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王国軍中尉ルチア・ルヴェル1



 だだっ広い練兵場の中を濃い青を基調にした軍服を着た男女がランニングしている。
軍服の胸には左足で立つグリフィンの紋章が描かれている。
このグリフィンはヴィクトール王家の紋章だ。
ここは、ヴィクトール王国という、九州ほどの国土を持つ立憲君主制国家の国軍の司令部であった。
 その王国軍の司令部内のある一室では緊迫した空気に満ちていた。
一人の若い兵士がドキドキと不安そうな表情を浮かべて、執務机を見つめている。
執務机では、一人の女性士官が報告書の束をジッとチェックしている。
 その女性士官は年は23,4歳、漆を思わせる見事な艶をした長い黒髪の持ち主。
サファイアのような見事な青い瞳をした非常に整った顔立ちには、どこか厳しさやプライドの高さを感じさせるものがある。
女豹のようにしなやかで均整の取れた身体を王国軍の青の制服に包んでおり、胸の紋章には尉官(大尉・中尉・少尉のこと)クラスの証である緑のグリフォンが、袖口には同じように尉官であることを示す黄色の線一本が描かれていた。
彼女の名はルチア・ルヴェル。
王国陸軍5番部隊の中尉を務めていた。
ちなみに、中尉というのは30~60名の隊の指揮官である。
 「リュバン曹長・・・」
ようやくルチア中尉は顔を上げたかと思うと、目の前に立っている部下に話しかける。
「は・・はいっ・・・」
「どれもこれも誤字脱字ばかりじゃないの。全部作り直して来なさい」
「どれも・・って全部ですか?」
曹長は突き返された書類を見やる。
どんなに少なく見積もっても20枚以上は軽くありそうだった。
「そうよ。それも今日中にね。今日が期限なのよ、どれも」
「そ・・そんなぁ・・無理ですよぉ・・」
「無理でも何でもやりなさい。さもないと・・・」
ルチア中尉の美しい顔が怒りで険しくなる。
これはいかんと見た曹長は慌てて書類をひったくるようにして抱えると、脱兎のごとき勢いで出て行った。


 「全く・・・皆いい加減なんだから・・」
ルチアはうんざりした表情を浮かべるとため息をつく。
どんなに大変な仕事でもきちんとしっかりこなしている彼女にとっては、部下達が怠けたりどこかで手抜きしていたりするのが何よりも許せなかった。
だから、部下達がどこかいい加減な報告書を出したりすると容赦無く突き返して手直しさせるなど日常茶飯事であった。
 「おやおや、相変わらず厳しいな」
突然、男の声が聞えてきた。
ドアの方を見やるといつの間にか男が入ってきている。
現れたのは28,9歳くらいの男性将校。
髪は見事な茶髪で前髪を真ん中で分けており、髪同様茶色い瞳をしている。
一流モデル顔負けの整った顔立ちだが、どこか意地悪げな感じをかもし出していた。
身長も高く体格もすらりとした均整の取れたもので、軍よりもモデルやスポーツ選手の方が似合っていそうな容貌をしている。
軍服佐官(大佐・中佐・少佐)の証である赤のグリフォンが胸に、袖口には黄色の線二本が入っていた。
彼はルイ・マッセナ大佐といい、ルチアの上司だった。
 「何しに来たんですか?」
ルチアはどこか嫌そうな表情を浮かべると上司に尋ねる。
「決まってるじゃないか。君の顔を見に来たんだよ」
「冗談を言うんならさっさと帰って下さい」
上司であるのに、ルチアはつれない態度でドアを指し示す。
「おやおや、つれないなぁ。まぁ、そこがかわいいんだがね」
部下の言葉にマッセナは大げさに嘆息してみせたり、そうかと思うと逆にニヤニヤと笑みを浮かべたりする。
それを見るとだんだんとルチアの眉が釣り上がり始めた。
だが、必死に堪える。
大佐は自分をからかったりするのがちょっとした楽しみなのを知っていたからだ。
「大佐・・いい加減になさらないと・・・」
ルチアは机の引き出しに手をかけたかと思うとそれを引き出す。
引き出しの中には将校用の自動拳銃が入っていた。
