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公国の魔人6



 水しぶきが上がったかと思うと、近藤は下水の中へ倒れこみ、そのまま意識を失った。
「ハァ・・・ハッ・・ぐっふぅ・・・」
闇の中で、オンダは胸を押さえながらよろよろと立ち上がった。
(くそっ・・危ねぇとこだったぜ・・畜生・・)
オンダは再度胸を撫でてみる。
胸の骨が一、二本折れているのは間違いなかった。
(それにしても大した野郎だ・・。暗闇の中だってのに・・俺を追い詰めやがった・・。だが・・・)
オンダはニヤリと笑う。
近藤は壁に仕掛けてある小型機銃を喰らったのだ。
たとえ死んでいないにしても、しばらくは起き上がっては来ないだろう。
(本当は・・いたぶりながら殺してやりたかったが・・そうもいかねぇ・・)
オンダはゆっくりと意識を失った近藤の傍に立つと、鉤爪を生やした腕をゆっくりと振り上げる。
そして心臓目がけて突き下ろそうとしたそのときだった。
 突然、壁につけられている仕掛け扉が開いた。
同時に後藤博士が姿を現す。
「オンダよ!大変じゃ!」
「どうした?ドクター?」
「サツじゃ!!完全武装の警官隊どもが乗り込んできおったのじゃ!!」
「何だと!?手が回りやがったのか!!」
「そうじゃ!!近藤の奴め、数日のうちにとっくに色々探り出した上につなぎをつけてしもうたらしい。全部の出口から警官隊がアジトへ乗り込んできおったわ!!義勇獅子団も終わりじゃわい!!」
「くっそぅ・・・」
オンダは下水を漂っている近藤を見下ろす。
その超人的な生命力と身体能力のおかげか、銃弾を浴びせかけられたのに息がある。
オンダはせめて近藤だけでも殺そうかと思ったものの、バシャバシャと水の中を大勢の人間が必死になって走ってくる音がこちらへ聞えてくる。
「くそったれっっ!!覚えていやがれっ!!」
オンダは捨て台詞を残すと、急いで後藤博士が開けた仕掛け扉に飛び込んだ。
仕掛け扉がしっかりと閉まってしばらくすると、10を越す懐中電灯により、あたりが昼のように明るくなる。
そして踏み込んだ警官隊が近藤を発見すると、急いで担架を呼びに行かせた。


 「っつうわけで義勇獅子団の方は壊滅させられたんだがよ・・・・」
机の上の報告書を見ながら、原田は近藤に話していた。
あれから数日後、近藤は銃の乱射を喰らったにも関わらず、その人間離れした頑丈さのおかげで死なずに済み、数日入院したくらいで身体も治ってしまっていた。
 退院するや、早速支社へ赴き、原田からあの後のことを説明してもらっていたのである。
それによればあのあと警官隊と社の兵士達の合同部隊が駆けつけ、地下アジト内で激しい戦いを繰り広げた末、団長ピート以下の主要メンバーは悉く逮捕、麻薬や盗掘ダイヤなども全て押収し、組織は完全に潰えた。
 「だが・・・例の魔人めは見つかっておらんのだな・・・?」
「ああ。アジト中をくまなく探したんだが見つからなかったそうだ。ようやく痕跡らしきものを見つけたときには、奴さん、隠し通路からトンズラした後だったぜ。こなくそっ!」
原田は心底から悔しそうな表情で言う。
彼にとっても、魔人は部下である社員をなぶり殺しにした仇だった。
何としてもこの手で捕らえて司直に引き渡してやりたい、という気持ちは強かった。
 「だが・・・・魔人とやらがこのまま潜伏を続けるとは思えんな・・・」
「ああ・・。獅子団の連中によれば魔人ことオンダはあの後藤博士の生み出した改造人間、清河の手先だ。清河たちの狙いは現政権を崩壊させててめぇのお眼鏡にかなった体制をこの国に作ることだからな。魔人の野郎はきっとまた現れるぜ」
「その前に何としても奴を突き止めねばな。半さんに申し訳が立たん」
「ああ。わかってる。きっと突き止めてみせるぜ」
「頼んだぞ」
近藤はそう言うと立ち上がった。
「もう行くのかい?」
「ああ。この国のスポーツ振興協会のお偉方と会食の約束が会ってな。あんまり堅苦しい場は好きじゃねえが・・・こればかりは仕方ねぇ・・」
「わかるぜ。ご苦労様なこったな」
「お前もな」
二人は互いに別れの挨拶をすると、近藤は外へ出て行った。
社の正面の前では新撰グループの社用車が待っていた。
近藤は車に乗り込むと、運転手に声をかける。
「スポーツ振興協会のビルまでやってくれ」
「かしこまりました」
ブロロ・・・という音がしたかと思うとゆっくりと車が動き始めた。


 (ん・・・?)
