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松本病院のある日



 東京都内の某所に存在する試衛市。
大きな都市ゆえに、大小様々な病院や診療所があるが、市内で最も有名なのは、松本病院(まつもとびょういん)だ。
幕末・明治史にその名も高い医師・松本良順(まつもとりょうじゅん)の血を引く人物によって、運営されるこの病院は、病床数も数百という大きな病院だ。
その一階の診察室で、次のような光景が繰り広げられていた。

  「ああ・・・こりゃあ手遅れだな・・・・」
診察用ベッドの上に寝ている、小太りの中年男の身体を押しながら、その医師は言った。
医者は年は40歳前後、物静かそうな、だが何か鋭いものを秘めているような顔立ちをしている。
白衣の下には、細身ながら無駄なく鍛え上げられた身体が隠れている。
彼の名は山崎蒸助(やまざきじょうすけ)。
この病院に勤務する医師の一人である。
また、その姓名が示すように、新撰組の山崎蒸の血を引く人物であり、同時に試衛市のシンボルである新撰グループの関係者でもあった。
彼の兄が、新撰グループ傘下の山崎調査会社を経営しているのだ。
最も、彼は医業の方に関心を覚えたため、医の道に進み、一介の医師として松本病院へ就職したのであるが。

 「えええっ!本当ですか!!」
患者の男はびっくりしてベッドから起き上がる。
「冗談だ。だが、お前さん、甘いものやたら食ってるだろう?甘い物はいかんと言っておいたはずだ。言う通りにせんと本当に手遅れになっちまうぞ」
山崎は鋭い目つきになると、患者の中年男に言う。
「はぃ・・・すいません。山崎先生」
男は山崎の忠告にぺこりと頭を下げる。
山崎は、その患者が去った後も、2,3人患者を見る。
しばらくして、看護師が入ってきた。
「山崎先生、回診のお時間です」
「ああ、そうか。すぐ行く」

 30分後、山崎の姿が入院患者用の病棟の廊下にあった。
「次は何号室だったかな?」
「403号室です」
「そうか。ちょっと遠いんだよなぁ」
山崎が思わずぶつぶつと漏らしたときだった。
病棟のずっと奥の方から、騒がしい音が聞えてきたのだ。
それも一つや二つではない。
叫び声らしいものや、何かを振り回すような音などだ。
「何だ・・・」
思わず山崎は音の聞えた方へ足を向ける。

 音の聞えた場所へ駆けつけた山崎は、唖然とした。
音の主は入院患者らしい若い男性。
身長2m近く、筋骨逞しい、まるでプロレスラーのような人物だ。
「うい~~~っぷ。ぶえへへへ~~~~~~」
その患者は泥酔しきっているらしく、顔が真っ赤に染まり、吐く息は、数m離れた先でも、思わず鼻をつまみたくなるほど、酒臭い。
その手には、見舞い客用の椅子を持っており、それをぶんぶんと振り回していた。
「こいつは一体どういうことだ!!」
あたりで、事態に慌てふためいているナースや、見舞い客らしい人間に山崎は尋ねる。
だが、だれもが動揺し、振り回す椅子から逃れようとして逃げ回っているため、山崎に答えるどころではない。
酒乱の患者はよだれをだらだらと垂れ流し、暴れまわる。
警備員達も不審者用のさすまたを持って駆けつけてきたのだが、激しく暴れまわるため、近寄ることすらできない。

 (やむを得んな。院内であまり使いたくないんだが)
何かを決意すると、山崎は警備員達の前に一歩進み出る。
警備員やナースたちが止めようとしたときだった。
山崎は懐に手をやったかと思うと、白衣の下から何かを抜き出す。
持っているのは、針。
長さ10cm前後、通常の針よりもずっと太目の針だ。
それを右手に四本、持っている。
「うべぼお~~~~」
酒乱の患者は山崎を見つけるや、椅子を振り回しながら突撃してくる。
山崎は右腕を挙げたかと思うや、さっと振り下ろす。
手から閃光がほとばしったかと思った瞬間、大男の動きが止まった。
それどころか、大男は後ろ向きに数歩歩いたかと思うと、両腕を自分のほうめがけて振り下ろす。
ガンッ!という音と共に、その患者は自分で自分の頭を殴りつける。
その衝撃か、男は呆けたような表情を浮かべるや、ノックアウトし、床に倒れこんだ。
「おい、誰かこの患者、元の病室に運んでくれ」
山崎が言うと、その場にいたナースや警備員たちは我に返る。
そして、患者を4人がかりで持ち上げると、その場から運んでいった。

