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密林の悪魔2



 パチパチ・・・パチパチ・・。
火の音と共に串に刺した肉から脂が滴り落ちる。
「もういいだろう。さぁ、食うといい」
「あ・・ありがとうございます・・」
アダは礼を言うと近藤から受け取った串焼肉にかじりつく。
同じように近藤も別の串焼きを手に取るとかじりついた。
 「大丈夫か?あんたみたいな若い娘はジャガーの肉なんぞ食ったことはないだろうからな。何かちゃんとしたものを出してやれればいいんだが、あいにくそんなもんないんでなぁ」
二人が今食べているのは近藤が狩りで仕留めたジャガーの肉だった。
それを手製の串に刺して焼いて食べているのだ。
「いえ・・大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」
「そうか。ああ、食べたら早いうちに眠りなさい。明日は早いうちに起きるから。町まで結構かかるんでね」
「わかりました」


 それから一時間ほど後、二人は洞窟の中で眠っていた。
アダは寝袋にくるまって熟睡している。
近藤の方はポンチョを掛け布団代わりにし、刀を抱いて寝ていた。
不意に暗闇の中で近藤が寝返りを打ったかのように見えた。
 次の瞬間、闇の中で鞘ぐるみの刀が振り回された。
「ぐぅ・・わっっ!!」
悲鳴と共にドサリと何かが倒れる音がする。
ポンチョが舞い上がったかと思うや、左右に向かって数回刀を振るう。
そのたびにうめき声や倒れる音が聞えた。
 さすがに気付いたのか、アダが目を覚ました。
「ジッとしてなさい。いいか。俺が戻って来るまで決して出てきてはいかん」
近藤がそう言うとアダは緊迫した表情で頷く。
それを見届けると近藤は慎重な足取りで洞窟の外へ向かっていった。
 闇に乗じて近藤は刀を手にして洞窟から出てきた。
近藤は周囲を慎重に見回し、あたりの様子を探る。
不意に近藤は不自然な植物があるのに気付いた。
どうも枯れ木のように生彩が無いのだ。
近藤は本能的に石を拾って投げつけていた。
ウッといううめき声と共に何かが倒れる音がする。
同時に闇にまぎれやすい色合いの服を着、枝や木の葉でカモフラージュした男たちが茂みから姿を現した。
いずれも頑丈な斧や山刀で武装しており、人数も大分いた。
声も立てず、男達は得物を振るって襲いかかる。
対して近藤は低い体勢で両腕を広げた。
「!!!!」
男達は全員信じ難い表情になった。
近藤は全員の突撃を受け止めてしまったのである。
直後、先頭の一人は脳を揺さぶられるような強烈な衝撃を感じてぶっ倒れた。
敵の一斉突撃を受け止めるや、近藤が顔面にパンチを叩き込んだのである。
近藤は目にも止まらぬ速さで次々と男達を殴り倒してゆく。
あっという間に全員あたりにぶっ倒れた。
 「全く何者だ・・?」
近藤は思わず呟く。
そのとき、アダの悲鳴が聞えた。
 ハッとして近藤は別の方角の木立を見やる。
すると木立の間からアダの姿が見えた。
アダは何者かに押さえつけられ、逃れようと必死にもがいている。
とっさに近藤は走り出そうとしたがすぐに背を沈めて屈みこむ。
 パアンッ!
銃声と共に一瞬、閃光が見える。
直後、何者かが走り去る音が聞えた。
 「待てっっ!!」
近藤は今度こそ走り出して後を追いかける。
木々の間を針が縫うようにして走り抜けると、やがて大きな沼が見えてきた。
沼のほとりまでやって来ると近藤は立ち止まり、周囲を見回した。
 暗闇の中で五感を働かせ、近藤はアダを探し求める。
少しして近藤は沼の真ん中に立っている石柱にアダの姿を見つけた。
アダは粗い縄で柱にしっかりと縛り上げられている。
「くそ・・。若い娘にひどいことしおって・・」
 近藤は鞘ぐるみの刀を腰に差すと沼に分け入る。
全く水音を立てずに近藤はアダが縛られている石柱に向かって進んでゆこうとする。
(ん・・?)
進みながら近藤は気配を感じ取った。
本能的に水中に身を沈めるや、再び銃声が轟いた。
立ち上がると同時に腰の革箱から棒手裏剣を取り出し、銃声のした方向へ投げつけようとする。
すると、突然強烈な閃光が目を襲った。


