ダンジュー修道院7 チサトの焼きもち



 修道院の参拝ルートの出口近く。
ここに設けられた部屋の中には、机が並んでいる。
机の上には、それぞれのテーブルごとに様々な品が並んでいた。
ある机では修道士達がつくった祈りの道具を、別の机では絵葉書を、あるいはまた他のテーブルでは、院の畑でとれた果物を使ったジャムを売っている。
ここは観光客や巡礼者を相手に、院でつくった品々を売っている売店のようなコーナーだ。ここでの売り上げは修繕など、院の運営のための費用に当てられる。
 数人の修道士が店員として出ているが、ジャムのコーナーにチサトの姿があった。
「おいしいジャムですよ~。どうですか~」
チサトは高めの声で観光客に声をかける。
観光客はチサトの愛らしい姿に惹かれて、足を止め、しげしげと並べられているジャムを見つめる。
チサトは一生懸命な様子でジャムの売込みをする。
その様子にほだされたのか、数人の観光客がジャムを買っていった。
「ありがとうございました~」
観光客が商品を持って出てゆくと、チサトはその後姿に声をかける。

 「おう、結構売れてるじゃねえか」
不意に、誰かが声をかけてきた。
声のした方を振り向くと、チサトは笑顔を浮かべる。
「あっ。バルバロッサさん。どうしたんです」
「ジャムの売れ行きがいいんで、追加持って来たんだよ」
バルバロッサはそういうと、ジャムの瓶が詰まったプラスチックの箱をちょいと持ち上げる。
「ありがとうございますね」
「いいってことよ。並べんの手伝ってやるよ」
二人は箱から瓶詰めジャムを取り出すと卓上に並べだす。
「すいません・・・ジャムを一つ・・・」
「はいっ。待って下さいね」
チサトはそういうと、声をかけてきた女性客に瓶を手渡す。
そのとき、不意に女性客とジャムを並べる作業をしていたバルバロッサの視線が合った。
「バルバロッサ・・・?バルバロッサじゃないの・・・?」
「お客さん・・・何で俺の名・・・ん!?」
バルバロッサは声をかけた女性客の顔をしげしげと眺める。
やがて、彼の表情が驚愕に包まれだした。

「あ・・・姐さん・・・。姐さんじゃあねえですかい?」
「久しぶりね、バルバロッサ」
途端にバルバロッサは両足を開いて腰を落とし、両手を膝に載せた体勢でかしこまる。
「随分ご無沙汰してやした!すいません!」
「そんな畏まらないでちょうだい。ファミリーが無くなった今では私も堅気なんだから」
「いえ、俺にとっちゃあ今でも姐さんは姐さんです。粗相は出来やせん!」
「相変わらず義理堅いのね・・・」
謎の女性は思わず苦笑する。
「ところで姐さんは観光ですか?」
「サンチャゴへの巡礼の途中なのよ。今日は一日こちらにお世話になるわ」
「そうでしたか。そんじゃあ後でうかがいやす。積もる話もありやすし」
「そうね。本当に驚きだわ、ここで会うなんて」
「俺もです」
巡礼の中年女性はそういうと部屋を後にする。
巡礼者用の宿舎へ向かう女性の後姿を見つめるバルバロッサに、チサトが思わず話しかけた。
「バルバロッサさん、お知り合いなんですか?」
「ああ。俺がやくざだった頃、所属してたファミリーの姐さん、つまり親分の奥様だ。随分と世話になったんだよ。ファミリーが無くなった今じゃあ俺同様、堅気になったと聞いてはいたが、まさか会うとは思わなかった」
バルバロッサはそう言うと、嬉しそうな表情を浮かべる。
懐かしい人に会えたからだろうか、どことなく表情が緩んでいた。
その表情を見るや、チサトは何故か面白くない気持ちが起こってきた。