 「山さん、大丈夫か!」
不意に、別の男が駆けつけ、山崎に声をかけた。
現れたのは、35歳前後と思われる男性。
猛禽を思わせる精悍な面立ちに鷹のような鋭い眼光。
痩身だが、見事なまでに鍛え上げられた身体をスーツに包み込んでいる。
彼の名は斉藤一郎(さいとういちろう)。
新撰組でも屈指の使い手として知られた斉藤一の末裔で、新撰グループ傘下の『斉藤警備保障会社』の社長で、誠衛館門人でもあった。
「斉藤さんかい。久しぶりだな」
「いやあ、話を聞いてびっくりしたよ。酒乱の患者が暴れてるって聞いたもんで急いで駆けつけたんだが」
「それならさっき片付けたわ」
「ああ、見た。相変わらず見事な針技だな。さすが『操体針(そうたいしん)』の山さんだな」
斉藤には、酒乱の患者の奇妙な動きがわかっていた。
患者の四肢に山崎が針を打ち込んだのだ。
山崎は、針を利用した奥義『操体針』を誠衛館で身につけていた。
それは、全身にあるツボや神経に針を打ち込み、相手の身体を自由自在に操ったり、内臓の機能を自在に変化させるというものである。
山崎はこの奥義を完全に我が物としており、相手の手足を自在に動かすことはおろか、針一本で麻酔をかけたりしてしまうことも出来た。
彼はこの技を利用して患者を取り押さえたのである。
ちなみに、誠衛館は剣道道場として知られているが、教えているのはそれだけではない。
素手格闘術や操体針のような小型武器術なども教えているのである。
最も、そちらの門人は少ないのであるが。

「斉藤さんは誰かの見舞いかい?」
「ああ。言いにくいがさっきの酒乱の見舞いでな。あれ、うちの社員でな。迷惑をかけたな・・・」
「あんたが悪いんないから気にしなさんな。それにしても誰が酒を・・・。さっき、確認したら、担当医があの患者は酒乱だから酒は絶対に飲ませるなと言い置いたらしいんだが・・・」
「ああ。俺もそれを聞いて見舞いの連中には絶対持ってくなと言ってあるはずなんだが」
「あのう・・・山崎先生・・・」
不意に、ナースが一人、近寄ってきて話しかけた。
「どうした?」
「それなんですが・・・実は」
ナースはそういうと、山崎に耳打ちする。
「お前さん・・・そりゃ本当か?」
ナースは首を縦に振る。
「わかった・・・。後は私に任せてくれ。斉藤さん、すまんが急用が出来た」
そういうと、山崎は足早にその場を去っていった。

 その30分ほど後。
この上なく深刻な表情で、一人の医師が廊下を足早に歩いていた。
その医師は年は25、6歳くらい、眼鏡の似合う、理知的な面立ちをしている。
ほっそりした身体つきで、美しい青年医師だった。
彼の名は若松惇(わかまつじゅん)。
山崎同様、内科医で今年からこの病院に勤務している。
その絶世の美青年ぶりで、内科医局の王子様的存在として、看護師や女医から人気が高い。
だが、女性職員や女性患者をうっとりさせるその美しい顔は、何か心配事を抱えているのか、脂汗がどっと噴き出していた。
「若松くん、ちょっといいか」
突然、呼び止められ、若松医師は振り返る。
すると、山崎医師の姿があった。
「山崎先生・・・。一体どうしたんですか?」
「いや、ちょっとお前さんと話したいことがあってな」
「話ですか・・・?」
「ああ。二人きりでな」
「すいません。まだ回診が・・・」
「大丈夫だ。手間はとらせん」
山崎は若松の手首をつかむや、今日は使う予定の無い手術室に若松を連れ込んだ。

