ダンジュー修道院37-1 火車のオザワ1(バイオレンス・アダルト要素あり)



(バイオレンス・アダルト要素ありです。許容出来る方のみご覧下さい)


 ザァァァァァァァァ・・・・・。
どしゃ降りの雨が降り注ぐ中、森を歩く男の姿があった。
男は40代前半、髪や瞳、肌の色がアジア系であることを示している。
髪は高校球児のように短く切っており、整っているが、精悍さと剣呑さが混じり合った面立ちをしている。
ドーベルマンを思わせるすらりと引き締まり、無駄なく鍛え上げられた身体を高そうな暗色系のスーツに包んでいる。
だが、そのスーツはあちこちが切り裂かれ、所々出血している。
深い傷もあるのだろう、歩きながらポタポタと赤いものが地面に滴り落ちていた。
歩く中、不意に視界が朦朧とする。
(まだ・・まだ・・早い!!)
オザワは自身を叱咤しながら、上着の内ポケットから何かを取り出す。
取り出したのは小さな十字架。
首にかけて用いるタイプのものだ。
十字架を見つめていると、オザワの目が怒りと憎悪の炎を燃え上がらせる。
しばらく見つめているうちに意識がまたはっきりし始めると、オザワは再び歩き出した。
 (まだかなぁ・・・・)
廃屋となった森番小屋の中で、チサトは心配そうな表情を浮かべていた。
(ラウールさんにも困っちゃいますよね・・。何度も叱られてるのに・・・どうして・・)
チサトはラウールの顔を思い浮かべると、ため息をつく。
今夜もまた、懲りずに街へ夜遊びに出かけているのだ。
それで、いつものように、街へ出かけるときの着替えや遊びで稼いだ金品の隠し場所として使っているこの小屋で帰りを待っているのである。
 (雨が・・・ひどいなぁ・・・。大丈夫かなぁ・・?ラウールさん?)
窓の外では、大粒の雨が地面に叩きつけるように降り注いでいる。
念のためと思って折りたたみ傘を持っていったようだが、傘をさしていてもこの天気では大変だろう。
 不意にギシギシと扉が開く音に気づくと、ハッとしてチサトは振り返る。
「ラウールさん、遅かったじゃ・・・」
入って来た人物を見るなり、チサトはハッとする。
 現れたのは見知らぬ男。
どう見ても剣呑な雰囲気で、しかも拳銃まで持っている。
 一方、オザワも目の前に現れた、修道士らしい若者に一瞬だが、我が目を疑うような素振りを見せる。
だが、すぐに冷徹な裏の人間の顔に戻った。
「騒ぐな・・・本・・・物だ・・・」
オザワは、そう言いながら、手にしたマカロフ拳銃を見せつける。
拳銃を握ったまま、オザワはゆっくりと入ってくる。
拳銃を前にし、さすがに後ろへ下がるが、チサトはオザワの身体から血が滴り落ちていることに気づく。
「け・・怪我・・してるんですか・・・?」
「黙・・・れ・・・」
対してオザワは威圧的に命令するが、顔を苦痛に歪め、片膝をつく。
「い、医者を呼ばないと!!」
オザワが怪我をしていることに気づくや、チサトは外へ出ようとする。
 「騒ぐな・・と言ったはずだ!」
オザワは出て行こうとするチサトを後ろから襟首を掴んで引き戻すと、顔に真っ正面から拳銃を突きつける。
 「呼んだら・・撃つ・・」
オザワは荒い息を吐きながら、脅迫する。
その目は、言ったことを本当に実行する、狂暴な意思に溢れていた。
それが伝わり、チサトも恐怖に身が震える。
だが、恐怖に身を震わせつつも、滴り落ちる血が、チサトを突き動かす。
 「そ・・そういうわけにはいきません!せ、せめて・・手当てを・・・!!」
「聞こえんのか!!何もするな!殺され・・・・ぐぅぅ・・」
チサトの態度に苛立ったオザワが、思わず暴力的な行為に移ろうとした瞬間、不意にオザワが呻いた。
苦痛の声と共に、男の身体はゆっくりと崩れ落ちる。
 「どうしたんですか!?しっかりして下さい!!」
チサトは目の前のオザワに必死に呼びかける。
だが、オザワの目は焦点を失ったようにトロンとしている。
やがて、そのまま目を閉じたかと思うと、オザワは意識を失った。


 いつの間にか、オザワは教会にいた。
