番外編 地獄の日常(SO2&テイルズより:ルシ/アシュ、共演パロ・BL)



(ルシアシュ悪魔&神父パロをベースにした、SO2&テイルズ共演パロです。BLありです。許容出来る方のみご覧下さい)


 アシュトンとルシフェルが人間界で共に暮らしていた時代から数百年後・・・。


 向こう岸が見えないほど広く大きな川があった。
川は渦を巻いて流れ、荒れ狂い、何千もの雷が一斉に鳴っているかのような轟音を立てている。
その波間には恐ろしい魔物が口を開けて待ち構え、川底にはビッシリと剣が植え込まれている。
そんな川を、ある者は安全でしっかりした、金銀宝石で彩られた美しい橋で渡る。
また、別の者は豪華さや安全性では劣る橋で、少し服が濡れてしまいながら渡ってゆく。
だが、多くの者は、渡りづらいところにわざわざ通された鉄の鎖に掴まり、流されそうになったり、怪物に襲われそうになりながら、濡れ鼠で必死に渡ってゆく。
 この川は三途の川。
この世とあの世の境を流れているといわれる川だ。
そう、ここは地獄。
正確にはその入り口だ。
 鉄の鎖で渡った者たちは、待ちかまえている魔物達によって服を奪われ、裸にされた後、棒や鞭で叩かれながらある場所へと向かってゆく。
その列を前へ前へとたどってゆくと、やがて、大きな大きな街が見えてきた。
 街はどこまで見上げてもてっぺんが見えないほどの高い城壁に囲まれている。
街の入り口となる大きな門を潜ったところに広がるメインストリートにも、死者の列が続いている。
死者の列は街の真ん中にそびえ立つ、大きな宮殿へと続いていた。
 その宮殿の中には、法廷を思わせる大きなスペースがある。
被告席には、死者たちが一人ずつ呼び出され、席に着かされる。
裁判長の席からは、宮殿の主が死者をジッと睨みつけていた。
睨みつけているのはルシフェル。
アシュトンが寿命を終えてこの世を去った後、地獄の王となり、死者を裁いているのである。
今日も、こうして死者の裁判を行っていた。
 「魔王様!私は悪いことはしておりませんっ!!」
ルシフェルに対し、死者は必死に訴える。
「馬鹿者めがっ!この期に及んでしらを切ろうというかっ!!これを見よ!!」
ルシフェルが指差した方向に、大きな鏡があった。
その鏡には、ちょうど今裁かれている男の生前の行為が映し出されていた。
男は盗賊の頭で、大勢の手下を率い、家々を襲っては、強盗のみならず、殺人や性的暴力など、様々な罪を重ねた姿が鏡に克明に映される。
それを見るうちに、被告の顔がどんどん青ざめてゆく。
 「いや~。残念でしたね~。地獄では嘘やごまかしは一切無駄なんですよ~。魔法の鏡の力で全てバレますからね~」
裁きの補佐役をしているジェイドが、笑顔で罪人にそう言う。
 「ああ、そうそう。嘘をついて誤魔化した者には、その罰として舌を抜くんですよね~。痛いけど我慢して下さいね~」
笑顔で言うジェイドに、罪人は逃げようとするが、屈強な魔物達に取り押さえられ、動けなくなる。
魔物は大きな釘抜きを取り出すと、無理やりに口をこじ開けさせ、釘抜きで容赦なく舌を引きちぎるように抜いてしまう。
苦痛に罪人は呻くも、ルシフェルは容赦なく裁きを下す。
 「こやつはなます地獄に落とせっ!!罪が消えるまで毎日毎日切り刻んで、現世で他人に与えた苦しみを味合わせてやるのだ!!!」
判決を聞くや、魔物達は顔を血だらけにして呻く罪人を連行してゆく。
 「次だっ!とっとと出て来ぬかっ!!」
ルシフェルは、番を待っていた死者にそう言う。
その死者はつい先ほどの裁きにすっかり顔を青くし、恐怖で縮こまっている。
だが、そんな死者を容赦なく魔物達は打ち据え、被告席へと着かせる。
 「よし・・貴様は・・・」
こうして、再びルシフェルの裁判が始まる。
