神父物語15 ピーマン



 「うぅ~~~っ」
唸り声と共に今井信幸はジッと皿を見つめている。
皿はほとんど平らげられていたが、脇にちょこんと付け合わせのピーマンが残っていた。
「信幸・・全部食べろとは言ってないんだ。ほんのちょっとだけでいいんだぞ」
ピーマンとにらめっこしている今井に、佐々木只行は優しい声で言う。
 「嫌です!キライなんですってば~~~!!」
今井は頬を膨らますと、ゴネ始めた。
「いい年して好き嫌いなんかみっともないぞ、信幸。それに人に呼ばれたり、出張とかで出かけるときに困るだろう?」
「嫌です~!食べないったら食べない~~~~!!!」
今井は癇癪を起こすや、ますますゴネる。
 「信幸・・・」
静かな声で佐々木が呼びかけると、一瞬今井はドキッとしてしまう。
「そんな顔しなくてもいいぞ。別にとって食おうなんて思ってないぞ」
今井は今にも椅子から飛び出してしまいそうな状態で、佐々木は思わず苦笑する。
「だって・・佐々木さん怒ってるもん・・・」
「そんなに・・・食べたくないのか?」
佐々木は口調を優しいものに変えて尋ねる。
「佐々木さんだって知ってるでしょ?僕がピーマン嫌いなの」
今井は上目づかいで、甘えるような表情を浮かべて問いかけてきた。
「それは知ってるが・・。でもな・・・この前、差し入れしてくれたやつ、ピーマンが入ってて残しただろう?」
「う・・それは・・・」
今井は思わず言葉に詰まってしまう。
数日前、ある女性信者が佐々木と今井に弁当を差し入れてくれたのだ。
だが、メニューの中にピーマンがあり、今井は食べなかったのである。
残すと失礼なので、佐々木が食べたが、これからもこういうことがあるだろうし、いつまでも好き嫌いがあるのもよくないだろうということで、これを機に佐々木は今井の好き嫌いを治そうと考えたのである。
 「いいか。人がせっかく差し入れしてくれたものを残すなんてよくないことだ。これからもそういうことはあるんだ。そのときに残すわけにはいかないだろう?すぐにっていうわけじゃない。二人で、少しずつ治して行こう。な?」
ピーマンとジッと睨み合っている今井に、優しい声で佐々木はそう呼びかけた。


 (うぅ・・・どうしよう・・)
今井は向かいにジッと座っている佐々木を見やり、残っているピーマンを見つめる。
佐々木は目の前に陣取ったまま、今井が口をつけるのを待っている。
(どうしても・・食べなきゃ・・・ダメなの・・?)
訴えかけるような目でチラリと佐々木を見つめるが、佐々木はしっかり陣取ってしまっている。
(一度でも・・・どこか行ってくれれば・・誤魔化せるのに・・・・)
しかめっ面を浮かべながら考え込んでいると、ふとある考えが浮かんだ。
 「ねぇ・・佐々木さぁん・・」
今井は思い切り甘えるような仕草と表情を見せて話しかけてきた。
「何だ、信幸?」
「紅茶・・淹れてきて・・くれませんかぁ?ちゃんと・・食べます・・からぁ・・・」
上目づかいに、子供が年の離れた兄や姉にオネダリするような感じで今井はジッと見つめる。
「わかった、少し待ってろ」
佐々木はそういうと席を立ち、キッチンの方へ向った。
 (よし・・今だ!!)
