ミハエル神父の日常(『マルコ神父』より、BL)
(『マルコ神父』のミハエル神父を主役にしたスピンオフ作品です。BLありです。許容出来る方のみご覧下さい)
「さよなら~、ミハエル神父様~」
「さよなら、気をつけて帰ってね~~」
夕日の下で、家路へと向かう子供達に、ミハエル神父は手を振りながら、そういう。
「皆楽しそうに帰ってくれたよね~。よかった~」
帰ってゆく子供達の様子を振り返りながら、ミハエル神父は安堵の表情を浮かべる。
人懐っこい性格のミハエル神父にとって、子供と遊んだりするのはとても楽しいし面白い。
ミハエル神父のそういう気持ちのせいか、近所の子供達もよく教会に遊びに来てくれる。
今日もそうで、幸い仕事が忙しくなかったため、子供達と遊んでいたのである。
(マルコ神父と同じ職場だったら、こうはいかなかったよね~。あの人、優秀だけど凄くお固いし)
以前、研修で世話になった教会で顔を合わせた、マルコ神父の顔を思い浮かべながら、ミハエル神父はそう思う。
よく言えば真面目、悪く言えば堅物で融通が利かないマルコ神父の性格だと、教会を子供達の遊び場になど、とんでも無いと言うかもしれない。
そんな風に思うからだ。
(まぁネド神父はよかったけどね~。話分かりそうだし・・それに・・男らしい感じで、すごく僕の好みだったよね~)
ネド神父のことを思い浮かべ、ミハエル神父はニヤけてしまいそうになる。
同性にそういう感情を抱くミハエル神父にとって、ネド神父は理想のタイプな人物だった。
(ネド神父も男好きだから、ウマく行くと思ったのにな~。失敗したよね~)
ネド神父に相手がいるのかマルコ神父に確かめた際、マルコ神父に自分の感情に気づかせてしまい、藪蛇をやってしまったことを思い出し、少し悔しそうに表情を浮かべる。
(まぁもういいけどさ。ネド神父もマルコ神父の事好きみたいだから、幸せになってほしいし。でも・・惜しかったな~~。ネド神父に抱かれてみたかったな~~)
ネド神父の男らしい雰囲気や姿を思い返し、ミハエル神父はそんなことを考える。
(あ・・何か・・したくなって来ちゃった・・・)
ミハエル神父は下半身が熱くなってきたのを感じる。
どうやら、想像が性欲に訴えかけたらしい。
(ううん・・!!我慢出来ない・・!!そうだ・・!!)
ミハエル神父は何かを思い立った表情を浮かべると、携帯を取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。
それから少し経った頃・・・。
「へいっ!お待ちっ!!」
威勢のいい声と共に、男はカウンターの向こうの客に寿司の盛り合わせを差し出す。
男は日本のヤクザ映画で主役として出てきそうな、男らしい野性味と精悍さに満ちた、なおかつ整った、いかにもミハエル神父好みの面立ちをしている。
板前の服に身を包んでいるが、その下に隠れた、ドーベルマンを思わせる無駄なく引き締まった、しなやかで強靭な身体は只もので無いと感じさせる。
だが、男はそんな雰囲気などおくびに出さず、カウンターの客と応対する。
「さすがツバキさんだねぇ、相変わらずウマいねぇ」
「そうスか?ありがとうございます」
客の褒め言葉に、ツバキと呼ばれた板前は、礼を言う。
「酒も欲しいなぁ。何かイイの無いかい?」
「日本酒にしますかい?それとも、ワインとかにしますかい?」
「せっかくこういう店なんだから、日本酒にしとくよ。お勧めのあるかい?」
「わかりやした」
男は日本酒の中から、料理に合いそうなものを選んで出す。
ここはパリの繁華街の一角にある『スシバー椿』
スシバーという言葉が示すように寿司や酒を出す店である。
先ほど客に料理を出していたのが、この店の主&板前である椿欣二(つばききんじ)である。
「オヤジ、椿のオヤジ!!」
「何だ?お客さんがビックリするだろ、邪魔すんじゃねえや」
奥から現れた若いスタッフに、椿は顔を顰める。
「すいません、電話が・・緊急だそうです」
「わかった。すいません、ちょっといいスか?」
椿は客に断ると、奥へ入って受話器を受け取る。
「もしもし・・。何だ・・ミハエルか・・。え?」
声の主に、椿は表情が変わる。
「馬鹿!まだ店やってんだよ!店長の俺が空けるわけ・・クソ!わかった!わかったって!!行くよ!!」