 人は強烈な閃光を浴びせられると本能的に動きが止まるもの。
さすがに長年剣術家として修行や実戦に明け暮れた剛の者ゆえ、動きが止まるようなことはなかったが、それでも手裏剣を外してしまった。
 (不覚・・・)
閃光の力で近藤は真の暗闇に閉じ込められてしまう。
(しばらくすれば回復するが・・・それまで向こうが待つはずが無い)
その予測を裏書するかのように木立の中から誰かが出てくる気配を近藤は感じ取った。
 「グル・・・グゥゥ・・・」
要蔵は猟銃を構えて木立の中から姿を現した。
姿を現すや、要蔵は再び猟銃をぶっ放してきた。
近藤は再び水中に身を沈める。
 「う・・うがぁっっ!!」
要蔵は唸り声を上げると沼の中に入り込む。
バシャバシャと大きな音を立てて要蔵は入ってきた。
近藤は水中にジッとへばりついている。
(近い・・・近いぞ・・)
近藤は音と肌で要蔵の接近を感じ取る。
やがて、近藤が潜んでいるあたりまで近づいてきた。
(今だっっ!!)
バシャアッという派手な音と水しぶきと同時に近藤が現れた。
要蔵はとっさに猟銃を近藤に向けようとする。
直後、水中から勢いよく近藤の刀が跳ね上がるように飛び出した。
水しぶきと共に近藤の刀は要蔵の腕を刺し貫いた。
 「~~~~っっ!!」
要蔵は苦痛の表情を浮かべると猟銃を取り落としてしまう。
刀を抜くと同時に近藤は要蔵に空いている方の手でアッパーカットを叩き込む。
要蔵の身体は宙高く飛びあがったかと思うと急降下し、大きな水しぶきと共に沼へ落下した。


 要蔵を倒した近藤はアダの元へ向かおうとする。
だが、そのとき要蔵の絶叫が轟いた。
近藤が振り返るや、人間離れした美貌の青年が立っている。
真珠郎だ。
 真珠郎は微笑みを浮かべ、その傍には苦痛に呻く要蔵の姿がある。
要蔵の腹には刀で突かれた跡がくっきりと残されていた。
真珠郎は要蔵の頭を掴むや、弱っている要蔵を容赦なく水の中に沈めた。
水中から突き出た腕が激しくもがき、真珠郎はそれを楽しそうに見つめると笑みを浮かべてさらにジャブジャブと要蔵を水中に押し込む。
やがて要蔵の腕はピクリとも動かなくなり、しばらくすると事切れた要蔵の身体が浮かんできた。
苦しみに満ちた要蔵の表情に真珠郎は心の底からの笑みを浮かべる。
さすがの近藤もゾッとした。
色々な人間に出会ってきたが、このようなどこかタガの外れた人間と出会うのは初めてだった。
 要蔵を仕留めた真珠郎はやがて近藤の方を振り向いた。
「ウフフフフ・・・・・・」
真珠郎は気味の悪い笑い声を上げてほくそ笑む。
近藤が刀を構えると真珠郎も刀を構えた。
 刀を構えるや、真珠郎は一気に間合いを詰め、真っ向から打ち下ろした。
甲高い金属音や火花と共に二つの刃がぶつかり合う。
刃同士が咬み合い、鼻と鼻がくっつきそうになるほど接近した体勢のまま、両者が互いに沼の中でグルグルと回りだす。
数回二人は回っていたが、やがて埒が明かないと見たのか互いに間合いを取った。
間合いを取るや、二人とも岸へ向かって駆け出す。
沼の中では水や沼底に足を取られる危険があるからだ。
 二人とも岸へ上がるや、真珠郎が近藤の首目がけて思い切り刀を一閃した。
近藤は屈んでかわすや、立ち上がりながら突き上げる。
真珠郎は身体を捌いてかわすや、突きの戻りを狙って近藤に切り返す。
とっさに近藤は後ろに引いてかわすも、右胸を掠め切られた。
しかし、再度前に踏み込んで平突きを繰り出す。
真珠郎はまた身体を捌いてかわそうとするが、今度は首筋を狙って横薙ぎに斬りつけてきた。
とっさに真珠郎は柄で刃を受けるや、近藤の腹目がけて片足を蹴り上げた。
 近藤は飛び退いたかと思うと、刀を真珠郎目がけて投げつけた。
本能的に真珠郎は近藤の投げた刀を打ち払う。
だが、次の瞬間、ナイフを手にした近藤が真珠郎の目の前にまで迫っていた。
真珠郎が防ごうとしたときには近藤は真珠郎の傍らをつむじ風のような勢いで駆け抜ける。
近藤が立ち止まるや、真珠郎はカアッと両目を見開き、信じられんといった表情で己の腹を見やる。
直後、真珠郎はドサリと顔を突っ込むようにして地面に倒れた。