 数時間後、厨房。
チサトは数人の修道士たちと一緒にパン焼きの作業を手伝っていた。
今日は泊まりの観光客や巡礼者が多いので、量が多いのだ。
そのため、食事当番ではないチサトたちも駆り出されているのである。
「ふう、これで間に合いそうだな」
てんてこ舞いで焼けたパンを取り出しながら、食事担当の修道士たちはほっと一息つく。
「本当、今日は巡礼や観光客が多いからねぇ。院としてはお金落としていってくれるから嬉しいけど、用意とかする側としては複雑だな」
「ははは、違いないや・・・」
厨房の修道士たちは思わずそんな会話を交わす。
そのさなか、不意にチサトが口を開いた。
「あの、ジュールさぁん、お願いがあるんですけど」
チサトは今日の厨房担当者にそう話しかける。
「どうしたの、チサちゃん?」
「ちょっとこげが入っちゃったパン、もらってもいいですか?」
「お客さんには出せないから別にいいけど、どうしたの?お腹減っちゃった?」
「いえ。もうすぐ外の仕事からバルバロッサさん帰ってくる頃ですから、持ってってあげようと思ったんです」
「ああ。そういうことね。いいよ。あっ。そうだ。どうせなら缶ビールも一つ持ってってあげなよ。ラウールがこっそり持ち込んで飲もうとしてたの没収したやつがあるから。一仕事した後の一杯ってのは格別だからねぇ」
そういうと、年配の修道士たちは、皆そういう気持ちがわかるのか、一同によだれをたらしそうな表情を浮かべる。
「ありがとうございますね。それじゃあもらってきますね」
チサトはパンと缶ビールをもらうと、清潔な布巾に包み、木製のお盆に載せると厨房をあとにした。

 (バルバロッサさん、喜んでくれるかな?)
チサトは一息ついたバルバロッサの嬉しそうな表情を思わず想像する。建物の外に出たチサトは、正門へ続く小道を歩いてゆく。
バルバロッサは森へ山菜を取りに行っているからだ。
やがて、向こうから、山菜の入った籠を背負うバルバロッサの姿が見えてきた。
「あっ!バルバ・・・」
声をかけようとしてチサトは口をつぐんだ。
バルバロッサに歩み寄る女性の姿があったからだ。
近づいてきたのは、バルバロッサが姐さんと呼んでいた中年の巡礼者だ。
二人は昔の思い出でも話しているのか、楽しげな雰囲気だ。
ときどき、お互い笑みを浮かべているのが、何よりの証拠だった。
「む~~~~」
チサトは無意識のうちに唸っていた。
その表情は不機嫌そのものだった。
「あれ?チサトじゃねえか。どうしたんだ、一体?」
ようやく、バルバロッサが気付き、チサトに声をかけてきた。
「ちょっとこげちゃったパンと缶ビールもらってきたんです。疲れてるだろうと思って」
チサトは不機嫌さが混じった声で、そう言った。
「そりゃあすまねぇなぁ。ん、どうした?そんな怖え面して」
さすがに、バルバロッサもチサトの様子がおかしいことに気付いたらしい。
思わず、怪訝な表情を浮かべる。
「だって・・・僕・・・もう四、五分ぐらい前からいたんですよ・・。それなのに・・気付かなかったんですか?」
思わず、チサトは詰問するような調子で話す。
「いや、すまん。つい、姐さんと話が弾んでな。それより本当にどうしたんだよ?何怒ってんだ?」
「怒ってませんってば!!」
普段のおとなしいチサトからは想像も出来ない大きな声で、チサトは叫んだ。
「って怒ってるじゃねえかよ」
思わず、困惑した声でバルバロッサが話しかける。
「いいですよ!もう!ほっといて下さい!!」
そういうや、チサトは持っていたお盆をバルバロッサめがけて放り投げた。
「うわっ。危ねっ!」
とっさにバルバロッサは身をそらして避ける。
バルバロッサがかわしたために空ぶったお盆やパンは一緒にいた姐さんの身体に命中する。
「あ!姐さん!?大丈夫ですか」
とっさにバルバロッサは駆け寄る。
「ええ。大丈夫よ。それより、あの子を追わなくていいの?」
「へ?ってあああっ!チサトッ!どこ行くんだっ!」
バルバロッサは後ろを振り向くや、チサトが中庭に向かって走り去ってゆくのを目撃した。
「速く行ってあげなさい!」
「へ・・へぇ。すいません、姐さん」
そう言い置くと、バルバロッサは後を追いかける。

