイドはそういうと、鞘に入れたまま剣を腰から外して見せる。
それを見ると、キールはギョッとする。
以前鞘ごとの剣で叩かれ、血が滲んでしまうほど叩かれたことがあるからだ。
「わ・・わかった!!言うっ!話すからっ!も、もう許してくれ!?」
「やっと言ってくれたかよ・・・」
ようやく話してくれる気になったキールに、ロイドは安堵の息をついて剣を降ろす。
「で?どうしてあんなことしたんだよ?」
「い・・今話すって言ってるだろう!急かさないでくれ!」
キールはそういうと、口を開く。
「あの・・ペアリングさ・・」
「ペアリング?」
「この前たまたま二人で見かけただろう!忘れたのか!?」
「ああ!あれか。ゴメンゴメン、怒るなって」
(ロイドのせいだろう・・・)
そう言いたくなるが、それを堪えて言葉を続ける。
「そのペアリングを・・・買おうと思ったんだ・・。そうしたら・・アシュトンも・・同じのを・・。それで・・喧嘩になって・・」
「そうだったのかよ。でも・・何で買おうなんて思ったんだ?」
「ロイドのせいじゃないか!ロイドが色々言うから・・僕とつけたいのか、そう思ったんだぞ!」
「え?じゃ、じゃあ俺のせいかよ?」
「気づかなかったのか!?・・ったく・・!!」
ロイドの言葉にキールは呆れ顔にならずにはいられなかった。
「うぅ・・」
「大丈夫か?アシュトン?」
ソファにうつ伏せになったアシュトンのお尻に薬を塗ってやりながら、ルシフェルは尋ねる。
「な・・何とか・・。それより・・・心配させてゴメンね」
「いいのだ。私にプレゼントをしたかったのだろう?その気持ちだけで嬉しいぞ・・」
キールと喧嘩をしてでも、自分にペアリングをプレゼントしたかったということを聞き、ルシフェルは優しい笑みを浮かべる。
だが、次の瞬間、ガラリと表情が変わる。
「しかし・・あのツンツン学士め・・・。あやつがいなければ・・・」
「ちょ、ちょっと!ルシフェルッ!ダメだよっ!キールは悪くないよっ!欲出してキールと喧嘩しちゃった僕が悪いんだからっ!!」
キールのところに乗りこんでしまいそうな雰囲気に、アシュトンは慌てて止めにかかる。
「む・・。仕方ない・・。アシュトンがそういうなら・・・今回だけは見逃してやろう・・あの学士は・・・」
渋々といった感じでルシフェルがそう言うと、アシュトンはホッとする。
「だが・・アシュトン・・。もうこういうことは頼むからやめてくれ。例え私のためでも・・・お前が他人と争ったり、警察沙汰になるようなことは・・悲しいからな」
「うん・・。ごめんね・・」
「わかってくれればいいのだ。ん・・・?」
薬を塗りながら、ルシフェルはいつの間にかアシュトンが寝てしまったことに気づく。
(あれだけ叩けば疲れも出るか・・。無理も無い・・・)
心の中でそう呟くと、ルシフェルはシーツをかけてやり、そのまま見守っていた。
「く・・・!」
「悪い、大丈夫かよ?」
「これくらい・・何でも・・くぅぅ!!」
薬を塗りながら心配そうに尋ねるロイドに、キールがそう返す。
だが、やはり辛いのだろう、キールは表情を歪める。
「やっぱり辛そうじゃんかよ。キール、無理はダメだって」
「元はと言えば・・ロイドのせいだろう・・くぅぅ・・!」
「それは悪かったって。でもよ、ありがとうな」
「何だ?いきなり?」
「だって俺のためにプレゼントしようとしてくれたんだろ?嬉しいぜ」
「な・・・!!」
ロイドの言葉に、キールは顔を赤くする。
「か、勘違いするなッ!べ、別にロイドのためじゃ・・!!」
「あ、薬足りねえかな?ちょっと取ってくるな」
そう言って予備の薬を取りに行こうとするが、背後からキールが止める。
「どこへ行くんだ?」
「へ?薬を・・・」
「何を言ってるんだ!僕にこんなことした以上、責任とって傍にいないと承知しないからな!」
「わかったって」
ロイドはそういうと、キールの傍に座り、キールを自分の膝の上に載せる。
「これでいいかよ?」
「ふん・・。まぁいいだろう。じゃあ僕は寝るからな。僕が起きるまでちゃんといなかったら怒るからな!」
そういうと、キールはロイドの膝の上で眠りだした。
―完―
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