電話を切ると、椿は思わず舌打ちする。
「悪い、出来るだけ早く戻る。それまでお客さんの相手頼めるか?」
「わかりました」
椿はそう言うと、出前の準備をする。
「すいませんね、どうしても俺じゃなきゃ嫌だっていうお客さんなもんで・・」
椿は客にそう言って詫びると、急いで店を後にした。
「ふふ~。待ってたよ~。あれ?どうしたの、そんな仏頂面して?」
ミハエルは現れた椿の様子に、怪訝な表情で尋ねる。
「待ってたよじゃねえ・・!!仕事中は電話かけるなってあれほど言っただろう!?」
椿は露骨に不機嫌な表情で言う。
「だって~、椿としたくなっちゃんだもん」
「『したくなっちゃっただもん』じゃねえだろ・・!!ったく・・」
「椿、僕とするの嫌なの?僕の事嫌い?」
椿の態度に、ミハエルは悲しそうな表情を浮かべる。
「い・・いや・・。そういう・・わけじゃ・・」
ミハエル神父の様子に、椿は困ってしまう。
ミハエルのことは好きだし、抱くのももちろんだ。
「じゃあいいじゃない!ねぇ!早くしようよ!!」
「わかったよ・・」
諦めたように言うと、椿はミハエルに連れられて奥へと入っていった。
「ふふ・・。よかったな~~」
「そうか・・。なら、よかったぜ」
心底よかったと言わんばかりのミハエル神父に、椿はそう呟く。
「そんじゃあ俺はそろそろ失礼するぜ」
「ええ~。もう1ラウンドくらいしようよ~~」
さっさと着替えて帰ろうとする椿に、ミハエルは不満そうに言う。
「あのなぁ、俺には店があるんだよ!若いモンに無理言って出てきたんだ!早く帰ってやらなきゃ・・。ちょっと待て!!」
不意に携帯が鳴り、椿は慌てて出る。
「もしもし、椿です。あっ!はいっ!旦那ですか!ヘイ・・!はっ!わかりました!!すぐに取りかかります!!」
携帯をしまうと、すぐに椿は出て行こうとする。
「ねぇ、どこ行くの~。しようってばぁ!!」
「そういうわけにはいかねえんだよ!仕事が入ったんだ!『本業』の方のな!!」
「また・・しばらくどっか行くの?」
椿の言葉に、ミハエル神父は不満げな表情になる。
「ああ。出来るだけ早くこっちに戻って来るよ」
「本当、嘘ついたら怒るからね」
「ああ。約束するよ。だけどな・・。ミハエル・・お前も約束しろよ?」
「何を?」
「何を・・じゃねえだろう?この前のときのを・・忘れたのか?」
椿は怖い顔を浮かべてミハエル神父に言う。
「わかってるよ~。寂しいからって、他の人引っ張り込んだりなんてしないよ~」
ミハエル神父はそう言う。
「本当だろうな?」
「本当だよ、約束するよ」
「わかった。なら信じよう。ただし・・破ったら承知しねえからな!!」
そういうと、椿は急いで教会を後にした。
数日後・・・フランス南部の港湾都市マルセイユ。
そのビジネスホテルの一室に椿の姿があった。
短く息を吐きながら、椿はスクワットをしている。
無駄な肉が一切そぎ落とされ、引き締まったその背中には、見事なまでの刺青が彫り込まれている。
椿は元ヤクザ。
訳あって現在はパリで表向きスシバーを営みながら、ある組織のお抱え殺し屋・用心棒として暮らしている。
こちらが椿の『本業』だった。
スクワットを終えると、椿は服を着、バッグから拳銃を取り出す。
取り出したのは、日本の暴力団でよく使用されているマカロフ拳銃と予備のマガジン。
さらにヤクザのシンボルといえる短刀も出した。
それらの武器を、椿は入念にチェックする。
チェックを終え、武器を身につけ、それらを隠すように上着を着込んだそのとき、不意に携帯が震動した。
「何だ・・!?」
思わず携帯を開くも、椿は表情が変わる。
「あんの・・ガキィィィ!!あれほど言うとった癖にぃぃぃ!!!」
画面を見やりながら、椿は怒りの声を上げる。
送られてきたのは写メール。
よりにもよって、ミハエル神父が他の男に抱かれている姿のもの。
抱いている男の様子から、自分の目を盗んで同性愛者向けの出張サービスを利用しているのだろう。
「堂々と・・約束破りやがって・・・!!」
思わず怒りをかき立てられるも、椿は自分を取り戻す。
今、自分は『仕事』をしに来ているのだ。
それを放り出して浮気を咎めにパリにもどることなど許されない。
(クソ・・!!まずはやることやってからだ・・!!)
