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野上主任研究員の大失敗1



  「ふわあぁ・・・・」
大きなあくびをすると同時に、その男性は大きく背筋を伸ばした。
その男性は、年は27歳前後、青い髪と瞳の持ち主で、知的で端整な、だがどことなく間が抜けているような、そんな顔立ちをしている。
すらりとした身体には白衣をまとっており、その胸についた札が、研究員であることを示していた。
彼の名は野上秋成(のがみあきなり)。
ここ試衛市を拠点とする新撰グループの元締めたる土方製薬の研究所で働いている、主任研究員の一人だ。

 「大丈夫ですか?野上主任?」
側にいた、研究員助手が思わず尋ねた。
「ちょっと寝不足なだけだよ・・・。えーと・・・データはどこだったかな・・」
寝ぼけなまこをこすって野上は立ち上がり、データを取ってこようとする。
ズデェンッ!
突然、大きな音がした。
何だと思って助手が後ろを振り返ると、野上主任が床に転んでいる。
どこをどうしたのか、何もないところで見事に、すってんころりんと転がったのだ。
まるでボールのように丸まって倒れている姿に、助手はあんぐりと口を開けている。
だが、すぐに駆け寄ると、上司を助け起こす。
「しゅ、主任。大丈夫ですか?」
「う、うん。ちょっと寝不足で目がくらんだだけだから・・ってうわあ」
再び野上は足を滑らせ、後ろ向きに転がりそうになる。
慌てて助手が腕を引っ張り、転がるのを防いだ。
(ふーっ。相変わらず世話が焼ける人だな・・・)
助手は野上を助けあげながら、そう思わずにはいられなかった。
 野上はこの若さで主任研究員をしているだけあって、研究の部分での実力や能力は素晴らしい。
だが、それに反比例するかのように、日常の部分には大きな欠点があった。
物凄いドジでうっかりさんなのだ。
さっきのように、何もないところで転ぶのはざら、廊下で突然寝だしたり、電車や地下鉄に乗ったら、とんでもないところまで行ってしまい、最終的に警察から迷子の電話が研究所へかかってきたことなどもあった。
彼の下で働いているスタッフはそれをいつも目の当たりにしているため、色々と大変なのである。
 「主任、後のことは私達に任せてもう上がったほうがいいですよ」
「え、でもまだ解析してないのが・・・」
「本当に大丈夫ですから」
「そう。じゃあ頼むよ・・・ふあああ」
助手は説得すると、ようやくのことで野上を外へ送り出す。
室内のスタッフ達が一息つくのを尻目に、廊下からは壁に身体をぶつける音が4,5回聞えてきた。
(だ、大丈夫かよ、おい!?)
心配そうな表情でスタッフの一人が廊下へ頭を突き出す。
一人が見かねて駐車場までついていこうとしたが、解析に取り掛からなければならなかったため、やむなくあきらめた。

 今にも眠り始めてしまいそうな、そんな寝ぼけた表情で歩きながら、野上は駐車場へたどり着いた。
「ふああ・・・・」
大きくあくびをすると、野上は中古の小型車に乗り込む。
寝ぼけているためか、キーを数回入れ損ね、ようやくのことで入れると、エンジンがかかり始めた。

 その同じ頃、研究所へ向かって駐車場を横切ってゆく男の姿があった。
男は33,4歳、2m近い大男である。
彫りの深い、精悍さを感じさせる顔立ちで、髪は短くまとめており、筋骨逞しい身体をスーツの下に隠している。
一見すると、まるでプロレスラーのようだが、そうではない。
彼の名は島田魁次(しまだかいじ)。
島田魁の血を引く人物で、新撰グループの一企業である、島田興業(しまだこうぎょう)の社長でもあった。
今日、彼が来たのは、ここの所長である山南敬介にみやげを渡しに来たのだ。
仕事の関係で海外へ行って来たのだが、最近帰ってきたため、今日この近くに用があるのをさいわい、みやげを渡しにやって来たのである。
島田は袋をぶら下げ、歩いていたが、ふと向こうから、車がやってくるのに気付いた。
(何だ・・・?)
島田は車を一瞥するや、様子がおかしいことに気付く。
まるで酔っ払いが歩くように、フラフラと走っているのだ。
ときには、駐車している別の車にぶつかりそうになった。
(危なっかしいな・・・おい・・・)
島田は見ていて冷や汗が出そうになる。
島田は、ふと、運転している人間の顔が見えた。
青い髪と目をした、絶世の美男子だ。
それが、せっかくの美形台無しな、間抜けなあくびをしながら運転している。
(あれは・・・確かここの主任研究員の)
島田は以前、ここへ山南を訪ねてきた際、彼を見かけ、山南から有望な主任として紹介してもらっていたことを思い出していた。
(なるほど)
島田は野上が運転していることで、その車の動きに納得がいく。
同時に、嫌な予感を覚えたときであった。