休憩時間になるまでの間、こうしてルシフェルの怒号と死者たちの悲鳴や泣き声が法廷に響きわたり続けた。


 「では、午前の法廷はこれまで!午後の裁きは二時間後からとする!!」
閉廷を告げる魔物がそう言うと、地獄の役人達は食事などの休憩へと向かう。
その中には、ルシフェルの姿もあった。
 「アシュトンンンンンンン!!!!!」
アシュトンの名を叫びながら、ルシフェルは廊下を全速力で走る。
向かうは宮殿の奥、居住スペースにあるアシュトンの私室。
この宮殿にはアシュトンも住んでいる。
現世で恋人同士として深い絆で結ばれていた二人だったが、それは来世でも変わらない。
恋人どころか、今では結婚し、男同士だが夫婦となっていた。
「今、帰ったぞぉぉぉぉぉ!!!」
部屋にたどり着くや、ルシフェルは大声で叫ぶように言う。
休み時間にはアシュトンの元へ行き、午後の仕事が始まるまで二人で過ごす。
それが二人のいつもの昼だった。
 だが・・。
「ア、アシュトンッ!?ど、どうした!?どこに行ったのだ!?」
ルシフェルは我が目を疑う。
この時間なら、いつも自分を待っているはずのアシュトンがいないからだ。
 「おや~?どうかしたんですか~?」
そんなところへ、ジェイドが顔を見せる。
「おお!ちょうどよかった!貴様!?アシュトンを見ておらんか!?」
「さぁ・・私は・・・・ああ!そう言えば・・・」
ジェイドは思わせぶりな口調で言う。
 「ど、どうしたのだ!?」
「いえ。そういえばアシュトン神父が人目を盗んでこっそりとどこかへ出てゆくのを私の部下が見かけたと言っておりまして」
「何ぃ!?どこだ!?どこへ行ったのだぁぁぁぁ!!」
「さぁ、そこまでは・・。ですが、どこかの地獄を巡っているのではないでしょうかねぇ。今までの経験から考えると」
「な・・何だと!?こ、こうしてはおれんっっ!!」
ルシフェルはそう言うと、自慢の紅翼を広げて窓から飛び出す。
 「いや~。予想通りの反応してくれますね~。では、私も行きましょうか。面白いものが見れそうですからねぇ」
そういうと、ジェイドも楽しそうな表情を浮かべつつ、後を追っていった。


 三途の川のほとりに、どこまでもどこまでも続くかと思うほど、大きな河原が広がっていた。
「一つ積んでは父のため・・・二つ積んでは母のため・・三つ積んでは・・・」
河原のあちこちから、切なく、物悲しい歌が聞こえてくる。
歌の主は小さな子供達。
彼らは歌いながら、石を積み上げていく。
 ここは賽の河原(さいのかわら)。
幼くして死んだ子供達が集められている場所だ。
彼らは功徳を積む暇もなく死に、また自分の死によって、両親をはじめとする大切な人達に、大きな悲しみと嘆きを与えた。
そのことが罪とされ、石を積むことで、現世では積めなかった功徳を積むための塔を作ることを課せられている。
その塔を完成させれば、解放されるのである。
 だが、ここは地獄。
幼い子供に対しても、容赦のない世界。
子供達が懸命に石を積み上げ、もう少しで塔が出来るかと思われたそのときだった。
 突然、鉄棒や槍を持った魔物達が現れた。
「子供だろうが容赦はせんぞ!!ミンチにしてやるわ!!」
魔物達はそう叫ぶと猛り狂い、武器を振りまわして暴れ出す。
子供達は傷つけられてはたまらないと必死に逃げる。
その混乱で、苦労して積み上げた塔は崩されてしまう。
 そう、ここは決して報われない努力を強制される場所。
切り刻まれるなどの拷問とはまた違う、それだけに何ともやりきれない場所だ。
子供達は魔物の妨害によって、何度も何度も石を積まなくてはいけない。
これが何百年と続くのだ。
魔物達は暴れ狂い、次々と石塔を崩していく。
やがては、石塔では飽き足らず、子供達自身にまで、その暴力を向けようとしたそのときだった。