移り行く車窓の景色を見ながら、近藤はおかしなことに気がついた。
スポーツ協会の本部がある官庁街ではなく、荒れ果てた街区の方へ向かっているのに気がついたからだ。
「おい!行き先が違うぞ!!」
思わず近藤は声をかける。
「へへへ。違ってなんかいませんよ・・・旦那・・・」
「何?」
運転手のおかしな態度に近藤は眉をひそめる。
「へへへへ。あっしはあるお方からのお使いでさ」
「お使い?」
「そう。あんたが一番会いたがってるお方のね」
「魔人の野郎か?」
「ご名答」
「なるほど・・地獄からの使いってわけかい」
「へへへ。物分りがよくていいね、旦那」
「どうせ抵抗したらガスか何かで眠らせて連れてこうってんだろう?だったら最初から大人しくしてる方が利口だろう」
「ふふふふ。その通りさ。まぁ、しばらくの辛抱ですよ」
運転手がそういったかと思うと左右や背後のドアに黒い覆いが掛かり、外が全く見えなくなる。
そして、行き先を覚らせないようにわざとあちこち曲がったり迂回したりして動き始めた。


 2時間ほど立ったところでようやく車が立ち止まった。
「へへへへへ・・・地獄の終着駅に到着でさぁ」
運転手が振り返って下卑た笑みを浮かべたかと思うと、車が自動で開く。
近藤は左手に日本刀を提げたまま、ゆっくりと外へ出た。
外へ出た近藤の目の前には野球場とおぼしき建物が立っている。
だが、その外壁はボロボロに崩れ落ちてさながら虫歯だらけの歯並びといった感じである。
もう随分と長い間使われていないのは間違いなかった。
 「ここにいるんだな?」
「へぇへぇ。その通りでさ・・」
近藤は運転手に確かめるとゆっくりと歩き出す。
そして、廃競技場の入り口を潜り、場内へと消えていった。
 電気がついておらず、日の光も指さない暗闇の中、近藤は中央の競技トラックに向かってゆっくりと進んでゆく。
闇の中で、近藤の歩く足音だけが微かに響き渡っていた。
 (来たぞ・・・)
廊下の交差点で、左右にそれぞれ潜んで近藤を待ち受けているオンダの配下達は足音が近づいてくるたびに、表情が緊迫したものになる。
手下達は思わず銃を掴んでいる両手に力を込める。
オンダの手先達はいずれも短機関銃を手にしている。
(まだか・・まだか・・まだか・・・)
耳を澄ませ、息をゴクリと飲んでオンダの手下達は近藤をジッと待ち構える。
僅か一秒の時間も彼らには永遠に思えた。
 不意に彼らは闇の中で何かが動いて床や壁に触れた音を聞き取った。
全身の神経を呼び覚ましていた彼らはすぐにもその気配を察知する。
次の瞬間、男達は短機関銃を構えて廊下へ飛び出した。
 男たちが現れると、僅かに入る光を頼りに暗闇の中に近藤の姿を認めた。
近藤は刀を抜き放ち、切先3~6センチのところに鞘をかけ、下緒(日本刀の鞘についている紐)を口にくわえた状態で刀を左右に揺らしている。
これは座さがしの術と呼ばれる忍術で、行き先に敵が潜んでいるかどうかを調べる為に忍者が用いた技だ。
テロリストや凶悪ギャングなどと戦うために、近藤は忍びの技も勉強しておいたのである。
迂闊にも敵はこの術に引っかかってもっと先に近藤が来ていると誤解して飛び出したというわけだ。
 「構わんっ!!殺せっっ!!!」
男達は叫ぶや、一斉に引き金を引く。
下緒を離して抜き身を手にするや、近藤は右に動いて壁にタックルする。
壁が崩れたと思うや、近藤は壁の裏にある部屋に飛び込んでしまった。
