狩人の月(ハンターズ・ムーン)1


(注:エイリアンが登場します。こういうお遊びが許容出来る方のみご覧ください)

 頭に低くかかりそうなほど大きな満月が、夜空に照り輝き、眼下に光を降り注いでいる。
月光に照らされ、密林に隠れている石造りの廃神殿や見たこともないような奇妙な像が佇んでいる。
かつては遺跡のメインストリートだったであろう石畳の上に一人、ポツンと立っている女の姿があった。
 その女は年は16~20歳といったところ、尻に届くほど長く純銀から造り出したのではなかろうかというくらい見事な銀髪をしている。
ルビーのように見事な真紅の瞳が特徴的な美しい顔立ちをしているが、勝ち気で何者が相手でも噛みついてきかねない野性的な雰囲気がある。
口にくわえている削った長い木の枝が余計にそういう印象を強めていた。
 体格の方は一流モデルを目指せるほどすらりとして均整がとれたもので、さながら豹やチーターのような美しさとしなやかさを合わせ持った猫科の肉食獣をイメージさせた。
そんな誰からも羨ましがられるような身体を丈がみぞおちの上までの短い赤地のジャケットに同じくらいの丈の黒い短シャツ、ジャケット同様赤地のショートパンツと黒のオーバーニーとブーツ、赤地のポンチョといった服で覆っている。
ポンチョ、ジャケット、パンツの赤地の服にはいずれも獲物を貪り喰らう獰猛な鮫の絵が描かれていた。
さらに女の腰にはガンベルトに納めた拳銃が二挺、ぶら下がっていた。
ガンベルトに納まっているのはリボルバー。
どうやらマグナムリボルバー系の銃をベースに造られた改造銃のようだった。
 女は口にくわえた木の枝を揺らしながら石畳の上を歩いている。
不意に女が立ち止まったかと思うと腰の二挺拳銃を抜き放ち、器用に親指で撃鉄を起こす。
銃を撃てる用意をすると、女はジッと正面の石柱をジッと見つめていた。
 闇に紛れてわかりにくいが、石柱の背後に何かがいた。
ジッと見つめているとやたら長い頭部や、先端が鋭く尖り鞭のようにしなやかな尾がときどき見え隠れする。
やがてそれがゆっくりと石柱の影から姿を現した。
 月光のおかげで現れたものの姿がはっきりと闇に浮かび上がる。
金属的な光沢の外殻に覆われ、全身は墨のような黒。
眼窩や目は無く、異様に伸びた後頭部は何だか卑猥な器官を連想させる。
ミイラを思わせる細い身体つきと長い手足、そして身長に匹敵するほど長い尾をくねらせている。
 エイリアンという通称で呼ばれるその生物はジッと女と睨み合う。
女の方もいつでもぶっ放せる態勢で二丁の拳銃を構えている。
エイリアンはグルルルと唸り声を上げている。
歯をむき出しにして唸っているせいか、ダラダラと涎が垂れ、地面がべたべたになる。
不意にエイリアンが身体をグイと傾けかけたそのときだった。