 さすがに部下の素振りに気付いたマッセナは表情を真剣なものへと変える。
「まあ冗談はこれくらいにしておいて・・・。実は至急頼みたいことがあって来たんだよ」
「何です?」
「うむ。至急つくってもらいたい書類があってね。それを君に頼みたいのだよ。ちなみにこれがそのリストだ」
そういうと大佐はつくってもらいたい書類のリストを渡す。
「わかりました。いつまでです?」
「今日の6時までに頼むよ」
「わかりました」
ルチアはリストを受け取ると早速目を通す。
大佐は出て行こうとするが、おもむろに立ち止まったかと思うとルチアの方を振り向いた。
そして、再びニヤリという笑みを浮かべる。
「そうそう。さっきの怒りかけていた君の姿、とても可愛かったよ、ルチア中尉」
「な・・・・っっ!!!」
大佐の発言に思わずルチアは赤くなりかける。
直後、すぐにも立ち上がったかと思うと強引にマッセナを部屋から押し出してしまった。
「ちょ・・・ルチア中尉・・」
「もう帰って下さい!!」
大きな声でそう言うや、バタンという音と共にドアを閉める。
同時に鍵をかける音も響いた。
 「ちょっとからかっただけなんだがねぇ・・・。まぁ、そこが可愛いのだがねぇ・・」
大佐は中尉の連れない振る舞いを大げさに嘆息したかと思うと嬉しそうにニヤリと笑う。
「まあ嫌でも6時には会いに来るのだからそれまでの我慢だな。ふふふ」
口元を吊り上げて怪しい笑みを見せたかと思うと大佐はその場を去った。


 「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・」
大佐を執務室から追い出すと、ルチアは荒い息をして胸をなで下ろす。
(ま・・全く・・何考えてるのよ・・大佐は・・・可愛い・・だなんて・・からかうのもたいがいにして欲しいわ!!)
上司のふざけた行動にルチアは思わず憤慨する。
(いつもそうだわ!!ふざけた顔して、人のことからかって!!本当に何考えてるのかしら!!)
普段大佐が自分にやっている同様の言動を思い出しながら、さらに彼女は憤慨する。
だが、すぐにも中尉は頼まれた仕事のことを思い出した。
 (そうだわ。書類の作成をしなきゃだわ)
彼女は渡されたリストを目に通すと、すぐに資料室へ飛んでいって必要な資料を借り出し、執務室へ持ってくると、パソコンを開き、資料に目を通しながら頼まれた書類を作成しようとする。
 だが・・・・。
(駄目・・駄目だわ!!)
せわしなくキーボードを叩いていた手を止めたかと思うと、ルチアは椅子の背もたれに身体を預け、首を回したりする。
(駄目だわ・・・全然集中できないわ・・・)
そう、パソコンに文章を打ち込もうとするたびに、大佐がニヤニヤとからかうような笑みを浮かべて「可愛い」などとのたまう姿が脳裏にモヤモヤと浮かんでくるのだ。
そのたびに集中力を妨げられてしまい、仕事が手につかなくなる。
(こんなのじゃ仕事にならないわ・・もう!!)
イライラが募って仕事が出来ず、彼女はそのせいでさらにイライラしてくる。
(仕方ないわ。このままじゃ仕事なんて出来るわけないから・・どこかでちょっと気分転換してきた方がいいわね)
そう決意するとルチアはパソコンの電源を落とし、ドアに鍵をかけたかと思うと部屋を去っていった。


 「気持ち・・いい風ね・・・」
木陰に座ったルチアは春風を受けて思わずつぶやいた。
ここは中庭で休憩時間等には一休みしたり、弁当を食う為に将兵たちがやって来る。
ルチアも気が詰まったりするとここで気分転換を図ったりしていた。
ルチアはホットココアの缶を傾けると、一息つく。
大佐のせいで抱える羽目になったモヤモヤはかなり薄れてきていた。
春風は心地よく、日もほんのり当たって暖かいせいか、ウトウトしてくる。
 (ちょっとだけ・・なら大丈夫かしら?)
あまりに心地よいためか、ついそんなことを考えてしまう。
さすがの彼女も誘惑に負けてしまったのか、やがてゆっくりと瞼を閉じた。
 (んん・・・・あら?)