 「ハリケーンスラッシュッッッ!!!!」
突然、大きな竜巻が魔物達に襲いかかる。
魔物達は竜巻に巻き込まれ、吹っ飛ばされてしまう。
 「くそっ!?誰だ!?何をす・・・!!」
攻撃をされ、怒った魔物達は犯人に怒鳴りつけようとする。
だが、その姿を見るなり、ハッとした表情になる。
 現れたのはアシュトン。
現世と変わらない神父服姿に、愛用の双剣を構えている。
いつでも竜巻を撃てる体勢だった。
 「ア、アシュトン様っ!!ど、どどどうしてこちらに!?」
魔物達は敬礼すると、慌ててアシュトンに挨拶する。
「ここの子供達のことが気になって来たんだけど・・。君たちっ!!何てことするのさっっ!!」
先ほどの魔物達の行為に、アシュトンは烈火のごとく怒る。
 「し、ししししかし、こ、これが我々の仕事ですし・・」
「そ、そうですよっ!こ、子供と言えど、親を悲しませるという罪を犯した罪人です!!わ、私らが悪いわけではありませんっ!!」
「だからってここまで虐めなくていいでしょう!!この子達だって、好きで死んだわけじゃないんだよっ!!」
アシュトンは怒りの声を上げる。
 確かに、親に悲しみと嘆きを与えるのは罪だろう。
だが、ここまでやらなくともよいではないか。
この子達とて、好きで死んだり、ここへ来たわけではないのだから。
 「君たち・・悪いけど今日はもうここへは寄らないでくれる?」
「し・・しかし・・。そ、そそそれは・・ル、ルシフェル様に我々が・・・」
殺される、と言おうとするが、言葉が出なかった。
アシュトンの身体から、恐ろしい程の闘気が感じられたからだ。
 「君たち・・。僕の目に映らないところに行ってくれる?」
静かだが、有無を言わせない強い声でアシュトンは言う。
「わ、わわわかりましたっっ!!お、おいっ!今日はもう上がりだっ!!」
魔物達はそう言うと、逃げるように去ってゆく。
現世でも凄腕の双剣士として高い実力を誇っていたアシュトンだったが、来世でも地獄の獄卒や魔物達相手に毎日修行に励んでいるため、さながら○○無双状態で、獄卒達を蹴散らすなど朝飯前。
ましてやルシフェルの妻でもあるため、地獄の獄卒達にとっては、決して逆らってはいけない相手だった。
 「ごめんね。あの人・・じゃなかった、魔物達も仕事だからさ。どうしても君達を虐めなくちゃいけないんだ。でも、もう大丈夫だからね」
魔物達を追い払うと、アシュトンは周りの子供達に優しい笑顔を向ける。
 「皆、もう心配ないからね。怖い魔物が来ても、僕がちゃんと追い払うから。だから、今のうちに石を積んじゃおう」
アシュトンはそう言って、子供達に石を積むよう促し、自らも子供達の作業を手伝う。
 そう、アシュトンが賽の河原に現れたのは、子供達を救うため。
ルシフェルと共に地獄へとやって来たアシュトンが知ったのは、見るだけで怖気を振るう様々な罰に苦しめられる亡者たちの姿。
例え、現世での悪行の報い、現世できちんと行われなかった正義を果たすためといえど、あまりにも無残で、亡者たちが哀れに思えた。
特に、賽の河原の子供達の姿には、胸を引き裂かれそうになった。
アシュトン自身、よく町の子供達の遊び相手になっていただけに、なおさら見ていられなかった。
 それだけに、アシュトンは賽の河原をはじめとする、地獄の亡者たちを救いたい、その思いを強く抱くようになった。
そのため、宮殿を出ては亡者たちを救うために地獄を巡り、或いは裁きの場に立つ亡者の弁護をする。
そうして、死者たちを出来る限り救おうとしているのである。
今日もそのために、賽の河原へやって来たのである。
 「「「「「「「やった・・!!やったああーーーーーー!!!!!」」」」」」」
「皆っ!よく頑張ったねっっ!!」
