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狩人の月(ハンターズ・ムーン)前伝 摩茄路仁奇談2



 (注:スパシーンが少ししかありません。それでもOKという方のみご覧ください)


 それはカブトガニのような外観をしていた。
卵から飛び出したそれは久也の顔面めがけて飛びかかる。
それの腹がまるで食いつこうとするかのようにぱっくりと開き、今にも久也の顔に飛びつくかと思えたそのときだった。
 突然、奇妙なカブトガニがバラバラに吹っ飛んだ。
不意の出来事に全員が一瞬、硬直する。
そこへ乾いた音がしたかと思うとある男が全身を震わせる。
彼らはそれぞれハッとして自分の胸を見やる。
すると胸にはぽっかりと大きな穴が開いているではないか。
さらに男はすぐ後ろに立っていた別の男の方を振り向く。
すると背後にいた男、さらにその背後にいた男も完璧に胸に風穴を空けていた。
残る二人も自分の状態に気づいたのか慌てて自分の胸を見やる。
だがさすがに生命力が尽きたのだろう、全員そのままドサリと倒れてしまった。
 そのとき、一人が何かを指差した。
それにつられて全員が指さされた方を見やる。
すると大きな煙が見えた。
煙は少しずつ晴れてゆく。
やがて闇の中から何者かが姿を現した。
現れたのは持安剛。
持安は銃を構えている。
その銃は何と全長が150センチ近くあり、スコープや小型の二脚が装着されている。
見るものが見れば、戦闘ヘリや装甲車相手に使用される対物ライフルの仲間だというのがわかっただろう。
 持安はライフルを構えたまま、立て続けに引き金を引く。
一回ごとに持安の姿を覆い隠してしまうほどの硝煙が生じ、それが幾重にも重なって持安の姿が見えなくなる。
仮面の集団は次々と身体を撃ち抜かれ、バタバタと倒れてゆく。
対物ライフル相手では叶わないと判断したのだろう、一部の者が慌てふためいて逃げ出す。
 持安は片眼をスコープに当てて逃げようとする仮面の面々にジッと狙いをつける。
やがて逃げてゆく者全員が少しずつだが一列に重なり合う。
そこを狙って持安はライフルの引き金を引いた。
大量の硝煙と共に銃弾が一直線に逃げるもの達を貫く。
全員、一瞬動きが止まったかと思うと顔から地面に突っ込むようにしてうつ伏せに倒れ伏した。
 全員に止めを刺したことを確かめると、持安はライフルを石碑の方へ向ける。
またライフルをぶっ放したかと思うと鎖がちぎれ飛んだ。
 久也は自由の身になると地面にヘナヘナと座り込む。
「へたり込んでる暇はないぞ。さっさと立て」
持安は久也の傍まで寄るとそういいやった。
「そ・・そんなこと・・言ったって・・・」
久也はそう言うが持安は構わずに久也の腕を引っ張って強引に立たせるとそのまま走りだす。
抗議しようとする久也を無視して持安は追われるもののごとき勢いでひたすら走った。


