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密林の悪魔1



 (注:今回は有名作品の登場人物やその血縁者といった設定の人物が登場したりしています。また、キャラを大きく改変したりもしています。許容出来る方のみご覧下さい)


 巨木や葉に覆われた薄暗い密林・・・・。
茂みにジッと身を潜め、様子を伺っている男がいた。
男はかなりくたびれた洋服を纏い、髪や顔は薄汚れ、無精ひげが生えている。
腰には革箱を提げたベルトをつけ、その上からさらに帯を締めて日本刀とナイフを差している。
そんな姿で男は息を殺して木の根元をジッと見つめていた。
 男の視線の先にあるのは獣の姿。
黄色に黒点のある毛並みに鋭い牙で獲物を貪っている。
ジャガーだ。
ジャガーは食事に夢中になっていたが、ふと後ろを振り向くと低く唸った。
男の存在に気付いたのだ。
対して、男の方も刀の鯉口を切り、右手を柄にかける。
互いに殺気を放ち、ジッとにらみ合う。
しばらくの間、人と獣とのにらみ合いが続いた。
だが、やがてジャガーが身体を低くしたかと思うと、男目がけて踊りかかった。
ジャガーが男にくらいつくかと思えた瞬間、男の腰間から閃光が迸る。
空中でジャガーが身体を折り曲げたかと思うとそのまま落下し、ピクリとも動かなくなった。
男は刀を納めると仕留めたジャガーの首を引っ掴み、その場を立ち去った。
 ドォンッ!ドォンッ!ドォォォンンッッ!!
男が獲物を手にぶら下げて歩いていると突然、銃声が鳴り響いた。
同時に甲高い悲鳴が聞えてくる。
(何だ?)
男が訝しむと同時に再び銃声と悲鳴がこだまする。
とっさに男は音と悲鳴のした方向へ走り出していた。


 木立や茂みを幾つも走り抜けると、男の視界にある光景が見えてきた。
木立の間を一人の若い女が走っており、その後を誰かが追っているのだ。
追っているのは数人の男たち。
全員、猟銃に狩猟用の洋服を着ている。
一見すると猟師に思えたが、面構えなどを見ると真っ当な猟師には見えない。
貴重動物の密猟などをやっている手合いと想像できた。
密猟者達は逃げる女に向かってめいめい銃を放つ。
女に必死になって木立の間を走り、逃げようとする。
(こりゃいかん!)
男は心中でそう言うと腰に提げている革袋に手をやった。
 「ぐ・・っっ!!」
密猟者の一人が苦痛に顔を歪めると銃を取り落とした。
その右腕には棒手裏剣が刺さっている。
「くそっ・・!誰だ!?」
密猟者達は立ち止まると猟銃を構えて周囲を見回した。
自分達とは違う誰かが潜んでいる。
しかし、相手は巧妙に姿や気配を消しており、正体をさらすような真似はしない。
女を追い回していたときとは打って変わった真剣そのものの表情で密猟者達は周囲を探る。
 突然、茂みの中から再び棒手裏剣が飛来し、別の密猟者の腕に突き刺さった。
「く・・・くそおっっ!!」
密猟者達は手裏剣が飛んできた茂みに猟銃で集中砲火を加える。
だが、今度は別の方角から手裏剣が飛んできてまた一人腕をやられた。
おぼろげな影が絶え間なく木々や茂みの間を動いたかと思うと手裏剣が違った方向から飛んでくる。
「じょ・・・冗談じゃねえ!!」
密猟者達は恐怖に駆られ、踵を返すと脱兎の如き勢いで逃げ出した。
 密猟者達が翻弄され、恐怖に駆られた末に逃げ出す様子を女が見ていると不意に
「大丈夫か?」
と英語で声をかけられた。
ハッとして女が振り向くとくたびれた日本人らしい男が立っている。
「怖がらなくていい・・・。味方だ・・・」
男は出来るだけ優しい声で言う。
「あ・・あなたが・・助けて・・くれたの・・ですか?」
女はオドオドと途切れ途切れに尋ねてきた。
「あぁ・・。それにしても災難だったな。ところで何だってあんなことになったんだ?」
「は・・はぃ・・。あの・・私はアメリカのある大学で生物学を学んでいるアダと申します。実は実地研究のために来ていたんですが・・・偶然さっきの連中の密猟の現場を見てしまいまして・・・それで追われて逃げているうちにこんなところまで・・・」
「そうか。そいつはとんだ災難だったなぁ。俺は近藤、日本人だ。ここへは修行のために来てる」
「修行・・・お坊さんか何かですか?」
「いや・・こっちのだ」
近藤は刀の柄を軽く叩く。
「はぁ・・なるほど・・」
アダは妙な目を向けて呟いた。
最も無理もないことだが。
 「とにかくここで立ち話ってわけにもいかんだろう。一応俺が寝泊りしているところまで連れて行こう。それで明日になったら一応近くの町まで送ってゆこう」
「ありがとうございます。ミスター近藤、こちらこそよろしくお願いいたします」
「ああ。とりあえず行こう」
近藤はアダの手を取ると彼女を連れてその場を立ち去った。


