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ダンジュー修道院15 抜き打ち検査



 キュキュ・・キュキュキュ・・。
石を磨く音と共に布を持った手が動かされる。
手の主は板状の石を拭いていた。
石には人名や享年などが書いてあることから墓碑だと推測できた。
拭いているのは、銀色の長く美しい髪を持つ美しい若者。
ラウールだ。
ラウールは墓石を途中まで拭くといかにも疲れたという表情をして手を休めた。
 「ラウールさぁん、何してるんですか~。サボっちゃ駄目ですよ~」
その傍らでチサトが別の墓碑を拭きながら声をかける。
「そんなこと言ったって疲れちゃったよ~」
「何言ってるんですか。お墓掃除初めてまだ20分も経ってないじゃないですか」
そう、二人は墓掃除の最中なのである。
 ここはダンジュー山の中腹にある墓地。
ここには修道士達のお墓があるのだ。
どこの修道院でも所属する修道士を埋葬するための修道院墓地というものを持っている。
ダンジュー修道院も例外ではなく、山の中腹に修道院墓地を持っていた。
そのため、墓地の手入れも修道士たちの労働の一つに入っている。
ちょうど二人は墓地での労働の番に当たっており、他の修道士たちと共に雑草刈りや墓標の掃除などを行っていた。
「ねぇチサちゃ~ん、お願いだからちょっとだけ休ませてよ~」
「駄目ですよ。ラウールさんのちょっとは長いんですから」
「ちぇっ、ケチ~」
ラウールは愚痴を言いつつも墓石掃除を再開する。
チサトも隣で別の墓石をせっせっと拭いていた。

 同じ頃、礼拝堂に隣接する修道士達の宿舎。
その宿舎を数人の修道士たちが回っていた。
回っているのはいずれも年配の修道士。
一番若いのがバルバロッサだった。
バルバロッサをはじめとする中年或いは老年の修道士たちはノートやペンといった筆記用具に合鍵の束を持っている。
彼らは合鍵でそれぞれの修道士たちの個室を開けると、中へ入っていった。
中へ入ると、修道士たちは室内のあらゆる場所を探し、ノートにある様々な項目にチェックを入れてゆく。
彼らがしているのは所持品検査のようなものだ。
 修道院というのは修業の場である。
しかし修道士も普通の人間、修業には関係のないものをこっそり持っていることがあるのだ。
俗人でも、例えば学校に勉強とは関係のないものを生徒が持ち込んで、持ち物検査で没収されるということがよくある。
それと同じようなことが修道院でもいえるのだ。
そのため、修道院ではときどき抜き打ちでそういう検査をするのである。
「ええと・・これでチサトの部屋は終わりだな」
バルバロッサは項目をチェックしながらチサトの部屋を見回す。
「何も妙なものは持ってねえか。まあ、調べんでも大方予想はつくが」
バルバロッサはチサトの部屋を見渡すと感心する。
違反するようなものは一つも見つからなかったのだ。
いつもちゃんと勤行をしてるチサトなら当たり前だろうが。
「って次はラウールの部屋かよ・・・」
バルバロッサは次に調べるはずの部屋を確かめるとため息をついた。

 「ったく・・だらしねぇなぁ・・・」
バルバロッサはラウールの部屋に入ると呆れたようにつぶやいた。
以前チサトが顔を顰めたのと同じような状況がそこには広がっていた。
酒瓶やら私服やらが乱雑に部屋中に散らばっているのである。
隠すということを知らないのだろうか、ベッド近くのテーブルにはギャンブル関連の雑誌やら何やらが置いてある。
バルバロッサはギャンブル雑誌などの没収すべき持ち物をチェックする。
他にも部屋からわかる生活態度などを書き記していった。
部屋のいたるところをチェックしているうちに、バルバロッサはベッドの下に何かあることに気付く。
「何だ・・・こいつは?」
見つけたのは複数の小箱。
小箱を引き出すと、それぞれのふたを開ける。
「!!!!」
中身を見たバルバロッサは一瞬びっくりしたような表情を浮かべる。
直後、その表情が怒りに変わった。
「あ・・あのガキャア・・・」


