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契遼州物語(ショタ/ショタ)


 太陽が昇る神木をシンボルとする、東方の島国『扶桑国(ふそうこく)』
その北方、海を越えた大陸のさらに北部に広がる契遼洲(きつりょうしゅう)地方。
扶桑国の何十倍もの広い荒野や草原が広がるこの地域の一角に、その村はあった。
 村は周りをしっかりと防壁で取り囲み、唯一の出入り口である門には、猟銃を構えた村人二人が、番人のように、門上の見張り台に立っている。
見張り台に掲げられた、太陽が昇る神木の旗が、扶桑国の開拓村であることを示していた。
 「ふぁぁ・・・」
「おぃ!真面目にやれよ!!」
若い見張りのあくびに、年長の村人が、思わず叱りつける。
 「んなこと言ったって・・退屈なんだから、仕方ないじゃないですか」
「馬鹿野郎!そんなたるんだこと言ってんじゃない!!馬賊共に襲われたら、どうするんだ!!」
若者のだらけた態度に、年長の村人は怒る。
契遼洲の治安は、決して良いものではない。
かつての主だった、大陸の帝国が、戦争によって手離して以来、勢力拡大を狙う周辺諸国による争いが絶えない。
それは無法者の跳梁跋扈を呼び、そこに住む人々は、自分達で身を守ることを迫られた。
防塁や見張り台に守られた村も、猟銃などで武装した開拓者の姿も、契遼洲では当たり前の光景であった。
「そんなこと言っても・・・退屈なんだか・・・」
若者が弁解しようとしたとき、鈍い音がする。
直後、年長の村人が倒れた。
「あれ!?どうし・・あうっ!?」
顔面に鈍い痛みを覚えると同時に、若者は足を投げ出すように、倒れる。
倒れた若者の顔からは、石が転がり落ちた。
 直後、暗闇の中から、馬に乗った複数の人影が現れる。
馬賊の一団だ。
馬賊たちは馬を進め、村の門へと近づいてゆく。
門前までやって来ると、頭目の指図で、馬賊たちは鉤縄を引っかけ、スルスルと門を昇って超えてゆく。
門を開けると、馬賊たちは、村へと侵入した。
 馬賊たちが村へ踏み込んだ直後、複数の光が、馬賊たちを照らす。
「待っていたぞ・・!!馬賊共!!」
ライトの照らす中、凛とした声と共に、声の主が姿を現した。
 声の主は、13歳前後の少年。
黒曜石のような、美しい艶の黒髪と瞳の持ち主で、少年らしいあどけなさの中にも、凛々しさを感じさせる面立ちをしている。
黒を基調にした軍用マントに、緑を基調にした扶桑国軍の折襟式軍服を身にまとっているが、少年だからか、ズボンは丈の短い、濃い緑色の短パンを履いている。
代わりに、黒いハイソックスと軍靴で、足を覆っていた。
 「だ・・誰だお前は!?さっさとどけ、ガキ!!」
「契遼駐屯軍第七治安隊隊長、近方総司郎(ちかかたそうじろう)である!!武器を捨て、大人しく縛につけ!!」
近方と名乗った少年は、抜き打ちの体勢でサーベル式の軍刀を構えつつ、馬賊たちに命令する。
 「第七治安隊・・近方だと!?」
近方の名乗りに、馬賊たちの表情が変わる。
治安隊はその名の通り、開拓地の治安維持を任務とする部隊。
無法者である馬賊たちにとっては、宿敵だ。
中でも、第七治安隊を率いる近方は、少年ながらも、馬賊の討伐に幾度も実績を上げている。
それこそ、馬賊仲間の間で、賞金が掛けられるほどに。
 「しゃらくせえ!ガキのくせに!!」
馬賊達は激昂し、一斉に拳銃を発砲する。
多数の銃弾が、近方目がけ、襲いかかる。
だが、近方は避けようとしない。
 不意に、軍刀の鞘から、閃光が迸った。
閃光は近方の前で、縦横無尽に、幾重にも重なって走る。
直後、近方めがけて放たれた銃弾が、悉く弾き返された。
 はじき返された銃弾は、馬賊達へと帰ってゆく。
「ぎゃっ!」
「ひぃえっ!?」
一部の馬賊達は、悲鳴と共に、帰って来た銃弾の餌食になる。
その衝撃で陣形が崩れたところへ、近方が突入する。
軍刀が弧を描いて煌めくたび、馬賊達は倒れてゆく。
ある者は腕を、またある者は脚を、別の者は顔を押さえて、呻いている。
 「残るは・・貴様一人だぞ。どうする?」
唯一、無傷で立っている頭目に軍刀を突きつけながら、近方は尋ねるように言う。
部下達は倒され、近方の部下や、村人達もそれぞれライフルや猟銃を構えて、馬賊達を取り囲んでいる。
もはや、残された選択肢は一つしかない。
頭目は、諦めた表情で、銃を捨てる。
直後、兵士達が殺到し、頭目を拘束した。