 「そうか。アダはうまく奴と接触したか」
「はぃ。確かにこの目で見届けてまいりました」
1時間ほど後、近藤とアダが出会った場所から徒歩で30分ほどの地点で二人の男が話していた。
二人のうち一人はどこにでもいそうな平凡な容貌の男だが、もう一人は蟹のように平たい顔をした、髭の濃い鋭い目つきをし、頑丈で脂ぎった体格をした50代らしい男。
男の名は鵜藤三四郎(うどうさんしろう)。
元々は将来を渇望された学者だったのだが、恩師の夫人に不埒な振る舞いをした上に自殺に追い込み、さらにはそのショックで恩師まで自殺させておきながら厚顔無恥にも大手を振って世間を歩いていたが、さすがに世間もそのような悪辣な振る舞いを許してはおかず、マスコミなどによって厳しく糾弾され、学界や世間から追放されたという過去を持っていた。
 だが、この男はそれを逆恨みし、社会に対して恐るべき復讐を必ずしてみせるという誓いを立てた。
そのとき、清河の組織がこの男の恨みと学者としての能力などに目をつけ、彼をスカウトしたのである。
そして、今は後藤博士等と共に清河の組織で働いていた。
「それにしても意外でしたな。清河首席同志の宿敵近藤がこのような場所で獣のような森篭り暮らしをしているとは」
「あの男は根っからの剣術家で冒険野郎なのだ。奴にとっては道場でふんぞり返っているのよりも野山を駆け剣を振るっている方が性に合うのだ」
鵜藤は馬鹿にし切った声で言うと本のページをめくった。
 「また・・読んでるんですか?よくも飽きませんね」
部下がそういうと鵜藤はギョロリと目を向いた。
「幾度読もうとわしの勝手だろう。部下の分際でわしに文句をつける気か?」
「い・・いえ・・。そんな気は毛頭・・」
男は慌てて弁解する。
この鵜藤という男の気性には火のように激しいところがあった。
そのため、うかつな口を聞いた部下を灰皿やら何やらで目茶目茶に殴りつけるということもしょっちゅうだった。
「ふふん・・・まあいい・・。貴様にはわしの偉大な先達のことなど理解できまいからな」
鵜藤は侮蔑的な目を向けると再び本に目を戻した。
 鵜藤が読んでいるのは『真珠郎』。
かの横溝正史の戦前における代表作だ。
鵜藤はこの作品に強い思い入れがあった。
 この作品はこの上も無い美貌と邪悪さを持つ青年真珠郎による連続殺人を題材にしているのだが、その殺人鬼を造り上げた人物こそ鵜藤氏、鵜藤三四郎の血縁者にして彼の崇敬する先達にあたる男だ。
彼もまた自らが行った悪事によって社会から抹消されたのだが、それを逆恨みして社会への復讐のために恐ろしい殺人鬼を造り出すという恐るべき計画を行っていたのだ。
血のつながりがあり、また似たような境遇にあるためか、三四郎はこの血縁者にいたく傾倒し、真珠郎を愛読しているである。