オザワはゆっくりとあたりを見回し、怪訝に思う。
自分がよく知っている、だが、もう二度と訪れることの無い教会だったからだ。
 不意に、礼拝堂の床に、何かがあることに気づく。
途端に、オザワの表情が変わり、懐からマカロフ拳銃を取り出すと、銃を構えながら、ジリジリと接近してゆく。
やがて、オザワは見つけたものの前までやってきた。
 それを見るや、オザワの顔から血の気が引く。
そこに倒れていたのは10代後半から20代初めらしい若者。
神父服姿であることから、教会の関係者であることが容易に想像できた。
 倒れている神父は、緑色の髪と瞳、愛らしい感じの面立ちと、どことなくチサトに似ている。
だが、その顔は今や恐怖と苦痛に硬直しきっていた。
喉には切り裂かれた跡があり、完全に息絶えてしまっている。
さらに、服は乱暴に引き裂かれ、その下からあらわになった身体には、凌辱の跡。
 オザワはゆっくりと、両膝をつくようにして崩れ落ちる。
背をのけ反らせ、天井を見上げ、オザワは声にならない叫び声を上げた。


 目を覚ましたオザワの目に飛び込んで来たのは、見知らぬ天井だった。
思わずオザワは身体を起こし、周囲を見回す。
質素で最低限の調度品だけが置かれた、簡素な部屋だった。
目立つものがあるとすれば、壁際に設置された、祈るための小さな祭壇らしきもの。
祭壇には、幼いイエスを抱いた、聖母マリアの像が置かれていた。
それを見ると、オザワの顔は様々な感情を併せ持った複雑なものへと変わる。
 オザワは身体がスースーすることに気づくと、自身の身体を見やる。
すると、上半身が裸になっており、包帯や大型の絆創膏が貼られている。
「気がつきました?」
不意にかけられた声に振り向くと、そこにはチサトの姿があった。
 「お前・・・・・」
オザワは廃屋で、自分が銃を突きつけた若い修道士だと気づく。
「大丈夫ですか?どこか痛いところはありませんか?」
チサトは心配そうな表情で尋ねるが、オザワはそれを無視して口を開く。
 「銃はどこだ?」
その言葉に、チサトは緊張した表情を浮かべる。
「何の・・ためです?」
「お前には関係ない。返せ」
「そ・・・そういうわけにはいきません!!」
「貴様・・・。覚悟があって言ってるのか?俺がどういう人間かは、これでわかるだろう?」
そう言って、オザワは背中を見せる。
その背中にあったのは、牛や馬の頭と人の身体を持つ恐ろしげな怪物たちが引く、炎が燃え盛る車。
車には人が罪人のように縛られて乗せられ、炎に悶え苦しむ姿が描かれている。
悪人が死ぬ際、地獄から迎えにやって来る火車(かしゃ)を描いた刺青だった。
 オザワは20年くらい前に日本から渡ってきたヤクザの一員だった。
詳しいことは不明だが、彼の所属する組が当時海を渡ってヨーロッパへやって来た。
ヨーロッパの裏社会へ食い込もうと在来勢力との抗争を繰り広げるも、組は壊滅、生き残った者たちも散り散りとなる中、オザワはフランスへ潜伏、そのままフランス裏社会へと根を下ろした。
そして、現在に至るまで裏の世界で生きて来たのである。
 母国を追われ、新たにやって来た土地でも組が壊滅するという事態になっても、留まって生きて来たのだ。
なまじの男ではない。
実際、オザワに一睨みされ、チサトは震えあがってしまいそうになる。
だが、それでもチサトは決意を変えない。
 「だ・・・ダメです!だ、誰かを撃ちに行くんでしょう!?そんなこと・・させるわけにはいきません!!」
「なら・・お前が死ぬか!?」
狂暴さをむき出しにしたオザワが片手を突き出したかと思うと、そのままチサトの首を引っ掴み、絞め上げにかかる。
万力のような強烈な力に、チサトは息がつまり、苦しげな表情を浮かべる。
「さぁ!銃を出せ!!」
オザワは本気で首を絞める。
「ダメ・・・ダメ・・です・・。そんなこと・・したら・・・。怪我・・してるのに・・。今・・出て・・いったら・・もっと・・ひどく・・・」
「渡さんとお前が死ぬぞ!」
