ゲーデ登場(SO2&テイルズより:ガイ/キール、共演パロ)



(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにしたSO2&テイルズ共演パロ、『冤罪の代償』の続きです。その点をご了承の上でお読み下さい)


 バンッ!バンバンバンッ!バンバンバンバンッ!
「ひ・・!痛・・!痛ぁぁいぃぃ・・!!」
ガイの平手が振り下ろされる中、キールは悲鳴を上げる。
お尻は今や濃厚なワインレッドに染め上がり、痛々しいくらいに腫れ上がっている。
 「ひぃん・・痛・・痛ぁ・・ば・・ばか・・!もう・・やめ・・ないかぁ・・」
泣きじゃくりながらもキールはガイにそう言いやる。
「『ばか・・!』じゃないだろう?悪いことしたんだから『ごめんなさい』だろう?」
泣きじゃくっているのにいまだに強情なキールに、ガイはそうたしなめる。
 「う・・うるさい・・!元はといえば・・アシュトンが・・」
「それは違うだろう?アシュトンはちゃんと謝りに来たんだぞ?それなのに許すどころかあんなことまでしたのは、誰が見たってキールが悪いだろう?」
わかってもらおうとするガイだったが、不満なのだろう、キールは顔をそむけてダンマリを決め込む。
 「キール・・・『ごめんなさい』が出来ないなら今回の事をロイドに話すぞ?お前がアシュトンを怪我させたって知ったらロイドはどう思うんだろうなぁ・・?」
(そ・・そんな・・・)
ガイの言葉にキールは恐怖する。
まっすぐな性格のロイドのことだ、話を聞けば絶対に怒るだろう。
下手をすれば嫌われてしまうかもしれない。
 「わ・・わかった・・!あ・・謝れば・・いいんだろう・・!ご・・ごめん・・なさい・・」
「俺だけじゃないだろう?ちゃんとアシュトンにもあとで『ごめんなさい』するんだぞ?」
「わ・・わかってるさ!!」
キールがそういうと、ようやくガイはお尻を叩く手を止めた。


