青き狼たち(バイオレンスあり)


(バイオレンス要素ありです。また『修道騎士マクシミリアン2』とリンクしていたり、藤沢周平の『隠し剣』シリーズネタなどもあります。その点をご了承の上でお読み下さい)


 「ぐわあっっ!!」
閃光が煌めいたかと思うと、銃を持った男がのけ反り、そのまま倒れた。
倒れる男を尻目に、少年は手にした脇差を残りの男達へと向ける。
 少年は16,7歳、アーモンド色の肌に海を思わせる青い髪と瞳の持ち主。
大きめの瞳のせいか、少年っぽさがまだまだ感じられるも、モデルになれそうな整った面立ちをしている。
すらりと細身の身体に半袖のシャツとハーフパンツを着、その上から青を基調に白い山型模様で縁どりし『誠』の文字を背中に入れたボディアーマーを着込み、右手に脇差を構えていた。
 「どうする?逃げるなら今のうちだぞ?」
脇差を構えたまま、少年ことカイは目の前の男達に言いやる。
男達はいずれもライフルや拳銃で武装している。
彼らは強盗一味。
カイが警備を担当している、あるNPO法人の倉庫に盗みに入ったのだ。
 「やっちまえっ!!ガキ一人だっ!!」
頭株の男が叫ぶや、強盗達が銃を構える。
一斉に銃口が火を噴き、銃弾がカイめがけて襲いかかる。
だが、カイは逃げずに、脇差を電光石火の勢いで振るう。
幾重にもカイの目の前で閃光が走ったかと思うと、銃弾が弾き落とされる。
 銃弾を弾き落とすカイの剣技に強盗達がギョッとする間も無く、カイが強盗達目がけて一気に間合いを詰める。
脇差が弧を描いて煌めくたび、強盗達がのけ反って倒れ伏す。
カイの走りが止まった時には、全員が床にのびていた。
 「全く・・・全然骨の無い奴らだな」
脇差を納めながら、カイはため息をつくようにそう呟いた。


 「いやっ!はあっ!やああっ!」
気合いと共に、カイは木刀を振り下ろす。
木刀といっても、柄頭の直径が6センチもある、丸太のようなしろもの。
それをビュンビュンッ、と風を切る音をさせながら振り下ろしていた。
 「カイ、ちょっといいか?」
不意に声をかけられ、思わずカイが振り向く。
するとカイが強盗団相手に着込んでいたのと同じボディアーマーを着た男がいた。
 「どうしたんだ?」
「コンドウさんが呼んでるぞ」
「わかった。すぐに行く」
カイは男にそう答えると、すぐにその場を立ち去った。


 「失礼します」
「うむ。入れ」
カイの言葉に、近藤勇蔵はそう促す。
 近藤は30代半ばから40歳くらい、がっしりした顔立ちに無駄なく鍛え上げられた身体つきの持ち主。
日本の東京・試衛市に本拠を構える『新撰グループ』下の道場『誠衛館』の館長・武術家としての活動する傍ら、同グループの保安・警備業部門『シンセン・セキュリティ・サービス』社の抱えるエージェントとして、海外でも活動をしていた。
今回はシンセン社の仕事の関係で、この国へとやって来ていた。
 「お呼びですか、カンチョウ?」
カイは近藤の前に出ると、そう尋ねる。
二人は師弟であったため、カイは近藤の事をカンチョウ(館長)と呼んでいた。
 「うむ。この前の強盗団退治、あれはよくやってくれたな」
「あ・・。い・・いえ・・。そんな・・・」
褒められたことに、カイは顔を赤くする。
 「は、話はそれだけですか?」
「いや。実はまた同じNPOから難民キャンプへの支援物資の護送を請け負った。たて続けで悪いが、俺と一緒に護衛をしてくれるか?」
「はい!カンチョウの頼みなら!」
「おぃおぃ、そこまで気負わなくたっていいんだぞ?」
何だか気負い立っているカイに、近藤は思わず苦笑しつつそう言った。