 ブチ・・ブチチ・・・。
ナイフが少し動くたびに縄の繊維が小さな音を出して切れてゆく。
やがて、アダの身体を拘束していた縄がハラリと水の上へ落ちた。
「大丈夫か?」
近藤はぐったりしているアダを抱きかかえると声をかける。
「え・・えぇ・・ミスター近藤・・ありがとうございます・・」
「礼はいい。とにかく沼から上がろう」
「はぃ・・アアッ!!」
突然、アダは悲鳴を上げる。
「どうした!」
「今・・そこに誰か・・」
アダの言葉に近藤は振り向き、アダに完全に背中をさらす。
 「何だ・・・何もいな・・・」
近藤がいいかけたとき、突然乾いた音が聞えた。
同時に背中に焼けつくような痛みを感じる。
ハッとして後ろを振り向くや、いつの間にかアダが銃身の短いコンパクトなサイズのリボルバー銃を握っていた。
 「あ・・アダ・・?一体・・何の・・」
「ウフフ・・お馬鹿さぁん。まんまと引っかかったわね」
アダはニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。
「『引っかかった』・・だと・・?」
「そうよぉ。私はね。鵜藤とかいう奴があんたに差し向けた刺客なのよ。そこで浮いてるランプくくりつけた馬鹿や美人の頭おかしい奴と一緒にね・・・」
アダはゴミでも見るかのような目で要蔵と真珠郎を見ながら言う。
「それにしてもおかしかったわ。悪党に襲われた不運なヒロインの演技をマジで信じてるんだから。アンタ本当の馬鹿よね。あ~っはっはっはっはっはっはっ」
アダは神経を逆なでするかのように高笑いしてみせる。
「まぁ・・・あのファイロ・ヴァンスも騙したんだからアンタみたいな黄色い格闘馬鹿が騙されるのも無理ないわね~~」
「ファ・・ファイロ・ヴァンスだと・・。まさか貴様・・」
近藤の言葉にアダは感心したような笑みを浮かべる。
「あら。あんた東洋のサルのくせにファイロ・ヴァンス知ってるの?ゴリラみたいな薄ら馬鹿にしては勉強してるのね」
「ふん・・アメリカに知り合いがいるんでな・・・」
 ファイロ・ヴァンス、アメリカが生んだ伝説の名探偵の一人。
12の難事件を解決し、盟友ヴァン・ダインがそれを小説として出版したことで世界にその名を轟かせた。
日本でもかつては非常に高い人気を得ており、江戸川乱歩や横溝正史をはじめとするあまたの作家達が彼の物語に傾倒し、自作を書く上で参考にしたほどだ。
そのヴァンスが関わった事件の中で代表的なものが『グリーン家殺人事件』と呼ばれる事件であり、アダはその事件の犯人であった。
 「し・・しかし・・アダ・グリーンは自殺したはずだ・・・」
「ふふふ。そうよ。でも、鵜藤とかいう東洋人があたしの墓を暴いて骨からクローンとかいうのを造ったのよ。そして私の人格や記憶もコンピューターを利用して再生させたのよ。そうそう。あんたが私を助けるために倒した連中もクローンで甦った殺人鬼どもよ」
「くそ・・何てことだ・・。こんな悪女を現代に甦らせるなんて・・・」
「『悪女』ふふふ・・。褒め言葉ありがとう。でも、もう話してる暇はないわ。大人しくなりなさい」
アダはゾッとする冷たい笑いを浮かべるといつの間にか片手に握り締めた注射器を振り下ろす。
注射器が近藤の肩に突き刺さるや、一気呵成に中味が注入された。
近藤はあっという間に意識が薄れだす。
やがて水しぶきと共に近藤はぶっ倒れて気を失った。
 「フフフ・・さすがアダだ。よくぞやったぞ」
近藤が倒れるや、木陰から鵜藤が姿を現した。
「ちょろいもんよ。後は任せるわ」
「任せておけい。ふふふ・・。趣向を凝らしてこやつを始末してやるわ・・・」
鵜藤の命令と共に部下らしい連中が現れると、近藤を引き上げ、棒に手足をくくって二人で担ぐと森の奥へ消えていった。