 (ああは言ったものの・・・・)
ガイとの約束を思い出しながら、キールは強ばった表情で教会の前に立っていた。
 確かに、怒りに駆られて術なんか使って怪我をさせたのはキールだ。
自分が悪いことはわかっている。
しかし、元をたどればアシュトンが無実の自分をお仕置きしたことに原因がある。
自分がやり過ぎたということはわかっていても、元々がアシュトンのせいだと思うと、素直には謝れない。
 「どうしたんだ?ちゃんと謝ってきたらどうなんだ?約束しただろう?」
「わ・・わかってるさ!!僕はそんな子供じゃない!!」
ガイにたしなめられ、キールは思わずムッとして言い返す。
「そうじゃあちゃんといくんだぞ」
「わかってるって言ってるだろう!余計なことは言わなくていい!!」
そう言いやると、ようやくキールは教会の中へと入っていった。
 「あれ?珍しいね、キールが教会に来るだなんて」
礼拝堂の掃除をしていたアシュトンは、キールの姿を見るなり、そう声をかける。
「ちょっとした気分転換さ。少し見学させてもらうだけさ」
「いいよ。気が済むまで見学していってよ」
アシュトンの言葉に、キールは礼拝堂内を見学するような素振りを見せる。
 (どうしたんだ!?早く謝ったらどうなんだ!?)
見学しながら、キールは自分にそう言い聞かせる。
だが、アシュトンに声をかけようとすると、別の感情が浮かんでくる。
 (どうして謝らなきゃいけないんだ?元はといえば、アシュトンがジーニアス達の言葉を鵜呑みにして、僕を叩いたのが悪いんじゃないか!?それなのにやり過ぎたからってどうして僕が謝らなくちゃいけないんだ!?)
(何を言ってるんだ?どう考えてもあれはやり過ぎだろう?自分が悪いのはちょっと考えればすぐにわかるだろう?)
良心とプライドがキールの心の中でぶつかり合う。
 「ねぇ、どうかしたの?」
そんな葛藤に気づかず、アシュトンが話しかけてくる。
「何でも・・ないさ・・」
「でも、何か辛そうだよ?何か困ったことがあるなら相談に乗るけど?」
キールの様子から何かありそうだと察したのか、心配そうな表情でアシュトンは声をかける。
 「何でもないって言ってるだろう?」
謝らなくてはいけない、でも謝りたくない、そんな気持ちのせめぎ合いがキールを苛立たせ、思わず口調が喧嘩腰になる。
「でも・・」
「だから何でも無いって言ってるじゃないか!!エアスラストッッッ!!」
「うわあっっ!!」
怒りに駆られ、キールは思わず術を使ってしまう。
突然のことにさすがのアシュトンも避けきれず、食らってしまう。
 (しまった・・・!?)
自分のしたことに愕然としたキールは、矢玉のような勢いで教会を飛び出した。
 「ん・・?おい?どうしたんだ!?」
血相を変え、逃げ出すように教会を飛び出してきたキールに、思わずガイは声をかける。
だが、キールはそれには構わずひたすら逃げ出すように走り去る。
さすがに何かおかしいと気づいたガイは、礼拝堂に入るや、怪我をしたアシュトンに気づいた。
 「な・・どうしたんだ!?」
「痛たたた・・・。どうも・・怒らせちゃったみたいで・・・」
「とにかく応急処置だけでもしないとな。立てるか?」
「うん。大したことないから大丈夫」
そういうと、アシュトンは立ち上がる。
見た目的にはひどいが、術が発動された瞬間、後ろへ引いていたので、最小限の怪我で済んだらしい。
ガイはアシュトンから救急箱等のある場所を聞きだし、必要なものを取って来てアシュトンの手当てをした。


 「大丈夫か?」
「うん。ガイの応急処置もよかったみたいだし。一歩引いてたから、まともには喰らわずに済んだみたい・・・」
ボーマンの治療を受けながら、アシュトンはガイにそう答える。
 「ならいいが・・・すまなかったな。キールにちゃんと謝らせるつもりが、こんなことになって」
「ううん。別にガイのせいじゃないよ」
「全く・・こりゃあまた後で叱らないとな・・・・」
アシュトンが大丈夫なことにホッとしつつも、ガイはため息をつきながら言う。
 「ガイ、あまり叱らない方がいいんじゃない?下手するとますますキール頑固になっちゃうんじゃないかなぁ?」
「そうは言っても、ちゃんとケジメはつけさせないとな」
フォローしようとするアシュトンに、ガイがそう答えた時だった。
 「あれ?ロイド?どうしたの?怪我でもしたの?」
診療所にやって来たロイドに、ルカがそう尋ねる。
「いや、キール来てねえかなって思ってさ」
「キールは来てないけど?ギルド会館とかアパートの方じゃないかな?」
「いや、心当たり探したんだけどいねえんだよ」
「ロイド!それ、本当なの!?」
ロイドの言葉にアシュトンは思わず尋ねる。
 「ああ。あれ?何か知ってんのかよ?」
「ああ。実はな・・・・・・」
ガイはジーニアス達によりアシュトンが冤罪でキールをお仕置きしたこと、そのことを謝るためにアシュトンがキールからお仕置きを受けたが、怒りに我を忘れたキールがアシュトンに怪我を負わせてしまったこと、そのことを謝りに行かせたはいいが、そこでまたアシュトンに怪我をさせてそのまま逃げ出してしまったことなどを話した。
 「そうだったのかよ・・・。でも・・いないってのは変だぜ?」
「何かあったのかもしれない。皆で探そう。アシュトン、ルカ、手伝ってくれるか?」
「うん。僕はいいよ」
「僕も・・いいけど・・」
そういいつつも、ルカはおずおずとボーマンの方を見やる。
 「行ってやりな。ここは俺一人で大丈夫だからよ」
「あ、ありがとう、ボーマン」
「決まりだな。よし、皆行くぞ」
ガイがそういうと、ボーマン以外の全員が診療所を後にした。