 鵜藤が真珠郎を読みふけっていると足音が聞えてきた。
振り返ると密猟者達の姿があった。
「何の用だ?報酬は既に払った筈だぞ?」
鵜藤は何をしに来たという感じで密猟者達に話しかける。
鵜藤はアダをうまく近藤に接近させるために彼らを金で雇い、狂言をさせたのである。
「へへへ・・・。ちぃと色つけてもらおうと思ってなぁ」
「わしが払った金では不足だと?」
「当たり前だろうが。こちとら怪我してんだ。これっぽっちの銭で治療が出来るかい」
どうやら先ほどの狂言での負傷を理由に報酬の値上げを図っているのが見え見えであった。
「おう、どうした!払うのか払わねえのか!」
密猟者達は猟銃を鵜藤に向ける。
「わかったわかった・・・。払ってやるから落ち着け・・・」
鵜藤は降参したような素振りをすると男達に言う。
「わかりゃあいいんだよ・・・・」
男達はそういうと銃口を反らすが、妙な動きをしないようにいつでも撃てる体勢を取っていた。
 「おやぁ・・?どこに行った・・?」
鵜藤はゴソゴソとバッグを探しているがどうやら財布が見つからないらしい。
「おい!何してんだ!さっさと出せ!!」
「そうは言っても中々見つからないんでなぁ・・・おう・・あったあった・・」
鵜藤のふざけた態度に思わず密猟者達は怒りかける。
 「さて・・それじゃあ追加料金を払ってやろう。ありがたく受け取れい」
そういうと鵜藤はバッグから手を抜いた。
バッグから出された手にはマグナムリボルバーが握られている。
先頭の密猟者がハッとして引き金を引くよりも早く、鵜藤のマグナムリボルバーが火を吹いた。
 「ぐうわっ!!」
断末魔の叫びと共に男の身体が吹っ飛んだ。
「畜生っ!」
密猟者達は仲間がやられたのを見るや、猟銃を一斉に鵜藤に向ける。
ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!
「「「ぎゃおうわあっ!!!」」」
突然、別の方向から銃声が轟き、三人の密猟者が衝撃で吹っ飛び、地面に転がった。
残る密猟者達がハッとして周囲を見回すと、茂みの間から別の男が姿を現しているのが見えた。
 その男は目にギラギラと狂気じみた光を宿し、表情そのものもどこか狂ったものを持っている。
頭には懐中電灯を左右脇に一本ずつ装着したヘルメットを被り、カーキ色の詰襟の洋服を着て胸には自転車用のランプを装着し、洋服の上から腰に締めた白帯には日本刀に長脇差を差している。
両手には熊(トド)撃ち用の強力な猟銃を抱えている。
「ウク・・・ウクククク・・・」
正気とは思えない笑みを浮かべると男は何のためらいも無く引き金を引いた。
衝撃で二人が吹っ飛んだかと思うと動くものに向かって構わず目茶苦茶に男は撃ちまくる。
 「じょ・・冗談じゃねえっっ!!」
残る密猟者達は慌てふためいて逃げ出すが、その背中に向かって男はニヤニヤと笑みを浮かべながら熊撃ち銃を二度続けてぶっ放した。
悲鳴が上がって一人を除いて皆が地面にうつ伏せにぶっ倒れる。
男は残る一人にも狙いをつけたが、あいにく既に射程距離を出てしまったため、残念そうな表情で諦めた。
 「うわぁぁぁぁ!!!!!!」
突然、逃げたはずの密猟者の絶叫が上がった。
しばらくするとズルズルと何か重いものを引きずる音がこちらへ近づいてくる。
やがて、今や息絶えた密猟者の身体を引きずって第四の人物が姿を現した。
 現れたのは二十歳前後と思しき青年。
その髪は艶のある金色で額にふさふさと垂れ、玉虫のようにネットリとした輝きを帯びた瞳に濡れているような唇をした、絶世の美青年だった。
だが、その美青年の表情はどこか薄ら寒く、人間の善性といったものを全く感じさせない酷薄な印象を与えている。
実際、引きずってきた死体を幾度も見下ろしてはニヤニヤと笑みを浮かべていた。
美青年は左手で死体を引きずり、その一方で右手に日本刀を提げている。
その刃には人を手にかけた跡がはっきりと残っていた。
 「う・・・うぎぃっ!!」
突然、猟銃を持った男が声をあげるや、美青年を睨みつけた。
その表情には悔しさと怒りが見て取れる。
男の表情を見て取るや、美青年はあざ笑うような笑みを浮かべた。
男はますます激昂し、銃を向けようとする。
 「やめんか!要蔵、真珠郎!」
鵜藤はよく通る声で二人を叱りつけた。
二人は鵜藤の声を聞くや、途端に大人しくなる。
「喧嘩なんぞするでない。二人ともよくやった。要蔵も真珠郎も見事に獲物を仕留めたぞ」
褒め言葉をもらい、二人は嬉しそうな表情を浮かべる。
「とにかく二人とも喧嘩はやめい。計画に差し支えるからな。今回の仕事が終わったらたんまりとお前達に褒美をやろう。だからとりあえず向こうへ行っておれ。わしはまだやらねばならんことがある」
二人はそう言われると素直に密林の奥へ姿を消していった。