 それから数日後・・・・。
「俺達は必要物資を補給してくる。お前は見張りをしていてくれ」
「はい、わかりました」
近藤の言葉にそう返事をすると、カイは車の傍らについて周りを油断なく見回す。
すると、誰かがカイ達のガントラックをジロジロと見つめているのに気づいた。
格好からすると神父のようだが、油断はできない。
テロリストや犯罪者が変装して近づく可能性もあるからだ。
「おい!何をしてる!」
カイは神父風の青年に厳しい声で言う。
 「ああん?別にテメェにゃあ関係ねえだろうが!」
詰問口調のカイに、マクシミリアンはムッとする。
「そうはいかない。何をジロジロ見ているんだ?まさか車上荒らしでも考えてるんじゃないだろうな?」
「んだとっ!テメェこそタ○バ○じゃねえのかよっっ!!この・・アラブ野郎っっ!!」
「なっ・・・!!」
マクシミリアンの言葉にカイはカッとなる。
肌の色が示すように、カイにはアラブ系の血が入っている。
だが、アラブ系の血が入っているからといって、皆テロリストではない。
 「おいっ!俺はテロリストなんかじゃない!謝れっっ!!」
「んだとおっ!先にイチャモンつけてきやがったのはテメェだろうが!!」
お互いカッとなり、無意識のうちに腰の剣に手がかかる。
今にも斬り合いが始まるかと思ったそのとき、騒ぎに気づいたルートヴィヒがマクシミリアンを強引に連れていった。
 「く・・・!!」
強引に連れてゆかれるマクシミリアンに、怒りを抑えかねる表情を浮かべつつも、カイはガントラックへと戻っていった。


 「では、すまんがまたトラックについていてくれ」
「わかりました。いってらっしゃい、カンチョウ」
カイがそう言って見送るのを尻目に、近藤達は難民キャンプの事務所となっているテントへと荷物を届けに向かう。
一人残ったカイは、村のときと同じように、油断なくあたりを見回していた。
 「おいっ!そこのテロ野郎っっ!!」
不意に呼びかけられ、思わずカイは振り向く。
「お前は・・・!!」
カイはマクシミリアンの姿に思わず表情が険しくなる。
 「テメェ・・よくも人を盗人扱いしてくれやがったな!この落とし前どうしてくれんだぁぁ!!」
「それはこっちの台詞だ。お前こそ・・・人をテロリスト扱いしてくれたな」
「へっ!ちょうどいいぜ!こっち来い!ケリつけてやるぜ!」
「望むところだ・・」
互いに相手を睨みつけながらそういうと、二人は難民キャンプの外れへと向かう。
決闘に手ごろな広い場所に出ると、それぞれ剣と脇差を抜いて構える。
 「おぃ・・・テメェ・・名前は?名なしの権兵衛じゃねえだろ?」
「人に尋ねるときは自分から名乗るものだろう?そう教わらなかったのか?」
カイに切り返され、ムッとするも、マクシミリアンは答える。
「チッ・・!仕方ねえ、名乗ってやるよ。マクシミリアン・・ヴュルテンベルク騎士修道会のな!」
「修道騎士か・・。相手にとって不足は無いな・・。なら俺も名乗ろう。カイだ。シンセン・セキュリティ・サービスのな・・・」
互いに名乗りを上げると、剣を構え、ジッと睨みあった。