 乾いた音が周囲に響き渡ったかと思うと、女の頭上でエイリアンの叫び声が上がる。
直後、女の背後に勢いよく落下してきた別のエイリアンが叩きつけられ、身体を傾けて飛びだそうとしていた正面のエイリアンの頭蓋に穴が開いたかと思うと一気にそれが広がり、頭が溶けて無くなってしまった。
 闇に紛れ、四方から数匹のエイリアンが飛び出してきた。
女はコマのように回転しながら両手のリボルバーをぶっ放す。
鼓膜が破れそうになるほどの轟音が響き、銃口が絶え間なく火を噴く。
弾丸が当たるや、エイリアンの外殻の表面に焦げたような匂いが立ったかと思うと巨大な穴が開くようにしてエイリアンの身体が溶けてしまう。
女の銃に使われている弾丸は特製の品物でエイリアンの身体を溶かしてしまう効果を持つ特注品だった。
 女の銃がようやく静かになったときには数体のエイリアンが物言わぬ躯になっていた。
いずれも頭蓋や胸、腹が溶解してポッカリと穴が開いたように無くなっている。
女は全てのエイリアンを倒したのを見るや、満足げにニヤリと笑みを浮かべる。
そしてその場を去ろうとしたときだった。
 突然、女は強い力で地面に引き倒される。
ハッとして振り返るや、足首にエイリアンの尾が巻きついているではないか。
一匹残っていたのだ。
女はしまったと言いたげな表情を浮かべる。
引き金を引くも、二丁とも虚しく撃鉄が落ちる音のみが響く。
エイリアンの表情に勝利を確信したような表情が浮かぶや、エイリアンは一気に尾を手繰り寄せる。
あっという間に女は引き寄せられ、エイリアンの細く長い、だが強靭な両腕で肩をしっかりと押さえられてしまう。
 「ぐ・・・・」
人間にはとても堪えがたい不快な匂いが鼻を突き、女は思わず顔を顰める。
エイリアンが身体を引いたかと思うや、勢いよく女に顔を近づけたそのときだった。
 突然、エイリアンが苦痛の声を上げた。
ハッとしてエイリアンは後ろを振り向く。
するとエイリアンの背後に見知らぬ人間が立ちはだかっているではないか。


 立っているのは三十代前半らしいアジア系の男。
猛禽を連想させる鋭く精悍な面立ちで濃いめの無精ひげがその印象をさらに強くしている。
背が高くすらりと引き締まった細身ながらも鍛え上げられた肉体の持ち主でさながら狼やドーベルマンといった雰囲気を漂わせている。
身につけているものはすべて黒地に統一されており、テンガロンハット、丈の長いコート、ズボンにブーツといったガンマンさながらの服装をしている。
背中には黒い革鞘に納めて全長150センチ近くもある長大な大口径ライフルを背負っており、コートの袖の上から右手には黒いガントレットをはめており、左手にストックと銃身を短く詰めた水平二連式の改造猟銃を手にしていた。
 エイリアンは怒りの咆哮を上げるや、黒ずくめの男に向って突進する。
男が引き金を引くや、スラッグ弾が発射される。
エイリアンはそれを難なく身体を捌いてかわす。
だが、男は慌てることなく右腕を振るう。
すると右腕のガントレットから真っ黒な鉤爪が飛び出した。
鉤爪は二本、光沢のある黒地で金属ではなく何かの生物の骨や外骨格から造り出されているように見えた。
 エイリアンは男に飛びかかるや、女にしたように男は地面に押し倒す。
そして自慢の顎で噛み砕こうと一気に顔を近づけたそのときだった。
男の右腕がフックの要領で動いたかと思うや、深々と鉤爪がエイリアンの側頭部に叩き込まれた。
頭蓋を貫かれ、エイリアンは一瞬動きが停止する。
男はゆっくりと鉤爪をエイリアンの頭部から引き抜くと、素早くエイリアンの下から転がり抜けるようにして脱出する。
直後、エイリアンはそのままドサリと地面にうつ伏せに倒れるや、そのまま動かなくなった。
 男はエイリアンが死んだのを確かめると腕を大きく振るって血振りをする。
血振りで飛散した体液が周囲の壁や石柱に当たったかと思うや、蒸気とともに石に穴が開く。
エイリアンの血は強酸性で、石だろうが金属だろうが溶かしてしまうからだ。
だが、その血を浴びたはずなのに鉤爪は溶けるどころか刃こぼれすらしていない。
この刃はエイリアン自身の外殻から造り出したものだったからだ。
エイリアンの身体は自分の血液に対して耐性を持っている。
だから幾ら血を浴びても溶けることは無い。
そのため、エイリアンを狩る者達はエイリアン自身の身体から造り出した刃物や鞭といった武器を所持していた。
 「銃弾は幾つ入ってるのか、何発撃ったか、それくらいきちんと頭に叩き込んでおけ。シルヴァー・シャーク」
男はタバコの煙を吐き出しながら女に言う。
黒尽くめの男は目の前の女ガンマンにシルヴァー・シャークという呼び名をつけていた。
見事な銀髪と服に描かれている鮫の図柄から取ったのだ。
「うるせぇ!余計なお世話だ!ジャンゴだろうが俺を馬鹿にすんじゃねえ!」
女は自分の失敗を指摘されたことにプライドを逆撫でされたのか、噛みつくような口調で叫ぶ。
ジャンゴ、黒装束の男の通り名がそれだった。
本当は持安剛(じあんごう)という名だが、姓名の順で読むとジャンゴっぽく聞こえるため、いつの間にかジャンゴと呼ばれるようになっていた。
 「5,6匹といったところか・・・」
「へん、どんなもんだよ。あんたは何・・・」
シルヴァー・シャークは倒したエイリアンの数に誇らしげな声をあげかける。
だが、持安の肩にかけられているものを見るやその声は尻すぼみに消えてしまった。
 持安の肩にはエイリアンの身体から造り上げたしっかりした紐がかかっている。
その紐には隠し顎付きのエイリアンの舌が吊るされている。
明らかにシルヴァー・シャークよりもずっと多い数で、しかもひときわ大きい舌がある。
大きさからすると群れのボスであるクイーン・エイリアンのものであることは間違いなかった。
 「おい。さっさと解体したらどうだ?証拠の舌がなきゃ手当が出んぞ」
「うるせえっ!わかってるよそれくらい!」
助けられた上に仕留めた数や質でも負けてしまったのが悔しかったのだろう、女は癇癪を起して叫んだかと思うと、不機嫌な様子でエイリアンの外殻から造り出したナイフで自分が仕留めたエイリアンの舌を切り取り始めた。