 しっかり扉を閉めると、山崎は若松の顔を見据える。
「さて、話してもらおうか?」
「何をです?」
「ああ、すまん。言い忘れた。酒乱の患者のことだ」
「何です。酒乱の患者って?」
「さっき、患者が一人、酒によって暴れたんだよ。いや、えらい騒ぎでなぁ。聞かなかったのか、お前さん?」
「ちょ・・・ちょっと聞きました・・・。でも、どうしてそれを?」
「いやなぁ、看護師の一人がなあ。患者が暴れる前に、お前さんと会ってたって言ったんだよ。例の患者がどうやって酒を手に入れたのか、わからんのだよ。何か知らないか?」
「い、いえ・・・。な、何も知りませんよ」
若松はそう答えたが、声は僅かだが上ずり、額にはじわりじわりと脂汗が浮き出している。
「そうか。手間を取らせて悪かったな」
「いえ、別に」
そういうと、どこか動揺した様子で、若松は出て行こうとする。
青年外科医が、背を中年医師に向けたときだった。
突然、山崎が若松の背中めがけて拳を繰り出した。
拳の指の間からは針が突き出ている。
背中の半ば、右寄りに山崎が針を打ち込んだと同時に、若松の歩みが一瞬だが止まった。
「『新一(しんいち)』というツボをついた。おまえさんはわしの聞くことに答える」
「な・・・何をばかなことを・・・」
「酒乱の患者はどうやって酒を手に入れた?」
「だから僕は知りま・・・『ぼ、僕が渡しました』・・あ、あれ、なんで!!」
勝手に口がうごいてしゃべったことに、若松は驚愕する。
「これは意志とは関係なく話すものでな。で、どうして酒を渡したんだ?」
「つ、強くせがまれたんです。中学のときの友人で結構仲良くしてたから・・・。断りきれなくて。で、でもあんな酒乱だなんて知らなかったんです」
「なるほどな。事情はわかった」
山崎は針を抜く。
すると、若松は再び動けるようになった。
「さて・・・。お前さん。昔の友達だから断りきれなかったってのはわかる。だがな、お前さんのせいで、誰か怪我人が出るかもしれなかったのはわかるか?」
「はっ・・・はい・・・」
若松は暗い表情を浮かべる。
医師としてやってはならないことをしてしまったのだから、当然だろう。
「それなら覚悟はいいな?」
そういうと、山崎は手術台を指す。
途端に、若松の表情が変わった。
「あ、あの・・・山崎先生・・・」
上ずった声で、若松は話しかける。
「何だ、若松くん?」
「そ、そ、それだけは許して・・・下さい・・・。い・・いくらなんでも・・は・・恥ずかしいで・・・す・・・」
思わず、若松は山崎に哀願する。
山崎が何を考えているのか、わかったからだ。
というのも、以前、あまりに不真面目な研修医に山崎がそれを行ったのを見たことがあるからである。
あまりに恥ずかしいものであるため、鮮明に記憶に残っていたのだ。
「何を言っとるんだお前は。悪いのはお前さんだろうが!ぐずぐずしとると針で動けなくするぞ?」
山崎は目を細め、瞳が鋭い眼光を宿した。
これを見て、さらに若松の表情が変わった。
本気で怒っていることに気付いたからだ。
山崎は本気で怒ると、目が細まり、瞳がギラギラと鋭い眼光を放つというくせがあったのである。
慌てて、若松は手術台の上に、腹ばいになってお腹をのせる。
と同時に、山崎に向かってお尻を突き出した。

 山崎は若松の白衣をつかむと、それを腰の上まで捲り上げる。
ズボンに手をかけると、足の付け根あたりまでずり下す。
すると、若松の白くて綺麗な、肉の薄いお尻が姿を現した。
(うう・・・。まさかこの年になって人にお尻見られるなんて・・・)
手術台の端を両手でがっしりと掴みながら、若松は情けない気持ちになっていた。
26にもなって、人にお尻を突き出してさらしているのだ。
恥ずかしいと思わない方がおかしい。
だが、これから行われることを考えると、さらに気持ちが落ち込みそうだった。

 「それじゃあ・・・覚悟はいいな?」
恥ずかしい気持ちで一杯になりつつも、若松はこくりと頷く。
山崎は右手を振り上げたかと思うと、空気を切る鋭い音と共に、手を振り下ろした。