ついに子供達が石塔を完成させる。
獄卒達の妨害に遭うことなく、塔が完成した事実に、子供達は無論、アシュトンも心から喜ぶ。
 「あっ!!見てっ!!皆っ!!」
アシュトンが空を指差し、子供達も空を見上げる。
地獄のどんより曇った、見ているだけで気が滅入りそうな空の所々から、眩い光が河原に向けて差しこんで来たのだ。
その光に伴って、天使達が降りてくる。
 「天国からの迎えが来たんだよ。もう、これで二度と怖い思いしながら、石を積まなくていいんだよ。さぁ、行って」
「ありがとう、神父のお兄ちゃん」
子供達はお礼を言って、アシュトンに抱きつく。
 「いいんだよ、これくらい。皆、今度生まれ変わるときは、ちゃんと命を大事にするんだよ。僕や色んな人が必ず見守っててくれるからね。どんなことがあっても次のときは生きていくんだよーーーー!!!!」
天使達に連れられ、天国へと登ってゆく子供たちへ、アシュトンは手を振りながら、大きな声で呼びかけ続けた。
 「よかった~。これでもう、あの子達は苦労しなくて・・・」
安堵の息をつくアシュトンだったが、直後、恐ろしい気配を感じる。
(ま・・まさか・・・!!??)
恐る恐る、アシュトンは背後を振りむく。
 「ア~シュ~ト~ン~~~~見~~つ~~け~~た~~ぞ~~~」
今にも血の涙を流しそうなほど恨めしそうな顔をしたルシフェルはそこに立っていた。
「ル、ルルルルシフェルッ!?い、いつの間にいたのっ!!??」
「あの小僧共が抱きついておったちょうどその時からな・・・」
「み・・見たの?」
「はっきりとな」
その言葉に、アシュトンは地獄行きを宣告された亡者さながらの表情になる。
 「まあよい・・。アシュトン・・帰るぞ・・」
「は・・はぃぃぃ・・・・・」
ただならぬ気配のルシフェルには逆らえず、アシュトンはそう言うしかない。
アシュトンは肩を落とし、諦めたような表情を浮かべると、ルシフェルと共に宮殿へと戻る。
 だが、悪いことというのは重なるもの。
地獄だからか、尚更だった。
 「おやおや~。お帰りでしたか~。ちょうどよかった」
「何だ?私はアシュトンと大事な話があるのだ!後にせい!」
出迎えたジェイドに、ルシフェルはそう言うと、アシュトンを連れて私室へ行こうとする。
 「手間は取らせませんから。2,3分だけお願いしますよ~」
「何なんだ!?邪魔をするなと・・ん!?」
ジェイドが目の前に突き出すように差し出した書類に、ルシフェルは怪訝な表情を浮かべる。
 「何だ?これはこの前、無間地獄(むげんじごく)送りにした罪人の書類ではないか?」
「ええ、そうなんですよ。ですが・・何故かなます地獄の方に書きかえられていましてね~」
「何だと!?」
ルシフェルは書類をひったくるや、目に穴が空くかと思うほど見つめる。
すると、確かに無間地獄行きと書いたはずなのに、なます地獄と書きかえられていた。
 「誰だぁぁぁ!!??こんなことをしおったのはぁぁぁぁ!!!」
書類の改ざんに気づき、ルシフェルは激怒する。
「それなのですが・・・。申し上げてよいのか・・・」
「何をつべこべ言っておる!?書類の改ざんは重大な違反ではないか!?言え!?言わぬか!?庇うなら貴様も同罪だぞ!!」
「しかたありません。では、言いましょう。アシュトン神父です」
その言葉に、ルシフェルもアシュトンも固まる。
 「貴様・・・嘘ではなかろうな!?」
「地獄の王のあなたに嘘なんかつきませんよ~。私だって舌を抜かれたくはないですからね~。まぁ、事情聴取はあなたにお任せします。では、証拠の書類はちゃんとお渡ししましたよ~」
そういうと、ジェイドは状況には不似合いな、さわやかな笑顔でその場を後にする。
 「アシュトン・・・」
「は、はいぃぃっっっ!!!」
