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神父物語4 焼きもち



 教会の奥にある作業部屋。

その片隅ではコピー機が唸りをあげて動いていた。

トレイからはB4サイズの紙が何枚も吐き出される。

ある程度の枚数が印刷されるとテーブルにそれが移される。

テーブルの上には印刷物の束が幾つか置かれている。

そしてテーブルでは今井を含む数人の神父がそれぞれの束から一枚ずつ取り、一セットにしてホチキスで留めるという作業に追われていた。

 彼らが作っているのは聖書の文章や語句の意味を記したレジュメ。

聖書研究会のためのものであった。

 この教会ではキリスト教やその歴史などに関心のある信者や市民のために研究会と称する勉強会を催しとして行っている。

今日は聖書の勉強をする聖書研究会が行われることになっており、神父たちは朝からその準備に追われている。

礼拝堂の方でも長椅子を片付け、テーブルや普通の椅子を出す作業に当たっていた。

退屈そのものといった様子で今井たちが作業していると、扉が開いて佐々木が入ってきた。

「出来たか?」

「一応そっちの方に出来たの置いておきましたけど」

今井が指差すと、佐々木は完成した印刷物を見る。

「これだけあればまあ大丈夫だろう。ご苦労だったな。休んでていいぞ」

佐々木は若い神父たちにそういうと、レジュメの束を抱えて部屋を後にし礼拝堂に向かう。

礼拝堂は前に置いてある長椅子が片付けられ、代りにテーブルが置かれている。

テーブルには既に参加者が座っていた。

年齢は様々でかなり年配の者もいれば学生と思われる若い者たちもいた。

佐々木はテーブルにつくと、既に座っている人々をぐるりと見回す。

「それでは、研究会を始めましょうか。今日はルカによる福音書の5章です」

レジュメを配ると、佐々木はテーマの文章について、参加者に説明し始めた。



 それから2時間ほどした頃、今井は台所にいた。

今井は冷蔵庫を開けると中を覗きこむ。

「何がいいかな~」

今井はそうつぶやきながら冷蔵庫の中をあさる。

今井は茶菓子になりそうなものを探していた。

聖書研究会が終わって佐々木が部屋に引き上げている頃合いなので、佐々木にお茶やお菓子を持って行ってあげようと思ったのである。

しばらくして今井はスコーンの袋を見つけた。

(これがいいかな)

今井は袋を取り出すと2,3個小皿に出す。

戸棚からティーパックを出してカップに紅茶を入れるとカップとスコーンの皿をお盆に載せて台所を後にした。

 「佐々木さ~ん、入りますよ~」

今井は声をかけると佐々木の部屋の扉を開け、中に入る。

だが、部屋には佐々木の姿はなかった。

「あれぇ?いないや?」

当てが外れて今井はちょっぴり残念そうな表情になる。

「あれ、どうしたんだ?」

同僚の神父が通りがかって今井に尋ねた。

「佐々木さんにお茶入れてあげようと思って持ってきたんだけどさ。佐々木さん知らない?」

「まだ礼拝堂だよ。何かちょっと研究会が長引いたみたい。でも終わってるはずだから行っても大丈夫じゃないかな」

「ありがとう。それじゃ行ってみる」

今井はそういうと今度は礼拝堂に向かった。



 (あっ。いたいたっ)

礼拝堂に入るや否や、今井は佐々木の姿を見つける。

「佐々木さ・・・・」

今井が声をかけようとしたときだった。

今井は佐々木が誰かと一緒にいることに気がついた。

いるのは若い女性二人。

年は今井と同じかやや年下といったところ。

二人ともレジュメを持って佐々木に色々と尋ねている。

一見するとわからないところについて質問しているように見える。

だが、女性の目はじっと佐々木を見ている。

いや、見ているというものではない。

秋波を送っているのが今井には見て取れた。

 (あの二人・・・)

今井は佐々木の周りにいる女達に見覚えがあった。

聖書研究会には必ず顔を出しているからだ。

若い年頃の女性にしては熱心だと年配の神父たちが感心していたが、あにはからんや、今井には彼女達の目的が薄々わかっていた。

(やっぱり・・・佐々木さん目当てだったんだ)

今井は彼女達の目を見て確信する。

思い返せば、研究会は他にも開催しているが、二人が参加しているのは佐々木が担当している聖書研究会のみ。

今井が作業の合間にたまたま様子を見たことがあったが、二人とも会の最中はつまらなそうにしている。

だが、会が終了するや否や打って変わって佐々木に色々尋ねたりしているのである。

よく考えれば佐々木目当てなのはすぐにわかった。

 女達は色々と話しているが、だんだんと内容が変わってくる。

よく耳を澄ませて聞いてみると彼女はいるのか?とかそういう内容の話だ。

佐々木は話の方向性が変わって来たので切り上げようとするが、女達は巧みに引き止める。

同時にさりげなく自分をアピールしていた。

途端に今井の心中ではむらむらと怒りの炎が燃え上がった。

(ゆ・・許せない・・・佐々木さんは僕のなのに・・。あんなに馴れ馴れしくして・・)

女性と見まがうばかりの今井の美しい顔は女達への怒りで険しいものになっていた。

その表情のまま今井はズンズンと佐々木のいる方向へ向かって進んでゆく。

三人とも話に気を取られて今井には気付いていない。

やがて、わずか1mかそこらというあたりまで今井が来たときだった。



 バシャアンッ!