 「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・」
「ルカ、大丈夫?」
山道を登り続けたのか効いたのだろう、息が上がっているルカにアシュトンが心配そうに尋ねる。
 「あ、うん。それより、急いだ方がいいんじゃないかな?山頂までまだあるし・・」
「でも無理は禁物だぞ。少し休もう。皆疲れてるだろうからな」
ガイの提案に、全員その場で身体を休める。
 「それにしても・・どうしてこんなところに来たんだよ?」
ロイドは怪訝な表情を浮かべる。
皆で探しているうちに、キールがどうもこの山へ向かったらしいとわかったのだ。
それでキールを追って探しに来たというわけである。
 「うーん・・・わからないなぁ・・。でも・・」
「何か心当たりがあるのか、アシュトン?」
アシュトンの言葉にガイがそう尋ねる。
 「うん。実は山頂に小さな祠があるんだ。何が祀られてるのかはよくわからないんだけど・・ただ・・・」
「ただ?」
「うん。強いネガティブな感情を抱えている人が、その祠に引きつけられるようにやって来るってことがあるんだ。祠にそういう人を引き寄せる何かがあるんじゃないか、そういう噂もあるよ」
「そうか・・。それでか・・・」
ガイは納得したように呟く。
 「あっ、ついたみたいだよ」
山頂が見えてきたことに気づき、ルカがそう言う。
思わず全員足を速め、山頂へと向かう。
やがて、目的地の小さな祠と共に、キールの姿が見えた。
 「ん?何だよアレ?」
ロイドはキールの傍に何者かがいることに気づく。
 それは一見すると、クロードやロイドと同年代くらいの青年に見えた。
だが、骨を思わせる大きな異形の右腕が人ではないことを物語っていた。
紫の髪とオッドアイの目、異様な右腕を持つ青年はキールに対し怒りをあらわにする。
 「まずいっっ!!」
魔物が右腕を振りかぶろうとしたその瞬間、思わずアシュトンはハリケーンスラッシュを繰り出していた。


