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ザ・クリーナー(後始末屋)4 酔っぱらいと来客



 「あん?どこ行くんだよ?」
庭で武器の練習をしていたキアラはネロが厩舎から魔族の馬を引き出すのを見ると、そう尋ねてきた。
 「買い物と振込みだ」
「一人でかよ?」
キアラは怪訝そうな表情を浮かべる。
買い物に行く際は手伝いとして連れて行かれることが多かったからだ。
「個人的な用だからな。ついて行きたいのか?」
「んなわけねえだろ!ガキじゃあるまいし!」
「そうか。なら留守を頼もうか。まさか留守番も出来ないわけではないな?」
「馬鹿にすんなっ!ガキじゃあるめえし!!」
「なら頼んだぞ。言い忘れていたが、客がくることになっている。くれぐれも粗相の無いようにな」
「わかってるって言ってんだろうが!さっさと行きやがれ!!」
不機嫌そうなキアラに思わず苦笑しながらネロは馬に跨ると、屋敷を後にした。


 (よしと・・これで会費は振り込んだと・・)
指定された口座へ必要な金額を振り込むと、ネロは銀行を後にする。
振り込みを終えたネロが次にやって来たのはDVD&CDショップ。
 「いらっしゃいませ~~~。あっ!これはこれは・・・。毎度のご利用ありがとうございます」
ネロが入って来るなり、店員の一人が愛想のよい表情を浮かべて近づいてくる。
ここはネロの行きつけの店。
当然、店員にとっても馴染みの顔となっていた。
「いつものでよろしいんですね?」
「ああ、頼む」
「ではどうぞこちらへ・・・・・」
店員はそう言うとネロを案内してあるコーナーへ行く。
色々なジャンルのコーナーを過ぎた後、ようやくそのコーナーへたどり着いた。
そのコーナーに並んでいるパッケージにはいずれもガンマンやカウボーイの写真やイラストが描かれている。
西部劇コーナーだというのはすぐわかった。
だが、普通の西部劇とは感じが違う。
確かに中には某荒くれ刑事映画で主役を努め、近年は硫黄島の戦いをテーマにした作品で名高いクリント・イーストウッドなどアメリカ人が主演の映画もある。
しかし、その多くはイタリア系をはじめとするヨーロッパ系の俳優達が主演を務める作品だった。
さらによくパッケージを見てみると、原題や音声がイタリア語のもの、監督をはじめとする制作陣がイタリア人だったり、製作国もイタリアのものが多かった。
さらに映画の公開や制作の年度を見ると1960年代から70年代のものばかりだった。
よくコーナーを見てみると、棚の脇につけられているジャンルを示す札に「マカロニ・ウェスタン」と書かれていた。
1960年代から70年代はじめにかけ、あるジャンルが世界的に大ブームを呼んだ。
それがマカロニ・ウェスタンことイタリア製西部劇だ。
自由や独立、フロンティアスピリットといったアメリカ的価値観、伝統的美意識などをテーマとしたアメリカ西部劇とは異なり、イタリア人というアメリカのとっての他者・よそ者に当たる人々がつくるという立場を強みとして生かし、独特の作風を作り上げたのがマカロニ・ウェスタンだ。
 例えば、本場アメリカ西部劇の場合、観客は無論、造り手もアメリカ人である。
だから先住民やモルモン教徒に対する迫害・弾圧といったアメリカ史の暗部を描くことは難しかったし、また娯楽活劇でも時代考証など歴史的な考証・考察をないがしろにして書くことは出来なかった。
西部劇は自分達の歴史を描いたものだったからだ。
それは日本において時代劇をつくるときのことを考えてみるとわかりやすいかもしれない。
日本の時代劇でもアイヌや琉球をテーマとした作品は日本史の暗部と関わるためにほとんどないし、必殺シリーズや時代物の少年漫画のように最初から考証・史実を無視している作品ならともかく、通常の作品においてはいい加減な考証などをすると非難される危険がある。
これも、自国の歴史をテーマとするため、いい加減なことを書いたり出来ないためだ。
