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王国軍中尉ルチア・ルヴェル外伝 大使館の激闘



 「ふぁぁぁ・・・・・」
その兵士はあくびをするとだらしない表情になる。
「暇だな・・・・」
あくびをした兵士は一緒に警備をしている相方に話しかけた。
「暇な方がいいに決まってるだろ。俺らが忙しかったらえらいことになってるわけだし」
「それもそうだな」
そうつぶやくと兵士は目をこする。
 彼らはある大使館の警備を担当する兵士たち。
今は彼らの巡回番ということで、大使館の敷地内をグルリと一回りして警備の最中だった。
「ブルル・・・それにしても冷えやがるなぁ・・春だっていうのに・・」
「仕方ねえだろう。夜だからな」
銃を構えて夜の闇の中、兵士たちは庭を巡る。
そのとき、ふと一人が暗闇の中で何かが動いていることに気がついた。
 気付いた兵士は身振りで相手に伝える。
相手も夜陰の中で動く何者かに気付くと表情が変わった。
彼らは互いに頷くと足音を立てないようにして慎重に歩みを進める。
近づくにつれて彼らの表情に緊張が増す。
誰かが潜んでいるという気配が確実だったからだ。
 兵士達は短機関銃で狙いをつけるとゴクリと息を飲んで立ち止まる。
「何も・・・・」
投降を呼びかけようと一人が口を開こうとしたそのときだった。
 闇夜の中で潜んでいたものが宙を飛んだのがおぼろげながら二人の目に捉えられた。
ハッとした一人が思わず頭上を見上げようとすると、凄まじい力が頭にかかるのを感じ取る。
気付いたときにはいつの間にか真後ろを向いていた。
(あれ・・・?)
変だと思う前に突然視界が暗くなる。
直後、その兵士は意識がブッツリと途絶えた。
 「な・・・・」
もう一人の兵士は思わず息を飲んだ。
目の前で相方の首が凄い勢いで捻られ、真後ろを向いたのだ。
 彼は目の前に男が立っていることに気付いた。
アジア系の精悍な風貌の男だ。
無意識に兵士は短機関銃を男に突きつけようとする。
そのとき、男の腕がグッと伸びてきたかと思うと銃を掴んでしまう。
男の腕がグイと銃を捻ったかと思うと、メキメキという音と共に短機関銃が半ばからねじ切られてしまった。
「!!!!!!」
銃の残骸を見やるや、兵士は驚愕に顔を隠せない。
直後、風を切るブウンッという音がしたかと思うと兵士は胸に鐘突き用の棒を叩きつけられたような凄まじい衝撃を感じる。
兵士の体は後ろへ吹っ飛んだかと思うと、大使館をグルリと覆う壁に叩きつけられ、ズルズルと力なく彼の体は地面へ崩れ落ちた。


 「・・・・・・・」
侵入者ことツイスター・カオは何の感慨も見せずに兵士の遺体を一瞥する。
だが、その死を確認するとゆっくりと建物の方を振り向き、大使の執務室に視線を向ける。
彼は代理人を通してこの館にいるある大使の暗殺を請け負っていた。
忍び込んだのもそのためだ。
彼は標的を殺しに行こうと建物へ歩を進める。
 数歩歩いたところでカオは歩みを止めた。
気配を感じたのだ。
しかもただ者ではない。
本能的にカオは一歩引いていた。
 直後、カオの横顔があったところに諸刃のサーベルの切先が飛び込んできた。
避けながらカオは左裏拳を繰り出して反撃しようとする。
相手もそれを気付くやとっさに反対側の腕でガードする。
しかし、カオもすかさず地面を蹴って間合いを離した。
 カオは数メートルの間合いを取って着地すると相手を見やる。