さらにオザワは首を絞めにかかる。
「こ・・殺し・・たければ・・・殺して・・下さい・・。でも・・銃は・・決して・・・渡し・・ません・・・」
チサトは必死になって言う。
その言葉に、オザワはチサトの決意を読み取る。
 「チ・・・!!」
舌打ちすると、オザワはようやく手を離す。
自由の身になると、チサトはハァハァと荒い息を吐く。
だが、オザワも傷が痛むのか、表情が苦しげなものに変わる。
 「だ、大丈夫ですか!?」
そんなオザワに、チサトは慌てて駆け寄ろうとする。
「触る・・な!!」
だが、オザワは邪険にチサトを押しのける。
「で・・でも・・・」
「また絞め上げられたいのか!さっさと出て行け!!」
「わ・・わかりました。で・・でも・・・後で・・様子・・見に来ます・・から・・」
「うるさい!さっさと行け!!」
オザワは苛立ちをあらわにしながら言う。
さすがにチサトもこれ以上はまずいと判断したのか、慌てて部屋を飛び出した。
 「クソ・・・・」
チサトが去ると、オザワは舌打ちする。
(俺としたことが・・・)
そう思わずにはいられなかった。
 部屋の様子から、オザワは自分がいるのが、巡礼者や観光客が集まる大きな修道院や教会の宿泊施設だと、想像がついた。
また、先ほどのチサトの様子や、手当ての跡から、自分がチサトに助けられたことも。
 (甘い・・・甘すぎる・・・)
オザワはチサトに対する自分の素振りにも、舌打ちせずにはいられなかった。
日本人ながら、この国の裏社会でオザワは名の通っている男だ。
自分の目的のためなら、他人を痛めつけ、殺すことなど平気でやる。
実際、今までどれだけの血を流させて来たか、本人にも全くわからない。
 にも関わらず、チサトにはそれが出来なかった。
(こんなことで・・・果たせると・・思うのか!あの子の・・・恨み!苦しみ!痛み!それを・・・思い出せ!!)
組が潰され、多くの仲間が現地組織のヒットマンの手にかかる中、オザワがヨーロッパから逃げずに、20年近くに渡ってこの国にとどまり続けた理由。
それこそが、夢に現れた神父姿の若者だ。
彼のために留まり、手を汚し続けてでも金を稼いできた。
 だが、その彼ももはやこの世にない。
今、オザワに残されたのは、憎悪と復讐心。
どんなことをしてでも、凌辱した上に命まで奪った者たちに復讐をするつもりだった。
 (それを・・何てザマだ!!)
オザワは自身を叱咤する。
目的を果たすために銃は絶対必要なもの。
必ず取り返さねばならない。
だが、あの修道士の苦しむ顔を見ているうちに、手を緩めてしまった。
重なって見えたからだ。
 (あの子が死んだのはこの目で見ただろう!他人の空似だろうが!!)
オザワは自身を罵るが、どうにもチサトの顔がチラついてたまらない。
その時、ドアの前で気配がした。
 オザワは緊張した面持ちでドアに近づく。
恐る恐るドアを開けると、床にサンドイッチや牛乳を載せたお盆が置いてあった。
(食えということか・・・・)
オザワはお盆を持って中へ戻る。
 一瞬、何か仕込まれているのでは、という疑念に駆られたが、身体の欲求には逆らえず、ガツガツと食べ始めた。


 (よかった・・・休んでるみたい・・・)
食べ終わった後のお盆を回収し、恐る恐る様子を伺って眠っていることを確かめたチサトは安堵する。
 (でも・・どうしよう・・・・)
廊下を歩きながらチサトは困惑した表情を浮かべる。
素人のチサトにも、オザワが危険な稼業の人間なのはすぐにわかった。
本当ならば、関わりを持たない方がいいに違いない。
 しかし、傷を負って倒れたオザワをどうしても放っておけなかった。
ようやく帰って来たラウールと共に、必死になって修道院の巡礼者・観光客用の宿坊の空いている部屋へかつぎ込んだ。
幸い、チサトが世話や掃除を担当している部屋だから、他の修道士達にばれてはいない。
とはいえ、いつまでも隠し通せるか、自信は無かった。
 「チサちゃん、チサちゃん」
不意にこっそり呼びかけるようにしてラウールが話しかけてきた。
