女悪魔ルクレティア・バルツィーニ番外編 ザ・クリーナー2



 目を覚ましたキアラが最初に目にしたのは、天井だった。
「あん・・?どこだよここは・・・」
「気がついたか」
不意に聞き覚えのある声がするや、本能的にキアラは声のした方を振り向く。
すると彼女が寝ているベッドの脇にネロの姿があった。
 「てめえっ!!」
ネロの顔を見るなり、キアラは猛獣のようにいきり立つ。
罠にかけられたことを思い出したのだ。
怒りのあまり、我を忘れ、片腕のガントレットに仕込んであった鉤爪をを出して襲いかかる。
だが、ネロは柳の葉のような軽やかな動きでかわしたかと思うと、伸びきったキアラの腕を両手で取る。
キアラが気づいた時には床に叩きつけられた挙句、追い打ちのパンチが腹に叩きこまれていた。
 「げふっ!!ごふごふごふっ・・・!!」
思わずキアラは苦痛に腹を押さえて身体を折り曲げる。
「考えなしだな。俺に切りつけてただで済むと思っていたのか」
「うるせぇ・・この眼帯野郎・・・」
キアラは師に対するものとは思えない態度で睨みつけながら呟く。
 「ちっとも懲りんな。まあいい。それよりも・・・・覚悟は出来てるだろうな?」
「あぁん?覚悟だぁ?」
「あれだけ派手な喧嘩騒ぎを起こしたんだ。ただで済むと思ってるわけはあるまい?」
「うっせえよ!俺は悪くねぇ!」
「本当にそう思ってるのか?」
「たりめぇだろうが!あのクソアマがぶつかってきたのが悪いんだよっ!だから悪くねえっっ!!」
「そうか・・・よくわかった・・・・」
ネロは弟子の態度にため息をついたかと思うと、キアラの手首を掴んでグイッと引っ張りながらベッドに腰を下ろす。
キアラが気づいた時には、ネロの膝の上に載せられていた。
弟子を載せるや、ネロはおもむろにキアラのショートパンツを降ろす。
あっという間にキアラの女性らしい、丸みを帯びた形のいい柔らかいお尻が姿を現した。
 「おいっ!何しやがるっ!セクハラ眼帯野郎っっ!!」
突然、お尻を出され、思わずキアラは叫ぶ。
「決まってるだろう、お仕置きだ」
そういうや、ネロは弟子の身体を押さえつけると、右手を振り上げた。


 パチィンッ!
「なっ・・・」
突然、甲高い音と共にお尻に痛みを感じ、キアラはキョトンとする。
何が起こったのかわからなかったのだ。
パアンッ!パシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!
さらに音が鳴るたびにお尻の痛みが増してくる。
(何なんだよ一体!?)
思わずキアラが振り返ってみると、ネロの手がお尻に叩きつけられるのが見えた。
「おいっ!何してやがんだよっ!」
ネロの行為に思わずキアラは声をあげる。
「お仕置きだと言ったはずだが。聞いていなかったのか?」
ネロは平然とした口調で答える。
「だから何でケツ叩いてんだぁ!?」
「昔から子供が悪さをしたら尻叩きと決まっているだろう」
「んだとぉ!?」
ネロの答えにキアラはカッとなりかける。
 「ふざけんなあっ!俺はガキじぇねえぞっっ!!」
「叱られてふて腐れるのは子供のすることだと思うが。しかも肩をぶつけられた程度で喧嘩を吹っ掛けるなど子供もいいところだろう」
痛いところを突かれ、キアラは反論出来ない。
「そんな子供には子供のお仕置きの方がふさわしいだろう。しっかり反省することだ」
そういうと、ネロは再び手を振り上げた。
 パアンッ!パシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!
「畜生っ!クソッ!やめろぉっ!!クソッたれっっ!!」
平手が容赦なく振り下ろされるたびにキアラは悪態をつく。
だが、それには構わずネロは平手を振り下ろし続ける。
ピシャンッ!パチィンッ!パアアンッ!パアシィンッ!
「くそっ!やめろっ!畜生っ!離しやがれっ!」
キアラは思いっきり身体を揺らし、手足をバタつかせながら逃げ出そうとする。
だが、ネロは膝から抜け出そうとするキアラを引っ掴むと引き戻してしまう。
 「こら、逃げるな」
「そう言われてはいそうですかなんて言えるわけねえだろっ!ダアホッッ!!テメェ耳腐ってんのかあっ!?」
キアラはネロの方を振り向くや、キッと師を睨みつけながら叫ぶ。
 「本当に反省してないようだな・・・・お前というやつは・・・」
キアラの態度にいささか呆れたようにネロは呟く。
「たりめえだろっ!何で俺が反省しなきゃあなんねえんだろっ!俺にぶつかってきやがったあのエラッそうなアマの方が悪いんだよっっ!!ケツ引っぱたくんならそいつの方にしやがれっっ!!」
「本気でそう思っているのか?」
「たりめえだろうが!!あのアマさえいなきゃあ俺だって何もしなかったんだっ!」
「そうか。よくわかった。己の非を認めることもせず、あまつさえ全て人のせいだと言いたいのだな?」
「だったらどうだってんだあっ!片目野郎!!さっさと降ろしやがれっっ!!」
ネロはしばらく黙っていたが、やがておもむろに右手をキアラのお尻にかざしたかと思うと、突然、真っ赤な電撃が放たれた。
 「ぐっっ!!!」
ビリビリと鋭い痛みを感じ、思わずキアラは顔を顰める。
そして、軽くはたくようにキアラのお尻を叩いた。
「ぎゃあああ!!!」
軽く触れる程度だったにも関わらず、キアラは絶叫を上げる。
「て・・テメェ・・何しやがった!!」
キアラが睨みつけながら尋ねると、ネロは淡々とした口調で答える。
「お前の痛覚を数倍に倍増させた。軽く触れられただけでもお前の尻は激痛を感じる」
「ん・・・んだとぉ・・・・」
「己の非も認めず、あまつさえ全て他人のせいにするその性根、ちょっとやそっとのことでは治るまい。少し地獄を見てよく反省することだな」
キアラの顔色がだんだんと変わっていく。
「ちょ・・待て・・やめ・・・」
キアラが言いかけるが、ネロは構わず思いっきり手を振り下ろした。
 バアッシィィィンンン!!
「んぎゃああああ!!!!痛ってぇぇぇぇえ!!!!!」
あまりの激痛にキアラは悲痛な叫びを上げ、背をのけ反らせる。
バシィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!バアッジィ~ンッ!ビッシャア~ンッ!
「ぎゃああっ!やめろっ!ひいぃんっ!やめろっつってんだろ~~~!!」
キアラは叫ぶが、ネロは構うことなく平手を振り下ろし続けた。