 それからしばらく経ったある日・・・。
「近方総司郎、只今出頭いたしました」
「うむ、待っていたぞ、近方隊長」
敬礼と共に挨拶をする近方に、上官がそう返す。
 「先日はよくやってくれた。おかげで、開拓地の頭痛の種が一つ減った」
「いえ、当然のことをしたまでです。それより、何のご用件ですか?」
「うむ・・。実はだな・・先日、君が捕えた馬賊達だが・・・。彼らに逃亡されてしまったのだよ」
「な・・!?どういうことです!?」
近方は思わず声を上げる。
 「情けないことだが・・・護送中に、別の馬賊団に襲撃され、まんまと奪われてしまったのだ」
「何と・・犯人はわかっているのですか!?」
「これが・・・現場に残されていた・・・・」
上官はそう言って、あるものを机上に置く。
置かれたのは、獅子頭をモチーフにしたアクセサリー。
 「これは・・!?」
「そうだ。『獅頭』一味だ」
上官の言葉に、近方の表情はさらに緊張の度を強める。
『獅頭』とは、ここ最近、契遼州を騒がせている馬賊の一味。
自分達の犯行現場に、獅子頭をモチーフにしたアクセサリーを置いてゆくため、その名がつけられた。
 「奴らが・・ついに・・・現れたのですね・・・」
「そうだ。近方隊長、獅頭一味の捜査を君に命じる。くれぐれも頼んだぞ」
「はっ!お任せ下さい!我が身命に代えましても!!」
敬礼をしつつ、近方はそう返事をする。
その後、慌ただしく、上官の執務室を後にした。


