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公国の魔人2



 チャラララララ~~。
ラッラッララララ~~~~ラララララ~~~。
オーケストラの楽曲をバックにワイングラスを載せた盆を持ったギャルソンたちが動き、様々な人物達が和やかなムードで談笑や社交ダンスをしている。
 ギャルソンたちを除くと、皆高級スーツやドレスに身をまとっている。
年齢にばらつきが見られるものの、誰も彼もが貴顕であることは服装などからすぐにわかった。
 ここはガストン公国首都、ルールタビーユ市内にあるフランス大使館。
今日は各国の大使や有名企業家、この国の有力貴族などを招いての晩餐会が開かれていた。
 「うらやましいねぇ、お偉いさんは中でパーティだぜ」
外で警備をしている警備員の一人が思わず呟いた。
「仕方ねえだろ。これが俺らの仕事なんだからな」
相棒と思しき男がたしなめるように言う。
「まぁそりゃそうだがよぉ。しかし寒いモンはしょうがねえがな」
愚痴る警備員はガタガタと大げさに震えてみせる。
今は冬なため、寒さが厳しいのだ。
外で警備をしている者たちにとっては早く交代になってもらいたいというわけだ。
「我慢しろ。あと15分かそこらで交代だ。そうすりゃ熱いコーヒーでも飲めるぜ」
「そうだな・・・」
そのとき、けたたましい悲鳴が上がった。
 「何だ!」
「おい。正門の方だ!!」
二人は急いで正門に駆けつける。
駆けつけるなり彼らはアッと声を上げそうになった。
正門の警備員たち全員が地面に倒れて息絶えていたからだ。
彼らはいずれも深い爪や牙による傷跡を残している。
「な・・何だよ・・これ・・」
「動物園から猛獣でも逃げ出したのか・・・?」
そのとき、何かが唸るような声が聞えてきた。
二人はハッとすると腰の拳銃を取り出す。
彼らは拳銃を構えると恐る恐る声の聞えた方向を振り向いた。


 暗闇の中にランランと光るものがあった。
最初、警備員達はそれを豆電球かと思った。
だが、ジッと見ているうちにそれが目であることに気付く。
「ウフフフフフ・・・・」
目の主が闇の中で笑った。
人間のものとは思えない異様な声に警備員はゾッとする。
やがて、目玉の主がゆっくりと近づいてきた。
闇夜に目が慣れたおかげで警備員にもその姿がおぼろげながら見える。
 そいつは獣のように蹲り四つ足で歩いてくる。
そしてその顔は豹と人の合いの子といった感じだった。
(ま・・まさか・・・)
警備員は豹のような顔にゾッとする。
 しばらく前からこの国の外国人や彼らと関係のあるガストン人たちを騒がしているニュースがあった。
豹の顔を持つ魔人の噂だ。
その魔人は大使館や外国の企業・NPO団体やその関係者を襲って被害を与えていた。
「うふ・・うふうふうふ・・・うふふふふふふ・・・・」
気色の悪い声色で魔人ことオンダは笑うとゆっくりと近づいていく。
「止まれ!!止まらんと撃つぞ!!」
警備員たちは拳銃を構えて警告するが、オンダはどこ吹く風といわんばかりにそのままノソリノソリとこちらへ近づいてくる。
異様なものが自分たちに確実に歩み寄ってくるという事態に警備員達は肌があわ立ちそうな恐怖を感じる。
オンダが一センチ近づくごとに警備員の舌が火にあぶられたかのようにチリチリと乾き、脂汗がにじみ出る。
 「く・・・っっ!!!!」
とうとう片方の警備員が我慢できずに発砲した。
だが、弾丸は当たらなかった。
発砲を見切ったオンダが獣の跳躍力を武器に飛び掛ってきたのだ。
 「ウワアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
悲鳴が上がるや、オンダが警備員の喉に喰らいついた。
次の瞬間、オンダは首を振るって口で警備員を投げ飛ばす。
哀れな警備員は喉を食い破られた上に後ろにあった木に思い切り叩きつけられてそのまま魂は天へ登っていってしまった。
 「ひ・・ひえええええ!!!!!!」
残るもう一人の警備員は悲鳴と共に拳銃を乱射する。
だが、這うような姿勢を取ったオンダがそのままの体勢で警備員にタックルし、気付いたときには地面に倒されてオンダの手の甲から生えてきた爪に胸を貫かれていた。
 「けっ・・・。あっけねえなぁ・・・」
物足りないといった表情でオンダは呟くと、自らが手にかけた警備員を見下ろす。
その足を掴んだかと思うと、パーティ真っ盛りの大使館の建物にむかってズルズルと死体を引きずりながらオンダは歩き出した。