「しまったっ!!くそっ!壁だっ!壁の向こうだぁぁ!!」
男達は壁の向こうに向かって銃をぶっ放しまくる。
鼓膜が破れそうな音と共に何十という穴が壁に生じる。
「ど・・どうだぁ・・畜生がぁぁ・・・」
ようやく銃を止めると、男達は勝ち誇ったような表情を浮かべる。
だが、男たちの背後で空気が切り裂かれるような音が聞えてきた。
はっとした男たちが振り向くと、いつの間にか彼らからやや離れた位置にある壁に円形の亀裂が走っている。
やがて、その亀裂がぐらついたかと思うや、壁が倒れ、人一人充分通れる大きさの穴が空いた。
穴が開くや、近藤が飛び出してくる。
オンダの配下達は近藤の方へ銃口を向けようとするが、その隙を突いて近藤が躍り込む。
闇の中で白刃が乱舞したかと思うと、鈍いうめき声と共に全員が力無く崩れ落ちた。
「安心しろ、峰打ちだ」
近藤はそう言い捨てると鞘を拾い、気絶したオンダの兵達を乗り越えて試合場の方へと向かっていった。


 (さすがに・・・眩しいな・・)
暗かった廊下から荒れ果てた試合場へ出るなり、近藤は一瞬そう感じた。
だが、油断無く抜き身の刀を構えており、警戒には怠りは無い。
かなり傷んだ芝生を近藤はゆっくりと進んでゆく。
(どこにいる?)
近藤は周囲を油断無く警戒する。
グラウンドは無論、観客席にも人っ子一人見られない。
しかし、だからといって誰もいないとは限らない。
相手は清河の組織が科学技術を駆使して造り上げた魔人だ。
思いもよらない手段で隠れているかもしれない。
 (む・・・?)
不意に近藤は何かを聞き取った。
余りにも小さいゆえ、普通の人間だったならば聞き逃してしまうことは間違いない音だった。
(これは・・・・吐息?)
近藤は音の性質からそう判断する。
どうやら吐息らしい音の主は背後から足音も立てずに忍び寄ってくる。
だが、緊張の余り接近のたびに吐息は荒くなっている。
同時に殺気も少しずつ放出している。
それで気付かれたのだ。
 不意に殺気が大きくなった。
同時に誰もいないはずなのに芝生が踏みにじられる。
とっさに近藤が左へのいたかと思うと、その脇を見えない何かが通り過ぎていった。
同時に近藤の手刀が宙を打ったかと思うと返すようにして反対側の虚空を蹴る。
 ぎゃあっ!!という悲鳴が続けて起こったかと思うと、バチバチと雷のようなものが空中に走り、奇妙なスーツとマスクとつけた男が二人、空中から突然現れた。
男達は二人とも芝生に顔を突っ込むようにして倒れるとそのまま意識を失った。
(透明化スーツか・・・こんなものまで発明していたのか・・・)
「ブラボーッ!イッツブラボ―――――ッッッッ!!!!」
突然、妙な声が上がったかと思うや、わざとらしい拍手が鳴り響く。
近藤が拍手の聞えた方を振り向くと、観客席から異形の男が降りてきた。
 現れたのは猫科の猛獣を思わせる奇妙な顔立ちをした痩身の男。
「お前が・・・魔人か?」
近藤は試合場へ降り立ったオンダに尋ねる。
「いかにも。俺様こそが魔人ことマイケル・オンダだぜ、ウフフフフフ・・・・」
「ノコノコと一人で現れるとは大した自信だな・・・」
「ウフフフフ・・・。貴様如きに助っ人はいらんわ・・。だが、その前に・・」
オンダは右手を握って拳を造ったかと思うや、拳の甲から鉤爪を伸ばす。
鉤爪を造り出したかと思うや、オンダは気絶している配下に近寄る。
そして近藤が見ているのを意識したかのようにニヤリと笑みを浮かべるや、気絶している配下目がけて容赦なく鉤爪を繰り出した。