 空気を震わせる激しい音や熱狂的な声が密林の中で大きく響き渡る。
その音や声に近藤は意識を取り戻し、目を覚ました。
目を覚ますと、近藤は宙に浮いているような奇妙な感覚を覚える。
よく見てみると、鉄鎖で身体を縛り上げられ、クレーン車によって高々と吊り下げられていた。
 (何だこりゃ・・?)
近藤は周囲を見回すと自分の足元に大きな池があることに気付く。
そしてその池の岸では多くの人間が集まっており、激しい勢いで太鼓を叩き、銃を高く掲げていた。
全員かなり興奮しており、また何かを強く期待する表情を浮かべている。
 「フフフフ・・。気付きおったか」
不意に足元から声が聞えてきた。
声のした方向にジロリと目をやると、鵜藤とアダの姿が見えた。
「お前は・・?」
近藤は鵜藤にチラリと目をやると尋ねる。
「わしが鵜藤じゃ。アダを甦らせた男だ」
「お前がか・・・」
近藤は嫌悪の表情を浮かべて呟く。
クローン技術の研究が現在行われていることは知っている。
しかし、死者をクローンとして蘇らせて、それを殺人に使うなど嫌悪すべきことでしかなかった。
それは科学や死者への冒涜と思えたのだ。
 「ふふん。わしの偉大な事業が理解出来ぬようだのう」
「理解などしたくもない」
「まあよい・・。我がサンプルが二人も倒されてしまったことは想定外だが・・アダが首尾よく貴様を捕らえたからの。フッフッフッフッフ・・・」
邪悪さの籠った笑みを浮かべながら鵜藤は近藤の顔を見やった。
 「さて・・・わしは今からこの者たちに面白いものを見せてやろうと思っている。主役は貴様だ。名誉に思うがよい」
背後に自分が連れている男達を指しながら鵜藤は近藤に宣告する。
「俺をこの池に落っことそうというわけか」
「ご名答・・。だがそれだけではつまらぬ。フフフ・・貴様のために特別な趣向を凝らしてやった」
鵜藤はニヤリと笑みを浮かべると合図をする。
直後、鉄鎖に縛られたまま近藤の身体が池に落下し、派手な水しぶきが上がった。


 鉄鎖の重みで近藤の身体は池の底へドンドン沈んでゆく。
(ふ・・ふぬぬ・・ふんっ・・)
近藤は身体を何度も何度もよじる。
やがて、片腕がダランとぶら下がった。
肩や腕の関節を外したのだ。
関節が外れたことで鉄鎖の拘束が少し緩くなる。
そこをついて近藤はゆっくりと片腕を鉄鎖から抜いて再び関節をはめる。
同じ方法で反対側の腕も抜くと鎖を脱ぎ捨てて近藤は水面へ上がってゆこうとする。
 そのとき、近藤はふと気配を感じた。
(何かがいる・・・)
近藤は周囲を見回す。
水はやや濁っているが見晴らしはよく、一見しただけでは何かがいる気配は無い。
だが、確かに何かがいる気配がする。
(どこだ・・?)
近藤は慎重に周囲を探る。
そのとき、不意に足元から猛烈な勢いで砂が吹き上がった。
(何だ!?)
水底から吹き上がった砂に近藤は一瞬、気を取られる。
直後、砂にまぎれて何か大きなものが近藤に突進してきた。
 近藤の口から勢いよく空気が吐き出されると同時に、近藤の身体が水面に向かって弾き飛ばされる。
近藤の身体が水面から飛び出したかと思うと落下し、水しぶきと共に水面に叩きつけられた。


 ―続く―
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