「きゃああ!」

佐々木と話していた女の一人が悲鳴をあげる。

何だと思って佐々木が見てみると、お茶が服にかかっていた。

「ご、ごめんなさい。転んじゃいました・・」

そう言って今井は起き上がりながら謝る。

だが、その目には敵意があった。

「だ、大丈・・きゃあんっ!」

もう一人の女が駆けつけようとするが、何かに足を引っ掛けてしまい、思い切り転ぶ。

女が立ち上がると、思い切りぶつけたのだろう。

鼻血が流れていた。

「これはいかん。医務室へ連れて行かんと」

佐々木はそういうと、後片付けをしている別の神父たちを呼んで女二人を預ける。

怪我をした女達を預けると佐々木は険しい顔で今井の方を向く。

「ちょっと話がある。俺の部屋に行こうか」

佐々木はそういうと今井の手を引っ張って部屋へ連れて行った。



 「さてと・・どういうつもりだ?」

今井を椅子に座らせ、自分はベッドの端に腰かけると、佐々木は厳しい表情で尋ねた。 

「何のことです?」

今井はふて腐れた表情で佐々木にそう尋ね返す。

「とぼけるんじゃない。さっきのことだ。お前が足をひっかけたんだろうが」

佐々木は研究会の参加者が倒れて鼻血を出した際、今井が足を出してひっかけたのを見ていた。

「それだけじゃない。茶がかかったのだって偶然じゃない。お前がわざと転んでかけたんだろう?」

今井は黙ったままだったが、その目は佐々木の問いを事実だと認めていた。

「だったら何だっていうんですか?」

今井は不機嫌そのものといった感じで尋ねる。

「何でそんなことをしたんだ?」

佐々木の問いに今井は憮然とした表情で言い返す。

「言いたくありません」

「何?」

「言いたくないものは嫌なんです!それより出てって下さいよ!佐々木さんの顔なんか見たくないんですから!!」

今井はそういうと佐々木を押しのけようとする。

だが、残念ながら腕力は佐々木の方がずっと強い。

今井は押しのけるどころか、逆に腕をつかまれてしまった。

「自分が悪いことしたくせに逆ギレか?たいがいにしろよ」

佐々木はそういうと今井を膝に乗せてしまう。

同時に今井の上着の裾を捲り上げてズボンを下す。

「やっ・・・嫌ぁっ・・・」

何をされるかさすがに判断がついたためか、今井の顔は真っ青になっている。

手足をばたつかせて佐々木の膝の上で必死にもがくが、佐々木は簡単に押さえつけてしまう。

佐々木は右手に息を吐きかけると、高々と手を振り下ろした。



 バアアンッ!

「痛あっ!」

甲高い音が響き渡り、佐々木の手が今井のお尻を思いっきり叩いた。

今井は思わず声を上げ、一瞬目をつぶる。

パアアアン!バアチィンッ!パアンッ!

「ひゃんっ!やああ!痛いっ!」

間髪いれずにお尻を叩かれ、今井は両足をバタつかせて悲鳴をあげる。

佐々木の手が振り下ろされるたびに、雪のように白くて滑らかな今井の肌に赤い手形が幾重にも重なって刻みつけられる。

パンッ!パアシィンッ!パアアアン!

「全く・・・人にお茶かけるわ・・・」

バシン!バアンッ!パァシィン!

「痛あっ!やああ!ひゃああん!」

バアチィン!バアアン!ピシャアン!

「足引っ掛けて転ばせるわ・・・」

パシィンッ!パアアン!バアシィンッ!

「きゃあっ!ひいんっ!ひひゃあ!」

パアン!パアアン!バアシィンッ!

「しかも逆ギレするとはどういうつもりだ!」

バッシ――――――ンンン!!!

「きゃあああ!!!」

佐々木の強烈な平手打ちを喰らい、今井は大きな悲鳴をあげ、身体を仰け反らせる。

既にお尻は真っ赤に染まり、うっすらと熱を帯びている。

今井自身、ハァハァと辛そうに息をしており、目尻には涙を浮かべていた。

 「信幸・・・そろそろ謝ったらどうだ?」

佐々木は頃合いと見たのだろう、助け舟を出すかのように優しい声でそう話しかける。

だが、今井はかぶりを振ると小さな声で言った。

「い・・嫌です・・・。ぼ、僕悪くないです・・・」

「何を言ってるんだ。明らかに手出しをしたのはお前だろう・・」

「あ・・あのバカ女達が悪い・・ん・・です・・。僕は悪くないです!」

今井は意地を張るような口振りで言い放つ。

佐々木はため息をつくとこう言った。

「だったらまだ許すわけにはいかんな」

そういうや、再び手を振り下ろした。



 バアアン!バアシィィィ!バアチィィィンン!

