ハーモニカの獅子(『ウェスタン』より、バイオレンスあり)



(セルジオ・レオーネ監督、チャールズ・ブロンソン主演の『ウェスタン』を題材にした二次創作的作品です。バイオレンス描写もあります。許容出来る方のみご覧下さい)


 1860年代末~1870年代と思しき頃、アリゾナ州の某所・・・。
『ハーモニカ』は馬を進めながら、丘の下に視線を向ける。
丘の下では、労働者達が一丸となり、線路の敷設作業に当たっていた。
やがて、家から美しい女性が食料や酒を持って出てくる。
労働者たちは作業を中断し、女性を取り囲み、彼女の振舞うパンや酒を食べ出した。
 (この街は伸びる・・きっとやれる、アンタならな・・・)
『ハーモニカ』は心の中で女性ことジルにエールを送る。
ジルは都会から、今まさに鉄道を敷設中の土地の主、マクベインに嫁いできた。
しかし、彼女がこの地の駅に降り立った時、既に夫は無くなっていた。
この土地を狙う鉄道王モートンの差し金により、手下の殺し屋一味によって家族全員虐殺されたのだ。
 だが、ジルは打ちのめされること無く、亡き夫の遺志を受け継ぎ、この西部の地で生きてゆくことを決意した。
そんな彼女に山賊のシャイアンと共に力を貸し、『ハーモニカ』は黒幕のモートン、己の兄の仇でもあった殺し屋フランクを葬り去った。
そして、彼女は今ついに夫の夢であった鉄道敷設を実現させつつある。
恐ろしい殺し屋一味にも屈せず、見事夫の遺志を実現させた彼女だ。
この強い心で、この荒野に街を作りあげ、見事に大きくしてゆくに違いない。
 (だが・・俺には関係ない・・・)
眼下のジルを心から祝福しつつ、『ハーモニカ』はそうも思う。
彼はガンマン、荒野の荒々しい世界に生きる種族。
都市・鉄道に象徴される文明世界には、彼の居場所は無い。
彼らガンマンは今まさに歴史の流れによって消え去り、滅びゆくべき種族。
だから、『ハーモニカ』は彼女の前から去った。
 『ハーモニカ』は馬を進めながら、自分が引いているもう一頭の馬を見やる。
その背には物言わぬ死体が担がれている。
共に戦い、命を落としたシャイアンだ。
だが、幸いだったのかもしれない。
ガンマンがまだガンマンでいられた時代に死ねたのだから。
これからどんどん文明が西部にも入って来る。
そうすれば、彼らガンマンは文明の秩序・理念を乱す存在として排斥されてゆくだろう。
現に、宿敵のフランク自身、その残忍さを嫌ったモートンによって買収された部下達に裏切られ、殺されかけたのだから。
自分達のような古いタイプの男達は、モートンのような新しいタイプの人種によって居場所を奪われ、やがては消えてゆくだろう。
『ハーモニカ』とシャイアンの遺体は、そんな未来へ背を向けるように共に馬首を向け、荒野の奥へと走り去っていった。


