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ダンジュー修道院3 クリスマス

 きよしこのよる 星はひかり
 すくいのみ子は まぶねの中に
 ねむりたもぅ  いとやすく


 ダンジュー修道院の礼拝堂では、オルガンの音色と共に、イエス・キリスト生誕を祝う賛美歌を歌う修道士達の声が響き渡っていた。
今日はクリスマス。
修道院や教会にとって、最も大切な日だ。
そのため、礼拝堂内は普段とは異なり、美しい壁掛けや、飾り布が四方の壁や天井から吊り下げられて飾り付けてある。
銀製の燭台が幾つも並べられ、蝋燭によって堂内は昼のように煌々と照らされている。
礼拝堂奥の壇上で歌っている修道士達も、いつもの黒や藍色の地味な修道服ではなく、今日は白地に装飾を施した祭服を着ている。
また、修道士たちの賛美歌をバックに、壇上では、イエス・キリストの誕生を題材にした劇が修道士たちによって、演じられていた。


 同じ頃、厨房では、修道士達が慌しく動いていた。
彼らは、ミサが終わった後、それを見物に来ているふもとの町の住民や観光客・巡礼などに、あったかいスープや、肉料理、シャンパンをはじめとする酒などを出して歓待し、共にクリスマスを祝うのである。
普段は規則に従って質素な食事をしているが、今日は特別な日であるため、豪華な料理も解禁されている。
そのため、料理自慢の修道士たちは、知恵を絞り、腕によりをかけていた。
この日の為に、普段は使ってはいけない食材などもふもとの町で買い込んできておいてあった。
その中には、チサトの姿もあった。
チサトはケーキ用のパテで一生懸命、ケーキの生地にクリームを塗っている。
少し離れたところでは、バルバロッサが大きな鍋を、木の棒でかき混ぜていた。
どうやら肉のスープらしく、良く煮込まれた肉のいい匂いがチサトの方へ漂ってくる。
「おう、チサト。頑張ってるな」
「はい。皆さんにおいしいケーキ食べてもらいたいって思いまして」
「チサトらしいな。きっとうめえケーキつくるだろうな。楽しみにしてるぜ」
「はいっ。頑張ります!」
バルバロッサに励まされると、チサトはさらにやる気を出して、ケーキにとりかかっていた。


 「おい、誰かラウール知らないか?」
不意に、包丁で魚を捌いていた一人の修道士が厨房に皆に尋ねた。
「いや、知らんぞ。あいつがどうかしたのか?」
「いやあな。ミサの後で行われる晩餐に出すシャンペンを取りに行かせたんだが、まだ戻ってこないんだよ。知らないか?」
皆首を横に振る。
尋ねた修道士は、チサトの方を向く。
「チサちゃん、知らない?」
「僕も知らないです。よければ探してきましょうか?」
「ケーキつくってるのに悪いねえ」
「いいですよ、これくらい」
チサトはエプロンを外すと、厨房を後にした。


 「おかしいなあ・・・。ラウールさぁん!どこ行ったんですかぁ?」
廊下を歩きながら、チサトはラウールの名前を呼ぶ。
ラウールがまだいるかと思い、倉庫に行ってみたのだが、いなかったのだ。
その後、彼の部屋をはじめ、チサトが知っている限りでラウールが行きそうな場所を探したのだが、全然見つからなかったのである。
「本当・・・。どこ行っちゃったのかな・・・・」
チサトはラウールを探しながら、廊下を歩いてゆく。
不意に、チサトはシャンペンの香りを嗅いだような気がした。
「あれ・・・?」
チサトは立ち止まり、静かに鼻で息をする。
すると、間違いなく、シャンペンの香りがしてきた。
「どこからだろう・・・・」
不審に思ったチサトは香りをたどってゆく。
やがて、彼の目の前にあるドアが見えてきた。
そのドアには、チサトは見覚えがあった。
懺悔室だ。
しばらく前に、女性巡礼者を突き飛ばして気絶させたため、ここでバルバロッサからお仕置きを受けたのは記憶に新しい。
(でも・・・何で・・・)
不審に思ったチサトは扉を開けようとする。
だが、鍵がかかっていて開かない。
(あれ?誰もいないのかな?じゃあ何で匂いが?)
考え出したら、頭が疑問符であふれてきた。
「こんなところにいたのか」
不意に、声をかけられ、チサトは後ろを振り返る。
すると、バルバロッサの姿があった。
「あれ?何でいるんですか?」
「何でじゃねえよ・・・。お前まで帰ってこないから、皆どうしたんだって心配したんだよ」
「ごめんなさい・・・。あ、それより部屋の中からシャンパンの匂いがするんです」
「何だと・・・」
言われてバルバロッサはあたりを嗅ぐ。
すると、確かにシャンパンの香りを鼻が捕らえた。
「確かに・・・。読めたぞ・・・。チサト、すぐに鍵を借りて来てくれ」
「はい」
チサトはその場を離れたかと思うと、しばらくして戻ってきた。
その手には、懺悔室の鍵を持っている。
鍵を受け取ると、バルバロッサは扉を開け、中へ踏み込んだ。