 「はあ~~~っ、疲れた~~~~」
労働の時間が終わり、部屋に戻ってきたラウールは解放されたような表情を浮かべると勢いよくドアを開けて中へ入る。
だが、一歩踏み込んだ途端に表情が変わった。
バルバロッサの姿を見たからである。
バルバロッサは両足を広げてベッドの上に腰を下し、腕組みをした体勢を取っている。
 「おう・・来たか・・」
バルバロッサは静かな声で言った。
「来たか・・って何でここにいるんですか?」
「話があってな」
「話?」
「まあ、とにかくこれを見ろや」
そういうとバルバロッサは何かを投げ出した。
投げ出したのは数枚の書類の束。
文面からすると借金の証文か何かと思えた。
 ラウールは証文を見るやサッと顔色を変えた。
「バクチ場の借金の証文だ。覚えがあっだろ?」
バルバロッサの言葉にラウールはコクコクと頷く。
もはや生きた心地もしなかった。
「実家をうまく言いくるめて・・・きちんと払ったようだが・・隠れてバクチにうつつを抜かしてたとはな・・・」
「ご・・ごめんなさい・・」
ラウールは震えながら謝る。
「まあ・・こっちは既に済んでるし、お前の遊び好きは今に始まったこっちゃねえからどうでもいい。だがな・・こいつは許すわけにはいかねえぞ!」
バルバロッサはそう言い放つや、今度は別のものを床に放り出した。
投げ出されたのはネガフィルムと何枚かの写真。
カメラにはチサトの姿が写っている。
それも色々で、勤行に勤しんでいる姿もあれば、ベッドで寝入っている姿、更には懺悔室でお尻を叩かれてお仕置きされている姿までもが撮影されていた。
ラウールの顔色はまるでこの世の終わりを迎えたかのように、お粥のような白っぽい灰色になっていた。

 歯茎がガチガチと音を立てるほど震えているラウールにバルバロッサはゆっくりと近づいてゆく。
襟首を掴んで顔を近づけると、表情を凄ませ、囁くような声で尋ねた。
「ワレ・・こいつは一体(いってえ)どういうこっちゃ?」
「い・・いや・・あの・・その・・・」
ラウールは何とかごまかそうとする。
だが、バルバロッサの目がギラリと光ったかと思うと、静かな、だが怒りの籠った声でさらに話した。
「おとなしくうたえや・・・小僧・・さもねえと・・生きたまま墓に埋めるで?俺の前はわかっとるんやろう?今でもその気になりゃ、テメエの咽喉掻っ切って山に埋めちまうぐらいやれんことはないんやで?」
元その筋の男に凄まれ、ラウールは恐怖を覚える。
「ひぃぃぃぃ。言います言います言いますぅぅ!だから殺さないで~~~~~」
「正直に話せよ。一つでも嘘ついたら許さねえぞ」
「は・・はい・・。日曜とかに礼拝に来る女の子たちに売ってたんですよ~」
「どういうことだ?」
「街の女の子たちの間でチサちゃん結構人気あるんですよ。女の子の中にはチサちゃんの写真欲しいって子もいて・・」
「んで、小遣い稼ぎに盗撮して写真売り出したってのか?」
「え・・えぇ・・おかげで街で遊ぶ軍資金が・・・」
「それはともかく何で俺がチサトのケツ引っ叩いとるときの写真まであるんじゃい!いくらなんでもチサトが可哀想すぎるだろうが!!」
「だ・・だって・・チサちゃんみたいな可愛い子がお尻ペンペンされてる姿に萌える子って結構いるんですよ。いわゆるスパマニアですね」
「何がスパマニアじゃこんドアホは~~~~~~~!!!!!」
バルバロッサは思いっきり叫んだ。
その剣幕に思わずラウールは後ずさる。
「テメェ・・こんなざけたことしやがって・・・覚悟は出来てんだろうなぁ」
ラウールは自分に降りかかる運命を察知する。
すかさず背をくるりと向けて逃げ出そうとするが、運悪く散らかしていた酒瓶の一つに足を取られてしまう。
よろめき、体勢を立て直そうとしたところでバルバロッサに片手を捕まえられてしまった。

 「いやあああ~~~~~~」
ラウールは必死に抵抗するが、バルバロッサに空しく押さえつけられてしまう。
「おら!大人しくせんかい!」
バルバロッサは再度ベッドの端に座るとラウールを膝に乗せ、いつもの手順でお尻をむき出しにしてしまった。
「ごめんなさい~~。ほんの出来心だったんです~~。反省してますから許して~~」
お尻を叩かれてはたまらないとばかりにラウールは必死で謝る。
だが、バルバロッサはそれを無視すると手を高々と振り上げる。
そして、思い切り振り下ろした。

