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ダンジュー修道院12 部屋掃除



 「起きて下さい~~。ラウールさぁん!」
チサトはそういうとベッドで眠りこけているラウールを揺さぶる。
「うう~~~ん。あと五分・・・」
ラウールはだらしない顔でそんな寝言を言うと寝返りを打つ。
「いい加減にして下さーい!!」
チサトは普段の温厚な姿に似あわず、ラウールの耳元で思いっきり叫ぶ。
さすがのラウールもこれが効いたのか、ガバと跳ね起きた。
 「あれ?チサちゃん、どうしたの?」
ラウールは目の前にチサトがいるのに気付き、寝ぼけなまこで尋ねる。
「どうしたのじゃありません!もうすぐ朝の礼拝ですよ!」
「えっ!本当!!」
慌ててラウールはベッドの傍にあるテーブル上の時計を見やる。
時計はあと数分後に朝の礼拝が始まることを告げていた。
「大変だっ!」
ラウールはベッドから飛び降りるや急いで修道服に着替える。
「急いで下さい!遅刻したらお尻叩かれちゃいますよ!」
「わかってるよ!うわ、こりゃやばい!」
ラウールはベルトをつけながら外へ出る。
二人は息せき切って走りながら礼拝堂へ走っていった。
礼拝堂には既に修道士達が集まっている。
二人はばれないように静かに堂内へ入ると、後ろの長椅子の方に座って朝の礼拝に参加した。

 「あーっ。危なかったぁ」
礼拝が終わった後、食堂で朝食を食べながらラウールは思わずもらした。
「もう、危なかったじゃないですよぉ。また寝坊なんかして」
チサトはつい注意する。
今日は幸い間に合ったが、もし寝坊で朝の礼拝に遅刻でもしようものならバルバロッサにお尻を叩かれるところだったのだ。
「ごめんごめん。ちょっと昨日は夜遅くってさぁ」
ラウールは思わず弁解する。
「もしかして・・・また街で遊んでたんですか?」
小声でチサトが尋ねるとラウールは苦笑しつつ頷く。
「駄目じゃないですか。見つかったらもっと怒られちゃいますよ」
「ごめんごめん」
「ごめんじゃないですよ、もう」
「わかってるよ。それよりチサちゃん、お願いがあるんだけどいいかな?」
「何です?」
「実は部屋の掃除手伝って欲しいんだよ」
「掃除ですか?」
「そう。最近忙しくて・・あとしょっちゅうお仕置きされてたから・・・あまり掃除出来なくって・・。それでちょっと汚くなっちゃったんでさ、掃除しろって言われてね」
「いいですよ。今日は作業入ってないですし」
「ありがとう、チサちゃん」

 「うわぁ・・結構汚れちゃってますねぇ・・」
ラウールと一緒に彼の部屋に入ると、チサトは思わず口を開いた。
ベッドの下にはこっそり持ち込んだと思しき酒瓶やつまみの袋が幾つか開けられており、床や壁にはところどころ酒の染みがついている。
床に置いてあるトランクには着替えや街に行く時のための私服が入っているが、かなり乱雑でごっちゃにして放り込んであるという感じだ。
その傍らに別のトランクが置いてあるが、それにはトランプやらファッション雑誌、ギャンブル関連の本やらエッチな雑誌が置いてある。
ベッドのそばの小机には競馬の予想書きらしいものまで置いてあった。
「ってこんなのばっかり・・・」
修道士というよりも遊び好きな今どきの若者という感じの部屋にチサトは思わずため息をつく。
「い・・いいじゃないの別に。修道士だって人なんだからさぁ。たまには息抜きしなきゃだよ!チサちゃん」
ラウールは笑ってそんなことを言う。
チサトはため息をつくも、黙っている。
お説教しても遊び好きで俗っぽい性分は中々変わらないだろうからだ。
「とにかく掃除しちゃいましょう!」
「そうそう!そうだよ」
気を取り直すと、二人は掃除に取り掛かった。

 「ふーっ。これでいいかな・・・」
2時間ほどすると、部屋はだいぶ片付いてきた。
乱雑に入れられていた着替えや雑誌類はそれぞれのトランクにきちんと納められ、壁や床も布巾で丁寧に染みをふき取ってある。
瓶はきちんと分別してゴミに出した。
最初のときとは違ってすっかり綺麗になっている。
「すっかり片付きましたね」
「うん、ありがとうね。チサちゃん」
「それほどでもないですよ」
「そうだ。お茶にしない。厨房からもらってくるから。チサちゃん何がいい?」
「えーと、紅茶でお願いします」
「わかった。それじゃあ待っててね」
ラウールはそういうと自室を後にした。

