風邪とプライド(最遊記より:八/三)



(『虫歯騒ぎ』の続編です。キャラのイメージが原作と異なっている可能性があります。許容出来る方のみご覧下さい)


 「あん?何みてやがんだよ?」
新聞を読んでいた三蔵は、悟空がこちらを見ていることに気づくと、不機嫌そうな表情を浮かべる。
「いや・・。何か・・顔赤っぽくねぇ?」
「ああ?何言ってやがんだ。んなわけねえ・・コフ・・・」
否定しようとしたところに、三蔵は小さく咳き込む。
 「だ、大丈夫かよ!?」
思わず悟空は駆け寄ろうとするが、三蔵にジロリと睨まれ、足が止まってしまう。
「何ともねぇよ・・。これくらい・・・」
「で・・でも・・」
悟空は心配そうな表情を浮かべる。
何だか顔や声が苦しそうに見えたのだ。
 「何ともねえって言ってんだろうが。それよりテメェ・・・。毎晩ちゃんと歯磨きしてんだろうな?」
「し・・してるよ・・・」
悟空はそう返事をする。
この前虫歯になり、そのことが原因で騒ぎを起こしたせいか、そういう健康管理に対して厳しい目が向けられるようになったのだ。
 「人の事心配する前にテメェの健康管理考えたらどうなんだよ?また虫歯になんぞなりやがったら、百や二百叩きぐれえじゃ済まさねえからな」
「こ、怖いこと言うなよ~~!!ちゃ、ちゃんと反省してるし、歯磨きもしてるって!!」
恐ろしいことを言われ、悟空は今にも泣き出しそうになる。
三蔵の事だ、もしまた虫歯になってしまったら、本当にやるだろう。
 「用がねえんならさっさと行けよ。俺は機嫌が悪いんだよ」
三蔵にそう言われては悟空も為すすべなく、すごすごと部屋を後にしようとする。
だが、やはり三蔵のことが気になるのか、出て行き際に三蔵の方をチラリと見やる。
三蔵が早く出て行け、と言わんばかりに睨みつけると、慌てて悟空は部屋を出て行った。
 「クソ・・・・」
不機嫌そうに呟くと、三蔵の身体から力が抜ける。
同時に顔がさらに火照ったようになり、表情もより苦しげなものへと変わる。
 (俺と・・したことが・・・)
三蔵は自身を罵りたくなる。
少し前から身体がだるいと思っていたら、喉や口の中が痛くてたまらない。
咳や熱も感じている。
風邪だろう、というのは三蔵も察していた。
 (クソ・・・!!何だって・・・こんなことに・・・!!)
三蔵は苛立ちを抑えかねながら、心の中で叫ぶ。
先日、虫歯になったのに、歯医者を嫌がる悟空を叱ったばかりだ。
その際、八戒に病気についての自分の行動について釘を差すようなことを言われた。
そのときは、ただウザったいとしか思わなかった。
悟空と一緒にするなど心外だと言わんばかりに。
 だが、今度は自分が体調を崩してしまった。
三蔵にも、医者に行くべきだとわかっている。
だが、そうしたくはなかった。
 別に医者が怖いわけではない。
病気になるということは、普段の自身の生活態度や習慣にも問題がある。
イコール自身がだらしない生活をしている、ということでもある。
医者に行くということは、自分がそういうだらしない生活をしていたことを白状するようなもの。
三蔵にしてみれば、そちらの方がずっと恥ずかしい。
無意味なプライドなのはわかっていても、自分が病気なのを知られるよりはと、こういう方法を取らずにはいられなかった。
 「クソ・・・!!」
不機嫌な表情で舌打ちしつつ、三蔵は新聞に目を通していた。