うっすらと目を覚ますや、ルチアは周りが暗くなっていることに気付いた。
同時に何か肌寒さを感じる。
ぼんやりとしたままあたりを見ていると夕暮れになってしまっている。
 (まさか!?)
ハッとしたルチア中尉は左手の腕時計を見やる。
時計はをあと数分で6時というところであった。
(大変!!)
中尉はすぐにも立ち上がるや、慌てて執務室を目指す。
ようやくの思いで執務室に戻るとルチアは急いで扉を扉を開け、中に入る。
だが、その表情には絶望に近い表情が漂っていた。
幾らルチアが有能でも僅か数分で必要な書類を作成することなど出来るわけもない。
(どうしたら・・いいの・・)
さすがの彼女も悲嘆に暮れかけていたが、悪いことというのは重ねてやって来るらしい。
「ルチア中尉、書類は完成したかね?」
扉が開く音と共にマッセナ大佐が入ってきたからだ。
「た・・大佐・・・」
ルチアはどこか青ざめた表情でマッセナ大佐を見つめていた。
「中尉、書類を引き取りに来たよ。さぁ、渡してくれたまえ」
大佐の言葉にルチアの表情は強張る。
「どうしたのかね?身体の具合でも悪いのか?」
大佐は中尉の様子がおかしいことに気付き、さすがに心配そうな表情になる。
「も・・・申し訳・・ありません・・・。じ・・実は・・・・」
ルチアは非常に言い難そうな表情を浮かべ、しばらく逡巡しているような素振りを見せる。
だが、ようやくのことで気を落ち着かせると、オズオズと話し始めた。


 「なるほど・・・さっきまで寝てしまっていて一つも作成していない・・。そういうことなのだね?」
「は・・はぃ・・本当に・・申し訳ありません・・・」
ようやくのことで話し終えると、ルチア中尉はシュンとうな垂れてしまう。
「申し訳ないで済むと思っているのかね?君ともあろう者が、提出の遅れ等でどれほどの迷惑がかかるかよく知っているだろう?」
ルチアはジッと黙って立っている。
彼女自身が自分のミスがどれほどの人間に迷惑をかけるのかよく分かっていた。
だからこそ、書類提出に対して自身にも部下にも徹底的に厳しく、そして完璧に行うことを勤めてきたのだから。
しかし、よりにもよって彼女自身がそういうミスをやらかしてしまった。
悔しくて、申し訳なくて、自然に両拳をブルブル震わせてしまう。
「申し訳・・ありません。必ず・・今日中に仕上げ・・ますので・・」
「それは当然だが・・・。しかし・・君のミスは皆に迷惑をかけるようなことなのはわかっているな?」
「は・・はぃ・・・」
「それでは、何らかの処分が必要とは思わないかね?」
「は・・はぃ・・。覚悟して・・います・・」
「どんな処分でもかね?」
「は・・はぃ・・覚悟は・・出来てます・・私が・・悪い・・以上・・どんな・・処分でも・・甘んじて・・受けます・・・」
緊張に身体を強張らせながら、彼女はようやく言った。
「よろしい・・。では・・君の処分を決めるとするか・・・」
マッセナ大佐はそういうと中尉の執務室を見回した。
大佐は執務机の方を向くと、椅子に目を留める。
しばらく椅子を眺めているうちに、大佐は何かいい案を思いついたような表情を浮かべた。
 ルチアが緊迫した面持ちで見守っていると、マッセナはおもむろに椅子へ移動する。
そして膝を突き出すように浅く椅子に腰かけたかと思うと、ルチアに声をかけた。
「ルチア中尉、来たまえ」
「は・・はいっ・・・」
ルチアは緊張した表情のまま、すぐにも駆けつける。
「では、ここにうつ伏せになりたまえ」
傍に立ったルチアに対し、マッセナは自分の膝を指すと、そう命令した。
 「あ・・あの・・大佐・・何を・・なさるん・・ですか・・?」
大佐が何を考えているのか全く想像がつかないためか、怪訝そうな表情で尋ねる。
「ふふふ・・お仕置きだよ・・・」
「おし・・おき・・?」
