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王国軍中尉ルチア・ルヴェル3 美剣士



  その青年と初めてルチアが出会ったのは夜勤明けのある朝のことだった。
仮眠する前に一息つこうと中庭へ出てきたときのことだった。
 まだ薄暗いこの時刻に、ルチアは誰かが中庭にいることに気がついた。
(珍しいわね)
気がついたときにルチアがそう思った。
ルチアが一息つこうとやって来たこの場所はいわゆる穴場というやつだ。
後輩のルゥ少尉やしばらく前まで自分が預かっていたさる外国軍の研修生ぐらいにしか教えていない。
しかしルゥ少尉は勤務が終わって帰っているはずだし、預かっていた研修生も本国へ帰国している。
となると誰か他の人物もこの場所を見つけていたのであろう。
 (誰かしら?)
決して好奇心が強いとはいえないルチア中尉だが、気になったらしくおもむろに穴場のあたりを覗いてみた。
 ルチアの視界に映ったのは一人の青年。
年は18歳くらい、上着を脱いで上半身裸になっているため、細身のすらりとした身体つきをしているのがよくわかった。
一見すると華奢に見えるが、無駄なく鍛えられており、しかもモデルや俳優顔負けのプロポーションをしている。
髪は見事な艶の紫色で尻にかかるくらい長く、ポニーテイルにしている。
そのため、青年が身体を動かすたびにバサッと揺れ動いた。
切れ長の瞳は髪と同じ見事な紫色で、女性と見まがうばかりの美しい、だが激しいものを秘めた面立ちをしている。
青年は左手に何やら細長いものを持っている。
彼が握っているのは鞘ぐるみのサーベル。
全長は90センチ程で、鞘の形からまっすぐな諸刃のタイプだと推察できた。
青年は半裸のまま静かに佇んでいる。
だが、数枚の葉がひらひらと落ちたかと思うや、青年の身体がぐるりと回転した。
同時に柄に右手がかかったかと思うと柄の中から閃光が迸る。
青年は身体をコマのように一回転させながら落ちてくる葉を空中で刺し貫く。
全ての落葉を貫くや、地面を蹴って数mも飛び上がる。
飛びながら青年は空中で何度も剣を繰り出し、高い場所の枝に繁る葉を的確に刺し貫いてゆく。
20枚ほど飛んでいる間に葉を貫いたところでようやく着地した。
 ルチアは声を出すことも出来ずに息を呑んでいた。
神業とでもいうべきものを見たのだから無理もあるまい。
あまりの業に金縛りにでもなったかのように立ち尽くしていたそのときだった。
 「何見てやがんだよ!!」
突然、荒っぽい声が聞えてきた。
ルチアはハッとして我に返る。
すると、例の美青年がこちらを見ていることに気がついた。
 美青年の表情は憤怒に彩られていた。
「見せ物じゃねえんだよ!!この馬鹿女!!」
その美貌からは想像も出来ないような荒っぽい言葉が飛び出してくる。
「チッ!!・・・けったくそ悪い・・」
この上も無く不機嫌極まりない表情になると青年は脱いでおいた上着を羽織り、その場を後にした。