 久也が今にもへたばりそうなくらい息を切らしながらついてくるのを尻目に持安は林の入口へ向かって走ってゆく。
だが、突然立ち止まったかと思うと、銃を構えて周囲を見回し始めた。
 「じ・・持安さん・・・?」
突然の持安の行動に久也は思わず声をかける。
持安はそれに構わず、何かを探しているように銃をせわしなく動かす。
やがて持安のライフルはゆっくりと上へ上がってゆき、樹上に狙いを定めた。
 だが、闇夜とはいえ、持安の銃口の先には何も見えない。
(何考えてるんだろ?何も無いところに?)
久也はそう思わずにはいられなかった。
しかし、持安の表情は真剣そのもの。
何も無いはずの空間を睨むうちに表情はどんどん緊張したものになってゆく。
やがて何を思ったか、いきなり持安は虚空に向かって引き金を引いた。
 持安の全身を覆う程の硝煙と共に鈍い銃声が轟く。
同時に何も無いはずの樹上で火花が散り、堅い金属を思いっきり金槌で叩いたような音がした。
(え・・・!?)
久也は目と耳を疑った。
何も無いはずのところから火花が生じ音がしたのだ。
(何かが・・・いる!?)
久也は思わず樹上を見上げる。
よく見るとかなり重いものが載っているのか、枝が傾いでいる。
見えない何かがいる。
その事実に久也は恐怖がジワリジワリとこみ上げてくる。
 突然、フラッシュでも焚いたかのような光が生じた。
本能的に久也は目をつぶって背を丸める。
直後、轟音と共に持安が吹っ飛んだ。
 「ごぶあっっっ!!!!」
胸に風穴が開いてもおかしくないほどの衝撃を受け、持安は数メートル後方の幹に思いっきり叩きつけられる。
「ひいいっっ!!!」
久也は腰を抜かして地面にへたり込んでしまう。
直後、重いものが落下する音が響く。
ハッとして久也が振り返ると、枝が折れ、足跡がつく。
見えない何かが持安が吹っ飛ばされた方へ向かって歩いているのだ。
 「がっはぁ・・・ぐっお・・・・」
持安は胸を押さえ苦痛に顔を歪めている。
上着は破れて大きな穴が開いており、胸や腹があらわになっている。
胸には火傷が生じ、そこからブスブスと焦げくさい匂いと煙が微かに漂っていた。
 (くそっ・・・!あばらがイカれたな・・・)
持安は手触りでそれを感じ取る。
だが、いつまでも蹲っているわけにはいかない。
持安はゆっくりと立ち上がると目の前をジッと凝視する。
同時に腰から別の銃を引き抜いた。
ライフルは先ほどの衝撃で壊れているからだ。
手にしたのは水平二連式の猟銃をコートに隠せるくらい短く詰めたもの。
いわゆるソードオフ・ショットガンといわれるやつで、犯罪映画などでおなじみの代物だ。
 (さぁ・・・来い!!)
持安に向かって来ているはずのものに向かって心の中で呼びかける。
それを見えざる相手も感じたのか、突然虚空からバチバチと小さな雷の群れのようなものが生じた。
やがて、雷の群れの下からそれが姿を現した。
 現れたのは人間によく似た体格をした生物。
身長は230センチ、プロレスラー顔負けの筋肉質で逞しい身体つきをしている。
頭部は奇妙なデザインのヘルメットで覆い隠されており、ヘルメットと同質と思しき金属でつくられた装甲を胸部や肩、両腕や腰回りに身につけている。
右肩には小型の砲らしきものが装着され、金属製の槍を手にしていた。
 「う・・・・嘘・・そんな・・・馬鹿な・・・」
目の前に現れた異形の存在に久也は驚愕していた。
彼の前にいたのはまぎれもなく、人間達の間でプレデタ―と呼ばれている存在だった。
(そんな・・でも・・あれは・・映画じゃないか!?)
心の中でそう叫ぶ。
だが、目の前の光景がそれを否応なしに否定していた。
 プレデタ―は姿を現すと同時に再び持安目がけて肩のプラズマキャノンを発射する。
持安は身体を沈めてプラズマキャノンをかわすと同時にプラズマキャノンを狙って改造猟銃をぶっ放す。
鈍い音と共にスラッグ弾が発射されるや、ショルダーキャノンに命中する。
直後、キャノンが爆発し、衝撃でプレデタ―が傾いだ。
続けてもう一発、スラッグ弾をぶっ放す。
だが、プレデタ―が態勢を立て直したために銃弾は胸甲に当たってしまった。
 (まずい!?)
持安はすぐにも予備の弾丸を込めにかかる。
だが、それよりも早くプレデタ―がタックルを仕掛けてきた。
まるでバイクがぶつかったかのような強烈な衝撃に持安は足の感覚が無くなったと思う間もなく再びある木の幹に背中から叩きつけられる。
幹と地面に叩きつけられた衝撃に思わずうめくも、ジャンプしたプレデタ―が槍を構えて急降下してきた。
 とっさに持安は横へ転がって急降下攻撃をかわす。
同時に持安は素早く立ち上がりながら予備の弾丸を込める。
そしてプレデタ―が槍を引き抜こうとしているところへ鎧の隙間めがけてぶっ放した。
スラッグ弾が至近距離からプレデタ―の露出している脇腹に叩き込まれる。
だが、プレデタ―は一瞬よろめいたものの、槍を地面から引き抜きながら持安を横薙ぎに殴りつけた。
鈍い音と共に持安の身体が浮き上がる。
プレデタ―は宙に浮いた持安の足を掴むや、思いっきり振りまわし始めた。
プロレスでお馴染みのジャイアントスイングだ。
鈍い音と共に持安の身体は何度も周りの木に叩きつけられる。
ようやくプレデタ―が手を放すと同時に持安の身体はすっとび、近くの幹に思いきり叩きつけられる。
 「ごう・・・がっはぁ・・・・」
背中や側頭部に激しい衝撃を受け、持安は激しくせき込み、うめき声を上げる。
持安は頭の中で鐘がガンガンと響き渡っているような感覚を覚える。
視界は歪んで霞みががったようなものになっており、槍を構えてこちらへ近づいてくるプレデタ―が何人も重なり合っているように見えた。
それでも持安は立ち上がろうとする。
プレデタ―には命乞いなど無意味、一度戦う意思を見せた以上、倒す以外に道はないことはよく知っていたからだ。
 荒い息を吐き、手足が疲労と負傷で震えながらも、持安は構えてジッとプレデタ―を睨みつける。
「さぁ。来い!どうした!?醜い化け物!来いよ!」
持安は聞いているものが耳をふさぎたくなるほどの悪態をつきまくる。
プレデタ―にもその意図がわかったのだろう、怒りをあらわにするかのように凄まじい咆哮を上げたかと思うや、一気に踏み込んで槍を繰り出した。
猛烈な勢いで持安の胴目がけて穂先が襲いかかる。
持安は串刺しにされるのを待っているかのようにジッとしている。
だが、今にも穂先が腹に突き立てられようという刹那、持安はスッと横へ回り込むように動いた。
突きの勢いでプレデタ―はそのまま前へ突き進む。
持安は避けながら後ろへ回り込む。
回り込むと同時に持安は左手を繰り出した。
繰り出された左掌はプレデタ―の背後、胸甲に覆われていない部分にピタリとつけられる。
直後、鼓膜が破れるかと思う程の轟音と大量の煙が生じた。
 プレデタ―は前方に向かって思いっきり吹っ飛び、持安も反動で地面にぶっ倒れる。
持安はよろめきながら立ち上がってきたが、それを見た久也は我が目を疑った。
案内人の左腕が異様なものに変化していたのだ。
破れてボロボロになった袖の下から見える持安の左腕は鋼鉄製だった。
肘の隙間や掌の付け根にある銃口らしい穴からブスブスと煙を吐き出している。
機械の腕を覆い隠していた外皮は一部分だけ残っていて腕のあちこちにへばりついていたが、それが何とも無残な印象を与えていた。
 「畜生・・・マックスは・・さすがにキツイか・・・」
持安は反動が与えた衝撃に顔をしかめる。
だが、苦痛に顔をゆがめつつもプレデタ―の方に視線を向ける。
プレデタ―の方も起き上がってこようという努力をしていた。
だが、プレデタ―の胴には拳一つ楽に入るほどの大きな穴が開いている。
あくまでも戦おうと言っているかのように、プレデタ―は自身の槍に手を伸ばそうとする。
だが、その動きはだんだん弱々しくなってくる。
やがて、プレデタ―はピクリとも動かなくなった。
 「死んだ・・ん・・ですか・・?」
全く動かなくなったプレデタ―を見やりながら恐る恐る久也は尋ねる。
「あぁ・・。完全にな・・」
「それにしても・・・。何なんです?一体?これ・・プレデタ―じゃ・・?それに・・持安さんの・・その腕は・・?」
「話は後だ。それより・・今は一刻も早くここを離れる。行くぞ」
持安は満身創痍とは思えぬ足取りで歩きだす。
慌てて久也も後を追っていった。