 「ひっひぃん・・・ひぃぃん・・・えっく・・ふぇぇぇんんん・・・・」
キアラはボロボロと涙をこぼして泣いていた。
今やお尻は濃厚なワインレッドに染め上がっている。
お尻自体も二回り近く大きく腫れ上がっていた。
散々に泣き喚いたのだろう、キアラの顔は涙でグッショリと濡れている。
だが、ネロは能面のような感情の見えない表情をジッと見つめている。
 「まだ足りないか?」
ネロの問いにキアラはギクリとする。
(ま・・まだやる気かよ!?)
もはやお尻は限界に達していた。
これ以上叩かれたらショック死してしまうかもしれない。
無意識のうちに恐怖でカタカタと全身が震えだす。
しかし、それを無視してネロは冷ややかな口調で言った。
「どうやらまだ足りないようだな。それなら望みどおりにしてやろう」
吐いた息すら凍りつきそうな口調で冷やかに言うと、ネロは弟子の身体を押さえる力を強くする。
同時にゆっくりと右手を振り上げたかと思うと、思いっきり振り下ろした。
 「ひっっっっ!!!!!!」
恐怖のあまり、喉を詰まらせたような声を漏らすや、キアラは本能的に目をつぶる。
同時にブルブルと熱病にかかったかのように全身を震わせた。
だが、やってくるはずの痛みが全く来ない。
それでも恐怖のせいだろう、キアラは震え続けている。
 「キアラ・・・・・」
不意にネロが呼びかけた。
「な・・・何・・だよ・・・?」
恐怖を隠しきれない震えた声でキアラは尋ねる。
「少しは懲りたか?」
「な・・・何?」
「懲りたかと聞いてる。どうだ?」
「す・・少しは・・・・」
「なら聞くが・・・まだ人のせいにする気か?」
「お・・俺も・・・わ・・悪かった・・とは・・思っ・・てる・・・」
「なら今日はこの辺で勘弁してやろう。ただし・・・」
ネロは不意打ちでキアラのお尻を叩く。
「ひっ・・・いぎゃあああ~~~~~~!!!!」
あまりの痛さにキアラはエビぞりになるや、苦痛の叫びを上げる。
「今度やったら今日の倍どころでは済まさん。わかったな?」
「わ、わかった~~~!!もうしねえから降ろせ~~~!!!!」
謝っているのだか命令しているのだかわからない口調でキアラが謝ると、ようやくネロは己の膝から弟子を解放してやった。