 それから数日後のこと・・・・。
ルチアはショッピングセンターの駐車場にいた。
ルチアは後輩のルゥ少尉と共に食べ物や雑貨品を車の後部座席に入れている。
「悪かったわね。せっかくの非番なのに買い物につき合わせちゃって」
「いいんですよ別に。先輩と私の仲じゃないですか」
ルゥ少尉はそういうとルチアはニコリと笑みを浮かべる。
今日は非番の日だったので買い物へ出かけていたのである。
 「そうだ、せっかくだからどこかでお茶でも飲んでいかない?いいお店を見つけたのよ」
「え?いいんですかぁ?」
「買出しに付き合ってくれたお礼よ」
「わぁ、ありがとうございます~」
ルゥ少尉が礼を言い、二人が車へ乗り込もうとしたそのときだった。
 ドオオンンンンンッッッッ!!!!!
突然、近くで大きな音が響いた。
何だと思って音のした方向を振り返るや、数台向こうに止まっている車の上に人が蹲った体勢で乗っかっている。
車は衝撃で完全に屋根がひしゃげてしまっていた。
そうかと思うと今度は近くの車に別の人物が飛び降りる。
同じようにその衝撃で車の天井がへこんでしまった。
 駐車中の車に降り立った両者は足を伸ばして立ち上がると互いに相手と対峙する。
一人は身長190センチはあろう、半裸の屈強な大男。
猛禽のような鋭い面立ちで、肌や髪の色などからアジア系と推察できた。
 もう一人はすらりとした細身の若い男。
こちらは女性と見まがうほどの美青年で諸刃の真っ直ぐなサーベルを手にしている。
王国軍の制服を着ていることから軍人であることはわかったが、通常の軍服とは異なって上着の裾が脛の半ばに達する長さだった。
 (あの子は・・・)
ルチアは目の前の美青年を一目見るや、数日前に司令部で見かけた若者だとわかった。
美青年はサーベルを構えるや、車の天井を蹴って大男に向かって飛びかかる。
飛びかかると同時に青年はサーベルを突き出した。
狙ったのは心臓、最初から本気で相手を倒す気なのが伺える。
 男はドンッという音と共に身体をコマのように縦に回転させながら宙返りしつつ高々と飛び上がる。
錐のように高速回転しながら、男は片手を伸ばした体勢で青年の頭上目がけて襲いかかってきた。
青年は車から転がり落ちるようにして地面に降り立つ。
直後、男は錐揉み回転しながら青年がいた車の天井に逆立ちの状態で着地する。
 鉄が引き裂かれる凄まじい音がしたかと思うと、車の天井は雑巾のようにねじり上げられた上に根元から引きちぎられてしまった。
男の凄まじい肉体能力にルチアもルゥもぞっとする。
しかし、目の前の美青年は恐れもせずに飛びあがる。
ルチアとルゥが見ているのを尻目に、二人の人物は十数メートルも高く飛びあがってゆく。
飛びあがりながら青年は目の前の男に向かって突きの嵐を繰り出した。
余りの素早さのためにルチアたちには刃が十数本に増えたように見えた。
 男は何の防具もつけず、素肌のままの両腕を巧みに捌いて青年のサーベルを受け流す。
逞しい筋肉に覆われた二つの腕と鋭い刃が激しく交差し、相手の身を狙う。
だが、男は巧みに空中で身体を捻って青年の突きをかわす。
かわしながら男は片腕を伸ばして青年の胸倉を引っ掴んだ。
胸倉を引っ掴むと同時に男は青年を掴んだまま、グルリと空中回転して青年を下にする。
そしてそのまま落下した。
 ドォォォォォンンンンンッッッッ!!!!!
激しい音と共に青年が駐車場の路上に叩きつけられる。
青年は急降下したにも関わらず生きていたが、衝撃のせいか苦痛に顔を歪める。
だが、男は容赦なく首をへし折ろうと青年の首に手をかけようとする。
そのとき・・・。


 「そこまでよっっ!!!」
突然、女の強い声が響き渡った。
男がグルリと振り向くとルチアとルゥがそれぞれ拳銃を構えている。
「王国軍よ!投降しなさい!!」
ルチアは拳銃を男に突きつけてそう命令する。
詳しい事情はわからないものの、この男が青年を殺そうとしているのはわかった。
殺人未遂の現行犯を目撃した以上、軍人として放っておくことは出来なかった。
だが、男は銃が目に入っていないのかゆらりと立ち上がったかと思うとそのままこちらへ向かって一歩足を進める。
警告射撃をしようとルチアとルゥが引き金を引こうとしたそのとき、突然男の姿が消えた。
 ルチアが気付いたときには男は目の前に立っており、二人の拳銃を奪い取っていた。
男は無造作に拳銃を握り締める。
すると信じ難いことに拳銃が粉々に砕け散ってしまった。
二人があまりの出来事に目を見張っている僅かの隙に男が上段回し蹴りを繰り出し、ルゥとルチアを蹴り倒す。
二人が倒れたと同時に男は地面を蹴って飛びあがるや、車の屋根の上を走って逃走してしまった。