 時は流れ・・・21世紀・・・。
「うわあっっ!!」
暴れ牛の背中から振り落とされ、少年は思わず声を上げる。
 「くぅぅう・・お尻打っちゃった・・痛たた・・・・」
地面に落ちた時に打ったお尻の痛みに顔をしかめながら、少年は立ち上がる。
少年は黒曜石のように見事な黒髪の持ち主で、やんちゃさや子供っぽさを感じさせるも、整った面立ちをしている。
すらりとした細身でやや小柄の身体に今風のシャツやハーフパンツを着ているところは今どきの子という感じだが、それにミスマッチなダスターコートや帽子といった、現代っ子と西部劇が混ぜこぜになったような格好をしている。
さらには首からハーモニカをまるでお守りのように提げていた。
 「くっそ~、負けるもんかっ!!もう一回っっ!!」
少年はそういうと、再び目の前の大きな牛に飛び乗ろうとしたそのときだった。
 突然、ハーモニカの曲が聞こえてきた。
その曲に少年はハッとし、振り向く。
すると、いつの間にか男が立っていた。
 男は地味で動きやすい格好で、野性味に満ちた面立ちをしている。
目や髪の色などが少年と似通っており、血のつながりを想像させる。
男も少年同様、首に使い古したハーモニカを提げ、吹いている。
 「父さん、どうしたの?」
少年はハーモニカを吹いていた男にそう呼びかける。
二人は父子だった。
 「メシだ、マティス」
「え?も、もうそんな時間?」
昼食の時間だと知らされ、思わずマティスこと少年は慌てる。
 「メシの前にちゃんと牛を戻しとけよ」
「わかってるよー」
マティスがそう言いながら牛を厩舎へ戻すのを尻目に、父さんことチャールズは家の中へと戻る。
チャールズは15歳の息子マティスと共に、先祖伝来の牧場を営んでいた。
ちなみに、フルネームはチャールズ・ハーモニカ。
そう、『ハーモニカ』の子孫だ。
『ハーモニカ』はその後、流浪の末にこの地に牧場を作った。
そしてシャイアンが自分につけた『ハーモニカ』という呼び名を苗字とし、チャールズ・マティス父子の代に至るまで、牧場を営んでいるのである。
 「うう~~っ!悔しいな~~。もうちょっとで乗りこなせそうだったのに~~」
豆料理を食べつつ、振り落とされたことを思い出し、マティスは悔しさをあらわにする。
「ねぇ、父さん、お昼食べたらロデオの稽古つけてよ!!」
「それより宿題はちゃんとやったのか?」
「あ、後でするよ!だからいいでしょう!?」
「ダメだ。ちゃんと宿題をしろ。そうでなきゃ稽古は無しだ」
「ええ~。父さんのケチ~!」
宿題をしろという父親に、マティスは不満そうに頬を膨らませる。
そんな会話をしながら、父子が食事をしていたときだった。
 突然、車の音が聞こえてきた。
思わず窓を見やると、パトカーが止まる。
ドアが開くと同時に、中から警官達が降りてくる。
その一人の顔を見ると、チャールズの表情が渋ったいものになった。
やがて、ドアが開いたかと思うと、警官達が入って来た。
 「何の用だ・・」
「こんにちは、ジャイアンさん!」
機嫌の悪そうなチャールズとは対照的に、マティスは笑顔で警官の一人に挨拶をする。
挨拶をしたのは、ヒゲを生やした精悍で野性味のある警官。
警官よりギャングのボスの方が似合いそうな面立ちだった。
彼はシャイアン、これでもこのあたりの警察署長である。
ちなみに、ハーモニカと共にモートンやフランク一味と戦った山賊シャイアンの子孫である。
山賊の子孫が警察署長、時の流れとはいえ、先祖が見たら目を丸くするだろう。
 「おぃおぃ、俺はシャイアンだ。シャイアン。日本のマンガキャラじゃないぜ?」
「ご、ごめんなさい。また間違えちゃった」
マティスはシャイアンに謝る。
シャイアンのことを、よくマティスはジャイアンと呼び間違えるのだ。
 「ハーモニカ、お前もそんな仏頂面すんなよ。仮にも親戚だろう?」
「お前が来るとロクなことにならん・・・」
チャールズはシャイアンにそう言う。
シャイアンの一族とは、先祖の代からの付き合いだ。
実際、今は亡きチャールズの妻にしてマティスの母はシャイアン家の女性だった。
 「まァそう言うなって。チャールズ、お前の腕が借りたいんだよ」
「またか・・。お前の部下達がいるだろう?」
「仕方ねえだろ。ここ最近財政難とかで警官のリストラも多くてなぁ、それに俺の部下よりお前の腕の方が確かなんだよ。なぁ、マティス、パパのカッコイイところ見たいよな?」
「うん!俺も見たいっ!ねえ~、父さんってば~~~」
しがみついておねだりする息子に、チャールズも降参する。
 「わかった・・・。言う通りにしてやる・・」
「ハハ、そいつは頼もしい・・」
「ただし・・。マティス、お前はダメだ。家で留守番してろ」
「ええ~~!!どうしてさー!」
父の言葉に、マティスは頬を膨らませる。
 「コイツはゴッコ遊びじゃない。そういうことだ」
「あーっ!待ってよーー!!連れてってばーーっっ!!」
マティスがそういうのも構わず、チャールズはシャイアンと共に家を後にした。