 その一週間ほど後・・・。
ロサンゼルス市内のややさびれた通りにそのホテルは建っていた。
ホテルとはいってもかなり年季の入ったオンボロ旅館といった感じだ。
そのおかげで通常の客は避けて通り、何だか一般人ではない感じの客が入って来ても違和感が全く無い。
 そのホテルの地下に奇妙な空間が広がっていた。
その空間は銀行の窓口のようで非常に広く、幾つもの窓口が用意されている。
それぞれの窓口では客が並んで何かを従業員に差し出していた。
従業員に差し出しているのは舌や牙、或いは見たこともない武器といったもの。
それらの量などに応じて従業員は客に紙幣の束を渡している。
 室内を見回してみると長椅子で換金を待っている客がおり、壁には色々とポスターのようなものが貼られている。
張ってあるのは手配書に似ているが、描かれているのは人間の手配犯ではなく、見たこともない動物たち。
一頭につき~○○ドルといった感じで写真の下には金額が提示されていた。
 ここは「狩人の月(ハンターズ・ムーン)」ロサンゼルス支部。
狩人の月とはハンターのための組織でイタリア・ローマに総本部があり、世界中に支部がある。
元々はドラゴンなど現代では伝承の中でのみ語られる生物を狩り、倒すために法王庁によって設立されたという。
時代が進み、現在は外国・他宗派の同様の機関等と合併をし、法王庁などからも独立した独自の国際秘密組織として活動している。
この組織には数えきれないほどのモンスター・ハンターとでもいうべき人間が登録をしており、賞金のかかったモンスターの追跡・狩り、モンスターに関する一切の調査、モンスターの存在にかんする世間に対しての一切の証拠の隠匿といった活動を行っていた。
 換金所にはバーが隣接しており、そこでは何人かの人間がくつろいだ様子で酒を飲んだり、誰かと商談らしい会話をしている。
その中に持安の姿もあった。
持安は傍らにライフルを立て懸け、バーボンを飲んでいる。
 不意に持安の正面に影がかぶさったかと思うと向かい側に誰かが座っていた。
「あんたか・・・・」
目の前の小太りの男を見やりながら持安は呟く。
彼は狩人の月のエージェント、ハンター達に対して仕事の紹介などをしていた。
「へへ、また稼いできたみたいだな」
「まぁな。しかしあんたも人が悪いな。今回のはレベル7だぞ」
モンスターにはその危険度に応じて1~7のレベルがつけられている。
数字が大きいほど危険度が高い。
わけてもレベル7となると最危険クラスで、エイリアンは彼らを地球へ持ち込んだ張本人であるプレデタ―族共々、レベル7の中でもさらに最危険ランクに分類されていた。
 「ヤバすぎる仕事を回したのは悪かったって。でもあんたくらいにしか出来ないと思ったんだよ。エイリアンキラーとして有名だからな、あんたは」
その言葉に持安はむっつりと黙りこむ。
持安は今までに多くのエイリアンを狩ったことがあったため、エイリアンキラーなどという呼び名が業界ではつけられていた。
そのおかげで高い報酬の仕事を得やすくもなったが、エイリアン狩りのときにはもっぱら彼が駆り出されることにもなっていた。
 「それで何の用だ・・?またエイリアン狩りでもしろと・・?」
「そう疑り深い顔するなって。幾ら俺でも立て続けにエイリアン狩りなんてさせると思うか?」
にっこり笑うエージェントに対して持安は相変わらず無愛想に黙っている。
「話だけ聞こう・・・。返事はそれからだ・・・・」
「ハハハ。そう来なきゃな・・。実はな・・・」
二人が商談に入ろうとしたそのとき、突然持安の持っている携帯がブルルルと震動した。
 「はい・・・。もしもし・・・・」
持安は携帯を取り出すと電話に出る。
するとみるみるうちに持安の表情が苦虫を噛み潰したようなものへ変わっていった。
「どうした・・・?」
持安の様子に怪訝な表情を浮かべてエージェントは尋ねる。
「悪いが急用が出来た。後でまた電話をくれ。他の奴に回すつもりでなければな」
そういうと持安は席を立ってバーを後にした。