 バリィ――――――ンンンンンンンンッッッッッ!!!!!
突然、ガラスの音が激しく割れる音と共に何かがパーティ開場へ投げ込まれた。
突然の事態にオーケストラの音楽はストップし、人々も静まる。
割れた窓へ恐る恐るギャルソンの一人が近づいていった。
 ゴクリと息を飲みながら彼は投げ込まれたものを見下ろす。
「ひええええっっっ!!!!!」
叫ぶと同時に彼は飛びのき、腰を抜かして座り込んだ。
彼が見たのはオンダの犠牲となった警備員。
ギャルソンの反応も無理は無かった。
同時に女性客などの口から悲鳴が漏れる。
招待客たちも事態を把握し始めたのだ。
 「早く!!早く人を呼ぶんだ!!」
慌ててスタッフ達が広間内の扉に向かって走り出し、ドアを開けようとするが完全に閉まっている。
スタッフ達は必死に開けようとするがドアはびくともしない。
だが、あるドアだけは開いていた。
すぐにもドアを開けてスタッフが外へ急を知らせに行こうとする。
だが、ドアに出るやギャアア!!という悲鳴と共に再び中へ転がり込んだ。
 同時に誰かがのっそりと中へ入ってくる。
豹の顔に手の甲から長く鋭い鉤爪が生えた怪人。
オンダだ。
 オンダの姿を見るや、全員がアッという表情になる。
「うふふふふふ・・・。イッツァショーターイームッッ!!!」
オンダはこの上ない歓喜の笑みと共に突撃する。
次の瞬間、会場には恐怖と絶望の悲鳴と魔人のおぞましい喜びに満ちた哄笑が一時間にも渡って響き渡った。


 「何て・・・こった・・・・」
近藤は渋柿をかじってしまったかのような表情で新聞を見つめていた。
新聞の第一面ではフランス大使館で起こった惨劇がデカデカと報道されていた。
「これで・・・もう6度目ですな・・・」
近藤の向かい側に座っていた男がそう呟いた。
 男は近藤と同じか2,3歳年上くらい、痩身だが鍛え上げられた身体つきで痩せた頬に剃刀のように鋭い目つきをしている。
彼の名は桜井半悟(さくらいはんご)。
原田が責任者を勤める青狼社の腕利き社員の一人だ。
彼は荒木又右衛門による鍵屋の辻の決闘事件で名高い桜井半兵衛の末裔で祖先に劣らぬ槍術の達人だった。
この国で活動する様々なNPO団体や企業の護衛のために社の本拠があるイギリスからこの国へ出張しているのである。
無論、特別社員である近藤もそうだった。
 「ああ・・。この噂の魔人とやらはどうやら恐ろしい相手のようだ・・・。今、佐之達が手を尽くして魔人のことを調べていてくれてるが、中々掴めん」
「奴のおかげでこの国で活動する外国人たちは皆不安に怯えています」
「ああ。それが奴さんや黒幕の狙いだろう」
「はい」
しばらく沈黙があたりを支配したかと思うと、おもむろに近藤が口を切り出した。
 「半さん・・・・。あんたの今日の仕事は非常に・・・危険だ・・・。この国の主産業であるダイヤの原石の運搬だからな。それもこの国の政府と某大外国企業との合弁のな。
テロリストどもにとっては絶好の獲物だ。この・・・魔人とやらも襲ってくるかもしれんぞ?」
「わかっています。ですが、今日の仕事は私が請け負ったものです。命惜しさに他人を危険にさらすわけには参りません」
「そうか・・・。半さんならそういうと思った。半さん・・・頼む・・・無事に・・帰ってきてくれ・・・」
「はい・・・・」