 「ここか?」
チャールズは薄汚れたビルの前に立っていた。
周囲は警官達によって厳重に立ち入り禁止にされている。
 「ああ。結構腕の立つやつでな。突入した奴らが返り討ちにあったよ。犠牲者多すぎると、困るんでね」
「だからって民間人を使うか・・・」
「いいだろうが。お前だって元々撃ち合いは商売だろう?」
「言うな・・」
チャールズは苦虫を噛み潰した表情になる。
今でこそ静かに牧場を営んでいるが、若い頃は先祖代々受け継いできた銃の技を頼りに、荒っぽい仕事も色々としていた。
それゆえ、腕の立つ逃亡犯や立てこもり犯などが現れた際、助っ人としてシャイアンに駆りだされているのであった。
 「報奨金は・・色つけろよ・・・」
「わかってるって。それじゃあ頼むぜ」
「山賊の先祖の方がズッと立派だよ、お前は!」
そう言うと、ハーモニカは改めて、拳銃のチェックをする。
拳銃はコンバットマグナムと呼ばれるリボルバー。
高威力でありながら、携帯性も兼ね備えているため、アメリカ各地の警察で採用された実績のある銃だ。
かの怪盗ルパン3世の盟友で銃の達人として知られる次元大介の愛銃としても知られている。
チャールズは銃と予備弾を含めた弾薬を念入りにチェックすると、ようやく建物の中へと入っていった。


 「父さんの馬鹿ッ!いつもいつも子供扱いしてさっっ!!」
少し経った頃、同じビルの中に、マティスの姿があった。
父の言葉を不満に思い、こっそり家を抜け出して現場に来てしまったのである。
 「俺だって銃の練習してるのにさっ!!いつもああやって子供扱いしてっ!!いいもんっ!!だったら俺が捕まえてみせるんだからっっ!!」
マティスは廃ビルの廊下を歩きながら、不満をぶちまける。
父親の鼻を明かしてやろう、そう思ったのである。
 「でも・・何か不気味だよね・・・」
天井や廊下を見回しながら、マティスはそう呟く。
もう大分使われていないのだろう、汚れや傷みが激しかった。
 不意に物音がし、思わずビクッとしながら振りむき、手にした拳銃を向ける。
持っているのは小型のリボルバー、チーフスペシャル。
装弾数が5発と少ないものの、携帯するのに非常に都合がよいつくりとなっているため、本来の警察用としては無論、女性の護身用としてとしてもよく使われている。
同年代の少年達と比較してもやや小柄な身長のため、射撃競技などでマティスが使っているものだった。
 「な・・何だぁ・・ただの物音かぁ・・。ビックリし・・!!」
ホッとしかけたところで、マティスの表情が緊張に強ばる。
ゾッとするような気配を感じたからだ。
 (な・・何っ!?)
寒気や怖気のような気配に、マティスは一瞬逃げ出したくなる。
(馬鹿ッ!?捕まえるために来たんじゃないか!!逃げたら意味ないよ!!)
マティスは自身を叱咤すると、気配を感じた方へと急ぐ。
 「う・・・嘘っ!?」
やがて、見つけたのは警官の死体。
顔が血で真っ赤に染まっている。
恐らく逮捕のために突入したが、返り討ちにされたのだろう。
中には叶わないと見て逃げようとしたが、背後から容赦なく撃たれて命を落とした者もいた。
 最初考えていたのとは全然違う事態に、マティスは愕然とする。
不意にマティスはさらに強い殺気を感じた。
「あ・・・!!」
はっきりとは見えないが、マティスはずっと奥の方に人影が見えることに気づく。
がっしりとした人影は、拳銃を構えており、ゆっくりとこちらへと近づいてくる。
 距離があるにも関わらず、否応なしに感じる殺気に、マティスは鳥肌が立つ。
思わず拳銃を構え、発砲した。
だが、目測を誤り、ものの見事に外してしまう。
 (え・・!?う、嘘っ!?どうして!?練習や狩りじゃちゃんと当たるのに!?)
的や動物相手では百発百中なのに、とマティスは慌てて発砲する。
焦ったあまり、マティスは全弾あっという間に撃ち尽くしてしまった。
 「ど・・どうしよう!?」
マティスの焦りを見抜いたのだろう、ようやく相手が撃って来た。
「ひ・・・!!!」
幸い当たらなかったものの、恐怖で腰が抜けてしまう。
 「や・・やだぁぁぁ!!!」
もはや勇気など無くなり、マティスは座り込んだまま、後ずさる。
さっきは運よく外れたが、次はそうはいかないだろう。
「や・・やぁぁ・・・ひ・・ひぃぃん・・・!!!」
ゆっくりと迫りくる死に、マティスが顔を涙でグッショリと濡らしたそのときだった。
 突然、ハーモニカの音色が聞こえてきた。
その音に銃を構えた犯人はハッとすると、ハーモニカの聞こえた方へ振り向く。
すると、いつの間にかチャールズの姿があった。
 チャールズと犯人は、そのままジッと睨み合う。
あたりを静寂と緊迫した空気が包みこみ、しばらく時が流れる。
チャールズの方は冷静な感じのまま、ジッと見つめる。
だが、だんだん犯人の方の顔が汗でじっとりと濡れ出し、息が乱れてくる。
やがて、焦った犯人が発砲しようとそのとき、ハーモニカのマグナムが火を噴く。
犯人の身体がグラついたかと思うと、そのまま床に倒れ伏した。
 「と・・父さんっっ!!」
父の姿に、思わずマティスは抱きつく。
「この馬鹿・・!!何故来た!?」
「ひ・・だって・・!!」
「まぁいい。とにかく・・ここを出るぞ・・!!」
チャールズは息子を抱き上げると、急いで廃ビルを後にした。