 「しま・・っっ」
ルチアは思わず呟くがもはや男は遠くへ逃げ去ってしまっていた。
「先輩、大丈夫ですか?」
ルゥは蹴りをくらった場所をさすりながらヨロヨロと立ち上がる。
かなり強烈な蹴りでまだジンジンいっていた。
 「え・・えぇ。それよりもこの子の方よ」
ルチアはそういうとさっきまで男と戦っていた美青年の方へ歩み寄っていった。
「大丈夫かしら?」
ルチアは心配そうに尋ねる。
見知らぬ若者だが王国軍の軍服を纏っている以上、放っておくわけにはいかなかった。
 「よくも邪魔しやがったな!!」
青年は礼を言うどころか、凄まじい剣幕でルチアに怒鳴りつけた。
「ちょっと!そんな言い草はないでしょう!助けてあげたんだから!」
ルゥ少尉は若者の態度に思わずカッとなる。
「うるせえよ!!せっかく追い詰めたのに邪魔しやがって!!おかげで逃げられちまったじゃねえか!!このオバン!!」
「オバンですって!もう頭来たっっ!!!」
ルゥは怒りの声をあげると青年に詰め寄ろうとする。
「こら!やめなさい!ルゥ少尉!」
ルチアは慌ててルゥを止めようとして二人に詰め寄るが、二人は既につかみ合いを始めてしまう。
ルチアが何とか二人を引き離そうとしているところへパトカーのサイレンがこちらへ近づいてきた。


 クソッ!クソクソクソクソクソクソクソクソクソッッッ!!!
紫髪の美青年こと、マウロ・ジングウ少尉は怒りの言葉を吐き散らしていた。
常人離れしたその美しい顔は憤怒にすっかり彩られ、まるで般若の面のようだった。
 (畜生!!せっかく追い詰めたってのによ!!あの馬鹿女どものせいで!!)
マウロはショッピングセンターで出会った二人の女の顔を思い浮かべる。
思い出すやマウロは再びはらわたが煮えくり返ってきた。
「くっそ・・!!もう少しでツイスター(ねじる人)・カオを仕留められたってのに!!」
マウロはドンッとテーブルを叩いて悔しげに言う。
 ツイスター・カオとはマウロとショッピングセンターで戦いを繰り広げた男のこと。
彼は超人的な拳法の技を武器に暗殺を生業としている国際手配犯だった。
この国に於いても数件の暗殺を行っており、その容疑で王国軍に追われる身であった。
マウロはそのツイスター・カオの捜査を担当していた。
 ようやくのことでカオの潜伏先を突き止めて踏み込んだものの、感づいたカオと一戦交える羽目になり、例のショッピングセンターまで戦いながら追っていったのだ。
なのに非番中の軍人とおぼしき女たちが邪魔に入った。
おかげで取り逃がしてしまい、悔しくてたまらなかった。
(絶対に・・許さねえからな!!邪魔しやがって!!)
怒りの余りにマウロが心中でそう叫んだときだった。
 「随分ご機嫌斜めなようねぇ・・・」
突然、誰かの声が聞えてきた。
マウロは傍らに置いてある愛刀を引っ掴むと声のした方向を振り向く。
すると一人の女が立っていた。
 立っているのは28,9歳の女性軍人。
胸や袖のマークが佐官クラスであることを示している。
短めの茶色い髪と瞳をした美しい女性だが、その表情には何か油断ならないものを感じさせた。
彼女の名はメッシナ・ルキウス、王国軍で大佐を勤めていた。
 「何でいるんだよ・・・・」
マウロは不機嫌極まりない表情で腰を降ろす。
「そうつっけんどんにしなくてもいいじゃないの。フフフ、私はあなたの上司なんだから」
「うるせえな。チッ!」
マウロは舌打ちすると顔も合わせたくないとばかりにプイと横を向いてしまう。
 「まぁいいわ。それよりあなた、ツイスター・カオを取り逃がしたそうね?」
マウロはその言葉を聞くや、キッと睨みつける。
「君ともあろう者がどうしたのかしら?狙った相手を取り逃がすなんて」
マウロはズボンの裾をギュッと握り締めて唇を噛みしめている。
拳は熱病にでもかかったように小刻みに震えており、唇からも今にも血がにじみ出そうだった。
彼自身が何よりも悔しくてたまらないのだ。
「まぁそれは仕方が無いわ。往々にしてある事態だから。でも、これは見逃すわけにはいかないわね」
そういうとメッシナは紙の束のようなものを取り出した。
 「何だよコイツは?」
チラリと目をやるとすぐにマウロは視線を戻して尋ねる。
「請求書よ。マウロ少尉、あなた随分と派手にやってくれたようね」
「うるせぇな。向こうが暴れたんだから仕方ねえだろ。不可抗力だ」
ふんと鼻を鳴らすとマウロは言う。
「不可抗力ねぇ・・・。街区一つ目茶苦茶にしておいてそういうつもりかしら?」
メッシナはニコニコと笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
 そう、マウロ少尉はカオとの捕り物の際、格闘モノの日本製少年漫画さながらの無茶苦茶な大立ち回りを繰り広げ建物や車を幾つも目茶苦茶にしてしまっていたのである。
「それに助けに入ろうとした非番の軍人たちに暴力を振るったそうね?」
メッシナは静かな声で尋ねる。
マウロは無言だったが、表情がそれを認めていた。
「全く・・・おかげで『おたくは部下に一体どういう教育をしているんだ!?』ってあっちこっちから文句を言われたわ。わかっているのかしら、君は?」
やれやれといった表情でメッシナはため息をつく。
 マウロは聞いているうちに我慢できなくなってきた。
「うるせえよ!!一々勘に触る言い方しやがって!!」
マウロは声を荒げて言う。
本当は彼自身も自分に非があることはわかっている。
だが、例え上司でもこの女相手にそれを認めることは嫌だった。
いつもいつも人を馬鹿にしたような態度を取るこの女が気に入らなかった。
そのニヤニヤした表情を見るとイライラしてくるのだ。
しかも向こうはそれを知って楽しんでいるようにも思える。
おかげでもっと気に入らない。
 「あら?あなた自分の非を認めないつもり?」
「うるせえよ!!カオの野郎が悪いんだよ!!それに非番のくせにしゃしゃり出てくる連中の方が悪いだろうが!!クソッ!!出てけよ!!馬鹿女っっ!!!」
マウロは怒りに顔を真っ赤にすると玄関の方向を指さした。
 「ふふふふ・・あなた、全然反省してないのね?」
ニコニコと笑みを浮かべながらメッシナは尋ねる。
「うるせえよ!俺は任務を果たそうとしただけだ!!文句言われる筋合いなんざねえよ!!とっとと帰れ!!けったくそ悪いっっ!!!ぶっ殺すぞっっ!!」
顔を怒りにすっかり紅潮させてマウロ少尉は罵った。
 「ふふ・・・自分が悪いっていうのに・・・悪い子ねぇ。本当に悪い子ねぇ・・」
突然、メッシナが笑みを浮かべながら口を開いた。
「ふふん。そんな悪い子にはお仕置きが必要ねぇ」
メッシナは挑発するように言う。
「あぁ!?ふざけんなよ!!もう我慢できねえっっ!!!」
自分をからかうようなメッシナの言葉に、マウロは完全にカッとなっていた。
本能的にマウロはメッシナに向かって飛びかかっていた。
 いけ好かないその顔に向かってマウロは思いっきり拳を叩き込もうとする。
だが、次の瞬間、マウロは床に倒されていた。
「忘れたの?あなたが剣の使い手なように私も柔道が使えるのよ」
メッシナの言葉にマウロはやっきになって殴りかかろうとする。
だが、メッシナはそれをかわしてもう一度床に倒したかと思うとマウロを膝の上に載せた。