恐怖で飛び上がりそうになるのを必死に堪え、アシュトンは返事をする。
「まずは・・・寝室へ行くぞ。話はそれからだ・・・」
「はぃぃぃぃ・・・・」
泣きそうになりながら返事をすると、アシュトンはルシフェルの後をついていった。


 「さて・・・アシュトン、ヤツの言ったことは本当なのか?」
寝室で二人きりになると、ルシフェルはアシュトンに尋ねる。
「うぅ・・。ごめんなさい・・・。ジェイドさんの言う通りだよ・・。しょ、書類を・・書き換え・・たんだ・・・」
「馬鹿者ぉぉぉ!!何故そんなことをしたぁぁぁ!!??」
「だ・・だって・・あんまりにも・・かわいそうで・・」
アシュトンは書類の罪人が裁判を受けた時のことを言う。
書類の罪人は、ある地方の領主だった男。
領主でありながら、領民の暮らしを守るどころか、ギャンブルや女遊びにうつつを抜かし、遊ぶ金欲しさに重税をかけて領民を苦しめた。
その重税を取るために、税を払えない者は怖気を振るうような拷問にかけ、或いは容貌の良い娘や少年の息子を取り上げ、自分の愛人にしたり、飽きれば闇業者に売るなどまだいい方で、些細な理由をつけて殺したりもしていた。
 それのみならず、遊ぶ金を造るために、法を捻じ曲げ、些細な罪で死刑にして財産を没収するなど、まさにやりたい放題。
ついには怒りのあまり、領民たちが一揆を起こし、最終的には中央政府軍が派遣されて武力鎮圧をするような事態にまで至った。
あまりにも非道な悪政ゆえ、他の領主達からも悪逆非道の男としてソッポを向かれ、中央政府によって、一揆がおこった諸悪の根源として、死刑にされてしまった。
そんな男であるため、地獄の裁きも重く、最高の罰である無間地獄行きを宣告された。
無間地獄とは、最も罪が重い者が行く地獄。
ここに落ちればもう、二度と出られない。
永遠に罰を受け続けなければいけないのだ。
 アシュトンも最初、資料を見た時、あまりの非道さに、無間地獄行きもやむなしと思っていた。
だが、いざ裁判の現場に立ち会い、刑を宣告されて泣き叫ぶ姿を見ているうちに、かわいそうになってしまったのだ。
それで、こっそりなます地獄に書き変えてしまったのである。
なます地獄も確かに苦しい。
だが、無間地獄に比べれば、まだ罪が軽い者が落ちる地獄。
罪が消えれば、また出ることが出来る。
地獄行き自体は変えられなくても、せめていつか終わりが来る地獄に行かせたい。
そう思ったのである。
 「だからってやる馬鹿がいるか!?重大な違反だぞ!?わかっていようが!!」
「ご・・ごめんなさい・・・」
「『ごめんなさい』ではないわ!わかっていような!」
ルシフェルはそう言うと、ベッドの縁に腰を下ろし、膝を軽く叩いて合図をする。
 「うぅ・・・・」
羞恥に顔を真っ赤にしながら、アシュトンは現世でやっていたように、ルシフェルの膝の上にうつ伏せになる。
ルシフェルはアシュトンを膝に乗せると、膝を組み、お尻を突き上げる体勢にさせた上で、お尻をあらわにする。
 さらに、ルシフェルはお仕置き道具を取り出す。
取りだしたのはパドルや鞭。
見ただけでも痛そうだが、恐ろしいことに、あるものは表面から熱風が、別のものは凍りつきそうな冷風、また別の道具からは雷撃が吹き出ている。
地獄という場所柄、どんな強力な拷問をされても死んだりすることはない。
そのため、お仕置き道具も現世とは比べ物にならない恐ろしいものになっているのである。
その中から、ルシフェルは熱風を吹き出すパドルを手に取った。
 「では行くぞ・・。覚悟はいいな?」
「は・・はぃぃぃ!!!」
今にも泣きそうになりながら、アシュトンは返事をする。
それを聞くと、ルシフェルはパドルを振りかぶった。


 ビッダァァァァ~~~~ンッッッッ!!!