 チサトは中庭に辿り着くと、片隅に腰を下し、うずくまる様にして地面に座り込んだ。
「バルバロッサさんの・・・馬鹿・・・」
チサトは目尻にうっすらと涙を浮かべてつぶやいた。
チサトとてバルバロッサの気持ちがわからないでもない。
誰だって昔の知人に出会えば驚いたり嬉しいだろう。
だが、あんなに楽しそうな様相を見せるバルバロッサは見たことが無かった。
(あの女の人といる方が楽しいんだ)
そう思うと悔しくてたまらなかった。
「おい・・・チサト・・・」
ようやくバルバロッサが現れた。
「全く・・何してるんだよ・・・。おい、こんなところに蹲ってないで、早く立つんだ。姐さんに謝りに行くぞ」
バルバロッサはそういうと、チサトの手を取ろうとする。
だが、チサトはバルバロッサの手を振り払った。
思いもよらない行動にバルバロッサは思わず目をしばたたかせる。
「チ・・チサト・・・?」
「嫌です。絶対あの人には謝りませんから」
「お・・・おい、何を言ってるんだよ・・・」
「やだったら嫌です!!バルバロッサさんの馬鹿っっ!!」
そういうとチサトは石を拾って投げつけようとした。
「いい加減にしろっっ!!」
さすがのバルバロッサもこらえかね、怒りの声で叱りつける。
同時に石を持ったチサトの手をつかんでねじ伏せた。
「何か変だぞ!一体どうしたんだ!?」
「バルバロッサさんには関係ないですよ。早くあの女の人のところに戻ったらどうです?」
「だから何でそこで姐さんが出てくんだ!?」
さすがのバルバロッサもわけがわからないという感じで問いかける。
「わからなきゃいいですよ!ほっといて下さい!」
チサトはそう言い捨てると、その場から去ろうとする。
だが、バルバロッサに捕まえられているため、動けない。
「離して下さいよ、もう!」
「駄目だ。人様に物投げつけるなんて失礼なことしたんだぞ。謝るまで離さんからな」
「嫌です」
「我儘もたいがいにしないか!?」
「バルバロッサさんの馬鹿――――ッッッ!!!!」
チサトはそう言うや、自由な左手を振り上げる。
振り上げるや、バルバロッサの顔面めがけて思い切り振り下ろした。
パチィンッ!
チサトの平手は見事なまでにバルバロッサの顔を正面から打ち叩いた。
体格的には華奢だし、体重もそんな重い方ではないからバルバロッサの顔面を襲った痛みはそんなに強くはない。
しかし、何とか抑えていた怒りが完全に湧き上がったのだろう、叩かれたその顔は熱した鉄のように真っ赤だった。
「我儘言った上に逆切れして叩くたあ・・・いくらチサトでも勘弁できねぇからな・・・」
「あっ・・・」
チサトはやりすぎてしまったことに気付く。
チサトはバルバロッサの全身から、怒りのオーラが噴き上がるのを感じた。
慌てて彼は逃げようとする。
だが、力強い両手ががっしりとチサトの身体を捕らえてしまった。
次の瞬間には、チサトは片膝をついたバルバロッサの膝に載せられていた。

 「やっ・・・いやあっ・・・」
チサトは怯えた様子を見せ、手足をばたつかせる。
「こら!暴れるな!」
バルバロッサは大声で叱りつけると、チサトの上着を捲り上げ、ズボンを下ろしてしまう。
あっという間に白くて滑らかなお尻が露わになった。
バアアアアアンンッッ!!
不意打ちのように、強烈な一撃がチサトのお尻を襲った。
「きゃああっっ!!」
チサトはその痛みに甲高い声を上げる。
バチィィィ! バアアアンッ! ビシィィッッッ!
「きゃああっ!・・ひゃああっ!・・痛あっ!」
バシィンッ! バシィィィ! パアアアンッ!
「全く・・・人にもの投げるわ・・・」
バシィンッ! バアアンッ! バチィンッ!
「ひゃああっ!・・やああっ!・・ひぎぃっ!」
チサトは大きな声で叫ぶ。
叫びながら、両足をジタバタとばたつかせていた。
「おまけに・・謝らねえわ・・・」
バアアンッ!・・バシィンッ!・・バチィンッ!
「いやああっ!・・やああっ!・・ひぃいぃんっ!」
鼓膜に響きそうなくらい大きな音と共に手が振り下ろされ、チサトのお尻に大きな手の跡を幾重にもつけてゆく。
一打ごとに、チサトの悲鳴は甲高くなっていった。
「さらには・・・我儘言って・・逆切れまでするたあどういう了見だっ!!」
バアアンッ!・・バシィンッ!・・バッチィンッ!
「ふ・・ぇ・・・ひっく・・うぇぇ・・・」
バルバロッサの膝の上で、チサトは小さな子供のように嗚咽し、泣きじゃくる。
お尻は既に熟れたトマトのように真っ赤になり、二周りは腫れ上がっていた。

