青き狼たち7(バイオレンスあり)



(バイオレンスありです。許容できる方のみご覧ください)


 「お疲れ様です!」
「お疲れ様です!」
ジムの門下生達の挨拶を受け、それぞれに挨拶を返しながら、近藤はビルのエントランスを後にする。
友好関係にあるジムへの出張指導を終え、自身の道場へと戻るところだった。
カイと共に、近藤は駐車場へと向かう。
そして、自分たちの車へ行こうとしたそのときだった。
 突然、近藤は一緒に歩いていたカイを突き飛ばす。
「館長、何を・・!?」
突然の師の行動に、カイは思わず声を上げかける。
だが、駐車場に並んだ車の間から飛び出た影に、ハッとする。
 飛び出した影は仕込み杖を逆手に構え、近藤へと襲いかかる。
対して、近藤は身体ごと相手にぶつかるようにして、一気に間合いを詰める。
互いの肩と肩がぶつかり合い、押し合いとなる。
 「なっ!おいっ!カンチョウから離れ・・!!」
カイが襲撃者に掴みかかろうとした瞬間、弾けるような音が2,3発同時に響く。
思わずカイが身を翻した直後、車の窓ガラスが割れ、ドアに弾痕が刻まれる。
「く・・・!?」
車の陰に隠れ、巧みに発砲してくる敵に、カイは釘付けにされてしまい、動くに動けない。
その間に、仕込杖の襲撃者は近藤を仕留めようとする。
現に、近藤の右上腕に、刺客の刃が食い込む。
 だが、食い込んだところで、刃が動かなくなる。
直後、近藤は片足を飛ばし、刺客を蹴っ飛ばす。
刺客が数メートル吹っ飛んだ直後、今度は銃撃が激しくなる。
銃弾の嵐に、二人は身を伏せてやり過ごす。
やがて、銃声が途絶えたかと思うと、仕込杖や拳銃を持ったまま逃走する、複数の人影が見えた。
 「待てっ!逃がすかっ!」
「やめい!追ってはならん!!」
追いかけようとするカイを、近藤は制止する。
 「カンチョウ!?何故止めるんです!」
「落ち着くのだ。恐らく逃走の為の足を用意してある。それに・・不用意に追ってきたときのために、罠が仕掛けてある可能性もある」
「ですが・・・・」
「まずは安全なところまで撤退することだ。お前も手傷を負っているのに気づかんのか?」
「え?あ・・!」
カイは腕や脇に銃弾が掠った跡があることに気づく。
近藤が襲撃されたことで頭に血が上ってしまい、見えていなかったのだ。
 「頭に血が上った状態で、闇雲に動けば墓穴を掘る。警備の現場でわかっているはずだろう?」
「も・・申し訳ありません・・」
「まぁいい。どうやら、ジムの者たちが騒ぎに気づいたようだな・・・」
銃声や、犯人たちが車で逃げ出す姿に気づいたジムの関係者たちが駆けつけてくる。
近藤とカイは、彼らと共に、ひとまずジムの施設内へと戻っていった。


 それからしばらく経ったある日・・・・・。
「まだか・・?」
カフェの一角で、カイは腕時計を見ながら、苛立たしげに呟く。
しばらく待つうちに、事務員らしい風貌の男が現れる。
 「おい・・!約束の時間は過ぎてるぞ!?」
現れた男に、カイは苛立たしげに言う。
「そう言わないで下さいよ。こっちだって、こっそり持ち出すのは大変だったんですから!」
カイの言葉に、事務員風の男はそう弁解する。
 「まぁいい。それで・・頼んでおいたやつは手に入ったのか?」
「え、ええ・・な、何とか・・・」
事務員はそう言うと、鞄から資料の束を取り出す。
資料はある男についての調査記録。
カイは貪るように、資料を読む。
 「すまなかったな。おかげで助かった」
「いえ・・。しかし・・何をするつもりなんです?」
事務員は恐る恐る尋ねる。
「世の中には、知らない方がいいこともあるぞ?」
「わ、わわわかりました!私は何も聞いてません!見てません!知りません!」
カイの雰囲気に、事務員風の男は必死に誓う。
「わかればいい。では、ソイツは元に戻しておいてくれ。誰にも知られないようにな」
そういうと、カイはカフェを後にする。
「簡単に言わないで下さいよ・・・・」
後に残された事務員風の男は、そんなことを呟きながら、資料を入れ戻した鞄を抱え、コソコソとカフェを後にした。