 それから一時間ほど後、持安は自分が泊っているホテルにいた。
持安の目の前では不貞腐れているシルヴァー・シャークの姿があった。
 「で・・・何をした・・・?」
「うっせえなぁ。アンタにゃあ関係ないだろうが」
「そうはいかん・・・。一応組んでいる以上、貴様のケツは俺が持つことになる」
「ヘッ。おやさしいこったねぇ」
してやったりといった感じで笑みを浮かべるも、すぐに持安の鋭い眼光に気づいて女は表情を戻す。
 「もう一度聞く。何をした?」
男の問いに年下の娘ハンターは渋々といった口調で答える。
「向こうが悪いんだよ・・・。人様にケチつけてきやがるから・・・」
「だからブチのめした・・・。それも骨折するほどの大けがを負わせてな・・・」
持安の言葉に女はむっつりと押し黙る。
 先ほど持安は警察からシルヴァー・シャークを引き取ってきたばかりだった。
というのも、あるバーで彼女が喧嘩騒ぎを起こしたからだ。
シルヴァーは支部内のバーは嫌だったので外の店で飲んでいたのだが、そこでどうやら他の客ともめ事になり、その結果乱闘を繰り広げた末に数人を叩きのめし、そのうちの一人か二人には骨折するほどの大けがを負わせてしまったのだ。
 「前・・・言っておいたはずだ・・・。一切もめ事は起こすなと・・・」
実はシルヴァーは以前にも同じようなトラブルを起こしており、その際に持安に釘を刺されていた。
だが、シルヴァーはふて腐れたような表情を浮かべている。
どうやらあまり自分が悪いとは思っていないようだった。
 「おい、少しは反省してるのか?」
「あん?何で俺が反省しなきゃなんねえんだよ!」
女は心外だといわんばかりの口調で抗議する。
「どうやら前に俺が言ったことを全く理解していなかったようだな・・・」
持安はやれやれといった感じで息を吐くとおもむろに手を伸ばした。