 ラウールが出て行くと、チサトは部屋をぐるりと見回す。
見回しているうちに、ふとチサトは小机の上にあるものに目を留めた。
(何だろう?)
気になったチサトは小机のそばに移動するとそれを見つめる。
机の上にあったのは写真立て。
中学生くらいと思われる年頃のラウールと一人の女性が写っている。
女性はラウール同様美しく長い銀髪の持ち主で、ラウールによく似た美しい顔立ちをしている。
(ラウールさんのお母さんかな?)
チサトがそんなことを考えていたときだった。
「チサちゃん、もらってきたよー」
二つのカップが載ったお盆を抱えたラウールが部屋に入ると声をかけた。
「あっ。ありがとうございます」
チサトは声をかけるとラウールに歩み寄ろうとする。
そのとき、チサトはうっかり自分の修道服の裾を踏んづけてしまった。
「うわあっ!」
声をあげると同時に、チサトは思い切り転んだ。
それに巻き込まれてラウールも倒れてしまう。
お盆は空中でひっくり返り、カップは二つとも床に落ちて粉々に砕けてしまった。
「痛たたたたた・・・」
「ごめんなさいっ!ラウールさん、大丈夫ですか?」
チサトは慌てて起き上がるや、下敷きになっているラウールに詫びる。
「だ、大丈夫・・怪我は無い・・・」
そこまで言いかけてラウールは言葉をつぐんだ。
チサトがじっと様子をうかがっていると、見る見るうちに顔が青ざめる。
青ざめたラウールは紅茶とコーヒーで濡れた床から何かを取り上げる。
取り上げたのは写真立て。
写真立ては激しい勢いで落下したためかひび割れて壊れてしまっている。
しかも、写真はコーヒーと紅茶に濡れてすっかり汚れてしまっていた。
「あ・・ああ・・ぁあ・・」
ラウールはよほどショックなのか言葉が出ない。
「母さんの・・母さんの・・しゃ・・写真が・・」
ラウールは汚損してしまった母親の写真を握り締め、両肩をブルブルと震わせる。
彼にとっては昔母親と撮ったこの写真はとても大切なものだった。
ラウールにとって母親は大事な人だったからである。
遊び好きで俗っぽいラウールが向いてなさそうにも関わらず修道院に入ったのも、信心深くて子供の一人を聖職者にしたいと考えていた母親のことを思ったからである。
だから、彼はかの写真を非常に大事にしていた。
普段部屋をだらしなく散らかしていても、この写真をおくところだけは整頓し、写真立て自体も綺麗にしておいたのだ。
その大切な写真が台無しになってしまった。
ラウールにとって、それは何よりも許し難いことだった。
しばらくするとラウールはチサトの方を振り返った。
その表情を見るや、チサトは思わず背筋が寒くなった。
いつもの快活で明るい青年の姿はそこにはなかった。
ラウールの顔は別人と思ってしまうほど、怒りで変わっていた。
「チ・・チサちゃん・・・」
「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
チサトは必死に謝る。
チサトはラウールから鬼気迫るものを感じていた。
「ごめんなさいっ!僕に出来ることならなんでもしますから!」
「本当に悪いと思ってるの?」
ラウールが厳しい声で尋ねるとチサトは頷いた。
「じゃあ・・・お仕置きを受けてもらおうかな?」
「え?」
チサトは思わず素っ頓狂な声を出す。
ラウールはベッドに腰かけると、膝をポンポンと叩いた。
「さあ、ここに来て」
いつもの陽気な口調とは打って変わってラウールは厳しい声で言う。
(お・・お尻叩くんだ・・)
バルバロッサとのいつものやり取りから、チサトはすぐにわかった。
ラウールの普段とは異なる様子に、チサトは一瞬ためらいを見せる。
ラウールが怒るとどんなことになるか知らないため、予想がつかないのだ。
(でも・・悪いのは僕・・)
チサトは覚悟を決めた表情を浮かべると、おずおずとラウールの傍らに歩み寄る。
そして言われた通り、ラウールの膝の上に腹ばいになった。
「いい子だね・・。でも、手加減はしないよ。いくらチサちゃんでも今日のことは許さないからね・・」
静かな、だがその分怒りの籠った声でラウールは言う。
ラウールはチサトの修道服を捲り上げるとズボンを下す。
お尻がむき出しになるとひんやりとした冷たい空気がお尻の肌をチクチクと刺す。
外気を感じるとチサトはラウールの上着を両手でギュッと握り締める。
「それじゃ・・行くよ」
ラウールはそういうや手を振り上げた。

