少年憲兵3



 「むむむ・・・・!?」
「どうかしたのかね?そんな顔をして?もしや不満なのかな?」
「い、いえ!?そ、そんなことはありません!!」
ロッテンマイヤーの問いに、オオガミは敬礼しつつ、否定する。
「ですが・・・どうしてこのような格好をしなければならないのかと・・。それが疑問でなりません」
困惑した表情で、オオガミは答える。
オオガミは黒を基調にした、軍服のような上着に丈の短めの半ズボン、マントに軍帽といった格好をしている。
大太刀こそ背負っていないものの、明らかに、刀剣を擬人化した某オンラインゲームに登場する美少年キャラクターのコスプレだった。
 「説明したはずだが?今日はコスプレ系イベント会場の警備にあたってもらうと」
「それはわかっています。ですが・・このような姿で無くても、警備は出来るのではないのでしょうか?」
「オオガミ分隊長、客に紛れての警備も必要なのは、君もよくわかっているだろう?」
「そ・・それは・・」
「オオガミ分隊長、これも憲兵としての職務の一環だぞ。まさか・・職務を放棄するつもりか?」
「いえ!?そ、そんなつもりは決してありません!!」
「では・・その格好で警備にあたってくれたまえ。よいね?」
「は・・了解です!!」


 (とは言ったものの・・・)
オオガミは思わずため息をつく。
もちろん、仕事である以上、文句を言うつもりは無い。
実際、会場内には、様々なゲームやアニメのキャラクターのコスプレをした来客たちで溢れている。
そういう状況を考えれば、コスプレイヤーを装って警備、というのは間違ってはいない。
しかし・・。
 「キャアアア~~ッッ!!カワイイ~~~!!こっち向いて~~!!」
オオガミが振り向くと、カメラやケータイを構えた若い女性客たちの姿。
オオガミは、資料に書かれていたキャラクターの決めポーズを取ってみせる。
女性たちはさらに黄色い声を上げながら、立て続けにカメラやケータイでオオガミを撮影する。
やがて、満足した女性達が立ち去ると、オオガミは再びため息を吐く。
(まさかこんなに写真を撮られることになるとは・・・)
オオガミはげんなりしそうになる。
手配写真や証拠写真などを連想してしまうせいか、写真を撮られるのはあまり好きではないのだ。
職務である以上、文句を言うつもりは無い。
しかし、あまりにも撮られていると、嫌になってきてしまう。
そんな気分でいたときだった。
 オオガミは会場の片隅で蹲っている少年を見つける。
オオガミと同年代の少年で、悪魔のコスプレなのか、耳の上に赤い曲がった角をつけ、レザー風の短パンには、先のとがった尻尾が付いている。
少年は胸を押さえ、苦しげな息を吐いていた。
「どうしました?」
「うう・・。急に・・気分が・・・」
悪魔コスの少年は、額に脂汗を浮かべて答える。
「救護室へ行きましょう。立てますか?」
「うう・・。何とか・・・」
少年が何とか立ち上がると、オオガミはその手を引いて、救護室へと向かう。
だが、その途中、人気の少ない廊下で、少年はへたり込んでしまう。
 「うう・・。ダメ・・これ以上・・歩けない・・・」
「むむ・・。仕方ない。助けを呼・・・」
オオガミが自分同様、警備をしている部下を呼ぼうと、携帯を取り出したそのときだった。
「う・・うううーーーっっ!!」
突然、少年が苦しみだす。
「どうしました!?」
オオガミは少年に駆け寄る。
直後、少年の目がフラッシュのように光る。
それを見たオオガミは、まるで人形のように立ち尽くす。
 「お前は・・私の・・しもべ・・・操り人形・・・」
「私は・・操り・・人形・・」
少年の言葉を、オオガミはロボットのように、感情の籠らない声で繰り返す。
 「よし・・。では・・コレを持つがよい」
どこから出してきたのか、少年は一振りの日本刀をオオガミに渡す。
「うむ。似合っておるぞ。それで・・一騒動してくるがよい」
少年の言葉に、オオガミは刀を抜いて手にする。
そのまま、フラフラとした足取りで、会場へと戻っていった。


 通報を受けて駆けつけたロッテンマイヤーの目に飛び込んできたのは、抜き身の刀を提げた、オオガミの姿だった。
その周囲では、警備員や変装した憲兵達が、呻いて倒れている。
 「オオガミ分隊長!?何をしているのだ!?すぐにやめなさい!!」
ロッテンマイヤーは毅然とした声で、オオガミに呼びかける。
だが、オオガミはやめる気配は無い。
それどころか、ロッテンマイヤーめがけ、斬りかかった。
 「やむを得んか・・・」
ロッテンマイヤーは、オオガミの斬撃を体捌きでかわす。
直後、身を翻し、オオガミのみぞおちに拳を叩き込む。
屈強なプロレスラーでも気絶するに十分な衝撃に、オオガミはウッと呻いて、そのまま床へと崩れ落ちた。


 それから一時間後・・・・。
本部長室に、オオガミの姿があった。
オオガミはコスプレ衣装のまま、床に正座させられている。
 「本当に・・申し訳・・ありませんでした・・!!」
「謝って済むことではないぞ?よりによって、警備責任者の憲兵が、会場で事件を起こすなどと・・・。どういうつもりだね?」
「す・・すみません・・。自分でも・・わからないのです・・」
オオガミは困惑した表情を浮かべる。
悪魔のコスプレをした少年に出会ったことや、その少年に催眠術を駆けられたこと、それらの記憶は完全に飛んでしまっていたからだ。
「わからない、では済まされんぞ?それ相応の責任は取ってもらわなくてな」
「わ・・わかって・・います・・」
「よい覚悟だ。では・・・自分でお尻を出して、こっちへ来たまえ」
ロッテンマイヤーは膝を軽く叩いて、オオガミに合図をする。
 「うう・・・!?」
オオガミは羞恥に顔を赤らめる。
だが、言われた通り、自分で短パンと下着を降ろし、上司の膝の上にうつ伏せになる。
 「では・・行くぞ。しっかりと反省したまえ」
本部長の言葉に、オオガミは静かに頷く。
その直後、ロッテンマイヤーの手が振り上げられた。