 「落ち着いたか?」
「あ・・う、うん・・な・・何とか・・・」
父が入れたココアを飲みながら、マティスはそう答える。
 「怪我は・・ないな?」
「あ・・う、うん。こ、腰が抜けただけだし・・・」
「そうか。なら・・大丈夫か」
「え?な、何が?」
チャールズの言葉に、マティスは怪訝な表情を浮かべる。
 「決まってるだろう?お仕置きだ」
「ええ!?ど、どうしてさ!?」
父の言葉にマティスは驚く。
 「当然だろう?勝手なことばかりしてな。覚悟しろ」
「や・・やだっっ!!」
マティスは咄嗟に逃げようとするが、荒くれ者相手に鳴らした父に叶うはずも無い。
あっという間に取り押さえられ、膝に乗せられてしまう。
 「やだやだっ!!離してってば~~!!!」
必死に抗議するマティスだったが、聞き届けられるわけも無く、あっという間にお尻をむき出しにされ、押さえつけられたかと思うと、チャールズの手が振り上げられた。


 バッシィィィィ~~~~~~ンッッッッ!!!!
「わぁあああんっっっ!!!」
最初から思い切り叩かれ、マティスは悲鳴を上げる。
 バシッ!バンッ!ビダンッ!バアアンッ!バシッ!
「ちょ、ちょっとっ!痛いってばあっっ!!やめてよっ!!」
「お仕置きなんだから痛いに決まってるだろ?静かにしろ」
バシバシとお尻を叩きながら、抗議する息子にチャールズはそう言う。
 「だ、だって父さんが悪いんじゃないかっ!!連れてって言ってるのに!意地悪して連れてくれないくせにっっ!!父さんがそんな意地悪しなきゃ俺だってこんなことしなかったもんっっ!!」
それなのにお尻叩かれるなんて納得できない、とマティスはこちらが被害者といわんばかりの態度で抗議する。
 「マティス・・・本気で言ってるのか?」
一旦お尻を叩く手を止めて、チャールズは尋ねる。
「だ、だったら何さ!?父さんこそ謝ってよっ!!意地悪っ!!鬼っ!悪魔っ!!」
ビッダァァァァ~~~~~~~ンッッッッッ!!!
 「わっあぁぁぁ~~~~~~んっっっ!!痛ったぁぁぁ~~~いっっ!!」
容赦ない平手打ちに、マティスは背をのけ反らせて絶叫する。
「勝手なことばかり言ってるな・・。なら・・こっちも勘弁しねえ・・・」
そういうと、チャールズはさらに容赦なく息子のお尻を叩きだす。
 ビッダァァァ~~~~~~ンッッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッッ!!!!!!
「うっわあああ~~~~んっっっ!!!痛ったあぁぁいい~~~~っっっ!!!」
豪雨のような平手打ちにマティスは悲鳴を上げる。
 「うわああああ~~~~んっっ!!痛い痛い痛いよ~~~!!!やだやだっ!!やめて~~~~っっ!!」
泣き叫ぶマティスを尻目に、チャールズは激しく息子のお尻を叩き続けた。