ウッといううめき声と共に倒れ伏した手下達の身体が硬直する。
オンダが鉤爪を引き抜くごとに配下達はぐったりし、永遠の眠りについた。
 「貴様っ!何ということを!!」
オンダの行為に思わず近藤は声を上げる。
「フフフフフ、俺様のやり口に文句があるのかい?」
「貴様・・・仮にも貴様の部下だろうが?それを殺すとはどういう了見だ?」
「ふふん、こいつらは失敗したんだぜ。失敗には死を以って償わせるのが俺の掟よ。それに・・・フフフ・・・虫けらの一人や二人殺したところで何だっていうんだ。お前は自分が食ったパンの枚数を一々覚えてるかい?」
「く・・・・」
近藤はオンダの言葉に深い憤りを感じる。
つまり、オンダにとっては人の命とはその程度のものだというわけだ。
「フフフ・・・お前たちのような虫けらは・・俺たち選ばれた人間に奉仕し、楽しませるためにのみ存在しているのさ」
「貴様のような外道・・・絶対に許しておかん・・・」
近藤はそういうと鞘を放り、両手で刀を握り締める。
いわゆる中段に刀を構えると、身体を右半身に開き、刀身を少し左に傾斜させて切先が右脇の下のあたりに来るように構える。
平星眼(ひらせいがん)という定法の構えを取ると、近藤はオンダと対峙する。
対するオンダも両拳をしっかりと握り締めると爪を生やしていない左手に意識を集中する。
メキメキと骨が音を立てたかと思うと拳の甲から二本、尖った堅いものが伸び始めた。
同時のオンダの顔が前に向かってグググッと突き出し、獣そのものといった顔になる。
さらにはオンダの全身に黒く艶のある獣毛が生え出し、まさに豹男とでもいうべき姿になった。
 「ヘヘへ・・そいつぁこっちの台詞だよ。俺たちの仕事を邪魔しくさりやがって・・・。なぶり殺しにしてやるっっ!!!」
オンダが叫んだ瞬間、近藤の視界からオンダの姿が消えた。


 オンダが消えると同時に本能的に近藤は後ろへ下がった。
次の瞬間、空気が切り裂かれる音が聞えたかと思うと近藤の上着がこま切れになり、上半身が完全にあらわになる。
「ぬうんっ!!」
気合と共に近藤は目の前に柄を突き出した。
鈍い音がしたかと思うとオンダが顔を押さえてよろめく。
オンダは目では捕らえきれぬ速さで一気に間合いを詰めるや、両腕の鉤爪を振り回して近藤をミンチにしようとしたのだ。
とっさにそれを察知した近藤は後ろへ引いて服一枚で敵の攻撃をかわし、踏み込んで柄を思い切りオンダの顔面に叩き込んでやったのである。
「ふうっ・・・おあああああっっっっ!!!!!」
右足で立つや、近藤は気合と共に左脚を繰り出した。
10を越える足が現れたかと思うや、悉くオンダに襲い掛かる。
オンダは両腕をしっかりと合わせて近藤の蹴りをブロックする。
まるで鉛を詰めた棍棒で殴られているような感触がオンダの腕を襲う。
だが、オンダの腕はこの程度の打撃にはびくともしない。
「しゃらくせえっ!!」
一声叫ぶや、オンダは頭上を飛び越えるようにして飛び上がった。
すれ違い様に近藤の頭目がけて自慢の鉤爪を振り下ろしてくる。
近藤はとっさに身を沈めてかわすや、空中にいるオンダ目がけて平突きを繰り出す。
オンダは空中で身体を捻って回転するや、何と突き出された近藤の刀の切先にちょこんと乗った。
 (何と・・・・!?)
近藤は思わず驚嘆する。
男一人が乗っているにも関わらず、近藤は刀の先端に全く重みを感じなかった。
(こやつ・・・軽功を極めているのか?)