 研究所へ戻る途中、車の中でようやく持安から聞きだした話は何とも異様なものだった。
いわく、あの人型の怪物は久也が想像した通り、プレデタ―と我々の世界では呼んでいる生物であること、また怪しい儀式を行った連中が持っていたのはエイリアンの卵であり、久也に襲いかかったのはフェイスハガーであり、彼らは架空の生物と世間には思われているが、そうではないことを持安は話した。
 持安によれば遙かな昔よりプレデタ―とエイリアンは地球にやってきていた。
一部の人間や文明にはその事実が記されており、「天駆ける狩人」「星を渡るもの」などといった呼び名でプレデタ―が、「黒き龍」「むさぼるもの」という名でエイリアンについて書かれた石碑や伝承などもあるという。
 また、彼らは太古においては神々や悪魔、魔物としてあるときは崇拝され、あるときは恐れられた。
現在でも彼らを大いなる存在として崇めるもの達が密かに教団を形成しており、久也を襲った者達もそうだった。
彼らは久也を宿主としてエイリアンをこの世に充ち溢れさせ、それによってプレデタ―を地上へ呼び寄せようとしたのである。
というのも、エイリアンはその戦闘力と繁殖力から生態系に対して極めて有害且つ脅威な存在である。
そのため、プレデタ―は彼らがどこかの星で繁殖する危険を察知すると駆除を専門とするプレデタ―を派遣してエイリアン達を殲滅する。
この事態が誤って伝承された結果、プレデタ―を地上へ呼び寄せるためにエイリアンを繁殖させるという行為が邪教集団によって行われるようになった。
それが久也が危うく犠牲となりかけた儀式なのである。
 なお、持安は以前はアウトローとして各地を旅しており、その間にこういった知識や経験を身につけていた。
その中で片腕を失う羽目になり、そこで大金を支払ってだが中に強力な火器を仕込んだ機械の義手を造ったのである。
それが持安の左腕で、普段は精巧な外皮によって隠してある。
だが、内臓火器の反動などが強烈なため、それを使用すると外皮が破れて機械の腕があらわになってしまうのであった。
 やがて研究所が見えてくると持安は車を止めて久也を降ろしてやる。
「一つだけ言っておく。今夜のことは絶対にしゃべるな。まぁしゃべっても誰も信じないだろうがな」
「は・・はぁ・・・・」
「それにもしお前がしゃべったことが知れたら今度こそお前はいけにえにされる。ああいうカルト連中は自分達の秘密を決して世間に漏らさせまいとするからな」
真剣な表情で持安はそう言い聞かせる。
さすがに久也にも伝わったのだろう、恐る恐るといった表情で頷いた。