 「ひぃひぃん・・。ひっひぃん・・」
ボロボロと涙を零して、マティスは泣いていた。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染め上がり、熱した石炭のように熱くなっている。
 「痛ぁぁい・・痛いよぉぉ・・・。も・・もう・・許してよぉぉ・・・」
「痛いか?」
一旦お尻を叩く手を止めて、ハーモニカは息子に尋ねる。
「痛いに決まってるじゃないかぁっ!!痛くて熱くて死んじゃいそうだよぉぉ・・!!」
「そうだ・・。だがな・・銃で撃たれりゃ・・こんなもんじゃない・・・」
チャールズはマティスを抱き上げる。
 「いいか・・。マティス、今日、撃ちあってどうだった?」
「す・・凄く・・怖かった・・。死んじゃうんだ・・。そう思ったんだ・・」
「そうだ・・。それが撃ち合いだ。こいつはゲームじゃない。ゲームオーバーやコンティニューはない。撃たれたら一巻の終わり。そんな世界にお前を連れ出したくはないんだよ。お前は平和に静かに牧場でもやってて欲しい・・。撃つのは的と狩りの獲物だけで十分だ。それなのに・・お前は・・・」
「うぅ・・。ごめんなさい・・・・」
父親の気持ちを知り、さすがにマティスも反省する。
 「少しは反省したか?」
「う・・うん・・。危ないことして・・心配かけて・・ごめんなさい・・」
「やっとわかったようだな・・。じゃあ、始めるか」
「え?な、何を?」
怪訝な表情を浮かべる息子に、チャールズは目を丸くするようなことを言う。
 「お仕置きだ。これからな」
「ええ!?これで終わりじゃないの!?」
「当たり前だ。本当に危ないことしやがって。これくらいじゃまだまだ許さんからな」
そういうと、ハーモニカは再び息子を膝に乗せる。
 「やだやだっ!父さんっ!ごめんなさいっ!!二度としないからっ!!」
「そうしてもらえるように、身にしみて感じてくれ。じゃあ、行くぞ」
「やっだぁぁぁ~~~~っっっ!!!!」
泣き顔を浮かべるマティスを尻目に、再び平手の豪雨が降り注ぎ出した。


 「ちょっと!!もっと優しくしてよ!!沁みるってば!!」
抱っこしたまま、お尻に薬を塗る父親に、マティスはそう言う。
ようやくお仕置きが終わり、手当て中だった。
「少しくらい我慢しろ。男の子だろ?」
「うう~~!散々だよ・・怖い目には遭うし・・お尻はぶたれるし・・!!」
「これに懲りたらもう俺の仕事に連れてけなんて言わないことだな」
「え~。怖かったけど、やっぱり父さんの仕事見たいよ~。牧場のだけじゃなくてさ~」
「馬鹿言うな。またあんな目に遭わせられるか」
思わずハーモニカがそう言ったときだった。
 「お~お~、こりゃ将来有望な後継ぎちゃんじゃないかよ~」
思わず聞こえた声に、息子を抱いたまま、チャールズは振り向く。
いつの間にか、シャイアンが部屋に入って来ていた。
 「どこから入って来た・・・」
チャールズは不機嫌な顔で愛用のコンバットマグナムを向ける。
「待てって!仮にも警官に向けるなって!!」
「警官なら泥棒の真似なんかするな・・。何の用だ・・・」
「報奨金を持って来たんだよ!?返事がねえから勝手に入っただけだって!!」
「く・・!!親戚でなきゃ殺してるぞ・・・」
ハーモニカは苦虫を噛み潰した表情を浮かべる。
 「まあ今日はありがとよ。おかげで無事逮捕だぜ」
報奨金を手渡しながら、シャイアンはそう言う。
「ソイツは何よりだな。だが・・二度とお断りだぜ」
「それはどうだ~?なぁマティス、またパパのスゴイところ見たいよな~」
「うん!また見たい!」
「おい!人の息子に妙なこと吹きこむな!!」
「そいじゃあお邪魔虫は退散するぜ」
そういうと、シャイアンは何と窓から出てゆく。
 「おいっ!窓から出るな!それでも警官か!!」
チャールズは窓から出ていくシャイアンに、思わずそう叫ぶ。
「くそ・・!相変わらず人を食ってんな・・・」
「ねぇ、父さん・・」
「何だ?」
話しかけてきた息子に、思わずチャールズが尋ねる。
 「今日、一緒に寝てよ!お風呂も一緒だからね!」
「はぁ?何でだ?」
「決まってるじゃないか!お尻叩いて痛い思いさせたんだから!!責任取ってよね!!」
「おぃ・・それはマティスが悪い子だったからだろ?」
思わずそういうが、マティスには通じない。
 「何言ってるのさ!父さんが泣かせたんだからそれくらい当然じゃないっ!!馬鹿馬鹿馬鹿っ!!ひどいよっ!!」
「わかったわかった・・。言う通りにする・・」
「やったあっ!父さん大好きっっ!!」
一転して喜んだマティスは、父親に抱きついて頬にキスをする。
 (くそ・・・!!シャイアンといいマティスといい・・俺も甘いな・・)
己の甘さに、思わず自嘲するハーモニカだった。


 ―完―

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