 数時間後・・・山中。
重厚な音を立てて荷台に幌を張ったトラックが数台連なって走ってゆく。
トラックの前後は完全武装したジープが固めており、トラックにも荷物と一緒に武装した警備員達が乗り込んでいる。
桜井も一番後ろのトラックに乗り込んでいた。
桜井は社の制服にヘルメット、防弾着を身につけ、自動拳銃と日本刀を腰に下げている。そして突撃銃の代りに手槍を手にしていた。
桜井はダイヤの原石を詰めた箱の山を背にあぐらの体勢で座っている。
ガタガタと揺れる中、ジッと押し黙って座っていたが、不意にトラックが止まる。
 (来たな・・・)
瞑想でもしているかのように閉じていた桜井の目がはっきりと開く。
同時に起き上がるや、外に向かって一気に間合いを詰める。
そして荷台の乗降口近くまで来たかと思うや目にも止まらぬ勢いで槍を外に向かって突き出した。
 ギャアッ!!という悲鳴と共に突撃銃を持った一人のテロリストが仰け反るやそのままぶっ倒れる。
間髪いれずに桜井は立て続けに槍を繰り出し、トラックの荷台を占拠しようと近づいてきたテロリスト達を悉く槍の餌食にする。
同じ頃、他のトラックやジープに乗っていた警備員達も森や崖の上に隠れていたテロリスト達を相手に激しい銃撃戦を繰り広げていた。


 「くっ・・・・。まずいぞ・・・・」
少し高台になったところから、双眼鏡で襲撃隊の様子を伺っていたテロリストたちの現場隊長は呟いた。
自分達襲撃側が押されているのだ。
一人また一人と襲撃者達が倒されてゆく。
「旗色が悪いよぉだなぁ」
傍らでオンダが呟いた。
人外の存在である彼には肉眼で足下の戦いがよく見えていた。
だんだんと形勢が悪くなり、やがて一台また一台と無事トラックが現場を離脱して行く。
「いかん・・いかんぞ・・・。一つもトラックと荷物を得られなかったら、また団長が器を問われるようなことになってしまうぞ・・・」
指揮官の男は心配そうに言う。
オンダや後藤博士のおかげでピートは無事団長の座を保ち、威勢のよいテロ組織として義勇獅子団は名を上げたが、元々団長の器量などを問われていたこともあり、ここで完全に失敗するとまた元の木阿弥となってしまう危険もあった。
「フフフ・・・。そんなことぁ俺もちゃんとわかっているから安心しろ。さぁて・・。俺もそろそろ行くとするかねぇ」
オンダは槍を振るっている桜井に狙いを定めるかのような視線を向けると舌なめずりをする。
次の瞬間、オンダは足下に向かって斜面を駆け降りていた。


 「今だッッ!!!行けッ!!行くんだっっ!!」
桜井が叱咤すると同時に4台目のトラックが弾丸のような勢いでその場を離脱してゆく。
(あと・・・二台・・・)
桜井は戦いながらまだ逃げ出せていないトラックの数を確認する。
チャンスを見てこれらも無論逃れさせるつもりだ。
だが、そのときトラックから立て続けに悲鳴が上がった。
 ハッとした桜井がトラックの方を見やると、残るトラックに乗っていたはずの運転手や兵士たちが悉く息絶えた上に地面へ引き出されていた。
その死体に囲まれるようにして異形の男が立っている。
 「ウフフフフフ・・・・・・」
オンダはニヤニヤと笑みを浮かべて桜井を見つめる。
「貴様が・・・魔人とやらか?」
桜井は穂先をオンダの方へ向けて尋ねた。
「ああ。その通りだぜ。クックックッ。あんた・・骨がありそうだなぁ。うふふふふふふ、お前さん相手なら楽しめそうだ・・・」
オンダは長い舌を出すと嬉しそうに舌なめずりする。
その様子に桜井は嫌悪を感じるものの、油断無く槍を構えて魔人と対峙した。