「そうだよ。お尻ペンペンだよ」


 「え?」
ルチアは思わず声を上げる。
同時に間の抜けた表情をさらしてしまった。
「あ・・あの・・今・・何て・・おっしゃったんですか?」
大佐の言葉が信じられず、思わずルチアは尋ねた。
「聞えなかったのかね?君の処分は『お尻ペンペン』だよ」
何を寝ぼけているのだ、といわんばかりの平然とした表情でマッセナ大佐は部下に答えた。
「じょ・・冗談はやめて下さいっ!大佐っ!」
ルチアは思わずキッと睨みながら声を上げる。
悪質な冗談を言ってからかっているように思えたからだ。
「冗談など言ってはないよ、私は。君への罰は『お尻ペンペン』に決定したのだから」
マッセナは『お尻ペンペン』のところを強調しながら言う。
 「そ・・そんなっ・・・」
ルチアは唇をブルブルと震わせ、どうしても信じられないといった表情で上司をジッと見つめている。
「まさか嫌だと言うつもりなのかね、中尉?」
「当たり前じゃないですか!何で・・そんな・・子供でも・・あるまいし・・」
「これはおかしい。処分を決めるのは私の権限だろう?ならば私がどのような処分を課しても違反ではないはずだがね?」
「だ・・だからと・・いって・・こんな・・人を侮辱したような処分・・・」
中尉はさすがに納得がいかないためか、抗弁しようとする。
だが、大佐は手をかざすように上げて抗弁を止める。
そして、ルチアと向き合ったかと思うと、重々しく口を開いた。
 「ルチア中尉、君は自分の言葉に責任を持てないのかね?」
「な・・何を・・いきなり・・」
突然のマッセナの言葉にルチアは困惑する。
「自分が悪いから覚悟は出来ている、どんな処分でも甘んじて受ける、と言ったのは君ではなかったのかね?」
「そ・・それは・・そうですが・・・」
「にも関わらず、子供じみているから嫌だなどというのは、自身の言葉を翻すものではないのかね?それでは自分の言葉に責任を持てないと見なされても仕方ないのではないのかね?」
ニヤリと笑みを浮かべながら大佐は中尉を問い詰める。
さすがのルチア中尉も正論を突きつけられて返す言葉が無かった。
 「わ・・わかり・・ましたわ・・・言う・・通りに・・します・・」
「さすがルチア中尉だ。理解が早くて助かる。さぁ、早く来たまえ」
大佐は笑みを浮かべると軽く膝を叩いて促した。
 ルチアは足を進めようとするも、恥ずかしさやプライドがムクムクと頭をもたげて思わずためらってしまう。
(何をしているのよ!!悪いのは私なのよ!!どんなに恥ずかしくても自分のせいだわ)
自身にそう言い聞かせ、自らの足を叱咤する。
(何言ってるのよ。人の言葉尻を捉えて楽しんでるのがわからないの?見てみなさい、あの男の表情を。ニヤニヤと意地悪げに笑って。私に恥ずかしい思いをさせるのが楽しいのよ。こんな馬鹿らしいことやる必要なんてないわ!!)
進もうとすると、心の奥底からそんな声が響いてくる。
責任感と納得できないという感情が入り混じり、煩悶しながらルチアは立ち止まっていた。
 その煩悶の様子をマッセナは楽しげに見つめている。
だが、このままではいつまでも埒が明かない。
そこで、マッセナは一気に畳み掛けてやることにした。
「どうしたのかね?来れないのかね?」
「い・・今・・行きますわ・・」
「フフフ。無理しなくていいのだよ。怖いのだろう?」
「こ・・怖い・・?」
何を言っているのだ、と思わずルチアは困惑する。
「怖いから来れないのだろう?まぁ、初めての経験だろうから無理もないだろうがね」
そういうと大佐は鼻で笑ってみせる。
それを見るや、ルチアの両頬は紅潮する。
(く・・悔しい!!)
ルチアは指の爪が食い込むほどに手を握り締める。
(わ・・私を・・臆病者だと馬鹿にしてるのね!!いいわ。そうでないことを見せてあげるわ!!)