 コツン・・コツン・・・。
薄暗い街灯の下で、何かをつく音が路上に響く。
音の主は杖をついた男。
丸刈り頭に、細身だがしっかりと筋肉がついた、がっしりとした身体つきをしている。
常に目を閉じた姿で、杖で周囲を確認しながら歩く仕草が、盲人だと示していた。
 (あいつが・・河上彦市{かわかみげんいち}・・・・)
カイは物陰からジッと盲人の男を見つめる。
この男こそ、カフェで待ち合わせた男から受け取った資料に書かれた人物であった。
 (しかし・・。どう見ても盲人だぞ?確かにあの刺客に似てはいるが・・・)
河上の姿に、カイは訝しむ。
確かに、姿は近藤を襲った刺客に似ている。
しかし、盲人にあれほどの技の冴えがあるだろうか?
今、こっそり様子を伺っている限りでは、ただの盲人にしか見えない。
 (ん・・?)
不意に、カイは闇の中にかすかに光るものを見つける。
ジッと目を凝らしてみると、それは銃口。
銃口は河上に狙いをつけると、乾いた音と共に、火を噴いた。
直後、河上の杖から、眩い閃光が迸る。
次の瞬間、河上は逆手に、仕込杖を構えていた。
 銃声を合図にしたかのように、物陰や暗闇の中から、数人のヤクザが飛び出し、河上を挟み撃ちにする。
ヤクザたちは全員、拳銃を構えている。
河上を挟み撃ちにするや、ヤクザたちは一斉に前後から発砲する。
同時に、河上の身体が仕込杖を構えたまま、その場でコマのように回転する。
金属がぶつかるような音が数度響いたかと思うと、銃弾が悉く弾き飛ばされる。
そのまま、勢いをかって、河上はヤクザたちに斬り込む。
河上の動きが止まったときには、襲撃者たちは全員、致命傷を負って路上に倒れ伏していた。
 (あれが盲人の技か!?)
河上の剣技にカイは愕然とする。
同時に、河上が襲撃者だと確信する。
直後、カイは脇差を抜き放ち、河上に斬りかかっていた。
 とっさに河上はクルリと身を翻し、カイの斬り込みをかわす。
「お若いの・・やめておきなせぇ・・・・」
仕込杖を逆手に構えたまま、河上は警告するように言う。
だが、カイが従うはずも無く、再び斬り込む。
やむなく河上は仕込杖を一閃させる。
直後、カイの脇差が、鍔元から折れ飛んだ。
同時に、杖の鞘の方で、カイの鳩尾をつく。
 「ぐ・・・!?」
鳩尾から走る強烈な痛みに、カイは思わず路上に膝をついて座り込む。
「まだ・・やりなさるかい?」
仕込杖を喉元に突きつけ、河上は言う。
 「く・・!斬るなら斬れ!カンチョウを斬ろうとしたように?」
「何のことですかい?」
「とぼけるな!カンチョウを殺そうとしただろう!?」
「何?むっ!?」
不意に乾いた音と共に、河上が仕込杖を一閃する。
金属がぶつかる音と共に、銃弾が路上へと転がった。
 「クック・・・やっぱり・・こんなもんじゃあお前は倒せんか・・・」
そう言いながら、右手に拳銃、左手に鞘ぐるみの日本刀を手にした男が、闇の中から現れる。
「な・・!?」
現れた男の姿に、カイは目を丸くする。
河上とうり二つだったからだ。
違うのは、こちらは両目が開いていて健常者であること。
 「お前さんの仕業か?若彦(わかひこ)」
河上はそっくりな男の名を呼んで尋ねる。
男の名は河上若彦。
彦市とは双子の兄弟だった。
 「そうだ・・。近藤の首を取れば・・・俺は自分の組を持てる・・親分になれるのさ!?」
「ヤクザの世界に入ったと聞いてはいたが・・・。何故、俺になりすました?」
「やり損ねたとき、お前に容疑がかかるようにだ・・・。お前と、新選グループのエージェント共がやり合って、へたばったところをって寸法だ・・」
「そこまで・・俺が憎いか?」
彦市の問いに、若彦の顔が憎悪に彩られる。
 「おお!憎いわ!盲目のくせに・・・!俺に劣らん剣技を持つ貴様が・・!親父から允可を受けた貴様が・・!道場を譲られた貴様が・・憎い!許せん!今日こそ・・!殺してやる!」
若彦は拳銃を投げ捨てると、抜刀術の体勢で、日本刀を構える。
「仕方ねえ・・・。ケリ・・着けるか・・・」
彦市も仕込杖を一旦鞘に納め、こちらも抜刀の体勢で構える。
 双子の剣士は、抜刀の体勢で、ジッと睨み合う。
(ぐ・・・・!?)
傍らで見ているカイは、無意識に腹を押さえる。
二人の身体から発せられる殺気に、意を締めあげられる感覚を覚えたからだ。
河上兄弟は、互いにじりじりと、傍から見ていると苛立たしくなるほどゆっくりした足取りで、間合いを詰める。
間合いが1センチ、また1センチと縮まるごとに、殺気が強くなる。
同時に、カイの全身からドッと脂汗が噴きだし、胃を締め上げるような感覚から、熱く焼けたナイフを内臓に叩き込まれ、こねくり回されているかのような、身もだえせずにはいられない、そんな感覚に襲われる。
二人が間合いを詰めれば詰めるほど、感覚は強まり、互いに相手の攻撃の有効射程に入ったときには、カイの足元は脂汗で小さな水たまりが出来てしまっていた。
 両者は一旦、足を止め、ジッと睨み合う。
構えたまま、互いに殺気をぶつけ合う。
ジワリ、ジワリと、互いの顔から汗が噴きだし、滴り落ちる。
両者とも、足を踏み出したくなるのを必死に堪える。
そのまま、永遠に時が過ぎるかと思われたそのとき、同時に二人が抜刀しながら突進した。
 二筋の閃光が走った後、位置を入れ替え、二人は停止する。
彦市の仕込杖がへし折れ、彦市は胸を押さえる。
そんな彦市の姿に、うり二つの顔で、若彦は笑みを浮かべかける。
だが、笑みは途中で凍りつく。
恐る恐る顔を下げた若彦は、ちょうど心臓を通る部分に、斜めに赤い線が走っているのを目撃する。
直後、若彦は刀を握りしめたまま、うつ伏せに倒れる。
そして、そのまま動かなくなった。
 「因果なモンだ・・・・。兄弟で斬り合うなんてなぁ・・・」
仕込杖を振って血を落とし、鞘に納めると、彦市はそのまま立ち去る。
二人の殺気に当てられ、カイは呆然として、彦市を見送っていた。