今井は佐々木の姿が消えたのを確認すると、皿を持って立ち上がり、あっという間に窓の方へ行く。
そして、窓を開けたかと思うと、残っていたピーマンを外へ放り出すように捨ててしまった。
(これで・・・よしと・・)
今井はキッチンにいる佐々木に音が聞こえないように慎重に窓を閉めると、テーブルに戻ろうとする。
だが、振りむいた瞬間、ギクリと身を強張らせた。
 「さ・・佐々木・・さぁん・・・」
紅茶をお盆に載せて持ってきた佐々木に、今井はぎこちない笑みを浮かべて呼びかける。
「信幸・・・。何を・・してたんだ?」
「な・・何も・・してませんってばぁ・・・」
そう言いつつ、今井はジリジリと蟹のように横へ動く。
「正直に言った方がいいぞ?俺にはピーマンを投げ捨ててるように見えたんだが?」
それを聞くなり、とっさに今井は皿を佐々木目がけて投げつけていた。
 「あっ!こら!待て!」
佐々木は皿を片手でキャッチし、お盆ともどもテーブルに置くや、今井を取り押さえにかかる。
「いやぁぁ~~~~っっ!!離してぇぇ~~~っっ!!」
今井は叫びながら必死に抵抗する。
「離してじゃないだろ、全く・・・」
ジタバタと暴れる今井を押さえつけながら、佐々木は椅子に腰かけると、いつものように今井を膝に乗せにかかる。
 「いやあっ!やめてぇっ!お仕置きは嫌だぁっ!」
「嫌だじゃないだろう!好き嫌いはともかく・・・嘘をついて騙したり、食べ物を粗末にして。そんなことしていいと思ってるのか?」
「うわぁ~んっ!だって嫌いなんですもんっ!食べたくないんですってばぁ~~!!」
今井がそう叫ぶのを尻目に、佐々木は慣れた手つきで神父服の裾を捲り上げてズボンを降ろす。
あっという間に今井の、雪のように白くて丸みを帯びた、柔らかいながらも適度に弾力がある、形のよいお尻が姿を現した。
 「ひぃん・・嫌・・いや・・・イヤぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!!」
お尻に外気が触れるのを感じ取るや、悲鳴を上げながら両脚をバタつかせる。
「こら!落ちたらどうするんだ!まだ叩いてもないだろう?」
佐々木は片手でしっかりと押さえ、今井が膝からずり落ちないようにする。
「だ・・だって・・これから・・痛いこと・・するじゃない・・ですかぁ・・」
ジワリと目尻に涙を浮かべ、今にも泣きそうな表情で今井は言う。
「仕方ないだろ、お前が悪いんだから。さぁ、覚悟はいいな?」
「いや・・絶対・・イヤ~~~~!!!」
今井は必死に首を左右に振るが、佐々木は構わずにゆっくりと右手を振り上げたかと、今井のお尻目がけて振り下ろした。


 パッシィ~ンッ!
「きゃあんっ!」
肌を打つ音と共に、今井はビクッと背をのけ反らせて悲鳴を上げる。
パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パチィンッ!
「ひんっ!ひゃあんっ!ひぃひんっ!はぁひぃんっ!」
佐々木が平手を振り下ろすたびに今井の悲鳴が上がり、白い肌にほんのりピンクの手形がついてゆく。
ピシャアンッ!パアチィンッ!パアシィンッ!パアアンッ!
「全く・・・何をしてるんだ・・」
平手を振り下ろしながら、やや呆れた口調で佐々木はお説教を始める。
ピシャアンッ!パアシィンッ!パアアンッ!ピシャアンッ!
「ひぃんっ!きゃあんっ!やあんっ!ああんっ!」
今井は悲鳴を上げ、背をのけ反らすかと思えば両足をバタつかせ、或いは両手で佐々木の神父服の裾をギュッと握りしめる。
パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!ピッシャアンッ!
「好き嫌いはまだしも・・・・」
しばらく叩いているうちに、ピンクだったお尻はやがて薄めの赤へと変化してゆく。
ピシャアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!
「うぁんっ!ひぃんっ!痛っ!ひゃあんっ!痛っ!」
パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パアシィンッ!
「嘘ついて人を騙して・・・」
ピシャアンッ!パアシィンッ!パアチィンッ!パアアンッ!
「やんっ!ひぃんっ!ひゃあんっ!ああんっ!」
ジタバタと今井が手足を動かしながら悲鳴を上げるのを尻目に佐々木はさらにお説教を続ける。
「しかも人に向けて皿なんか投げおってからに!何てことしたんだ!」
バッシィンッ!ビッダァンッ!バアッジィンッ!ビッダァンッ!