 それからしばらく経ったある日・・・・。
(して・・やられた・・!?)
汚れが目立つ壁に身をひそめつつ、近方は歯噛みする。
捜査の結果、ようやく一味に関する手がかりを掴むことが出来た。
その手掛かりに基づき、部下と共に出動したまではよかった。
だが、その情報は、敵の罠だった。
待ち伏せを受け、部隊はほぼ壊滅してしまった。
近方も、廃墟となった寺院に追い込まれてしまっていた。
 (皆済まぬ・・!!私のミスのせいで・・!!)
心の中で、近方は犠牲となった部下達に詫びる。
(だが・・決して皆の犠牲を無駄にはせぬぞ・・!!)
一味のうち、何人かの顔はしっかりと確認した。
必ず生き延び、一味を壊滅させる。
その思いが近方に、力を与えていた。
 近方は、入口の方をジッと見つめる。
耳を澄ますと、微かな息遣いが、近づいてくるのに気づく。
(来たな・・!!)
敵が寺院内に踏み込んできたことを察知し、近方の表情が緊迫したものになる。
近方は傍らの像の陰へと身をひそめ、様子を伺う。
やがて、二人の馬賊が、姿を現した。
二人とも、六連発の回転式拳銃を手にしている。
馬賊達は近方の姿を求め、寺院内を見回す。
 「おぃ、私はこっちだぞ」
声に反応し、思わず馬賊達は振り向く。
直後、近方の軍刀が一閃する。
近方の近くにいた馬賊が、苦悶の声と共にのけ反って倒れる。
もう一人の馬賊が発砲するが、近方はそれを見切ってかわす。
直後、近方はグッと踏み込みながらもう一人の馬賊に突きかかる。
軍刀の突きを食らい、もう一人の馬賊も、絶命した。
 「ふふ・・。中々やるじゃないか、さすが音に聞こえた近方総司郎だね」
不意に聞こえた声に、近方は軍刀を突きつけるように構えながら、振り返る。
視線と切っ先の先には、近方と同年代の少年が立っていた。
 少年は紺を基調にした、学帽風の帽子に長袖の上着と丈の短い半ズボンを身にまとっている。
琥珀のような美しい瞳の持ち主で、映画俳優顔負けの整った面立ちをしている。
左肩には、担ぐように、獅子頭を乗せていた。
 「何者だ?もしや・・・」
少年が肩に乗せている獅子頭に、近方の表情が険しくなる。
「ふふ、ご明察だね。そう・・僕が『獅頭』の頭目・神楽修市(かぐらしゅういち)、馬賊名神舞(しんぶ)さ」
「貴様が・・。しかし・・まさか扶桑人だったとは・・・」
「意外かい?でも・・それが契遼州さ。野心と実力さえあれば、民族も出身も関係ない。僕は、この契遼の王になるのさ」
「世迷言はそれまでにしてもらおう。例え扶桑人でも・・開拓地の脅威になる者は・・斬る!!」
気迫と共に、近方は神楽に斬りかかる。
対して、神楽は獅子頭を両手で構える。
獅子頭が口を開くや、催涙スプレーが思いきり噴射された。
 「く・・!?」
咄嗟に近方はマントを使って噴射を防ぐ。
近方の動きが止まったところへ、神楽が襲いかかる。
神楽の手には、柄頭に獅子頭の装飾が施された、両刃の真っすぐな剣が握られている。
近方は突き出された剣を、軍刀で受け止める。
刃と刃がかみ合い、互いに相手を押しのけようとする。
鍔迫り合いを繰り広げながら、社交ダンスのように、二人は目まぐるしく位置を入れ替える。
やがて、近方の方が押し始める。
「ハアッっ!!」
気合と共に、近方が神楽を押しのける。
後ろへ体勢が崩れたところへ、近方がさらに斬り込む。
だが、神楽は横へ回り込むように動いて、かわしてしまう。
(しまった!?)
近方はミスを誘った神楽の罠だったことに気づく。
軍刀の切っ先が床を叩くと同時に、近方は後頭部に鈍い衝撃を覚える。
直後、近方の目の前は暗闇と化し、そのまま意識を失った。