 (こん・・ガキ・・・)
剣を構えながら、マクシミリアンは思わず舌を巻いていた。
同じ騎士修道会の中ならともかく、他の組織の者になど自分に叶う者などいるまい、そう思い込んでいたのだ。
だが、目の前の褐色の少年が発する闘志やその構えは容易に打ち込みを許さないものだった。
 互いに右半身で剣を構えたまま、ジリジリと間合いを詰める。
間合いを詰めながら、お互いに相手に対して殺気を放つ。
少しずつ間合いが詰まり、接近してくるにつれ、殺気が肌に感じられてくる。
やがて、大きく踏み込めば刃と刃が触れ合う距離まで近づいたところで二人とも立ち止った。
 そのまま、二人ともグッと相手を睨みつける。
睨みながら、互いに殺気を相手へとぶつける。
風が吹きつけるように、相手の殺気が肌にかかり、互いにジワリと汗が噴き出し、喉がカラカラに乾いてくる。
二人とも、胃を絞り上げられるような感覚を覚え、表情を歪めたくなる。
だが、それを堪えて相手を睨みつけ、殺気をぶつける。
気迫と気迫のぶつかり合い、少しでもひるんだ方が負けてしまう。
相手を打ち負かさんと、互いにより多くの殺気を身体から放ち続ける。
 喉の渇きや腹を絞るような感覚がさらに強くなり、耐えがたいものへと変わってゆく。
同時に焦りやいら立ちが生まれてくる。
それでも我慢を重ねて睨み合う。
だが、じれったくなったのか、マクシミリアンが表情を歪めたかと思うと、剣を突き出しながら飛び込んできた。
 グッと腕が伸ばされ、カイの心臓めがけて切先が襲いかかる。
その切先をカイは紙一重で後退してかわす。
ボディアーマーに微かに傷がついたものの、肌にまでは達しなかった。
 後退したかと思うと、今度はカイの方が踏み込む。
マクシミリアンは身体を引き戻しにかかるも、そこを狙ってカイがマクシミリアンの右腕を斬りつけた。
戻り際を狙われ、避け得ずに、右の前腕を斬られてしまう。
 「こん・・・クソガキッッッ!!!」
かすり傷とはいえ、斬りつけられ、傷を負わされたことに、マクシミリアンは思わず激昂する。
怒りのあまり、マクシミリアンはカイへ詰め寄りながら、怒涛のごとき勢いで突きを繰り出した。
 剣が幾重にも分身したかと思うと、十数もの切先がカイへと襲いかかる。
カイは後ろへ下がりつつ、脇差で受け流す。
とはいえ、完全には受け流せず、所々を斬り裂かれ、傷を負う。
受け流し、自らも傷つけられつつも、カイはマクシミリアンの隙を狙う。
怒りに任せた突きの嵐に乱れが生じ出すや、再びカイはマクシミリアンの右前腕を狙って斬りつけた。
 「くそっっ!!」
浅い打ち込みとはいえ、傷をつけられたことにマクシミリアンは再びカッとなって剣を突き出す。
だが、カイは素早く相手の間合いの外へと引き、腕の引き際を狙って脇差を打ちこみ、すぐに引いた。
 (畜生・・・!!そういう・・ワケかよ!!)
剣を構えたまま、マクシミリアンはカイを、そして己の右前腕を見やる。
マクシミリアンの前腕には浅いながらも幾つもの切り傷がついている。
それらは重なり合い、確実に腕を削っている。
 一撃一撃は軽く弱くとも、同じところを執拗に狙って攻撃すれば、いかに太く頑健な四肢とて切断されずにはいられない。
(クッソ・・!!)
苛立たしげに心の中で吐き捨てつつも、マクシミリアンは今までより真剣な表情で対峙する。
 (気づいたようだな・・・)
マクシミリアンの表情に、カイはそう察する。
(だが・・・気づいたとて無意味だ・・。さざ波の秘剣・・・たっぷりと味あわせてやる)
カイはそう決意し、ジッとマクシミリアンを睨む。
 さざ波とは、東北のある地方都市に伝えられてきた剣技。
江戸時代、西野鉄心という剣士が編み出し、その弟子であった邦江という女性に伝えられたもので、小さな波が何度も押し寄せ、長い年月を経て岩に穴を開けるように、幾度も敵に押し寄せては執拗に同じ個所を狙って攻撃を繰り返すという技である。
 長らく知られることの無かった秘剣だが、東北の作家藤沢周平による『隠し剣』シリーズに納められた「女人剣さざ波」という作品によって世に知られるようになった。
その秘剣を現代に伝えている人物が近藤とゆかりがあり、そのつてでカイがその人物のもとへと修行に出され、そこでこの技を習得して来たのである。
 カイとマクシミリアンは再び睨み合う。
(クッソ・・!だったら・・・とっとケリつけてやるぜ!!)
苛立ちのあまりマクシミリアンは剣を振り上げて突進する。
カイがそれを迎え撃とうとしたときだった。
 「馬鹿者っ!何をしている!!」
突然、背後から怒鳴られ、思わずカイは振り向いた。
すると、いつの間にか近藤が立っている。
 「か・・カンチョウ・・・・」
驚いた表情で、カイは思わず言う。
「カンチョウではないだろう・・・。全く・・」
呆れたように言いつつ、近藤はマクシミリアンを押さえているルートヴィヒに謝りつつ、カイを連れていった。