 シルヴァーが気づいたときには、ホテルの床が目の前に迫っていた。
一瞬、何が起こったのか彼女はわからなかった。
直後、腹にゴツゴツした大人の男の膝の感触やショートパンツを降ろされる感覚を感じる。
(まさか・・・!?)
ハッとしてシルヴァーが振り返ると、ベッドの縁に腰かけた時安が彼女を膝に載せ、お尻をむき出しにしようとしているのが見えた。
 「ま・・待ちやがれっ!何してやがるっ!!」
慌てて女は噛みつくような口調で叫ぶ。
「躾に決まってるだろ・・・」
「躾だあっ!?ふざけんなあっ!俺ぁガキじゃねえぞっっ!!」
「一度言われただけでわからんのは十分ガキだと思うが?それにお前は未成年だろうが」
持安の言葉に一瞬シルヴァーは言葉に詰まる。
持安の言うとおりだったからだ。
だが、それを認めるなど業腹以外の何物でもない。
 「冗談じゃねえっ!離しやがれっ!このスケベッ!ドアホっ!クサレ●●●ヤロウッ!瘡っかきの梅●●●●ッッッ!!腐ったチーズみてぇな●●●から生まれやがったボロ犬のせがれ野郎っっ!!!」
年頃の娘とは思えない暴言を吐きながらシルヴァーは必死に抵抗する。
そんな暴言を柳に風といった感じで受け流しながらジャンゴは年下の相方のお尻をあらわにする。
 シルヴァーのお尻は丸みを帯びた形のよいお尻で、柔らかいながらもキュッと引き締まっていた。
健康的な小麦色の肌と相まって野性味と活発さに満ちた健康美とでもいうべき美しさを醸し出している。
 「み・・見んじゃねえよ・・。こん・・犬畜生ぉぉぉ・・・・」
お尻に視線を感じ、シルヴァーは屈辱感と悔しさでブルブルと震える。
だが、持安はそれに構うことなく右手をゆっくりと振り上げたかと思うと、彼女のお尻目がけて振り下ろした。


 パチィンッ!
「く・・・」
甲高い音と共にお尻の表面で痛みが弾ける。
痛みよりも屈辱感に思わずシルヴァーは悔しそうな声を漏らした。
 パアンッ!ピシャアンッ!パッシィンッ!パァチィンッ!
「てめえっ!やめろっ!ばかっ!こんちくしょうっ!!」
ピシャアンッ!パアアンッ!ピッシャアンッ!パアシィンッ!
「やめろっ!こん馬鹿っ!こんなことしやがってただで済むと思ってんのかあっ!!」
平手打ちが振り下ろされるたびに女は噛みつくように叫ぶ。
 「それはこっちの台詞だ。こんな騒ぎを起こしてお前こそただで済むとでも思っていたのか?」
「るせぇよ!離しやがれっ!」
シルヴァーは叫ぶと必死にもがく。
だが、持安はしっかりと押さえ込んでおり、いくら彼女がもがいてもビクともしない。
バシッ!バアンッ!バチンッ!ビダァンッ!
「う・・く・・あ・・つ・・・」
不意に平手の勢いが強くなった。
 バアチィンッ!ビッダァンッ!バアッシィンッ!バアッアアンッ!
「やめろっ!ばかっ!くそおっ!ちっきしょうっっ!!」
シルヴァーはひたすら暴言を吐き続ける。
バッシィンッ!バッアアンッ!ビッダァンッ!バッチィンッ!
「ちっくしょうう・・やめろ・・やめねえかぁ・・この・・犬野郎・・」
悔しさにシルヴァーは睨みつけんばかりの表情を浮かべるが、その中に苦痛が混じっている。
お尻は濃いめのワインレッドに染め上がっており、カっカッとよく焼けた鉄のような熱を発していた。
既にお尻はかなり痛めつけられていたが、それに構わず持安は平手を振り下ろし続けた。