 しかし、マカロニ・ウェスタンでは西部の伝統的価値観・美意識や時代考証などどこ吹く風、生々しい暴力と復讐心や金銭欲といった人間のギラギラした感情を描き、19世紀が舞台なのに20世紀になって登場したモーゼル自動拳銃を主人公が使っていたり、また爆弾や銃を仕込んだからくり人形だの、機関銃と小型大砲を仕込んだオルガンだのといった現実にはあり得ない秘密兵器で悪人一味をやっつける、サムライやカンフー使いが西部を闊歩するなどというよく言えば自由奔放、悪く言えば無茶苦茶なことを平気でやっている。
 これは制作陣がアメリカにとって外国人であるイタリア人だったからこそだろう。
余所者だからこそ、時代考証や歴史のタブーにとらわれず自由な発想で作ることが出来た。
そのため、007ばりの派手な活劇モノから、アメリカ史や社会、人間の暗部をするどくえぐり出した骨太な社会派作品、大人から子供まで楽しめる明るいコメディなど多種多様な娯楽作品が造られ、10年近くにわたってブームが続き、500本もの作品が造りだされたといわれるほどの活況を呈した。
そのジャンルの性格などから批評家などからは無視されたものの、一般大衆・観客の心を捕らえ、今なお熱烈なファンが存在しており、また「スキヤキウェスタン・ジャンゴ」や「ボクらの太陽」、「続・殺戮のジャンゴ」などといった、現代の映画やゲームなどにも影響を与えている。
 そして、そのマカロニ・ウェスタンに心奪われたのは人間ばかりではなかった。
天使や魔族も、特にその価値観や社会の仕組みなどに荒っぽい要素を持つ魔族達の場合、荒々しい暴力の世界で己の腕と頭脳を頼りに生きるマカロニ系ヒーロー達に強いシンパシーを感じたのだろう、人間界でマカロニウエスタンの味を覚えた魔族達を通じて魔族界にマカロニがもたらされ、大きなブームを巻き起こした。
 さらに、80年代後半から現在にかけて、マカロニの巨匠として知られるセルジオ・レオーネやコルブッチといった監督達、またリー・ヴァン・クリーフやクラウス・キンスキーをはじめとするマカロニスター達が世を去ったこともブームに拍車をかけた。
死者となった彼等が天界に迎え入れられ、天・魔両世界共同で、天界の住人となった彼らを起用して、現世では見ることのできない新しい作品が生み出されているからである。
無論、これはマカロニに限ったことではない。
ジョン・フォードや黒澤明、ジョン・ウェインや三船敏郎、ブルース・リーといった既に亡くなった巨匠・名優らにより、天界ではあまたの作品が生み出されているのだから。
 ネロはコーナーにずらりと並べられた商品を見やりながら、ふとある作品に目を止める。
(これだこれだ・・)
ネロは目を止めた商品を手に取るとパッケージをしげしげと見つめる。
パッケージには「サルタナがやって来る ―虐殺の一匹狼―」とタイトルが書かれていた。
(人気作品すぎて中々手に入らなかったからな。よかった・・・)
ネロは微かに笑みを浮かべる。
 この作品はダンディでカッコいいヒーローと007ばりの奇想天外で派手なアクションを売り物にした娯楽活劇シリーズの第四作。
特にクライマックスの、皆殺しオルGUNこと小型砲と機関銃を仕込んだパイプオルガンを駆使して悪人一味を壊滅させるシーンで名高い。
なお、サルタナシリーズはマカロニ中の傑作として名高いシリーズだけあって、世界中で大ヒットしたが、何故か日本では2000年代にこれ一本だけDVD化されるまでは紹介されなかったという不思議な作品だ。
魔族界でも大ヒットし、それが原因でDVDが品切れ続出、中々手に入らないという事態になっていただけに、マカロニ愛好家のネロとしても何としても手に入れたい一本だった。
他にもいいのが無いかと見回し、またドキュメンタリー系DVDのコーナーに行ってマカロニ関連のドキュメンタリーDVDも幾つか購入すると、ネロはショップを後にした。


 「畜生!品切れかよ!」