 細身とはいえマウロも年頃の男、青年の重みを膝に感じてメッシナはつい感嘆の息を漏らす。
メッシナはマウロの長い上着をまくり上げるとズボンを降ろしにかかった。
「おい!何してんだよ!」
さすがにマウロは抗議する。
「お尻出すに決まってるじゃないの」
「何だと!何する気だよ!!」
「ふふふふふふ。悪い子へのお仕置きって言ったら昔から『お尻ペンペン』に決まってるじゃない」
「な・・何だと・・?」
マウロは一瞬、信じられないといった表情になる。
だが、メッシナがズボンを脱がしにかかるや、激しく抵抗した。
「ふざけんじゃねえよ!何で俺がケツ叩かれなきゃいけねんだ!!離せっ!離しやがれっ!!」
マウロは両足を激しくバタつかせる。
「この期に及んで・・往生際の悪い子ねぇ」
呆れたような、だがどこか楽しんでいる表情を浮かべるとメッシナはしっかりとマウロの腰を押さえつけてズボンを降ろしてしまう。
あっという間にマウロのお尻があらわになった。
 「まぁ・・・」
メッシナはマウロのお尻に思わず感嘆の声を漏らした。
白磁を思わせる白く美しい肌に小ぶりで形の整ったお尻は女性のお尻顔負けの美しさだった。
「み・・見るんじゃ・・ねぇ・・・」
マウロは悔しさに顔を真っ赤にし、震える声で言う。
恥ずかしくて悔しくてたまらない気持ちでいっぱいだった。
「何を言っているの。恥ずかしいのもお仕置きのうちよ」
わざと羞恥を煽るようにメッシナは言う。
「うるせぇ!とっとと離せよ馬鹿女ァ!!」
マウロは噛み付くように叫ぶが、メッシナはそれには取り合わずにマウロを再び押さえると、ゆっくりと右手を振り上げた。