 「どうしたんですか?悟空?」
買い物から帰って来た八戒は、落ち着かない様子の悟空に気づくと、声をかける。
「あ、は、八戒・・・」
「何かあったんですか?」
困ったことでも起きたのかと、八戒は問いかける。
 「あ・・うん・・。サンゾーの様子が・・・何か・・おかしいんだよ」
「三蔵が?どういう風にです?」
「何か・・体調悪そうじゃ・・ねえかって・・。でも・・・」
悟空は言いにくそうに口を閉じる。
 「悟空が言っても素直に認めないし、医者にも行こうとしないんですね?」
悟空の様子から察しをつけてそう尋ねる。
「あ・・うん・・・。どうすりゃ・・いいんだろ?」
「わかりました。何とかしてみます」
「ありがと。八戒がそう言うんなら・・もう大丈夫だよな・・・」
悟空は安堵の表情を浮かべて出てゆく。
 (さてと・・・やっぱり心配した通りになりましたねぇ・・・)
悟空から話を聞くと、八戒は考え込むような表情になる。
(どうしましょうか・・・)
素直に医者に行くような三蔵では無いのはわかっている。
だが、悟空の話からはすぐに医者に連れていった方がよさそうだ。
しばらく考え込んでいたが、やがて案が浮かんだのだろう、表情が和らいだかと思うと、八戒も部屋を後にした。


 「何の用だ?」
八戒が入って来ると、三蔵は不機嫌な表情を浮かべる。
だが、八戒はそんな三蔵を見るなり、何だか小馬鹿にしたような表情を浮かべる。
 「おぃ、何だそのツラは?」
馬鹿にしているかのような八戒の表情に、三蔵は不機嫌さをさらに強める。
「おや。すみません。ついおかしいものですから」
「おかしい?」
「ええ。いやぁ、意外でしたねぇ。三蔵がそんなに怖がりだなんて」
「ああん!?何抜かしてんだぁ!?」
八戒の思いがけない言葉に、思わず三蔵は詰め寄る。
 「おや?怒ったんですか?」
「テメェ・・・いい度胸だな」
「そんな凄んだって怖くも何ともありませんよ。医者が怖いだなんて、子供みたいな三蔵ではねぇ」
「ん・・んだとぉ!?テメェ・・」
三蔵は今にも殴りかかりそうな表情になる。
 「だってそうじゃないですか。三蔵、明らかにあなた病気でしょう?どうして医者に行かないんですか?」
「ケッ・・。行こうが行くまいが、俺の勝手だろうが。テメェには関係ねえだろ」
「おやおや?やっぱり怖いんですか?それじゃあ悟空と同じじゃないですか」
「て・・テメェ!!」
三蔵は怒りに打ち震える。
 「おやおや?震えてますよ。それじゃあ本当に悟空と同じですねぇ。恥ずかしいと思わないんですか?」
「だ・・黙れ・・・!!」
(く・・悔しい!!)
三蔵は心の底からそう叫びたかった。
病気なのを見抜かれたのみならず、医者に行かないのを臆病ゆえだと取られたのだ。
プライドの高い三蔵にしてみれば、これほど屈辱的なことはない。
 「ウルっせえ!!俺はサルじゃねえ!!医者なんぞ怖くも何ともねえぜ!!」
「ほ~う、そうですかねぇ?だったら・・・証明してもらいましょうかねぇ?」
「ケッ!!行きゃあいいんだろ!!行きゃあ!!」
ここまで言って三蔵はハッとする。
こう言いきった以上、嫌でも医者に行かなくてはいけない。
 「では今すぐ行ってきて下さい。いいですね?」
八戒の問いかけに、三蔵は不機嫌極まりない表情になる。
見事にしてやられたことに気づいたからだ。
だが、言いだした以上、今さら後戻りは出来ない。
「ふん・・。行ってやるよ。それで・・いいだろうが。チッ・・!!」
悔しさを隠すために舌打ちすると、三蔵は渋々といった感じで行こうとする。
 「ああ、三蔵。ちゃんと領収書とか出して下さいよ。でないと証拠になりませんからね」
「イチイチ細けんだよ。チッ・・!!」
八戒の言葉にそう返すと、三蔵は今度こそ部屋を後にする。
 (やっと行ってくれましたね・・・。相変わらず・・世話が焼けるんですから・・・)
やっと医者に行った三蔵に八戒は苦笑する。
三蔵のことだから素直に行けといって行くわけが無い。
といって、体調が悪い以上、お仕置きで言うことを聞かせるわけにもいかない。
出来れば、自分からちゃんと医者に行ってもらいたい。
それには三蔵のプライドを逆手に取るのが一番だ。
そう考えて、わざと三蔵を挑発したのである。
実際作戦は図に当たって三蔵は医者へ行ったのだから。
(さてと・・・後の準備もしておかないとですね・・・)
医者から戻って来た後のために、八戒は用意に取りかかった。