不意に平手の勢いが強くなり、今までよりずっと強烈な音が響いた。
 「ぎっ!!痛っ!佐々木さんっ!痛いっ!」
バシンッ!バアンッ!ビダァンッ!バアアンッ!
「痛いのは当たり前だろ!お仕置きなんだから!」
佐々木は強烈な平手打ちを落としながら今井を叱りつける。
「うわぁ~んっ!佐々木さんの鬼っ!悪魔っ!尻叩き魔~~~!」
お尻を叩かれながら、今井はそんなことを叫ぶ。
「こら!反省してないのか!?」
「うわぁ~んっ!僕、悪くないですもん~~~っっ!!」
今井がそんなことをのたまったため、佐々木は一旦手を止める。
 「信幸・・・・本当に・・・そう・・思ってるのか?」
佐々木が尋ねると、今井は振り返り、キッと佐々木を睨みつけながら口を開く。
「決まってる・・じゃないですか・・。好き嫌いの・・一つや二つ・・・誰だってあるじゃないですか!それを・・無理やり・・食べさせようとしたり・・・。しかも・・・捨てたくらいでお尻叩くなんて・・・。佐々木さんなんか鬼ですよ!!悪魔っ!鬼畜っ!尻叩き魔っ!!」
全然反省していない、今井の態度に思わず佐々木はため息が出そうになる。
 「そうか・・・。お前の・・本音は・・よく・・わかった・・・」
佐々木はそう言ったかと思うと、おもむろに今井を担ぎあげながら立ち上がる。
「ちょ・・何・・するんですか~~~!!」
今井は思わず抗議するが、肩に今井を担いだまま、佐々木はリビングを後にした。


 今井を担いだまま、自分の部屋に入るや、佐々木はようやく今井を降ろしてやる。
ベッドの縁に腰を下ろしたかと思うと、佐々木は信幸をジッと見やる。
(ヤッバ・・・本気で・・怒っちゃってる!!)
佐々木の表情を見るなり、今井はそう気づいた。
 「信幸・・・」
「は・・はぃっっ!!」
今にも飛び上がらんばかりに、上ずった声で今井信幸は佐々木に返事をする。
「そこのテーブルの中にあるものを取ってこい」
「え・・?」
信幸は怪訝な表情を浮かべる。
只行の考えていることがわからなかったからだ。
 「何をしてるんだ?早く言う通りにしないか!」
佐々木の剣幕に慌てて今井はテーブルにすっ飛んでゆく。
そして引き出しを開けて中にあるものを取り出そうとする。
だが、中に入っているものを見るなり、手を止めてしまった。
 食い入るように今井はそれをジッと見つめる。
引き出しに入っていたのは鞭。
棒状のまっすぐなタイプのものだ。
 「さ・・佐々木さぁん・・・・」
恐る恐る振り返りながら、まさかという疑いと恐怖が入り混じった声で今井は呼びかける。
「どうしたんだ?早く出してこっちに持って来るんだ」
佐々木は有無を言わせない強い口調でそう命令する。
だが、信幸は中々取ろうとしない。
手を伸ばしかけては引っ込め、また出そうとしてはブルブルと腕を震わせる。
 「信幸・・・・」
不意に佐々木が呼びかけた。
今までよりもトーンが低くなり、まるで冬の風のように冷たい。
このままだと佐々木の怒りが爆発する。
恐怖やためらいを捨てると今井は急いで鞭を引っ掴み、慌てて戻ってくる。
 「よし・・。そうしたら・・・『これで悪い子な僕のお尻を叩いて下さい』って言うんだ、いいな?」
「そ・・そんな・・の・・」
今井は拒否しかけるが、佐々木にジロリと睨まれて黙ってしまう。
もはや言う通りにするしかなくなった今井はブルブルと全身を震わせながら手にした鞭を佐々木に差し出すと、震える声で口を開いた。
 「こ・・これで・・わ・・わわ・・悪い・・子・・な・・ぼ・・僕の・・お・・お尻をを・・ひ・・ひぃ~~~ん・・・」
恐怖に耐えきれなくなり、今井は泣き声を出す。
「泣くんじゃない。さぁ、ちゃんと最後まで言うんだ!」
「た・・叩いて・・く・・下さいぃ・・・」
「よし・・・。じゃあ今度はベッドに両肘をついて・・こっちにお尻を向けるんだ」
今井は言われた通り、ベッドに両肘をつき、お尻を上げて佐々木の方へ向ける。
再び神父服が捲り上げられ、ズボンが降ろされると既にお仕置きされて真っ赤に染まっている今井のお尻が姿を現した。
 佐々木は鞭を手にすると、今井のお尻の前に立つ。
「うぅ・・・・」
今井はガクガクとまるで氷を身体に当てられているかのように震えている。
パドルや定規は経験したことがあるが、鞭は初めてだった。
それだけに怖くてたまらない。
いつの間にか生温かい液体が両脚を伝って床へ滴り落ちていた。
 ヒュウンッ・・・バシィィ~~~~ンンッッ!!
