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青き狼たち9ー2(バイオレンスあり)



(バイオレンスありです。許容できる方のみご覧ください)


 「ヤマザキさん、どこに行ったんだ!おーい、ヤマザキさん!!」
カイは必死に声を上げて、山崎に呼びかける。
「全く・・これから稽古だってのに・・。って時間だ!仕方ないな・・!!」
腕時計を見ると、慌ててカイは道場の中へと戻ってゆく。
 「やれやれ・・。やっと行ったねぇ・・」
突然、木の幹から声がしたかと思うと、表面から人型の木の皮が浮かび上がる。
皮がはがれたと思うと、下から山崎が現れた。
(全く・・稽古なんてメンドくさくってしてられないんだよねぇ。せっかくの休みなんだしさ~。思いきり遊ばなくちゃね~)
そんなことを呟きながら、山崎は繁華街へと向かっていった。


 「ああ~っ!くそーっ!」
山崎は心底悔しげな表情で、クレーンゲーム機を見つめる。
もう少しで取れそうだったのに、あと少しで落としてしまったからだ。
 「もう一回!」
お金を投入し、山崎は落とした景品を狙って、クレーンを動かす。
ゲームに集中していたため、山崎は背後から何者かが迫っていることに気づかない。
「よし・・ここで・・!?」
山崎は背中に堅い筒状のものが押し付けられたことに気づく。
 「おっと・・動くなよ。風穴は嫌だろう?」
男のものと思しき声に、山崎は頷く。
山崎は男に促され、ゲームセンターを出る。
外で待っていた車に乗り込まされると、車内の男からも拳銃を突きつけられる。
 「おや?アンタは確か・・大藪組の・・・」
車内で待ち構えていた男の顔に、山崎は思わず呟く。
「くく・・。あの時は世話になったな」
男は笑みを浮かべつつ、憎悪の目で山崎を見つめる。
男やその仲間は、かつて大藪組という暴力団に所属していた。
だが、当局の依頼を受けた山崎により、犯罪の決定的な証拠を押さえられてしまい、組は壊滅、組員達は四散した。
当然、山崎のことを恨んでおり、復讐の機会を狙っていた。
「皆で可愛がってやるぜ。せいぜい楽しみにしてな。クク・・・」
拳銃を山崎に突きつけたまま、下卑た笑いを浮かべたそのときだった。
 突然、車が停止した。
「どうした?」
頭株の男の問いに、部下がフロントガラスの向こうを指し示す。
指先には、僧侶の格好をした、屈強な体格の男。
通せんぼをするかのように、錫杖を突いて立ちはだかっていた。
 「おい!どかせ!」
運転席の部下が、命令と共に、クラクションを鳴らす。
だが、僧侶はどく気配は全くない。
「仕方ねえ。痛い目見せてやれ!」
その命令と共に、今度は助手席から一人出てゆく。
いかにも腕自慢のケンカヤクザといった感じの男は、顔を凄ませ、僧侶に近づいてゆく。
男は僧侶の襟首を掴み、脅しつけようとする。
だが、直後、男の身体が地面に倒され、気を失った。
 「何だ!?クソ!こうなったら轢いちまえ!!」
頭の命令と共に、車が僧侶目がけて突進する。
だが、あわや轢かれる、と思ったそのとき、僧侶は飛び上がり、車の背後へ着地する。
直後、車の真ん中に亀裂が走ったかと思うや、真ん中から、真っ二つに斬り割れた。
「!!!???」
乗っていたヤクザたちはあまりのことに、声も出ない。
その隙に、山崎は車を飛び出し、逃げ出そうとする。
だが、今度は山崎の前に、僧侶が立ちはだかる。
同時に、僧侶は仕込杖の切っ先を喉元に突きつける。
 「何、もしかして、俺がお目当てだったの?アイツらみたいにさ」
「察しがいいな。一緒に来てもらうぞ」
「嫌だ・・って言っても連れてかれるだろうしねぇ。いいよ、別に」
山崎はあっさり同意する。
「賢明だな。では、ついて来い」
僧侶の命令に、山崎は後についてゆこうとする。
 「おい!何勝手に話進め・・ぎゃふっっ!!」
ヤクザの一人が追いかけようとしたそのとき、胸を真っ赤に染めて倒れる。
「やめといた方がいいよ~?この坊さんの手下に蜂の巣にされるよ?気づいてないだろうけど、狙撃手があちこちに隠れてるしさ」
山崎の言葉に、ヤクザたちはハッとし、周囲の建物を見回す。
ヤクザ達に警告のつもりか、直後、ヤクザたちの足元に数発、銃弾が着弾する。
嘘ではない、脅しではない、とわかるや、ヤクザたちは打って変わって大人しくなる。
 「やれやれ・・。また、乗るわけねぇ」
今度は僧侶と共に車に乗り込み、山崎はため息を吐く。
「そういうことだ。しばらく我慢しろ」
山崎に目隠しをしながら、僧侶はそういう。
「はいはい、わかってますよ。でも、出来れば短い時間で済むといいんだけどなぁ」
そんなことを言う合間に、車はその場を後にした。