ゴオオオッッッ!!!
「ひっ・・!!痛・・熱いぃぃぃ~~~~っっっっ!!」
容赦ない一撃がお尻に叩きつけられると同時に、アシュトンは飛び上がりそうになる。
お尻を叩かれると同時に、熱風が肌に吹きつけたのだ。
 バシィ~ンッ!ビダァ~ンッ!バッジィィ~ンッ!バッアァァ~ンッ!ビバッジィ~ンッ!バアッジィ~~ンッッ!!
「ひいっ!痛っ!熱あっ!ひいいっ!!ひぎっ!!痛っ!ひぎぃぃっっ!!」
打撃と熱、二つの苦しみが、同時にお尻に襲いかかり、アシュトンは悲鳴を上げずにはいられない。
 「この・・馬鹿者がぁぁぁぁ!!」
バッジィィィ~~ンッッッ!!ビッダァァァ~~ンッッ!!バアッジィィ~ンッッ!!
ビッダァァァ~~~ンッッッ!!バアッジィィ~~ンッッッ!!
ルシフェルは恐ろしいパドルで叩きながら、お説教を始める。
 「書類を改ざんなど何を考えているのだぁぁ!!それは重大な違反だろうが!!」
「ご・・ごめんなさぁぁぁいぃぃぃ!!ど・・どうしても・・かわいそうで・・・」
「理由になるかぁぁ!!私にお前まで裁かせたいのかぁぁ!!」
ルシフェルは怒りを燃え上がらせながら叩く。
 書類改ざんは重大な違反。
例え、魔王の妻であるアシュトンでも決して許されない。
下手をすれば、アシュトン自身も地獄で罰を受けねばならないかもしれないことになるのだ。
 「ご・・ごめんなさぁぁい・・。そ・・そんな・・つもり・・じゃ・・なかったんだよぉぉぉ・・・」
「つもりがなくてもやってはいかんだろうが!!それだけではないっ!!」
バアッジィィィィ~~~ンッッッッ!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~ッッッッッッッ!!!!!