 「はぁ・・・はぁ・・・はぁぁ・・・・」
途切れ途切れに女ハンターは荒い息を吐く。
目尻には光るものが滲んでおり、頬には涙の跡が残っている。
全身はぐったりとしており、散々暴れた末なのが容易に想像できた。
 「恥ずかしいか・・・?」
持安は膝の上でぐったりしているシルヴァーにそう尋ねる。
「た・・当たり前だろう・・が・・。よくもこんな目に遭わせやがって!ぶ・・ぶっ殺してやっからな!!」
怒りと悔しさがない交ぜになった声でシルヴァーは叫んだ。
 「だが何故こんな目に遭わされているのかは考えたか?」
その問いに女はむっつりと不機嫌そうな表情で押し黙る。
自分が喧嘩沙汰を仕出かしたからなのはよくわかっているからだ。
「その様子だと自覚はあるようだな・・・。だったら何をするべきかわかっているだろうな?」
「な・・何を・・しろってんだ・・・」
女は苦々しげな声で尋ねる。
「決まってるだろう。昔から悪さをしたら謝るものだ」
「ん・・んだとぉ・・・」
持安の言葉にシルヴァーは声が震えた。
 (そ・・そりゃ・・・確かに・・俺が悪いかも・・しんねえけどよ・・。ケツ引っぱたかれた上に・・あ・・謝るだぁ・・!そ・・そんな・・真似・・・恥ずかしくて・・で・・出来る・・かよっ!)
心の中で彼女はそう叫ぶ。
だが、そんなことを言えばお仕置きは続くだろう。
本音を言うともう限界だった。
これ以上お尻の痛みには耐えられない。
屈辱と苦痛の板挟みにシルヴァーは表情を歪める。
持安はジッとその様子を見守っている。
だが、中々踏ん切りがつかないらしく、しかめっ面を浮かべている。
このままでは埒が明かないと見たのだろう、おもむろに持安は口を開いた。
 「まだ・・・足りないか・・?」
その言葉にシルヴァーはギクリと身体を強張らせる。
同時に背中をしっかりと押さえつけられる感触を覚える。
(ほ・・本気で引っぱたく気だ!?)
彼女にもそれは読み取れた。
もはやプライドにこだわっているときではなかった。
 「わ・・わかったっ!謝るっ!悪かったってっ!謝るから許せ~~~~!!!!」
謝ってるのだか命令しているのかわからない口調だが、とにかくシルヴァーはようやく謝る。
「ようやく言えたか・・・・」
やれやれといった感じで言うと、持安は押さえていた腕の力を緩め、振りあげかけていた手を降ろした。


 「痛うう・・・」
ようやく解放されるも、お尻の痛みにシルヴァーは顔をしかめる。
「おい・・・」
不意に持安が呼びかけると、シルヴァーはキッと睨みつけるように振り返る。
「何だよ!まだ何かあんのかよ!?」
そう彼女が叫ぶと同時に持安は何かを放り投げる。
シルヴァーは空中でキャッチするとそれを眺める。
手中にあったのは軟膏。
 「何だよこいつは・・・?」
「腫れや打ち身によくきくそうだ。塗っておけ。これから痛むぞ」
だが、女はムッとした表情を浮かべたかと思うと投げ返してしまう。
そして乱暴な足取りでそのまま部屋を出て行った。
 (若いからか・・・頑固でしかも意地っ張りか・・・)
シルヴァーの態度に思わず持安は苦笑する。
(まぁあいつが後で後悔しても自業自得か・・。それはそれで奴も少しは懲りるかもしれんな・・・)
そう考えると持安は携帯電話を取り出す。
着信をチェックすると再びエージェントからの連絡が入っていた。
(次の・・仕事を取ってくるか・・・)
携帯を仕舞うと持安はおもむろに立ち上がり、部屋を後にした。


 ―完―


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