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ダンジュー修道院2 チサトの災難

 「こっちだ!こっちへ動かすんだ!!」
「動かしすぎだ!!もう少し左へ!!」
「飾りつけはこんなのでいいのか!?」
ダンジュー修道院の礼拝堂は、まだ夜も明けきらない時間だというのに、修道士達の慌しい声が響き渡っていた。
というのも、無理からぬ事で、今日は修道院の創設記念日。
クリスマスについで、この修道院では大切な日だ。
いつもは質素な礼拝堂も、今日は華やかに飾りつけられる。
そして、華やかなミサが執り行われ、修道士たちは、泊まっている巡礼者や、山のふもとの町からミサに参加したいと望む人々と共に、この日を祝うのであった。
そのため、準備なども大変で、例年てんてこ舞いな状況である。
今も、飾り付け用の垂れ幕やら、聖歌隊の指揮者が乗る台の設置やらで修道士達が走り回っているのであった。

 「チサト、もうちょっと左、そうそう・・・」
「こうですか?」
「そうそう。そんな感じだな・・・」
長いテーブルの上に乗り、見習い用の藍色の修道服を着た少年が、壁に飾り用のタペストリーをかけている。
その背後では、がっしりとした身体つきの修道士が、野太い声で指示を出している。
藍色の服の少年はチサト、がっしりした身体の男はバルバロッサであった。

 「ほうほう、皆しっかりやってくれとるようじゃのう」
チサトたちが壁掛けをつけていると、後ろから年老いた声が聞えてきた。
チサトが後ろを振り向くと、一人の老いた修道士が姿を現した。

 その修道士は、老人とは思えないほど背筋がしゃんと伸び、無駄なく引き締まった身体つきで、髪や髭が雪のように白く、顔にしわが幾筋か刻まれていなかったならば、とても老人とは分からなかっただろう。
それくらい、健康的な様相の人物であった。
彼の右目は鷹のように鋭く、刃物のようにギラギラとした眼光を宿している。
左目には、光が無い。
額の左端から顎の近くにかけて真一文字に、傷跡が走っているところから、昔刃物で切りつけられて、それで左目を失明したことが、想像できた。
髪や髭はあまり手入れされておらず、無造作な印象を与えている。
「あっ。院長様、ご苦労様です」
修道士たちは、老いたこの修道士を見ると、挨拶する。
彼の名はディゴミエ。
ここの院長である。
何でも、昔はフランス軍の将校だったらしく、顔の傷は敵に切られてできたものらしい。

 「今日は大切な日じゃ。皆、しっかり頼むぞ」
「はい」
「ところで、チサトや。儀式で使う銀の器を蔵から取ってきてはくれんかのう?」
「はい、わかりました」
チサトは、院長からいいつけられると、そそくさと出て行った。

 礼拝堂へ通じる石造りの廊下をチサトが静かに歩いていた。
チサトの腕には、銀製の器が抱えられている。
形状から、燭台だとわかった。
今晩のミサで説教壇を照らすのに使うものだ。
そんなに大きいものではないため、チサトの足取りも軽い。
「あれ?」
チサトはふと、足を止めた。
廊下の先に誰かがうずくまっているのに気付いたのだ。
女性というから、巡礼者もしくは観光客というのは、すぐ見当がついた。
この修道院は、観光客や巡礼を除けば、男だけだからだ。
「どうかなさったんですか?」
チサトは心配そうな顔つきで近寄る。
苦しんでいるように見えたからだ。
「え、ええ・・・。ちょっとさしこみが・・・」
「肩につかまって下さい。すぐ医務室へ連れて行きますから」
チサトは自分より背の高いその女性に肩を貸すや、医務室の方へ歩みを変えた。

 「落ち着きましたか?」
医務室で、チサトは女性客をベッドに寝かせると、話しかける。
「ええ、ありがとう」
「それじゃあ僕はこれで・・・」
そう言ってチサトが医務室を後にしようとしたときだった。
不意に、女巡礼が(彼女は巡礼の印であるほたての貝殻を胸につけていた)チサトの手をつかんだ。
「なっ。何ですか?」
突然の相手の行動に、チサトは思わず尋ねる。
「お待ちになって。可愛い修道士さん」
突然、女が妙な声で話しかけた。
チサトは思わず後ずさろうとする。
「可愛い修道士さん。とっても楽しいことを教えてあげるわ」
女巡礼は舌なめずりしそうな表情でチサトに顔を近づける。
よからぬことを考えているのは、明白だった。
「いやあああっっっっっ!!!!!」
身の危険を感じたチサトは、とっさに突き飛ばす。
突き飛ばされた女巡礼は、隣のベッドにぶつかり、床に倒れて気絶する。
その際に大きな音がしたため、ドアが開き、バルバロッサと年配の修道士が一人、飛び込んできた。
「どうし・・・」
二人の修道士は、倒れて気を失っている女巡礼と、壁際でブルブル震えているチサトに、交互に目をやる。
「チサト・・・ちょっと来い・・・」
バルバロッサはチサトを連れて別のところへ行く。
その間、もう一人の修道士は、気絶した女巡礼を介抱していた。