酒用の小型冷蔵庫の中を見るや、キアラは毒づく。
普段はビールやウィスキーを入れてあるのだが、あいにく今日は空っぽだった。
「クソ・・。買ってくっか・・・」
ブツブツと愚痴を言いながらキアラは近くの店まで酒を買いに出かけた。
 キアラが酒を買いに出たのと入れ替わるようにして、屋敷に向かって漆黒の天馬が飛んでくる。
天馬にはネロに劣らず見事な黒づくめの衣服を身にまとい、モーゼル・ミリタリーを身につけ、漆黒の翼をもつ天使が跨っている。
サイレンスだ。
天馬の鞍袋にはクリアケースらしいものが入れてあった。
屋敷に近づくと天馬はゆっくりと降りて行く。
やがて、地面に降り立つと、サイレンスは馬を降り、鞍袋からクリアケースを取り出す。
そしてケースを抱えると、来客を告げるブザーを押した。
 だが、誰も出てこない。
サイレンスは訝しげな表情を浮かべる。
ネロのことは知っていたからだ。
自分が来ることはわかっていたはず。
出かけるにしても何か連絡をよこすだろう。
 何か手違いがあったのかもしれない、そう判断したサイレンスは一旦引き揚げることにする。
クリアケースを鞍袋に仕舞って再び馬に跨ろうとしたときだった。
 「ああ~ん、テメエ、何してんだ~~~?」
不意にろれつの回らない声で誰かが呼びかけてくる。
振り向いてみると、若い娘が馬にまたがったまま、ウィスキーの瓶を傾けているのが見えた。
 「テンメェ・・・人の屋敷の前で・・何・・してん・・ぶいっくぅぅ・・・」
キアラは馬上でラッパ飲みしながらサイレンスを問い詰めようとする。
既にかなり飲んでいるのだろう、顔はゆでダコのように真っ赤に染め上がっていた。
どうやら帰る道すがら、買った酒をきこしめしたらしい。
 キアラの態度からサイレンスは屋敷の者だと察したが、こうも酔っぱらってしまっていては話にならないと判断したのか、そのまま去ろうとする。
「おぃ!待ちやがれ!」
突然、キアラは去ろうとするサイレンスを呼びとめる。
サイレンスがふりかえってみると、キアラがかなり興奮しているように見えた。
「テメェ・・・盗人だろう~~。だから・・屋敷の前・・うろっついて・・やがったな~~~~。ゲヘヘ・・。逃がすかよ~~~」
完全に酔っていてまともな判断が出来ないせいだろう、キアラは腰からリボルバー式の拳銃を引き抜いて構える。
その振舞いにサイレンスの様子が変わった。
 酔った今のキアラの目では捉えきれないほど敏捷な動きでサイレンスの身が翻ったかと思うや、牛追い鞭が激しく腕に叩きつけられる。
鞭の痛みに思わずキアラは銃を取り落とし、同時に酔いのためにバランスを崩して落ちてしまった。
 キアラが頭から落ちるのを見るや、思わずサイレンスは駆け寄って抱え起こす。
どうやら大きなけがを負ってはいないらしい。
だが、ぶつけた場所が場所だ。
決して安心は出来ない。
まずいことになったとサイレンスが思ったときだった。
 「どうした?」
聞き慣れた声に振り返ると、馬上のネロの姿が見える。
ネロは気絶しているキアラの姿を見るなり、状況を察すると、すぐさま携帯を取り出して、電話をかけた。


 「ぐぅ・・痛ててて・・・」
酒による頭痛に顔を顰めながら起きたキアラの目に飛び込んで来たのは病室の清潔かつ無機質な白壁だった。
 「何だ・・ここは?」
思わずキアラがつぶやくと、誰かが声をかける。
「気がついたか?」
振り返ってみると、ネロが立っていた。
 「あん?出かけたんじゃなかったのか?」
「用はもう済んだ。ここは病院だ」
「病院だぁ?」
キアラが周りを見回し、さらに自分の格好を見てみると、入院患者のものになっている。
「何でこんなとこいるんだよ!」
「酔っぱらった挙句の果てに馬から落ちて頭を打ったんだ。覚えていないのか?」
「何だと・・・」
ネロに言われてそうやくキアラは思い出す。
 「クソッ!あの天使野郎・・・・」