 中へ入った二人の目に飛び込んできたのは、空になったシャンパンの瓶。
部屋の片隅では、ラウールがシャンパンの瓶を傾けて中身を飲んでいる。
「誰・・・ってっ・・・・・」
ラウールはバルバロッサの姿を見るや、全身が硬直する。
「や・・・やあ、チサちゃん。何でこんなところにいるの?」
ラウールは笑顔をつくろいながら、チサトに話しかける。
だが、その笑顔はどことなくぎこちない。
「厨房の皆に探してきてくれって頼まれたんですよ。もう、探したんですからね」
「そ、そ、そうだったんだ。ご、ごめんね。い、今行くから」
うわずった声でラウールは部屋を出て行こうとする。
「ちょっと待ったらんかい」
どすの効いた声で、バルバロッサが呼び止めた。
「チサト、悪いが空けてないシャンパンを厨房へ持って行ってくれ。ラウールと話があるから、二人とも遅れるってそう皆に言っておいてくれんか」
「わかりました」
チサトはそういうと、シャンパンを抱えて外へ出てゆく。
あとには、バルバロッサとラウールの二人が残された。


 赤髪の修道士は中身が空になった瓶を一瞥すると、ラウールを見据える。
「で・・・どういうことだ、ありゃあよ?」
「は・・・ははははは・・・・。あれは品質調査ですよ」
「ほう・・・品質調査かい?」
「そうですよ。クリスマスの晩餐に出すんですからね。うっかり古くなってるのじゃいけないよね、ってそう思ってちょっとだけ・・・」
「ほうほう・・・ちょっとだけとなぁ?」
ここで、バルバロッサは再び空になった瓶を一瞥した。
「そうですよぉ。まあ、いささか分量を間違えましたけどね。決して、盗み飲みじゃあないですよ・・・。あははははは・・・・」
「なーるほど、間違えたのかい。こりゃあ傑作だわなぁ・・・」
そういうと、バルバロッサは深呼吸する。


 「ええ加減にせんかい!!」
息を吐き出すと同時に、バルバロッサは大きな声で怒鳴りつけた。
ラウールは鼓膜がギンギン鳴り、思わず両耳を押さえる。
「おう、若えの。あんまり人をなめたらイカンぜよ」
バルバロッサは口調も表情もがらりと変わっている。
「おおっぴらに言えることじゃあねえが、こちとらここの世話になる前は、随分やべえ稼業でメシ喰ってたんじゃい。おかげで他人が言ってることが嘘か本当か簡単に見抜けるようになったわ。そうでなくともお前のどへたくそな言い訳には、赤ん坊でも騙されんわい」
啖呵を切ると、バルバロッサは凄んでみせる。
ラルールは時々ふざけて、バルバロッサのことを「赤鬼」と呼ぶことがあるが、まさにその表現がぴったりといった様相であった。


 バルバロッサに気圧されて、ラウールは思わず後ずさる。
後ずさるや、後ろを振り向き、ドアに向かって一目散に駆け寄ろうとする。
「させるかっ!!」
赤髪の修道士は丸木のようにがっしりした右腕を伸ばすや、青年修道士の詰襟を後ろからひっつかむ。
同時に、腕を引いて、引き寄せた。
ラウールはバルバロッサから逃れようと必死でもがく。
それどころか、顔を爪でひっかき、手や腕にかじりついた。
「こっ・・・このっ。おとなしくしろっ・・・」
バルバロッサは両腕の中で暴れる長髪の若者を片手で押さえながら、もう一つの手を思いっきり振り下ろす。
バアンッ!
猛烈な音と共に、ラウールのお尻にバルバロッサの手が叩きつけられた。
「ぎゃひいんっ!」
ラウールはみっともない声を挙げ、動きが止まる。
間髪入れずにバルバロッサは若い修道士を押さえ込む。
片隅に置いてある椅子に座ると、ラウールを膝の上に載せたのだ。
同時に、上着を捲り上げてラウールのズボンを下ろしてしまった。


 ラウールはお尻がむき出しにされ、冷たい空気を感じるや、手足をジタバタさせ、わめき騒ぐ。
「ごめんなさい~~~。ほんの出来心、イタズラ心だったんです~~~。もうしませんから許して~~~~」
ラウールはなり振り構わず、謝る。
何とか許してもらわないと、辛くてキツイ思いをしなければならないのがわかっているからだ。
「駄目だ。この間も同じことやったばかりだろうが。性懲りも無くやらかしおって」
ハア~~~ッ。
バルバロッサは大きな右手を口元に近づけると、息を吹きかける。
そして、右腕を高々と振り上げると、空気を切る音と共に、振り下ろした。