カオに襲いかかってきたのは18歳とおぼしき一人の青年。
長く美しい紫髪の持ち主で、女性と見まがうばかりに美しいが激しいものを秘めた面立ちをしている。
 「やっと・・・見つけたぜっっ!!」
美青年ことマウロ少尉はカオの姿を見るや、キッと睨みつけて憎々しげに言う。
「貴様か・・・・」
カオは一目見るなり、数日前に彼を逮捕しようと隠れ家に乗り込んできた青年軍人だと気付いた。
「今日こそ・・逮捕してやる・・・覚悟しやがれっっ!!!」
マウロは怒りを抑えかねるような口吻で言う。
この男を逃した為に上司のメッシナ大佐に色々と説教されてしまい、あまつさえ尻まで叩かれたのだ。
その屈辱を何としてでも晴らしたかった。
 マウロは右手を伸ばして愛用の諸刃サーベルを構えたかと思うや地面を蹴る。
土煙が上がったかと思うや、マウロはカオの目の前まで接近していた。
「シィィィッッッ!!!!」
気合と共にマウロは突きを繰り出す。
剣がブルッと震えたかと思うとあまりの速さで十数もの残像が生じ、カオに襲いかかった。
 カオは後ろに引いてかわそうとするが、切先はカオの上着を切り裂き、ボロを纏っているような姿にしてしまう。
しかし、切れたのは服だけで皮一枚傷つけることも出来なかった。
最後の一突きが引っ込もうとする瞬間、僅かに隙が生じる。
煙を蹴立てて地面を蹴ったかと思うや、カオが飛びかかった。
カオは猛烈な勢いで飛びかかったかと思うと右腕を伸ばしてマウロの顔を掴む。
掴んだかと思うと、カオはマウロの頭上へ片手で逆立ちする。
逆立ちしたかと思うと、カオは猛烈な勢いでコマのように錐揉み回転し始めた。
 「ぐ・・ぐあああ・・・」
マウロは思わず声を漏らす。
全身を巨大な機械で捻じり上げられているような苦痛が襲った。
とっさにマウロはカオの回転に合わせて自分自身も錐揉み回転し始める。
あまりの速さにマウロの足元からはプスプスと摩擦で煙が生じていた。
 突然、マウロは頭上が軽くなったのを感じる。
カオが頭上から離れたのだ。
頭上から離れたカオは着地すると再びマウロと対峙する。
「やるな・・・。俺の捻身掌(ねんしんしょう)を破るとは・・」
カオは感心したような口調で言う。
捻身掌。
カオの奥義で、その名の通り相手の頭を捕らえ、頭上で倒立した状態で高速回転し、その勢いで相手の身体を捻り上げてしまう。
この技をくらった相手はまるで雑巾を絞り上げるかのように上半身を捻られた姿になって絶命する。
カオのツイスター(ねじる人)という呼び名もこの技が由来だった。
 「フン・・・。これでお前の十八番(おはこ)も役立たずだ。さぁ、観念しろ!」
マウロはサーベルを突きつけて言う。
だが、カオは平然としている。
それどころか一気に間合いを詰めて殴りかかってきた。
マウロは相手の拳を引いてかわしながらサーベルを繰り出す。
切先はカオの胸目がけて一気に迫る。
対してカオは右腕で胸を庇う。
マウロはそのまま腕を刺し貫こうとする。
 だが、切先が触れたかと思うと甲高い音と共に切先が弾かれた。
「なっ・・・!」
意外な事態にマウロは一瞬我が目を疑う。
そのために僅かな隙が生じ、そこを突いてカオが思いきり片足を蹴り上げた。
 ドオンッッッ!!
鈍く強烈な音と共にマウロの身体がボールのように吹っ飛んだ。
吹っ飛んだマウロは大使館の壁の建物に叩きつけられ、ドサリと地面に落ちる。
 「ごふっ・・・げふ・・ぐふ・・」
マウロは胸を押さえて咳き込みながら起き上がる。
(何だ・・?あの感触は?)