サイレンスに腕を鞭で思い切り殴りつけられた衝撃で馬から落ちたことを思い出すや、キアラは恨めしげな表情を浮かべる。
 「人のせいにするな。それより・・・覚悟はいいだろうな?」
「あん?何のことだ!?」
「出かける前に言ったはずだ。客人が来るから留守を頼むとな」
「ああん?それがどうかしたか?」
「どうかしたかではない。そう言っておいたにも関わらず、酒なんかのために屋敷を離れた上に、酒に酔っ払って客人に銃を向けるとはな・・」
「ああ!あの天使野郎が客かよ!?てっきり盗人かと思ったぜ・・・」
「それは俺も十分に言っておくべきだったな。だが・・・きちんと役目を果たしたとはとても言えないことはわかっているな?」
「う・・うるせえよ・・」
キアラは途端に機嫌が悪くなる。
同時にベッドから逃げ出そうとした。
 ネロはすぐさま手首を引っ掴むや、思い切り引き寄せる。
おかげでキアラは見舞客用の椅子に腰をおろしたネロの膝に載せられてしまった。
「クソッ!離しやがれ!このド○○らっ!!」
キアラは相変わらずの暴言を吐くが、ネロは聞き流して上着を捲りあげ、ズボンを降ろしてお尻をむき出しにする。
 「畜生っ!何しやがんだっ!」
「お仕置きに決まっているだろう」
「ふざけんな!何でんなことされなきゃなんねえんだっ!」
「何故だと?ただきちんと留守番をしていなかっただけならともかく、昼間から酔っぱらった挙句に人に銃を向け、入院までするような事態になったのだぞ?」
「うっせえよ!あの天使野郎が悪いんだっ!それにそもそもテメエがちゃんと酒買い足しときゃそんなことにならなかったんだよ!!」
「やれやれ・・・全く反省してないようだな・・。よくわかった・・」
ネロはそういうと、左手で弟子の身体を押さえつける。
そして、ゆっくりと右手を振り上げたかと思うと、思い切り振りおろした。


 パアシィンッ!!
「ぎっっ!!」
甲高い音と共に平手が叩きつけられ、キアラはうめき声と共に悔しそうな表情を浮かべる。
パアンッ!パアシィンッ!ピシャアンッ!パッシィンッ!
「クソッ!テメェッ!離せっ!離しやがれっ!こん畜生っ!」
バシバシとお尻を叩かれつつも、キアラは頑として抵抗する。
「全く・・・お前は何をやっているんだ・・・」
いつものようにネロは平手を振り下ろしながらお説教を始める。
 パアシィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!パッチィンッ!
「客人が来るから留守を頼むといっておいたというのに・・・」
「うっせえよっ!テメエが酒買っとかねえからだろ!!この梅毒脳味噌野郎!!」
キアラはお尻を叩かれているにも関わらず暴言を吐きまくる。
ピシャアンッ!パアシィンッ!ピシャアンッ!ピシャアンッ!
「買い物はともかく・・・昼日中から・・しかも馬に乗ったまま酒など飲んで・・」
「うるせええ!!どういう飲み方しようが俺の勝手だろうが!!」
パアシィンッ!ピシャアンッ!パチィンッ!パアアンッ!
「しかも・・酔ったあまりに人に銃まで向けるような真似までして・・自分が何をやったのかわかっているのか?」
「うるせぇぇ~~~っ!テメエに説教される筋合いなんざねえよっ!とっとと離しやがれ!せむしで癩病持ちのクサレチ○○オヤジと売春婦で梅毒持ちのお袋から生まれやがったかさっかきの○○ラ○チ○イ野郎!!!」
「いい加減にしろ・・。反省していないのか?」
あまりに強情なキアラの態度にネロも少々うんざりした様子で尋ねる。
「反省することなんざねえ!!とっとと降ろしやがれ!!」
「そうか・・。よくわかった・・・」
ネロはハァ~とため息をついたかと思うと、おもむろに足を組む。
おかげでキアラはグッとお尻を突き上げる体勢になった。
そこへ、鞭のようなしなやかな手さばきで手を振り下ろす。
 バアッシィ~~~ンンッッ!!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!!