 「く・・・!!僕の・・馬鹿・・!!」
キールは自分を罵らずにはいられなかった。
謝るどころか、さらにアシュトンに術を食らわせるような真似をしてしまったのだ。
自分で自分が情けない。
 (どうして・・・こうなるんだ・・・!!)
思い返せば返すほど、自己嫌悪が沸き上がってくる。
自分が悪いことをしたのに、素直に謝れないどころか、無意味なプライドや意地からさらに怪我をさせてしまった。
ガイもさすがに呆れているだろうし、アシュトンも怒っているだろう。
いや、ロイドだって怒るに違いない。
下手をすれば、ふられて絶交にだってなりかねない。
 「くそ・・・!!どうして・・こうも・・馬鹿なんだ・・あれ?」
再び自分を責めていたとき、ふとキールは目の前の祠に気づく。
「いつの間に・・こんなところに・・来たんだ?」
周りの光景に、キールは怪訝な表情を浮かべる。
全く知らない場所だし、来ようと思ったことも無い。
にも関わらず、現にここにいる。
 「僕としたことが・・」
思わず呆れたように呟いたそのとき、再び祠が目に入る。
「く・・・!!」
祠を見ていると、様々な感情、特にネガティブなものが沸き上がってくる。
罪悪感や無意味なプライド、嫉妬心、怒り、屈辱感、それらがない交ぜとなって燃え上がる。
 「う・・うぅ・・・!!」
燃え上がるマイナスの感情に、キールは顔を苦しさで歪める。
同時に、祠から黒い煙のようなものが現れる。
煙はやがて人のような形になり、実体化する。
やがて、それは紫の髪にオッドアイ、異様な右腕を持つ青年の姿になった。
 「な・・何だ・・!お前は・・!!」
突然現れた異様な青年に、キールは思わず叫ぶように言う。
「ん?何だ・・その腕・・・気持ち・・悪いな・・・」
「気持ち・・悪い・・」
キールの言葉に、異形の青年ことゲーデが反応する。
 「いつも・・いつも・・そうだ・・・!!お前達は・・・勝手な・・こと・・ばかり・・言って・・・」
ゲーデは怒りの目で睨みつけると、右腕を振るう。
「ぐっっ!!何をするんだっ!!」
いきなり殴り飛ばされ、思わずキールは怒る。
 「うるさい・・・!!お前達が・・俺を・・生んだ癖に・・・!!それなのに・・・いつも・・いつもいつも・・生んでおきながら・・・邪魔者にしたり・・化け物扱い・・しやがって・・・!!」
ゲーデは怒りを燃え上がらせる。
 ゲーデは負の化身。
負とは怒りや嫉妬心、罪悪感など人間のマイナス・ネガティブな感情。
それらが集まり、具現化したのがゲーデである。
 しかし、人はゲーデを忌み嫌い、化け物扱いしたり、排斥しようとする。
ゲーデからしてみれば、自分たちで生んでおきながら忌み嫌い、捨てるような、余りにも身勝手な行為。
それだけに、人間のそんな振舞いが腹立たしくて、許せなかった。
「お前なんか・・お前なんか・・・!!」
怒りに駆られ、ゲーデが大きな右腕を振りかぶろうとしたときだった。
 突然、大きな竜巻がゲーデに命中する。
「何だ・・!!」
思わずゲーデが振り返ると、双剣を持った神父と、赤いツナギの青年、大剣を背負った少年、そして金髪の年長らしい青年の姿があった。
 「キール!?大丈夫!?」
アシュトンは思わず声をかけ、ロイドやガイ、ルカと共にキールを守るように立ちはだかる。
 「な・・何しに来たんだ!?」
アシュトンとロイドの姿に、キールは思わず普段のつっけんどんな態度になってしまう。
「そんなことはどうでもいいだろう?それより・・今は目の前のコイツだ・・!」
キールをそうたしなめつつ、ガイは目の前のゲーデに視線を向ける。
何物かはわからないが、ゲーデからは強い怒りや殺意が感じられる。
このまま見逃してくれるような気はさらさらないのはわかっていた。
 「ふん・・・!!全員・・血祭りにあげてやる・・!!」
新手に一瞬不意を突かれたゲーデだったが、気を取り直すと、キール共々怒りをぶつけてやろうと右腕を振りかぶった。


 同じ頃・・・魔界。
「な・・・何だ・・!?」
不意にルシフェルは全身に悪寒を覚えた。
「ま・・まさかアシュトンに何か・・!?こうしてはおれんっ!!」
ルシフェルは書類を放り出すと、窓から飛び出そうとする。
 「おい、こっちも処理し・・ってテメェッ!どこ行きやがる気だッッ!!」
新しい書類を届けにきたアッシュは、ルシフェルが窓から飛び出そうとするのに気づくと、思わず叫ぶ。
「黙れっ!アシュトンに何かあったに違いないのだっ!!」
「理由になるかっ!?ちゃんと仕事しやがれっ!!こっちにもしわ寄せが来るんだよっっ!!」
そう叫ぶアッシュだが、ルシフェルが聞くわけも無い。
アッシュの怒りを無視してルシフェルは人間界へと向かってしまう。
 「くそ・・!!仕方がねえ!!」
アッシュは舌打ちすると、同じように魔術でゲートを開けて人間界へ向かっていった。