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「ぐ・・!く・・!あぅ・・!く・・!あくぅ・・!」
近藤の力強い手が振り下ろされるたび、カイの口から苦痛の声が漏れる。
膝の上に乗せられ、むき出しにされたカイのお尻は、既に濃厚な赤に染め上がっていた。
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「くぅ・・!あくぅ・・!あぅく・・!くっあ・・!」
「全く・・お前は・・馬鹿な真似をしおって・・!」
苦悶の声を上げる弟子のお尻を叩きながら、近藤はお説教を始める。
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「何故、河上に手を出した?勝手な真似は許さんと言っておいたはずだぞ?」
お尻を叩きながら、近藤は弟子へのお説教を続ける。
 「申し訳・・ありません・・!カンチョウを襲った奴を・・俺の手で・・くうっ!!」
「それが馬鹿者だというのだ!俺を襲ったのは只者ではないことはわかっていたのだぞ?お前一人で討てる相手とでも思ったか?」
「申し訳・・ありません・・!!」
謝るカイだが、近藤の手は容赦なく振り下ろされる。
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「謝るのは当然だ。おのれの命をも危険にさらす無謀な真似をした代償を、しっかりと支払うのだ」
お尻を叩きながら、近藤は厳しい声で宣告する。
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「く・・!ああ・・!申し訳・・ありません・・!カンチョウ・・!うう・・!」
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「二度と・・勝手な・・マネは・・しませ・・ああーっ!!」
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「痛っ!痛いぃぃ!いやああっ!ごめんなさいっ!痛いぃぃ!うあああ~~っ!!いやだっ!ごめんなさぁぁぁいいい!!」
やがて耐えきれず、プライドも意地もかなぐり捨てて、カイは子供のように泣き叫び始める。
その後も、長い間、お仕置きは続いた・・・・。


 「うぅぅ・・・・!」
目尻に涙を浮かべ、荒い息を吐いた姿で、カイは師の膝の上でぐったりしていた。
お尻は今や、痛々しい姿になっている。
 「反省したか?」
お尻を叩く手を止め、近藤は尋ねる。
「はい・・・。勝手な・・そして・・危険な真似をして・・すみません・・!二度と・・しません・・・・!!」
「わかればよい。お前も・・・俺にとっては身内も同じだ・・・。身内に何かあれば・・・お前とて悲しいであろう?」
「はい・・。すみません・・でした・・」
「いいのだ。このまま、休め」
「はい・・・。では・・お言葉に甘えて・・・」
カイはそういうと、そのまま、師の膝の上で、目を閉じた。


 ―完―

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