 突然、車がこちらへめがけて、猛烈なスピードで走ってきたのだ。
どうやら、アクセルを思い切り踏んづけてしまったらしい。
運転している野上もさすがにそれで目が覚めたらしく、吃驚仰天といった表情を浮かべている。
だが、あたふたするばかりで、車は止まらない。
寝ぼけた状態からパニック状態に陥ってしまったため、適切な行動が取れないのだ。
ようやく気付いてブレーキを踏むも、既に遅く、車は島田めがけて突っ込む。
目の前に繰り広げられる惨劇を予想し、恐怖にひきつった表情を浮かべながら、野上は両腕で目を覆った。

ガンッ!
強い衝撃が生じ、車が揺れる。
だが、何かを引いた感触はない。
恐る恐る両腕をどけた野上は、信じられないものを目撃した。
 「ぐ・・・ぐぬぬぬぬ・・・・」
両腕を突き出した島田が、突進してきた車を受け止めているのだ。
全力で受け止めているのか、その腕や額には青筋が浮き出ている。
「ぬごおおおおっっっっっっっ!!!!!」
島田は気合と共に、車を押し戻す。
信じられないことに、島田は車を押したまま、三メートルも前進した。
ドゴオッ!!
車を押しのけるや、島田は車を殴りつける。
車全体が揺れるほどの衝撃が生じ、中にいた野上はびっくりして気絶してしまう。
同時に、殴られたショックか、車は動かなくなった。

 「う・・・ん・・・」
ようやく目が覚めた野上は、自分が研究所内部の医務室にいることに気がついた。
「あれ・・・何で・・・」
目覚めたと同時に、野上は思わず、そうもらす。
「島田社長が担ぎ込んで下さったのよ」
不意に、声がすると、野上は声のした方向を振り向く。
声のした方向を向くや、野上はアッ!と声を上げた。

 野上の前にいるのは、一人の女性。
野上と同じ青い髪と目をしており、眼鏡をかけていることを除けば、顔立ちもかなり似ている。
「ね・・・姉さん・・・・」
野上はようやくのことで、それだけ言う。
彼女は野上の姉で、名は秋代(あきよ)。
島田興業で働いていた。
「全く・・・あんたって子は何やってるの!?」
思わず、大きな声で秋代は弟を叱りつけた。
秋成はしゅんと縮こまる。
「だ、だって眠くて・・」
「だってじゃないでしょう!!秋成!!お前はただでさえドジなんだから!!まともなときならともかく、あんな状態で車に乗ったら大変なことになるくらいわかるでしょう!!」
「うぅ・・・・」
姉の言葉に秋成はますます縮こまり、しゅんとなる。
「全く・・・会社で話を聞いたときは心臓が止まるかと思ったわ!!まかり間違えば社長がお前のせいで大変なことになるところだったのよ!!」
「ご・・・ごめんなさい・・・・」
「全く・・・秋成・・・。覚悟はいいわね?」
そういうと、秋代は膝をポンポンと叩いた。

 それを見るや、秋成の様子が変わる。
美しい顔が今にも泣きそうになったかと思うや、目にみえてうろたえだした。
「ね、ねねね、姉さぁん。そ、そそそれだけはやめて」
「駄目よ。今日のことはお前が悪いでしょ?自業自得よ」
「で、でも・・・。それだけは許してよ・・・」
秋成は両手でお尻を隠すと、情けない表情で姉に頼み込む。
「いい加減にしなさい!!」
業を煮やしたのか、秋代が大声で怒鳴りつけた。
「これ以上何か言うと、本気で怒るわよ!!」
姉の表情がかなり険悪なものになるのを認めるや、慌てて秋成は姉の膝に乗る。
膝の上にうつ伏せになると、秋成は姉のスカートの裾を握り締める。
その両腕はガタガタと震えていた。

 「全く・・・何をしてるのよ・・・」
呆れたようにつぶやくと、秋代は弟の白衣を捲り上げ、ズボンを下ろす。
あっという間に、雪のように白い、とても成人男性のものとは思えない綺麗なお尻が姿を現した。
同時に、彼女はバッグから何かを取り出した。
取り出したのは、定規。
やや大きめの金属製のものだ。
「ね・・・姉さん・・・」
怯えた声で、秋成は話しかける。
「何?」
「お・・・お願いだから・・・あ、あまり痛くしないで・・・」
「駄目」
容赦なく言われた言葉に、秋成は絶望的な表情を浮かべる。
その直後だった。