怒りのボルテージが上昇し、ルシフェルのお仕置きはさらに激しいものへと変わる。
 「ひいいいっっ!!痛っ!熱ああああ!!ごめんなさぁぁぁいいい!!痛っ!熱っ!痛熱ぁぁぁぁぁあ!!!」
痛みと熱で、アシュトンは両脚を激しくバタつかせる。
 「今まで散々言っておいたはずだっ!!!地獄には決して行くなと!!なのに何故破るのだぁぁぁぁぁ!!!」
「ごめんなさぁぁぁいぃぃ!!でも・・皆を助けたいんだよぉぉ・・!!」
泣きながら、アシュトンは必死に言う。
「何を言うかぁぁぁ!?地獄がどれほど危険で恐ろしいかわかっているのか!?怪我どころでは済まんのだぁぁぁ!!」
怒りを爆発させながら、ルシフェルはお仕置きを続ける。
 地獄はどこもかしこも危険だらけ。
罪人たちをこれでもかと苦しめるため、恐ろしいトラップや魔物があらゆる場所に仕掛けられている。
それらは、罪人のみならず、獄卒達にとっても危険なもの。
地獄では、獄卒が仕事中の事故で地獄のトラップに巻き込まれてしまい、労災で怪我をすることも絶えない。
当然、その危険はアシュトンにも存在する。
だから、亡者を救うためでも、地獄には出かけて欲しくないのだ。
 「ご・・ごめんなさいぃぃ!!あ・・謝る・・からぁぁ・・・」
アシュトンは必死に謝る。
だが、ルシフェルはますます怒りを燃え上がらせる。
「それだけではない・・!!アシュトン・・・罪人どもに抱きつかれておっただろうっっ!!」
ルシフェルは賽の河原で見た光景に、パドルを今にも突きつけそうになりながら言う。
「う・・ご、ごめんなさい・・。で・・でも・・子供が嬉しくてつい・・や・・やったことだし・・・」
「ダメだ!例え子供だろうが・・他の男に抱きつかれているのを見て、どれほど私が悔しかったかわかるか!?それに・・私の言いつけを破っては罪人共の為になぞ働きおって~~~~!!それもどれだけ悔しいかわかるか~~~!!」
嫉妬のあまり、ルシフェルの身体からゴウゴウと炎の柱が燃え上がる。
 「アシュトン・・・どうやら私の妻・・そして地獄の王の伴侶としての自覚が足らんらしいな・・・。いい機会だ。たっぷりと躾けてやろう!!」
「ひ・・ひぃぃぃぃ・・・!!」
恐怖に震えるアシュトンを尻目に、ルシフェルはパドルを振りかぶる。
 ビッダァァァァァァァァ~~~~~~~ンンンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!
「ひぎゃわばぁぁぁぁわばばばばばばば!!!!!!!!!」
苦痛のあまり、意味不明な絶叫をアシュトンは上げる。
 バッジィィィィィィィィ~~~~~~~ンンンッッッッッ!!!!
バァンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!
「ごめんなさぁぁぁいいいい!!ごめんなさいっ!許してぇぇぇぇ!!痛ぁぁぁいいいぃぃぃぃ!!熱いぃぃぃぃぃ!!!!許してぇぇぇぇぇ!!ごめんなさぁぁいいい!!やめてぇぇぇぇ!!お願いだからやめてぇぇぇぇ!!!ごめんなさぁぁぁいぃぃぃ!!!」
その後、宮殿の業務が終わるまでの長い長い間、アシュトンの悲鳴とお尻を叩く音が宮殿中に響きわたり続けた。


 「ごめ・・ごめんなさぁぁぁいいぃぃ・・・ごめんなさぁぁぁいい・・・」
子供のように泣きじゃくりながら、アシュトンは謝る。
お尻は今や、倍以上は腫れ上がり、ワインレッドはおろか、焼きすぎた肉のようになっていた。
 「アシュトン・・・反省したのか?」
いったん、パドルを振るう手を止め、ルシフェルは尋ねる。
「したっ・・してるよぉぉ・・。書類改ざんして・・・ごめんなさぁぁい・・・」
「まだ、あるだろう?」
「ひぃん・・。心配させて・・それと・・ヤキモチ妬かせて・・ごめんなさぁぁい・・・」
泣きじゃくりながら、アシュトンは必死に謝る。
「二度としないか?」
「ひぃん・・。しませぇぇん・・。ごめんなさぁぁい・・・」
「わかればよい。だが・・・」