 「ぐ・・・!!」
衝撃と共にアシュトンは吹っ飛ばされる。
全員、満身創痍であたりに倒れたり、片膝をついて座り込んでいた。
 「何て・・強さだよ・・!!」
ゲーデのあまりの強さに、ロイドは思わず声を漏らす。
立ち上がろうとするが、疲労と負傷で身体が言うことを聞かない。
 「くそ・・・!!こうなったら・・・」
キールは術の体勢に入り、回復術を使おうとする。
「させるかっっ!!」
だが、その隙をついたゲーデに殴り飛ばされてしまう。
 「「「「キールッッッ!!!!」」」」
ガイ達四人の声が思わず名を呼ぶ。
「まずいっ・・・!!」
吹っ飛ばしたキールの元へ向かうゲーデに、動ける力を残していたルカとアシュトンがそれぞれ魔神剣とハリケーンスラッシュを繰り出す。
だが、力が足りなかったのか、難なくゲーデにかわされてしまう。
 「ふん・・!邪魔をするなら・・先に殺してやるっっ!!」
ゲーデはそう叫ぶや、アシュトンとルカに狙いを定める。
そして、二人めがけて上級術をぶっ放そうとしたそのときだった。
 「デモンズゲートッッ!!」
「アイシクルレインッッ!!」
空中に大きな門が現れ、中から巨大な死神が鎌を持って襲いかかったかと思うと、氷の雨がゲーデに降り注ぐ。
 「ぐ・・・!!」
アシュトン達のよりも強力な術に、さすがのゲーデものけ反る。
「誰だ・・・!?」
ゲーデが振り返ると、そこには紅翼を広げ、怒りの形相を浮かべているルシフェルと、ルシフェルに劣らず怒りをあらわにしているアッシュの姿。
 「貴様・・・!!よくもアシュトンを・・」
「テメェ・・人の弟に何してやがんだぁ?」
怒りに駆られたルシフェルとアッシュは共にゲーデめがけて術技をぶっ放す。
 「う・・うわあああっっ!!」
乱れ飛ぶ術技に負傷しているのも忘れ、巻き添えを食わないようにガイ達は必死に逃げ回る。
 「くそ・・・何なんだ・・コイツら・・・!!」
怒り狂ったルシフェルとアッシュの猛攻にさすがのゲーデも辟易した表情を浮かべる。
「く・・!!仕方ない・・・!!」
ゲーデは広範囲を攻撃する術を使って攻めたてる二人に目くらましをする。
その隙をつき、ゲーデは急いでその場を離れた。
 「おのれっ!!逃がすか~~~!!!!」
怒りが収まらない二人は、逃げようとするゲーデ相手にさらに術や技を繰り出して追い討ちをかけようとする。
だが、そこへ双剣と火球が二人めがけて襲いかかった。
 「誰だっ・・!!ってアシュトン!?」
「ルカ・・!?」
不意打ちした相手を振り返るや、アシュトンとルカだったことに、ルシフェルもアッシュも怪訝な表情を浮かべる。
 「何やってるのルシフェルッ!考えなしに術なんかめったやたらに使って!皆危うく巻き添え食って怪我するところだったんだよ!!」
「そうだよ!よく見てよ兄さん!」
アシュトンとルカは二人の術技で滅茶苦茶に破壊された周囲を指し示す。
 「す・・すまん・・・大丈夫か?」
「く・・・!」
アシュトンの言葉にルシフェルは謝り、アッシュは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
 「まぁ、とにかくいいじゃないか。二人のおかげで皆助かったんだしな」
そこへガイが仲裁に入る。
「ま、まぁそうだね。あっ!それよりキール!大丈夫!?怪我は無い?」
アシュトンはキールに駆け寄って尋ねる。
 「あ・・・あぁ・・・」
「よかった・・・」
キールが無事なことに、アシュトンは心底からホッとする。
「とにかく、早く帰ろう。またさっきのやつが現れるかもしれないしな」
「そうだ・・。おぃテメェ!まだ仕事残ってんだよ!さっさと戻りやがれ!?」
本来の目的を思い出し、アッシュがそう叫ぶ。
 「馬鹿者っ!アシュトンを放っておけるわけがなかろうっ!!」
「んだとーっ!テメェッ!それでも魔界のナンバー2かっ!ちゃんと仕事しやがれっ!」
「きーさーまっっ!!」
「わわっ!ちょっと喧嘩はやめてってばあっ!?」
「兄さんもあまり喧嘩しないでよ!」
今にも喧嘩になりそうな二人を、アシュトンとルカが止める。
 「ルシフェル・・・僕は大丈夫だからさ。だから戻って仕事してあげてよ。皆に迷惑かかっちゃうだろうし・・・」
「しかし・・・・」
「その気持ちは嬉しいけど・・。だからって甘えるのもよくないし・・・皆にも迷惑かけちゃうからさ・・。ね、お願い。アッシュの言う通りにしてあげてよ」
「く・・・仕方あるまい・・・」
「ケッ!最初からそうすりゃあいいんだよ!」
アッシュの言葉にルシフェルはムッとするが、アシュトンがいることを思い出し、その場は堪える。
魔界へ通じるゲートをルシフェルが潜ったのを確認すると、アッシュも魔界へと戻ろうとする。
 「あっ、兄さん。今日はありがとう、助けてくれて」
「ふん、勘違いするな。あの馬鹿を追っかけてきたらたまたま出くわしただけだ」
「でも、見て見ぬふりしないで助けてくれたんでしょう?ありがとう」
笑顔で礼を言うルカに、アッシュは一瞬グッときてしまう。
 「だから勘違いすんじゃねえって言ってるだろ!く・・!気分が悪いからとっとと帰らせてもらうぜ!」
そういうと、誤魔化すようにアッシュは急いで魔界へと帰っていった。