 ビシリィィィィィィィ!!
「ひっ・・ぎにゃああ~~~~~~~」
平手とはとても思えないほど強烈な一撃がラウールのお尻を襲った。
(何!何なの一体!?)
思わずラウールは後ろを振り返る。
同時に恐ろしさで目を見開いた。
バルバロッサが節のついた棒のようなものを持っていた。
ケインだ。
「そ・・そそそそれは~~~~?」
ラウールは上ずった声で尋ねる。
「あん?見てわかるだろうが。おう、ワレがやらかしたことをよぉ反省せぇや」
「いっやあ~~~~~~」
ラウールは絶叫を上げたが、構わずバルバロッサはケインを振り下ろした。
 バアアアン!ビシィィィィィ!バアチィィィンン!
「んぎゃああ!ひぎぃぃんん!びひゃああんん!」
お尻に電撃のような鋭い痛みが走り、ラウールは今までのお仕置きとは比べ物にならない苦痛を味わっていた。
バアアアン!ビシィィィ!バアチィィィンン!
「ったく・・欲に目が眩んで・・」
バアアン!ビッタアアアンン!ビシャアンン!
「ぎゃひいい!ふぎひぃ!ふぐぇんん!」
バアアン!バシ―――――ンンン!バアアアアンン!
「盗撮するわ・・・」
バシィィィン!ビタァァァァンン!ビッシャァァァンンン!
「売り飛ばして金儲けしようとするわ・・・」
ビシィーリッ!バアチィ―――ンン!
「何考えてんだこのクソガキがあっっ!!!」
バアアアアンン!ビタァアアアンン!
「ひぎゃあ~~。ごめんなさい~~。だ・・だから出来心だったんですってば~~」
バアアアンン!ビタアアアアンン!
「まだんなこと抜かすかこんアホはぁぁぁ!!」
バルバロッサは容赦なくケインを振り下ろす。
ラウールが普段やっているようなこと、ギャンブルや女遊びならまだ我慢できた。
だが、今回の所業はあまりにも人としての道に外れている。
特に、チサトがお尻を叩かれている姿の写真まで売っていたことが何よりも許せなかった。
スキャンダルとかをネタにとことんまで人をしゃぶりつくすような下劣な真似のようなものを感じたからだ。
だから、今日は半端でなく怒っていた。
(いくら泣き喚こうが・・謝ろうが・・許してやらねぇからな)

 バアアアンン!ビシャアアアンン!ビッタアアアンン!
「ごめんなさいっ!ごめぇんなさい~~!もうしませえぇん~~~!」
「そんなん当たり前だろうがっ!こんアホがっ!」
バルバロッサはこれでもかと言わんばかりにケインを振り下ろす。
既にラウールのお尻は倍以上に腫れ上がり、肌も真っ赤に染まっていた。
だが、鬼のような表情になっているバルバロッサは獄卒にでもなったかのように容赦なく手を振り続けている。
バアアアアンン!ビタァァァァァンンン!ビシリィィィィィィ!
「ひぎゃ・・あああ~~~。助けて~~~」
ラウールはバルバロッサの膝から這い出そうとする。
「待てやコラ!」
バルバロッサはラウールの上着を掴むと引き戻す。
「やぁ・・もう嫌あ~~。ごめんなさい~~!もうしませぇんからぁ!だから許して下さい~~~!」
ラウールはもはや半狂乱状態だった。
いくら泣き喚いても謝っても許してもらえず、ひたすらケインを振り下ろされ続けたのだ。
(こ・・このままじゃ・・殺されちゃう・・)
実際、もはやお尻は赤どころか真っ青になってしまっている。
それどころか、もはや痛覚すらあるのかどうか怪しかった。
だが、バルバロッサの方も頭に血が昇っているのか、ケインを振り下ろす手をやめようとしない。
このままでは、本当にラウールがショックで死んでしまうのではと思えたときだった。