腸が煮えくりかえるのを押さえつつ、椿はホテルの部屋を後にした。
ドンッッ!!
激しい音と共に男達はハッとした表情でドアに目を向ける。
反射的に男達は立ち上がり、懐やズボンの中から拳銃を引き抜こうとする。
だが、それよりも先に椿の姿が現れ、手にしたマカロフがたて続けに火を噴いた。
男達は発砲する間もなく、身体を痙攣させ、あるいは死のダンスを踊りながら倒れ、或いは床に崩れ落ちる。
銃声が鎮まったときには、立っていたのは椿だけだった。
椿は予備のマガジンを装備し、奥へと進んでゆく。
再びドアの前に立つと、椿は脇に引いて、ドアをノックする。
その返事は銃撃だった。
銃撃が途切れると同時に、再びドアを蹴っ飛ばして椿は飛び込む。
飛び込みながら、椿は目の前の動くものに発砲する。
一つはボディーガードらしい屈強な男、もう一人は中年の脂ぎっただらしない風貌の中年男。
二人とも床に倒れ伏すと、椿は脂ぎった男の方へと向かう。
「ルイだな?」
「た・・助けてくれっ!!金なら倍・・いや3倍納める!!」
ルイと呼ばれた中年男は必死に命乞いする。
彼は椿が仕える組織の下部団体の長。
だが、上納金に関する不正が発覚したため、椿が派遣されたというわけである。
「そうはいかない。十字でも切れ」
非情にそういうと、椿は標的の身体や頭に銃弾を撃ち込み、絶命させた。
直後、椿は死を確認する。
その僅かな隙に、まだ死んでいなかった標的のボディーガードが背後から覆いかぶさるように襲いかかった。
だが、今にも掴みかかろうとしたところで、ボディーガードの男の動きが止まる。
男はゆっくりと視線を落とす。
すると、後ろを向いて立ったまま、椿が銃を持つ手と反対側の手に短刀を逆手に握り、腹に突き刺しているのが見えた。
「俺の・・背後に・・立つな!!」
ダメ押しに椿は短刀をさらに深く押し込む。
刃が引き抜かれると共に、男は床に崩れ落ちた。
それから数日後・・。
ミハエル神父の教会の寝室に、二人の姿があった。
「あれ?どうしたの?そんな怖い顔して」
ミハエル神父は、苦虫を噛み潰したような椿に、怪訝な表情を浮かべる。
「こんな顔にもなるぜ・・。ミハエル・・何だコイツは?」
椿は携帯を開き、画面に映っているものを突きつける。
その画面には、例の写メールがアップされていた。
「あれ?これ僕~?わぁ、スゴイエッチだね~」
自分のあられもない姿に、ミハエル神父は臆面もなく言う。
「エッチだろじゃねえだろ・・!!何してんだよっ!!お前は!!」
「え?エッチだけど?」
「そりゃあ見りゃわかる・・・。仕事で留守にする前に・・何て言ったか覚えてるか?」
「あれ?何だっけ?」
「何だってじゃねえ!俺がいない間に他の男引っ張り込まねえって約束しただろうが!!」
「あっ!そうだった!?ゴメンね、忘れてた」
「忘れてたじゃねえ・・!!お前はニワトリかっっ!!」
恋人の態度に、椿は呆れる。
「もしかして・・怒ってる?」
「たりめえだっ!!約束破りやがって・・・!!」
椿はミハエル神父の手首を掴むと、グッと引き倒す。
気づいた時には、ミハエル神父はベッドの縁に腰かけた椿の膝に載せられていた。
ミハエル神父を膝に乗せると、椿は神父服の裾を捲り上げ、ズボンを降ろしてお尻をあらわにする。
「あれ?何するの?新しいプレイ?」
「んなワケねえだろ!!お仕置きだ・・!!」
椿はそういうと、片方の手でミハエル神父の身体を押さえ、手を振り上げた。
バッシィィィ~~~ンッッッ!!
「うわあっ!?痛ああっ!!」
思い切りお尻を叩かれ、ミハエル神父は悲鳴を上げる。
バシッ!バンッ!バシッ!ビダンッ!バンッ!バシッ!
「この・・馬鹿ッ!何やってんだ・・お前はっっ!!」
お尻を叩きながら、椿はお説教を始める。
バシッ!ビダンッ!バシッ!バンッ!バシッ!バンッ!
「うわ・・!ちょ・・!痛っ!痛ぁぁ・・!!」
思い切りお尻を叩かれ、ミハエル神父は悲鳴を上げる。
バシッ!ビダンッ!バンッ!バシッ!バンッ!バシッ!