「ぎゃあああんんっっ!!」
空を切る音と共に鞭が叩きつけられる。
既に蓄積された痛みと相まっての強烈な苦痛に信幸は背をのけぞらせ、苦痛の声を上げた。
バアッシィィ~~~ンン!!ビッダァ~~~ンンン!!バアッアァ~~~~ンッッ!!
「ぎゃひぃぃ~~んっ!ひゃあんっ!!やぁぁぁぁんんんっっ!!」
絶叫ともいえる悲鳴を上げたかと思うと、今井は体勢を崩し、お尻を床につけるようにしてへたり込んでしまった。
 「こら!何をしてるんだ!まだ終わってないぞ!立つんだ!」
「や・・・いやぁぁ~~~っっ!!い・・痛いよぉぉ!怖いよぉぉ!も、もぅ、叩かないでぇぇぇ!!」
鞭の痛みと恐怖に今井は泣き叫ぶ。
「反省したのか?」
頃合いだとみたのだろう、佐々木はへたり込んでいる今井に尋ねる。
「してる・・してるってばぁぁ~~~!!ごめんなさい~~~!!!」
今井は許してもらいたくて必死に謝った。
 「じゃあ何が悪かったんだ?反省してるなら言えるだろう?」
本当に反省しているのか、確かめるように佐々木は問いかける。
「ひっく・・ひぃん・・食べ物・・・外に・・捨てた・・・ことぉ・・」
「そうだ。それから?」
「ひぃん・・う・・嘘・・ついた・・ぁ・・・」
「そうだ、よく言えたな」
佐々木は声を優しいものに変えるとようやく鞭を降ろした。


 「うわぁぁ~~~んんっ!!お尻痛いぃぃ~~~~!!」
「よしよし・・・痛かっただろ。もう大丈夫だからな」
佐々木は優しく抱きしめながら今井をあやすように声をかける。
しばらくして落ち着くと、佐々木はベッドの縁に腰を下ろし、今井を膝に載せる。
 「信幸、俺はお前が好き嫌いしたから怒ってたんじゃない、わかるな?」
「な・・何となく・・・」
「好き嫌いがあるのはまぁ仕方無い。だからといって食べ物を粗末にしたり、嘘ついたりするのはよくないことだ。だから厳しくしたんだ」
「でも・・痛かったですよぉ・・」
「仕方ないだろう、お前が中々わかってくれないからな」
「うう・・それじゃ子供みたいじゃないですかぁ・・」
今井は思わず不満そうに頬を膨らませる。
「ピーマンが嫌いだの、食べるの嫌だから嘘ついて窓から投げ捨てるなんて立派に子供だと思うが?」
「もぅ!佐々木さんの意地悪!」
すっかり今井はヘソを曲げてしまい、プイと顔をそむける。
佐々木は苦笑すると、再び今井をあやしにかかった。
今井はしばらくむぅ~と不機嫌そうに唸っていたが、やがて機嫌を直すと、佐々木と唇を重ね合わせた。


 ―完―
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