 「痛えか、チサト?」
バルバロッサは手を一旦止めて尋ねる。
クスンクスンと泣きつつも、チサトは首を縦に振る。
「ならそろそろ『ごめんなさい』の一言があってもいいんじゃねえのかい?」
バルバロッサはそろそろ許してやろうという気になっていた。
だから、助け舟を出してやったのである。
が・・・。
「嫌です!!」
チサトは断固とした声で、きっぱりと言い切った。
「何だと?」
バルバロッサは思わず信じ難いといった表情を浮かべる。
チサトが自分の非を全然認めないとは思いもよらなかったからだ。
「絶対謝りません!僕は悪くないんですから!」
さらに強い声でチサトは言い切った。
さすがのバルバロッサもチサトの声の強い調子に、一瞬、気圧されそうになる。
「本気か、おい?」
バルバロッサは自分の片膝に乗っている少年修道士に思わず問いかける。
チサトは後ろを向くとバルバロッサを非難するような目を向ける。
(何でそんな目で見るんだ!?)
思わずバルバロッサはそう叫びたくなった。
自分に非があるとは到底思えなかったからだ。
だが、それよりもこの強情さには参った。
許すきっかけが全くつかめなくなったからだ。
「だったらまだ叩くぞ?それでもいいのかよ?」
「どうぞ。あの人に謝るぐらいなら、お尻が壊れる方がずっといいです!!」
断固とした調子でチサトは言い返した。
「そうかい・・・。なら容赦しねえからな・・・」
バルバロッサの目がいつの間にか据わっていた。
同時に、声のトーンも変わっている。
本気で怒っているのは雰囲気で察せられた。

 バアアンッ! バシィンッ! バアアンッ!
「きゃあっ!・・ひいっ!・・ひぎいっ!」
バシッ! バアチィンッ! ビシィィッ!
「きゃああっ!・・やああっ!・・いやあっ!」
バルバロッサはチサトが悲鳴をあげようが、泣き喚こうが容赦なく大きな手をお尻に叩きつける。
「全く・・・ちっとは謝る気になったかよ?」
叩きながら、バルバロッサは尋ねる。
「い・・や・・で・・す・・・」
チサトは息を途切れさせつつも、頑固に貫く。
舌打ちの音と共に、バルバロッサの手がチサトのお尻を襲った。
バシッ! バチィンッ! バアアンッ!
「きゃあっ!・・ひゃああ!・・ひいいんっ!」
バチィンッ! ビシャアンッ! バッシィンッ!
「何で・・・謝れないんだよっ!悪いことしたのは誰だっ!」
大きな声で怒鳴りつけながら、バルバロッサは手を振り下ろす。
チサトの強情さにすっかり豪を煮やしていた。
「だって・・・だって・・・」
「だってじゃない!何で素直に謝れねえんだ!?」
バルバロッサは大声で責めるように言う。
「だった・・ら・・言いますよ・・・。バルバ・・・ロッサ・・さんのせいですよ・・」
その言葉にバルバロッサの手が止まった。
「俺のせいだと?どういうことだ?」
バルバロッサが尋ねると、チサトは今まで我慢してきたものがはち切れたのか、わっと叫ぶと堰が切れたようにしゃべりだした。
「くやし・・・かったんです・・。あの女の人と・・・バルバロッサさんが・・・楽しそうに話しるのを見て・・・。昔の知り合いだってわかってても・・・僕といるより・・あの人といる方が・・・楽しいんだ・・・。そう思うと・・・悔しくて・・むらむらといやな気持ちが怒ってきて・・・ふぇ・・・えっ・・・うっうっ・・・」
チサトはそれだけ言うと、泣き出した。