 「だ・・・大丈夫なのか?」
キールは思わず心配そうな表情で、出てきたボーマンとガイに尋ねる。
「ああ、ロイドもアシュトンもルカも皆見た目にはひどいが大丈夫さ」
「そ・・そうか・・」
ボーマンの言葉にキールはホッとする。
 「それより・・・キール、ちょっとこっちに来てもらおうか?」
「な・・どうしてだ!?」
「それはキールがよくわかってるだろう?」
ガイの言葉に、キールはぐうの音も出ない。
 「それじゃあボーマン、悪いが部屋を貸してくれるか?」
「別にいいさ。まぁあまりでかい音立てないでくれよ。怪我人がいるからな」
「わかってるさ」
そういうと、ガイはキールを連れて別の部屋へと行く。
 「さてと・・・・キール、自分が何をしたか、わかってるだろうな?」
ガイはキールと向き合うと、厳しい表情になる。
「だ・・だったらどうだって言うんだ!?ど、どうせ叩く気なんだろう!さっさと叩けばいいじゃないか!?」
これから始まるであろうお仕置きに、せめてもの虚勢を張って、キールはそう言い放つ。
 「やれやれ・・・もう少し反省の色を見せてくれるといいんだがなぁ・・・」
「う・・うるさいなぁ!?こうやって抵抗しないんだからいいだろう!!」
さすがに今回は自分でも悪いと思っているのか、普段と違って素直に膝に載せられる。
とはいえ、ため息をつくようなガイに、カッとなって叫んでしまう。
 「まあいいさ。キール、今日はちょっとやそっとじゃ許さないからな。覚悟するんだぞ?」
「イチイチ余計なことは言わなくていいって言ってるだろう!叩くならさっさと叩いたらどうなんだ!?」
相変わらずなキールの態度に苦笑しつつも、ガイはいつものようにキールのお尻をあらわにする。
そして左手でしっかりを押さえつけると、右手を振り上げた。