 「全く・・・寝顔だけは大人しいのだがな・・・・」
ネロはベッドの上で寝ている弟子の姿を見やると、苦笑する。
寝ている姿は本当に美しく、まるでどこかのお嬢様といった感じだった。
 自分もまた一休みしようと室内に備えてある風呂に向かおうとしたそのときだった。
腕に装着しているガントレットが振動するような音を発したのだ。
パネルを開けて内蔵画面を見ると、メールが届いている。
そのメールの中身を見るや、ネロの表情があっという間に仕事時のものへと変わってゆく。
ネロは一瞬、キアラの方へチラリと視線を向けると何やらパネルに打ち込み、キアラのガントレットへメールを送信する。
送信作業が終わると、ネロは部屋を後にした。
 それから一時間ほどの後、ある喫茶店にネロはいた。
ネロと向かいあって別の悪魔が座っている。
こちらはスーツ姿で、官庁や企業の管理職といった感じだった。
「報告書を見せてもらったよ、ネロ」
「そうか。で、どうだった?」
「君の弟子の・・・キアラだったか?かなりの問題児のようだな」
「あぁ。今日もやらかしてくれたよ。確かもう報告は届いているはずだと思うが?」
ネロが尋ねるとスーツの悪魔は肯定するように頷く。
 「ネロ、君ほどのベテランが何だってあんな問題児を選んだんだ?他にも君と組みたいという新人は多かったのに?」
相方の悪魔は怪訝そうに尋ねる。
よりにもよってキアラのように厄介な問題児を選択したのが不思議だったのだ。
「そうだな。一つ言えば・・・何か光るモノを見つけたということか。確かに今はクリーナーのイロハもわきまえん、問題児だろう。だが、俺はそうは思わない。あいつは必ず化ける、最高のクリーナーにな。いや、何があろうと俺が最高にしてみせる」
「では、君はあくまでもパートナーを変更するつもりはないのだね」
「あぁ。上にそう伝えてくれ」
「わかった、そう伝えておくよ」
「すまないな」
「別に構わないさ」
そういうと二人は別れて去って行った。


 その同じ頃・・・・。


 ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!ピシャアンッ!
「やあ~っ!痛ぁいっ!兄さん許して~~っっ!!」
ルクレティアは兄の膝の上で手足をバタつかせながら必死に許しを乞う。
既にお尻はスモモのように濃厚な赤に染め上がっていた。
「何を言ってるんだい、ワガママ言って勝手に屋敷を抜け出して、しかも喧嘩なんかして!そんな悪い子兄さん絶対許さないよ」
チェーザレはそういうと容赦のない平手打ちを妹のお尻に降らせ続ける。
その後、悲鳴と肌を打つ音が幾重にも重なって部屋にこだました。
 「うぇぇぇん・・・ひっいぃぃん・・・」
ルクレティアはボロボロと涙をこぼしている。
「少しは反省したかい、ルクレティア?」
そろそろ頃合いだと見たのだろう、チェーザレは声のトーンを和らげて尋ねた。
「ひぃん・・したぁ・・・したからぁ・・・も・・もぅ・・ペンペンしないでぇ・・・」
しゃくり上げながらルクレティアは必死に許しを乞う。
 「じゃあ何が悪かったんだい、言ってごらん?」
「ひっく・・ひぃん・・。勝手に・・屋敷・・・出てった・・・」
「そう。それから?」
「け、喧嘩して・・・町、壊したぁ・・・・」
「そう。それともう一つあるだろう?」
「え・・ぇぇと・・・あれ・・?」
チェーザレは苦笑すると、優しげな笑みを浮かべて助け船を出す。
「お前が屋敷を抜け出したり喧嘩したって聞いて心配したんだよ、わかるかい?」
「ひっ・・ひぃん・・。し・・心配かけて・・・ごめんなさぁい・・・」
「よしよし。よく言えたね。いい子だ」
チェーザレはそういうと妹の頭をポンポンと軽く撫でてやった。
 「やぁんっ!兄さん痛ぁいっっ!!」
ルクレティアはそう言うや、さらに兄にギュッとしがみつく。
「こらこら。ちょっと苦しいよ。これじゃあ塗れないだろう」
「だってぇ、お尻染みるんだもぉん」
ルクレティアはふくれっ面を浮かべて兄に抗議する。
チェーザレは妹を膝に座らせて抱きかかえたまま、薬を塗ってやっていた。
 「やれやれ。いつまでたってもお前は甘えん坊さんだな」
「だって最近全然兄さんに抱っこなんかしてもらってなかったのよ。絶対離したくないの~~~~~~~」
ルクレティアはそういうや、さらにしがみつく。
チェーザレは苦笑するものの、自分もよりしっかりと妹を抱きしめてやった。


 ―完―
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