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人斬りと老人(金田一耕助シリーズより)



 (注:金田一耕助が登場しており、またかなり改変を加えております。許容出来る方のみご覧下さい)


 「どこだ・・?どこに行った?」
数人の兵士達が緊張した面持ちで銃を構え、通りを歩いていた。
彼らはさる男を追っていた。
兵士達は周囲を注意深く見回し、同時に銃口をぐるりと動かす。
その額は汗がジットリとにじみ歩くたびに息が荒くなる。
 そのとき、一ブロック先の通りを誰かが横切るのが見えた。
「あっ!あいつだ!」
男の姿を見るや、兵士達は息せき切って走り出す。
そして男が入っていった路地へ後を追うように踏み込んでいった。
 「な・・ななな何ですか!?あなた達は!?」
男は銃を構えた軍人達に囲まれて思わず声を上げる。
その男は何とも奇妙な人物だった。
 日本人らしいその男はよれよれの着物によれよれの袴、くたびれたマントにお釜帽といった奇妙ないでたちをし、小柄で貧相な体格をしていた。
いつ床屋に行ったのかわからないもじゃもじゃの頭は雪のように白く、肌のつやなどからかなりの年であることが伺えた。
 「い・・いいいい一体何です!?ボ、ボボボ僕はあ・・あああ怪しい人物じゃありませんよ!!」
謎の怪老人は興奮しているためか、どもりながら必死に訴える。
しかし、あまりにも奇妙な出で立ちはどう見ても怪しすぎた。
 (どうする?こいつではないぞ。格好は似てるが)
(とはいってもあまりにも胡散臭い。とりあえず連行して取り調べよう)
追跡中の兵士達はそう相談すると怪老人に近づく。
怪老人は兵士達の意向を察したのだろう、何ら抵抗もしないでそのまま大人しくついて行く。
 ビクッッ。
突然、怪老人が震えた。
「どうしたんだ?」
思わず兵士の一人がいぶかしむ。
「い・・いえ・・。何か・・殺気のようなものを感じたんですよ・・・」
途端に兵士達の表情が緊迫したものに変わる。
兵士達は周囲を警戒して見回す。
だが、誰もいなかった。
 「全く・・これだから素人は・・アグオオッッ!!」
突然、怪老人の近くにいた兵士の一人が苦悶の声を上げる。
何だと思って他の兵士達が見てみると、何と足元のマンホールから細身の剣が突き出ていた。
剣はグリッと一ひねりしたかと思うと兵士の腹から引き抜かれる。
兵士がマンホールの上に倒れたかと思うと、今度はドンッドンッと激しくマンホールを殴打する音が鳴り響く。
兵士達はゴクリと息を飲んでマンホールに対して銃口を向ける。
やがて、ドオンンッッという激しい音と共に死体ごとマンホールが宙高く飛びあがった。
同時に何かが飛び出してきたかと思うと、円を描くように閃光が走る。
 「ぐうわああっっっ!!!!」
兵士達は全員、うめき声を上げたかと思うと首や胸を押さえた。
いずれも横一文字に切り裂かれ致命傷を与えていた。
「ふん・・・クズ共めが・・・」
兵士達が倒れると同時にマンホールの中から飛び出した人物が着地する。
そこに現れたのは中折れ帽子にインバネスコート、着物に袴と怪老人によく似た男だった。
ただ、彼は三十代くらいと若く目はどんよりとして表情が無い。
見るものが見れば人を斬ることをその職としているものの目だということがすぐにわかった。
 「し・・・しししまったぁぁ~~~~~!!!」
突然、叫び声が聞えてきた。
仕込杖を手にした男が振り返ると、自分によく似た格好をして妙な老人がいるではないか。
「僕が・・僕がついていながら何という失態をを~~~~~~!!」
老人はかなり興奮しているのか、クシャクシャの白髪をかきむしっている。
相当洗っていないのか、ボロボロとふけがこぼれ落ちていた。
 (な・・何だこのジジイは?)
奇妙な老人の振る舞いに思わず男は呆気に取られてしまう。
しかし、さすがにすぐに我に返ると老人を見つめた。
(こんなジジイがいるとは・・・予想外だったが・・・。目撃者は消す!!)
男は仕込杖を構えたかと思うと、老人の首筋目がけて思い切り斬り込んだ。
だが、刃は途中で止まってしまう。
いつの間にか老人は右手にリボルバー式の拳銃を手にしており、その銃身で仕込杖を受け止めていたのだ。
 (な・・何だと!?)
一瞬、男は驚いてしまう。
まさか自分の切込みを受け止められてしまうとは思わなかったからだ。
老人はそのまま拳銃を押し下げて仕込を押さえつけたかと思うと思いっきり足を蹴り上げた。
老人とは思えない強烈な一撃を顎に叩き込まれ、思わず男はよろめいてしまう。
「ら・・乱暴な人ですねぇ・・」
「く・・くそ・・・」
男は顎を押さえてよろめきながら老人を睨みつける。
(こんな・・こんな・・ジジイ風情に!俺が・・俺が蹴りを叩き込まれただと!?)
屈辱感に男は撃ち震え、どす黒い殺意が沸き起こってくる。