 「・・・・・・・」
ムスッと不機嫌極まりない表情で、三蔵はベッドに入っていた。
「だ、大丈夫かよ?三蔵?」
「うるせえなぁ・・。湿っぽい面近づけんじゃねえよ」
「三蔵、そんなに邪険にするものじゃありませんよ。悟空だって心配してるんですから」
心配そうに尋ねる悟空に、三蔵がムッとした表情で返すと、八戒が窘める。
 「とにかくちゃんと休んで下さいよ。早く治したいんでしたら」
「ふん・・・」
三蔵は八戒の言葉にソッポを向くと、ベッドにそのまま横になる。
 「ここに薬置いておきますから。ちゃんと飲んで下さいよ」
「イチイチんなこと言うんじゃねえよ。とっとと出てけよ!!」
相変わらずの不機嫌な様子で三蔵がそういうと、悟空と八戒は出てゆく。
 「クソ・・・・!!」
一人きりになると、三蔵は舌打ちしながら、布団にくるまって横になる。
横になった三蔵は医者から出された薬をジッと見つめる。
 薬の袋を見ていると、改めて自分が風邪になったという事実を否応なしに思い知らされる。
それは、自分がだらしない、風邪でダウンしてしまうようなヤワな人間だと嘲弄されているように感じられる。
それが無意味なプライド、虚栄心なのは自分がよくわかっている。
だが、そうとわかっていても、そう感じずにはいられなかった。
 「チッ・・・!!」
三蔵は薬の袋を取り上げると、ゴミ箱めがけて放り投げる。
目障りな薬袋をゴミ箱に放り込むと、不貞寝するかのように再び横になった。


 「三蔵・・・。寝てるのかよ・・?」
悟空は恐る恐るドアを開けると、入って来る。
気になって様子を見に来たのだ。
 「何しに来たんだよ?」
悟空の姿に、三蔵はジロリといつもの不機嫌そうな表情で答える。
「ちょ・・ちょっと・・様子・・見に・・あれ?」
悟空は返事をしようとして、おかしなことに気づく。
 「あれ?どうしたんだよ?ここに薬袋あったはずだよな?」
「あん・・。知らねえよ・・・」
「知らねえよって・・・」
部屋を見回し、悟空はゴミ箱の中に薬袋があることに気づく。
 「三蔵、何でこんなところにあるんだよ?」
「あん。んなことどうでもいいだろうが」
「よくねえよ!何で捨てちゃうんだよ!!飲まなきゃ治んねえじゃんかよ!!」
「うるせえな・・・。寝てりゃあ治る・・・」
「んなワケねえじゃん!!ちゃんと飲めってば!!」
悟空は薬袋を三蔵に渡そうとする。
 「いらねえって言ってんだろうが。見たくもねえ」
「そういうわけにいかねえじゃんかよ」
三蔵のことが心配なのだろう、悟空は何とか薬を飲ませようとする。
「だからいらねえんだよ!うっとおしいんだよ!!」
薬を飲ませようとする悟空に、三蔵は苛立つ。
「何でんなこと言うんだよ!そんなことしたら苦しいだけじゃんかよ!!ちゃんと飲めよ!!」
あくまでも拒否する三蔵に、悟空は無理にでも薬を持ったまま迫ろうとする。
そんな悟空に三蔵は我慢がならなくなったのだろう、悟空の手を掴んだかと思うや、思い切りグイッと引っ張った。
 (え・・・?)
悟空が気づいた時には、ベッドの上で三蔵の膝の上に載せられている。
しかも、お尻がスースーする。
 バッシィィィ~~~ンッッッッ!!!
「いって・・・!!」
弾けるような音と共にお尻に痛みが走り、思わず声を上げる。
バシッ!バアンッ!バチンッ!ビダンッ!バアンッ!
「さ、三蔵っ!何やってんだよっっ!!」
「ああん?わかんねえのか?お仕置きだよ」
「な・・何でだよっ!?俺、悪いことしてねえよ!!」
「テメェが余計なことばっかりすっからだよ」
「そ、そんな~~~っっ!!!」
八つ当たりに近いことを言われて思わず悟空が叫ぶのを尻目に、三蔵の平手が振り下ろされる。
 パンッ!パンパンパンッ!パンパンパンパンッ!
「痛えっ!痛えって!やめてくれよっ!サンゾーッッ!!」
必死に頼んだり謝ったりする悟空だったが、それを無視して三蔵はお尻を叩き続けた。