軽功とは跳躍などの技術のこと。
武侠小説(中国のチャンバラ時代小説)や中国拳法モノの格闘漫画などによく登場する用語で、そういった作品に登場する軽功術の達人は鳥のように宙を跳び回り、或いは水の上を走ったり、または何の種も仕掛けも無い豆腐に乗っかっても豆腐を潰すことなく乗っかっていられる。
 刀の切先に乗っかったまま、オンダは蹴りを繰り出してきた。
一旦手を離して身を沈めて蹴りをかわすや、近藤はバネの如き勢いで飛び上がる。
飛び上がりながら宙に浮いている刀に乗っているオンダの身体目がけて蹴りを繰り出した。
オンダはそれを見切るや、トンボを切って刀から飛び上がり、柄の方へ着地する。
 着地と同時にオンダは刀を掴み、近藤目がけて一気呵成に突進する。
近藤自身の刀が本来の主の胸目がけてミサイルのような勢いで突っ込んできた。
「むうんっ!!」
気合と共に近藤は胸で合掌する。
両手で白刃をしっかりと押さえつけ、突進を止めたのだ。
 「ウルルルルル・・・グルグルグルルルルル・・・・・」
獣そのままの唸り声を上げるや、オンダは強引に近藤の胸目がけて刀を押し込もうとする。
対して近藤はそうはさせじと刀をオンダの方へ押しやろうとする。
一進一退の攻防がしばらく続くが、なかなか勝負がつかない。
(さすがに・・・後藤博士のつくった改造人間だな・・・)
近藤はオンダの力に思わず感嘆する。
(だが、いつまでもこうしているわけにはいかん・・・)
近藤はわざと力を緩める。
(今だっっ!!)
心中で叫ぶや、オンダは気合と共に近藤の胸目がけて剣を突き出した。
だが、近藤は半身になって突きをかわす。
(しまっ・・・!!)
オンダが思わず舌打ちすると同時に右に回った近藤が組み付いてきた。
近藤はオンダの右膝裏と首の後ろを引っ掴むや、回すようにして持ち上げる。
そしてそのまま地面に叩きつけた。
 衝撃がオンダの背中を襲う。
だが、オンダはすぐにも立ち上がろうとする。
そこへ近藤が踏みつけるように踵蹴りをオンダの腹へ叩き込んだ。
踵蹴りが叩き込まれた刹那、75分の1秒というとてつもない速さで第二撃の踵蹴りが叩き込まれる。
衝撃が数倍にも倍増し、内臓が千切れ飛ぶかと思うほどの衝撃が腹を襲った。
原田の得意技の連衝撃だ。
 オンダは一瞬、強烈なダメージに頭が朦朧とする。
すかさず近藤はさらなる技をかけようとする。
そのとき、眩い光弾が近藤に命中し、近藤は思い切り後ろへ吹っ飛ばされた。


 「くっ・・・」
近藤は土まみれになると、ヨロヨロと起き上がる。
起き上がると同時に近藤は観客席の方を見た。
観客席にあったのは後藤博士の姿。
後藤博士は火縄銃に似た形のやたらメカニカルな銃を手にしている。
(あれは・・清河の組織の火縄銃型エネルギー銃か・・・)
同時に近藤は他の観客席も見回す。
すると同じようにエネルギー銃を持った足軽型ロボット兵が観客席のあちこちに配置されていた。
 ロボット兵の一体が試合場に転がっている近藤の刀に狙いを定め、光弾を発射する。
土煙が巻き上がったかと思うと刀はすっかり黒焦げになって使い物にならなくなってしまっていた。
 「ふふん・・・バックアップは完璧というわけか・・」
近藤は皮肉のこもった表情でオンダに言いやる。
「ウフフフフフ・・・なぶり殺しにしてやる・・・。刀がなきゃあてめえなぞ怖くも何ともないからな・・・」
「そいつはどうかな?」
逆に近藤はあざ笑うような口調で言い返す。
「何だと?」
オンダは近藤の口調に侮辱を感じる。
「貴様など刀無しで充分ということだ。伏兵を用意しておかねば戦えない者など恐ろしくも何とも無い」
「うぬぅっ!!言いやがったな!後悔しても知らんぞっっ!!」