「んぎゃああああっっっ!!!!」
ただでさえお仕置きが痛く感じられる体勢にされたところへ、集中豪雨のごとく平手の雨が降り注ぐ。
「何しやがんだぁぁ!!殺す気かぁぁ!!」
睨み殺さんばかりの勢いでキアラは振り返るが、ネロの氷のように冷たい目に思わず引いてしまう。
「少々のことでは反省出来んようだな・・。今日はキッチリと性根を入れ替えてやろう」
そういうと再び平手の嵐をお見舞いする。
激しい打撃音と絶叫、怒声が入り混じった音が病室に響き渡った。


 「ひぃん・・。ひぃぃん・・痛ぇ・・痛えよぉぉ・・・」
キアラはボロボロと涙を零して泣いていた。
今やお尻は二回りは大きく腫れ上がり、ワインを表面にかけたのではと思えるほど真っ赤に染め上がっている。
「まだ・・強情を張るか・・?」
ネロは一旦お尻を叩く手を止めると、軽くポンポンと触りながら尋ねる。
「ひぃん・・!も・・もぅ・・やめて・・やめて・・くれよぉぉ・・!ケツ・・壊れるぅぅぅ・・・」
さすがにお仕置きが効いたのだろう、プライドをかなぐり捨ててキアラは許しを乞う。
 「なら何故怒られたか言ってみろ。出来るな?」
ネロが尋ねると、コクコク頷きながらキアラは答える。
「ひぃん・・。ちゃ・・ちゃんと・・留守番・・しなかった・・」
「そうだ。それから?」
「昼間っから・・それも・・馬ぁ・・乗りながら・・酒・・飲んだぁぁ・・」
「そうだ。あとは?」
「ひぃん・・酔った・・勢いで・・客に・・銃・・向けたぁぁ・・」
「そうだ。わかっているようだな・・・・」
ネロはそういうと、言葉を続ける。
 「いいか。俺は留守番をしなかっただけで怒っているわけではない。いいか、お前は馬に乗りながら酒を飲んだ。いわば飲酒運転だ。それは非常に危険で、事故を起こしかねん。そして・・何よりも・・お前は酔っぱらった勢いで他人に銃を向けるなどという真似をやらかした。そんなことをすればどうなるか、頭が冷えた今ならわかるだろう?」
「あ・・・」
キアラはようやくおのれの仕出かしたことの重大さに気づく。
銃を向けるということは、喧嘩を売ること。
しかも、ただの喧嘩では無く殺し合いのだ。
それは非常に無礼極まりないことで、返り討ちで殺されてしまったとしても文句が言えないことである。
 「幸い・・・酔っぱらいの仕業ということでサイレンスが冷静な対応をしたからよかったが・・お前同様血の気の多い者が相手だったら殺されていたのかもしれんぞ?しかも、頭を打って重大なことになるかもしれなかったのだ。わかっているのか?」
キアラは今更ながら全身が震えてくる。
「もう・・二度としないと約束するか?」
師が尋ねると、キアラは必死に頷く。
それを見ると、ようやくネロは弟子を膝から降ろしてやった。


 (やれやれ・・相変わらず世話が焼けるな・・・)
お尻に冷たいタオルを乗せ、うつ伏せで眠っているキアラの姿にネロは苦笑する。
しばらくの間ネロは様子を見ていたが、やがて大丈夫だと見極めをつけると、静かに病室を後にした。
 病室を出ると、廊下で待っていたサイレンスが手振りで話しかけてくる。
「大丈夫だ。精密検査もしてもらったが特に異常はない。それよりも・・弟子が迷惑をかけたな・・・」
ネロが謝ると、サイレンスは手振りで別に気にしていないと答える。
「そう言ってもらえるなら何よりだ。それはそうと・・書類の方はあるのか?」
ネロの問いにサイレンスが頷くと、クリアケースを取り出して渡す。
ネロは受け取ったケースを開くと、中身に目を通す。
ケースの中にあるのはイベントの企画書や契約書。
 「どうやら順調に進んでいるようだな。ゲストはまだ決まっていないようだな?」
ネロの問いにサイレンスは頷いて答える。
「それにしても妙なものだな。天使と悪魔が、共にマカロニウェスタンの虜になり、一緒にイベントの興行やら何やらをするのだからな」
二人は互いに顔を合わせると苦笑する。
ネロもサイレンスも天魔両種族でつくられるマカロニウェスタン愛好家の団体の会員になっていた。
今日、街でネロが振り込んで来たのもその団体の会費だ。
その団体では、マカロニウェスタンのイベントを企画中で、サイレンスは天使側の、ネロは魔族側の幹事の一人になっていた。
その関係で、サイレンスが天界側の必要な書類を持って来たのである。
やがて、ネロは再度キアラの様子を見て大丈夫だと確認すると、書類の件を詰めるためにサイレンスと共に屋敷へ戻っていった。


 ―完―
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