 「ふっふっふっ。可愛い奴らだ。貴様もそうは思わんか?」
鵜藤は満足そうな笑みを浮かべると部下に尋ねる。
「い・・いや・・私には何とも・・・」
部下はぎこちない笑みを浮かべて言葉を濁す。
「ふん・・。所詮凡人のお前にはわからんか。ふっふっ。まあよい」
「それにしても信じられませんな。あの二人があの田治見要蔵と真珠郎だなどと・・。二人とも確かに数十年も前に死んだはずでは・・・?」
「ふふん。貴様が疑問に思うのも無理はない。だが、我等の組織に不可能は無い。私と後藤博士とでもって奴らの遺骨からDNAを採取し、クローンを造り上げて甦らせたのだ」
 鵜藤は自慢げに笑みを浮かべて部下に言う。
そう、鵜藤が連れている二人はある死者の遺骨からDNAを採取し、それを元に作り出したクローン人間なのだ。
そして、そのオリジナルがさらにとんでもない輩で、猟銃を持ち奇妙な出で立ちをした男が田治見要蔵(たじみようぞう)、刀を持った美青年の方が真珠郎だった。
 田治見要蔵。
ミステリー好きの読者ならばピンと来た方もいるだろう。
八つ墓村で32人もの村人の命を無残にも奪った恐ろしい悪鬼だ。
彼が引き起こした事件と同事件を遠因として戦後同村で発生した連続殺人事件は名探偵・金田一耕助の探偵譚として誰にでも知られている。
そう、よりにもよって鵜藤と後藤は科学の力でこの男を現代に甦らせ、この男を更なる悪鬼に仕立て上げたのだ。
 そしてもう一人の真珠郎だが、名から想像できる通り鵜藤が愛読している小説に名が登場する人物だ。
鵜藤はこの悪魔の如き青年に強い関心を抱いており、彼をもクローンとして甦らせてしまったのだ。
この真珠郎は社会にとっては幸いなことに彼を造り上げた鵜藤氏がその悪辣な野望を実現する以前に病死してしまっていた(小説の元になった事件を起こしたのは真珠郎に変装した別人)。
鵜藤はこの本物の真珠郎の遺骨を見つけて甦らせたのである。
そしてかつて鵜藤氏がオリジナルの真珠郎に行ったよりもさらに強烈な悪の教育を行って人の姿をした悪魔に仕立て上げたのだ。
彼ら二人をはじめとする多くの悪鬼のような人間を使い、鵜藤三四郎は様々な悪事を行っていた。
 「くっくっくっ・・・。清河主席に歯向かう愚か者めが。我が殺人鬼部隊の力を持って葬り去ってくれる・・・。ふふふ・・。そしてその死体からDNAを採取し、奴のクローンを造り上げて新たなる悪魔を造り上げてやるわ。ウフフフフフフ・・・・」
気味の悪い声をあげて鵜藤はいつまでも笑っている。
部下は上司のその姿を恐怖と薄気味悪さの入り混じった表情を浮かべて眺めていた。


 ―続く―
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