 かなり長い時間走った末、ようやく車が止まり、降りることを許される。
車から降りても、目隠しはされたまま、山崎は僧侶やその手下に促され、建物の中へと足を踏み入れる。
廊下や階段をいくつか超えたところで、ようやく目隠しが取れたが、そこは道場のようになっており、壁には刀や槍などの武器が幾つも掛かっていた。
 「何コレ?」
思わず山崎は僧侶とその手下を見回す。
「儂の鍛錬場の一つだ。山崎蒸甫、貴様と立ち合いが望みだ!」
「ええ~っ!そんなメンドくさいの、嫌なんだけど~」
「貴様が嫌でも・・儂には立ち合わねばならん理由があるのだ!!」
そういうと、僧侶は二枚の写真を投げつける。
一つは武将の肖像画、もう一つは新田貞美の遺影らしきもの。
 「まさか・・・!?」
「そうだ・・!儂は新田義奉(にったよしとも)、今は出家して義捧斎(ぎほうさい)と名乗っておる。儂こそ・・新田義貞が子孫、貞美の父親じゃ!!」
笠を脱ぎ捨て、錫杖を山崎に突きつけた体勢で、義捧斎は正体を名乗る。
 「ちょ、ちょっと待った!貞美と戦ったのは俺だけど・・でも、殺してない!!」
「それはわかっておる。あの女教祖の手の者に狙撃されたのはな」
「だったら・・・」
「だが・・。それでも、貞美が貴様に敗れたのは事実!!新田一族の誇りと意地を賭け・・貞美に代わり・・貴様に再戦を申し込む!否やは言わせぬ!!」
(って冗談じゃないよ!メンドくさっ!!)
心の中で、山崎はそう叫ぶ。
だが、目の前の義捧斎の様子に、それは不可能なこともわかっていた。
「わかったよ。やればイイんでしょ・・。トホホ・・何でこんな面倒なこと・・」
「わかればよいのだ。さぁ、どれでも好きな得物を取るがいい!」
新田は場内の武器を指しながら言う。
嫌でも戦うしか無いと悟ると、山崎の反応は早い。
壁の武器類を見回し、長巻を見つけると、駆け寄り、手に取ってみる。
重さや長さ、何よりも壊れやすいような細工がしていないか、それらを念入りに調べ、確認した上で、長巻を構えた。
 「長巻か・・。なかなか良いものを選んだな・・。では・・儂はコレだ・・」
義捧斎が選んだのは刀。
肉厚・幅広で、刀というより、ナタのよう感じだ。
切れ味よりも、耐久性や防具の上からでも叩きのめせる打撃力を重視した、まさに実戦用の刀だった。
 「では・・・参る・・!!」
義捧斎は腰を落とし、重心を低く構えた体勢を取る。
同時に、山崎からは長さがわかりづらいように、刀を脇に構える。
低い姿勢のまま、義捧斎はジリジリと、山崎へ接近する。
山崎も、長巻を構え、ゆっくりと間合いを詰める。
長巻を構えたまま、山崎は義捧斎の様子をジッと伺う。
山崎は、義捧斎の背後の床に、焼け焦げたような跡があることに気づく。
不審を覚え、山崎はさらに義捧斎をジッと見つめる。
義捧斎の身体に隠れて確認しづらいものの、切っ先から、何かがポタポタと滴り落ちていること、それが床を焼き焦がしていることに気づく。
 不意に、義捧斎が刀を切り上げるように振るう。
直後、山崎目がけ、溶岩のしずくのようなものが飛んできた。
とっさに山崎は身体を捌いてかわす。
滴は床に着地するや、床を焦がす。
直後、義捧斎が一気に間合いを詰め、刀を突き入れてきた。
 「うわっ!?何ソレッッ!!」
刀をかわしながら、思わず山崎は言う。
義捧斎の刀身から、ジワリジワリと、溶岩状のしずくが滴っているからだ。
同時に、刀を振るいながら、義捧斎が特殊な呼吸をしていることにも気づく。
 「そうか・・!闘気術か・・!?」
「さすがだな・・。儂は闘気を溶岩状に変えられるのだ・・!!そうれいっっ!!」
切先を、マグマ状の闘気で覆い、巨大な溶岩の刃として、山崎に繰り出す。
 「うわっ!どっかの海軍大将じゃあるまいしっ!!うわあっ!!」
山崎は必死に突きをかわす。
だが、かわしたと同時に、義捧斎が刀を振るう。
直後、溶岩の滴が飛び散り、山崎の足にかかる。
 「う・・うわあああ!!??」
肉の焦げる音、熱した刀を突き込まれ、こねくり回されているかのような激痛に、山崎は絶叫する。
 「くあ・・うう・・!?」
山崎は脂汗をドッと流すも、長巻を支えに、何とか立ち上がろうとする。
しかし、そこへ今度は腕を狙って溶岩の滴が飛んでくる。
 「ぐう・・!!うわぁ!?」
両腕も封じられ、山崎は床に大の字に倒れる。
「悪く思うな・・。これも・・戦いだ・・・」
義捧斎は闘気の溶岩が滴る刀を、倒れた山崎に突きつける。
そして、今にも胸に突き入れようとした、そのときだった。
 突然、入口から、義捧斎の配下たちが転がり込んできた。
いずれも、打撃の跡があり、気を失っている。
直後、両手にそれぞれ刀を構え、土方が入ってくる。
 「返してもらうぜ」
「そうはいかん!邪魔するなら貴様も・・ん!?」
刀を構えようとしたそのとき、手りゅう弾のようなものが投げ込まれる。
床に着地するや、煙が噴きだした。
 「しまった・・!?」
煙が消えた時には、土方も山崎も消えていた。
「おのれ・・・・!!このままでは・・済まさんぞ!!」
義捧斎は怒りに柄を握りしめる。
そのあまりの力に、柄は砕け、刀身も闘気のマグマで蒸発してしまった。