 バッシィィーーンッッ!!
「う・・・!?」
お尻を襲う衝撃に、思わずオオガミは表情を歪める。
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「く・・!あ・・!あく・・!あ・・!」
最初から容赦のない平手打ちに、オオガミは声を漏らしてしまう。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「全く・・君ともあろう者が・・何をやっているのだね?」
お尻を叩きながら、ロッテンマイヤーはお説教を始める。
バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「く・・!も、申し訳・・ありま・・せん・・!!ぐ・・!うっ・・!!」
苦悶の表情を浮かべながら、オオガミは必死に謝る。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「謝ればよい、というものではないぞ。そもそも・・何のつもりだ?イベント会場で凶器を振り回して暴れるなどと」
ロッテンマイヤーは厳しい表情で問いかける。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「く・・!そ、それが・・・本当に・・わからないんです・・!!気づいたら・・あんな・・ことに・・・!?」
オオガミは困惑した表情で答える。
記憶が無くなってしまっている以上、そうとしか答えようがないからだ。
 バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!
「それで済むと思っているのか?治安を守る憲兵が、よりにもよって、事件を起こすなど。どうやら・・・弛んでいるようだな」
「ち・・・違・・!?ああーっっ!!」
今までとは違う衝撃に、思わずオオガミは振り返る。
いつの間にか、ロッテンマイヤーはパドルを手にしていた。
 「ほ・・本部長・・!?そ・・それは・・!?」
「オオガミ分隊長・・どうやら大分弛んでいるようだな。今日はコレでしっかりお仕置きしてあげよう」
女神のような笑みを浮かべて、ロッテンマイヤーは宣告する。
直後、パドルがオオガミのお尻に叩きつけられた。
 バッシィィィーーーンンンッッッ!!
「ひ・・ひぃぃぃーーーっっ!!!」
あまりの衝撃に、オオガミは背をのけ反らせ、絶叫する。
バッシィィィーーーンンンッッッ!!
バッシィィィーーーンンンッッッ!!
バッシィィィーーーンンンッッッ!!
バッシィィィーーーンンンッッッ!!
「うわあああ!!ほ、本部長っ!?ゆ、許してくださいっ!!ひぃぃーーっっ!!」
「そうはいかないなぁ。ちょうどよい機会だ。文字通り、性根を叩き直してあげよう」
「そ・・そんなぁぁぁ!!うわあああああ!!」
オオガミの絶望の声と共に、パドルが一回一回、しっかりと叩きつけられる。
その後、長い間、パドルの音が響いていた・・・。


 「ほぅほぅ・・。まぁまぁ面白いことになっておるのう」
ロッテンマイヤーにお仕置きされるオオガミの姿に、老人のような口調で、少年の声が楽しそうに呟く。
声の主はイベント会場にいた、悪魔姿の少年。
少年はビルの屋上に腰を降ろし、オオガミのお仕置きを遠くから見物している。
尻尾はまるで生きているかのようにクネクネと動いており、背中には、会場にいた時には無かったコウモリのような翼が生えている。
その根元をよく見てみると、作り物などではなく、本当に身体から生えている。
そう、少年は本物の悪魔だった。
 「さてと・・・。いい加減に帰っておかんとな。忌々しいあの女めに感づ・・!?」
ハッとした表情を浮かべながら、少年悪魔は振り返る。
「やっと・・見つけたわよ・・!?」
悪魔の視線の先には、20代後半と思しきシスター。
 「勝手に教会を抜け出して・・また悪さを働いていたわね!?」
シスターは怒りの表情を浮かべる。
「うるさい!ワシの勝手じゃろう!?今日こそ、自由の身になるのじゃ!?」
対して、少年悪魔も怒りの声で返す。
目の前にシスターに捕えられ、更生の為と称して、彼女の教会で働かされたりしているからだ。
 「死ねいっっ!!??馬鹿女めが!!」
少年悪魔は掌を向けると、火の玉として、魔力を撃ち出す。
だが、シスターがそれを体捌きでかわす。
直後、少年悪魔の目の前まで、シスターは間合いを詰めていた。
 「しま・・!?」
少年悪魔が後退しようとしたところへ、手首に鈍い打撃が襲いかかる。
悪魔の前腕には、悪魔に効果がある十字架の印を刻みつけた分銅鎖が巻き付いていた。
シスターは少年悪魔の腕を前に引っ張り、体勢を崩したところで、足払いで、悪魔を床に投げ倒す。
 「く・・くそ・・!?」
「さぁ・・帰るわよ。その前に・・・」
シスターは鎖で悪魔の両手首を縛るや、少年悪魔を膝の上に乗せる。
 「貴様!?何するんじゃ!?」
「決まっているでしょう?お仕置きよ」
そういうと、シスターは手袋を嵌めた手を振り上げる。
手袋にも、対悪魔用の十字架の印が刻まれていた。
 バッシィィーーンッッっ!!
「ぐううっ!?やめんかっ!?暴力女っ!!」
「何を言ってるの!?また懲りずに悪さなんかして!!絶対に許さないわよ!!」
シスターは怒りの声と共に、悪魔のお尻を叩く。
その後、シスターの怒りの声とお尻を叩く音、悪魔の反抗する声とが響いていた・・・。


 ―完―

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