 バアアンッ!
「きゃああっ!!」
肌を思い切り打つ音と共に、秋成は甲高い悲鳴をあげた。
白いお尻には、太く赤い筋が、跡になってついている。
バシッ! バアアンッ! バッチィンッ!
「ひゃあんっ・・やああっ・・痛あっ・・」
お尻を襲う痛みに、秋成は手足をじたばたさせてもがく。
ビシッ!
秋代は弟のももと二の腕を定規で叩く。
「痛っ!」
「暴れるんじゃありません!!」
「だ、だって痛いよ・・・」
思わず顔を上げ、痛みに顔を顰めながら、秋成は抗議しようとする。
だが、秋代は非情に言い捨てた。
「お前が事故起こしかけたから悪いんでしょ。動くともっと痛くするわよ!」
その一言で、秋成の手足は動きが止まった。

 バーンッ! バシィッ! パアアンッ!
「痛あっ・・やあっ・・・はあっ・・・」
定規が振り下ろされるたびに、秋成は声をあげ、姉のスカートの裾を握り締める。
バチィンッ! バアアアアアンンンンッッッ! ビッシャアンッ!
「ひゃああっ!・・・ひいいんっ!・・みぎいっ!」
強烈な痛みに、秋成は背を仰け反らせる。
額からは脂汗が噴き出し、目尻には涙を浮かべている。
バシインッ! バアアンッ! バチッ!
「ね、姉さ~~~んっっ。お、お願い~~~。も、もうやめてよ~~~」
お尻を襲う苦痛に、秋成は恥も外聞も構わず叫ぶ。
「駄目よ。今日という今日は徹底的にお仕置きします!!」
「そんなっ。許してよ!ちゃ、ちゃんと謝るから。ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
必死の様相で秋成は謝る。
それを見た秋代は一呼吸置くと、秋成に尋ねた。
「秋成・・・自分が何をしでかしたか、わかって言ってるんでしょうね?人をひきかけたのよ!島田社長は警察沙汰にはしないっておっしゃって下さったけど、私は本当に社長に申し訳ないわよ!!」
「ご・・・ごめんなさぁい・・・・」
姉の凄まじい剣幕に、秋成は思わず震え上がり、謝ることしかできない。
「話を聞いた私がどんな気持ちだったか考えた?恥ずかしくて、申し訳なくて死ぬかと思ったわよ!?いくらお前がドジでうっかりだからって、そんなことをする子には、私も母さんも父さんも育てた覚えはないわ!!本来なら警察行っても当然なのよ!!」
「わかってるよぉ・・・・」
「黙りなさい!中途半端に許して、また似たようなことをやらかしたら、社長は勿論、ここの研究員の皆さんにも申し訳が立たないわ。だから、今日はまだまだ許さないから覚悟しなさい!!」
バア―――――ンンンッッッッッッッ!
叫ぶと同時に、秋代は定規を振り下ろす。
「ぎゃあんっ!」
骨にひびが入ってしまうのではないかというくらい、強烈な一撃を受けて、秋成は叫ぶ。
バンッ! バチッ! バシンッ!
「ごめんなさいっ!・・・ごめんなさいっ!・・・ごめんなさい~~~!!!」
その後、一時間近くに渡って、医務室では、肌を打つ音と、ごめんなさいを連呼する声が響き渡った。

 両頬をつたって、涙がぽたりぽたりと落ちた。
落ちた涙は、床に当たるや、飛び散って消える。
秋成は、医務室の白い壁に向かって、立っていた。
両手で白衣の裾を捲り上げて腹の前で持っており、またズボンを下ろしたままのため、お尻が丸見えになっている。
雪のように白くて、小ぶりできれいだったお尻は見る影もなかった。
二周り近くは腫れあがり、熟れすぎたトマトのように肌もでこぼこになっている。
肌は熱した石炭のように赤く、実際、触ったら火傷すると錯覚しそうなくらい、熱を帯びていた。
「うっ・・・」
野上は声を押し殺しつつも、顔を顰め、ボロボロと小さい子供のように大粒の涙をこぼして泣いていた。
痛さと情けなさが入り混じり、涙が自然に出てきた。
「秋成?少しは反省した?」
コーナータイム真っ最中の弟の背後から、秋代が声をかけた。
「し、したよぉ・・ね、姉さん・・。お願い・・もうしないから・・許してよ・・」
壁の方を向いたまま、秋成は許しを請う。
勝手に動くとまたお尻を叩かれかねないからだ。
「それならズボン履きなさい。島田社長に謝りに行くわよ。いいわね?」
「わ、わかったよ・・・」
ようやく許してもらうと、秋成はズボンを履きだす。
弟が身支度を済ませるのを見ると、秋代はうながす。
「行くわよ。早くしなさい」
「ちょ、ちょっと待って・・・。ず、ズボンが肌に擦れて・・・歩くとお尻が痛いよ・・」
「それくらい我慢しなさい。それとも、まだ反省する?」
「わかってるよぉ。行くってばあ」

  ―完―
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