次の瞬間、ルチアはあっという間に大佐の膝の上にうつ伏せになっていた。
 「大佐・・これで文句はないかしら?」
ルチアは振り向いて大佐の顔を見上げると、挑戦状を叩きつけるかのように言いやった。
「ふふん、まあいいだろう」
大佐はそう言ったかと思うと中尉のズボンに手をかける。
次の瞬間、ズボンが腿の半ばまで降ろされたかと思うと、あっという間に中尉のお尻があらわになった。
 「なっ・・何をっっ!!!」
まさかお尻を出されるなどとは思いも寄らなかったため、ルチアは動揺しかける。
「何を驚いているのかね?昔からお尻ペンペンのときはお尻を出すものと相場が決まっているだろう?まさかそんなことも知らないのかね?」
「ふ・・ふん・・そんなことくらい・・知ってますわ・・・」
ルチアは悔しげな表情を一瞬、浮かべるもののすぐに冷静そのものの表情に戻る。
無様な姿を見せれば大佐を面白がらせるだけだと思ったのだ。
 「まあいい。では行くぞ。覚悟はよいかね?」
死刑宣告をするかのようにマッセナは言うと、ルチアはつんとした表情を浮かべて答えた。
「いつでもどうぞ。覚悟は出来ていますわ」
ルチアの挑戦するかのような声にマッセナは満足げな笑みを浮かべる。
マッセナは右手をルチアの腰に回して抱えるように押さえつける。
ルチアも大佐の膝を両腕をしっかりと抱えるようにしがみつく。
互いに準備を終えると、マッセナはゆっくりと左手を振り上げた。


 ヒュウンッ!・・・・バシィィィンッッッッ!!!!
「・・・・・」
空を切る音と共に平手が振り下ろされたかと思うや、激しい音と共に大佐の手が中尉の女性らしい丸みを帯びた形のよいお尻に炸裂した。
(う・・・・い・・痛い・・っっ!!!)
お尻の骨にまで響きそうな衝撃が走ったかと思うと、衝撃がお尻全体にじわりと広がってゆく。
予想していたのよりもずっと痛かったが、声を押し殺し、耐え切ろうとする。
お尻叩きで悲鳴を上げたり泣いたりするなんて、余りにも恥ずかしかったからだ。
バシィン!バアンッ!バシィンッ!ビタァンッ!
ルチアはグッと口を横一文字に結び、ジッとしている。
だが、さすがにお尻が痛いのか、上司の膝にしがみついている両腕に力を込める。
「全く・・・君ともあろう・・者が・・・」
やや呆れたような口調で口を開いたかと思うと、平手を振り下ろしながらマッセナが説教を始める。
ビタァンッ!バアシィンッ!バシィン!バアンッ!バチンッ!
ルチアは声を立てることは無く、代わりに大佐のズボンをしっかりと握り締め、苦しげに表情を変化させる。
「うたた寝・・するくらいなら・・ともかく・・」
バアシィンッ!ビタァンッ!ビシャアンッ!バアシィンッ!
一打ごとに両腕が強張り、或いはズボンの裾を握る手がさらに締まったり或いは緩んだりする。
 「ルチア中尉・・・。無理はしなくてよいのだがね?」
不意にマッセナは優しい声でそんなことを言い出した。
「無理?何をおっしゃっているのです?」
「別に意地を張ることはないのだよ。痛ければ素直に声を出したまえ。無理に我慢しようとすると苦しいだけだぞ?」
さすがのマッセナもルチアが声も上げずに必死に堪えようとする姿にちょっと可哀想に思ったのか、そんな助言を言う。
だが、かえってルチアのプライドを刺激してしまったようだった。
 「あら。何を馬鹿なことをおっしゃっているのです?こんなもの、何でもありませんわよ」
「別にむきにならんでも・・」
大佐は宥めようとするがルチアは振り返る。
「むきになどなっておりませんわ。大佐、余計な親切はご無用に願いますわ!」
取り付く島も無いけんもほろろな態度でルチアはあしらう。
さすがのマッセナも、苦笑せざるを得なかった。
 (やれやれ・・・プライドが高くて困った子だな・・まぁ、そこが可愛いのだが・・)
中尉の振る舞いに思わず大佐はニヤケそうになる。
(だが・・・いくら私の振る舞いややり口が気に入らないとはいえ・・好意を足蹴にするようなのは・・さすがに傷つくのだがねぇ)