 「ジジイ・・・いい度胸だなぁ・・」
突然、男の口調がどすの利いた声に変わった。
老人も相手の殺意を感じたのだろう、表情が緊迫したものへと変わる。
「ククク・・この人斬り俊次(しゅんじ)を足蹴にするとはなぁ・・。覚悟はいいだろうなぁ・・・」
「あ・・あなたが・・・」
老人は男の名を聞くとさらに表情が強張る。
人斬り俊次。
明治時代の壮士さながらの奇妙な出で立ちをした仕込杖の使い手で、日本の裏社会でかつて名をなしていた。
しかし、あまりにも刺客として名をなしたため日本にいられなくなり、外国へと逃れた。
そして今ではヴィクトールの暗黒街で人斬り稼業を続けていた。
 「や・やややはり・・あなた・・だったんですね・・。もしやと思いましたが・・・」
「気付いていたと・・・?」
「か・・確証はありませんでしたが・・・」
(何者だこのジジイ?)
俊次はさらに警戒感を強める。
確かに自分は目立つ異様な出で立ちをしている。
しかし、自分が腕利きの殺し屋であることは警察関係かその筋の連中くらいしか知らないはず。
その自分のことを知っている。
(やはりただのジジィじゃねえ!ぶっ殺す!)
新たに殺意を噴き上がらせると、老人はそれを察知し引き金を引く。
俊次の身体が翻ったと同時に銃弾が俊次の身体を掠める。
だが、次の瞬間には怪老人の目の前まで接近していた。
 「シャラァアアアアアアッッッッッッ!!!!!!!」
裂帛の気合と共に仕込杖が凄まじい勢いで繰り出される。
仕込杖はあまりの素早さに残像が生じ、さながら十数にも分身したようだった。
 「うわわわわっっっ!!!!」
怪老人は慌てふためいた様子で右手に握った銃で必死にさばく。
仕込杖と銃身が激しくぶつかり合い、幾度も火花を散らしていた。
やがて、怪老人はジリジリと追い詰められてゆく。
そして、拳銃をうまく巻き込んだかと思うと跳ね飛ばしてしまう。
 「くたばれっっ!!!」
武器を奪った隙を突き、俊次は必殺の一刀を繰り出した。
だが、カキィンという音と共に仕込杖は壁に叩きつけられていた。
(何だと!?)
俊次は避けられたことに一瞬、我が目を疑う。
直後、脇腹を老人が指で突いたかと思うと、全身に電撃のような痛みが走った。
 「ぐっっっ!!!」
苦痛に思わず俊次は飛び退いてしまう。
「何だ!?クソっ!?何しやがった!?」
俊次は老人の攻撃に思わず悪態をつく。
「こ・・ここ攻撃を避けて・・あ・・あなたのツボをつ、突いたんですよ。年寄りの・・ぼ・・僕でもツボを突いたりすれば若いあなたにじゅ、十分なダメージを与えられますしね」
 「ふざけやがって!この野郎!」
すっかり舐められたかと思った俊次は再び斬りかかるが、怒りに任せた斬撃では技のキレも鈍ってしまう。
当然、老人に避けられた上に右手を掴まれたかと思うや、梃子の原理で投げ飛ばされてしまった。
「ぐ・・・」
俊次は背中の痛みを堪えて立ち上がると、再び老人に挑みかかる。
だが、老人は反射神経が良いのか、ヒョイヒョイと俊次の攻撃をかわしてしまう。
(くそっ!これじゃ暖簾に腕押しだっっ!!)
まるで手ごたえのない相手に俊次はだんだん苛立ちが募ってくる。
そのため、自分が隙をさらしてしまっていることに気付いていなかった。
老人はその隙をついて俊次の懐へ潜り込む。
俊次は胸や腹を数ヵ所たて続けに指で突かれた感覚を覚えると、そのまま意識を失った。