「椿ッ!痛いってばっ!!」
「たりめえだろっ!!お仕置きだっつったろうが!!」
お尻を叩きながら、椿はさらにお説教する。
「何でさぁ!?僕っ!お仕置きされるようなこと・・してな・・!うわっ!痛あっ!!」
抗議するミハエル神父だが、お尻の痛みに顔を顰める。
「してない?何言ってんだっ!?俺の目盗んで他の男引っ張り込んでただろうがっ!!」
ミハエル神父のお尻に平手を叩きつけながら、椿はそう言う。
「あれ・・ただのデリヘルだよぉ・・!!フーゾクだから浮気じゃないよっ!椿だって風俗で抱いたりしてるんでしょ!?」
「お前とこうなってからはしてねえよ!!ってか風俗だって浮気だろうが!!この尻軽神父っ!!」
「ナニナニ、僕が他の男に抱かれたくらいでヤキモチなの~?何だ、椿って心狭いんだね~」
椿の言葉に、ミハエル神父はそんなことを言いだす。
「おい・・!!何言ってんだテメェは!?」
「だってそうでしょ~?僕が他の男に抱かれたのが悔しくて、それで怒ってるんでしょ~?それってどう見てもヤキモチだよね~」
「テメェ・・少しは反省してんのか!?」
ミハエル神父の態度に、椿は思わず叫ぶ。
「ええ~?どうして僕が反省しなきゃいけないの?」
椿の言葉に、ミハエル神父は首を傾げて言う。
「あのなぁ・・・。お前は俺に約束したよなあ?仕事に行ってる間、絶対の他の男を引きこまないってな?」
「したけど、それがどうしたの?」
「どうしたのじゃねえだろ!それなのにお前は!どう見ても約束破りだろうが!テメェそれでも神父か!?ヤクザの俺に説教されてどうする!?」
「むぅ・・。だって、寂しかったんだもん」
「寂しかったんだもんじゃねえ!ガキかお前は!?」
「だってさぁ、何日も留守にする椿が悪いんじゃないか!椿こそ僕に謝ってよ!仕事仕事で何日も余所に出かけて寂しい思いさせてさぁ!?メール送ったのに帰って来ないし!!」
「は・・?おいっ!今何つった!?」
ミハエル神父の言葉に、椿は思わず問い返す。
「え?何が?」
「何がじゃねえ!メール送ったとか言っただろ!あの写メールか!?」
まさかと思いつつ、椿は尋ねる。
「うん、そうだよ~。あのメール、僕が送ったんだよ~」
「おま・・何を考えてんだーーー!!!」
まさか堂々と浮気の証拠を自分に送って来るとは。
予想外の事態に椿は思わず叫ぶ。
「だってさ、そうすれば怒って椿帰ってくると思ったんだよ~。でも帰って来なかったからアテが外れちゃったなぁ」
「当たり前だぁ!!ってかそんな真似出来るかぁ!?」
思わず椿は叫ぶ。
「ええ~、何で~。僕の事愛してるならあんな写真見せられたら、すっ飛んで帰って来るものじゃないの~?ひどいよ~。僕より仕事が好きなの~?」
「そういうんじゃねえよ・・・」
椿は頭が痛くなってくる。
そりゃあ本音を言えば帰ってとっちめてやりたかった。
だが、そんなことは許されない。
この稼業、私情を優先しようものなら、命が無いのだから。
「だったらすぐに帰って来てよ!ひどいよ~。僕より仕事取るだなんて・・」
「だから違うって言ってるだろ・・。それより・・俺に謝れよ・・」
「ええ~。やだよ!元はといえば椿が悪いんじゃないか!椿こそ謝ってよ!!」
「おい・・お前、それ、本気で言ってんのか?」
ミハエル神父の態度に、さすがにイラッとしながら椿は尋ねる。
「そうだけど?椿が仕事で寂しい思いなんかさせなきゃ僕だって講師無かったんだし!椿のせいなんだから謝ってよね!!」
「そうか・・。あくまで・・そう・・言うか・・・。いい加減にしやがれっ!!」
バアッジィィィィ~~~~~~ンッッッッッ!!!!
「うっわああああああ!!!!!!」
渾身の一撃に、ミハエル神父は思わず絶叫する。
「な・・何するのぉ!?痛すぎるよっ!?」
「痛すぎるよじゃねえ!!この馬鹿神父っ!!徹底的に躾け直してやるっっ!!」
そう叫ぶや、椿は手を振りかぶる。
ビッダァァァァ~~~~~ンッッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~ッッッ!!!!