自分が決して出来た人間ではないのをわかっている大佐でも、さすがにちょっとした親切心を無下に扱われたら嫌だし、逆に癪に障る。
「さぁ、どうしたんですか?やるのならさっさとしたらどうです?」
ルチアはまるで挑発するかのような強気の態度で言う。
その目には大佐を馬鹿にしているようにも思えるが、苦痛や恐怖を隠すためにことさらに強気に振舞っているのがチラリと見え隠れしていた。
 (全く・・・自分のプライドで首を絞めているというのになぁ・・)
部下の振る舞いに再び大佐はニヤリと笑みを浮かべそうになってしまう。
だが、このままではさすがに示しがつかないと思ったのだろう、マッセナは再び真顔になる。
 「おやおや。どうやら君はちゃんと反省しているとはいえないようだな。上司にそんな反抗的な態度を取るとはね」
「それは、ご自分の胸に聞いてみてはどうです?」
やや高慢な感じでルチアは言い返した。
ルチアにしてみれば、いくら自分に非があるとはいえ、お尻叩きなんて納得がいくわけが無い。
だから、つい反抗的或いは挑戦的といった態度を大佐に取ってしまう。
それがさらに自身を自縄自縛に追い込むことになるのは頭ではわかっているが、大佐の態度への反発や自身のプライドが後押しして、それをやらずにはいられなかった。
 「おや、そういう態度を取るのかね?ならば仕方ない。少し本気になるとしようかね?」
本気という言葉をわざと強調して大佐は言う。
その言葉にルチアは一瞬、表情を強張らせる。
(本気って・・今まで手加減していたというの!?)
本音を言えば今の状態でもかなり辛いのだ。
本気を出されてもっときつい打撃を浴びせられたら、と思うと背筋が思わず薄ら寒くなってきた。
だが、だからといって許しを請うのは屈辱的でもっと嫌だった。
(大佐に許しを請うくらいなら・・・お尻が壊れた方がマシだわ!!)
 「どうぞお好きに。別に幾ら本気になろうが私は何ともありませんから」
高慢な口調で、上司を睨みながらルチアは大佐に言い切った。
「ふぅん。ならば、お言葉に甘えるとするかね」
マッセナの言葉と共に、ルチアは腹の下で何かが動くのを感じる。
気付いたときには、お尻が天井に向かって突き上がっていた。
大佐が膝を組んだ為にルチアは身体がくの字に曲げられ、お尻が上がったのである。
「では・・今度こそ本当に反省してもらおうかね」
マッセナはそう言うと再び手を振り下ろした。

 バアッシィンッ!!ビッタアアンッ!!
「ぐ・・・くぅ・・・!!」
今までとは比べ物にならない強烈な平手打ちが中尉のお尻を襲った。
余りの痛みに、さすがの中尉も苦しそうな声を漏らす。
ビッタァアンッ!!バッシャアンッ!!バアッシィンッ!!ビタァアンッ!!
「うく・・ひっ・・うっ・・あっ・・はぁっ・・・」
表情を歪め、苦しそうな吐息と共にルチアは声を漏らす。
「書類作成を放り出して何時間も寝入るとはねぇ・・・」
ビッタアアアンン!!バアシィィイインン!!ビダァァァァンンン!!ババヂィィンン!!
「う・・くぅ・・ぐ・・・ぐぬ・・ひっ・・!!」
ルチアの声がさらに苦しげなものに変わり、かすかに身体が震えだす。
その額にはジワリと脂汗がにじんでおり、目尻にも涙とおぼしきものがうっすらと光っていた。
「おまけに上官に対して・・敬意を欠いていると見なされかねない態度を取り・・・」
ビダバァンッ!!バアシィンッ!!ビダアアアアン!!ババヂィィィンンン!!
「ひゃっ・・!うっ・・!ひううっ!きゃあっ!」
さすがのルチアも忍耐力が限界に達したのか、うめき声が悲鳴へと変わり始めた。
「反省しているとは見なし難い言動を取る・・・」
ビダバァンッ!!バアッシィィンン!!ビッダバアンッ!!バアチィィンンン!!
「ううっ・・!!ああっ!きゃあっ!ああっ!!」
悲鳴を上げ、中尉は背筋を仰け反らせた。
「全く、君は何をしているのかね?それが軍人たるものの取るべき態度といえるのかね?」
マッセナは諭すように問いかける。
バアシィンッ!!ビダァアンンッ!!ビダダァァァンン!!ババダァンンンン!!