 バアシィンッ!!
「・・・っ・・」
甲高い音と共にお尻にビリビリという痛みが弾ける。
危うく声を漏らしそうになるが、マウロは慌てて声を飲み込んだ。
バアシィンッ!バアンッ!バジィンッ!ビダァンッ!
「くそっ!やめろっ!やめろよ!この馬鹿っ!アホっ!クソ女っ!」
お尻を叩かれているにも関わらず、マウロは後ろを振り向くとあらん限りの罵声をメッシナに浴びせかける。
「全く・・あなたって子は・・自分が悪いっていうのに・・・」
バアシィンッ!バアンッ!バッシィンッ!バアンッ!ビダァンッ!
「うるせえっ!任務を果たそうとしただけだろうが!!何で俺がケツ叩かれなきゃなんねえんだよ!!しかもお前なんかによ!!ふざけんなこのクソババア!!」
反省するどころか暴言を吐き続けるマウロに思わずメッシナは苦笑する。
(でも・・そこが可愛いのだけどね)
マウロのお尻を叩きながらメッシナはそう呟く。
それを示すかのようにメッシナの口元は微かに笑みを浮かべていた。
 バアシィンッ!バアチィンッ!ビシャアンッ!バアッシィンッ!
「やめろっ!くそおっ!畜生っ!やめろって言ってんだろうがあっ!」
肌を容赦無く叩く音に負けない声でマウロは罵声を上げ続ける。
お尻は既に真っ赤に染まっていることを考えれば中々の根性といえた。
「取り逃がしたのはまぁ仕方ないとしても・・・・」
バアジィンッ!バアンッ!ビダバアンッ!ビッダバアンッ!
「離せっ!くそっ!離せっつってんだよぉ!馬鹿女アアッッ!!」
ビダバァンッ!バアジィンッ!ビバジィンッ!バアジィンッ!
「街をあちこち壊して・・・しかも第三者に八つ当たりするなんて・・」
ビダバアンッ!バアジィンッ!ビッダバァンッ!バアッチィンッ!
「うるせーっ!クソババアッ!離せっ!この野郎っ!」
マウロは相変わらず悪口雑言を叫び続ける。
だが、少しずつだがマウロの表情に疲れや苦しさといったものが見え始めていた。
「それが軍人として取るべき態度だと思っているのかしら?」
「うっせえよっ!てめえ何かに説教される筋合いはねえよ!馬鹿女っ!クソババアっ!離せよっ!畜生っっ!!」
マウロはキッと睨みつけるとメッシナにありったけの罵声を浴びせる。
 「全然反省してないのね。よくわかったわ」
メッシナはそう言ったかと思うと足を組む。
おかげでマウロはお尻を突き上げる体勢になった。
しかもどこから持って来たのか、いつの間にかメッシナは靴べらを手にしている。
高く手を振り上げたかと思うと、メッシナは靴べらを振り下ろした。