そういうと、ルシフェルはパドルを叩きつける。
 「ひっ・・ひぃぃぃ~~~~~んんんんっっっっ!!!!」
思い切りパドルで叩かれ、アシュトンは悲鳴を上げる。
「もし・・約束を破りおったら・・・一か月毎日叩くぞ!よいな!!」
ルシフェルの恐怖の宣告にアシュトンは必死に頷く。
それを見て、ルシフェルは今度こそパドルを手放した。


 「ぐぅぅ・・・!!」
「だ、大丈夫か!?し、沁みたのか!?」
痛みに声を漏らしたアシュトンに、ルシフェルは思わず心配そうな顔で尋ねる。
 「だ・・大丈夫・・これくらい・・」
「無理をしてはいかんぞ。地獄のお仕置きなのだからな。現世なら死んでおってもおかしくはないからな・・・」
「た・・確かにね・・。でも、その分君の愛を感じられるから、耐えられるよ」
「アシュトン~~~~!!!可愛いことを言いおって~~~!!!」
ルシフェルは嬉しさのあまり、抱きしめる。
 「く・・苦しいよ、ル、ルシフェルってば」
「す、すまん。だが、あまりにも嬉しいことを言うのでな・・。だがアシュトン、地獄は本当に恐ろしいところだ。お前が怪我でもしたら・・そう思うと私は気が気では無い。罪人たちを救いたい。その気持ちはわかる。だが・・くれぐれも無茶だけはしないでくれ」
「で、出来るだけ・・気をつけるよ。き、君には心配かけたくないし」
「わかってくれればよい。今日はもう疲れただろう。休むがいい。私がついているぞ」
「ありがとう。でも、仕事大丈夫なの?」
「仕事なぞあとでも出来る!!アシュトンの方が重要だ!!」
ルシフェルの態度に、思わずアシュトンは苦笑する。
だが、身体はやはり疲れているのだろう、アシュトンはそのまま静かに目を閉じると、眠りに落ちていった。


 数日後・・・。
「うう・・・痛たたたたた・・・・・。まだ・・痛いよ・・・・」
痛みに顔をしかめ、アシュトンはお尻をさする。
 「だから言ったじゃないか~。絶対後でバレて虐待魔にお仕置きされるからやめた方がいいってさ~~」
お尻をさするアシュトンに、レオンがそう言う。
この前、アシュトンが賽の河原へ行こうとした時、レオンは止めようとしたのである。
理由は、絶対ルシフェルにバレてお仕置きをされるから。
 「うん・・。そうなんだけど・・。やっぱり・・助けてあげたいんだよ、皆を」
「もう~、アシュトンお兄ちゃんってば本当、お人好しだよね~。皆悪いことばっかした罪人なのにさ~」
「レオン、そんなこと言っちゃダメでしょ?レオンだってジーニアスと一緒に尻打ち地獄に落ちてたの、忘れたの?」
「そ・・それは・・・」
アシュトンの言葉に、レオンは思わず言葉に詰まる。
実はレオンもかつては地獄にいた。
落ちていたのは尻打ち地獄。
その名の通り、地獄の獄卒達から、尻叩きのお仕置きを受け続ける地獄だ。
この地獄には、悪さの過ぎる子供や、子供時代にたくさんの悪事を重ねた者が落ちる。
レオンの場合、子供時代にジーニアスと共に、キールに対して様々な悪事を行ったため、死後、子供の姿に戻され、ジーニアスともども尻打ち地獄で、様々な道具でお仕置きを受け続けたのである。
だが、レオンもアシュトンのおかげで救われ、尻打ち地獄から解放されたのである。
 「わ、わかったよ。アシュトンお兄ちゃんのためだし、これからも手伝うよ」
「ありがとう。それじゃあ、今日もお願いね」
「わかってるよ。えーと・・今日の警備はと・・」
レオンはタブレットを操作し、今日の警備情報を呼びだす。
天才少年なレオンにとって、宮殿のセキュリティシステムをハッキングなど朝飯前。
「お兄ちゃん、今日は西側の警備が薄いよ」
「ありがとう。よし!じゃあ行こうっ!!」
アシュトンはそう言うと、レオンの情報を元に宮殿を抜け出す。
そして、今日も地獄のどこかで、罪人たちを救おうとするのであった。


 ―完―

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