 それからしばらく経った頃・・・・。
「すみません。遅くなり・・・・」
買い物袋を提げて帰って来た八戒は、ドアを開けるなり全身が固まる。
 「三蔵っ!ごめんってばー!!もう許してくれよーー!!」
「ああん?余計なことばっかりしやがって!!こんなもんじゃまだまだ勘弁しねえからな!!」
三蔵はそういうと、既に真っ赤になっている悟空のお尻へ容赦なく平手を振り下ろす。
平手が叩きつけられるたびに、悟空の両脚はバタバタと動き、悲鳴が上がる。
 「三蔵っ!!何してるんですか!?」
思わず八戒は駆け寄り、奪い取るようにして悟空を三蔵から引き離す。
「ひぃひぃん・・・。八戒ぃぃ・・・」
「もう大丈夫ですからね。よしよし・・・・」
八戒は泣いている悟空を抱き上げると、もう一つとってある部屋の方へと連れていった。
 (やっちまった・・・・)
一人になると、後悔や罪悪感といった感情がどっと押し寄せる。
(何で・・・あんなことやっちまうんだよ・・・・)
自身の言動を振り返り、三蔵はそう思わずにはいられない。
 悟空の行動は三蔵を心配してのことだ。
悟空のいうことも正しい。
それがわかっているにも関わらず、うっとおしいから、そんな理由で邪険にした上、お尻まで叩いた。
 (何が『お仕置き』だよ・・・。八つ当たり・・いや虐待じゃねえか・・・・)
先ほどの自身の振舞いを思い返すと、三蔵は自嘲せずにはいられない。
何も悪いことをしていないのに、理不尽にお尻を叩いてしまった。
悟空が傷つかないわけが無い。
どの面下げて悟空と顔を合わせられるのか、そう考えずにはいられなかった。
 不意に、ドアが開く音がした。
思わず三蔵は振り返ると同時に、普段の表情に戻る。
「何の用だ?」
現れた八戒に、三蔵はいつもの無愛想な表情で尋ねる。
 「何の用だじゃありませんよ・・・。三蔵・・あなた何てことしたんですか!!」
三蔵の顔を見るなり、八戒は叫ぶように言う。
「何のことだ?」
言いたいことはわかっていたが、素直に認めたくなくて、つい三蔵はしらを切る。
「とぼけるんですか?悟空のこと、叩いたでしょう?」
「それがどうしたってんだ?テメェだってやってるだろうが?」
(馬鹿野郎!何言ってんだ!?)
三蔵は歯噛みしたくなる。
 「それとこれとは違いますよ・・・。三蔵・・・。覚悟は出来てますか?」
ニコリと、だが目は笑っていない笑みを浮かべて、八戒は尋ねる。
「テメェ・・・病人に何するつもりだ?」
「薬よりもずっと今の三蔵に必要なことをするだけですよ」
八戒はそういうと、三蔵の手首を掴み、ベッドから引きずり出すように引き倒す。
直後、ベッドの縁に腰を降ろした八戒の膝の上にうつ伏せにされてしまった。
 「おぃ!何しやがる!!」
わかりきってはいたものの、それでも三蔵は抗議せずにはいられなかった。
そんな三蔵を無視して、八戒はいつものようにお尻をあらわにすると、左手で身体をしっかりと押さえて右手を振り上げた。