 バッシインッ!
「~~~~~~」
まるでハンマーで殴られたかというくらい、重い衝撃がラウールのお尻に走った。
あまりの衝撃にラウールは言葉も出ず、バルバロッサの服の裾を掴んで握り締めるのみ。
バシッ! バアンッ! バチンッ! バシンッ!
「はうっ・・・ひゃあっ・・・ひいっ・・・・」
バンッ! バチンッ! バシッ! バアアンッ!
「全く・・・しょっちゅう・・・さぼりおって・・・」
バシッ! バアンッ! バチッ! ビタアンッ!
「ふぎゃあっ! みぎひっ! はぶおっ! ほびゃあっ!」
バシッ! バチンッ! バシィンッ! バッチインッ!
「おまけに性懲りも無く・・・酒の盗み飲みだと・・・」
バシッ! バアンッ! バチィンッ! バアシィンッ!
「だから出来心って言ってるじゃないですか~~~!謝りますから許してよ~~~。何だったら実家に手紙送って飲んだ分弁償してもらいますから~~~~」
ラウールはお尻の痛みに、思わずそう叫ぶ。
彼の実家は富裕な実業家らしく、時々修道院に寄付や援助をしていた。
ちなみに、以前ラウールがチサトを巻き込んで、院の酒を盗み飲みしたときに、開けた分を彼の実家からの寄付で補った。
彼が実家に手紙を送って(最も実際の理由は伏せたようだが)飲んだ分と同量のワインを送ってもらったのである。


 「今・・・何て言った・・・」
バルバロッサは一旦手を止める。
「だ・・・だから実家からまた送ってもらいますって・・・・。そ、それで許して下さいよぉ・・・。ねえ、それでいいでしょう?バルバロッサさぁん」
ラウールは膝の上に載せられたまま、上を振り向くと、涙目で訴える。
その様子には、どこか哀れを誘うものがあった。
他の者だったらここで許すところだっただろう。
だが、ラウールにとって不運なことに、彼をお仕置きしているのは、バルバロッサだった。


 「いい加減にしろ!!」
赤髪の修道士が再び吼えた。
ラウールはその声で耳鳴りがした。
「お前・・・弁償さえすれば許されるとでも思ってんのか・・・」
バアアアアアアアンンンッッッッ!!
いきなり、強烈な一撃がラウールのお尻に響いた。
「ひぎゃああんんっっっっっ!!!!!」
あまりの激痛に、ラウールはえび反りに背中を仰け反らせてしまう。
「なっ・・・何す・・・」
ラウールは抗議しようとして、表情がこわばる。
バルバロッサの表情が今まで見たことないくらい、凄まじい様相になっていることに気付いたのだ。
バルバロッサは本気で怒っていた。
ラウールの発言は、聞き様によっては、弁償さえすればいい、そんな風に言っているように思えるからだ。
バルバロッサには、それが許せなかった。
「今日という・・・今日は勘弁できねぇ・・・。その根性・・・叩き直してやる!!」
バンッ! バシッ! バアアンッ! バッチィンッ!
バルバロッサは今までよりさらに強く叩き出した。
「ぎゃあああ~~~~。も、もうやめて~~~~」
ラウールは耐えられずに悲鳴を挙げる。
「駄目だ!まだまだこんなもんじゃ今日は許してやらん!!」
「そんな~~~~(泣)」
その後、懺悔室内には、喚き叫ぶ声、嗚咽、戻りながら許しを請う声、肌を激しく打つ音、大声で叱り
つける声、などが飛び交い、何とも形容し難い音が響き渡ることになった。


 「うっ・・・ううっ・・・痛い・・・」
一時間半ほど後、一人ぽつんと取り残されたように、ラウールは懺悔室の床の上で、まるで地面にへばりついたカエルのような体勢で、じっとしていた。
むき出しにされたままのお尻は、熟れきったスモモのように真っ赤に腫れあがり、手で触ろうものなら火傷してしまうのではないか、と思えるくらい、カッカッと熱を発している。
晩餐に出すシャンパンを盗み飲みしただけでなく、修道士としてあまりにも不真面目な心構えの罰として、今夜一晩このままの体勢で、懺悔の祈りを行うことを、バルバロッサを通じて院長に命じられたのである。
お尻の熱さと痛みに思わずラウールが顔を顰めていると、そっと扉が開く。
「ラウールさん、ラウールさん」
誰かが入ってきて小さな声で呼びかけた。
ラウールは後ろを振り向くと、チサトが立っている。
「チサちゃん!!」
思わずラウールは声を出しそうになるが、チサトはそれを押しとどめる。
「声が聞えるから駄目ですよ。それより、夜食持ってきました」
チサトはそういうと、修道服の下から、パンを2,3個取り出した。
「ありがとう、チサちゃん。今日の罰で夕食抜きなんだよぉ」
「あと、これも持ってきたんですよ」
そう言ってチサトが持ってきたのは、濡らした布。
「氷の代りになるかわかんないんですけど・・・」
「ありがとう~~。でも、大丈夫。見つかったらチサちゃんまでお仕置きされちゃうよ」
さすがのラウールも心配になって忠告する。
自分のせいでチサトがお仕置きされるのは、さすがに嫌だからだ。
「そ、それじゃあ僕も行きますね」
「うん、気をつけてね」
チサトは誰にも見つからないように、食堂へ戻ってゆく。
ラウールは誰もいないことを確かめると、パンをかじり、布でお尻を冷やしだした。


   ―完―

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