「ひっ・・!ああっ・・!も・・申し・・わけ・・ありま・・せんっ!!きゃあっ!!」
苦しげに息を吐き、悲鳴を上げながらもルチアは謝罪の言葉を搾り出すように言う。
上官の問いかけが正論であり、いくらマッセナの態度ややり様に不満があるとはいえでも、自分にも非があることは重々承知していたからだ。
ただ、彼女自身のプライド等が邪魔をして、中々それを認められなかったのである。
ビダバァシィンッ!!バアジィンッ!!バッアンッ!!ビッダバァンッ!!
「反省しているのかね?」
「し・・して・・おります・・。迷惑・・かけて・・申し訳・・ありません・・でした・に・・二度と・・いたし・・ません・・・」
「それならば言うことがあるのではないのかね?」
「言うこと・・・何の・・こと・・です?」
大佐の言っていることがわからず、ルチアは思わず怪訝そうな表情になる。
「決まっているだろう?昔からこういうときには『ごめんなさい』というのがお約束ではないのかね?」
大佐はニヤニヤしながら事も無げに言った。
 「な・・・っっ!!!!」
ルチアは上司の言葉に愕然とした表情になる。
(そ・・それは・・そうかも・・しれないけど・・・そんな・・そんな・・幾ら・・私に・・非が・・ある・・からって・・『ごめんなさい』・・だ・・なんて・・・それじゃあ・・本当に・・子供・・じゃ・・ないの・・そんな・・そんなのは・・恥ずかしすぎるわ!!)
中尉は情景を想像したのか、カァーッと顔が真っ赤になる。
「どうしたのかね?まさか言えないのかね?」
「あ・・当たり前じゃ・・ないですかっ!!そんな・・そんな・・子供みたいな・・。ぜ、絶対に・・言えませんっっ!!!」
「本当に言えないのかね?」
「い・・嫌ですっ・・!!そんな・・ことっ・・・」
「やれやれ。それでは終わらせるわけにはいかないな」
やれやれといった様子でかぶりを振ったかと思うと、再び大佐は中尉の腰をしっかりと抱え、手を振り下ろした。


 バシィンッ!パンパンパンパンパンパンパンパンッッ!!
「きゃっ・・きゃあああ!!!」
再び容赦の無いお仕置きが始まった。
今度は今までとは違い、集中砲火を浴びせるように立て続けに叩き出す。
一発の平手打ちの威力は低いが、それを絶え間なく浴びせられる方がかえって痛い。
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッッ!!
バシンバァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッ!!
「きゃああ!やあっ!きゃあっ!大佐っ・・!やめっ・・やめて下さいっ!!きゃあっ!やあっ!ああっ!痛っ!ああっ!きゃああ!!」
間断なく落とされる平手打ちにルチアの悲鳴が何度も響く。
ルチアは大佐に懇願するものの、大佐は耳を貸すことなく、ひたすらハイペースで叩き続ける。
 (い・・・言うまで・・・叩く気・・なんだわ・・)
大佐の行動からルチアはそれに気付いた。
そうなれば大佐の言う通り、「ごめんなさい」といえば許してもらえるだろう。
だが、いくら自分が悪いといっても余りにもそれでは恥ずかしすぎる。
とはいっても、このままではお尻が壊れてしまう。
実際、ルチアのお尻は濃厚なワインレッドに染まり、熱した石炭のほうにカッカッと熱を発していた。
(ど・・どうしたら・・いいの?)
謝ることも逃げ出すことも出来ず、二進も三進もいかない状況に閉じ込められてしまい、ルチアは煩悶する。
 パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッッッッ!!
バシンバシンバァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッッ!!
「きゃああ!ひゃああ!やめっ・・!やめてっ!やめてやめてもう許してぇぇぇ!!」
いつの間にかルチアの言葉遣いが変わっていた。
お仕置きの痛みや苦しみが臨界点を突破したのか、自身を保つことが出来なくなってきつつあるようだった。
激しい連打に少しずつだが、難攻不落に見えた彼女のプライドが崩れだす。
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッ!!
パチンパチンパチンパチンパァンパンパアンパシィンッ!!