 バアッシィィィィ~~~~~ンッッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!!
「ぐ・・・!!」
(くそ・・・!?本気で叩いてんな!?)
最初から容赦のない平手の嵐を降らせてくる八戒に、三蔵はそう判断する。
いつもだったらこんな強烈なお仕置きを最初からすることは無い。
それだけ八戒が怒っているということだろう。
 ビッダァァァァ~~~~~~~ンッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッ!!
「ぐ・・!ぐっ・・!ぎ・・!ぎぐ・・!!ぎっひ・・・!!」
(く・・くそ・・・さすがに・・キツい・・!!)
血管が浮き上がりそうになるくらい必死にベッドシーツを掴んで堪えようとしつつ、三蔵は思わず弱音を吐きそうになる。
ただでさえ病気で体力が落ちているのだ。
そんなところへお仕置きをされるのは辛い。
 (馬鹿・・!!こんなので泣いたらみっともねえだろ!!)
三蔵は弱音を吐きかける自身を叱咤する。
バアッジィィィィ~~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッッ!!!!
「ぐ・・!!ぎ・・!!テメェ・・・何・・しや・・がんだぁぁ・・!!」
苦痛に顔を歪ませつつ、三蔵は振り返って抗議する。
 「見ればわかるでしょう?悟空にしたことと同じことをしてあげるんですよ」
八戒はそういうと、さらに容赦なく三蔵のお尻を叩き続ける。
ビッダァァァ~~~~~ンッッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~ッッッッ!!!
「て・・てめぇ・・・。ただで・・済むと・・思って・・んの・・か・・ぐぅ!!」
「三蔵こそ自分の立場とかわかってますか?あなた病人なんですよ?どうしてちゃんと薬を飲まないんですか?」
平手の嵐を降らせ、お尻を赤く染め上げてゆきながら、八戒はお説教を始める。
 「うるせぇ・・・。あんなモン・・飲まなくったって寝てりゃあ治るんだよ!!」
「そんなわけないでしょう?それに・・・。悟空は薬を飲ませようとしただけでしょう?それなのに・・・どうしてあんなことをしたんですか!」
バシィィィッッッッ!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッッッッッッ!!!!
「ぐ・・!!ぐぬ・・!!ぬ・・!!むぐぅ!!」
平手打ちの嵐に、ドッと汗が噴き出し、風邪と相まって三蔵の表情は何とも苦しげなものになる。
 「悟空は心配しただけでしょう?それなのに・・・邪険にして・・・しかも・・理不尽にお尻叩いたりして・・。悟空がどんな気持ちだったと思ってるんです!?僕がこっちに来る直前までずっと泣いてたんですよ!!」
お尻を叩きながら、八戒はさらに怒りがこみ上げてくる。
お仕置きをしに戻って来るまでの間、悟空を慰めていた。
心配しての行為だったのに、邪険にされ、挙句にお尻まで叩かれ、悟空はショックを受けてしまっていた。
それだけに、三蔵の行為が何とも許せない。
 「う・・うるせぇ・・。言うんじゃ・・ねえよ・・・」
ブルブルと全身を震わせ、八戒には見えないように顔を歪め、三蔵は言う。
罪悪感を刺激され、何ともたまらない気持ちになる。
 「人に心配かけて・・しかも八つ当たりで理不尽なお仕置きなんかして!!どうしてそういうことをするんですか!?少しは反省したらどうなんです!?」
「うるせえっ!!うるせえうるせえうるせえっ!!??」
(俺の・・馬鹿・・・が・・・)
カッとなって三蔵は叫び、同時に自分に呆れる。
 どうして悟空のように素直になれないのだろう。
そう思わずにはいられない。
だが、意思とは裏腹に口はどんどん動く。
「説教なんかアキアキなんだよっ!?サルもテメェも余計なことばっかりしやがって!!うっとおしいんだよっっ!!」
「三蔵・・・・本気で言ってるんですか?」
三蔵の態度に、八戒の表情がより険しくなる。
 (やっちまった・・・)
三蔵は自分に呆れていた。
どうして懲りもせず、同じことを繰り返してしまうのだろう。
つくづく自身の馬鹿さが情けない。
 しかし、言ってしまった以上、もう引っ込みはつかない。
八戒が許してくれるわけもなく、自分も許しを乞うつもりなど毛頭ない。
なるようになれ。
半ばやけくそで自身にそう言うと、三蔵は開き直って言い放った。
「だったらどうだってんだよ!!幾らでも言ってやるぜ!!」
バアッジィィィ~~~~ンッッッッッ!!!!
「ぐぅぅ・・・・!!!」
返事代わりの強烈な一発に、三蔵は背をのけ反らせる。
 「よく・・わかりました・・・。三蔵が全然反省していないってことは・・・」
八戒はそういうと、乱暴に三蔵をベッドに放り出す。
「おぃ!何しやがる!?」
思わず抗議するが、八戒はそれに構わず、三蔵の両手を後ろ手に紐で縛りあげ、さらに両脚も縛ってしまうと、腹の下に枕を入れ、ベッドの上で、うつ伏せでお尻を突き上げる体勢を取らせた。
さらに八戒はパドルを用意する。
 「三蔵・・・今日という今日は許しません・・!!」
「ケッ!そんなんでビビると思ってんのか!?」
この期に及んでも、なおもそんなことを言う三蔵を見やると、八戒は思い切りパドルを振り上げた。
 ビッダァァァァ~~~~~~~ンッッッッ!!!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!
「ごぶぁぁぁ!!ぐがっ!!ぎっびぃぃぃ!!!!ぐぐっ!!ぎぃぃぃぃ!!!!!」
パドルでの乱打に、三蔵は心底からの絶叫を上げそうになる。
(馬鹿・・野郎・・!!喚くんじゃ・・ねえ!!??)
三蔵は自身を叱咤し、決して屈するまいとする。
 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!
「ぎぎぃぃぃ!!ぎばぁ!!ぎっ!!ぐぐ!!むぐっ!!ごぶぐっっ!!」
苦痛のあまりに泣き叫びたくなるのと、そうするまいとするプライドが相まって奇妙な悲鳴と表情で悶える中、激しい音と共にパドルが雨あられのように振り下ろされ続けた。