「どうしたんですか?」
「どうしたじゃないよ。さっき、警察が来たんだよ~」
「ええ!?」
ラウールの返事にさすがのチサトも表情が変わる。
 「ば、ばれたんですか!?」
「いや。それは大丈夫。うまく隠したから」
「そうですか。よかった・・・・」
「よかったじゃないよ~!警察よりもっとマズイよ!あいつの方が!警官の話だと『火車(かしゃ)のオザワ』とかいうあだ名がついてるくらい、そっちの方では有名らしいんだよ!しかも・・・最近、どっかのマフィアのボスだか幹部の別荘を襲撃して何人も撃ち殺したんで、マフィアからも追われてるらしいんだよ~~!!」
「えええ!!??」
ラウールの言葉にチサトはますます驚く。
 「ねぇ、チサちゃん。やっぱり・・警察に・・。せめて・・・体よく追い払っちゃおうよ!!」
「何言ってるんですか!そんなこと出来ません!!」
対して、チサトは珍しく大きな声を上げる。
 「相手がどんな人でも、そのまま放っておくわけになんかいきません!それに・・・。あの人は・・・誰かを撃つつもりです!そうしたら・・あの人にさらに・・罪を重ねさせて・・・いや・・・それだけじゃありません!あの人も・・殺されます!!そんなこと・・させたら・・・ダメなんです!!」
「わ・・わかったよ・・・」
ラウールも、説得は無理だと諦める。
 「すみません、ラウールさん」
「いいよ。チサちゃんのことだから、そういうと思ってたから。わかったよ。僕も何とかするから。だから、チサちゃんはあいつの面倒見てあげなよ」
「本当にすみません」
「いいんだよ、僕とチサちゃんの間なんだしさ」
そういうと、ラウールは立ち去った。
 (どういう・・・事情かは・・わからないけど・・。でも・・・)
例え、人を殺した悪人でも、傷つき苦しむ者を放っておくわけにはいかない。
それに、チサトはオザワがただの悪人とは思えなかった。
 (うなされてたとき・・・あの人は・・本当に・・悲しそうだった・・・。それに・・)
チサトはベッド脇のテーブルに置いた十字架を思い出す。
あの十字架をオザワは大事そうに持っていた。
オザワのような男が自分からああいうものを身につけるのは考えにくい。
大切な人からの贈り物だったのかもしれない。
 そして、まだ気を失っている間、夢を見ていたのだろう、オザワの口からある名前が連呼されるのも聞いた。
夢の中で何度も呼ぶのだ、きっと大切な人だったに違いない。
(僕に・・・どれだけのことが・・出来るか・・・わからないけど・・・でも・・!!)
チサトは、身も心も傷を負っているオザワのために、出来ることは全てしようと決意を新たにした。


 同じ頃・・・・隣町の繁華街にある中規模のビル。
「む・・むうっうぅぅ!!むっむっむっ!!」
「それぇ!ひゃはぁ!どうだ!どうだっ!!」
ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
苦痛に満ちたくぐもった声、他人をいたぶることに喜びを見出している歪んだ声、鞭が肌を打つ音が室内に響きわたる。
 苦悶の声の主は20代前半くらいの青年。
猿ぐつわを咬まされ、両手首を紐で縛られて抵抗出来なくされている。
身にまとった神父服と、首から下げたロザリオから神父と想像できた。
 神父らしい青年はテーブルに上半身をうつ伏せにし、お尻を突き出した体勢を取らされている。
上着は捲りあげられ、ズボンは下ろされており、むき出しになったお尻には鞭の跡。
あまりにも過酷な鞭打ちを受けたせいか、出血までしてしまっていた。
 「クフフフフ・・・」
神父の背後には、一人の男が笑みを浮かべて立っていた。
男はオザワと同年代かもう少し年上、同じアジア系で、こちらはオザワよりさらにすらりとしてより長身で、何だか蛇のような感じだった。
上着を脱ぎ捨てて半裸になっているため、背中に刻まれた刺青が汗ばみながら映っている。
その刺青は、罪人を様々な器具で責め立てる鬼の姿を描いたものだった。