「やあっ・・やぁぁ・・ひっく・・ひぃん・・うっう・・うくぇ・・ひぃん・・」
いつの間にかルチアはサファイアを思わせるブルーの美しい瞳からボロボロと大粒の涙を流していた。
もはやプライドも何も無く、彼女は子供のように泣きじゃくりはじめた。
「やあっ・・・やだぁ・・もう・・いやぁ・・もう・・許し・・てぇ・・大佐ぁ・・ちゃん・・と・・謝り・・ますからぁ・・いい・・・ますからぁ・・・」
真珠のような涙を床へしたたらせながら中尉は必死に大佐に許しを請うた。
「本当に出来るかね?」
「で・・出来ますぅ・・ちゃん・・と・・ごめん・・なさい・・します・・からぁ・・」
「なら、言ってみたまえ」
「ひ・・ひっくぅ・・うえっくぅ・・ご・・ごめっ・・ごめん・・なさいっ・・大佐ぁ・・ごめん・・なさぁい・・に・・二度と・・しませぇん・・だか・・だからぁ・・ゆる・・許して・・下さ・・ぁい・・ごめ・・ごめん・・なさぁい・・・・」
幼児のようにしゃくり上げ、嗚咽に喉を詰まらせながらルチアは必死に『ごめんなさい』を口にする。
「ようやく言えたな。やれやれ・・・」
ホッとしたような声を出すや、マッセナ大佐はお尻を叩く手を止める。
そしてゆっくりと降ろしたかと思うと、自身の膝の上で泣きじゃくっている部下の頭の上に置いた。


 「うっく・・痛ぅ・・ふぅぅ・・・」
お尻をさすっては苦痛に百面相し、ようやく立ち上がるとルチアはゆっくりとズボンを上げる。
「ふうっ・・うぅぅぅ・・くぅううう・・・」
赤く染まりきったお尻に布地が触れてビリビリと電撃のような痛みがお尻に走るが、それを堪えてルチアはようやくのことでズボンを履くと、ゆっくりと歩き始めた。
 「無理をするものではないよ。私が医務室まで送ろう」
「大佐の・・手なんか・・借りません!!そんな・・こと・・するくらいなら・・お尻が・・壊れた方が・・ずっとマシですわ!!」
ルチアは後ろを振り向くと、憎々しげに大佐を睨みつける。
「おやおや、随分と嫌われたものだなぁ」
大佐は大げさに天を仰ぎ見ると嘆息する。
「大佐が・・したん・・でしょうが・・・!!」
諸悪の元凶の厚顔な態度に思わずルチアは憤慨する。
 「ふふん・・本当に・・プライドが高いなぁ君は・・だが・・それが何よりも可愛い」
「はぁ?」
ルチアは思わず素っ頓狂な声を出す。
大佐が何を考えているのか、全く理解出来なかったからだ。
「こういうことだよ」
中尉が気付いたときにはマッセナ大佐の顔が目の前にまで迫っていた。
次の瞬間、ルチアは大佐に唇を奪われていた。
 「なっ・・何するんですか!!!」
お尻が痛いのも忘れてルチアは思わず大佐を突き飛ばす。
「何って私の気持ちを実地で示しただけだがね」
大佐はケロリとした表情で言いやった。
「なっ・・・さ・・最低ですっ!!!」
ルチアは顔を思い切り真っ赤にしたかと思うと脱兎の如き勢いで部屋から飛び出した。
「おやおや、ファーストキスだったかな。だとしたら悪いことしたかな?」
部下の背中を見やりながら大佐はそんなことを呟く。
「それにしても・・本当に可愛いなぁ。可愛すぎて、やりすぎてしまったよ、つい」
大佐はにやけながら独りごちる。
 そう、マッセナ大佐は部下であるルチア中尉に対して行為を抱いていた。
彼女に色々とからかうようなふざけたことを言ったのもその現れである。
そして、お尻を叩いたのもそうであった。
どうやら、大佐は好きな子はいじめたりからかったりしたくなる性格の持ち主らしい。
「ふふふふ、ルチア中尉。君を絶対に私のスイート・ハニーにして見せるよ。覚悟したまえ」
大佐は不敵な笑みを浮かべると、ルチアの執務室を後にした。


 ―完―
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