 二人はジッとにらみ合っている。
オンダは背を丸め、顔を突き出した体勢でジッと桜井の様子を伺い、桜井もまた、槍を構えてジッと睨んでいる。
二人はゆっくりと互いに右側に向かって歩き出した。
さながら孤を描くかのように。
右に動きながら二人とも徐々に間合いを詰めてゆく。
やがて、穂先とオンダの鉤爪が伸ばせば互いに触れ合う距離まで近づいた。
 「キケェェェッッッ!!!!」
奇妙な雄叫びと共にオンダが鉤爪で突いてきた。
すかさず桜井も槍を繰り出す。
爪と槍穂が互いにぶつかり合い、火花を散らす。
「フッ・・・ヤッヤッヤッヤッヤァァァァァ!!!!!!」
気合と共に桜井は踏み込むや槍を繰り出す。
槍穂はあっという間に十数本にも増え、的確にオンダの急所目がけて襲いかかる。
だが、オンダは巧みに両手の鉤爪で捌いてかわす。
桜井の槍を受け止めながらオンダは僅かな隙を突き、桜井の懐に飛び込んだ。
 飛び込むと同時にオンダの口がガアッと開く。
狙うは首筋。
オンダの獣の口が今にも桜井の首を食いちぎるかと思えたときだった。
 ゴッッッ!!!!
桜井はオンダの顎に強烈なアッパーカットを叩き込む。
口を開けた無防備で力の入らない状態だったため、さすがのオンダももろにパンチの衝撃に身体を仰け反らせた。
すかさず桜井は柄を使ってオンダの脛を引っぱたく。
さらに姿勢を崩したところへ桜井がとどめの一突きを繰り出す。
だが、オンダはそれを見切るや、ひょいと桜井の頭上を飛び越えてかわす。
かわしながら自慢の鉤爪でオンダは斬りつける。
 「シャラアアアアア!!!!!!」
オンダは叫ぶや否や、発狂したかと思うほどの勢いで桜井に鉤爪で襲いかかる。
何十回と爪が桜井の血肉を求めて振り下ろされる。
桜井は槍を巧みに動かしてオンダの乱撃を受け流す。
受けながら桜井は少しずつ距離を取る。
槍を使うには間合いを取らなければいけないからだ。
うまく間合いを取った桜井は数回牽制の突きを繰り出し、オンダが隙を見せたところをすかさず突く。
だが、そのときオンダがニヤリと笑った。
その姿に桜井はハッとしたが、時既に遅し。
オンダは思いっきり背を丸めるや、自慢の口で桜井の槍に横からかぶりついたのだ。
 木が押し砕かれる音と共に桜井の槍が柄の中途からへし折れる。
「う・・・っっっっ!!!!!」
桜井は折れた槍を取り落とすや、片手で顔を押さえる。
オンダが砕けた柄の破片を桜井の顔に向かって吐き出し、それが桜井の顔に突き刺さったのだ。
思わぬ攻撃に一瞬たじろぐも、桜井はすかさず空いている右手で拳銃を引き抜いて構える。
だが、引き金を引くより先にオンダの鉤爪が桜井の腕を切り裂いた。
手首を切られた苦痛に桜井は拳銃も取り落とす。
そこへすかさずオンダが足がらみをかけ、桜井を地面へ仰向けに倒す。
オンダは桜井の両脚を鉤爪で切り、逃げられないようにするや、地面に深い足跡が突くほどの勢いで飛びあがった。
 あっという間にオンダは数メートル、いや10mは飛び上がってしまう。
飛び上がりながらオンダは空中で身体を回転させ、逆立ち状態になる。
両腕をしっかりと伸ばし、鉤爪を先端で合わせてさながら今にもプールへ飛び込もうという水泳選手のようなポーズを取った。
そのままの体勢でオンダは桜井の腹目がけて落下してゆく。
ドスンッッ!!という鈍く思い衝撃と共にオンダの爪が深々と桜井の腹に突き刺さり、桜井の腹上で逆立ちしているように見えた。
「へへヘヘへへ・・・・」
オンダは厭らしい笑みを浮かべたかと思うと、コマのように超高速で回転し始める。
同時に桜井の凄まじい絶叫とオンダの嫌悪感をもよおさせる笑いが山道にこだました。


 ―続く―
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