 不意に部屋のドアが開いたかと思うと小柄な影が飛び込んできた。
飛び込んできた影はラウールの上に覆いかぶさる。
逆上状態にあったバルバロッサは気付かずにそのままケインを打ち下ろした。
 バアシィィィィンン!
「きゃああ!」
影はケインを受けると女の子と間違えそうな甲高い声を上げる。
ラウールとは違った声にバルバロッサは我に返った。
我に帰った彼が膝を見下ろすと、ラウールを庇うようにチサトが覆いかぶさっているではないか。
「チサト!?」
信じ難い光景に思わずバルバロッサは目を白黒させる。
「もう許してあげて下さい!ラウールさん死んじゃいますよ!」
チサトはラウールを庇いながら言った。
「そ・・そんなこと言っても・・お・・お前の恥ずかしい姿を撮って小遣い稼いでたんだぞ。お前が一番怒る資格があるんだぞ?」
さすがのバルバロッサもそう言わずにはいられなかった。
いくらチサトの言葉でも、今回のことはそう簡単には許せないのであろう。
「そんなこと・・いいんです」
ためらうような口調と共にチサトは言った。
さすがに心の奥底では腹に据えかねるものがあったのだろう。
だが、チサトの目つきからするともう十分に罰を受けたと思っているようだった。
バルバロッサはそれを見て取ると、ラウールに尋ねる。
「本当に反省しとるんか?」
「し・・しましたぁ・・ごめんなしゃ・・い・・」
「アホウ!謝る相手が違うだろうが!」
バルバロッサは乱暴な手つきでラウールをチサトの方に振り向かせる。
「チサちゃ・・ん・・ごめんね・・本当に・ごめん・なさ・い・・。ゆ・・許して・・・」
「いいんですよ。それより、もうこんなことしませんよね?」
「うん・・絶対にしないよ・・・」
「それならいいんです」
 ラウールがチサトに謝ると、バルバロッサはラウールを膝から解放してやる。
ラウールは立ち上がろうとするもののお尻のあまりの痛さに、苦痛の表情を浮かべて床に崩れ落ちそうになる。
「大丈夫ですか!?ラウールさん!」
チサトは自分をネタに小遣い稼ぎをしようとした相手だということも頭から追い払い、ラウールを支えてやる。
チサトはラウールをようやくのことでベッドにうつ伏せに寝かせるとラウールのお尻を冷たい布巾で冷やし始めた。
それを尻目にバルバロッサは写真やネガを持って部屋を出て行った。

 火が爆ぜ、火の粉が飛び散る音と共に写真やネガが焼け焦げていった。
(それにしても・・今日は俺も随分と大人げなかったぜ・・)
ラウールから没収した品を焼き捨てながら、バルバロッサは自嘲した。
いくらチサトの恥ずかしい姿で小遣い稼ぎをしようとしたからと言って、さすがに今日のはやり過ぎだった。
チサトが止めなければ本当に怪我するくらいまで叩いていたかもしれない。
それどころか血が昇って殺してしまったかもしれない。
そう思うとゾッとした。
(まだまだ・・修業が・・足りねぇな)
全てを灰にすると、バルバロッサはその場を立ち去った。

 「本当に・・ごめんね・・チサちゃん・・・」
ラウールはうめきながら、介抱してくれるチサトに謝り続ける。
本当ならチサトから責められても文句は言えないのである。
それなのに文句を言うどころか、自分のお仕置きを止めて介抱までしてくれている。
そんなチサトの姿を見ていると自分の浅ましい所業が今さらながら恥ずかしくて、まともにチサトの顔を見られなかった。
「いいんですよ。人間、誰だって出来心を起こしたりするんですから。反省して二度とやらなければいいんですよ。そうでしょ?ラウールさん?」
「そうだね。チサちゃんの言うとおりだね」
「さ。氷乗せますからね。冷たいけど我慢して下さい」
チサトはそういうと氷の袋をラウールのお尻に乗せた。
「ひゃあ!チサちゃん冷たい!」
「ご・・ごめんなさいっ!大丈夫でしたか?」
「うふ。冗談だよ」
ラウールはそういうとイタズラっ子のように片目を閉じてみせる。
「もう!びっくりさせないで下さいよ~」
「あはは。ひっかかった~」
ラウールはイタズラが成功したからか笑い声を上げる。
チサトは怒った顔つきをして見せたが、ラウールが元に戻ったのを見ると安心したような表情を浮かべた。

 (って何でこうなるのよ!)
魔法で姿を隠し、窓の外から様子を覗いていたルクレティアは歯噛みして悔しがった。
実は今回の騒ぎには彼女が一枚噛んでいたのである。
彼女はラウールの遊び好きな性格に目をつけ、小遣い稼ぎにチサトの写真を売るというアイディアを彼に吹き込んだのだ。
その考えを植えつけると巧みに遊びに対するラウールの欲求を煽り、実行させた。
そして、それがばれると今度はバルバロッサのチサトに対する愛情をうまく刺激してやり、ラウールへの怒りで徹底的に頭に血を昇らせ、ラウールが大怪我するように仕向けたのだ。
悪魔にとっては、修道士や聖職者に悪事を働かせたり事件を起こさせるのは願ってもないこと。
そのために色々と手を回したのだ。
しかし、被害者となったチサトがまさかラウールを庇って許してしまうとは誤算だった。
(全く・・可愛いくせに忌々しい子供ね!)
ルクレティアはチサトにトゲのある視線を向ける。
(まあいいわ・・別の手を使えばいいだけのことよ)
ルクレティアは背中の両翼を広げると空へ向かって飛び上がっていった。

 ―完―
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theme : 自作小説
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