 バッシィィィ~~ンッッッ!!
「く・・・!!」
最初から容赦のない平手打ちに、思わずキールは声を漏らす。
 バッシィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!バッアァ~ンッ!バアッシィ~ンッ!
力強い音が響くたび、キールの表情が苦痛で変わる。
決して声を出すまいとしているだけに、より表情は苦しげだった。
 ビッダァ~ンッ!バッジィ~ンッ!バッアア~ンッ!バアッジィ~ンッ!
「・・ったく・・何をやってるんだ?アシュトンに謝るどころか、逆に怪我をさせて・・」
お尻を叩きながら、ガイはいつものようにお説教を始める。
 バッシィ~ンッ!ビッダァ~ンッ!バッアァ~ンッ!バアッジィ~ンッ!
「く・・!し、仕方ないだろう!?無実なのに・・・叩かれたって・・思うと・・どうしても・・癪で・・くぅぅ・・!!」
「でもやり過ぎて怪我をさせたキールが悪いだろう?ちゃんと謝るのは当たり前だろう?」
お尻を叩かれながらも弁解するキールに、ガイはそう言い聞かせる。
 「だ・・だからこうやって恥ずかしいのを我慢してお仕置きを受けてるんじゃないか!そ、それで十分だろう!?」
羞恥で顔を赤くしながら、キールは叫ぶように言う。
 「何を言ってるんだ。悪いことをしたんだから、お仕置きを受けるのは当然だろう?それだけじゃない、キール、あのまま飛び出してあんなところに行って、皆がどれだけ探したと思うんだ?」
キールのお尻に赤い手形を刻みながら、ガイはそう言う。
 「く・・!ぼ、僕だって好きで行ったんじゃない!気づいたらいつの間にかあんなところにいただけだ!?」
「それでも皆必死に探したんだぞ?どれだけ皆に迷惑や心配をかけたか、わかってるか?」
「く・・・!い、いちいち言わなくてもいいだろう!傷口に塩をすりこむような真似をして、悪趣味じゃないのか!?」
自分が悪いとはわかっていても、プライドが邪魔して、ついそんな態度になってしまう。
 「やれやれ・・・。相変わらずだな・・」
なかなか素直に謝らないキールに、ガイはため息をつく。
「まぁ今日はちょっとやそっとじゃ許してやる気はなかったけどな・・・。仕方ないな」
そういうと、ガイはいつものように膝を組み、ほんのり赤く染め上がっているお尻を突き上げる体勢を取らせる。
同時により勢いよく右手を振り上げた。
 ビッダァァァ~~~~~ンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~!!!!!
「ぐ・・!うっわぁぁぁあああ!!!!!」
より強烈かつ容赦のない平手の嵐にキールは絶叫する。
 「馬鹿ッ!何するんだっ!殺す気かっ!?」
「お尻叩きで死ぬわけが無いだろう?それより、しっかり反省してもらうぞ」
「やめろーっ!馬鹿っ!ひっ!痛ぁぁいぃぃぃ!!!!」
激しいお仕置きにキールが悲鳴を上げるのを尻目に、ガイは容赦なく平手打ちの雨を降らせ続けた。


 「ひ・・ひぃひぃん・・・ひっ・・いったぁぁ・・・」
ボロボロと涙を零してキールは泣きじゃくっていた。
お尻は今や、紅蓮に染め上がり、触ると火が燃えているのかと思うくらい熱い。
 「やめ・・やめて・もう・・お尻・・痛・・痛い・・ひぃん・・・」
プライドをかなぐり捨てて、キールは許しを乞う。
「キール、反省したか?」
一旦お尻を叩く手を止めて、ガイは尋ねる。
「した・・ひぃん・・した・・したから・・・も・・もう・・許して・・」
「じゃあアシュトン達皆にちゃんと謝るな?」
「あ・・謝る・・・ちゃんと・・謝る・・から・・・」
「よし・・・・。なら、いいだろう」
そういうと、ようやくガイはお尻を叩く手を止めた。