「きゃああ!ひゃああ!ひいいいんっ!」

骨にまで響きそうな容赦の無い平手打ちに今井は喉の奥から搾り出すかのような悲鳴をあげる。

辛いのか、今井は佐々木の法衣の裾をズボンごとギュッと両手で握り締めている。

あまりに強く握り締めているせいか、佐々木の太ももに爪が食い込んでしまいそうだった。

バアチィィィンン!ビシャアアアン!バッシィィィン!

「痛あっ!ひゃあ!ひぎぃっ!」

一打ごとに今井は両肩を震わせ、唇をギュッと結んで目をつぶる。

バアシィィィンン!バアアアン!ビシャアアン!

「痛あっ!ひぐぅ!痛ぁいっ!」

今井はお尻を襲う痛みに悲鳴をあげる。

相当痛いのだろう、今にも泣きそうな表情になっていた。

「痛いだろう?信幸?」

佐々木がお尻を叩きながら尋ねると今井はコクコクと頷く。

「だったら素直に謝ったらどうだ?」

佐々木は優しい声で言うが、今井は頑強に首を横に振る。

それを聞いた佐々木が嘆息すると、容赦ない平手打ちが再び振り下ろされる。

そのようなことを数回繰り返しているうちに、今井のお尻は二周り近い大きさにまで腫れ上がっていた。

表面も野菜畑の畝のようにデコボコしている。

「信幸、いい加減に謝らないか?これ以上意地を張ったら尻が壊れるぞ?」

さすがに佐々木も心底心配している声で言う。

本当は許してやりたいのだ。

だが、今井がきちんと謝らない限り許してやるわけにはいかない。

きちんと反省させなければ意味がないからだ。

「いや・・・嫌です・・・。謝る・・ぐら・・ひなら・・お尻・・壊れた・・方が・・ましで・・す・・・」

今井は嗚咽しながら言い切る。

佐々木はあまりの強情さに頭を抱えたくなる。

だが、それを抑えると今井に再び話しかけた。

「どうしてこんなに意地を張るんだ?何で謝りたくないんだ?わけがあるんだろう?言ってみな?」

佐々木の問いに今井はおずおずと尋ねる。

「お、怒ったり笑ったりしない・・ですか?」

「しない。約束する。だから言ってみな?」

佐々木が促すと今井はポツリと話した。

「許せなかったんです・・あの女二人が・・・」

「許せなかった?」

「あの二人・・・佐々木さんに馴れ馴れしく話しかけて・・・おまけに佐々木さん誘うようなことして・・・それが嫌で・・許せなかったんです・・。佐々木さんは僕のなのに・・・べたべたして・・・見てるうちに頭に来て・・それで・・・」

(なるほど・・・焼きもち妬いてたわけか)

ようやく今井の強情さに得心が行き、佐々木は苦笑する。

佐々木は今井を抱き上げると、今井を膝の上に座らせ、対面する。

額と額がくっつきそうなくらい顔を近づけると、佐々木は今井の両頬を左右の手で軽く叩いた。

「ちょっ!何するんですか!」

思いも寄らない佐々木の行動に今井は思わず抗議する。

「全く・・・この馬鹿が!俺が女なんかに鼻の下伸ばすとでも思ったのか?俺にはお前だけだぞ?」

「本当に・・・?」

「本当だよ。だから安心しろ」

佐々木はそういうと今井を抱きしめる。

今井は抑えていたものがどっと溢れてきたのか、佐々木をがっしりと抱きしめると泣きじゃくりだした。

「うわああ~~~~~~んんん」

「こらこら、いい年して泣くんじゃない。全く子供なんだから、お前は」

「だって・・・だって・・・本当に嫌だったんです・・あんな風に佐々木さんにまとわりついてるのが・・・。何か、佐々木さんが人のものになっちゃったみたいで・・」

「わかってるよ。それより、これでちゃんと『ごめんなさい』出来るな?」

佐々木があやすようにして尋ねると今井は頷く。

「はい・・・人に怪我させるようなことして・・ごめんなさい・・・」

「よしよし。いい子だ」

佐々木はそういうとポンポンと背中を叩き、頭を撫でてやる。

「も、もう怒ってないですか?」

「ああ。ちゃんと反省できたんだから怒るわけが無いだろう」

「よかった・・・」

今井はそういうと安心した表情を浮かべる。

「それより尻が痛いだろう。医務室に連れてってやる」

佐々木はそういうと今井を抱えて立ち上がろうとする。

「いいです・・。それより、もうしばらくこのままで・・いたいです・・」

恥ずかしそうな表情で今井が言うと、佐々木は苦笑するがすぐに優しい表情に変わる。

「今日は心配かけたからな。好きなだけ甘えていいぞ」

それを聞いた今井は佐々木の胸に顔をうずめ、嬉しそうな表情を浮かべた。



 ―完―

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