オンダは怒りの声を上げるや両手を地面につき、猫科の猛獣が伏せているような体勢を取る。
対して近藤は素手のまま右半身になり、腰を落として構える。
「ウガアッ!!」
叫ぶと同時にオンダは低姿勢のまま突進した。
あっという間に間合いを詰めるや、近藤の脛目がけて鉤爪を薙ぐ。
近藤は跳んだかと思うとオンダの腕に乗っかった。
 「なっ・・・!!」
「一つ教えておこう。軽功を使えるのは貴様だけではない」
「しゃらくせえっっっ!!!」
オンダは反対側の手を繰り出して襲いかかる。
近藤はそれを見切るや再び飛び上がり、正面に着地する。
着地と同時に近藤が仕掛けてきた。
近藤はアメフト選手顔負けの勢いでタックルを仕掛けてくる。
とっさにオンダは両腕でしっかりブロックするが、体当たりの強烈さに思わずよろけそうになる。
そこへ近藤が間髪要れずにパンチを雨あられと繰り出してきた。
肉を、骨を、あらゆる箇所を近藤の両拳が責め立てる。
だが、オンダも負けてはいない。
近藤の連打の僅かな隙をつき、鉤爪を真っ直ぐ繰り出す。
両者の腕と脚が激しい勢いでぶつかり合い、ゴッゴッと鈍い音を幾度も立てた。
十数合にも渡って打ち合うと二人とも離れる。
離れると同時に互いに構えた。


 二人はゆっくりと右へ孤を描くようにして移動する。
ゆっくりと動きながら二人は互いに相手へ接近してゆく。
やがて、一飛びで相手に襲いかかれる距離まで近づいた。
 バアッッッ!!!
砂煙を立てるや、オンダが襲いかかった。
(喰らいやがれ!!『トリプルバイティング』ッッッ!!!)
突然、オンダが三人になった。
超高速で動くことにより残像を生じさせたのだ。
その証拠に三人のオンダの影は濃さに微妙な差があり、しかもその濃さが信号機のように次々と微妙ではあるが移動してゆく。
(どれが本当の俺かわかるまいっっ!!!三つの口で噛み殺してやるっっ!!!)
三人のオンダは背後を除く三方から口をカッと開いて飛びかかろうとする。
 だが、今にもオンダが迫らんとしたまさにそのとき、近藤が回転したかと思うや、三人になった。
近藤もまた、超高速で回転することにより残像を造り上げたのである。
「おおおおおおおおおっっっっっ!!!!!」
裂帛の気合と共に三人の近藤がそれぞれが対峙したオンダ目がけて拳の弾幕を繰り出した。
「ぼげべげべべべべべべべっっっ!!!!」
まともに数十発の拳を喰らったオンダは奇妙な悲鳴と共に数mも吹っ飛んだ。
だが、仮にも魔人として一国を恐怖に陥れたほどの男。
空中で見事な宙返りを見せるや、見事に着地してみせた。
 「さすが猫科だな・・・。見事な運動神経だ」
近藤は思わず感嘆の言葉が口をついて出た。
「しゃらくせえっっ!!これでも喰らいやがれっっ!!!」
オンダは目にも止まらぬ速さで腕をすくい上げるようにして振り上げた。
 ピシッという音と共に大地に一条の筋が走る。
近藤はその筋が自分の足元にまで達したかと思うや、腹に見えない衝撃を感じた。
(衝撃波か!)
近藤が気付くと同時に巨大な弾丸のようなものが、ドリルのように高速回転しながら襲いかかってきた。
とっさに近藤は横へ飛んでかわす。
巨大弾丸は近藤の脇を通り過ぎたかと思うと空中で停止し、降り立つ。
地面に降り立ったときにはオンダの姿になっていた。
オンダは両腕を合わせるようにして突き出して構えるや、ドリルのように高速回転しながら突進したのである。
 「ちぃ・・・!仕留め損ねたかぁぁ・・・・」
オンダは近藤を倒せなかったことに舌打ちする。
「まぁいい・・・。ぶっ殺してやる・・・」
オンダはそういうと舌なめずりしながら再び近藤と対峙した。


 ―続く―
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