 目を覚ますと同時に、近方は床が目の前に迫っているのが見えた。
さらに、目の前に大きな鏡が置かれていることに気づく。
鏡に映し出される近方の姿は、何とも奇妙なものだった。
 近方はZ字のような形で、床に膝をつき、身体を前方に折り曲げた姿勢で、板に拘束されている。
板には両方の手首と足首、そしてお尻が拘束されている。
ご丁寧にも、お尻側にも鏡が置かれているため、鏡を通して、拘束されたお尻が近方にも見える。
拘束されたお尻は、短パンは勿論、下着も脱がされているため、最奥部の恥ずかしい部分まで丸見えだった。
 「な・・何だコレは!?」
「『反省板』っていうやつさ。お尻を無様にさらした恥ずかしい姿でさらしものにして、反省させるためのやつさ」
近方の目の前に、勝ち誇った表情で、神楽が現れる。
 「く・・貴様!外さぬか!?」
「そうはいかないねぇ。それにしても・・フフフ、可愛くて、綺麗なお尻だねぇ」
神楽は笑みを浮かべると、近方のお尻を撫でまわす。
「ひ・・!?やめぬか!?貴様!!この変態!?」
神楽の痴漢行為に、近方は嫌悪感と怒りをあらわにする。
「ああ・・。その怒った顔も可愛いなあ。でも・・もっと別の可愛い顔が見たいんだよね」
神楽はそう言うと、おもむろに手を振りかぶった。
 バッシィーーンンッッ!!
神楽は、拘束された近方のお尻目がけ、思いきり平手を叩きつける。
「ぐ・・!?」
弾けるような音と共に、近方のお尻に鈍い痛みが走る。
お尻の痛みに、思わず近方は苦悶の声を漏らしてしまう。
 「おや?痛いのかな?」
「ば・・馬鹿にするな!こ、この程度・・痛くも痒くもない!!」
小馬鹿にしたような、神楽の声に、近方は思わず言い返す。
「ふふ、じゃあ、100叩きくらいしても、大丈夫だよねぇ」
(100だと・・!?)
神楽の声に、近方は愕然とする。
そんなに叩かれたら、お尻がどうにかなってしまう。
だが、そんなことは決して言えない。
開拓地の治安を守る軍人として、馬賊などに屈するなど、許されないことだからだ。
自身の首を絞めるのを承知で、近方はこう言うしなかった。
「やれるものなら、やってみるがいい!!私は決して貴様には屈服せぬぞ!!」
「言うねぇ。じゃあ、お言葉に甘えて、行きますか!!」
近方の強がりに、神楽は笑みを浮かべる。
そして、再び手を振り上げた。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「・・!・・・!・・・!・・・!」
拘束されたお尻に、容赦ない平手打ちが、何度も何度も叩きつけられる。
顔が苦痛で歪むも、近方は必死に声を押し殺す。
 バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!バシンッ!
「ふふふ、無様だね。惨めだね。情けないねぇ。こんな恥ずかしい格好で、幼稚園児みたいに、お尻ぶたれてるなんてねぇ。ほらほら~、お尻が猿みたいに赤くなってるよ~」
お尻を叩きながら、神楽は言葉でも近方を攻めたてる。
鏡に映るお尻が見えるように、神楽は近方の頭を持ち上げる。
「う・・うるさい・・!しゃべる・・な・・!?」
「もう・・反抗的だねぇ。そんな悪い子には・・コレでお仕置きしてあげるよ」
神楽はそういうと、今度は鋲付きのパドルを取り出す。
 バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
「が・・!?ううあああ!!!」
平手打ちとは、まるで比べ物にならない激痛に、近方は絶叫する。
一撃でお尻の皮が破れ、血がにじんだ。
「あれ~?痛い?泣いちゃうのかな?」
「ば・・馬鹿に・・す・・うわああああ!!ああああ!!」
反論しかけたところに、再度パドルを叩きつけられ、近方は絶叫する。
 「ほらほら、どうする?『ごめんなさい。もう二度と僕たちの邪魔はしません』って謝れば、あと100叩きくらいで許してあげるよ」
「ふざけ・・るな!!貴様ら馬賊とは取引も・・屈服もせん!!」
「そう。じゃあ、僕も許してなんてあげない。幾ら泣いても叫んでも、倍の200回は叩いてあげるよ」
残酷な笑みを浮かべて、神楽はパドルを振り下ろす。
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
バッシィィーーーンンン!!!
「うっあああああああああああ!!!!!!!!」
その後、長い長い間、近方の悲鳴が寺院内に響いていた・・・・。


 「ふう~っ!本当に・・スゴイなぁ。全然屈服しなかったよ」
血で赤くなったパドルを投げ捨てながら、神楽は感心した表情で言う。
近方はパドル打ちの嵐で、完全に気を失っている。
100回以上叩かれたお尻は、皮が破れ、血が滲んで痛々しい有様になっていた。
だが、そんな責め苦を受けながらも、近方は神楽に屈することは無かった。
 「お頭・・・。コイツをどうしますか?」
コトが終わったのを察し、拳銃を手にした手下達が入って来る。
「このままでいいよ。最初から殺すつもりなんて無いし」
「ですが、このまま放っておけば、間違いなくお頭を仇と付け狙いますぞ」
「いいんだよ。僕はいずれこの契遼州の王になる。ライバルがいなくちゃ、面白くない。近方なら、僕の最高のゲーム相手になってくれるだろうしね」
笑みを浮かべて、神楽はそう言うと、部下達と共に、その場を後にする。
反省板に拘束され、痛々しいお尻をさらしたままの近方の脇に、自分達の犯行であることを示す、獅子頭を置いて・・・。


 後日・・・。
「く・・・!?」
近方は顔を顰め、思わずお尻をさする。
(く・・!何と情けない・・!尻を叩かれた程度で・・歩くのも差しつかえるなど・・!?)
未だお尻の痛みに悩まされる自身を、近方は叱咤する。
(必ず・・捕えてみせる・・!!絶対に・・後悔させてやるぞ!!)
不敵な笑みを浮かべる神楽の手配書を見つめたかと思うと、近方は手配書を頭上へ投げ上げる。
直後、軍刀が一閃し、手配書を真っ二つにした。


 ―完―

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