 それからしばらく経ったある日・・・。
「どうだ?傷の具合は?」
「ん~?大丈夫大丈夫!ホラ、このとーり!!」
山崎は手足を思いきり動かしてみせる。
 「そうか。ソイツはよかったな。なら・・やっても大丈夫だな」
「え?何のこと?」
嫌な予感を覚えつつ、山崎は尋ねる。
「仕置きだ。さっさと尻出しな」
「え!?な、何でさ!?」
思わず山崎は言う。
 「おぃおぃ、しらばっくれても無駄だぞ。稽古をサボってゲーセンに行ってたのはわかってんだ」
「土方さ~ん、は、反省してるからさ~、それに俺、こんな目に遭ったんだから、勘弁してよー」
山崎は両手を合わせ、拝み倒すように言う。
 「ダメだ。稽古サボりは俺も勘弁出来んからな。それに・・勇さんだって、今回のことでは心配したんだぞ。わかってるのか?」
「う・・で、でもさ~」
「諦めろ。皆に迷惑や心配をかけたのは事実なんだからな」
「そうは言っても・・やっぱり・・嫌っ!!」
山崎はそういうと、煙玉を床に叩きつけようとする。
だが、それより先に土方が飛び込み、身体を押さえ込んでしまう。
 「ちょ、ちょっと!離してよっ!土方さん!!」
「やれやれ・・。仕方ねえな・・・」
ため息をつきながら、土方は山崎を膝にうつ伏せにする。
直後、思いきり手を振りかぶった。