 「大丈夫か?痛いなら無理はするなよ?」
「どの口が言ってるんだ?散々叩いておいて!」
お尻の痛みに顔を顰めながら歩くキールにガイがそう言うと、キールはキッと睨みつけながら言う。
 「その元気なら大丈夫そうだな。それより、今度こそちゃんと謝るんだぞ」
「わかってるさ!イチイチ言わなくてもいいっていってるだろう!」
キールはそう反論すると、アシュトン達の病室へと入っていった。
 「ちょっといいか?」
「あれ?キールじゃんかよ?ガイとの話は済んだのかよ?」
ロイドはキールの姿に、そう尋ねる。
 「だから来たんじゃないか。全く・・それくらいのこともわからないのか?」
相変わらずなロイドに、キールはそう言う。
「それにしても・・・・見事なまでにボロボロだな・・・」
身体のあちこちに包帯をしているロイドやアシュトンの姿に、キールは思わずそう言う。
 「全く・・・ロイドやルカはともかく・・・。本当に・・馬鹿で・・お人よしだな・・アシュトンは・・」
「キールッ!そんなこと言うことねえだろう!?」
突然、アシュトンにそんなことを言いだしたキールに、ロイドは思わず怒る。
 「そうも言いたくなるさ。僕はあんなにひどいことをしたんだぞ?それなのにどうしてロイドと一緒に僕なんかを助けに来たんだ!この間だけじゃない!僕が・・いけすかなく思ってるのは・・わかってるんだろう!?」
アシュトンの悪口を言っているのに、罪悪感を抱いているのか、何だか自分の方が辛そうな表情を浮かべながらキールは言う。
 「だって、それはロイドのことが好きだからでしょ?ロイドが好きでたまらないから、ロイドと仲良くしてる僕が気に入らないんでしょう?」
「え・・?そうだったのかよ!?」
「ロイド・・少しは気づきなよ・・・」
初めて気づいたように言うロイドに、ルカが思わず突っ込む。
 「僕だってルシフェルのことが好きだから、キールの気持ちもわかるよ。だから、他人には思えないから・・・」
「そ、それをお人よしっていうんだ!ま、まぁ・・でも・・・助けてくれたのは・・・礼を言う・・」
「キール?」
「そ・・それと・・この間は・・カッとなって・・わ・・悪かった・・」
顔を恥ずかしさで赤くしながら、キールはアシュトンに謝る。
 「いいんだよ、僕こそひどいことしちゃってごめん。恥ずかしい思いさせちゃって」
「ほ、本当にお人よしだな、ロイド並みに。で・・でも・・そ・・それも・・悪くは・・ないか・・」
「え?」
「な、何でも無いっ!ただの独り言さ!よ、用を思い出したから帰るからな!」
そういうと、キールは慌てて病室を後にした。


 「僕としたことが・・。何を言ってるんだ・・」
病室で思わず口から出た言葉に、キールはそう呟かずにはいられない。
「全く・・・ロイドといい・・アシュトンといい・・・ガイといい・・どうしてお人よしやお節介ばかり僕の周りには集まるんだ・・・!!」
普段自分にやたらと関わる人物達を思い返し、キールはそうぼやく。
だが、彼らに自分が支えられていることも事実。
あんな恐ろしい魔物相手に、命がけで自分を守ろうとしてくれた。
 「全く・・・本当にバカばっかりだな・・!!なのに・・どうして・・」
バカ、お人よし、有難迷惑、そんな言葉ばかり浮かんでくるのに、排斥出来ない。
むしろ、ロイドのみならず、ガイやアシュトンとも一緒にいても悪くは無い、そんな気持ちが胸の奥から浮かびだしてきていた。
 「ああもうっ!一体何なんだっ!」
苛立ちのあまり、キールはそう叫ばずにはいられなかった。


 ―完―

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