 バアシィ――――ンンンンンッッ!!
「く・・っっ!!」
今までとは比べ物にならない強烈な苦痛にマウロは思わず苦痛の表情を浮かべ、メッシナのズボンの裾を握り締める。
ビバジィ――――ンンンン!!
バアシィ――――ンンンン!!
ババジィ――――ンンンン!!
「やめろっ!ぐっ・・!やめ・・!」
マウロは高慢な態度でメッシナに命令し続けようとする。
だがメッシナは容赦なくマウロのお尻に靴べらを振り下ろす。
ビダバァ――――ンンンン!!
ババシィ――――ンンンン!!
ダッバァ――――ンンンン!!
「やめろぉ・・くそぉ・・やめろぉ・・畜生ぉぉ・・」
マウロは必死に抗議するが、散々に叩かれたお尻は痛みを主張し、マウロは苦しさと痛さに息は上がり、肩を上下させずにはいられなかった。
 (何でだよ・・・!!何で俺が尻なんか叩かれなきゃいけねえんだよ・・!!)
マウロは心の中でそう叫んでいた。
それは自分に非や責任が全くないとは思っていない。
しかし、幾ら上官でもメッシナに対してそれを認めるのは癪だった。
だからつい反抗してしまった。
だが、だからって18歳にもなった男を小さい子供のように膝に乗せてお尻を叩くだなんてあまりにもひどすぎる。
これでは男としてのプライドなどボロボロだ。
 「何を言っているの?誰が悪いのかしら?」
メッシナはマウロのそんな気持ちには構わず靴べらを振り下ろし続ける。
「うるせえっ!!人に恥かかせるつもりでやってんだろ!?このサドっ!!鬼畜女っ!!クソバカババアッッ!!絶対ぶっ殺してやるからなぁ!!」
自分の首を締めるのは間違いないにも関わらず、マウロは叫ぶ。
(全く意地っ張りなんだから。でも、だからこそいじめたくなるわ)
メッシナは心中でほくそ笑みながら何食わぬ顔でお尻を叩き続ける。
彼女はマウロのプライドの高さを計算に入れた上でお尻叩きのお仕置きを決断したのだ。
こんな子供のようなお仕置きをされたならばマウロのことだ。
烈火のごとく怒り反抗してくるだろう。
そして絶対に屈服してたまるかと意地を張り続けるだろう。
そんな姿を見たい、そして意地を張らせに張らせ続けた上で降参させてみたい、マウロを見ているとメッシナはそう思わずにはいられなかった。
(そのためには・・これでは不足だわ・・・)
メッシナはそうつぶやくとさらに腕に力を込めた。


 「畜生・・やめろぉ・・やめろってぇぇ・・・くっそ・・うぅぅぅ・・・」
マウロは力のない声で呟いた。
お尻は真っ赤というレベルを既に超えており、身体はぐったりしている。
目尻には涙が浮かんでおり、息も絶え絶えといった状態だった。
「反省した?」
一旦お尻を叩く手を止めるとメッシナは尋ねた。
「し・・したよ・・く・・・わ・・悪かったよ・・・」
渋々といった感じでとはいえ、苦しそうな息の下でマウロは謝る。
幾ら強情なマウロでももうお尻は限界だった。
悔しいが降参する他なかった。
 「違うでしょう。こういうときは『ごめんなさい』というものと決まっているのよ。さぁ、言ってごらんなさい?」
「な・・何だとっ!」
マウロはメッシナの言葉に信じられないといった表情を浮かべる。
「本気で言ってんのか!?あん!?」
「本気よ。さぁ、『ごめんなさい』しないと終わらないわよ?」
メッシナは意地悪そうな笑みを浮かべるとそう言う。
「ぐっ・・・・・」
マウロは不機嫌な表情になると黙り込んでしまう。
もうお尻は限界だ。
だが、『ごめんなさい』だなんて幼児でもあるまいし絶対に言いたくない。
「あら?どうしたの?言えないのかしら?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながらメッシナは尋ねる。
マウロはメッシナのそんな態度に再びムカついてきた。
こんな奴の言いなりになってたまるものか。
そんな感情が沸きあがってくる。
 「うるせえよ・・・・」
気付いたときにはマウロの口からそんな言葉が出ていた。
自分の首を締めることはわかっていたが、もうどうにも止まらなかった。
「ふざけんじゃねえよ!何で俺がケツ叩かれた上にごめんなさいなんて言わなきゃなんねんだよ!!いい加減にしろよ!!」
「本気で言ってるのかしら?」
「決まってんだろうが!!誰が言うか!言うくらいならケツが壊れた方が千倍もマシだ!!」
「よーくわかったわ。全然反省してないのね。そんな悪い子にはもっときっつ~いお仕置きをしてあげなきゃねえ・・・」
楽しそうに呟きながらメッシナは再び靴べらを振り上げた。