 バッシィーンッッ!!
「うわあっ!!」
思いきりお尻を叩かれ、山崎は悲鳴を上げる。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「ちょ、ちょっとっ!痛いってば~!土方さぁ~んっ!!」
「当然だろう?お仕置きなんだからな。しっかり、反省しろよ」
土方はそう言いながら、山崎のお尻を叩き続ける。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「うわあっ!痛っ!痛ああっ!ちょっとっ!やめてってばあっ!!」
「全く・・・。稽古サボりとは・・いい度胸してるなぁ?」
お尻を叩きながら、土方はお説教を始める。
 「だ、だってさぁ、せっかくの休日なんだよ?休みの日まで、稽古とか修行なんて、メンドくさいじゃない~。せっかくなんだから、思いきり遊ぼうよー」
「馬鹿野郎!そんな態度で仕事が務まるか!それより・・・その結果、どうなった?ヤクザや新田の父親に捕まって、危ういところだっただろうが?」
「あ、あれは油断してただけだって~!い、いつもの俺ならあんなヘマしな・・」
バッシィィィーーーーンンンンッッッ!!!!
「うわあああああ!!!!」
突然の強烈な平手打ちに、山崎は絶叫する。
 「『油断してた』・・だと?おい・・!!」
(ヤバ・・!?地雷踏んじゃった!?)
山崎は顔面蒼白になる。
 「そんな根性で・・武道家として・・エージェントとして・・やっていけると思ってんのか!!」
バッシィィィーーーーンンンンッッッ!!!!
バッシィィィーーーーンンンンッッッ!!!!
「あぎゃああひいいいいいい!!!!」
あまりの打撃に、山崎は目から火花が飛び散る。
土方は山崎のズボンを降ろし、膝を組む。
おかげで、山崎は赤く染まったお尻を突き上げた体勢になる。
「いい機会だ・・。根性・・文字通り叩き直してやる・・。ハァァ・・・」
山崎は奥義の無呼吸連撃の体勢を取る。
そして、再び手を振り下ろした。
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
「うわあああああ!!!ぎゃあひいいいいいい!!!」
無呼吸ゆえに間髪入れずに繰り出される連撃に、山崎は絶叫する
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
「土方さぁぁんん!!ごめんなさぁぁいいい!!許してぇぇぇ!!」
「馬鹿野郎!根性叩き直してやる、って言っただろう!覚悟しろよ!!」
「そんなああああ!!うわあああああ!!!!」
山崎は絶望の声を上げる。
その後、長い長い間、山崎の悲鳴が響き続けた。


 「うっう・・うぅぅぅうううぅぅううう・・・・」
山崎はボロボロと涙を零して泣いていた。
お尻は今や倍以上に腫れ上がり、ワインレッドに染め上がっている。
 「ごめんなさい・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
山崎は許して欲しくて、必死に謝る。
「何が悪かったんだ?言ってみろ」
土方は一旦、手を止めて尋ねる。
 「うう・・!稽古・・サボって・・遊んで・・ました・・・」
「それから?」
「うう・・。それで・・ヤクザや義捧斎にさらわれ・・ました・・・」
「そうだが・・・・一番大事なことは何だ?」
「ひっく・・。それで・・皆に・・迷惑や心配・・かけました・・・」
「そうだ・・。仲間に心配や迷惑をかける真似をするんじゃない。いいか。確かにお前さんの腕は認める・・。だがな、仕事柄、いつも危ない状況になりかねないんだ。軽はずみな行動や考えが・・お前自身にも・・周りの皆にも危険を招く可能性があるんだよ。わかったか?」
「わ、わかりましたー!も、もう・・しません!!!」
山崎は必死に誓う。
それを見て、ようやく土方は手を止めた。


 「どうだった?」
「ああ、一応は反省してたぜ。俺の言いたいこともわかってはいるな」
「そうか・・。すまなかったな。トシには嫌な役目をさせてしまったな・・」
土方の報告に、近藤はそういう。
「別に構わんさ、アイツには勇さんより俺の方から叱った方がちゃんと効くからな。俺は会社の方があるんで、失礼する」
そういうと、土方は部屋を後にした。


 ―完―

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