カオの腕とマウロの切先が触れた瞬間、金属を突いたような感触をマウロを覚えた。
同時に蹴りを叩き込まれた際、生身の足ではなく鉄の塊をぶつけられたような感覚を感じた。
 「どうやら・・気付いたようだな・・・」
マウロの感じた違和感に気付いたのだろう、感心したような口振りで言うとカオは上着の襟首に両手をかけて上着を引き裂いた。
あっという間に鍛え上げられたカオの上半身があらわになる。
 上半身があらわになったのを見るや、マウロは目を見張った。
彼の視線はカオの両腕に注がれている。
カオの両腕は肩から指先までが鉄のような見事な黒に染まりきっていた。
 「ま・・まさか・・・・」
マウロは信じられないように呟く。
「どうやら気付いたようだな。見せてやろう、鉄身功(てっしんこう)の術を。ふうううううんんんんっっっっっっ!!!!」
カオが気合を入れたかと思うとあっという間に全身が真っ黒に染まってゆく。
あっという間にカオは黒人のように全身真っ黒な肌と化した。
鉄身功、それは長年に渡って特殊な調合による薬を飲み続け、同時に過酷な修行によって人体内に存在する鉄分を自由自在に操れるようにするというもの。
それによって身体を文字通り鉄と化し、強力な防御力と打撃力を得るというものだ。
中国拳法のさる流派に秘奥義中の秘奥義として伝わっていたものだ。
 「ったく・・冗談じゃねえ・・・」
マウロは呆れたように言う。
「どうする?ケツをまくって逃げるか?」
「馬鹿にするんじゃねえ!!」
カオの長髪にマウロはかっとし、地面を蹴ったかと思うと銃弾のような勢いで突進する。
飛びながらマウロはサーベルを思いっきり突き出した。
狙いは咽喉元。
切先は正確にカオの咽喉を捕らえる。
だが、刃は空しく弾かれてしまった。
マウロが次の一撃を繰り出す間もなくカオの反撃が襲ってきた。
ドオンッという大きな鈍い音と共にマウロの胸にパンチが叩き込まれる。
マウロの身体は大きく後ろへ吹っ飛んだかと思うと木に叩きつけられた。


 「ごほっ・・ぐふっ・・げは・・っっ」
マウロは胸を抑えて咳き込みながら立ち上がる。
胸にはパンチを思い切り叩きつけた跡がくっきりとついていた。
 マウロがヨロヨロと立ち上がっている間にカオはゆっくりと間合いを詰める。
胸の痛みに表情を一瞬歪めるも、マウロはサーベルを構えて対峙する。
カオも拳を構えてにらみ合ったかと思うと、互いに地面を蹴って相手に急接近した。
互いに顔をつき合わせる距離まで来たかと思うと、漆黒の両腕と白刃が命を吹き込まれたように互いに相手に襲いかかった。
両者は激しく打ち合い、輪舞のようにグルグルと位置を変えながら周囲を動く。
一見すると剣を持っているマウロの方が有利に見えるが、実際は青年剣士の方が押されていた。
相手は幾ら切りつけようが突こうがかすり傷一つ負っていないのだ。
(くそっ!!何て頑丈なやつだ!!)
マウロは思わず舌打ちしたくなる。
マウロの剣技とてなまじなものではない。
戦車や装甲車の装甲を貫通することだって出来る。
しかし、秘術によって強化された敵の肉体はなまじの戦車などよりもはるかに高い耐久力を持っていた。
マウロが突きかかるのを尻目にカオは肩から思いっきり突進してきた。
「チッ・・・オオオッッ!!!」
マウロは気合と共にどしゃ降りのような突きを繰り出した。
だが、文字通りカオの鋼の肉体に弾かれてしまう。
 激しい衝撃と共にマウロは吹っ飛ばされそうになるが、両腕を伸ばしたカオに身体を捕まえられてしまう。
「ふうん・・・ぬうんっ!!」
カオは頭を後ろに反らしたかと思うと思いっきりマウロの額に頭突きをかましてきた。
「ぐ・・っ」
頭を襲う強烈な打撃にマウロは思わずうめく。
直後、たて続けに頭突きの音があたりに響いた。
 「ぐ・・うぅぅ・・・」
マウロの表情は苦しげで視線はどこか定まらない。
嫌というほど頭突きを喰らわされ、脳が打撃で揺さぶられていたのだ。
しかし、本能的にマウロはパンチを繰り出す。
パンチはもろにカオの顔面に命中する。
だが、マウロは手に妙な感触を覚える。
骨にひびが入ったのだ。
直後、カオのパンチが胸に入った。
 「が・・っっっ!!!!」
パンチの衝撃でマウロは地面に転がる。
転がったマウロは立ち上がるが、額には脂汗がジッと浮かび息は荒い。
(くそ・・・!!二三本はいっちまったぞ!!)
カオの一撃でマウロは肋骨がやられてしまったことに気がついた。
「意識はおぼろげながらも攻撃を繰り出すとは大した根性だ・・。だが、それが災いしたな」
「う・・うるせえっ!!」
マウロは言い返す。
 「だが・・・俺もいつまでも貴様と遊んでいるわけにはいかん・・・。さっさと始末してやる・・・」
次の瞬間、カオの姿が消えたかと思うとマウロの目の前にカオの姿があった。
真っ黒なカオの拳が二つ並んでマウロの胸に容赦なく叩き込まれる。
間髪いれずに胴といい手足といいカオの鋼鉄の四肢がマウロの肉体を目茶苦茶にぶったたいた。
骨や肉のきしむ音がマウロの耳にこだまする。
やがて、打撃の嵐がやんだかと思うと、カオの両拳がマウロの胸に再度叩き込まれ、彼の身体はボールのように地面を転がった。


 あれ・・・?