 ビバジィ―――ンンン!!バアジィ―――――ンンンン!!!
「ぎっ・・!ぎにひっ!」
容赦の無い尻打ちが再び開始された。
マウロは歯を食いしばり、メッシナのズボンの裾を掴んで必死に耐えようとする。
バアジィンッ!ビダバァンッ!バアダァンッ!ビババアンッ!
「ぎひっ!やめろっ!くそっ!みひぎひっ!」
マウロは抵抗しようとするが、完膚なきまでに叩きのめされたお尻が苦痛を主張し、苦しい表情になる。
(い・・言うもんか・・)
意地とプライドが青年士官を支えている。
だが、それもいつまでも持つものではなかった。
 バアジィンッ!バアアンッ!ビジャアンッ!ビダバアンッ!
「やめろ・・っ!やめろよ・・!バカっ!畜生・・!」
相変わらず暴言を吐き続けるマウロだが、その目はだんだんと気弱なものになりつつある。
(畜生・・悔しい・・何で・・こんな無様な格好さらなきゃ・・なんないんだよぉ・・)
恥ずかしくて、自分で自分が情けなくてマウロは知らず知らずのうちに涙をこぼしていた。
 「やめろ・・やめろよ・・畜生・・バカぁぁ・・うぅぅ・・・ひぅぅぅ・・・」
マウロは両肩をブルブルと震わせ、ボロボロと悔し涙をこぼした。
言うのは嫌だった。
だが、もうお尻も限界だし、自分自身が情けなくてたまらなかった。
こんな惨めな状態から一刻も早く脱出したかった。
「わかったぁ・・・わかったよぉ・・俺が・・悪かったよぉ・・ごめ・・ごめん・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。言うから・・もう・・やめろよぉ・・・」
ボロボロと涙を零し、悔しさと恥ずかしさに全身を熱病にかかったように震わせながらマウロはようやく謝った。
「やっと言えたわね。全く強情な子なんだから・・・」
やれやれといった感じで言うとメッシナは靴べらを振り下ろす手を止めた。


 「・・・っっっ!!!!」
布地が真っ赤に腫れ上がったお尻に触れて鋭い痛みが走り、思わずマウロは顔を顰める。
だが、口を一文字に結んでこらえるとようやくズボンを履いた。
「無理するんじゃないわ。ここで冷やしていったら?」
メッシナはそう言うがマウロはキッと睨みつけて言う。
「うるせえよ!誰がお前なんかの手当てなんか受けるかよ!ふざけんな馬鹿女!」
マウロはこれでもかと言わんばかりに睨みつけて言う。
「全く意地っ張りなんだから・・ふふ・・でも可愛いわぁ」
「はぁ!?」
マウロはメッシナの意図がわからず、思わず素っ頓狂な声を出す。
「こういうことよ」
いきなり顔を近付けたかと思うとメッシナはマウロにキスをした。
 「!!!!!」
突然の出来事にマウロは硬直してしまう。
だが、次の瞬間我に返るとメッシナを思い切り殴りつけた。
 「痛いわねぇ。何するのよ」
「こっちの台詞だ!!何すんだいきなり!!」
「あら。自分の気持ちを示しただけよ」
メッシナはニヤニヤと笑みを浮かべるとしれっと言う。
「くす。いつか必ず私のスイートダーリンにしてあげるわ。ふふふ、覚悟するのね」
「ふざけんじゃねえよ!!誰がお前なんかのもんになるかよ!!クソッッ!!」
キッと再び睨みつけると、マウロは荒々しく出て行った。


 「何てことがあったのよ。ふふふ、お尻を叩かれてるのにギャンギャン喚いて反抗してくるから本当に可愛くて・・ついついいじめちゃったわ」
メッシナは嬉しそうな声でマッセナ大佐にのろける。
「相変わらずだな君も。まぁ私も人のことはいえないがねぇ」
「あなたもかなりのいじめっ子気質だしね。大方スイートハニーのお尻はいつも真っ赤なんじゃないの?」
「さすがメッシナだな。その通りだよ。ルチア中尉もお尻を叩かれて恥ずかしさに震える姿が可愛くてねぇ。その姿を見たいからついつい理由をつけてお尻を叩いてしまうよ」
「そうなのよねぇ。好きな子がお尻を叩かれて恥ずかしがったり悔しがったりする姿ってとっても可愛いのよねぇ。まぁそれはともかくうちの子があなたのところの子に迷惑かけたようで悪かったわねぇ」
「いや構わないさ。おかげでスイートハニーの可愛い姿を見られるいい理由が出来たかもしれないからねぇ。フフフフフ・・・・」
マッセナ大佐は悪代官のような笑みを浮かべる。
「好きな子をお尻ペンペン出来る機会はどんなことでも逃さない・・・。あなたも悪ねぇ」
「いやいや。メッシナ、君こそだよ・・」
「そうねぇ。ウフフフフ・・・・」


 ―完―
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theme : 自作小説
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