 (僕としたことが・・・)
ベッドの上で気を失い、ぐったりした三蔵の姿を見降ろしながら、八戒は反省する。
お尻はワインレッドを遥かに超えた色に染め上がり、風邪と相まって全身がグッショリと汗で濡れ鼠になっている。
 (相手は病人なんですよ?どうしてここまでするんですか・・・・)
中々謝らないからと、病人にも関わらず気を失うまで叩いてしまったことに、八戒は後悔や罪悪感が沸いてくる。
(これでは・・・僕も・・三蔵と変わりませんね・・・。どうしてこうなってしまうんでしょうか・・・・)
凄い色になっているお尻に薬を塗りながら、八戒はそう考えずにはいられなかった。


 「ぐぅ・・・ぐく!!」
目を覚ますと同時に、三蔵はお尻に猛烈な痛みを覚える。
「クソ・・相変わらず・・派手に叩きやがって・・・」
後ろを振り返り、濃厚に色づいた自身のお尻を見やりながら、三蔵はそう呟く。
 「ご機嫌とりのつもりかよ。これくらいで・・騙されるかよ・・」
傍に置いてある愛用のタバコを見やりながら、三蔵はそう呟く。
タバコを取り出し、吸おうとしたところへ、薬袋が目に入る。
『飲んで下さい。悟空が心配してますから』
『ウザいことしてごめん。でもお願いだから飲んでくれよ』
八戒と悟空の字でそう書かれた紙が袋と一緒に置かれていた。
 不機嫌そうな表情でしばらく眺めていた三蔵だが、おもむろに中から錠剤や粉薬を出したかと思うと、不満そうながらも、飲みだす。
そして、不機嫌そうに一息ついたかと思うと、ムスッとしたままベッドに横になった。


 ―完―

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