 「怪我は・・どうだ?」
「あちこち斬られてはいますが、どれもかすり傷です。大したことはありません」
「そうか・・。ならばよかった・・。すまんな。わざわざ・・」
「いえ。医者ですから」
そういうとキャンプの医師はカバンを持って出ていく。
 「さてと・・・・」
近藤は医者を見送ると、カイに厳しい目を向ける。
「カイ・・・」
「は・・はい・・・」
近藤の言葉に、カイは思わずビクッとなる。
 「何故・・・斬り合いなどした?」
「す・・すみません・・・。あいつに・・・テロリスト呼ばわりされて・・く・・・!!」
カイは両手を固く握り、微かに目尻に涙を浮かべて身体を震わせる。
 (無理も・・無いことか・・・)
カイの姿に、近藤は思わずそう思う。
悲しいことだが、世の中にはアラブ系・イスラム教徒に対して、皆テロリストであるかのような偏見を持ち、差別をするもの、本人には差別意識は無くとも、そのような言動をとる者が存在する。
そういう相手に対し、怒りを抱くのは無理も無いことだ。
だが、だからといって暴力を振るうような真似をしてよいという理由にはならない。
 「お前の気持ちは無理も無いかもしれん・・。だが・・それでもお前のしたことは許されんことだ。わかっているな?」
「は・・はい・・」
「ならば、こっちへ来い」
その言葉に、カイは立ちあがって近藤の傍へと行く。
近藤の傍に立ったかと思うと、カイは師の膝の上に引き倒される。
同時にズボンを降ろされてお尻をむき出しにされ、身体をしっかり押さえられる。
 「行くぞ・・いいな?」
「は・・はい・・・」
カイは恥ずかしそうな声で頷く。
それを聞くと、近藤はゆっくりと右手を振り上げた。


 バシッッッ!!
「く・・・・!!」
力強い平手に、思わずカイは表情を歪め、声を漏らす。
 (馬鹿ッ!何をやってるんだ!みっともないだろ!!)
お尻を叩かれながらも、カイは声を出してしまった自身を叱咤する。
カイとて年頃の男の子。
お尻をぶたれて泣き叫ぶだなんて恥ずかしい。
 バシッ!バンッ!ビダンッ!バアンッ!バシッ!
カイは必死に声を押し殺す。
だが、無理やりに声を押さえている分、苦痛はより増し、苦痛に顔を歪める。
 バンッ!バシッ!バアンッ!バシッ!ビダンッ!バアンッ!
「・・ぅ・・ぁ・・・ぁ・・っ・・・ぅ・・・」
始まってそんなに経っていないはずなのに、既にお尻は赤く染め上がっている。
そんなお尻に、容赦なく赤い手形が刻み込まれ、重ね塗りされてゆく。
 「全く・・・・何をやっとるんだ・・お前は・・・」
がっしりした平手を振り下ろしながら、近藤はお説教を始める。
バシッ!バンッ!ビダンッ!バアアンッ!バシィンッ!バアジィンッ!
「テロリスト呼ばわりされてカッとなっただけならまだしも・・・刀を抜いて斬り合うなど・・・馬鹿も休み休みにせんか!」
「す・・すみません・・!で・・でも・・悔しくて・・許せな・・かった・・!!く・・ぅぅ・・・!!」
思い出したのだろう、カイは悔しさや怒りに身を震わせる。
 「馬鹿者っ!だからといって刃を振るえば、それこそ振るわれた方は一生お前をテロリスト呼ばわりするのだぞ!悪循環を呼びこむのがわからんのか!!」
お尻を叩きながら、近藤はそう言い聞かせる。
 確かに、肌の色を理由に他人をテロリストと決めつけたりするのは許されない。
怒りを抱いたとしても無理は無い。
だが、だからといって暴力を振るえば、その偏見を正当化してしまう。
それはさらに偏見や迫害の連鎖を呼びこみ、底なし沼のような悪循環に陥ってしまう。
 「す・・すみません・・・!!」
お尻を叩かれながら、カイは謝る。
「少しは反省してるか?」
「は・・はい・・・。考えなしな・・ことを・・して・・すみません・・・」
「わかればいい。もう、十分だろう」
そういうと、近藤はお尻を叩く手を止めた。


 「くぅぅ・・・!!」
「沁みたのか?」
「い・・いえ・・。それより・・迷惑をかけて・・すみません・・・」
薬を塗っている近藤の問いに、カイはそう答える。
 「わかっていればいい。それより・・今は休め」
「でも・・・まだ・・仕事中・・」
「馬鹿者、こんな尻で仕事が出来るか?館長命令だ。休め」
「はい・・わかり・・ました・・」
そういうと、カイは静かに目を閉じる。
そのまま寝入った弟子を、近藤は静かに見守っていた。


 ―完―
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