 その一時間後、懺悔室。
冷たい石の床の上、大理石製の聖母マリア像の正面に、地面にへばりついたカエルのように、じっと身体を丸めたチサトの姿があった。
「聖母マリア様、お許し下さい。聖母マリア様、僕の罪をお許し下さい」
チサトは首にかけている、手製の粗末な木製の十字架をしっかりと握り締め、巡礼者を危うく怪我させそうになった自分の罪に対する懺悔の祈りを、聖母マリアに捧げていた。
チサトが跪いて祈っていると、懺悔室の扉が開き、誰かが入ってきた。
入ってきたのは、バルバロッサ。
バルバロッサの顔を見ると、チサトは口を開いた。
「バルバロッサさん、巡礼さんの容態は?」
「心配ない。気絶しただけだ。大した怪我じゃないわな」
「そうですか。よかった・・・」
チサトはほっとした表情を浮かべる。
大怪我をさせていないかどうか、不安だったのだ。
「まあ、身体の方は大したことはないからいいんだがよ・・・・」
いかにも言い難そうに、そして辛そうな表情でバルバロッサはチサトに話しかける。
実際、辛いのだろう、チサトの顔をまともに見ていることができないらしく、視線を天井の方へそらしている。
「わかってます・・・。人に怪我をさせるのはいけないことですものね」
「すまんな・・・。お前は悪くねえのに」

 今回のことは、そもそも女巡礼がチサトを襲おうとしたことが原因である。
つまり、チサトは被害者だ。
とはいえ、修道士ともあろう者が、はずみとはいえ、人を傷つけるようなことがあってはならない。
特に、相手が来訪客である以上、向こうに過失があったとしても、お咎め無しというわけにはいかなかった。

 「そんじゃあ、覚悟はいいか?」
バルバロッサは部屋の片隅に置いてある椅子に座ると、膝を軽く叩いて、促す。
チサトはおずおずとバルバロッサに歩み寄ると、膝の上に乗る。
見習い修道士は、バルバロッサの膝に乗ると、両手で赤髪の修道士のズボンの裾を握り締める。
バルバロッサはチサトの藍色の修道服を捲り上げ、ズボンを下ろす。
すると、小ぶりで綺麗なお尻が姿を現した。
「じゃあ・・・行くぞ・・・」
バルバロッサは腹をくくったかのような声で手を振り下ろす。

バアンッ!
「くっ・・・・・」
お尻に痛みを感じ、チサトは思わず目をつむる。
バシッ! バアンッ! バシッ! バアンッ!
「うっ・・・くっ・・・はっ・・・・」
バルバロッサの大きく節くれだった手が振り下ろされるたびに、チサトはくぐもった声を上げる。
一回ぶたれるごとに、バルバロッサの服の裾をつかむ指の力は強くなり、バルバロッサの堅い皮膚に爪を立ててしまう。
また、表情も苦しげなものにだんだんと変わっていった。
バンッ! バシッ! バチンッ! パアンッ!
「うっ・・・あっ・・・はっ・・・ひっ・・・」
バシッ! バアンッ! バチンッ! バンッ!
「ごめん・・・なさいっ・・・。ごめんなさいっ・・・・」
チサトはぶたれながら、バルバロッサに謝る。
「何に・・・ごめんなさいだ?」
チサトに手を振り下ろしながら、バルバロッサは尋ねる。
「巡・・・れ・・い・・・の人に怪我を・・・させ・・そうに・・・なり・・ました・・」
バシッ! バンッ! バチンッ! バアアンッ!
「そうやな。何でそれがいかんのだ?」
思い出させるように、バルバロッサはチサトに尋ねる。
「人を傷つけては・・・いけな・・・い・・・から・・・で・・す。修道士が・・・そう・・いう・・ことをしてはいけな・・・い・・から・・・」
息も絶え絶えといった様子で、チサトは言う。
バルバロッサは力が強いため、手加減していても相当痛い。
そのため、華奢な身体つきのチサトには、彼からのお仕置きはキツイものがあった。
「よく出来たやな。いい子だ。さすがチサトだ」
バルバロッサはそういうと、手を止める。
そして、赤ん坊を抱っこするように、チサトを膝の上に座らせた。

 「チサト・・・痛かったか?」
「だ・・・大丈夫です・・」
「すまねえな。あの巡礼女が悪いのによ。でも客の手前お前さんを叩かにゃあならんのだ。勘弁してくれ」
そういうと、バルバロッサは拝み倒すようにして謝る。
「そんな。バルバロッサさんは悪くないですよ。あやうくお客さんを怪我させそうだった僕がいけないんですから」
「許してくれるか。お前さん、本当にいい子だよ」
バルバロッサはそういうと、チサトをしっかりと抱きしめる。
あまりに強く抱きしめるので、さすがのチサトも苦しくなってきた。
「ば、バルバロッサさん・・・く・・・苦しいです・・・・」
「ああ。悪い悪い。可愛すぎてついつい力入れすぎちまったよ」
「可愛いって僕これでも16ですよ!もう!」
子ども扱いされて、思わずチサトは憤慨する。
「悪い悪い。それより、尻が痛いだろう。医務室連れて行ってやろう」

       ―完―



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