どうなったんだ・・・?
マウロはボンヤリと薄れ行く意識の中であたりを見ていた。
マウロは頬に土の感触を、全身に骨の軋みを感じながら誰かの足が大使館の建物に向かってゆくのを見つめている。
 ああ・・・そうか・・・。
俺はやられたんだ・・。
マウロは自分が地面に転がっていることに気付いてそれを覚った。
同時に目の前が暗くなってくる。
 (死ぬのか・・・)
マウロはそう呟く。
そう考えるとさらに視界が暗くなっていった。
(待て・・待てよ・・・死ぬってことは・・奴に負けた・・・屈服したってことだろ!!)
突然、強い口調でマウロは心中で叫ぶ。
(冗談じゃねえ!!俺は・・・俺は・・誰にも屈服なんかしない!!)
マウロは強く叫ぶと身体に力を入れようとする。
たちまち、鋼鉄の肉体に叩きのめされた全身が悲鳴を上げた。
声にならない叫びがマウロの口から迸りそうになる。
だが、マウロは自身の身体を叱咤して立ち上がりだした。


 (む・・・・)
カオは背後の気配に気付くと後ろを振り返った。
するとゆっくりとだがマウロが立ち上がってくる。
「まだ生きていたか・・・しつこいやつだ・・」
カオは感心したような呆れたような口調で言う。
マウロはまるでボロ雑巾のようなひどい姿になっていたからだ。
実際に身体はふらついており、立っているのがやっという感じだ。
 「う・・うるせえ・・だ・・誰が・・てめぇなんかに・・屈服するかよ・・」
マウロはキッとカオを睨みつける。
「ならば・・・心臓を貫いて息の根を止めてくれる」
カオは決意したように言うとマウロと対峙した。
「ふん・・・よく・・狙えよ・・。外すんじゃねえ・・」
マウロは挑発するように言うと自身の胸を片手で差す。
「愚かな・・・血気にはやって命を捨てるか・・・」
カオはそう呟いたが次の瞬間には非情な目になる。
地面を蹴ったかと思うとグングンと二人の間の距離が縮まっていった。
 マウロは逃げもせず、カオをジッと見つめている。
マウロの視線はカオのある点にのみ注がれていた。
「おおおおおっっっ!!!!」
気合と共にカオが突進しながら貫手をグンと繰り出す。
狙いは心臓、胸に大きな風穴を開けるつもりだ。
マウロはしっかりと両脚をふんばると右足を踏み出して思いっきりサーベルを突き出す。
(無駄なことを!!)
心中で叫びかけたがそのときハッとあることに気付いた。
マウロの切先が狙っている場所を。
だが、そのときにはもはや遅かった。
猛烈な勢いで突進してきたカオは自分からマウロの切先に口を突っ込んでしまったのだ。
 カオは蝋人形にでもなったかのように硬直していた。
その口にはサーベルの刃が突っ込まれ、後頭部から切先が突き出ている。
マウロが手を離すと同時にカオはサーベルで貫かれたまま地面へ横倒しに倒れた。
「ざまあ見やがれ・・いくらてめえでも身体の中までは鉄には変えられねえだろ・・」
マウロは勝ち誇ったように言う。
 そう、マウロは口という小さな的を狙ってカウンターで突きを食らわせたのだ。
如何に身体の外面を強力な装甲で覆ったかとしても身体の内部まではそうはいかない。
口の中はもろい生身のままだ。
だから狙うとしたら口だった。
 「はぁ・・はぁはぁはぁ・・・」
マウロはサーベルで貫かれたまま絶命したカオをジッと見下ろしていた。
(危なかった・・・)
マウロは心底そう思っていた。
持ち前の負けん気から気力を奮い立たせることが出来なかったらそのまま死んでいただろう。
(だが・・・俺も・・)
マウロは地面に崩れ落ちたかと思うとそのまま大の字に寝てしまう。
次の瞬間、マウロの口から寝息が漏れた。


 ―完―
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theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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