 パンッ!パチィンッ!ピシャアンッ!パアアンッ!
「ごめんなさいっ!ごめんなさい~っ!ごめんなさい~~っ!」
久也は静香の膝の上で手足をばたつかせながら必死に謝っていた。
既にお尻は濃厚なワインレッドに染め上がっており、頬は涙でグショグショに濡れている。
 「ごめんなさいは当たり前でしょ!こんな時間に勝手に出かけて!しかも猪だか熊に追っかけられるようなことまでして!!」
静香は厳しい声で叱りつけると容赦なく年下の恋人のお尻に平手を叩きつける。
久也がいなくなったのがわかるや、無事帰ってくるまでずっと待っていたのだ。
ようやく無事に帰って来たのを見て一瞬ホッとしたものの、勝手に抜け出して出かけ、迷惑や心配をかけるようなことを仕出かしただけに静香の怒りは大きかった。
特に猪だか熊だかの獣に襲われそうになったという話を聞き(プレデタ―や邪教集団のことは話すわけにはいかなかったので、持安がうまく話をでっち上げたのである)、静香の心配と怒りは頂点に達した。
それで、当然のことながら久也は静香の膝に直行というわけであった。
 「ああ~んっ!ごめんなさい~~~っっっ!!!」
その後、久也の叫び声と肌を打つ音が一時間にわたって響き渡った。


 その数週間後、荒野がどこまでも続く中を一人突き進む男の姿があった。
男の正体は持安。
持安は革のケースに差した対物ライフルを巨大な剣のように背中に斜めに背負っている。
あの事件の後、持安は旅に出ていた。
邪教集団に対して攻撃を加えた以上、安穏とした生活を送ることは出来ないからだ。
それを示すかのように、バラバラと数人の男達が現れた。
男達はいずれも拳銃や猟銃を手にしている。
男達の姿を認めると、持安は立ち止まる。
邪教集団の追手なのはすぐにわかった。
数メートルの距離を保ったまま、両者はジッと睨みあっている。
持安は平然とした表情でジッと立っている。
しかし、討手側はだんだんと息が上がり、じっとりと額や頬が汗ばんでくる。
ゴクリと息をのみながら討手たちは標的を見つめる。
敵はまるで討手が眼中に無いかのような、静かな表情のままだった。
しかし、それが刺客達の不安や緊張を掻き立てる。
相手の超然とした様子に追手の方が恐怖を感じ、内臓が縮こまるかのような感覚を覚える。
とうとう、一人が耐え切れずに猟銃の引き金を引こうとしたときだった。
 突然、持安の両手がぶれたかと思うと一瞬かき消える。
だが、次の瞬間、それぞれの手にはソードオフ・ショットガンとリボルバーが握られていた。
二種類の銃が間髪入れずに咆哮をたてる。
同時に男達は発砲する間もなく案山子のようになぎ倒される。
やがて立っているのが持安だけになると、コートの下に得物を仕舞い、再び持安は歩きだした。


 ―完―


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