 「ど、どどどどうしたんですか?ご機嫌ですね?」
警視庁のオフィスで、友人の警部と話していた例の奇妙な老人は友人の上機嫌な様子に思わず尋ねた。
「ええ。何とも喜ばしいニュースが入りましてね。人斬り俊次がヴィクトールで逮捕されたんですよ」
「それは・・・おめでとうございます。警部の苦労も報われましたねぇ・・・」
「ええ。奴には私もだいぶ手こずらされましたからねぇ」
「それにしてもどうして捕まったんです?」
「それが・・何でも変な老人に殺人現場を目撃されて・・・口封じをしようとして返り討ちにあったそうなんですよ」
「変な老人・・ですか?」
「ええ。金田一さん、どうやらその老人はあなたにそっくりだったそうですよ」
そう言うと警部は目の前にいる怪老人こと金田一耕助をジッと見つめた。
 「あ・・あはははは。何を言ってるんですか。ぼ、僕は探偵ですけど腕っぷしはからっきしなんですよ。警部さんだって知ってるでしょう?」
金田一は笑って否定する。
「金田一さん、世間は欺けても警察の目は欺けませんよ。それは世の悪人達を惑わすための仮の姿でしょう。仮面城や金色の魔術師の事件を我々が知らないと思っているんですか?」
「さすが警部さんですね・・。気付いてましたか。ええ、僕が横溝先生に頼んだんですよ」
 金田一はイタズラがばれてしまった子供のような表情を浮かべて答える。
金田一は様々な事件に携わってきたが、その中に仮面城事件と金色の魔術師事件というものがある。
前者は銀色の仮面を被った凶悪な宝石泥棒、後者では金ずくめの奇妙な出で立ちをした怪人と金田一は戦った。
これらの事件は後に金田一の伝記作者であり親友でもあった横溝正史によって子供向けミステリーとして出版されたのだが、その中で金田一は拳銃を片手に悪人一味を追跡し、或いはルパンさながらの変装をしてみせるなど、よく知られている彼の姿とはかなり異なった姿を見せている。
実は金田一は腕っぷしも決して弱くはない。
だが、横溝正史と相談した結果、彼は腕っぷしはからっきしということにしておこうということになったのだ。
それは金田一の真の姿を隠すことによって世の悪人たちを欺くためであった。
金田一が腕っぷしの方もOKとなると悪人側の警戒も厳しくなると判断したためだ。
実際、彼にとって偉大な先輩である明智小五郎は武勇にも長けていることが知られてしまっているために悪人側もそういう点にかなり警戒をしていた。
それを金田一は教訓としたのである。
 しばらく金田一老人と警部は談笑していたが、やがて金田一はゆっくりと立ち上がった。
「おや、もう行かれるんですか?」
「ええ。久しぶりに横溝先生のお墓参りもしたいので」
「そうですか。それでは・・・」
互いに挨拶を交わすと金田一老人はオフィスを後にしようとする。
「そうそう。実は同僚の剣持警部から面白い話を聞いたんですよ」
「面白い話・・?な、何ですか?」
「あなたのお孫さんが・・また事件を解決されたそうです」
「そ・・そそそれは・・すごいですねぇ。け、けけ剣持警部には、はは一くんが色々お世話をかけましたと伝えておいて下さい」
そう言い残すと金田一は革鞄をぶら下げて去っていった。


 ―完―
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