 男の名はヤマダ。
オザワ同様、20年ほど前に欧州へ渡って来たヤクザの一人だった男だ。
こちらも組織が壊滅した後、逃げ出さずにそのままヨーロッパの裏社会に根を下ろした男だった。
 だが、一匹狼の道を選んだオザワとは異なり、こちらはうまく立ち回って在来の組織の構成員となることに成功した。
その後、着々と自身の勢力を増し、自身の組織を手にした上、幾つかの下部組織も抱えるまでにのし上がった。
 「いいぞ・・・いいぞ・・・。尻を叩かれ、苦悶に悶える若く美しい神父・・・最高だぁぁぁぁ・・・・・」
ヤマダは手にした鞭を舐め、嗜虐的な笑みを浮かべる。
「ヒィハアッ!ハァハアッッ!!」
狂ったような笑みと共に、男は鞭を振り下ろす。
鞭は神父のお尻に叩きつけられ、さらに血を流す。
鋭い鞭の音と共に、神父のお尻が切り裂かれ、さらに血が流れ落ちる。
 「ハァハァ・・・。神父の・・・血ぃぃぃ・・・」
危ない光を目に宿し、ヤマダは血まみれのお尻を舐めまわし始める。
散々舐めまわした末にようやく飽きたのか、顔を離す。
顔を密着させて舐めたものだから、顔が血に染まって凄いことになっていた。
 「さてと・・・シメといくか・・・・」
ヤマダは残酷な笑みを浮かべると、チャックを降ろして自身の欲望器官を出す。
そして、腰を押さえると、思い切り腰を進めた。
 「ん・・!!んむぐぅ!!むぐっ!むっ!むっ!むっ!!」
神父は無理やりに中へ侵入され、苦痛に顔を左右に振るう。
「ハッハアッ!いいぞっ!いいぞぉぉ~~~!!!」
神父の苦しみをよそに、ヤマダはさらに犯し続ける。
 「うほおっ!締まるっ!締まるゥぅ!やっぱり・・・若い・・神父は・・最高だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
狂った笑みを浮かべながら、ヤマダが叫んだときだった。
 不意にポケットの携帯電話が鳴った。
「あー?何のつもりだ?今は電話入れるなと言ってあるだろうが!!」
不機嫌極まりない声で、男は携帯に向かって言う。
 「すみません、ボス。ですが、オザワのことで報告があるそうです」
「チ・・・仕方ねえ。通せ」
電話を通して命令すると、ようやく男は神父から自身を抜きとる。
 「おぃ!いつまで寝てんだ!さっさと出てけ!!」
自分が散々にいたぶっておきながら、ヤマダは非情なことを言いやると、神父を無理やり起き上がらせ、蹴飛ばし、小突きながらドアまで引き連れていき、乱暴に追いだした。
 「おぃ。逃げねえように閉じ込めておけ!」
ドアの外に立って見張りをしていた、いかにも強面の男達にそう命令すると、一人が傷ついた神父を担ぎあげて下の階へ連れてゆく。
 「クソ・・・!!」
楽しみを邪魔され、ヤマダは不機嫌極まりない表情を浮かべる。
ヤマダは非常に歪んだ嗜好の持ち主で、若く美しい青年や少年、特に神父や修道士を好んでいた。
そういう若く美しい聖職者をいたぶり、レイプして泣き叫ぶ姿を見る。
それが、何よりの楽しみだった。
逃げずにヨーロッパに残ったのも、うまくこちらで権力を得て自分の歪んだ趣味を満足させるためだった。
実際、先ほど犯していた神父は、騙して借金を背負わせ、自身の性奴隷としたのである。
自分好みの若く美しい神父を奴隷とし、飽きるまでいたぶっては、ゴミくずのように捨てる。
そんな所業を繰り返していた。
 (そういや・・・あいつも飽きたよなぁ・・・。あと一、二回くらい犯したら殺すか)
葉巻を吸いながら、ヤマダは吐き気を催すようなことを考える。
そんな中、ヤマダ自身の部下と共に、一人の男が入って来た。
 入って来たのは身なりのいい白人の男。
このビルの持ち主でヤマダの部下だ。
元々は独立した組織のボスだったが、中小組織がうまくやっていくためには、大組織の庇護が必要だった。
そのため、ヤマダの傘下に入り、手先として使われている日々だった。
「で、どういうことだ?」
ヤマダはふんぞり返って配下に尋ねる。