(なるほど・・・焼きもちか・・・)
ようやく、バルバロッサは事情を理解した。
自分をとられたような気持ちをチサトが抱いたのだろう。
焼きもちなら、素直に謝れなどという方が無理な話だ。
バルバロッサは今まで抱いていた怒りがスーッと消えてゆくのを感じた。
同時に、チサトにたまらない愛おしさを感じた。
(こんなにも俺のことを慕ってくれてたのか)
バルバロッサはチサトを膝の上から降ろすと、太い両腕でしっかりと抱きしめた。
「バ・・バルバロッサさん・・・?」
「ごめんな・・・チサト・・・。焼きもち焼くくれえ俺のことを大事に思っててくれてたんだな・・・。すまねぇ・・・」
「も・・・もう・・怒ってないですか・・・?」
「怒ってねぇよ。こっちこそお前に謝りてぇ」
「いえ、バルバロッサさんは悪くないですよ。僕が勝手にやきもち妬いて、我儘言っただけなんですから・・。それより僕こそごめんなさい・・・。バルバロッサさんのお知り合いにあんなことして・・・」
「いいんだよ。んなこと・・・。それより尻が痛ぇだろ?すぐ医務室連れてってやるからな」
「で、でもあの人は?」
「そんな心配はしなくていい」
バルバロッサはそういうと、チサトを抱き上げ、医務室へ連れて行った。

 「チサト・・・ケツ、大丈夫か?」
チサトのお尻に薬を塗ってやりながら、バルバロッサは尋ねる。
「ちょっと・・痛いけど・・・大丈夫です」
医務室のベッドの上でうつ伏せになったまま、チサトは答えた。
「そりゃ安心したぜ・・・」
バルバロッサが安堵の表情を浮かべる。
「ちょっと待ってろ。今、氷とって来てやるからな」
そういうと、バルバロッサは医務室を後にし、厨房へ向かった。

 厨房へ向かう廊下を歩いていると、バルバロッサは向こうから、姐さんこと例の女性が来るのに気付いた。
「姐さん、すいやせん。ほったらかして」
「いいのよ。それよりあの子は?」
「へぇ、今は医務室で尻の手当てしてます。俺が尻引っぱたいたもんで。後で謝らせますんで」
「別にそんなことはいいのよ。それより、安心したわ」
「安心?」
「ええ。ファミリー内でも随一の暴れ者、赤髪バルバロッサが真っ当に修道士やってるんですもの。組が無くなった後、昔の若い衆がどうなったか、色々心配だったけど、一番があなただったのよ。どう見てもヤクザ以外には向かないような人間だったでしょ?」
「否定は・・・しやせんね・・・」
バルバロッサは苦笑する。
昔の彼は相当な暴れ者だったからだ。
彼女の言葉を否定しようにも無理だった。
「それが正反対な仕事してるんですもの。びっくりったらないわ」
「へい。幸いここの人たちゃええ人ばっかだったんですわ。俺みたいな奴でも受け入れてくれましたんで」
「そうね・・・話してみてわかったわ」
「おかげで俺も変われました」
「わかるわ。あんな子供に心底懐かれてるんですからね」
「へい。俺にはもったいないぐらい、いい子ですわ」
「本当にね・・・」
その女性はそこで一旦言葉を切る。
「バルバロッサ、あの子、大事にしてあげなさい。泣かすようなことするんじゃあないわよ」
「へい、わかってやす」
「わかったらさっさと戻ってあげなさい。お尻が痛くて泣いてるかもしれないでしょ?」
「そうでした。すぐ行かねぇと!」
バルバロッサはそういうと、厨房へ向かって走ってゆく。
「本当・・・すっかり変わったわね」
巡礼の女はバルバロッサの後姿を見ると、密かに微笑みながら、言った。

 ―完―



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