「うっわぁああああああ!!!!!」
豪雨のような平手打ちの嵐に、ミハエル神父は絶叫する。
バアッジィィィィィ~~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~ッッッ!!!
「ひっ・・!ひいっ!ひぃひっ!ひっひぃっひいい~~んっっ!!」
あっという間にミハエル神父のお尻は真っ赤に染め上がってゆく。
さすがに苦しいのだろう、ミハエル神父は両脚をバタつかせる。
「この・・!!馬鹿神父っ!!反省・・しろや・・!!」
バアッジィィィ~~~~ンッッッ!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~ッッッッ!!
「うわあっ!わああっ!痛ああっ!うわああっ!ひっ!ひあああっ!!わあああっ!!ちょ・・痛ああっ!!わああっ!!うわあああ!!ひぃぃんっ!!ひっひっ!!ひっいいぃぃんんんん!!!」
その後、激しい平手打ちの音とミハエル神父の悲鳴がしばらくの間、響きわたった。
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・」
ミハエル神父は両肩を上下させ、荒い息を吐く。
お尻は見事なまでに濃厚なワインレッドに染め上がっており、触ると熱した石炭のように熱い。
「ミハエル・・ちっとは・・反省した・・ん?」
椿は足に妙な感覚を覚える。
まさかと思い、椿は一旦振り上げた手を降ろし、ミハエル神父の腹の下に差し入れる。
すると、ミハエル神父自身が、固くなっているのに触れた。
「おい!?何だコイツは!?」
「テヘ・・勃っちゃったみたいだね」
「テヘ・・じゃねえよ!何してんだよっ!?」
ミハエル神父の反応に、椿は思わず叫ぶ。
「だってぇ、椿にお尻ぶたれるの、凄く嬉しいんだもん」
「ハァ!?何言ってんだ!?」
ミハエル神父の言葉に、椿は思わず素っ頓狂な声を出す。
「だって椿、僕が浮気したのが許せなくて、こうしてお尻叩いてるんでしょ?」
「ああ、それがどうかしたかよ?」
「それって、本当に僕の事好きだから、許せなくて、悔しくて、だからこうしてるんでしょ?椿がそうして心底僕の事愛してくれてる。お尻叩きの一発一発に僕への愛が詰まってるんだ、そう思うと・・すごく嬉しくて・・だから・・お尻ぶたれてるのが・・凄く・・嬉しいんだ・・」
「お前はマゾか・・・」
椿は思わず呆れる。
「ふふ、やっぱり写メール送ってよかったぁ。椿にこうしてお仕置きしてもらえてんだもん」
「あのなぁ・・。俺はお前を喜ばせるためにケツ叩いてるんじゃねえぞ!!ケツ叩いて欲しけりゃSMクラブにでも行けよ!!」
ミハエル神父の態度に椿は思わず叫ぶ。
「椿、本当に行っていいの?」
「う・・!そ・・そいつは・・!」
「椿がそうしろって言うんなら、SMクラブで発散してきてもいいけど。でも椿、僕のお尻、他の人に叩かせてもいいの?」
「わかった!わかったよ!俺の負けだ・・!!頼むから他の奴にはやらせるな・・!!お前が尻叩いて欲しいなら、俺がいつでも叩いてやる!!俺の愛が籠ったやつをな!!」
「本当!?」
「ああ・・。その代わり・・俺以外の奴とはするんじゃないぞ。例え風俗でもな・・。あと・・さすがに俺に謝ってくれ・・」
「わかったよ、ごめんね。約束破って」
「ったく・・もうすんじゃねえぞ・・」
「わかってるよ~。でも、椿も僕に寂しい思いさせないでよ」
「まぁ・・努力はする・・」
「ふふ、だったら仲直りに・・しよ?」
ミハエル神父は真っ赤なお尻を出したまま、そういうと椿にキスをする。
「・・ったく・・しょうがねえな・・」
そう言いつつも、椿もキスを返して抱きしめると、そのままベッドに横になった。
「・・ったく・・・幸せな顔して寝てやがって・・・」
自分の隣で、満足と言わんばかりの寝顔を浮かべているミハエル神父に、椿はそう呟く。
「どうしてこんなヤツに・・惚れちまったのかねぇ・・・」
自分の目を盗んで堂々と他の相手に抱かれたり、お仕置きされたくて浮気の証拠の写メールを送ってきたり。
よく考えてみれば思い切り振りまわされている。
だが、どうしようもないヤツと思いつつも、そんなミハエル神父が可愛くてたまらないのも事実。
「惚れた・・弱みってヤツか・・・」
タバコをふかしつつ、椿は思わずそう呟いた。
―完―
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