「はい、部下が探って来たんですが、オザワの野郎はどうも隣のダンジュー市に逃げ込んだそうです」
「ダンジュー市?あん?でっかい修道院があるって街か?」
「はい。俺の部下にちょうど向こうで商売やってるやつがいるんで、探らせているところです」
「ふん・・。まあいい。とっとと探して来い」
「はっ。失礼します」
そういって部下が立ち去ろうとしたときだった。
 不意にヤマダの護衛達が立ちはだかったかと思うと、左右から両腕を押さえて動きを封じてしまう。
同時にヤマダが両手にナックルダスター(手にはめてパンチ力を強化する小型武器)をはめた。
 「ボス・・な・・何を?」
「あーん?貴様、言っておいたはずだが?俺は、お楽しみを邪魔されるのが何よりも嫌いなんだよ!!」
そういうと、ヤマダは拳を構える。
ナックルダスターはよりにもよってトゲが生えたタイプ。
それだけに皮膚や肉が切り裂かれ、より大きなダメージを負うことになる。
 「ひ・・!お・・お許しを・・!!」
必死に許しを乞う下部組織のボスだったが、ヤマダは容赦なく顔面に拳を叩きつける。
「ごああっっ!!」
男の悲鳴と共に顔が切り裂かれ、血が出る。
そこへさらにヤマダは顔や腹へ幾度も容赦なく拳を叩きつけた。


 「お待ちしてま・・・ど・・どうしたんですか!?」
カジノの支配人は、現れたボスの顔を見るなり、驚きの声を上げる。
ボスの顔は包帯でぐるぐる巻き状態になっており、目と顎の部分だけが出ているような状態だったからだ。
 「く・・。ボスにな・・・。お楽しみを邪魔したってんで・・・」
「ああ・・・なるほど・・・・」
支配人は思わず同情するような顔になる。
ボスのボスであるヤマダのことは支配人も聞いていたからだ。
 「それより・・・何かわかったか?」
「はい。奴をご覧下さい」
支配人は、監視カメラ映像に映る一人の若者を指す。
そこには、私服姿のラウールがルーレットに興じている姿が映っていた。
 「あれは?」
「ダンジュー修道院のラウールって修道士です。金持ちのボンボンで遊び好きなもんで、よく抜け出しては夜遊びしてます。同業者の間ではよく知られてる奴ですよ」
「なるほど?それが?」
「オザワが逃げ込んだのが修道院のある山なんです。その後誰も見ていないってわけなんですよ」
「そういうことか・・・」
「少し締めあげてやれば何かわかると思います」
「わかった。そういうことなら任せる」


 (あわわわわ・・・どうしよう・・)
ラウールは顔面蒼白になっていた。
いつものように遊んでいたら、カジノの用心棒に呼ばれたのだ。
支配人室へ呼ばれたかと思うと、いかつくて強面な男達に取り囲まれてしまった。
 「さて・・実はちょっとお尋ねしたいことがありましてねぇ」
支配人はにこやかな、だが目は笑っていない笑みを浮かべる。
「な・・何ですか?」
恐る恐るラウールは尋ねる。
「この男、知りませんかね?」
そう言って支配人が出した写真に、ラウールは一瞬ギクリとする。
オザワの写真だったからだ。
 「さ、さぁ。ぼ、僕は知らないですよ」
「そうですか・・・・」
ラウールの返事に支配人は淡々とした声で言う。
直後、不意に妙な音が聞こえて来た。
 何だと思ってラウールが振り向くと、何故か男達が砥石を用意し、ナイフを研いでいる。
(ちょ、ちょちょっと待ってよ!?)
支配人と男達をラウールは交互に見やる。
誰も何も言わず、ただひたすら砥石の音のみが響く。
 (何!?まさか・・言わないと殺す気!?)
砥石の音と共に、ラウールの恐怖はどんどん高まっていく。
ついに、ラウールは耐えきれなくなった。
「ひぃぃぃぃ!!言います!言いますってば!だから助けて下さいっっ!!」
「物分かりがよくて助かりますよ。さぁ、ではお願いしますよ」
「は・・はぃぃぃ・・・・」
恐怖に負けたラウールは、オザワに出会って以来のことを全てしゃべってしまった。


 ―続く―

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