 パアンッ!
甲高い音と同時に、山崎の手が青年医師のお尻を思い切り叩いた。
「くぅっ・・・・・」
お尻に走った痛みに、思わず若松は声を漏らし、手術台のへりをつかむ指に力が入る。
パンッ! バシッ! パチンッ! パアアンッ!
「はっ・・・ふっ・・・ひっ・・・はあっ・・・・」
若松は、痛みと恥ずかしさが入り混じった表情を浮かべ、一打ごとに息を吐き、顔をしかめる。
(い、痛い・・・で、でもそれより恥ずかしい・・・)
もしも、こんなところを誰かに見られたら。
そう想像しただけで、若松は顔から火が出るかと思うほど恥ずかしくなった。
バシッ! バアアンッ! バチンッ! バアンッ!
「ひっ・・・はっ・・・ひゃあっ・・うっ・・・」
バンッ! バチィンッ! バシッ! パンッ!
「全く・・・医者のくせに何やっとるんだ。差し入れていい品を確かめることくらいやらんか」
バシッ! バアンッ! バチンッ! パンッ!
「す・・・すいませ・・ひゃあっ・・・いっ・・つうっ・・・」
辛そうな表情で短く息を吐きながら、若松は謝る。
だが、青年医師のお尻めがけて、手を振り下ろし続ける。
パンッ! パシッ! パアンッ! パチンッ!
「ひゃあっ・・・ああっ・・・痛っ・・・ひゃあっ・・・」
バシッ! パンッ! ピシャアンッ! バシンッ!
「せ、先生・・・。も、もう許し・・・て・・・」
消え入りそうな声で、両頬を紅潮させ、目尻には涙を浮かべた表情で後ろを振り向くと、若松医師は懇願する。
雪のように白く美しかったお尻は、まるで熱した石炭のように真っ赤に染め上がり、熟れたスモモのように腫れ上がっている。
「それなら言うことがあるだろう。お前さん?」
「え?」
言ってることがわからないという表情で、若松は山崎を見上げる。
「こういうときは『ごめんなさい』というのが、筋ってもんだろう?え?」
「そっ・・・それは・・・」
若松は逡巡した。
小さい子供のようにお尻を叩かれているだけでも、恥ずかしいのだ。
その上、『ごめんなさい』を言うなどとなったら、恥ずかしいなどというものではない。
だが、その逡巡はすぐに決着がついた。
バアアンッ!
山崎が今までで一番強力な平手打ちをくれてやったのだ。
「ひゃああんっ!!」
さすがに耐え切れず、外に聞えてしまうのでは、というくらい、甲高い声をあげてしまった。
同時に、あまりの痛さに耐え切れず、失禁してしまう。
(う・・・嘘・・・もらしたの・・・僕・・・?)
さらに恥ずかしさが若松の心の中でこみ上げてきた。
このままつまらないプライドにこだわっていたら、もっと恥ずかしい思いをするかもしれない。
「ごっ!ごめんなさいっ!僕が悪かったですっ!ごめんなさいっ!!」
恥も外聞も構わず、若松は大きな声で叫んだ。
その言葉を聞き、山崎の手が止まった。
「それでいいんだ。これからはせんな?」
「は・・・はい」
「全く・・・何情ない顔しとるんだ。病院の王子様がそんな泣きっ面しててどうする」
そういうと、山崎は若松にハンカチを差し出す。
「ちょっと。いくらなんでもそれはないですよ、山崎先生。子供じゃないんですから」
「ハハハ、わしから見れば子供だよ、若松くん。それより、本当にこれからは気をつけてくれよ」
山崎は真剣な表情になる。
「はい、すいません、先生」
その後、二人は何事も無く手術室を後にした。

 (きゃあああ~~~~。凄いもの見ちゃった~~~)
その僅か数分後、一人のナースが近くの廊下で異様に興奮していた。
そのナースは小柄で、かなり綺麗な顔立ちをしているのだが、分厚く度の強い眼鏡とその下に隠れた異様な眼光、そして異常なまでの興奮のせいで、それが台無しとなっていた。
彼女は山無追子(やまないおいこ)。
この病院のナースである。
彼女は少し前に、若松がお仕置きされていた手術室を通ったのである。
そのときに、僅かな扉の隙間から、若松がお仕置きされている姿を見聞きしてしまったのだ。
(それにしても、まさか若松先生がお尻叩かれるところを見られるなんて思わなかったわ。超々々々ラッキーったらありゃあしないわよ!!)
そう、彼女の興奮の原因は若松のお仕置きである。
実は、山無はスパンキングに強い興味を持っており、自分でスパサイトを運営してり、スパ小説を書いて掲載したり、他のスパサイトへ投稿したりしていた。
そんな彼女にとって、病院の王子様的存在で水も滴る美青年の若松先生が、お尻叩かれてる姿など、まさに天からの贈り物とでもいうべきものだった。
(当然携帯で写真撮らせてもらっちゃったわよ。勿論、泣き声もね。そうだわ、これをネタに小説を書かなきゃ損よ!!)
山無は猛烈な創作意欲が心の奥底から沸きあがってくるのを感じていた。
(こうしちゃいられないわ!!帰ったらソッコー執筆よ!!)
その後、勤務が終わった山無は何かに取り付かれたかのように、家に帰るや、たった一時間で、今日の出来事を元に、眼鏡をかけた美青年医師が主役(キー)のスパ小説を書き上げて、アップしたという。


 ―完―
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theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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