 シュッ!
バアチィンッ!
「きゃあっ!」
空気を切る音と共にラウールの手がチサトのお尻に叩きつけられた。
チサトは悲鳴を上げ、鋭い痛みと痺れがお尻に走る。
ラウールの真っ赤な手形が一瞬お尻に浮かぶがすぐに消えた。
 パアンッ!パチンッ!ピシャアンッ!
「きゃあ!ひゃあ!あうっ!」
ラウールにお尻を叩かれるたびにチサトは甲高い悲鳴を上げ、両肩を震わせる。
パチィンッ!パアンッ!パンッ!
「人のものを・・壊して・・しかも・・汚して・・」
パアンッ!パアチィンッ!ピッシャアンッ!
「きゃあ!ひゃあ!ひひゃあん!」
パアシィンッ!パチィ!ピシャアン!
「本当に・・悪い子!悪い子!」
パアシーン!パアーン!パッチィーン!
「痛あっ!きゃあ!ごめんなさいっ!」
チサトは本気で怒っているラウールに対して涙を浮かべながら謝る。
だが、ラウールは憮然とした表情で唇を一文字に結ぶとそのまま叩き続けた。

 パアアンッ!ピシャアンッ!パアチィンッ!
「きゃあ!ああっ!ひゃああ!」
チサトは立て続けにお尻を叩かれ、声をあげる。
もう三十回くらい叩いたであろうか、チサトのお尻はだいぶ赤みを帯びていた。
ラウールの手の方も赤く染まり、一回りくらい腫れ上がっている。
「ごめん・・なさい・・ラウールさぁん・・ごめんなさい・・」
チサトは緑色の大きな瞳からボロボロと涙をこぼしながらラウールに謝り続ける。
「反省してるの?チサちゃん?」
ラウールは叩きながらチサトに尋ねる。
チサトは緑色の大きな瞳からボロボロ涙をこぼしつつも、コクコクと首を縦に振るう。
「そう。じゃあ、あと十回我慢出来るかな?」
チサトは黙って頷く。
それを見ると、ラウールは手を振り上げた。

 パアンッ!パアアンッ!パアチィンッ!
「うっ!くぅ・・あっ!」
パアシィンッ!パアアンッ!バチィンッ!
「痛あっ!ああっ!ううんっ!」
パアアン!バアチィン!パシィィ!バアチィンッ!
「きゃあ!ああっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
ラウールの平手打ちが止まると、チサトはハァハァと息をする。
身体は時たま苦痛で震えていた。
 「大丈夫?チサちゃん?」
ラウールはチサトを膝から降ろすと、優しく声をかける。
お仕置きの最中とはすっかり変わり普段の明るいラウールに戻っていた。
「だ・・大丈夫です・・あっ・・」
チサトは起き上がろうとするが、お尻の痛みに耐えかね、床に崩れ落ちそうになる。
慌ててラウールはチサトの身体を支えると、チサトをベッドにうつ伏せに寝かせる。
「無理しちゃ駄目だよ。お尻叩かれた後はまともに立つのも大変なの知らないわけじゃないでしょ?」
「す・・すいません・・・。そ、それより・・・大事な写真、駄目にしちゃって・・ごめんなさい・・・」
チサトは申し訳ない表情を浮かべると、再度謝る。
「いいよ。僕の方こそあんなに怒って大人気なかったし」
「で、でも悪いのは僕ですし・・・」
そこまで言ったときラウールは人差し指を立ててチサトの口に当てる。
「もうこの話はおしまい。僕だってやりすぎちゃったから気にすることないよ」
「は・・はい・・」
「それより、今日は掃除手伝ってくれてありがとう、チサちゃん」
「いえ、それほどでもないですよ。いつでも手伝いますから」
「ありがとう、本当にいい子だね、チサちゃんは」
ラウールはそういうと優しい表情になり、チサトの頭をなでてやる。
「もう、子ども扱いしないで下さいよぉ!」
ラウールの行動に思わずチサトは抗議する。
だが、その表情はどこか嬉しそうだった。

 ―完―

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